説明

低分枝ジアルキルベンゼン及び関連組成物

【課題】低分枝オレフィンの使用を開示すること。
【解決手段】アルキル側鎖の炭素数がC10乃至C28、又は好ましくはC11乃至C24、又はより好ましくはC12乃至C18のジアルキル芳香族化合物を含む合成基油組成物であって、アルキル側鎖の分枝特性が、2.1超乃至3.5未満、又は好ましくは2.15乃至3.25、又はより好ましくは2.2乃至3.0であるC13NMR分光法により決定される全メチル数(TMN)、又は0.1超乃至1.5未満、又はより好ましくは0.15乃至1.25、又はより好ましくは0.2乃至1.0である分枝指数(BI)を有する、合成基油組成物。この合成基油組成物は、高粘度指数、低揮発性、優れた低温特性、及び改善された熱/酸化安定性を兼ね備え、高品質の合成基油主原料、第2の基油成分、あるいは潤滑剤及び追加包装用途の添加剤としての使用に特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの長いアルキル側鎖、すなわち、C10乃至C28の炭素数を有する芳香族化合物を含む合成基油組成物であって、長いアルキル側鎖が明確に定められた分枝特性を有する合成基油組成物に関する。本発明の合成基油は、高粘度指数、低揮発性、優れた低温特性、及び改善された熱/酸化安定性を兼ね備えている。これらは、高品質の合成基油原料として、第2の基油成分として、希釈剤として、あるいは潤滑剤及び追加包装用途の添加剤としての使用に特に適している。
【背景技術】
【0002】
高粘度指数、低揮発性、優れた低温特性、ならびに熱/酸化安定性は、PAOとして公知の/略記する重合アルファオレフィン基油などの合成潤滑剤主原料が示す最も望ましく、且つ重要な性能特性からなる。例えば、米国特許第6,869,917号には、合成エンジンオイルの配合におけるPAOの使用が教示され、この場合、PAOが、好ましくは、120を超える粘度指数及び4%乃至約12%のSelBy−NOACK(NOACKと略記する)揮発性を示すことが要求されている。今後の重いディーゼルエンジンの必要条件として13%の最小NOACK揮発性規格値が必要になるだろう。NOACK13%の値は、2007年にカミンズが提案したディーゼル潤滑剤の規格値であり、ACEA、EMA及びJAMA協会、軽量車ディーゼルエンジンオイルの全体性能規格が10Wグレ−ド以外のディーゼルエンジンオイル用の最小の揮発性としてこの値を引用した。さらに、PAOは、特に寒い気候条件でエンジンオイルのポンプ能力/始動性能を高めるため、エンジンオイル用途、及び低温で結晶化/ワックス形成に耐えられない多くの潤滑剤及び添加剤用途にとって重要である、優れた低温特性を有するワックスを含まない合成組成物として、認められた。冷凍機油は、ワックスを含まない顕著な低温特性を必要とする一例で、これは、1993年の最終報告ARTI−21 CR/611−500、“Using acid number as indicator for refrigeration system performance”という標題の、空調研究機関後援の研究報告で詳細に記載されている。実質的に直鎖アルキルフェノ−ルは、ワックスを含まない操作を確保するために提案された(米国特許第5,600,025号を参照)。例えば、冷凍機油中の微量のワックス成分の存在は、毛細管の閉塞、ひいてはシステム障害を引き起こすことが知られている。潤滑剤及び添加剤中のワックス構成成分は、添加剤分配システムのインラインフィルタ装置及び実際の運転エンジンの燃料又は注油システムを塞ぐおそれがある。このような詰まりは、明らかに大惨事を引き起こすことになり、避けなければならない。
【0003】
120を超える粘度指数は、最高の部類の鉱油系生成物の1つであるGIII基油を低級のGI及びGII基油の部類から分ける重要な性能規格値でもある。低温特性の領域を除いてPAOに匹敵するこのような改善及び他の性能の利点のため、GIII基油は、今日、欧州や北米において「合成」主原料とみなされている。
【0004】
これらの良好な性能特性にもかかわらず、PAO及びGIII基油を含む上述の合成物は、添加剤に対する溶解性が低いため、エステルなどの第2基油成分、又は油溶性PAGなどの他の酸素含有基油、又は炭酸塩などの極性の主原料を必要とすることが多い。「Esters in Synthetic Lubricants and High Performance Functional Fluids」(第2版)、Rudnick LR及びShubkin RL (編)、Marcel Dekker, New York, 63−101頁を参照すること。エステルは、良好な添加剤溶解性を有するが、加水分解及び熱/酸化分解しやすいので、結果として、酸/スラッジ形成傾向が高くなる。油溶性PAG又は他の極性主原料は、いくつかの性能の利点を提供するが、多くの場合、吸湿性で、システムの成分及び潤滑剤自体の残りと相溶性があるという問題がある。したがって、上記性能の必要条件をすべて満たす合成流体を得ること、そして当面は添加剤に対する内部溶解性などの追加性能特性を提供することが大いに望まれている。
【0005】
合成重質アルキルベンゼン流体(以下、「重質アルキレート」と呼ぶ」)は、オレフィン又はパラフィン供給原料をベンゼンと反応させてアルキレート洗剤生成物から単離した副生成物として工業的に知られている。R. A. Meyers著の“Handbook of Petroleum Refining Processes”, McGraw−Hill, New York, 1997年、第2版、153乃至166頁を参照すること。これらの重質アルキレートは、鉱油由来の石油と比較すると、内部溶解性、優れた低温特性及び改善された熱/酸化安定性を提供するが、ジアルキルベンゼン(DABと略記する)ならびに高級アルキレートを含むアルキレート洗剤の再アルキル化生成物以外の異性化/転位生成物の有意な部分を含むという事実のため、一般に低粘度指数と高揮発性を示す。例えば、プロピレン四量体などの分枝オレフィン系の重質アルキレートでは、30未満乃至さらに負の値までの低いVIが得られ、一方、直鎖オレフィン系の重質アルキレートでは、従来の鉱油系生成物ほど良くない、一般に40乃至110の間の粘度指数が得られた。これらの欠点のため、重質アルキレートの使用は、ナフテン系オイルの合成置換基として用いられ、密閉したシステムなどの揮発性及び粘度指数に関する要求が高くない用途、例えば、冷凍機油、伝熱及び絶縁流体の用途などに限定される。
【0006】
米国特許第3,173,965号には、HF、AlCl3、BF3などのフリ−デル・クラフツ液体酸触媒の存在下での2段階アルキル化プロセスによる95以上の最小粘度指数と15°F(−9.4℃)以下の流動点を有するDABの高収率合成が開示されている。適切なアルキル化剤には、ワックス又はペトロラタム熱分解プロセスによって製造した純粋な直鎖アルファオレフィン又はオレフィンが含まれる。
【0007】
米国特許第4,148,834号には、HF触媒を用いて製造した生成物の粘度指数を改善する、上記2段階アルキル化プロセスにおけるAlCl3又はAlBr3の使用がさらに教示されている。
【0008】
米国特許第3,288,716号には、最小粘度指数が90以上、−40℃の粘度が25,000cst以下、流動点が−70℃以上、及び引火点が430°F以上の副生成物のアルキレート残油の使用が開示されている。
【0009】
米国特許第4,011,166号には、短い直鎖アルファオレフィンとベンゼンとの反応による同時重合アルキル化プロセスが記載されている。このような化学反応によって、非常に高い粘度及び幾分改善された粘度指数を有するが、低温特性をもたないアルキレート生成物が得られるが、この場合、特許権者は、炭素数がC14以上の際、流動点の改善が難しいと指摘している。
【0010】
米国特許第6,491809号には、ベンゼンと直鎖アルファオレフィンの反応による形状選択性固体触媒の使用によるDABの生成が教示される。触媒の形状選択性はアルキル側鎖異性化を最小にし、2−直鎖異性体含有量が非常に高いDABの独占的形成を可能にする。高含有量2−直鎖異性体の形成により高粘度指数が得られるが、その結果、非常に高い流動点と低温クランキング粘度を有し、さらに0℃程度の温度で結晶化傾向が高いDAB生成物が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明では、重質アルキレート及び上記の従来技術に記載のものに匹敵するものがない驚くべき新規な性能の利点を兼ね備えたDAB組成物の生成における、低い/制御された分枝度を有するオレフィン(以下、低分枝オレフィンと呼ぶ)の使用が開示されている。本発明のDAB組成物は、この性能の利点を兼ね備えることにより、広範な潤滑剤用途の独立型且つ高品質な合成主原料として認可される。その内部ベンゼン部分は、添加剤に対する固有の溶解性、ならびに添加剤を用いて、また添加剤を用いないで改善された潤滑性などの追加性能の利点を提供するので、エステル代替品、第2基油又は添加剤成分としても使用できる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態において、固体酸触媒の存在下、ベンゼンと低分枝オレフィンとの反応によるジアルキル化生成物を主に含む低分枝DAB組成物であって、オレフィンがC10乃至C28、又はC11乃至C24、又はより好ましくはC12乃至C18の範囲の炭素数を有する、低分枝DAB組成物を提供する。
【0013】
本発明の一実施形態において、低分枝DABの分枝特性は、以下のように決定される。
【0014】
【数1】

【0015】
【数2】

【0016】
本発明の一実施形態において、低分枝DABの分枝特性は、C13NMR分光法により決定される「全メチル数(TMNと略記する)」が2.1乃至3.5、好ましくは2.15乃至3.25、又はより好ましくは2.2乃至3.0であると定義される。
【0017】
本発明の一実施形態において、本発明の低分枝オレフィンは、分枝度で定義される「分枝指数(BIと略記する)が0.1超(より大きく)乃至1.5未満、又はより好ましくは0.15乃至1.25、又はより好ましくは0.2乃至1.0であると決定されることを特徴とする。
【0018】
本発明の一実施形態において、本発明の低分枝オレフィンは、従来公知の適当な触媒を用い、異性化/アルキル化条件下で調製された、末端、内部又はビニリデン型、又はそのような官能基型の少なくとも1つを含有する混合物のいずれであってもよい。
【0019】
本発明の別の実施形態において、本発明の低分枝オレフィンは、C10、C11、C12、C13、C14又はC15などの単一炭素範囲、又は異なる炭素範囲の混合物から選択されてもよい。
【0020】
本発明の一実施形態において、所望の分枝特性を有するオレフィンへの直鎖アルファオレフィンの前異性化によって、又はパラフィンの脱水素と、それに続く骨格異性化によって、又は従来公知の方法により生じる、あるいは本発明が所望する適当な分枝特性が得られる同時アルキル化/異性化プロセスを介して原位置で生じることが可能な所望の分枝特性を有するイソパラフィンの脱水素によって、低分枝オレフィンが得られる。
【0021】
本発明の別の実施形態において、ヘキセン/オクテン二量化などのオレフィンオリゴマー化又は従来公知のフィッシャー・トロプシュ反応などの他の化学反応によって、あるいは異なる分子特性を有するオレフィンの配合、例えば、直鎖アルファオレフィンを上記から選択することができる分枝オレフィンと化合することによって本発明の低分枝オレフィンを調製して所望の分枝を達成することができる。
【0022】
本発明の一実施形態において、低分枝DABは、ジ−、トリ−又はそれ以上のアルキレートであってもよく、かつDAB含有量が85%を超え、モノアルキレート含有量が0.5%未満のポリアルキル化生成物の混合物を含有する。
【0023】
本発明の一実施形態において、低分枝DABは、最小粘度指数120、最大流動点−40℃、SelBy−NOACK(NOACKと略記する)揮発性13%以下、及び40℃の低温クランキング擬似(CCSと略記する)粘度20000CP以下を含む新規の驚くべき性能特性を兼ね備えていることを示す。
【0024】
本発明の実施形態にしたがって得たDAB組成物は、水素添加、粘土処理又は加工されて、その色と外観を改善することができ、約1%乃至100%の量で潤滑油の調合に用いることができる。潤滑油は、特定の潤滑剤用途によって所望されるさまざまな機能の提供に必要な量の多くの添加剤及び/又は他の基油を含むことができる。
【0025】
一実施形態において、本発明は、アルキル側鎖の炭素数がC10乃至C28のジアルキル芳香族化合物を含む合成基油組成物であって、前記アルキル側鎖の分枝特性がC13NMR分光法により決定される全メチル数(TMN)が2.1超(より大きく)乃至3.5未満、又は分枝指数(BI)が0.1超乃至1.5未満である合成基油組成物を提供する。この合成基油組成物は、高級の合成主原料、第2基油組成物、潤滑剤及び追加包装用途の添加剤として適応させる、高粘度指数、低揮発性、優れた低温特性、及び改善された熱/酸化安定性を兼ね備える。本発明の合成基油組成物は、1%乃至99%の濃度で基油又は添加剤成分として合成潤滑剤用途に用いることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のDAB組成物の性能特性は、潤滑剤調合の当業者に公知の酸化防止剤、他の添加剤などの添加剤の添加によってさらに改善及び拡大されて、目的とする用途の特定の機能の必要条件を満たすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明の理解を助けるために、添付の図面を参照する。図面は例示のためのみに示されるものであって、本発明を限定するものではない。
【0028】
前記ジアルキル芳香族化合物の組成物の調製に本発明で用いた2種類の供給原料は、芳香族化合物及び低分枝オレフィンである。例えば、図1A乃至1Dで提供される工程流れ図にしたがって、これら2種類の供給原料は、アルキル化領域に供給され、本発明のDAB生成物を提供する。芳香族供給原料は、好ましくはベンゼン、あるいは低分枝オレフィンとアルキル化できるトルエン、エチルベンゼン、キシレン、アニソ−ル、ナフタレン、メチルナフタレン又は上記の誘導体を含む芳香族化合物である芳香族部分を含む。しかしながら、ベンゼン以外の芳香族化合物の使用/選択は、最終的にDAB主原料組成物の性能特性に影響を与えるアルキル化度を制限する/変化させる恐れがあるので、慎重に行なわなければならない。
【0029】
本発明の一実施形態において、本発明の低分枝オレフィンは、従来公知の適当な触媒を用い、異性化/アルキル化条件下で調製された、末端、内部又はビニリデン型、又はそのような官能基型の少なくとも1つを含有する混合物のいずれであってもよい。
【0030】
図2に、全メチル炭素数(TMNと略記する)と分枝指数(BIと略記する)との関係を示す。分子を含有する任意の炭化水素中に存在する炭素基、すなわち、メチル、メチレン、メチン、四級炭素基の4つの構造型がある。TMNは、本発明のDAB組成物のアルキル側鎖上のメチル基の構造型に属する全炭素数である。米国特許第5,922,922号のNMR(H1及びC13)分光法に開示した赤外線分光法などの分析技術、又は従来公知の他の方法を用いて、通常、メチル基の特性決定、割り当て及び定量が行なわれる。本発明で用いた分析法は、初めに、メチル基のC13化学シフトをDEPT法によって識別した/割り当てた後、これらの化学シフトの面積をスペクトルの全脂肪族炭素領域の残部に対して実験誤差5%以内で積分する、C13NMR分光法に基づいている。アルキル側鎖の構造が完全に直鎖である場合、まさに2つの末端メチル炭素(ゆえにTMN=2)が予見される。逆に、TMN値が2を超えると、分子中の分枝を示す結果となる。TMNから2を引くことで本発明のDAB組成物中の分枝度を直接示す分枝指数値が得られる。
【0031】
低分枝オレフィンは、モノ置換、ジ置換又はトリ置換できる直鎖状及び分枝状分子の混合物を含んでもよく、その分枝特性は図2に示すTMN又はBI値のいずれかで定義され、以下の式にしたがってC13NMR分光法によって算出/決定される。
【0032】
【数3】

【0033】
【数4】

【0034】
合成潤滑剤主原料の分野において、アルキル側鎖構造の分枝は分子の直鎖度の尺度である分子の粘度指数を有意に減少/低下させ、その上NOACK揮発性などの他の物性に悪影響を与えることが知られている。低分枝オレフィンの分枝特性を制御することによって、高粘度指数、低NOACK揮発性、ならびに優れた低温特性を含む優れた性能特性を所望に兼ね備えた本発明のDAB組成物を生成することができることが以外にも分かった。120の最小粘度指数を達成するために、本発明のDAB組成物の低分枝オレフィンのTMNは、図3に示すように、2.1乃至3.5、好ましくは2.15乃至3.25、より好ましくは2.2乃至3.0であるか、又は対応するBIで0.1超乃至1.5未満、より好ましくは0.15乃至1.25、さらにより好ましくは0.25乃至1.0であることが分かった。
【0035】
低分枝オレフィンのアルキル基分枝又は複数のアルキル基分枝は、分子中の脂肪族オレフィン鎖上の炭素に結合でき、メチル、エチル、プロピルなど、又は上記のすべての混合物から選択できる。本発明の低分枝オレフィンのオレフィン官能基は、以下の一般式:R12−C=C−R34に記載の末端(あるいはアルファという)、ビニリデン又は内部型、又はそのような官能基型の少なくとも1つを含有する混合物のいずれであってもよい。
【0036】
本明細書で用いたように、「末端/アルファオレフィン」という用語は、R1−CH=CH2(R2、R3、R4=H)の化学式を有するオレフィンを意味する。ビニリデンという用語は、R12−C=CH2(R3、R4=H)の化学式を有するオレフィンを意味する。内部オレフィンという用語は、R12−C=CR34(オレフィン官能基に結合する少なくとも1つの脂肪族基、非水素基)の化学式を有するオレフィンを意味する。
【0037】
NOACK揮発性が関係する際、DAB組成物の全炭素数は、90%を超える濃度でC26、より好ましくはC28を超えなければならない。そうすることにより、NOACK揮発性は13%以下になることが予想される。これはアルキル側鎖基の鎖長が少なくともC10、好ましくはC11以上であることを示す。DAB組成物の鎖長の選択におけるもう一つの考慮すべきことは粘度である。一般に、アルキル鎖長が長くなるほど、粘度グレ−ドが高いDAB組成物が達成される。
【0038】
低分枝オレフィンの生成は、本発明の不可欠な要素ではなく、いかなる理論に拘束されることなく、低分枝オレフィンは、米国特許第4,855,527号に開示したZSM−5及びZSM−23などの形状選択性固体触媒によるパラフィン脱保護又はパラフィン/オレフィン異性化、又は図1の1及び2部分に記載のプロセスの組み合わせ及び/又は従来公知の他のプロセスの組み合わせのいずれかにより製造して、所望の分枝特性を達成する。このような低分枝オレフィンは、それを異性化し、図1に記載の固体酸アルキル化触媒の存在下で、後に/同時にアルキル化するアルキル化プロセス中に原位置で生成することもできる。
【0039】
本発明のDAB組成物の調製に用いるアルキル化プロセスは、従来公知/当業の多くのアルキル化固体触媒を用いて行なうことができる。例として、粘土、無定形シリカ−アルミナ、ゼオライトなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
上記に記載の詳細な条件にしたがって調製されたDAB組成物は、重質アルキレート及び上記の従来技術で開示したものに匹敵するものがない高粘度指数、低揮発性、優れた低温特性、及び改善された熱/酸化安定性を含む重要な性能特性に匹敵し、それを超える。この性能の利点を兼ね備えることにより、適切であれば、独立型基油、第2基油成分又は添加剤として使用できる高級の合成潤滑剤主原料としてDAB組成物の使用を可能にする。
【0041】
本発明のDAB組成物は、さらに、水素添加、粘土処理又は従来公知のプロセスにより処理されてその色と外観特性を改善し、存在する水分又は残留触媒などの残留不純物を除去する。このような追加処理は従来公知で、優れた電気特性を必要とする絶縁/ケ−ブル流体及び冷凍機油などの高感度で重要な用途にさらに適切な流体を生成する。
【0042】
本発明のDAB組成物の性能特性は、潤滑剤調合の当業者に公知の酸化防止剤、他の添加剤などの添加剤の添加によってさらに改善及び拡大されて、目的とする用途の特定の機能の必要条件を満たすことができる。
【0043】
下記に示した次の実施例において、モルデン沸石型ゼオライトなどのアルキル化触媒を用いて、主にDABアルキレートを含有する本発明のDAB組成物の製造に低分枝オレフィンを用いる利点と重要性を示す。以下の考察を明確かつ容易にするために、表1で重要/概要情報を有する実施例と比較例のそれぞれに対して流体IDを割り当てる。以下に示した考察は例示のために提供され、本発明の範囲を実施例で示した実施形態に限定するものではないことは理解されるべきである。
[表1]本明細書で提供した実施例の流体ID及び概要プロセス条件

*オレフィン供給源 IV:InnOvene、M:三菱、S:シェル
【実施例1】
【0044】
ベンゼン及び、85%のC12アルファオレフィン純度と11%のC12分枝ビニリデンオレフィンを有する、InnOveneから供給されたドデセンを80%モルデン沸石型ゼオライトと20%のアルミナを含有する固体酸触媒と、入口温度210℃の重量時間空間速度(WHSV)(1時間あたりの触媒の重量に対する供給原料の重量)=2h-1で反応させた。その結果、生じた生成物の混合物からC12−系DAB生成物を蒸留により分離してモノアルキルベンゼンを0.5%未満まで除去し、NMR及び他の分析方法によって特性を決定する。
【実施例2】
【0045】
ベンゼン及び、85%のC12アルファオレフィン純度と11%のC12分枝ビニリデンオレフィンを有する、InnOveneから供給されたドデセンを、実施例1に記載と同じ手順/プロセス条件にしたがって入口温度190℃で反応させた。C12系DAB生成物を単離して、実施例1に記載のように特性を決定する。
【実施例3】
【0046】
三菱化学から供給されたテトラデセンを、ゼオライト触媒を用いて異性化して4%のアルファオレフィン純度と75%を超える分枝ビニリデンオレフィンを有する異性化C14オレフィンを得た。次に、ベンゼンと異性化前オレフィンを実施例1に記載される同じ手順/プロセス条件にしたがって入口温度200℃で反応させた。C14系DAB生成物を単離して、実施例1に記載のように特性を決定する。
【実施例4】
【0047】
ベンゼン及び、74%のアルファオレフィン純度と18%のC14分枝ビニリデンオレフィンを有する、InnOveneから供給されたテトラデセンを、実施例1に記載される同じ手順/プロセス条件にしたがって入口温度220℃で反応させた。C14系DAB生成物を単離して、実施例1に記載のように特性を決定する。
【0048】
[比較例1、2、4、5]
ベンゼン及び、90%を超える高アルファオレフィン純度並びに5%未満の分枝ビニリデンオレフィンを有する、三菱化学(C14)、シェル化学(C12、C16)からそれぞれ供給されたC12乃至C16オレフィンを実施例1に記載と同じ手順・反応・触媒条件にしたがって、表1(ならびに表2及び表3)に記載の特定の入口温度で反応させた。DABのアルキレート生成物を単離して、実施例1に記載のように特性を決定する。
【0049】
[比較例6及び7]
ベンゼン及び、分枝オレフィン、すなわち、ブテン三量体、プロピレン四量体のそれぞれを、HF触媒を用いて工業プロセスで反応させた。モノアルキレートならびにDABとモノアルキレートとの中間生成物を除去した後、重産物を単離して実施例1に記載のように特性を決定した。
【0050】
[比較例8乃至11]
比較例8乃至11では、比較用に選択した市販の試料である。その組成物/触媒を表1に表示する。
【0051】
表2、表3は、上述の実施例に関するプロセス条件、オレフィン/アルキル側鎖の分枝特性、粘度特性及び性能データの概要を示す。
[表2]ISO22 粘度グレ−ドC12系DAB流体の検査性能

*:米国特許第6,491809号、表3、NR:記録されず

[表3]ISO32粘度グレ−ドC14系DAB流体の検査性能

【0052】
比較例1乃至3(流体C/D/E、表1及び表2参照)において、モルデン沸石及び市販のC12直鎖アルファオレフィン(比較例3で用いた純粋なアルファオレフィン)の使用により高含有量の2−直鎖異性体、したがって粘度指数の高いDABが得られるが、−40℃の低温クランキング擬似/CCS粘度で測定される良好な低温特性が常に得られるとは限らないことが容易に分かる。CCSは、低温での潤滑剤のポンプ能力及び始動性能の実証に必要な重要な試験である。オレフィン供給の分枝特性を(流体CからBへ)、及びプロセスの入口温度を(流体DからAへ)上昇させることによって、高粘度指数を保持しながら、−40℃での非常に改善されたCCS特性を有するDABを高収率で生成することができる。分枝が粘度指数を有意に下げ、おそらく分子のかさ高さの増加により、固体酸触媒プロセスにおけるオレフィンのアルキル化反応性を低下させることが知られているので、このような改善は意外である。C13NMRで、さらに前記ジアルキルベンゼン成分のアルキル側鎖の分枝特性の一定の上昇(流体CからA)が確認される。高温でのDAB生成物中のメタ異性体の増加(流体CからA)は、さらに熱力学的に好ましい生成物であるメタ異性体と一貫性があるが、改善された低温特性に寄与する有意な役割を果たすようには思われない(異性体分布は、基本的に流体BとCでは同じである)。別の驚くべき要素は、2−直鎖同位体(流体A/B)とパラ異性体の有意な減少であり、これは高粘度指数の要因であると考えられるが、本発明の前記ジアルキルベンゼン組成物の粘度特性に影響/それが劣化するようには思われない。
【0053】
次に、C14系DAB(表3)の場合、上昇したプロセス入口温度(180℃(流体H)乃至220℃(流体G))による同じ分枝増加傾向が確認された。再度、低温特性(流動点0℃乃至−40℃)の顕著な改善がみられた。分枝の効果を立証するために、直鎖オレフィンを前異性化した後、低いプロセス温度(200℃−流体F)でアルキル化を行なって、良好な粘度指数を維持する一方、低温特性(流動点−40℃乃至−58℃)に関するさらなる改善を達成することができる。プロセス温度の低下は、触媒老化を改善し、望ましくない副反応の可能性を減少させる。
【0054】
流体Iは、直鎖オレフィンの混合物がDABの調製において使用された一例である。このような取り組みは、基油特性を調整/最適化するために従来技術で通常用いられ、流動点に関するいくつかの改善が得られるが、−40℃で適度なCCS粘度が得られない。
【0055】
[表4]市販のDAB、PAO及び鉱油系生成物との比較データ

【0056】
低い/制御された分枝度の重要性を説明するために、HF触媒を用いた、BT(BI約2)及びPT(BI約3)オレフィンをそれぞれベースとする流体J、Kを比較用に提供する。モノアルキレートと軽留分を除去した後、単離したアルキレート生成物はDABならびにトリアルキル化生成物を含有することが分かった。表4に示した結果は、これらが低い/許容できない揮発性を有し、本発明によって調製されたDABよりはるかに劣った粘度指数特性を有することを示した。
【0057】
さらに、市販の基油との比較を表4に示し、この比較により、流体A(C12DAB)及び流体F(C14DAB)が、PAOならびにGIII/GII水素添加流体の高粘度指数、低揮発性、優れた低温特性及び添加剤に対する溶解性を含む重要な性能特性を匹敵し、それを超えることが示される。
【0058】
図2に示したTMNとBIとの分枝関係は、さらに従来公知のものと同様に本実施例を含む以下の表5に示すことができる。前記ジアルキルベンゼンのアルキル側鎖の炭素数が多いほど、粘度指数が高くなることが予想される。高いTMN(2.5乃至2.6)の本発明のC14系DABは、低いTMN(2.1乃至2.4)を有するC12系DABと同等のVIが得られる。TMNが高いほどアルキル側鎖が多くなることが予想される。さらに、オレフィンを異なるBI部類群から配合/混合することによって本発明に記載の所望の分枝が達成できることが考えられる。

[表5]流体A乃至J用のオレフィンの分枝特性/部類

【0059】
このように包括的にかつ具体的な実施例を参照して本発明を説明し、同じことが多くの方法において変更できることが当業者に容易に明らかになるだろう。このような変更はすべて本発明の精神によって包含され、本発明の特許範囲を添付の特許請求の範囲において画定する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1A】直接オレフィン異性化による低分枝オレフィンの形成を示す工程流れ図である。
【図1B】パラフィンの脱水素と、それに続くオレフィン異性化による低分枝オレフィンの形成を示す工程流れ図である。
【図1C】所望の分枝を有するイソパラフィンの脱水素による低分枝オレフィンの形成を示す工程流れ図である。
【図1D】異性化/低分枝オレフィンの原位置形成と、それに続くベンゼンを用いた原位置アルキル化による低分枝オレフィンの形成を示す工程流れ図である。
【図2】全メチル炭素数(TMNと略記する)と分枝指数(BIと略記する)との関係を示す。
【図3】TMN値の最大値を3.5まで外挿して最小粘度指数120を達成する、本発明の実施例のTMN値対粘度指数をプロットする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10乃至C28のアルキル側鎖の炭素数を有するジアルキル芳香族化合物を含む合成基油組成物であって、前記ジアルキル側鎖の分枝特性が、C13NMR分光法により決定される全メチル数(TMN)が2.1超乃至3.5未満、又は分枝指数(BI)が0.1超乃至1.5未満であることを特徴とする、合成基油組成物。
【請求項2】
ジアルキル芳香族化合物の含有量が、合成基油組成物の全重量に基づいて少なくとも85重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の合成基油組成物。
【請求項3】
前記芳香族化合物が、ベンゼン、トルエン、ビフェニルオキサイド、ビフェニル、アニソ−ル、ナフタレン及びメチルナフタレンからなる群から選択される1種であることを特徴とする、請求項1に記載の合成基油組成物。
【請求項4】
前記アルキル側鎖の炭素数が、C11乃至C24であることを特徴とする、請求項1に記載の合成基油組成物。
【請求項5】
前記アルキル側鎖の炭素数が、C12乃至C18であることを特徴とする、請求項1に記載の合成基油組成物。
【請求項6】
前記ジアルキル芳香族化合物のTMNが、2.15乃至3.25、又はBIが0.15乃至1.25であることを特徴とする、請求項1に記載の合成基油組成物。
【請求項7】
前記ジアルキル芳香族化合物のTMNが、2.2乃至3.0、又はBIが0.2乃至1.0であることを特徴とする、請求項1に記載の合成基油組成物。
【請求項8】
前記合成基油組成物が、120の最小粘度指数、−40℃の最大流動点、13%以下のSelBy−NOACK(NOACK)揮発性、及び20000CP以下の−40℃における低温クランキング擬似粘度(CCS)を有することを特徴とする、請求項1に記載の合成基油組成物。
【請求項9】
前記合成基油組成物が、直鎖又は分枝型である付加合成アルキレートをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の合成基油組成物。
【請求項10】
前記合成基油組成物が、重合アルファオレフィン基油及び鉱油からなる群から選択される第2合成基油をさらに含む、又は潤滑添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の合成基油組成物。
【請求項11】
直鎖、末端、内部、ビニリデン又は分枝型、又はその混合物であるオレフィンを用いて芳香族化合物をアルキル化し、その結果生じたアルキル化芳香族化合物を異性化して前記アルキル側鎖中に特定の分枝特性を提供することを特徴とする、合成基油組成物の製造方法。
【請求項12】
アルキル化工程及び異性化工程を、粘土、無定形シリカ−アルミナ及びゼオライトからなる群から選択される固体酸触媒の存在下、リサイクル式又は2段階式で行なって、前記ジアルキル芳香族化合物を主要量で生成することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アルキル化工程及び異性化工程をリサイクル式又は2段階式で行なって、所望のジアルキル芳香族化合物を主要量で生成することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記オレフィンを、
a)パラフィンを異性化してイソパラフィンを生成する工程、
b)生じたイソパラフィン含有蒸気から水素を除去してモノオレフィン含有蒸気を生成する工程、及び
c)モノオレフィン蒸気を選択的に水素化してジエンを除去し、前記アルキル側鎖に必要な特定の分枝特性を有するモノオレフィンを生成する工程
によって調製することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記オレフィンを、形状選択性のオレフィンオリゴマー化及び/又は異性化プロセスを行なって、前記アルキル側鎖に必要な特定の分枝特性を有するモノオレフィンを生成する工程によって調製することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記オレフィンを、フィッシャー・トロプシュ法を行なって、前記アルキル側鎖に必要な特定の分枝特性を有するモノオレフィンを生成する工程によって調製することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記オレフィンを、直鎖オレフィンと分枝オレフィンを配合及び/又は混合して、前記アルキル側鎖に必要な特定の分枝特性を有するモノオレフィンを生成する工程によって調製することを特徴とする、請求項11に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−106274(P2008−106274A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275099(P2007−275099)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(507350901)和益化学工業股▲分▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】