説明

低出力レーザ光を使用する眼内照明

眼科手術システムは、レーザ治療モードと照明モードとを有するレーザ光源を含む。レーザ治療モードは第1の出力を有し、照明モードは、第1の出力よりも小さい第2の出力を有する。また、眼科手術コンソールは、照明モードにおいてレーザ光源を光ガイドに光学的に結合するように使用可能な合焦光学素子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によって本明細書の一部を構成する、2009年6月10日出願の米国仮特許出願第61/185,756号および2010年4月7日出願の米国非仮特許出願第12/755,479号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、眼科手術で使用される照明器に関し、特に、眼の内部を照明するのに適した光を生成する眼内照明器に関する。
【背景技術】
【0003】
解剖学的には、眼は、前房と後房という2つの別個の部分に分けられる。前房は、水晶体を含み、角膜(角膜内皮)のもっとも外側の層から水晶体嚢の後方に延びる。後房は水晶体嚢の背後の眼の部分を含む。後房は、前房の硝子体面から網膜に延び、網膜と硝子体の後方の硝子体面と直接接触している。後房は前房よりもはるかに大きい。
【0004】
後房は硝子体を含むが、これは無色透明のゲル状の物質である。硝子体は、眼の体積のおよそ3分の2を占め、出生前に眼を形成している。硝子体は1%のコラーゲンおよびヒアルロン酸ナトリウムと99%の水から構成されている。硝子体の前方境界は前方硝子体面であって、これは水晶体の後嚢に接触しており、後方硝子体面は、その後方境界を形成しており、網膜に接触している。硝子体は、房水のように流動性を有さず、通常の解剖学的付着部位を有する。こうした部位の1つは硝子体基底部であるが、これは鋸状縁の上に重なる3〜4mm幅の帯である。視神経乳頭、黄斑、および血管アーケードも付着部位である。硝子体の主な機能は、網膜を定位置に保持し、球体の完全性と形状を維持し、移動による衝撃を吸収し、水晶体を後方から支持することである。房水と対照的に、硝子体は常に交換されるものではない。硝子体は、離液として知られる過程において、年齢と共により流動的になる。離液の結果、硝子体は収縮してその正常な付着部位に圧力または牽引力を及ぼすことがある。十分な牽引力が適用されると、硝子体は、網膜に付着しなくなり、網膜の裂傷や孔を生じさせることがある。
【0005】
硝子体網膜処置と呼ばれる、様々な外科処置は普通眼の後房で行われる。硝子体網膜処置は後房の多くの深刻な症状を治療するのに適している。硝子体網膜処置は、加齢性黄斑変性(AMD)、糖尿病性網膜症および糖尿病性硝子体出血、円孔、網膜剥離、網膜前膜、CMV網膜炎、および多くの他の眼科症状のような症状を治療する。1つの通常の硝子体網膜処置は光凝固(photocoagulation)療法である。光凝固療法では、高強度のレーザ光の使用によって眼の中のタンパク質を加熱して網膜の裂傷を修復し、剥離に帰結しうる異常な網膜血管系の成長を防止する。光凝固処置では、外科医は、アルゴンイオンレーザのようなレーザ源に結合されたレーザハンドピースを使用してレーザ光を目標部位に適用する。
【0006】
外科医は、顕微鏡と、後房の鮮明な映像を提供するように設計された専用レンズとによって硝子体網膜処置を行う。毛様体扁平部の強膜に長さ1ミリメートルほどのいくつかの小さな切開部を作る。外科医は、切開部を通して、顕微手術器具、例えば、眼の内部を照明する光ファイバ光源と、手術中眼の形状を維持する注入ラインと、硝子体を切断して除去する器具とを挿入する。
【0007】
こうした外科処置の際、眼の内部を適切に照明することは重要である。通常、細い光ファイバを眼に挿入して照明を提供する。メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、または水銀ランプのような光源を使用して、光ファイバによって眼に伝えられる光を生成することが多い。光は、いくつかの光学要素(通常レンズ、ミラー、および減衰器)を通過して、光を眼に伝える光ファイバに放出される。この光の品質は、選択された光学要素の種類を含むいくつかの要因に依存する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の特定の実施形態では、眼科手術システムは、レーザ治療モードと照明モードとを有するレーザ光源を含む。レーザ治療モードは第1の出力を有し、照明モードは、第1の出力よりも小さい第2の出力を有する。また、眼科手術コンソールは、照明モードにおいてレーザ光源を光ガイドに光学的に結合するように使用可能な合焦光学素子を含む。
【0009】
本発明の他の実施形態では、眼の内部を照明する方法は、レーザ治療モードと照明モードとを有するレーザ光源を提供するステップを含む。レーザ治療モードは第1の出力を有し、照明モードは、第1の出力よりも小さい第2の出力を有する。本方法は、さらに、眼内照明器ハンドピースをレーザ光源に光学的に結合するステップと、外科的切開部を通して眼内照明器ハンドピースを眼内に挿入するステップとを含む。本方法は、その後、照明モードにおいてレーザ光源からのレーザ光を使用して眼の内部を照明するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る眼内照明器を配置されうる眼の解剖図を例示する。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る、眼の内部を照明する眼内照明器を例示する。
【図3】図3は、本発明の特定の実施形態に係る眼内照明器を使用して眼を照明する方法の一例を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の様々な態様は、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。
本発明およびその利点をさらに完全に理解するために、添付の図面と共に以下の説明を参照する。全図を通じて同一参照符号は同一のものを表す。
本発明の好適実施形態を図面に例示する。各図の同一参照符号は、同一および対応するものを表すために使用される。
【0012】
図1は、本発明によって提供される改良設計の眼の移植物が配置されうる眼の解剖図を例示する。眼100は、角膜102、虹彩104、瞳孔106、水晶体108、水晶体嚢110、毛様小帯、毛様体120、強膜112、硝子体ゲル114、網膜116、黄斑、および視神経120を含む。角膜102は眼の表面にある透明なドーム形の構造で、眼に光を導入する窓の役目を果たす。虹彩104は、眼の色の付いた部分で、虹彩と呼ばれ、瞳孔を取り巻く筋肉であって、弛緩したり緊張したりして眼に入る光の量を制御している。瞳孔106は、虹彩の円形の中心開口である。水晶体108は、網膜上に光の焦点を合わせるのを補助する眼内の構造である。水晶体嚢110は、水晶体を取り巻く弾性の嚢であり、眼が様々な距離の対象に焦点を合わせるときに水晶体の形状を制御するのを補助する。毛様小帯は、水晶体嚢を眼の内部に取り付け、水晶体を定位置に保持する細い襞である。毛様体は、水晶体に取り付けられた筋肉領域であり、収縮したり弛緩したりして水晶体の大きさを制御して焦点を合わせる。強膜112は、眼球の形状を維持する眼の強靱なもっとも外側の層である。硝子体ゲル114は、眼球の後方に向かって位置する、ゲルで満たされた部分であり、眼の曲率を維持するのを補助する。網膜116は、眼の後方の感光性の神経層であり、光を受け取って信号に変換し脳に送る。黄斑は、細部を見るための感覚器官を含む網膜の領域である。視神経118は眼からの信号を脳に接続して伝達する。
【0013】
毛様体122は虹彩104のすぐ後ろにある。毛様体122には、毛様小帯124と呼ばれるごく小さな繊維の「ガイドワイヤ」が取り付けられている。水晶体108は、毛様小帯124によって眼の内部に懸垂されている。毛様体122のための栄養は、虹彩104に栄養を供給している血管と同じ血管から来る。毛様体122の機能の1つは、水晶体108の形状を変化させて遠近調節を制御することである。毛様体122が収縮すると、毛様小帯124は弛緩する。これによって、水晶体108は、厚くなり、近くに焦点を合わせる眼の能力を増大する。遠方の物体を見る時は、毛様体122は弛緩して、毛様小帯124を収縮させる。すると、水晶体108は薄くなり、遠方を見るように眼の焦点を調整する。
【0014】
普通、網膜116は、眼に進入する光をフィルタリングする眼の生来の水晶体108によって紫外線から保護される。しかし、光学眼内照明器からの光は、水晶体によるフィルタリングがない状態で(すなわち、無水晶体の状態で)眼に進入し、この光が、電磁スペクトルの紫外線領域または赤外線領域に近い十分強い成分を含む場合、眼組織を損傷することがある。有害な短波長および長波長をフィルタリングしつつ照明のための適切な範囲の可視光波長範囲を提供することによって、青色光による網膜の光化学的損傷、赤外線による加熱損傷、および同様の光毒性の危険因子を含む、無水晶体の危険因子によって網膜を損傷するリスクを大幅に減らすことができる。通常、約430〜700ナノメートルの範囲内の光が、こうした危険因子のリスクを減らすために好適である。
【0015】
しかし、十分な光強度を達成するため、以前の眼内照明器は広範なスペクトルの光源によるものであった。例えば、多くの眼内照明の光源は、ハロゲンタングステンランプまたは高圧アークランプ(メタルハライドランプ、Xe)を使用している。アークランプの利点は、放出領域が小さく(<1mm)、色温度が日光に近く、50時間に対して400時間と寿命がハロゲンランプよりも長いことである。アークランプの欠点は、コストが高く、光出力が弱く、システムが複雑であり、システムの寿命が過ぎる間に何回もランプの交換が必要になるという点である。LEDによる照明器はコストおよび複雑さを大幅に下げることができ、定格寿命は50,000〜100,000時間なので、出力の低下がほとんどない状態でLEDを交換する必要なく器具の寿命の全期間眼ファイバ照明器を動作させることができるだろう。通常の白色LEDは、白色蛍光体キャップを励起して眼内照明器のための十分な白色光を生成する紫外線(UV)/紫色/青色LEDを含んでもよい。
【0016】
従来の照明器と異なり、本発明の様々な実施形態は、低出力レーザ光を使用する照明を提供する。これは眼組織に有害となりうる電磁スペクトルの成分を回避しつつ可視光スペクトルで十分な照明を提供する。可視領域のコントラストを改善すべく、低出力レーザ照明器で使用される光の波長を選択できることは有利である。すなわち、例えば、Alcon Laboratories,Inc.が製造するPUREPOINT(登録商標)光凝固器のようなある種の光凝固器で使用されるレーザ光源は、約532nmの波長を有する緑色レーザ光を生成できる(本出願で使用される場合「約」という用語は、定格波長の±5nm以内のレーザ光を均一に生成するという意味である)。以前の眼内照明器と比較して、この波長の光を吸収した結果生じる明暗の範囲によって、網膜血管系と他の光学組織との間の視覚的コントラストを改善することができる。
【0017】
図2は、眼内照明器160の断面図であるが、これは眼内に配置された、本発明の様々な実施形態の何れかに係る眼内照明器でもよい。図2は、使用中のハンドピース162の付いたハンドピース164を示す。ハンドピース162は、毛様体扁平領域の切開部を通して眼100に挿入される。ハンドピース162は、眼100の内部または硝子体領域114を照明する。この状態で、ハンドピース162を使用して、硝子体−網膜の手術の間、内部または硝子体領域を照明できる。ハンドピース162は、通常光ファイバである光ガイド168によってレーザ光源166に接続されている。合焦光学素子170は、レーザ光源166から放出されたレーザビームを光ガイド168に結合する。合焦光学素子170は、レーザ光源166または関連する眼科手術コンソールの内部または外部のどちらに配置してもよい。光ガイド168は、当該技術分野で公知の任意の望ましいコア、クラッディング、ドーパント、屈折率、熱特性、機械的特性、または他の特性を有する、レーザ光源166によって生成された波長の光を伝えるのに適した任意の導管を含むことができる。眼科用途で使用されるガラスまたはプラスチックの光ファイバは、典型的には、直径が、治療用放射を提供する場合50〜300μmであり、照明を提供する場合400〜750μmの範囲である。
【0018】
レーザ光源166は、眼組織の視覚化を可能にする十分な強度の可視スペクトルの波長のコヒーレントレーザ光を生成するための任意の適切な装置でよい。特定の実施形態では、レーザ光源166は、およそ532nmの波長を有する緑色レーザ光を生成する。また、レーザ光源166は、レーザ治療用ハンドピース172に結合してもよい。レーザ治療用ハンドピース172も、眼内照明器ハンドピース162について説明したものと同様であるが、眼組織に光化学変化を生成するために使用されるレーザ光を伝えるのに適した、対応する光ガイド174を含んでもよい。また、合焦光学素子170は、レーザ光源166をレーザ治療用ハンドピース172に結合する個別および/または構成要素を含んでもよい。特定の実施形態では、眼内照明器ハンドピース162とレーザ治療用ハンドピース172とは、組み合わされた単一のハンドピースに統合されてもよい。
【0019】
動作する際、レーザ光源166は、異なる2つの動作モードを有する。第1のモードは、ビームスポットの標的となる眼組織の比較的小さな範囲内に、レーザ光の吸収によって生成される熱効果のような光化学変化を生成するのに十分な、眼組織に入射するレーザビームのための出力密度を有するレーザ治療モードである。特定の実施形態では、こうした光化学変化を使用して、網膜組織の断裂または剥離を修復したり、網膜内の異常な血管系の成長を阻止することができる。特定の実施形態では、レーザ治療モードは、眼組織のタンパク質の熱変化による網膜組織の凝集を生成する光凝固モードでもよい。第2のモードは照明モードである。照明モードでは、レーザ光を使用して、外科手術のための対象部位の周囲の手術分野を照明する。照明モードは、網膜組織の特性が変化しないような低出力を使用する。大部分の用途では、スポットサイズは、外科手術の対象部位を取り囲む範囲の視界を提供するためレーザ治療モードのためのスポットサイズよりかなり大きくてもよいが、狭角照明の用途では、スポットサイズは同等のことがある。
【0020】
一例では、レーザ光源166は光凝固のためにも使用される。通常の光凝固の用途では、眼組織に熱変化を生成するために使用されるレーザ出力は、網膜上の1mm程度のスポットサイズの場合少なくとも100mWであり、レーザビームは、5mmの推定作業距離で放出され、生理的食塩水媒体中で伝達される。こうした用途では、例えば、レーザ光源166を使用して、開口数を持つ光ファイバに結合される50μm以下のスポットサイズを生み出し、網膜上に1mmのスポットサイズを生成してもよい。
【0021】
光凝固のために必要な強度とは異なり、十分な照明のために必要な最小強度は、医師毎に異なることがあるため明確ではない。眼手術で使用される以前に市販された照明器は、手術分野において、普通の照明の場合12ルーメンまで、広角照明の場合15ルーメン以上の光束を生成したが、特に眼内照明器によって生成される光束の関数としての対象手術部位の実効放射照度が点光源と比較して高くなるように有利に構成されている場合、最大値の10%の光束レベルでも十分なことがあった。
【0022】
上記で概説したような一般的な要求を前提に、レーザ光源166の照明モードのための出力レベルを選択することができる。レーザは、特有の波長で比較的高い変換効率を有することが多いので、普通比較的低い出力で高いレベルの光束を生み出すことができる。すなわち、およそ600ルーメン/Wという容易に達成可能な変換効率の場合、同じ最大光束を生成するために必要な出力はわずか約20〜25mWでよい。光凝固器のための通常の眼科用レーザ光源は100〜600mWの範囲で動作する。しかし、約30mW〜2Wの範囲で動作し、その下端が既存の照明器のピーク出力に近く、大きく修正することなく照明モードで機能させることができる、Alcon Laboratories,Inc.によって製造されたPUREPOINT(登録商標)レーザ光源のようないくつかの既存のレーザ光源が存在する。狭角用途の場合、出力レベルは原則としてさらに低くてもよく、一般には、10nW〜50mWの出力レベルが多くの用途の適切な出力レベルをカバーする好適な範囲であろう。
【0023】
眼組織に対する無水晶体の危険因子を減らすという観点で、眼損傷のリスクは、白色光を使用する従来の眼内照明器と比較して評価することができる。上記のように、従来の白色光眼内照明器は、12〜15ルーメンの範囲内の光束レベルで無水晶体にとって安全と考えられている。1時間を越える手術で使用される場合でも、こうした器具の場合、網膜組織の損傷は認められなかった。単一波長付近の狭い放出プロファイルを有するレーザの場合、無水晶体の危険因子となる範囲のスペクトルの成分の強度は大幅に低下する。例えば、532nmのレーザ光をXeバルブ照明器と比較した場合、無水晶体の危険因子の電磁放射の網膜に対する合計放射照度はほぼ12分の1に下がるだろう。すなわち、同程度の照明の場合、眼組織を損傷するリスクは従来の眼内照明器よりも低いはずである。
【0024】
レーザ光照明器に固有の1つの問題は光ガイド168に対する熱損傷の可能性である。眼内照明器は通常、柔軟で眼内に眼内照明器を容易に配置することができるプラスチックの光ファイバを使用する。光は、通常およそ0.5という、ビームの比較的高い開口数(NA)を持つプラスチック照明器に結合され、手術分野で十分に大きなスポットサイズを生成する。しかし、光凝固のような用途において使用されるレーザビームは、非常に小さなスポットサイズで放出されることが多いので、斯かる高開口数を有するファイバに結合すると比較的低いレーザ出力でさえもビームウエストにおいてきわめて強い放射照度を生じるだろう。プラスチックの光ファイバがこの強い放射照度を吸収すると、プラスチックがその溶融温度まで加熱され、ファイバが破損することがある。
【0025】
したがって、白色光源を眼内照明器のファイバに結合するための従来の光学素子を使用する場合とは異なり、レーザ眼内照明器の合焦光学素子170は、プラスチックの眼内照明器のファイバに強い放射照度のスポットが形成されるのを防止するように構成されるべきである。ファイバ上のこうした強いスポットを防止するためには、望ましいNAを維持しつつ、入射ビームのサイズを拡大してできる限り密にファイバ開口を満たすのが有利である。すなわち、例えば、円筒形石英ロッド(cylindrical quartz rod)が、レーザビームの焦点における近位端と、光ガイド168の近位端に対して当接される遠位端とを有して配置されることができ、このことによって、光ガイド168に供給される光の合計強度を大きく低下させることなくビームをかなり大きなスポットサイズに拡散させることができる。別の例では、散乱プレートを使用してもよい。
【0026】
また、場合によっては、照明の範囲を比較的狭くするのが望ましいことがあり、これは何らかの構造を照明するのに有用なことがある。こうした場合、レーザ光源166を照明モードにしたままで低い開口数の治療用ファイバに結合して、治療ビームよりもはるかに低い強度の比較的小さな照明スポットを生成するようにしてもよい。こうした実施形態では、手術中にレーザ治療用ハンドピース172が眼内にある時にレーザ光源166を治療モードと照明モードとの間で切り換えることが可能であり、ハンドピース172内の個別の照明用および治療用のファイバを必要とすることなく単一のハンドピース172によって照明および治療を提供することができる。
【0027】
図3は、本発明の特定の実施形態に係る光学眼内照明器によって眼を照明する方法の一例を例示するフローチャート300である。ステップ302では、上記の様々な実施形態に関連して説明したような、レーザ治療モードと照明モードとを有するレーザ光源166が提供される。ステップ304では、眼内照明器ハンドピース162がレーザ光源166に光学的に結合される。ステップ306では、ハンドピース162が、外科的切開部を通して眼に挿入される。ステップ308では、ハンドピースを使用して眼の内部が照明される。
【0028】
ステップ310では、レーザ治療用ハンドピース172がレーザ光源166に光学的に結合され、ステップ312ではレーザ治療用ハンドピース172が切開部を通して眼に挿入される。ステップ314では、レーザ光源166からのレーザ光を使用して眼の組織の光化学変化が生成される。特定の方法を詳細に説明したが、上記で説明した眼科手術システムの様々な実施形態と矛盾しないやり方で、様々なステップを再配置および/または省略してもよく、また別のステップを追加してもよいことを理解されたい。すなわち、こうした眼科手術システムを使用する任意の適切な方法が本開示の範囲内において考えられる。
【0029】
本発明を例示によって説明したが、当業者は様々な修正を行うことができる。例えば、ある出力パワーレベルをハンドピースに生成すべく付属の減衰器をレーザ光源に結合することによってレーザ光源の低出力モードを達成してもよい。本発明を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換および修正がなされうることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科手術システムであって、
レーザ治療モードと照明モードとを有するレーザ光源であって、前記レーザ治療モードが第1の出力を有し、前記照明モードが、前記第1の出力よりも小さい第2の出力を有する、レーザ光源と、
前記照明モードにおいて前記レーザ光源を光ガイドに光学的に結合するように使用可能な合焦光学素子と
を備える眼科手術システム。
【請求項2】
前記第1の出力が少なくとも100mWであり、前記第2の出力が10nW〜50mWの範囲内である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記レーザ光源が、430〜700nmの範囲内の波長を有するレーザ光を生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記レーザ光源が、532nmの波長を有するレーザ光を生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記レーザ光源が、第1のスポットサイズを有するレーザ光を生成し、前記合焦光学素子が前記照明モードにおける前記レーザ光を前記第1のスポットサイズよりも大きな第2のスポットサイズに拡大する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記合掌光学素子が円筒形石英ロッドを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
さらに、前記レーザ光源に結合されたレーザ治療用ハンドピースを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記レーザ治療用ハンドピースが、前記レーザ治療モードにおいて前記レーザ光源によって生成されたレーザ光を使用して網膜組織の光凝固を生成するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記レーザ治療用ハンドピースが、5mmの距離から直径1mm未満の円形領域内の眼組織において光化学変化を生成するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
さらに、前記レーザ光源に結合された光ガイドと、該光ガイドに結合された眼内照明器ハンドピースとを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記眼内照明器ハンドピースが、眼内の少なくとも直径12mmの領域を照明するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
眼の内部を照明する方法において、
レーザ治療モードと照明モードとを有するレーザ光源を提供するステップであって、前記レーザ治療モードが第1の出力を有し、前記照明モードが、前記第1の出力よりも小さい第2の出力を有する、ステップと、
眼内照明器ハンドピースを前記レーザ光源に光学的に結合するステップと、
外科切開部を通して前記眼内照明器ハンドピースを前記眼内に挿入するステップと、
前記照明モードにおいて前記レーザ光源からのレーザ光を使用して前記眼の内部を照明するステップと
を含む方法。
【請求項13】
さらに、レーザ治療用ハンドピースを前記レーザ光源に光学的に結合するステップと、
前記レーザ治療モードにおいて前記レーザ光源からのレーザ光を使用して前記眼の組織において光化学変化を生成するステップとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記光化学変化が光凝固である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の出力が少なくとも100mWであり、前記第2の出力が10nW〜50mWの範囲内である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記レーザ光源が、430〜700nmの範囲内の波長を有するレーザ光を生成する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記レーザ光源が、532nmの波長を有するレーザ光を生成する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
照明する前記ステップが少なくとも直径12mmの領域を照明することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
眼科手術システムであって、
レーザ治療モードと照明モードとを有するレーザ光源であって、前記レーザ治療モードが少なくとも100mWの第1の出力を有し、前記照明モードが10nW〜50mWの第2の出力を有し、約532nmの波長を有するレーザ光を生成するように使用可能なレーザ光源と、
眼内照明器ハンドピースと、
前記レーザ光源を前記眼内照明器ハンドピース内の光ガイドに光学的に結合する合焦光学素子と
を備える眼科手術システム。
【請求項20】
さらに、前記レーザ光源に光学的に結合されたレーザ治療用ハンドピースであって、前記レーザ治療モードにおいて前記レーザ光源からのレーザ光を使用して眼組織の光凝固を行うように構成されたレーザ治療用ハンドピースを備える、請求項19に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2012−529342(P2012−529342A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514957(P2012−514957)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/030324
【国際公開番号】WO2010/144174
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】