説明

低分子量のヨウ素化有機物質及びその調製方法

【課題】低分子量のヨウ素化有機物質を合成する方法は、複雑な方法である。
【解決手段】分子量が2000未満の1つ以上のヨウ素化有機物質(物質(S))を(A)ペルオキシド、ジアゾ化合物、ジアルキルジフェニルアルカン、テトラフェニルエタンから誘導された物質、ボラン及び少なくとも1つのチウラムジスルフィド基を含むイニファーター物質より選ばれた少なくとも1つのフリーラジカル生成物質、(B)エチレン二重結合にフリーラジカルを付加することができるエチレン系不飽和物質、(C)分子ヨウ素を用いて調製するための方法であって、(A)の少なくとも一部、(B)の少なくとも一部及び(C)の少なくとも一部を反応器に導入する工程、次に、(A)の可能な残り、(B)の可能な残り、(C)の可能な残りをその中に導入しつつ、反応器の含量が1つ以上の物質(S)を含む混合物であるときが達せられるまで、反応器の内容物を反応させる工程を含む、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子量のヨウ素化有機物質の調製方法、低分子量のヨウ素化有機物質、及びこれらの低分子量のヨウ素化有機物質を含むポリマーの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願第5 144 067号には、一方はヨウ化アルキル、もう一方はモノ-α-ヨードカルボン酸及び/又は無水物の同時製造方法が記載され、ヨウ素化された化合物、例えば、分子ヨウ素、カルボン酸無水物、例えば、酢酸無水物、及びペルオキシド、例えば、過酸化水素の混合物を高温で反応させている。
米国特許出願第5 430 208号には、1-クロロ-1-ヨードエタンを合成する方法が記載され、ヨウ化水素酸と塩化ビニルとを有機(例えば、1,2-ジヨードエタン)又は無機(例えば、ヨウ化カリウム又は分子ヨウ素)のヨウ素含有触媒の存在下で反応させている。
Heasley et al., J. Org. Chem. Soc., 1988, pp. 198-201には、tert-ブチルハイポヨーダイドと種々のエチレン系不飽和物質とをBF3の存在下で又は紫外線の作用によって反応させることにより種々のヨウ素化有機物質が合成されている。特に、これにより式(CH3)3-C-O-CH2-CHΦI(式中、Φはフェニル基である。)の物質が合成されている。
Cambie et al., J. Chem. Soc., Chem. Comm., 1973, vol. 11, pp. 359-360にも、スチレン、分子ヨウ素及び酢酸タリウム(I)を反応させることによって物質(CH3)3-C-O-CH2-CHΦIが合成されている。
【0003】
従来技術の低分子量のヨウ素化有機物質を合成する方法は、複雑な方法である。更に、高価な及び/又は処理するのに危険な原料の使用を必要とする。このように製造された低分子量のヨウ素化有機物質はそれ自体非常に高価である。
低分子量のいくつかのヨウ素化有機物質は、制御されたフリーラジカル重合(“ITP”型の重合)の開始剤として使用し得ることも既知である。
しかしながら、重合の開始の効率やこのように製造されたポリマーの特性に関して“最良”の選択は、しばしばモノマーの実際の種類に左右されるので、異なる化学的性質のモノマーを全て最適条件下で重合することが要求される場合にはかなり広範囲のヨウ素化有機開始剤を利用できることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第5 144 067号
【特許文献2】米国特許出願第5 430 208号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Heasley et al., J. Org. Chem. Soc., 1988, pp. 198-201
【非特許文献2】Cambie et al., J. Chem. Soc., Chem. Comm., 1973, vol. 11, pp. 359-360
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主題は、従来技術の方法の利点を全て有し且つその欠点を全て避ける双方を可能にする調製方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この主旨で、本発明は、分子量が2000未満の1つ以上ヨウ素化有機物質(物質(S))を
(A) ペルオキシド、ジアゾ化合物、ジアルキルジフェニルアルカン、テトラフェニルエタンから誘導された物質、ボラン及び少なくとも1つのチウラムジスルフィド基を含むイニファーター物質より選ばれた少なくとも1つのフリーラジカル生成物質、
(B) エチレン二重結合にフリーラジカルを付加することができる少なくとも1つのエチレン二重結合を有する少なくとも1つの有機物質、
(C) 分子ヨウ素
を用いて調製するための方法であって、
(1) (A)の少なくとも一部、(B)の少なくとも一部及び(C)の少なくとも一部を反応器に導入する工程、次に、(2) (A)の可能な残り、(B)の可能な残り、(C)の可能な残りをその中に導入しつつ、反応器の含量が1つ以上の物質(S)を含む混合物[混合物(M)]であるときが達せられるまで、反応器の内容物を反応させる工程
を含む、前記方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1で得られた生成物のクロマトグラフィーの結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
物質(S)に加えて、物質(S)以外の1つ以上のヨウ素化有機物質を本発明の方法によって任意に調製することができる[物質(S')]。
物質(S)の質量と相対して表されるヨウ素化有機物質(S')の質量は、好ましくは1未満、特に好ましくは0.2未満、最も好ましくは0.05未満である。
物質(S)の分子量は、好ましくは1000未満、特に好ましくは500未満、最も好ましくは250未満である。
物質(S)の数平均分子量は、有利には500未満であり、好ましくは250未満である。
ペルオキシドという表現は、有機ペルオキシドと無機過酸化物の双方を意味すると理解される。
フリーラジカル生成物質が好ましくは選ばれる物質の第1ファミリは有機ペルオキシドである。
【0010】
有機ペルオキシドの例として、次の化合物を挙げることができる。
- ジアルキルペルオキシド、例えば、ジクミルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシド、クミルペルオキシド、ジtert-ブチルペルオキシド);
- ジアシルペルオキシド、例えば、ジイソノナノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジ(2-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジ(4-クロロベンゾイル)ペルオキシド;- アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド;
- ジアルキルペルオキシジカーボネート、例えば、ジエチルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、ジ(sec-ブチル)ペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート;
【0011】
- ジアルキルペルカーボネート、例えば、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート;
- ペルエステル、例えば、クミルペルネオデカノエート、tert-アミルペルネオデカノエート、tert-ブチルペルピバレート、tert-ブチルペル(2-エチルヘキサノエート)、tert-ブチルペルイソブチレート、tert-ブチルペルイソノナノエート、2,5-ジメチルヘキサン2,5-ジペルベンゾエート、tert-ブチルペルベンゾエート;
- ペルケタール、例えば、1,1-ビス(tert-ブチルブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン;
- ケトンペルオキシド、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド;
- 有機ヒドロペルオキシド、例えば、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド)。
【0012】
有機ペルオキシドは、好ましくはジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシジカルボナート及びペルエステルより選ばれる。特に好ましくはジアルキルペルオキシド及びジアルキルペルオキシジカーボネート、最も好ましくはアルキル鎖の各々が多くても炭素原子4個を含むジアルキルペルオキシド及びアルキル鎖の各々が多くても炭素原子4個を含むジアルキルペルオキシジカーボネートより選ばれる。ジtert-ブチルペルオキシドやジエチルペルオキシジカーボネートが優れた結果を示した。
【0013】
フリーラジカル生成物質が好ましくは選ばれる物質の第2ファミリは、無機過酸化物である。
無機過酸化物の例として、次の化合物を挙げることができる。
- 過酸化水素;
- 過硫酸塩、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム;
- 過ホウ酸塩。
無機過酸化物は、好ましくは過硫酸塩である。過硫酸アンモニウムが優れた結果を示した。
フリーラジカル生成物質が好ましくは選ばれる物質の第3ファミリは、ジアゾ化合物である。
ジアゾ化合物の例として、アゾビス(イソブチロニトリル)、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾアミジン、アゾミジニウム塩を挙げることができる。
ジアゾ化合物は、好ましくは1つ以上のニトリル基を持っている。アゾビス(イソブチロニトリル)が優れた結果を示した。
ジアルキルジフェニルアルカンの例として、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサンや2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンを挙げることができる。
テトラフェニルエタンから誘導される物質の例として、
N≡C-CΦ2-CΦ2-C≡N、υO-CΦ2-CΦ2-Oυ、υ3Si-CΦ2-CΦ2-Siυ3、(υO)3Si-CΦ2-CΦ2-Si(Oυ)3、ΦO-CΦ2-CΦ2-OΦを挙げることができる。上で例示した物質において、Φはフェニル基であり、υはC1-C20アルキル基である。
【0014】
ボランの例として、トリアルキルボラン(B(OOυ)3)、例えば、トリメチルボラン、トリフェニルボラン(B(OOΦ)3)を挙げることができ、υ、Φは上で定義した通りである。
少なくとも1つのチウラムジスルフィド基を含むイニファーター物質の例として、υ2N-(S=)C-S-S-C(=S)-Nυ2を挙げることができ、υ記号は、同じか又は異なり、上で定義された通りである。
【0015】
エチレン二重結合にフリーラジカルを付加することができる少なくとも1つのエチレン二重結合を有する有機物質は、有利には、式CΨ2 = CΨΞに対応し、式中、
- Ψ記号は、相互に及びΞから独立して(i)水素原子、(ii)ヨウ素原子以外のハロゲン原子、又は(iii)直鎖又は分枝鎖C1-C20アルキル基であり;
- Ξは(i)ヨウ素原子以外のハロゲン原子、(ii)ヨウ素原子以外のハロゲン原子及びC1-C8アルキル基より選ばれた1つ以上の原子で任意に置換されたフェニル基、(iii)-O-C(=O)-Ω基、(iv)ニトリル基、(v)-C(=O)-O-Ω基、又は(vi)基C(=O)-NΩ2であり;
- Ωは(i)水素原子、又は(ii)飽和又はエチレン系不飽和又は芳香族C1-C20炭化水素基である。
式CΨ2=CΨΞに対応する好ましい物質の第1ファミリは、Ξがヨウ素原子以外のハロゲン原子であるものである([ファミリ(F1)]。
ファミリ(F1)の物質は、好ましくは多くても炭素原子3個を有する。特に好ましくは、塩化ビニル、塩化ビニリデン、トリクロロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンより選ばれる。最も好ましくは、塩化ビニル、塩化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンより選ばれる。
式CΨ2=CΨΞに対応する好ましい物質の第2ファミリは、Ξがヨウ素原子以外のハロゲン原子及びC1-C8アルキル基より選ばれた1つ以上の原子で任意に置換されたフェニル基であるものである[ファミリ(F2)]。
ファミリ(F2)の物質は、好ましくは式CH2=CHΞに対応し、Ξは前の段落で定義された通りである。ファミリ(F2)の全ての物質の中で、スチレンが優れた結果を示した。
【0016】
式CΨ2=CΨΞに対応する好ましい物質の第3ファミリは、Ξが-O-C(=O)-Ω基であるものであり、Ωは上で定義された通りである[ファミリ(F3)]。
ファミリ(F3)の物質は、好ましくは式CH2=CHΞに対応し、Ξは前の段落で定義された通りである。ファミリ(F3)の全ての物質の中で、酢酸ビニルが優れた結果を示した。
式CΨ2=CΨΞに対応する好ましい物質の第4ファミリは、Ξがニトリル基及び基-C(=O)-O-Ω及び-C(=O)-NΩ2より選ばれた基であるものであり、Ωは上で定義された通りである[ファミリ(F4)]。
ファミリ(F4)の物質は、好ましくは、式CH2=CHΞ、又は式CH2=C(CH3)Ξ、或いは式CH2=CFΞに対応し、Ξは前の段落で定義された通りである。特に好ましくは、式CH2=CH-C(=O)-O-Ω又は式(CH2=C(CH3)-C(=O)-O-Ωに対応し、Ωは上で定義された通りである。更に特に好ましくは、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸n-ブチルより選ばれる。ファミリ(F4)の全ての物質の中で、アクリル酸メチルが優れた結果を示した。
少なくとも1つのエチレン二重結合を有し且つ上記の物質以外のエチレン二重結合にフリーラジカルを付加することができる有機物質の例として、エチレン、プロピレン、ブタジエンを挙げることができる。
【0017】
本発明の方法が、エチレン二重結合にフリーラジカルを付加することができる、少なくとも1つのエチレン二重結合を有するいくつかの有機物質を用いる場合、有利には少なくとも一方はファミリ(F1)の物質より選ばれ、少なくとももう一方はファミリ(F3)と(F4)の物質より選ばれる。好ましくは、少なくとも一方は、塩化ビニル、塩化ビニリデン及びフッ化ビニリデンより選ばれ、少なくとももう一方は、酢酸ビニル、アクリル酸メチル及びアクリル酸n-ブチルより選ばれる。特に好ましくは、一方は塩化ビニリデンであり、もう一方はアクリル酸メチルである。
反応器の内容物が反応する温度は、有利には-50℃〜300℃、好ましくは0〜150℃である。
好ましくは、(A)、(B)、(C)の全体が工程(1)で反応器に導入される。
【0018】
本発明の方法の好ましい第1変形例によれば[変形例(1)]、反応によって消費される(B)の量がもはや変化しなくなるまで反応器の内容物を反応させる。
変形例(1)によれば、(A)のモル数と相対して表される(C)のモル数は、有利には90%以上、好ましくは100%以上、特に好ましくは105%以上である。更に、(A)のモル数と相対して表される(C)のモル数は、有利には200%未満、好ましくは150%未満である。
変形例(1)によれば、(B)のモル数に相対して表される(C)のモル数は、通常は0.5%を超える。本発明の方法の良好な操作が影響を受けることなく、5%より大きくても、50%より大きくてもよく、しばしば100%を超えてもよい。更に、(B)のモル数に相対して表される(C)のモル数は、有利には200%未満、好ましくは150%未満である。
【0019】
本発明の方法の好ましい第2変形例によれば[変形例(2)]、工程(2)後、更に工程(3)を含み、進行中の反応は、例えば、反応器の内容物を急に冷却することによって停止させる。
変形例(2)によれば、進行中の反応が停止したときは、有利には、反応器の内容物の色が濃い色から淡い色に変化するときである。
変形例(2)によれば、(A)のモル数に相対して表される(C)のモル数は、有利には100%未満、好ましくは90%未満である。更に、(A)のモル数に相対して表される(C)のモル数は、有利には20%以上である。
変形例(2)によれば、(B)のモル数と関連して表される(C)のモル数は、通常は100%未満である。50%未満でも、5%未満でもよく、本発明の方法の良好な操作が影響を受けることなく、しばしば1%未満であってもよい。更に、(B)のモル数に相対して表される(C)のモル数は、有利には0.01%以上であり、好ましくは0.1%を超える。
本発明の方法は、有利には、工程(2)後、更に、工程(3)後、方法が前記工程(3)を含む場合、更に、一工程を含み、混合物(M)の少なくとも1つの物質(S)と混合物(M)中に含有した可能な他の物質(S)が分離される。
本発明の主題は、また、調製のためのヨウ素化有機物質であり、本発明の主題である方法が特によく適し且つ全てが従来技術のヨウ素化有機物質の利点をその不利な点を示さずに有する。
【0020】
この主旨で、本発明は、分子量が2000未満の少なくとも2つのヨウ素化有機物質を含む混合物であって、それぞれ一般式R-Gx-(CX2-CXY-)n-IとR-Gx-(CX2-CXY-)n+1-I(式中、- Rは、(i)水素原子、(ii)アルカリ金属の原子、(iii)フェニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミン基又はアミジン基より選ばれた1つ以上の基で任意に置換された直鎖又は分枝鎖C1-C20アルキル基、(iv)C1-C8アルキル基及びニトリル基より選ばれた1つ以上の基で任意に置換されたC3-C8シクロアルキル基、又は(v)C1-C8アルキル基及びヨウ素原子以外のハロゲン原子より選ばれた1つ以上の基で任意に置換されたフェニル基であり;
- xは、0又は1に等しい整数であり;
- Gは、-O-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-O-又は-O-S(=O)p-O-であり;
Gが基-C(=O)-O-である場合には、その断片C(=O)は、Rに結合され、その断片Oは基CX2に結合される;
- pは、1又は2に等しい整数であり;
- nは、1〜8に等しい整数であり;
- 基Xは相互に及びYから独立して(i)水素原子、(ii)ヨウ素原子以外のハロゲン原子、又は(iii)直鎖又は分枝鎖C1-C20アルキル基であり;
- Yは、(i)ヨウ素原子以外のハロゲン原子、(ii)ヨウ素原子以外のハロゲン原子及びC1-C8アルキル基より選ばれた1つ以上の原子で任意に置換されたフェニル基、(iii)基-O-C(=O)-Z、(iv)ニトリル基、(v)基-C(=O)-O-Z、又は(vi)基-C(=O)-NZ2であり;
- Zは、(i)水素原子、又は(ii)飽和又はエチレン系不飽和又は芳香族C1-C20炭化水素基であり;
- R、G、x、CX2-CXY及びnは、本発明の主題である2つの物質で同一であり;
- Iは、ヨウ素原子である
[物質(S2)]。)
に対応する、前記混合物に関する。
【0021】
物質(S2)の数平均分子量は、有利には500未満、好ましくは250未満である。
物質(S2)の各々の分子量は、好ましくは1000未満、特に好ましくは500未満、最も特に好ましくは250未満である。
基Rを構成することができるアルカリ金属原子の例として、ナトリウム及びカリウムを挙げることができる。
基Rを構成することができる無置換アルキル基の例として、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、n-ヘプチル基、(1-エチル)ペンチル基、(2-エチル)ヘキシル基、(2-メチル)-(4,4-ジメチル)ペンチル基、n-ノニル基、n-ウンデシル基、ミリスチル基及びセチル基を挙げることができる。
基Rを構成することができる置換アルキル基の例として、クミル、-C(C≡N)-(CH3)2、(2-フェニル)プロピル基及び(2-フェニル)ブチル基を挙げることができる。
基Rを構成することができる置換又は無置換シクロアルキル基の例として、シクロヘキシル基及びピニルを挙げることができる。
基Rを構成することができる置換フェニル基の例として、(2-メチル)フェニル基及び(4-クロロ)フェニル基を挙げることができる。
【0022】
物質(S2)に関しては、nは、通常は7未満、しばしば5未満である。
物質(S2)に関しては、Gは、好ましくは基-O-C(=O)-O-、-O-、-O-S(=O)-O-及び-O-S(=O)2-O-より選ばれる。2つの基Gが特に好ましく: 一方が基-O-C(=O)-O-であり; もう一方が基O-S(=O)2-O-である。
本発明の混合物は、有利には、分子量が2000以上のヨウ素化有機物質を除き; 好ましくは、分子量が1000以上のヨウ素化有機物質を除いている。
“(...)を除く”という表現は、“当業者に既知のあらゆるサイズ排除クロマトグラフィ法で検出可能な量の(...)を含有しない”ことを意味すると理解される。
好ましい物質(S2)の第1ファミリは、Yがヨウ素原子以外のハロゲン原子である物質(S2)のものである[ファミリ(F'1)]。
【0023】
ファミリ(F'1)の物質(S2)の基-(CX2-CXY)-は、有利には多くても炭素原子3個を有する。 好ましくは、基-(CH2-CHCl)-、-(CH2-CCl2)-、-(CCl2-CHCl)-、-(CF2-CFCl)-、-(CH2-CHF)-、-(CH2-CF2)-、-(CF2-CHF)-、-(CF2-CF2)-及び-(CF2-CF(CF3))-から選ばれる。特に好ましくは、基-(CH2-CHCl)-、-(CH2-CCl2)-、-(CH2-CF2)-及び-(CF2-CF(CF3))-より選ばれる。
好ましい物質(S2)の第2ファミリは、Yがヨウ素原子以外のハロゲン原子及びC1-C8アルキル基より選ばれた1つ以上の原子で任意に置換されたフェニル基である物質(S2)のものである[ファミリ(F'2)]。
ファミリ(F'2)の物質(S2)の基-(CX2-CXY)-は、有利には、式-(CH2-CHY)-に対応し、Yは前の段落で定義された通りである。全てのこれらの基の中で、基-(CH2-CHΦ)-(式中、Φはフェニル基である。)が好ましい。
好ましい物質(S2)の第3ファミリは、Yが基-O-C(=O)-Zである物質(S2)であり、Zは上で定義された通りである[ファミリ(F'3)]。
【0024】
ファミリ(F'3)の物質(S2)の基-(CX2-CXY)-は、有利には、式-(CH2-CHY)-に対応し、Yは前の段落で定義された通りである。全てのこれらの基の中で、アセチル基が好ましい。好ましい物質(S2)の第4ファミリは、Yがニトリル基、基-C(=O)-O-Z及び-C(=O)-NZ2より選ばれる基である物質(S2)であり、Zは上で定義された通りである[ファミリ(F'4)]。
ファミリ(F'4)の物質(S2)の基-(CX2-CXY)-は、有利には、式-(CH2-CHY)-、又は式-(CH2-C(CH3)Y)-、或いは式-(CH2-CFY)-に対応し、Yは前の段落で定義された通りである。好ましくは、式-(CH2-CH(C(=O)OZ)-又は式-(CH2-C(CH3)(C(=O)OZ))-に対応し、Zは上で定義した通りである。特に好ましくは、以下の物質: アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸n-ブチルの1つのエチレン二重結合の開鎖によって形成された基より選ばれる。全てのこれらの基の中で、基-(CH2-CH(C(=O)O(CH3)))-、即ち、アクリル酸メチルのエチレン二重結合の開鎖によって形成された基が特に最も好ましい。
【0025】
本発明は、また、下記一般式
R-G-(CX2-CXY)q-I (I)
(式中、R、G、X、Y、Iは物質(S2)について上で定義した通りであり、qは1より大きく10未満の整数である。)
に対応する、分子量が2000未満のヨウ素化有機物質に関する。
式(I)に対応する物質の分子量は、好ましくは1000未満、特に好ましくは500未満、特に最も好ましくは250未満である。
qは、通常は7未満、しばしば5未満である。
式(I)に対応する物質に関しては、Gは、好ましくは、基-O-C(=O)-O-、-O-、-O-S(=O)-O-及び-O-S(=O)2-O-より選ばれる。2つの基Gが特に好ましく: 一方は基-O-C(=O)-O-であり; もう一方は基-O-S(=O)2-O-である。
式(I)に対応する好ましい物質の第1ファミリは、Yがヨウ素原子以外のハロゲン原子であるものである[ファミリ(F''1)。
ファミリ(F''1)の物質の基-(CX2-CXY)-は、好ましくはファミリ(F'1)の物質(S2)の基-(CX2-CXY)-と同じ特性と条件を満たすものである。
【0026】
式(I)に対応する好ましい物質の第2ファミリは、Yが、ヨウ素原子以外のハロゲン原子及びC1-C8アルキル基より選ばれた1つ以上の原子で任意に置換された、フェニル基であるものである[ファミリ(F''2)]。
ファミリ(F''2)の物質の基-(CX2-CXY)-は、好ましくはファミリ(F'2)の物質(S2)の基-(CX2-CXY)-と同じ特性と条件を満たすものである。
式(I)に対応する好ましい物質の第3ファミリは、Yが基-O-C(=O)-Zであるものであり、Zは上で定義された通りである[ファミリ(F''3)]。
ファミリ(F''3)の物質の基-(CX2-CXY)-は、好ましくはファミリ(F'3)の物質(S2)の基-(CX2-CXY)-と同じ特性と条件を満たすものである。
式(I)に対応する好ましい物質の第4ファミリは、Yがニトリル基、基-C(=O)-O-Z及び-C(=O)-NZ2より選ばれる基であるものであり、Zは上で定義された通りである[ファミリ(F''4)]。
ファミリ(F''4)の物質の基-(CX2-CXY)-は、好ましくはファミリ(F'4)の物質(S2)の基-(CX2-CXY)-と同じ特性と条件を満たすものである。
【0027】
本発明は、また、下記一般式
R-O-C(=O)-O(CX2-CXY)-I (II)
(式中、R、X、Y、Iは物質(S2)として上で定義された通りである。)
に対応する、分子量が2000未満のヨウ素化有機物質に関する。
式(II)に対応する物質の分子量は、好ましくは1000未満、特に好ましくは500未満、最も好ましくは250未満である。
式(II)に対応する好ましい物質の第1ファミリは、Yがヨウ素原子以外のハロゲン原子であるものである[ファミリ(F'''1)]。
ファミリ(F'''1)の物質の基-(CX2-CXY)-は、好ましくはファミリ(F'1)の物質(S2)の基-(CX2-CXY)-と同じ特性と条件を満たすものである。
式(II)に対応する好ましい物質の第2ファミリは、Yが、ヨウ素原子以外のハロゲン原子及びC1-C8アルキル基より選ばれた1つ以上の原子で任意に置換された、フェニル基であるものである[ファミリ(F'''2)]。
ファミリ(F'''2)の物質の基-(CX2-CXY)-は、好ましくはファミリ(F'2)の物質(S2)の基-(CX2-CXY)-と同じ特性と条件を満たすものである。
【0028】
式(II)に対応する好ましい物質の第3ファミリは、Yが基(-O-C(=O)-Z)であるものであり、Zは上で定義された通りである[ファミリ(F'''3)]。
ファミリ(F'''3)の物質の基-(CX2-CXY)-は、好ましくはファミリ(F'3)の物質(S2)の基-(CX2-CXY)-と同じ特性と条件を満たすものである。
式(II)に対応する好ましい物質の第4ファミリは、Yがニトリル基、-C(=O)-O-Z及び-C(=O)-NZ2より選ばれた基であるものであり、Zは上で定義された通りである[ファミリ(F'''4)]。
ファミリ(F'''4)の物質の基-(CX2-CXY)-は、好ましくはファミリ(F'4)の物質(S2)の基-(CX2-CXY)-と同じ特性と条件を満たすものである。
【0029】
本発明は、また、下記一般式
R-O-S(=O)p-O-(CX2-CXY)-I (III)
(式中、R、X、Y、I、pは物質(S2)について上で定義された通りである。)
に対応する、分子量が2000未満のヨウ素化有機物質に関する。
式(III)に対応する物質の分子量は、好ましくは1000未満、特に好ましくは500未満、特に最も好ましくは250未満である。
式(III)に対応する物質に関しては、pは、好ましくは2である。
式(III)に対応する好ましい物質の第1のファミリは、Yがヨウ素原子以外のハロゲン原子であるものである(ファミリ[FIV1)]。
ファミリ(FIV1)の物質の基-(CX2-CXY)-は、好ましくはファミリ(F'1)の物質(S2)の基-(CX2-CXY)-と同じ特性と条件を満たすものである。
式(III)に対応する好ましい物質の第2ファミリは、Yが、好ましくはヨウ素原子以外のハロゲン原子及びC1-C8アルキル基より選ばれた1つ以上の原子で置換された、フェニル基であるものである[ファミリ(FIV2)]。
ファミリ(FIV2)の物質の基-(CX2-CXY)-は、好ましくはファミリ(F'2)の物質(S2)の基-(CX2-CXY)-と同じ特性と条件を満たすものである。
【0030】
式(III)に対応する好ましい物質の第3ファミリは、Yが基-O-C(=O)-Zであるものであり、Zは上で定義された通りである[ファミリ(FIV3)]。
ファミリ(FIV3)の物質の基-(CX2-CXY)-は、好ましくはファミリ(F'3)の物質(S2)の基-(CX2-CXY)-と同じ特性と条件を満たすものである。
式(III)に対応する好ましい物質の第4ファミリは、Yがニトリル基、基-C(=O)-O-Z及び-C(=O)-NZ2より選ばれた基であるものであり、Zは上で定義された通りである[ファミリ(FIV4)]。
ファミリ(FIV4)の物質の基-(CX2-CXY)-は、好ましくはファミリ(F'4)の物質(S2)の基-(CX2-CXY)-と同じ特性と条件を満たすものである。
【0031】
本発明の主題は、最後に、本発明による又は本発明の合成の方法によって調製されたヨウ素化有機物質を用い、従来技術の制御されたフリーラジカル重合方法の利点をその欠点を示さずに全て有する、制御されたフリーラジカル重合の方法である。
この主旨で、本発明は、少なくとも1つのエチレン系不飽和モノマーのフリーラジカル重合によるポリマーの調製方法であって、重合において、
(A') エチレン系不飽和モノマー、
(B') ペルオキシド、ジアゾ化合物、ジアルキルジフェニルアルカン、テトラフェニルエタンより誘導される物質、ボラン、少なくとも1つのチウラムジスルフィド基を含むイニファーター物質、スチレン及びスチレン物質、及び紫外線より選ばれた少なくとも1つのフリーラジカル生成剤、
(C') 上で記載されたヨウ素化有機物質を調製するための方法によって調製された物質(S)、上で記載された混合物のヨウ素化有機物質(S2)及び上で記載されたヨウ素化有機物質より選ばれた1つ以上の物質、及び
任意に更に、
(D') 遷移金属、ランタニド、アクチニド及びIIIa族金属より選ばれた金属、及びこの金属のリガンドの少なくとも1つの錯体
を用いる、前記方法に関する。
エチレン系不飽和モノマーの例として、酢酸ビニルとしてのビニルエステル、アクリル酸、アクリル酸メチルのようなアクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸メチルのようなメタクリル酸エステル、ニトリル及びアクリルアミド又はメタクリルアミド、スチレンのようなスチレンモノマー、ブタジエンのようなオレフィンモノマー及びハロゲン化ビニルモノマーを挙げることができる。
【0032】
“ハロゲン化ビニルモノマー”という表現は、1つ以上のハロゲン原子を含み、この又はこれらのハロゲン原子以外のヘテロ原子を含まない、エチレン系不飽和モノマーを意味すると理解される。
ハロゲン化ビニルモノマの例として、塩化ビニル、塩化ビニリデン、トリクロロエチレン、クロロプレン及びクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びクロロトリフルオロエチレンを挙げることができる。
(A') は、好ましくは、少なくとも1つのハロゲン化ビニルモノマーを含んでいる。特に好ましくは、(A')は、ハロゲン化ビニルモノマー及び任意に更に、アクリル酸エステルから構成される。
【0033】
本発明の重合の方法は、有利には、
(1') (A')の少なくとも一部、(B')の少なくとも一部、(C')の少なくとも一部及び、適切な場合には、(D')の少なくとも一部を反応器に導入する工程、
(2') (A')の可能な残り、(B')の可能な残り、(C')の可能な残り及び、適切な場合には、(D')の可能な残りをその中に導入しつつ、反応器の内容物がポリマーを含むときが達するまで反応器の内容物を反応させる工程
を含んでいる。
好ましくは、本発明の重合の方法は、
(1") (A')の少なくとも一部、(B')の少なくとも一部及び、適切な場合には、(D')の少なくとも一部を反応器に導入し、
前記の反応器が上記ようにヨウ素化有機物質を調製するための方法によって前もって調製された1つ以上の物質(C')を含有している工程、
(2") (A')の可能な残り、(B')の可能な残り、(C')の可能な残り及び、適切な場合には、(D')の可能な残りをその中に導入しつつ、反応器の内容物がポリマーを含むときが達せられるまで反応器の内容物を反応させる工程
を含んでいる。
【0034】
本発明の重合の方法の好ましい第1変形例によれば、後者は、遷移金属、ランタニド、アクチニド及びIIIa族金属より選ばれた金属と、この金属のリガンドの錯体を重合において用いない。
本発明の重合の方法の好ましい第2変形例によれば、後者は、遷移金属、ランタニド、アクチニド及びIIIa族金属より選ばれる金属と、この金属のリガンドの少なくとも1つの錯体を重合において用いる。
本発明のヨウ素化有機物質を調製するための方法は、複数の利点を有する。実施が非常に容易である。安価で処理があまり危険でない原料を用いる。このように製造されたヨウ素化有機物質はそれ自体が安価である。
前記重合の開始剤のITP型(金属-リガンド錯体を含まない)又はATRP型(原子移動ラジカル重合、金属-リガンド錯体の存在下)の制御されたラジカル重合を行う前に、重合反応器内でその場合成が可能である。それ故、このような開始剤は、適切な合成反応器又はこれらの合成に必要な原料のための貯蔵レザバーを利用せずに合成することができる。その上、これらの開始剤は、それらが使われる制御されたラジカル重合に特によく適するように、特別注文することができる。
【0035】
本発明は以下である。
(請求項1)
分子量が2000未満の1つ以上ヨウ素化有機物質(物質(S))を
(A) ペルオキシド、ジアゾ化合物、ジアルキルジフェニルアルカン、テトラフェニルエタンから誘導された物質、ボラン及び少なくとも1つのチウラムジスルフィド基を含むイニファーター物質より選ばれた少なくとも1つのフリーラジカル生成物質、
(B) エチレン二重結合にフリーラジカルを付加することができる、少なくとも1つのエチレン二重結合を有する少なくとも1つの有機物質、
(C) 分子ヨウ素
を用いて調製するための方法であって、
(1) (A)の少なくとも一部、(B)の少なくとも一部及び(C)の少なくとも一部を反応器に導入する工程、次に、
(2) (A)の可能な残り、(B)の可能な残り及び(C)の可能な残りをその中に導入しつつ、反応器の内容が1つ以上の物質(S)を含む混合物[混合物(M)]であるときが達せられるまで、反応器の内容物を反応させる工程
を含む、前記方法。
(請求項2)
物質(S)の分子量が1000未満であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
(請求項3)
物質(S)の数平均分子量が500未満であることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
(請求項4)
反応器の内容物を、反応によって消費される(B)の量がもはや変化しなくなるまで反応させることを特徴とする、請求項1、2又は3記載の方法。
(請求項5)
(A)のモル数と相対して表される(C)のモル数が100%以上であることを特徴とする、請求項4記載の方法。
(請求項6)
工程(2)後、更に工程(3)を含み、進行中の反応が停止されることを特徴とする、請求項1、2、又は3記載の方法。
(請求項7)
進行中の反応が停止されるときが、反応器の内容物の色が濃い色から薄い色に変化するときであることを特徴とする、請求項6記載の方法。
(請求項8)
(A)のモル数と相対して表される(C)のモル数が100%未満であることを特徴とする、請求項6又は7記載の方法。
(請求項9)
工程(2)後、更に、工程(3)後、前記方法が前記工程(3)を含む場合、更に工程を含み、混合物(M)の少なくとも1つの物質(S)と混合物(M)中に含有される可能な他の物質(S)が分離されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
(請求項10)
分子量が2000未満の少なくとも2つのヨウ素化有機物質を含む混合物であって、それぞれ一般式
R-Gx-(CX2-CXY-)n-IとR-Gx-(CX2-CXY-)n+1-I
(式中、- Rは、(i)水素原子、(ii)アルカリ金属の原子、(iii)フェニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミン基又はアミジン基より選ばれた1つ以上の基で任意に置換された直鎖又は分枝鎖C1-C20アルキル基、(iv)C1-C8アルキル基及びニトリル基より選ばれた1つ以上の基で任意に置換されたC3-C8シクロアルキル基、又は(v)C1-C8アルキル基及びヨウ素原子以外のハロゲン原子より選ばれた1つ以上の基で任意に置換されたフェニル基であり;
- xは、0又は1に等しい整数であり;
- Gは、-O-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-O-又は-O-S(=O)p-O-であり;
Gが基-C(=O)-O-である場合には、その断片C(=O)はRに結合され、その断片Oは基CX2に結合される;
- pは、1又は2に等しい整数であり;
- nは、1〜8に等しい整数であり;
- 基Xは、相互に及びYから独立して(i)水素原子、(ii)ヨウ素原子以外のハロゲン原子、又は(iii)直鎖又は分枝鎖C1-C20アルキル基であり;
- Yは、(i)ヨウ素原子以外のハロゲン原子、(ii)ヨウ素原子以外のハロゲン原子及びC1-C8アルキル基より選ばれた1つ以上の原子で任意に置換されたフェニル基、(iii) 基-O-C(=O)-Z、(iv)ニトリル基、(v)基-C(=O)-O-Z、又は(vi)基-C(=O)-NZ2であり;
- Zは、(i)水素原子、又は(ii)飽和又はエチレン系不飽和又は芳香族C1-C20炭化水素基であり;
- R、G、x、CX2-CXY、nは、本発明の主題である2つの物質で同一であり;
- Iは、ヨウ素原子である
[物質(S2)]。)
に対応する、前記混合物。
(請求項11)
物質(S2)の数平均分子量が500未満であることを特徴とする、請求項10記載の混合物。
(請求項12)
分子量が2000未満のヨウ素化有機物質であって、一般式
R-G-(CX2-CXY-)q-I
(式中、R、G、X、Y、Iは請求項10で定義された通りであり、qは1より大きく10未満の整数である。)
に対応する、前記ヨウ素化有機物質。
(請求項13)
分子量が2000未満のヨウ素化有機物質であって、一般式
R-O-C(=O)-O-(CX2-CXY)-I
(式中、R、X、Y、Iは請求項10で定義された通りである。)
に対応する、前記ヨウ素化有機物質。
(請求項14)
分子量が2000未満のヨウ素化有機物質であって、一般式
R-O-S(=O)p-O-(CX2-CXY)-I
(式中、R、X、Y、I、pは請求項10で定義された通りである。)
に対応する、前記ヨウ素化有機物質。
(請求項15)
分子量が1000未満であることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか1項に記載のヨウ素化有機物質。
(請求項16)
少なくとも1つのエチレン系不飽和モノマーのフリーラジカル重合によるポリマーの調製方法であって、重合において、
(A') エチレン系不飽和モノマー、
(B') ペルオキシド、ジアゾ化合物、ジアルキルジフェニルアルカン、テトラフェニルエタンから誘導される物質、ボラン、少なくとも1つのチウラムジスルフィド基を含むイニファーター物質、、スチレン及びスチレン物質、及び紫外線より選ばれた少なくとも1つのフリーラジカル生成剤、
(C') 請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法で調製された物質(S)、請求項10又は11記載の混合物のヨウ素化有機物質(S2)及び請求項12〜15のいずれか1項に記載の物質より選ばれた1つ以上の物質、及び
任意に更に、
(D') 遷移金属、ランタニド、アクチニド及びIIIa族金属より選ばれた金属と、この金属のリガンドの少なくとも1つの錯体
を用いる、前記方法。
【0036】
実施例1
1.627g(1.56×10-2モル)のスチレン、0.0292g(1.15×10-4モル)の分子ヨウ素、0.0286g(1.95×10-4モル)のジ-tert-ブチルペルオキシド及び1.684gのベンゼンを、10mlのカリウスチューブに導入した。アルゴンを吹込み、そこから酸素を除去し、次に、チューブを液体窒素中で凍結し、減圧下で密封した。
次に、チューブを、120℃まで加熱したオーブンに入れ、まず最初に色が暗褐色のその内容物をそれらの完全な脱色が得られるまで、その中で反応させ、チューブをオーブンに入れた15時間後に脱色が生じた。
このときに、チューブをオーブンから取り出し、その内容物を室温まで冷却した。
反応の生成物を分離し、反応器の粗内容物に適用されたサイズ排除クロマトグラフィでそれらの化学的性質を求めた。
この主旨で、Polymer Laboratories社製の屈折率検出器Shodex RIse-61と2つの混合-C PL-ゲル5μmカラムを備えたWaters Associatesポンプから構成されたプラントを用いた。プラントを、ポリスチレン標準によって標準化した。1.0ml/minの流速で、溶離剤としてテトラヒドロフランを用いた。
【0037】
図1にクロマトグラムで示される、以下の結果が得られた。
- 反応から、式(CH3)3C-O(CH2-CHΦ)Iに対応する化合物に非常に近い、数平均分子量が299のヨウ素化有機物質が得られた;
- サイズ排除クロマトグラフィは、式A-(CH2-CHΦ-)n-I(式中、Φはフェニル基であり、nは0〜4であり、Aはtert-ブトキシ(CH3)3C-O-及び/又はメチル基である。)に対応する5(組)のヨウ素化有機物質を分離し確認することを可能にし、前記メチル基はそれ自体tert-ブトキシ基のβ-切断から生じると考えられる;
- 以下の相関関係に対応した: ピーク1(分子量約239)はn=0と関連付けられた; ピーク2(分子量約277)はn=1と関連付けられた; ピーク3(分子量約367)は、n=2と関連付けられた; ピーク4(分子量約460)はn=3と関連付けられた; ピーク5(分子量約558)はn=4と関連付けられた。
【0038】
実施例2
25mlの1,2-ジクロロエタン、10g(0.1163モル)の酢酸ビニル、0.8g(0.0031モル)の分子ヨウ素及び1.0g(0.0056モル)のジエチルペルオキシジカーボネートをコンデンサが載せられ油浴に浸漬された250mlの2つ口丸底フラスコに導入した。丸底フラスコの内容物の色は、濃い色であった。30分間窒素を吹き込むことによって丸底フラスコの内容物を脱気した。次に、丸底フラスコの内容物を65℃まで加熱し、完全な脱色が得られるまで反応させ、73分間後に脱色が得られた。2つ口丸底フラスコの内容物を急速に冷却した。それは本発明のヨウ素化有機物質を含有する。
【0039】
実施例3
25mlの1,2-ジクロロエタン、10g(0.1163モル)の酢酸ビニル、1.5g(0.0059モル)の分子ヨウ素及び1.0g(0.0056モル)のジエチルペルオキシジカーボネートをコンデンサが載せられ油浴に浸漬された250mlの2つ口丸底フラスコに導入した。丸底フラスコの内容物の色は、濃い色であった。30分間窒素を吹き込むことによって丸底フラスコの内容物を脱気した。次に、丸底フラスコの内容物を65℃まで加熱し、反応させた。65℃の温度を十分に長い時間、即ち、5時間維持し、反応によって消費された酢酸ビニルの量はもはや変化しなかった。反応後、丸底フラスコの内容物が濃い色を保持することが観察された。それは本発明のヨウ素化有機物質を含有する。
【0040】
実施例4
25mlの1,2-ジクロロエタン、14.85g(0.116モル)のn-アクリル酸ブチル、0.8g(0.0031モル)の分子ヨウ素及び1.0g(0.0056モル)のジエチルペルオキシジカーボネートをコンデンサが載せられ油浴に浸漬された250mlの2つ口丸底フラスコに導入した。丸底フラスコの内容物の色は、濃い色であった。30分間窒素を吹き込むことによって丸底フラスコの内容物を脱気した。次に、丸底フラスコの内容物を65℃まで加熱し、完全な脱色が得られるまで反応させ、98分間後に脱色が得られた。2つ口丸底フラスコの内容物を急速に冷却した。それは本発明のヨウ素化有機物質を含有する。
【0041】
実施例5
25mlの1,2-ジクロロエタン、14.85g(0.116モル)のn-アクリル酸ブチル、1.45g(0.055モル)の分子ヨウ素及び0.85g(0.0052モル)のアゾビス(イソブチロニトリル)をコンデンサが載せられ油浴に浸漬された250mlの2つ口丸底フラスコに導入した。丸底フラスコの内容物の色は、濃い色であった。後者を65℃まで加熱し、それらを反応させた。65℃の温度を、十分に長い時間、即ち、5時間維持し、反応によって消費されたn-アクリル酸ブチルの量はもはや変化しなかった。反応後、丸底フラスコの内容物が濃い色を保持することが観察された。それは本発明のヨウ素化有機物質を含有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量が2000未満の1つ以上のヨウ素化有機物質(物質(S))を
(A) ペルオキシド、ジアゾ化合物、ジアルキルジフェニルアルカン、テトラフェニルエタンから誘導された物質、ボラン及び少なくとも1つのチウラムジスルフィド基を含むイニファーター物質より選ばれた少なくとも1つのフリーラジカル生成物質、
(B) エチレン二重結合にフリーラジカルを付加することができる、少なくとも1つのエチレン二重結合を有する、式CΨ2 = CΨΞに対応する少なくとも1つの有機物質
式中、
- Ψ記号は、相互に及びΞから独立して(i)水素原子、(ii)ヨウ素原子以外のハロゲン原子、又は(iii)直鎖又は分枝鎖C1-C20アルキル基であり;
- Ξは(i)ヨウ素原子以外のハロゲン原子、(ii)ヨウ素原子以外のハロゲン原子及びC1-C8アルキル基より選ばれた1つ以上の原子で任意に置換されたフェニル基、(iii)-O-C(=O)-Ω基、(iv)ニトリル基、(v)-C(=O)-O-Ω基、又は(vi)基C(=O)-NΩ2であり;
- Ωは(i)水素原子、又は(ii)飽和又はエチレン系不飽和又は芳香族C1-C20炭化水素基である、
(C) 分子ヨウ素
を用いて調製するための方法であって、
(1) (A)の少なくとも一部、(B)の少なくとも一部及び(C)の少なくとも一部を反応器に導入する工程、次に、
(2) (A)のあり得る残り、(B)のあり得る残り及び(C)のあり得る残りをその中に導入しつつ、反応器の内容が1つ以上の物質(S)を含む混合物[混合物(M)]であるときが達せられるまで、反応器の内容物を反応させる工程
を含み、反応器の内容物を、反応によって消費される(B)の量がもはや変化しなくなるまで反応させることを特徴とする方法。
【請求項2】
物質(S)の数平均分子量が500未満であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(A)のモル数と相対して表される(C)のモル数が100%以上であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
工程(2)後に、更なる工程を含み、それによって混合物(M)の少なくとも1つの物質(S)と混合物(M)中に含有され得る他の物質(S)が分離されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのエチレン系不飽和モノマーのフリーラジカル重合によるポリマーの調製方法であって、重合において、
(A') エチレン系不飽和モノマー、
(B') ペルオキシド、ジアゾ化合物、ジアルキルジフェニルアルカン、テトラフェニルエタンから誘導される物質、ボラン、少なくとも1つのチウラムジスルフィド基を含むイニファーター物質、スチレン及びスチレン物質、及び紫外線より選ばれた少なくとも1つのフリーラジカル生成剤、
(C') 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で調製された物質(S)より選ばれた少なくとも1つの物質、及び
任意に更に、
(D') 遷移金属、ランタニド、アクチニド及びIIIa族金属より選ばれた金属と、この金属のリガンドの少なくとも1つの錯体
を用いる、前記方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−72185(P2012−72185A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−288368(P2011−288368)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2006−505567(P2006−505567)の分割
【原出願日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】