低プロファイルモジュラ腹部大動脈瘤グラフト
【課題】エンドグラフトバイパス技術を用いて血管内動脈瘤を排除することにより動脈瘤に対処しかつ改善するシステム、方法およびデバイスを提供することにある。改善された大動脈ステント組立体の経皮配置および使用は、例えば腹部大動脈瘤の治療のためにモジュラグラフトセクションを配置することを容易にする。
【解決手段】エンドグラフトバイパス技術を用いて血管の動脈瘤を遮断することにより動脈瘤を取扱いかつ改善するシステム、方法およびデバイス。本発明の実施形態は、例えば腹部大動脈瘤を治療すべくモジュラグラフトセクションの配置を行う。
【解決手段】エンドグラフトバイパス技術を用いて血管の動脈瘤を遮断することにより動脈瘤を取扱いかつ改善するシステム、方法およびデバイス。本発明の実施形態は、例えば腹部大動脈瘤を治療すべくモジュラグラフトセクションの配置を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の詳細な説明]
本願は、2009年5月14日付米国特許出願第第12/466,044号および2009年11月30日付米国特許出願第12/628,131号の優先権を主張する。尚、これらの各米国特許出願の全体は、本願に完全に開示されているかの如くに本願に援用する。
【0002】
本発明は、広くは、腹部大動脈瘤を治療するモジュラ・二管腔(bilumenal)エンドグラフトシステムに関する。より詳しくは、本発明は、特に、従来技術とは異なり13フレンチ(Fr)以下のプロファイルで配給可能な、最適方向に配置される経皮配置グラフトを用いて血管内修復を行うシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
大動脈は、身体の全ての動脈分枝に血液および酸素を配給する、人体で最大の動脈である。胸部大動脈の通常の直径は、管状上行部分で約3cm、下行胸部大動脈で2.5cmおよび腎下腹部大動脈で2cmである。大動脈の寸法は、身体表面積、年齢および性により異なり、一般に男性の大動脈寸法は女性より大きい。しかしながら、万人に受け入れられる機構または標準化された機構、または通常は手遅れになるまで大動脈打膿であるか否かを知る他の方法は全く存在しないので、サイズ範囲のこの設定は重要である。
【0004】
正常直径を超える大動脈の拡大は動脈瘤と呼ばれ、一般に、動脈壁の劣化および弱化を生じさせる。米国では、毎年17,000人以上が動脈瘤破裂で死亡する。破裂する前に動脈瘤が診断されるならば修復できるが、直径が5cmを超える大きさに達すると、破裂または死亡の事象が実際に確実なものとなる。
【0005】
動脈瘤を修復する優れた標準は、長い間、手術による修復であった。手術による修復では、大動脈の拡大部を切開し、合成樹脂(ダクロンまたはゴア−テックス)チューブのグラフトを挿入する。ひとたびチューブが大動脈の近位側部分および遠位側部分に縫合されると、動脈瘤嚢が人工チューブの周囲に巻かれ、縫合により閉じられる。一般に、有効な外科的修復は、術後7-10日の入院および数カ月の回復期間を要する。また、このアプローチでは、10%以上の死亡率が存在する。
【0006】
近年では、切開手術による修復の代わりに、最小侵襲手術として大動脈瘤の血管内治療が出現している。血管内手術では、合成樹脂グラフト(内部に金属フレームを備えたポリエステルまたはテフロン(登録商標)チューブからなるステントグラフト)がカテーテル内にパッケージされ、デバイスが、静脈切開を介し、脚の動脈を通して血流中に挿入される。カテーテルは、外科医がX線透視装置を用いて所望位置に案内される。ひとたび所定位置に配置されると、グラフトがカテーテルから解放されかつ動脈瘤嚢内で拡大される。ステントグラフトは大動脈の弱化セクションを補強して、患者の大動脈の一部となることによりまたは生体相容性のある同種グラフト構造となることにより、動脈瘤の破裂を防止する。金属フレームはスプリングのように拡大し、大動脈の壁に対してグラフトを確実に保持し、動脈瘤への血液の供給を遮断する。今や血液はステントグラフトを通って流れ、動脈瘤を隔絶する。一般に、管腔内動脈瘤治療はより優しいものであり、1-2日の入院および1-2週間の回復時間で済む。現在のデバイスは応諾試験が可能であり、10年より長い時間外投影寿命に等しい。ISO標準規格では今や、デバイスは、動脈圧力に耐えることができかつ長時間そうすることができる。
【0007】
過去10年間、多くの医療デバイス会社は、腹部大動脈瘤治療用エンドグラフトをマーケットに投入してきた。これらのエンドグラフトとして、Boston Scientific(登録商標)社、Edwards LifeSciences(登録商標)社、Medtronic(登録商標)社、Gore(登録商標)社、Cook(登録商標)社、Endologix(登録商標)社、Cordis(登録商標)社等によるデバイスがある。これらのデバイスは、固有の厚さを有しかつ本来の剛性を有する外科用材料から作られる。臨床的に有効であるが、これらのデバイスの嵩張る構造は、直径が20Fr以上のカテーテルを通して配給する必要があり、かつ導入すべき動脈に手術用切開を必要とする。切開アプローチは患者の回復時間およびしばしば手術用切開介入に伴う急性合併症を大幅に低減させるが、最終的目的およびマーケットの傾向は、エンドグラフトおよびデリバリシステムのプロファイルを小さくして、エンドグラフトを経皮配給できるようにし、これにより切開処置の必要を無くすことにある。この挑戦は、本発明の教示の出現以前に未だ達成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,676,697号明細書
【特許文献2】米国特許第6,383,193号明細書
【特許文献3】米国特許第5,316,023号明細書
【特許文献4】米国特許第5,078,726号明細書
【特許文献5】米国特許第5,928,279号明細書
【特許文献6】米国特許第5,897,587号明細書
【特許文献7】米国特許第6,001,125号明細書
【特許文献8】米国特許第6,004,348号明細書
【特許文献9】米国特許第6,517,571号明細書
【特許文献10】米国特許第6,786,920号明細書
【特許文献11】米国特許第6,981,982号明細書
【特許文献12】米国特許第6,808,533号明細書
【特許文献13】米国特許第6,790,225号明細書
【特許文献14】米国特許公報第2009/0182413号明細書
【特許文献15】米国特許公報第2009/0036973号明細書
【特許文献16】米国特許公報第2009/0036973号明細書
【特許文献17】米国特許公報第2008/0208325号明細書
【特許文献18】米国特許公報第2008/0114449号明細書
【特許文献19】米国特許公報第2004/0162604号明細書
【特許文献20】米国特許公報第2004/0054397号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
簡潔にいうならば、本発明のシステム、方法およびデバイスは、エンドグラフトバイパス技術を用いて血管内動脈瘤を排除することにより動脈瘤に対処しかつ改善するものである。改善された大動脈ステント組立体の経皮配置および使用は、例えば腹部大動脈瘤の治療のためにモジュラグラフトセクションを配置することを容易にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、12Fr以下の血管導入器を通して経皮供給されるシステムとの組合せからなり、大動脈内に配置できる第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトを更に有する動脈瘤治療用二股エンドグラフトデバイスにおいて、第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各ピースが、腎動脈の解剖学的に本来的に変えることができる方向に適合させるべく互いに上下方向に独立して調節できかつこれらの間に位置する管腔スペースにより形成される、シールされた通路を有効に形成でき、各エンドグラフトを通る流れを可能にして動脈瘤嚢内の圧力を緩和することを特徴とする二股エンドグラフトデバイスが開示される。
【0011】
本発明によれば、第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、管腔と、近位端と、遠位端とを有し、各エンドグラフトは更に、部分的にカバーされたフレキシブルな管状編み物ワイヤフレームを有し、該ワイヤフレームはほぼD型の断面をもつ近位端を備え、該近位端は大動脈の腎下部分内に円形グラフトを形成すべく第2D型グラフトに対して固定され、各エンドグラフトはほぼ円形の断面をもつ遠位端を備え、該遠位端は一方の腸骨動脈内に配置されかつ固定されるように構成されている。本発明によれば、第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、腎動脈の上方および下方で大動脈と係合することを意図した腎下大動脈ステントと、腎下ネックをシールしかつほぼD型形状をもつ2つのエンドグラフトを近位端で拘束すべく機能する腎動脈の下のカバーされたセグメントと、腸骨動脈内に配置するための遠位端の円形形状とを有している。
【0012】
本発明によれば、第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、非拘束状態で拡大したとき少なくとも約25mmの外径を有している。本発明によれば、第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、波型かつリブ付の織物材料のカバーを有している。カバーは、その近位端および遠位端が、第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々のフレームに固定されている。
【0013】
本発明によれば、少なくとも2つのエンドグラフトユニットとの組合せからなり、各エンドグラフトユニットが管腔と、近位端と、遠位端とを有しているモジュラエンドグラフトシステムにおいて、各エンドグラフトユニットは、フレキシブルな管状織物ワイヤフレームを有し、該ワイヤフレームは、ほぼD型の断面をもち大動脈の上方に固定される近位端と、ほぼ円形の断面をもち各腸骨動脈内に配置されかつ固定されるように構成された遠位端と、各エンドグラフトユニットと大動脈壁との間のシールと、エンドグラフトユニット同士の間のシールとを備えている構成のモジュラエンドグラフトシステムが開示される。
【0014】
モジュラエンドグラフトシステムは、12Fr以下の導入器プロファイルを通して導入できる。各エンドグラフトユニットは、少なくとも約45°以上の最適編み角を有する編まれたステント状デバイスである。モジュラエンドグラフトシステムは、伸長および縮小の長さに適合できる織物層を更に有している。モジュラエンドグラフトシステムは、グラフトが前進方向に移動することを可能にするサイズを有しかつ構成された突起を更に有し、該突起は、グラフトユニットが逆方向に移動するときに、グラフトユニットが配置された血管壁と係合する。モジュラエンドグラフトシステムは、各エンドグラフトユニットのイメージングおよび配置を容易にする、中隔角度が付されたX線撮影用マーカを更に有している。
【0015】
本発明によれば、12Fr以下の第1定置カテーテルを有し、該第1定置カテーテルは、第1腸骨動脈通路を通して大動脈瘤に配給されかつ第1ステントグラフトを収容しており、第1ステントグラフトは、該第1ステントグラフトに対して第1定置カテーテルを後退させることにより定置でき、12Fr以下の第2定置カテーテルを有し、該第2定置カテーテルは、第2腸骨動脈通路を通して大動脈瘤に配給されかつ第2ステントグラフトを収容しており、第2ステントグラフトは、該第2ステントグラフトに対して第2定置カテーテルを後退させることにより定置できることを特徴とする、第1定置カテーテルと第2定置カテーテルとの組合せからなる低プロファイルエンドグラフトデリバリシステムが開示される。
【0016】
第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、それぞれ、第1および第2ステントグラフトの近位側部分を選択的に収容するノーズコーンと、それぞれ、第1および第2ステントグラフトの遠位側部分を選択的に収容する管状本体とを有している。管状本体は、ノーズコーンが近位側部分を大動脈内で大動脈に対して所望位置に維持している間に、遠位側部分の少なくとも一部を定置すべく後退できる。第1および第2ステントグラフトの各々が、これらの定置後に、それぞれ第1および第2定置カテーテルの一方内で再捕捉される。第1ステントグラフトおよび第2ステントグラフトは、それぞれ第1定置カテーテルおよび第2定置カテーテルを操作することにより互いに独立して調節できる。
【0017】
本発明の他の目的および特徴は、添付図面を参照して述べる以下の詳細な説明から明らかになりかつ最も良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明の教示の特徴の概略図であり、本発明の実施形態による例示のD型グラフトの詳細構造を示すものである。
【図1B】本発明の実施形態による1対のD型グラフトを概略的に示す部分断面図である。
【図1C】本発明の実施形態による、非対称的に配置されたときでも自己シール性を有する2つのグラフトを示す図面である。
【図1D】本発明の実施形態による、係止突起を備えた1対のD型グラフトを示す斜視図である。
【図2A】本発明の実施形態による、腹部大動脈瘤治療システムを位置決めする手術段階を示す図面である。
【図2B】本発明の実施形態による、腹部大動脈瘤治療システムを位置決めする手術段階を示す図面である。
【図2C】本発明の実施形態による、腹部大動脈瘤治療システムを位置決めする手術段階を示す図面である。
【図3】本発明の実施形態による、第1腸骨セグメントを示す斜視図である。
【図4A】図3の4A-4A線に沿う断面図である
【図4B】図3の4B-4B線に沿う断面図である
【図5】本発明の実施形態による、組立てられた腹部大動脈瘤グラフトを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者は、経皮配置が行えるように工夫された、少なくとも約12Frの導入プロファイルを有するデバイスが、特に二股(少なくとも2つの分枝)に分かれかつモジュラとして組立てられる血管内グラフティングの技術分野における多くの問題を解決する。本願に特に援用される米国特許および米国特許公報として、上記特許文献1-20がある。
【0020】
以下に開示する本発明の実施形態は、特に、動脈瘤の治療または修復に使用するシステムに関する。以下の説明は種々の実施形態の特定細部について述べるが、説明は例示に過ぎず、いかなる意味においても本発明を限定するものではないと理解すべきである。また、当業者が想到し得る本発明の種々の適用および改変は、本願の詳細な説明および本発明の教示による占有権として特許請求される広い概念により包含されるものである。
【0021】
腹部大動脈瘤および胸部大動脈瘤を修復するシステムには多くの形態がある。一般的なシステムとして、動脈瘤の上方の健常組織内に配置される係止コンポーネントおよび/またはシーリングコンポーネントと、該係止コンポーネントおよび/またはシーリングコンポーネントと流体連通する1つ以上のグラフト(移植片)とがある。本質的に、グラフトは、動脈の一セクションから同じ動脈または異なる動脈の他のセクションへの流体流路を確立し、これにより動脈の病変部をバイパスするのに使用されるシステムのコンポーネンツである。本質的に、本発明の血管内グラフティングシステムは、モジュラシステムを形成する多数のコンポーネンツからなる。各実施形態の全構成範囲は多くのコンポーネンツからなるが、これらの形式のシステムに付随する課題として、プロファイル、フレキシビリティおよびアクセシビリティがある。
【0022】
ここで図1A-図1Dを参照すると、例示のD型エンドグラフトの種々の細部が示されている。また、図2A-図2Cには、本発明の独自のデリバリシステムおよび構造システムが例示されている。当業者ならば、これらの概略的例示が、1対のD型グラフト1(全図を通して示されている)に接触させるのに定置カテーテル21、22を用いて腹部大動脈瘤内にモジュラグラフトを構成する本発明の教示を示すものであることが理解されよう。かくして大動脈瘤38は架橋されて流路すなわち管腔を形成し、動脈瘤が収縮して必要な血流が流れ得るようにする。本発明のシステムは、動脈瘤打膿(aneurismal issues)を排除する大動脈の一部となるシステムの低プロファイルデリバリを可能にする。
【0023】
本発明によれば、ステントグラフトによる腹部大動脈瘤のEVAR(血管内動脈瘤修復:endovascular aneurysm repair)は、25mmまで拡大する低導入プロファイル(好ましくは12Fr以下)の特徴を有し、構造的支持体を形成しかつデバイスが撓んで曲がりくねった解剖学的血管構造に一致させることを可能にするフレームに取付けられる極薄グラフト材料から血管内的に構成された短い腎下ネックを治療できる。
【0024】
本発明の実施形態によれば、ステントグラフトの要素は少なくとも3つの層を有し、これらの層には、弾性材料または半剛性材料(例えば、金属、ニチノール(Nitinol:登録商標)のような形状記憶金属、プラスチック、形状記憶プラスチック、または他のフレキシブルな発泡材料)のスパイラルワイヤまたはレーザカットメッシュからなる中間層と、約0.0005インチの厚さを有する極薄不透過性発泡PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)テープからなる外側層と、0.004インチ以下の極薄で長手方向に延伸可能な発泡PTFEチューブおよび/またはポリエチレンテレフタレート(PET)(例えばダクロン(Dacron):登録商標)の第3の内側層とが含まれる。これらの層は、フレームの回りで熱的に溶融されるか接合されかつステントグラフト複合体の構成材料として機能する。本発明の実施形態では、PTFEは、液体または水に対して不透過性を有している。内側のPTFE層および外側のPTFE層は、血圧から動脈瘤を隔絶する材料を構成する複合体の充分な液密性を確保すべく機能する。或いは、グラフト材料は、0.004インチ以下の厚さを有する極薄の緻密に織られたポリエステル織物等の材料とすることができる。この材料は、近位端および遠位端で糸または接着剤によりフレームに固定されかつ長さに沿って襞(ひだ)が付され、グラフトが、収縮された状態のステントとともに長くなることを可能にし、かつ定置中にステントが短縮されると、収縮すなわち短縮することを可能にする。
【0025】
本発明の実施形態によれば、組合せることができる1組のD型グラフトの各々は、互いに向き合うように手で操作できる面(図1Aに示す)を有している。適合する面は、D型グラフトにおけるような平面である。当業者ならば、D型グラフトは、本発明の教示をサポートする任意の半球形を含むことを意味することが理解されよう。
【0026】
図1Aに示す実施形態によれば、2つのD型ステントグラフト1aaは、これらのグラフの2つの平らな面を互いに対面させすなわち互いに密着させると、円筒状のような管状外観を形成する。ステントグラフト1aaは、本願で更に説明するように、編みフレームを含むフレーム1abで形成できる。この実施形態によれば、ステントグラフト1aaのフレーム1abの各々には、フレーム1abの内面または外面上にカバーリングを設けることにより、カバー部分を設けることができる。カバーリング1acは、スリーブ、シースまたは他の構造物で形成できる。カバーリング1acは、ポリエステル織物材料(例えばダクロン)、生体適合性ポリマー(例えばPTFE等)、または織物形態をなす実質的に耐水性のあるマイクロファイバ等の他の適当な材料で形成できる。カバーリング1acは、遷移セクション1aeで、フレーム1abに固定できる。固定には、縫合、ステープリング、接着、接合等の固定手段がある。遷移セクション1acは、D型グラフトが腎動脈内への血流をもたらす非カバー部分1adが形成されるように、ステントグラフトの近位端1alより下に設けられる。非カバー部分1adは、対応する各腎動脈に独立的に整合される。別の構成として、遷移セクション1aeは、非カバー部分1adが全く存在しないように(図示せず)、ステントグラフト1aaの近位端1alに設けることもできる。したがって、ステントグラフト1aaは、近位端1alが腎動脈より下に位置して該近位端が少なくとも実質的に露出された状態になるように、腎動脈に対して整合される。これと同じ原理およびオプションをステントグラフトの反対側端部にも採用して、例えば腸骨動脈内に血液が流入するように構成することができる。
【0027】
他の実施形態では、D型グラフトの近位側部分の回りに適当な間隔を隔てて、突起1ahが配置されており、これにより突起1ahは半径方向外側を向いて定置され、大動脈でのグラフトを、腎上位置または腎下位置またはこれらの両位置に係止する(図1Bおよび図1D)。一実施形態では、突起は、一般に、グラフトを前進方向には殆ど抵抗なく移動させることができるのに対し、グラフトが逆方向に移動し始めるときは大動脈内に係合できるサイズを有しかつ構成されている。他の実施形態では、突起はばね特性をもつように構成されており、このため、グラフトがシースから定置されるときは外方に延びる(例えばスプリングアウトする)。更に別の実施形態では、高温食塩水または他の電気的、化学的または生物学的手段により閾高温で付勢されるように、突起が形状記憶材料または感温材料から作られる。更に別の実施形態では、グラフトは、接触表面の一部が互いに組み合わされて非対称的に配置されるときでも(図1C参照)、自己シーリング性または自己組合わせ性を有するように構成される。グラフトは、図1Cに示すように、2つの点1ai、1ajの間の領域に緊密シールを形成する1対の成形チューブグラフトまたは半径方向に拡大可能な他のグラフトで構成される。緊密シール領域は、グラフトの近位端の周囲または近位端に対し遠位側の近傍に設けられる。グラフトは、グラフトをシールしかつ血液の漏洩(内部漏洩)を防止すべく、動脈壁に密着するようにオーバーサイズに形成できる。
【0028】
本発明によれば、ステントグラフトの各D型部分1の遠位側セグメントには、グラフト材料でカバーされていない長さ約25mmの裸セグメントが設けられている(図1A参照)。このセグメントは、突起1ahによる上腎固定が行えるように腎動脈を横切って配置される。ステント内での非カバーセグメントは、腎動脈内への血流を可能にする(図2C参照)。本発明によれば、ステントグラフト1は、該グラフト1が腎動脈にオーバーラップしないように(例えば、ステントグラフト1の全長がカバーされるように)配置される。
【0029】
本発明によるモジュラ腹部大動脈瘤グラフトの組立てを、図2A-図2Cを参照して以下に説明する。図2Aを参照すると、ここには、同側腸骨動脈152および反対側腸骨動脈154への大動脈の二股部での動脈瘤38を含む解剖学的血管の一部が概略的に示されている。第1腎動脈156および第2腎動脈158も示されているが、簡単化のため他の動脈は省略されている。図2Aの解剖学的構造は高度に概略化したものであり、大動脈の長手方向軸線および大動脈瘤38の形状および位置に対する腎動脈および腸骨動脈の角度的関係および出発点は、患者毎にかなり異なっている。
【0030】
図2Aに示すように、定置カテーテル200、220は、ここでは詳細に説明しない慣用技術を用いて配置される。一般に、約0.025-約0.035の範囲内の外径を有するガイドワイヤが、大腿動脈のような血管系内に経皮挿入される。ガイドワイヤは対応腸骨動脈を通り、大動脈に向かって前進され、かつ腎動脈のレベルまたはこれより高いレベルへと前進される。その後、定置カテーテル200または220は、ワイヤ上で、図2Aに示す位置に前進される。
【0031】
定置カテーテル200は、近位端を備えた細長いフレキシブルな管状本体204を有している。細長いフレキシブルな支持チューブ166が、ノーズコーンまたは他の鈍チップ202を支持する管状本体204を通って軸線方向に延びている。パートライン206がノーズコーン202と管状本体204とを分離しており、かつ1つ以上の放射線不透過性マーカがノーズコーン202、管状本体204および支持チューブ166の1つ以上により支持し、所望定置部位へのX線透視ガイド下でのナビゲーションを容易にする。一般に、定置カテーテル200は、パートライン206が腎動脈の僅かに上部近くに位置決めされるようにして、ほぼ図2Aに示す位置まで経皮導入されかつ血管を通して前進される。
【0032】
図2Aに示すように、同側腸骨動脈D型グラフト定置カテーテル200は、大腿動脈等を介して導入されかつ反対側腸骨動脈152を通して血管内を前進される。
【0033】
図2Bに示すように、定置カテーテル200は管状本体204が支持チューブ166に対して遠位側に後退されるように操作される。これにより、ノーズコーン202をその初期位置に保持できると同時に、管状本体204の近位端は、近位側に後退され、図示のように、パートライン206でカテーテルを開放する。
【0034】
ステントグラフト1は、管状本体204の遠位端内で半径方向に圧縮されかつ拘束されている。支持チューブ166に対して管状本体204を軸線方向近位側に後退させることにより、ステントグラフト1が徐々に露出される。ステントグラフト1は、大動脈の壁により加えられる更なる拡大に対する抵抗に遭遇するまで、その固有の押圧力の下で半径方向外方に拡大する。ステントグラフト1の完全定置前に、ステントグラフト1は、カテーテル200により再捕捉され、必要ならば、その遠位端が所望通りに(最も近い腎動脈の上方、下方または横切って)位置決めされるようにかつ大動脈の健常ネック内の動脈瘤の上方に位置決めされるように再位置決めされる。D型セグメントが定置されると、D型セグメントが整合されるようにカテーテルが回転される。管状本体204の近位側への後退は、図2Cに示すように、ステントグラフト1が定置カテーテル200から完全に定置されかつ大動脈内に係止されるまで続けられる。その後、管状本体204は、支持チューブ166に沿って軸線方向遠位側に前進され、ノーズコーン202の近位端に接触するまで戻され、滑らかな外面(図示せず)が形成される。その後、定置カテーテル200は、ガイドワイヤを所定位置に残して患者から近位側に後退される。
【0035】
同様に、反対側の大腿動脈へのアクセスも行われ、ガイドワイヤが反対側の大腿動脈および腸骨動脈通路154を通って前進される。その後、反対側の腸骨動脈グラフト定置カテーテル22が血管内でワイヤ上を前進され、図2Aに概略的に示す位置を占める。細長いフレキシブル支持チューブ167に対して外側の管状スリーブ222を近位側に後退させると、反対側の腸骨動脈のD型グラフト1が露出される。該D型グラフト1は半径方向外方に拡大して、最初に定置されたD型グラフトおよび下端部の反対側腸骨動脈壁をシールする。その後、図2Cに示すように組立てられた腹部大動脈瘤グラフト構造を残し、反対側のグラフト定置カテーテル220が遠位側に引出される。
【0036】
本発明によれば、2つのステントグラフト1の各々が同時にまたは連続的に定置される。一方または両方のステントグラフトの相互の調節が望まれるときは、再捕捉が行われる。
【0037】
本発明によれば、ノーズコーン202、204は、これらの定置が望まれるまで、各ステントグラフト1の近位端上に維持される。これらのノーズコーンの作動は、細長いフレキシブル支持チューブ166、167を介して行われる。これらの支持チューブ166、167の各々はそれぞれノーズコーン202、224に連結されており、使用者が、ステントグラフト1に対してノーズコーン202、224を制御可能に移動させることを可能にする。或いは、ノーズコーン202、224は、最初に近位端を露出させるため再移動させることができる。
【0038】
本発明によれば、グラフトの2つの平らな面が互いに対面するとき(図2C参照)、例えばD型近位端および丸い遠位端を備えた2つの独立ステントグラフト1(図3)が使用されて血管内グラフトを形成する。作動に際し、各D型グラフトは、第1D型グラフトが第2D型グラフトに対して組合された態様で正確に定置されるようにデリバリ装置のシース内に装填される。本発明によれば、グラフトは、左右対称(バイラテラル)シースを通して大動脈内に挿入されかつ同時に定置される(図2Bおよび図2C参照)。
【0039】
本発明によれば、グラフトは、平坦面を互いに整合させかつ組合わせるべく回転される。D型の平坦面には、プラチナワイヤまたは他の放射線不透過性材料から作られる放射線不透過性マーカ1am(図1D参照)を設けることができる。マーカは、各D型部分に対して或る角度で配置され、1対が整合されると文字「X」として視認されるように構成できる。換言すれば、X線透視装置で見たとき、D型が適正に消去されると各マーカ1amは前記文字「X」の1/2を形成して、2つのグラフトのマーカが平行に整合する。
【0040】
D型グラフト1は、各腎動脈領域の治療を分離することにより、腎上EVARおよび腎下EVARの非カスタム方法を可能にする。グラフトの位置は、変化する解剖学的構造に適合させる腎臓口の高さまで上方または下方に独立的に調節できる。完全なEVARは、所望の場合には、直径(近位端および遠位端)、長さおよび腎臓口について2つのみのコンポーネンツにより遂行できる。
【0041】
本発明の実施形態によれば、本発明のD型ステントグラフト1は、グラフトの2つの平坦面が、図2Cに示すように、グラフトの2つの平坦面が互いに対面するように配置されまたは互いに密着するように組合わされるときに、円筒状のような管状の外観を呈する。本発明では、グラフトは、編まれたニチノール(登録商標)のワイヤステントフレームを包む、ポロシティが極小またはゼロのPTFEで形成される。PTFEは、フレームを包むため層状化および焼結されかつ編まれたフレームが圧縮されかつデリバリカテーテル内に挿入されたときに伸びることができるように熱処理される。他の実施形態では、グラフトは、上記および特許請求の範囲に記載の選択された外面の内皮化(endothelialization)を促進する波型/リブ付ポリエステル織物材料(例えばダクロン)または他の適当な材料から形成される。本発明によれば、D型グラフトは、腎動脈内への血流のための開口(編み物のセルを通る開口)を有し、これらの開口は、当業者に知られているように、移植の前に形成されるか、D型グラフトが現場で配置された後にワイヤピアスにより形成され、その後に任意であるがバルーンの膨張を行う。
【0042】
図3を参照すると、ここには、本発明によるD型グラフトの移植が示されている。グラフト130は、上端部136の上部開口134と下端部140の下部開口138との間で延びている細長いフレキシブル管状本体132を有している。管状本体132は、前述のように、ニチノール(登録商標)ワイヤのようなワイヤまたはフィラメントの編み物または織物で形成できる。好ましくは、管状本体132は、管状本体132の長さの少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%に沿って延びている不透過性の層142を有している。本発明によれば、管状本体132は少なくとも約170mmの軸線方向長さを有し、不透過性の層142は少なくとも約130mmの軸線方向長さを有している。不透過性層142は、好ましくは、下端部が、腎動脈から、内部腸骨動脈への直ぐ近位側の腸骨動脈の壁に到達できるのに充分な長さを有している。下端部140および上端部136の各々には非コーティングワイヤのセクションを設けることができ、これにより内皮化が容易になるが、当業者には理解できるため、この点の更なる説明は省略する。
【0043】
図4Aに示すように、上端部136の近傍での管状本体132の断面形状は前述のように半円形すなわちD型の形状を有している。グラフトの移植方向において、側壁142は、実質的に一定の曲率半径をもつ弧状の形状を有している。この曲率半径は、本発明の開示の観点から明らかなように、大動脈の予測内径と協働するように選択される。中央壁144は割線(セカント)すなわち直径の性質を有しかつ第2腸骨グラフトと容易に協働できる横方向寸法をもつ実質的な平面である。図3には第2腸骨グラフトが別に示されていないが、第2腸骨グラフトは図3に示すグラフトと鏡像関係をなすのが好ましい。
【0044】
グラフト130の断面形状は、その全軸線方向長さに亘って一定にすることができる。或いは、断面形状は、図4Bに示すように、実質的に円形の断面に移行させることができる。当業者ならば理解されようが、下端部140の近傍の管状本体132を円形または実質的に円形にすることにより、管状本体132と対応する腸骨動脈との間のシーリングが容易に行える。
【0045】
下端ゾーン124は、一般に少なくとも約15mmであり、好ましくは約5mmから約10mmの長さの範囲内にある。上端ゾーン122の長さは、一般に、少なくとも約25mm、好ましくは約15mmから約35mmの範囲内にある。
【0046】
透過性/内皮化層120は、定置カテーテルのトロンボン形成性、ポロシティおよび所望の断面プロファイル等の種々のファクタに基づいて、前述の種々の任意の材料で形成できる。本発明の一実施形態では、不透過性の層120は、約0.004インチを超えない壁厚を有するPTFEで形成される。ダクロンおよび他の種々の極薄材料を使用することもできる。
【0047】
本発明によれば、図2Cに示すように、第1および第2ステントグラフト1は、大動脈内で互いに支持されるように構成され、これにより、第1および第2ステントグラフトの各々が所定位置に維持されるように充分に相互拡大される。
【0048】
或いは、本発明によれば、第1および第2ステントグラフト1を更に支持するための付加構造を設けることができる。
【0049】
本発明はまた、腎動脈を拘束することなく、グラフトの上端部と大動脈の健常組織とのオーバーラップを最適化すべくグラフトのあつらえ(カスタマイゼーション)を行うことができる。これは、血流の方向に沿って評価した第1レベルで大動脈内に開口する第1腎動脈と、前記第1レベルより下方または下流側にある第2の異なるレベルで大動脈内に開口する第2腎動脈とを有する患者に望ましい。第1腸骨D型グラフトは、上端部が第2レベルより下に位置するように定置できる。第2腸骨グラフトは、上端部がより高いレベルで第1腎動脈の直ぐ下に位置し、第1腸骨グラフトの上端部から少なくとも約0.5cm、少なくとも約1.0cm、或る場合には少なくとも約2.0cmだけオフセットするように移植できる。
【0050】
本発明の方法および薬剤は、現在最も実用的で好ましい実施形態であると考えられるものに関して説明したが、本発明の開示は開示された実施形態に限定されるものではないことは理解すべきである。特許請求の範囲の精神および範囲内に包含される種々の変更および同様な実施形態をカバーするものであり、本発明の範囲は、このような全ての変更および同様な構造を包含すべく最も広く解釈すべきである。本発明の開示は、特許請求の範囲の記載の全ての実施形態を包含する。
【0051】
また、本発明の本質から逸脱することなく種々の変更を行い得ることも理解すべきである。また、このような変更は、本発明の説明に絶対的に包含される。これらは本発明の範囲内に包含される。本発明の開示は、本発明の多くの態様をカバーする特許を、方法および装置の両モードで行うものであると理解すべきである。
【0052】
更に、本発明および特許請求の範囲の記載の種々の要素の各々は、種々の態様で達成できる。本発明の開示は、それが、装置のあらゆる実施形態、方法またはプロセスの実施形態またはこれらのあらゆる要素の単なる変更であっても、このような各変更を含むものと理解すべきである。
【0053】
特に、本発明の要素に関する開示として、各要素の用語は、機能または結果のみが同じであっても、均等な装置の用語または方法の用語により表現できることを理解すべきである。
【0054】
このような均等で、より広くまたはより一般的な用語であっても、各要素または作用の説明に包含されるものと解釈すべきである。このような用語は、本発明が権利を有する絶対的に広い範囲を明白にするのに望まれる用語に置換できる。
【0055】
全ての作用は、この作用を行う手段としてまたは該作用を引き起こす要素として表現できることを理解すべきである。
【0056】
同様に、開示する各物理的要素は、該物理的要素が行う作用の開示を含むものと理解すべきである。
【0057】
本願に記載する全ての特許、公報または他の特許文献は、本願に援用する。また、使用される各用語に関し、本願での使用がこのような解釈と矛盾しなければ、一般的な辞書の定義は、各用語および全ての定義、他の用語および職人により認識されている標準技術辞書およびランダムハウス社のWebster’s Unabridged Dictionary (最新版)の少なくとも1つに含まれる同義語として取り入れられるものと理解すべきである。
【0058】
最後に、情報開示陳述に列挙された全ての参照文献または本願とともに提出された他の情報陳述は本願に添付されかつ本願に援用する。しかしながら、このような情報または援用された陳述はこの発明およびこれらの発明の特許とは相容れないと考えられ、出願人によりなされたものであるとは考えられない。
【0059】
この点に関し、実際の理由からおよび数百の特許請求の範囲の記載の付加を回避するには、出願人は最初の独立性のみをもつ特許請求の範囲を提出した。
【0060】
種々の従属性または他の独立した特許請求の範囲の記載または概念下での従属性または要素として1つの独立した特許請求の範囲の記載または概念の下で与えられる種々の従属性または他の要素のいずれかを付加することを可能にする新規事項の法律(米国特許法(35 USC)132条またはこのような法律に限定されない)の下で必要とされる限り、サポートが存在することを理解すべきである。
【0061】
実態のない代用がなされる限り、何らかの特定実施形態を文字通りに含むべく出願人が実際にいかなる特許請求の範囲の記載も書かない限り、かつその他の点で適用できる限り、出願人は、いかなる意味においても、全ての均等物を簡単には予期できていないときに、このような保護範囲を実際に放棄するものではないと理解すべきであり、当業者ならば、このような他の実施形態を文字通りに含んでいる特許請求の範囲の記載を書くことを理をもって期待すべきではない。
【0062】
また、過渡的フレーズ「・・・を有する(comprising)」の使用は、伝統的な特許請求の範囲の記載の解釈により、本願の「自由な(open-end)」特許請求の範囲の記載を維持するのに使用される。かくして、文脈がその他の点を必要としない限り、用語「妥協する(compromise)」または「・・・を有する(comprisesまたはcomprising)」等の変形用語は、記述した要素または段階、または要素または段階の群を含むことを意味するものであり、他のあらゆる要素または段階、または要素または段階の群を排除するものではない。
【0063】
このような用語は、出願人が法的に許容される最も広い保護を得られるように、最も広い態様で解釈すべきである。
【符号の説明】
【0064】
1 ステントグラフト
1aa D型ステントグラフト
1ab フレーム
1ac カバーリング
1ad 非カバー部分
1ae 遷移セクション
1ah 突起
1am マーカ
200、220 定置カテーテル
202 ノーズコーン
【技術分野】
【0001】
[発明の詳細な説明]
本願は、2009年5月14日付米国特許出願第第12/466,044号および2009年11月30日付米国特許出願第12/628,131号の優先権を主張する。尚、これらの各米国特許出願の全体は、本願に完全に開示されているかの如くに本願に援用する。
【0002】
本発明は、広くは、腹部大動脈瘤を治療するモジュラ・二管腔(bilumenal)エンドグラフトシステムに関する。より詳しくは、本発明は、特に、従来技術とは異なり13フレンチ(Fr)以下のプロファイルで配給可能な、最適方向に配置される経皮配置グラフトを用いて血管内修復を行うシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
大動脈は、身体の全ての動脈分枝に血液および酸素を配給する、人体で最大の動脈である。胸部大動脈の通常の直径は、管状上行部分で約3cm、下行胸部大動脈で2.5cmおよび腎下腹部大動脈で2cmである。大動脈の寸法は、身体表面積、年齢および性により異なり、一般に男性の大動脈寸法は女性より大きい。しかしながら、万人に受け入れられる機構または標準化された機構、または通常は手遅れになるまで大動脈打膿であるか否かを知る他の方法は全く存在しないので、サイズ範囲のこの設定は重要である。
【0004】
正常直径を超える大動脈の拡大は動脈瘤と呼ばれ、一般に、動脈壁の劣化および弱化を生じさせる。米国では、毎年17,000人以上が動脈瘤破裂で死亡する。破裂する前に動脈瘤が診断されるならば修復できるが、直径が5cmを超える大きさに達すると、破裂または死亡の事象が実際に確実なものとなる。
【0005】
動脈瘤を修復する優れた標準は、長い間、手術による修復であった。手術による修復では、大動脈の拡大部を切開し、合成樹脂(ダクロンまたはゴア−テックス)チューブのグラフトを挿入する。ひとたびチューブが大動脈の近位側部分および遠位側部分に縫合されると、動脈瘤嚢が人工チューブの周囲に巻かれ、縫合により閉じられる。一般に、有効な外科的修復は、術後7-10日の入院および数カ月の回復期間を要する。また、このアプローチでは、10%以上の死亡率が存在する。
【0006】
近年では、切開手術による修復の代わりに、最小侵襲手術として大動脈瘤の血管内治療が出現している。血管内手術では、合成樹脂グラフト(内部に金属フレームを備えたポリエステルまたはテフロン(登録商標)チューブからなるステントグラフト)がカテーテル内にパッケージされ、デバイスが、静脈切開を介し、脚の動脈を通して血流中に挿入される。カテーテルは、外科医がX線透視装置を用いて所望位置に案内される。ひとたび所定位置に配置されると、グラフトがカテーテルから解放されかつ動脈瘤嚢内で拡大される。ステントグラフトは大動脈の弱化セクションを補強して、患者の大動脈の一部となることによりまたは生体相容性のある同種グラフト構造となることにより、動脈瘤の破裂を防止する。金属フレームはスプリングのように拡大し、大動脈の壁に対してグラフトを確実に保持し、動脈瘤への血液の供給を遮断する。今や血液はステントグラフトを通って流れ、動脈瘤を隔絶する。一般に、管腔内動脈瘤治療はより優しいものであり、1-2日の入院および1-2週間の回復時間で済む。現在のデバイスは応諾試験が可能であり、10年より長い時間外投影寿命に等しい。ISO標準規格では今や、デバイスは、動脈圧力に耐えることができかつ長時間そうすることができる。
【0007】
過去10年間、多くの医療デバイス会社は、腹部大動脈瘤治療用エンドグラフトをマーケットに投入してきた。これらのエンドグラフトとして、Boston Scientific(登録商標)社、Edwards LifeSciences(登録商標)社、Medtronic(登録商標)社、Gore(登録商標)社、Cook(登録商標)社、Endologix(登録商標)社、Cordis(登録商標)社等によるデバイスがある。これらのデバイスは、固有の厚さを有しかつ本来の剛性を有する外科用材料から作られる。臨床的に有効であるが、これらのデバイスの嵩張る構造は、直径が20Fr以上のカテーテルを通して配給する必要があり、かつ導入すべき動脈に手術用切開を必要とする。切開アプローチは患者の回復時間およびしばしば手術用切開介入に伴う急性合併症を大幅に低減させるが、最終的目的およびマーケットの傾向は、エンドグラフトおよびデリバリシステムのプロファイルを小さくして、エンドグラフトを経皮配給できるようにし、これにより切開処置の必要を無くすことにある。この挑戦は、本発明の教示の出現以前に未だ達成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,676,697号明細書
【特許文献2】米国特許第6,383,193号明細書
【特許文献3】米国特許第5,316,023号明細書
【特許文献4】米国特許第5,078,726号明細書
【特許文献5】米国特許第5,928,279号明細書
【特許文献6】米国特許第5,897,587号明細書
【特許文献7】米国特許第6,001,125号明細書
【特許文献8】米国特許第6,004,348号明細書
【特許文献9】米国特許第6,517,571号明細書
【特許文献10】米国特許第6,786,920号明細書
【特許文献11】米国特許第6,981,982号明細書
【特許文献12】米国特許第6,808,533号明細書
【特許文献13】米国特許第6,790,225号明細書
【特許文献14】米国特許公報第2009/0182413号明細書
【特許文献15】米国特許公報第2009/0036973号明細書
【特許文献16】米国特許公報第2009/0036973号明細書
【特許文献17】米国特許公報第2008/0208325号明細書
【特許文献18】米国特許公報第2008/0114449号明細書
【特許文献19】米国特許公報第2004/0162604号明細書
【特許文献20】米国特許公報第2004/0054397号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
簡潔にいうならば、本発明のシステム、方法およびデバイスは、エンドグラフトバイパス技術を用いて血管内動脈瘤を排除することにより動脈瘤に対処しかつ改善するものである。改善された大動脈ステント組立体の経皮配置および使用は、例えば腹部大動脈瘤の治療のためにモジュラグラフトセクションを配置することを容易にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、12Fr以下の血管導入器を通して経皮供給されるシステムとの組合せからなり、大動脈内に配置できる第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトを更に有する動脈瘤治療用二股エンドグラフトデバイスにおいて、第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各ピースが、腎動脈の解剖学的に本来的に変えることができる方向に適合させるべく互いに上下方向に独立して調節できかつこれらの間に位置する管腔スペースにより形成される、シールされた通路を有効に形成でき、各エンドグラフトを通る流れを可能にして動脈瘤嚢内の圧力を緩和することを特徴とする二股エンドグラフトデバイスが開示される。
【0011】
本発明によれば、第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、管腔と、近位端と、遠位端とを有し、各エンドグラフトは更に、部分的にカバーされたフレキシブルな管状編み物ワイヤフレームを有し、該ワイヤフレームはほぼD型の断面をもつ近位端を備え、該近位端は大動脈の腎下部分内に円形グラフトを形成すべく第2D型グラフトに対して固定され、各エンドグラフトはほぼ円形の断面をもつ遠位端を備え、該遠位端は一方の腸骨動脈内に配置されかつ固定されるように構成されている。本発明によれば、第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、腎動脈の上方および下方で大動脈と係合することを意図した腎下大動脈ステントと、腎下ネックをシールしかつほぼD型形状をもつ2つのエンドグラフトを近位端で拘束すべく機能する腎動脈の下のカバーされたセグメントと、腸骨動脈内に配置するための遠位端の円形形状とを有している。
【0012】
本発明によれば、第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、非拘束状態で拡大したとき少なくとも約25mmの外径を有している。本発明によれば、第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、波型かつリブ付の織物材料のカバーを有している。カバーは、その近位端および遠位端が、第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々のフレームに固定されている。
【0013】
本発明によれば、少なくとも2つのエンドグラフトユニットとの組合せからなり、各エンドグラフトユニットが管腔と、近位端と、遠位端とを有しているモジュラエンドグラフトシステムにおいて、各エンドグラフトユニットは、フレキシブルな管状織物ワイヤフレームを有し、該ワイヤフレームは、ほぼD型の断面をもち大動脈の上方に固定される近位端と、ほぼ円形の断面をもち各腸骨動脈内に配置されかつ固定されるように構成された遠位端と、各エンドグラフトユニットと大動脈壁との間のシールと、エンドグラフトユニット同士の間のシールとを備えている構成のモジュラエンドグラフトシステムが開示される。
【0014】
モジュラエンドグラフトシステムは、12Fr以下の導入器プロファイルを通して導入できる。各エンドグラフトユニットは、少なくとも約45°以上の最適編み角を有する編まれたステント状デバイスである。モジュラエンドグラフトシステムは、伸長および縮小の長さに適合できる織物層を更に有している。モジュラエンドグラフトシステムは、グラフトが前進方向に移動することを可能にするサイズを有しかつ構成された突起を更に有し、該突起は、グラフトユニットが逆方向に移動するときに、グラフトユニットが配置された血管壁と係合する。モジュラエンドグラフトシステムは、各エンドグラフトユニットのイメージングおよび配置を容易にする、中隔角度が付されたX線撮影用マーカを更に有している。
【0015】
本発明によれば、12Fr以下の第1定置カテーテルを有し、該第1定置カテーテルは、第1腸骨動脈通路を通して大動脈瘤に配給されかつ第1ステントグラフトを収容しており、第1ステントグラフトは、該第1ステントグラフトに対して第1定置カテーテルを後退させることにより定置でき、12Fr以下の第2定置カテーテルを有し、該第2定置カテーテルは、第2腸骨動脈通路を通して大動脈瘤に配給されかつ第2ステントグラフトを収容しており、第2ステントグラフトは、該第2ステントグラフトに対して第2定置カテーテルを後退させることにより定置できることを特徴とする、第1定置カテーテルと第2定置カテーテルとの組合せからなる低プロファイルエンドグラフトデリバリシステムが開示される。
【0016】
第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、それぞれ、第1および第2ステントグラフトの近位側部分を選択的に収容するノーズコーンと、それぞれ、第1および第2ステントグラフトの遠位側部分を選択的に収容する管状本体とを有している。管状本体は、ノーズコーンが近位側部分を大動脈内で大動脈に対して所望位置に維持している間に、遠位側部分の少なくとも一部を定置すべく後退できる。第1および第2ステントグラフトの各々が、これらの定置後に、それぞれ第1および第2定置カテーテルの一方内で再捕捉される。第1ステントグラフトおよび第2ステントグラフトは、それぞれ第1定置カテーテルおよび第2定置カテーテルを操作することにより互いに独立して調節できる。
【0017】
本発明の他の目的および特徴は、添付図面を参照して述べる以下の詳細な説明から明らかになりかつ最も良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明の教示の特徴の概略図であり、本発明の実施形態による例示のD型グラフトの詳細構造を示すものである。
【図1B】本発明の実施形態による1対のD型グラフトを概略的に示す部分断面図である。
【図1C】本発明の実施形態による、非対称的に配置されたときでも自己シール性を有する2つのグラフトを示す図面である。
【図1D】本発明の実施形態による、係止突起を備えた1対のD型グラフトを示す斜視図である。
【図2A】本発明の実施形態による、腹部大動脈瘤治療システムを位置決めする手術段階を示す図面である。
【図2B】本発明の実施形態による、腹部大動脈瘤治療システムを位置決めする手術段階を示す図面である。
【図2C】本発明の実施形態による、腹部大動脈瘤治療システムを位置決めする手術段階を示す図面である。
【図3】本発明の実施形態による、第1腸骨セグメントを示す斜視図である。
【図4A】図3の4A-4A線に沿う断面図である
【図4B】図3の4B-4B線に沿う断面図である
【図5】本発明の実施形態による、組立てられた腹部大動脈瘤グラフトを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者は、経皮配置が行えるように工夫された、少なくとも約12Frの導入プロファイルを有するデバイスが、特に二股(少なくとも2つの分枝)に分かれかつモジュラとして組立てられる血管内グラフティングの技術分野における多くの問題を解決する。本願に特に援用される米国特許および米国特許公報として、上記特許文献1-20がある。
【0020】
以下に開示する本発明の実施形態は、特に、動脈瘤の治療または修復に使用するシステムに関する。以下の説明は種々の実施形態の特定細部について述べるが、説明は例示に過ぎず、いかなる意味においても本発明を限定するものではないと理解すべきである。また、当業者が想到し得る本発明の種々の適用および改変は、本願の詳細な説明および本発明の教示による占有権として特許請求される広い概念により包含されるものである。
【0021】
腹部大動脈瘤および胸部大動脈瘤を修復するシステムには多くの形態がある。一般的なシステムとして、動脈瘤の上方の健常組織内に配置される係止コンポーネントおよび/またはシーリングコンポーネントと、該係止コンポーネントおよび/またはシーリングコンポーネントと流体連通する1つ以上のグラフト(移植片)とがある。本質的に、グラフトは、動脈の一セクションから同じ動脈または異なる動脈の他のセクションへの流体流路を確立し、これにより動脈の病変部をバイパスするのに使用されるシステムのコンポーネンツである。本質的に、本発明の血管内グラフティングシステムは、モジュラシステムを形成する多数のコンポーネンツからなる。各実施形態の全構成範囲は多くのコンポーネンツからなるが、これらの形式のシステムに付随する課題として、プロファイル、フレキシビリティおよびアクセシビリティがある。
【0022】
ここで図1A-図1Dを参照すると、例示のD型エンドグラフトの種々の細部が示されている。また、図2A-図2Cには、本発明の独自のデリバリシステムおよび構造システムが例示されている。当業者ならば、これらの概略的例示が、1対のD型グラフト1(全図を通して示されている)に接触させるのに定置カテーテル21、22を用いて腹部大動脈瘤内にモジュラグラフトを構成する本発明の教示を示すものであることが理解されよう。かくして大動脈瘤38は架橋されて流路すなわち管腔を形成し、動脈瘤が収縮して必要な血流が流れ得るようにする。本発明のシステムは、動脈瘤打膿(aneurismal issues)を排除する大動脈の一部となるシステムの低プロファイルデリバリを可能にする。
【0023】
本発明によれば、ステントグラフトによる腹部大動脈瘤のEVAR(血管内動脈瘤修復:endovascular aneurysm repair)は、25mmまで拡大する低導入プロファイル(好ましくは12Fr以下)の特徴を有し、構造的支持体を形成しかつデバイスが撓んで曲がりくねった解剖学的血管構造に一致させることを可能にするフレームに取付けられる極薄グラフト材料から血管内的に構成された短い腎下ネックを治療できる。
【0024】
本発明の実施形態によれば、ステントグラフトの要素は少なくとも3つの層を有し、これらの層には、弾性材料または半剛性材料(例えば、金属、ニチノール(Nitinol:登録商標)のような形状記憶金属、プラスチック、形状記憶プラスチック、または他のフレキシブルな発泡材料)のスパイラルワイヤまたはレーザカットメッシュからなる中間層と、約0.0005インチの厚さを有する極薄不透過性発泡PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)テープからなる外側層と、0.004インチ以下の極薄で長手方向に延伸可能な発泡PTFEチューブおよび/またはポリエチレンテレフタレート(PET)(例えばダクロン(Dacron):登録商標)の第3の内側層とが含まれる。これらの層は、フレームの回りで熱的に溶融されるか接合されかつステントグラフト複合体の構成材料として機能する。本発明の実施形態では、PTFEは、液体または水に対して不透過性を有している。内側のPTFE層および外側のPTFE層は、血圧から動脈瘤を隔絶する材料を構成する複合体の充分な液密性を確保すべく機能する。或いは、グラフト材料は、0.004インチ以下の厚さを有する極薄の緻密に織られたポリエステル織物等の材料とすることができる。この材料は、近位端および遠位端で糸または接着剤によりフレームに固定されかつ長さに沿って襞(ひだ)が付され、グラフトが、収縮された状態のステントとともに長くなることを可能にし、かつ定置中にステントが短縮されると、収縮すなわち短縮することを可能にする。
【0025】
本発明の実施形態によれば、組合せることができる1組のD型グラフトの各々は、互いに向き合うように手で操作できる面(図1Aに示す)を有している。適合する面は、D型グラフトにおけるような平面である。当業者ならば、D型グラフトは、本発明の教示をサポートする任意の半球形を含むことを意味することが理解されよう。
【0026】
図1Aに示す実施形態によれば、2つのD型ステントグラフト1aaは、これらのグラフの2つの平らな面を互いに対面させすなわち互いに密着させると、円筒状のような管状外観を形成する。ステントグラフト1aaは、本願で更に説明するように、編みフレームを含むフレーム1abで形成できる。この実施形態によれば、ステントグラフト1aaのフレーム1abの各々には、フレーム1abの内面または外面上にカバーリングを設けることにより、カバー部分を設けることができる。カバーリング1acは、スリーブ、シースまたは他の構造物で形成できる。カバーリング1acは、ポリエステル織物材料(例えばダクロン)、生体適合性ポリマー(例えばPTFE等)、または織物形態をなす実質的に耐水性のあるマイクロファイバ等の他の適当な材料で形成できる。カバーリング1acは、遷移セクション1aeで、フレーム1abに固定できる。固定には、縫合、ステープリング、接着、接合等の固定手段がある。遷移セクション1acは、D型グラフトが腎動脈内への血流をもたらす非カバー部分1adが形成されるように、ステントグラフトの近位端1alより下に設けられる。非カバー部分1adは、対応する各腎動脈に独立的に整合される。別の構成として、遷移セクション1aeは、非カバー部分1adが全く存在しないように(図示せず)、ステントグラフト1aaの近位端1alに設けることもできる。したがって、ステントグラフト1aaは、近位端1alが腎動脈より下に位置して該近位端が少なくとも実質的に露出された状態になるように、腎動脈に対して整合される。これと同じ原理およびオプションをステントグラフトの反対側端部にも採用して、例えば腸骨動脈内に血液が流入するように構成することができる。
【0027】
他の実施形態では、D型グラフトの近位側部分の回りに適当な間隔を隔てて、突起1ahが配置されており、これにより突起1ahは半径方向外側を向いて定置され、大動脈でのグラフトを、腎上位置または腎下位置またはこれらの両位置に係止する(図1Bおよび図1D)。一実施形態では、突起は、一般に、グラフトを前進方向には殆ど抵抗なく移動させることができるのに対し、グラフトが逆方向に移動し始めるときは大動脈内に係合できるサイズを有しかつ構成されている。他の実施形態では、突起はばね特性をもつように構成されており、このため、グラフトがシースから定置されるときは外方に延びる(例えばスプリングアウトする)。更に別の実施形態では、高温食塩水または他の電気的、化学的または生物学的手段により閾高温で付勢されるように、突起が形状記憶材料または感温材料から作られる。更に別の実施形態では、グラフトは、接触表面の一部が互いに組み合わされて非対称的に配置されるときでも(図1C参照)、自己シーリング性または自己組合わせ性を有するように構成される。グラフトは、図1Cに示すように、2つの点1ai、1ajの間の領域に緊密シールを形成する1対の成形チューブグラフトまたは半径方向に拡大可能な他のグラフトで構成される。緊密シール領域は、グラフトの近位端の周囲または近位端に対し遠位側の近傍に設けられる。グラフトは、グラフトをシールしかつ血液の漏洩(内部漏洩)を防止すべく、動脈壁に密着するようにオーバーサイズに形成できる。
【0028】
本発明によれば、ステントグラフトの各D型部分1の遠位側セグメントには、グラフト材料でカバーされていない長さ約25mmの裸セグメントが設けられている(図1A参照)。このセグメントは、突起1ahによる上腎固定が行えるように腎動脈を横切って配置される。ステント内での非カバーセグメントは、腎動脈内への血流を可能にする(図2C参照)。本発明によれば、ステントグラフト1は、該グラフト1が腎動脈にオーバーラップしないように(例えば、ステントグラフト1の全長がカバーされるように)配置される。
【0029】
本発明によるモジュラ腹部大動脈瘤グラフトの組立てを、図2A-図2Cを参照して以下に説明する。図2Aを参照すると、ここには、同側腸骨動脈152および反対側腸骨動脈154への大動脈の二股部での動脈瘤38を含む解剖学的血管の一部が概略的に示されている。第1腎動脈156および第2腎動脈158も示されているが、簡単化のため他の動脈は省略されている。図2Aの解剖学的構造は高度に概略化したものであり、大動脈の長手方向軸線および大動脈瘤38の形状および位置に対する腎動脈および腸骨動脈の角度的関係および出発点は、患者毎にかなり異なっている。
【0030】
図2Aに示すように、定置カテーテル200、220は、ここでは詳細に説明しない慣用技術を用いて配置される。一般に、約0.025-約0.035の範囲内の外径を有するガイドワイヤが、大腿動脈のような血管系内に経皮挿入される。ガイドワイヤは対応腸骨動脈を通り、大動脈に向かって前進され、かつ腎動脈のレベルまたはこれより高いレベルへと前進される。その後、定置カテーテル200または220は、ワイヤ上で、図2Aに示す位置に前進される。
【0031】
定置カテーテル200は、近位端を備えた細長いフレキシブルな管状本体204を有している。細長いフレキシブルな支持チューブ166が、ノーズコーンまたは他の鈍チップ202を支持する管状本体204を通って軸線方向に延びている。パートライン206がノーズコーン202と管状本体204とを分離しており、かつ1つ以上の放射線不透過性マーカがノーズコーン202、管状本体204および支持チューブ166の1つ以上により支持し、所望定置部位へのX線透視ガイド下でのナビゲーションを容易にする。一般に、定置カテーテル200は、パートライン206が腎動脈の僅かに上部近くに位置決めされるようにして、ほぼ図2Aに示す位置まで経皮導入されかつ血管を通して前進される。
【0032】
図2Aに示すように、同側腸骨動脈D型グラフト定置カテーテル200は、大腿動脈等を介して導入されかつ反対側腸骨動脈152を通して血管内を前進される。
【0033】
図2Bに示すように、定置カテーテル200は管状本体204が支持チューブ166に対して遠位側に後退されるように操作される。これにより、ノーズコーン202をその初期位置に保持できると同時に、管状本体204の近位端は、近位側に後退され、図示のように、パートライン206でカテーテルを開放する。
【0034】
ステントグラフト1は、管状本体204の遠位端内で半径方向に圧縮されかつ拘束されている。支持チューブ166に対して管状本体204を軸線方向近位側に後退させることにより、ステントグラフト1が徐々に露出される。ステントグラフト1は、大動脈の壁により加えられる更なる拡大に対する抵抗に遭遇するまで、その固有の押圧力の下で半径方向外方に拡大する。ステントグラフト1の完全定置前に、ステントグラフト1は、カテーテル200により再捕捉され、必要ならば、その遠位端が所望通りに(最も近い腎動脈の上方、下方または横切って)位置決めされるようにかつ大動脈の健常ネック内の動脈瘤の上方に位置決めされるように再位置決めされる。D型セグメントが定置されると、D型セグメントが整合されるようにカテーテルが回転される。管状本体204の近位側への後退は、図2Cに示すように、ステントグラフト1が定置カテーテル200から完全に定置されかつ大動脈内に係止されるまで続けられる。その後、管状本体204は、支持チューブ166に沿って軸線方向遠位側に前進され、ノーズコーン202の近位端に接触するまで戻され、滑らかな外面(図示せず)が形成される。その後、定置カテーテル200は、ガイドワイヤを所定位置に残して患者から近位側に後退される。
【0035】
同様に、反対側の大腿動脈へのアクセスも行われ、ガイドワイヤが反対側の大腿動脈および腸骨動脈通路154を通って前進される。その後、反対側の腸骨動脈グラフト定置カテーテル22が血管内でワイヤ上を前進され、図2Aに概略的に示す位置を占める。細長いフレキシブル支持チューブ167に対して外側の管状スリーブ222を近位側に後退させると、反対側の腸骨動脈のD型グラフト1が露出される。該D型グラフト1は半径方向外方に拡大して、最初に定置されたD型グラフトおよび下端部の反対側腸骨動脈壁をシールする。その後、図2Cに示すように組立てられた腹部大動脈瘤グラフト構造を残し、反対側のグラフト定置カテーテル220が遠位側に引出される。
【0036】
本発明によれば、2つのステントグラフト1の各々が同時にまたは連続的に定置される。一方または両方のステントグラフトの相互の調節が望まれるときは、再捕捉が行われる。
【0037】
本発明によれば、ノーズコーン202、204は、これらの定置が望まれるまで、各ステントグラフト1の近位端上に維持される。これらのノーズコーンの作動は、細長いフレキシブル支持チューブ166、167を介して行われる。これらの支持チューブ166、167の各々はそれぞれノーズコーン202、224に連結されており、使用者が、ステントグラフト1に対してノーズコーン202、224を制御可能に移動させることを可能にする。或いは、ノーズコーン202、224は、最初に近位端を露出させるため再移動させることができる。
【0038】
本発明によれば、グラフトの2つの平らな面が互いに対面するとき(図2C参照)、例えばD型近位端および丸い遠位端を備えた2つの独立ステントグラフト1(図3)が使用されて血管内グラフトを形成する。作動に際し、各D型グラフトは、第1D型グラフトが第2D型グラフトに対して組合された態様で正確に定置されるようにデリバリ装置のシース内に装填される。本発明によれば、グラフトは、左右対称(バイラテラル)シースを通して大動脈内に挿入されかつ同時に定置される(図2Bおよび図2C参照)。
【0039】
本発明によれば、グラフトは、平坦面を互いに整合させかつ組合わせるべく回転される。D型の平坦面には、プラチナワイヤまたは他の放射線不透過性材料から作られる放射線不透過性マーカ1am(図1D参照)を設けることができる。マーカは、各D型部分に対して或る角度で配置され、1対が整合されると文字「X」として視認されるように構成できる。換言すれば、X線透視装置で見たとき、D型が適正に消去されると各マーカ1amは前記文字「X」の1/2を形成して、2つのグラフトのマーカが平行に整合する。
【0040】
D型グラフト1は、各腎動脈領域の治療を分離することにより、腎上EVARおよび腎下EVARの非カスタム方法を可能にする。グラフトの位置は、変化する解剖学的構造に適合させる腎臓口の高さまで上方または下方に独立的に調節できる。完全なEVARは、所望の場合には、直径(近位端および遠位端)、長さおよび腎臓口について2つのみのコンポーネンツにより遂行できる。
【0041】
本発明の実施形態によれば、本発明のD型ステントグラフト1は、グラフトの2つの平坦面が、図2Cに示すように、グラフトの2つの平坦面が互いに対面するように配置されまたは互いに密着するように組合わされるときに、円筒状のような管状の外観を呈する。本発明では、グラフトは、編まれたニチノール(登録商標)のワイヤステントフレームを包む、ポロシティが極小またはゼロのPTFEで形成される。PTFEは、フレームを包むため層状化および焼結されかつ編まれたフレームが圧縮されかつデリバリカテーテル内に挿入されたときに伸びることができるように熱処理される。他の実施形態では、グラフトは、上記および特許請求の範囲に記載の選択された外面の内皮化(endothelialization)を促進する波型/リブ付ポリエステル織物材料(例えばダクロン)または他の適当な材料から形成される。本発明によれば、D型グラフトは、腎動脈内への血流のための開口(編み物のセルを通る開口)を有し、これらの開口は、当業者に知られているように、移植の前に形成されるか、D型グラフトが現場で配置された後にワイヤピアスにより形成され、その後に任意であるがバルーンの膨張を行う。
【0042】
図3を参照すると、ここには、本発明によるD型グラフトの移植が示されている。グラフト130は、上端部136の上部開口134と下端部140の下部開口138との間で延びている細長いフレキシブル管状本体132を有している。管状本体132は、前述のように、ニチノール(登録商標)ワイヤのようなワイヤまたはフィラメントの編み物または織物で形成できる。好ましくは、管状本体132は、管状本体132の長さの少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%に沿って延びている不透過性の層142を有している。本発明によれば、管状本体132は少なくとも約170mmの軸線方向長さを有し、不透過性の層142は少なくとも約130mmの軸線方向長さを有している。不透過性層142は、好ましくは、下端部が、腎動脈から、内部腸骨動脈への直ぐ近位側の腸骨動脈の壁に到達できるのに充分な長さを有している。下端部140および上端部136の各々には非コーティングワイヤのセクションを設けることができ、これにより内皮化が容易になるが、当業者には理解できるため、この点の更なる説明は省略する。
【0043】
図4Aに示すように、上端部136の近傍での管状本体132の断面形状は前述のように半円形すなわちD型の形状を有している。グラフトの移植方向において、側壁142は、実質的に一定の曲率半径をもつ弧状の形状を有している。この曲率半径は、本発明の開示の観点から明らかなように、大動脈の予測内径と協働するように選択される。中央壁144は割線(セカント)すなわち直径の性質を有しかつ第2腸骨グラフトと容易に協働できる横方向寸法をもつ実質的な平面である。図3には第2腸骨グラフトが別に示されていないが、第2腸骨グラフトは図3に示すグラフトと鏡像関係をなすのが好ましい。
【0044】
グラフト130の断面形状は、その全軸線方向長さに亘って一定にすることができる。或いは、断面形状は、図4Bに示すように、実質的に円形の断面に移行させることができる。当業者ならば理解されようが、下端部140の近傍の管状本体132を円形または実質的に円形にすることにより、管状本体132と対応する腸骨動脈との間のシーリングが容易に行える。
【0045】
下端ゾーン124は、一般に少なくとも約15mmであり、好ましくは約5mmから約10mmの長さの範囲内にある。上端ゾーン122の長さは、一般に、少なくとも約25mm、好ましくは約15mmから約35mmの範囲内にある。
【0046】
透過性/内皮化層120は、定置カテーテルのトロンボン形成性、ポロシティおよび所望の断面プロファイル等の種々のファクタに基づいて、前述の種々の任意の材料で形成できる。本発明の一実施形態では、不透過性の層120は、約0.004インチを超えない壁厚を有するPTFEで形成される。ダクロンおよび他の種々の極薄材料を使用することもできる。
【0047】
本発明によれば、図2Cに示すように、第1および第2ステントグラフト1は、大動脈内で互いに支持されるように構成され、これにより、第1および第2ステントグラフトの各々が所定位置に維持されるように充分に相互拡大される。
【0048】
或いは、本発明によれば、第1および第2ステントグラフト1を更に支持するための付加構造を設けることができる。
【0049】
本発明はまた、腎動脈を拘束することなく、グラフトの上端部と大動脈の健常組織とのオーバーラップを最適化すべくグラフトのあつらえ(カスタマイゼーション)を行うことができる。これは、血流の方向に沿って評価した第1レベルで大動脈内に開口する第1腎動脈と、前記第1レベルより下方または下流側にある第2の異なるレベルで大動脈内に開口する第2腎動脈とを有する患者に望ましい。第1腸骨D型グラフトは、上端部が第2レベルより下に位置するように定置できる。第2腸骨グラフトは、上端部がより高いレベルで第1腎動脈の直ぐ下に位置し、第1腸骨グラフトの上端部から少なくとも約0.5cm、少なくとも約1.0cm、或る場合には少なくとも約2.0cmだけオフセットするように移植できる。
【0050】
本発明の方法および薬剤は、現在最も実用的で好ましい実施形態であると考えられるものに関して説明したが、本発明の開示は開示された実施形態に限定されるものではないことは理解すべきである。特許請求の範囲の精神および範囲内に包含される種々の変更および同様な実施形態をカバーするものであり、本発明の範囲は、このような全ての変更および同様な構造を包含すべく最も広く解釈すべきである。本発明の開示は、特許請求の範囲の記載の全ての実施形態を包含する。
【0051】
また、本発明の本質から逸脱することなく種々の変更を行い得ることも理解すべきである。また、このような変更は、本発明の説明に絶対的に包含される。これらは本発明の範囲内に包含される。本発明の開示は、本発明の多くの態様をカバーする特許を、方法および装置の両モードで行うものであると理解すべきである。
【0052】
更に、本発明および特許請求の範囲の記載の種々の要素の各々は、種々の態様で達成できる。本発明の開示は、それが、装置のあらゆる実施形態、方法またはプロセスの実施形態またはこれらのあらゆる要素の単なる変更であっても、このような各変更を含むものと理解すべきである。
【0053】
特に、本発明の要素に関する開示として、各要素の用語は、機能または結果のみが同じであっても、均等な装置の用語または方法の用語により表現できることを理解すべきである。
【0054】
このような均等で、より広くまたはより一般的な用語であっても、各要素または作用の説明に包含されるものと解釈すべきである。このような用語は、本発明が権利を有する絶対的に広い範囲を明白にするのに望まれる用語に置換できる。
【0055】
全ての作用は、この作用を行う手段としてまたは該作用を引き起こす要素として表現できることを理解すべきである。
【0056】
同様に、開示する各物理的要素は、該物理的要素が行う作用の開示を含むものと理解すべきである。
【0057】
本願に記載する全ての特許、公報または他の特許文献は、本願に援用する。また、使用される各用語に関し、本願での使用がこのような解釈と矛盾しなければ、一般的な辞書の定義は、各用語および全ての定義、他の用語および職人により認識されている標準技術辞書およびランダムハウス社のWebster’s Unabridged Dictionary (最新版)の少なくとも1つに含まれる同義語として取り入れられるものと理解すべきである。
【0058】
最後に、情報開示陳述に列挙された全ての参照文献または本願とともに提出された他の情報陳述は本願に添付されかつ本願に援用する。しかしながら、このような情報または援用された陳述はこの発明およびこれらの発明の特許とは相容れないと考えられ、出願人によりなされたものであるとは考えられない。
【0059】
この点に関し、実際の理由からおよび数百の特許請求の範囲の記載の付加を回避するには、出願人は最初の独立性のみをもつ特許請求の範囲を提出した。
【0060】
種々の従属性または他の独立した特許請求の範囲の記載または概念下での従属性または要素として1つの独立した特許請求の範囲の記載または概念の下で与えられる種々の従属性または他の要素のいずれかを付加することを可能にする新規事項の法律(米国特許法(35 USC)132条またはこのような法律に限定されない)の下で必要とされる限り、サポートが存在することを理解すべきである。
【0061】
実態のない代用がなされる限り、何らかの特定実施形態を文字通りに含むべく出願人が実際にいかなる特許請求の範囲の記載も書かない限り、かつその他の点で適用できる限り、出願人は、いかなる意味においても、全ての均等物を簡単には予期できていないときに、このような保護範囲を実際に放棄するものではないと理解すべきであり、当業者ならば、このような他の実施形態を文字通りに含んでいる特許請求の範囲の記載を書くことを理をもって期待すべきではない。
【0062】
また、過渡的フレーズ「・・・を有する(comprising)」の使用は、伝統的な特許請求の範囲の記載の解釈により、本願の「自由な(open-end)」特許請求の範囲の記載を維持するのに使用される。かくして、文脈がその他の点を必要としない限り、用語「妥協する(compromise)」または「・・・を有する(comprisesまたはcomprising)」等の変形用語は、記述した要素または段階、または要素または段階の群を含むことを意味するものであり、他のあらゆる要素または段階、または要素または段階の群を排除するものではない。
【0063】
このような用語は、出願人が法的に許容される最も広い保護を得られるように、最も広い態様で解釈すべきである。
【符号の説明】
【0064】
1 ステントグラフト
1aa D型ステントグラフト
1ab フレーム
1ac カバーリング
1ad 非カバー部分
1ae 遷移セクション
1ah 突起
1am マーカ
200、220 定置カテーテル
202 ノーズコーン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
12Fr以下の血管導入器を通して経皮供給されるシステムとの組合せからなり、大動脈内に配置できる第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトを更に有する動脈瘤治療用二股エンドグラフトデバイスにおいて、第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各ピースが、腎動脈の解剖学的に本来的に変動する方向に適合させるべく互いに上下方向に独立して調節できかつこれらの間に位置する管腔スペースにより形成される、シールされた通路を有効に形成でき、各エンドグラフトを通る流れを可能にして動脈瘤嚢内の圧力を緩和することを特徴とする二股エンドグラフトデバイス。
【請求項2】
第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、管腔と、近位端と、遠位端とを有し、各エンドグラフトは更に、部分的にカバーされたフレキシブルな管状編み物ワイヤフレームを有し、該ワイヤフレームはほぼD型の断面をもつ近位端を備え、該近位端は大動脈の腎下部分内に円形グラフトを形成すべく第2D型グラフトに対して固定され、各エンドグラフトはほぼ円形の断面をもつ遠位端を備え、該遠位端は一方の腸骨動脈内に配置されかつ固定されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の二股エンドグラフトデバイス。
【請求項3】
第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、腎動脈の上方および下方で大動脈と係合することを意図した腎下大動脈ステントと、腎下ネックをシールしかつほぼD型形状をもつ2つのエンドグラフトを近位端で拘束すべく機能する腎動脈の下のカバーされたセグメントと、腸骨動脈内に配置するための遠位端の円形形状とを有していることを特徴とする請求項1記載の二股エンドグラフトデバイス。
【請求項4】
第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、非拘束状態で拡大したとき少なくとも約25mmの外径を有していることを特徴とする請求項1記載の二股エンドグラフトデバイス。
【請求項5】
第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、波型かつリブ付の織物材料のカバーを有していることを特徴とする請求項1記載の二股エンドグラフトデバイス。
【請求項6】
カバーは、その近位端および遠位端が、第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々のフレームに固定されていることを特徴とする請求項5記載の二股エンドグラフトデバイス。
【請求項7】
少なくとも2つのエンドグラフトユニットの組合せからなり、各エンドグラフトユニットが管腔と、近位端と、遠位端とを有しているモジュラエンドグラフトシステムにおいて、各エンドグラフトユニットは、フレキシブルな管状織物ワイヤフレームを有し、該ワイヤフレームは、ほぼD型の断面をもち大動脈の上方に固定される近位端と、ほぼ円形の断面をもち各腸骨動脈内に配置されかつ固定されるように構成された遠位端と、各エンドグラフトユニットと大動脈壁との間のシールと、エンドグラフトユニット同士の間のシールとを備えていることを特徴とするモジュラエンドグラフトシステム。
【請求項8】
12Fr以下の導入器プロファイルを通して導入できることを特徴とする請求項7記載のモジュラエンドグラフトシステム。
【請求項9】
各エンドグラフトユニットは、少なくとも約45°以上の最適編み角を有する編まれたステント状デバイスであることを特徴とする請求項7記載のモジュラエンドグラフトシステム。
【請求項10】
伸長および縮小の長さに適合できる織物層を更に有することを特徴とする請求項7記載のモジュラエンドグラフトシステム。
【請求項11】
グラフトが前進方向に移動することを可能にするサイズを有しかつ構成された突起を更に有し、該突起は、グラフトユニットが逆方向に移動するときに、グラフトユニットが配置された血管壁と係合することを特徴とする請求項7記載のモジュラエンドグラフトシステム。
【請求項12】
各エンドグラフトユニットのイメージングおよび配置を容易にする、中隔角度が付されたX線撮影用マーカを更に有することを特徴とする請求項7記載のモジュラエンドグラフトシステム。
【請求項13】
12Fr以下の第1定置カテーテルを有し、該第1定置カテーテルは、第1腸骨動脈通路を通して大動脈瘤に配給されかつ第1ステントグラフトを収容しており、第1ステントグラフトは、該第1ステントグラフトに対して第1定置カテーテルを後退させることにより定置でき、
12Fr以下の第2定置カテーテルを有し、該第2定置カテーテルは、第2腸骨動脈通路を通して大動脈瘤に配給されかつ第2ステントグラフトを収容しており、第2ステントグラフトは、該第2ステントグラフトに対して第2定置カテーテルを後退させることにより定置できることを特徴とする、第1定置カテーテルと第2定置カテーテルとの組合せからなる低プロファイルエンドグラフトデリバリシステム。
【請求項14】
第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、それぞれ、第1および第2ステントグラフトの近位側部分を選択的に収容するノーズコーンと、それぞれ、第1および第2ステントグラフトの遠位側部分を選択的に収容する管状本体とを有していることを特徴とする請求項13記載の低プロファイルエンドグラフトデリバリシステム。
【請求項15】
管状本体は、ノーズコーンが近位側部分を大動脈内で大動脈に対して所望位置に維持している間に、遠位側部分の少なくとも一部を定置すべく後退できることを特徴とする請求項14記載の低プロファイルエンドグラフトデリバリシステム。
【請求項16】
第1および第2ステントグラフトの各々が、これらの定置後に、それぞれ第1および第2定置カテーテルの一方内で再捕捉されることを特徴とする請求項13記載の低プロファイルエンドグラフトデリバリシステム。
【請求項17】
第1ステントグラフトおよび第2ステントグラフトは、それぞれ第1定置カテーテルおよび第2定置カテーテルを操作することにより互いに独立して調節できることを特徴とする請求項13記載の低プロファイルエンドグラフトデリバリシステム。
【請求項18】
大動脈瘤を取扱うエンドグラフトシステムにおいて、
13フレンチ以下のプロファイルを有するデリバリシステムと、動脈瘤を通る流路を形成すべくシールする独立して調節可能な半球形エンドグラフトユニットとを有することを特徴とするエンドグラフトシステム。
【請求項19】
1対のそれぞれの半球形エンドグラフトユニットが、フレキシブルな管状織物ワイヤフレームを更に有し、該ワイヤフレームがこれらをカバー」するスリーブを備え、半球形エンドグラフトユニットが、使用時に、腎動脈の上方から腸骨動脈の二股組内への流れが腎動脈の流れを阻止することなく修復されるように配置されることを特徴とする大動脈エンドグラフトシステム。
【請求項20】
PTFE、ダクロン(登録商標)および関連する生体相容性材料の群から選択される少なくとも1つの材料を更に有することを特徴とする請求項19記載の大動脈エンドグラフトシステム。
【請求項1】
12Fr以下の血管導入器を通して経皮供給されるシステムとの組合せからなり、大動脈内に配置できる第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトを更に有する動脈瘤治療用二股エンドグラフトデバイスにおいて、第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各ピースが、腎動脈の解剖学的に本来的に変動する方向に適合させるべく互いに上下方向に独立して調節できかつこれらの間に位置する管腔スペースにより形成される、シールされた通路を有効に形成でき、各エンドグラフトを通る流れを可能にして動脈瘤嚢内の圧力を緩和することを特徴とする二股エンドグラフトデバイス。
【請求項2】
第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、管腔と、近位端と、遠位端とを有し、各エンドグラフトは更に、部分的にカバーされたフレキシブルな管状編み物ワイヤフレームを有し、該ワイヤフレームはほぼD型の断面をもつ近位端を備え、該近位端は大動脈の腎下部分内に円形グラフトを形成すべく第2D型グラフトに対して固定され、各エンドグラフトはほぼ円形の断面をもつ遠位端を備え、該遠位端は一方の腸骨動脈内に配置されかつ固定されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の二股エンドグラフトデバイス。
【請求項3】
第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、腎動脈の上方および下方で大動脈と係合することを意図した腎下大動脈ステントと、腎下ネックをシールしかつほぼD型形状をもつ2つのエンドグラフトを近位端で拘束すべく機能する腎動脈の下のカバーされたセグメントと、腸骨動脈内に配置するための遠位端の円形形状とを有していることを特徴とする請求項1記載の二股エンドグラフトデバイス。
【請求項4】
第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、非拘束状態で拡大したとき少なくとも約25mmの外径を有していることを特徴とする請求項1記載の二股エンドグラフトデバイス。
【請求項5】
第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、波型かつリブ付の織物材料のカバーを有していることを特徴とする請求項1記載の二股エンドグラフトデバイス。
【請求項6】
カバーは、その近位端および遠位端が、第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々のフレームに固定されていることを特徴とする請求項5記載の二股エンドグラフトデバイス。
【請求項7】
少なくとも2つのエンドグラフトユニットの組合せからなり、各エンドグラフトユニットが管腔と、近位端と、遠位端とを有しているモジュラエンドグラフトシステムにおいて、各エンドグラフトユニットは、フレキシブルな管状織物ワイヤフレームを有し、該ワイヤフレームは、ほぼD型の断面をもち大動脈の上方に固定される近位端と、ほぼ円形の断面をもち各腸骨動脈内に配置されかつ固定されるように構成された遠位端と、各エンドグラフトユニットと大動脈壁との間のシールと、エンドグラフトユニット同士の間のシールとを備えていることを特徴とするモジュラエンドグラフトシステム。
【請求項8】
12Fr以下の導入器プロファイルを通して導入できることを特徴とする請求項7記載のモジュラエンドグラフトシステム。
【請求項9】
各エンドグラフトユニットは、少なくとも約45°以上の最適編み角を有する編まれたステント状デバイスであることを特徴とする請求項7記載のモジュラエンドグラフトシステム。
【請求項10】
伸長および縮小の長さに適合できる織物層を更に有することを特徴とする請求項7記載のモジュラエンドグラフトシステム。
【請求項11】
グラフトが前進方向に移動することを可能にするサイズを有しかつ構成された突起を更に有し、該突起は、グラフトユニットが逆方向に移動するときに、グラフトユニットが配置された血管壁と係合することを特徴とする請求項7記載のモジュラエンドグラフトシステム。
【請求項12】
各エンドグラフトユニットのイメージングおよび配置を容易にする、中隔角度が付されたX線撮影用マーカを更に有することを特徴とする請求項7記載のモジュラエンドグラフトシステム。
【請求項13】
12Fr以下の第1定置カテーテルを有し、該第1定置カテーテルは、第1腸骨動脈通路を通して大動脈瘤に配給されかつ第1ステントグラフトを収容しており、第1ステントグラフトは、該第1ステントグラフトに対して第1定置カテーテルを後退させることにより定置でき、
12Fr以下の第2定置カテーテルを有し、該第2定置カテーテルは、第2腸骨動脈通路を通して大動脈瘤に配給されかつ第2ステントグラフトを収容しており、第2ステントグラフトは、該第2ステントグラフトに対して第2定置カテーテルを後退させることにより定置できることを特徴とする、第1定置カテーテルと第2定置カテーテルとの組合せからなる低プロファイルエンドグラフトデリバリシステム。
【請求項14】
第1エンドグラフトおよび第2エンドグラフトの各々が、それぞれ、第1および第2ステントグラフトの近位側部分を選択的に収容するノーズコーンと、それぞれ、第1および第2ステントグラフトの遠位側部分を選択的に収容する管状本体とを有していることを特徴とする請求項13記載の低プロファイルエンドグラフトデリバリシステム。
【請求項15】
管状本体は、ノーズコーンが近位側部分を大動脈内で大動脈に対して所望位置に維持している間に、遠位側部分の少なくとも一部を定置すべく後退できることを特徴とする請求項14記載の低プロファイルエンドグラフトデリバリシステム。
【請求項16】
第1および第2ステントグラフトの各々が、これらの定置後に、それぞれ第1および第2定置カテーテルの一方内で再捕捉されることを特徴とする請求項13記載の低プロファイルエンドグラフトデリバリシステム。
【請求項17】
第1ステントグラフトおよび第2ステントグラフトは、それぞれ第1定置カテーテルおよび第2定置カテーテルを操作することにより互いに独立して調節できることを特徴とする請求項13記載の低プロファイルエンドグラフトデリバリシステム。
【請求項18】
大動脈瘤を取扱うエンドグラフトシステムにおいて、
13フレンチ以下のプロファイルを有するデリバリシステムと、動脈瘤を通る流路を形成すべくシールする独立して調節可能な半球形エンドグラフトユニットとを有することを特徴とするエンドグラフトシステム。
【請求項19】
1対のそれぞれの半球形エンドグラフトユニットが、フレキシブルな管状織物ワイヤフレームを更に有し、該ワイヤフレームがこれらをカバー」するスリーブを備え、半球形エンドグラフトユニットが、使用時に、腎動脈の上方から腸骨動脈の二股組内への流れが腎動脈の流れを阻止することなく修復されるように配置されることを特徴とする大動脈エンドグラフトシステム。
【請求項20】
PTFE、ダクロン(登録商標)および関連する生体相容性材料の群から選択される少なくとも1つの材料を更に有することを特徴とする請求項19記載の大動脈エンドグラフトシステム。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【公表番号】特表2012−526641(P2012−526641A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511058(P2012−511058)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/035003
【国際公開番号】WO2010/132836
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(510302205)アルツラ メディカル インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/035003
【国際公開番号】WO2010/132836
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(510302205)アルツラ メディカル インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】
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