説明

低太陽熱利得係数、優れた化学及び機械的特性を有する低放射率コーティング及びその製造方法

本発明は少なくとも1つの吸収層を含む低放射率積層を提供する。該積層は、低太陽熱利得係数(SHGC)、優れた美観、機械的および化学的耐久性、さらに焼きなまし又は熱強化に対する耐性を特徴とする。そのうえ、本発明は基板の外側から順に、第1の誘電体層;第1のAg層;第1のバリア層;第1の吸収層;第2の誘電体層;第2のAg層;第2の吸収層;第3の誘電体層;及び、任意の、トップコート層を含む低放射率コーティングと、このようなコーティングを基板上に付着させる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には低放射率(「low−e」)コーティングに関し、特に、低太陽熱利得係数(SHGC)(「low−g」)を有するコーティング、さらに、機械的及び化学的耐久性を保持しているあるいは優れた機械的及び化学的耐久性を有するコーティングに関する。
【0002】
《関連する出願への相互参照》
本出願は、2005年5月12日付で出願した米国仮特許出願第60/680,008号、2005年11月16日付で出願した米国仮特許出願第60/736,876号、および2005年12月16日付で出願した米国仮特許出願第60/750,782号の利益を主張する特許出願であり、これら全ての内容全体を参照によって本願明細書に援用したのもとする。
【背景技術】
【0003】
本出願において参照する全ての米国特許明細書はその全体を参照によって援用する。矛盾がある場合は、定義を含め、本出願の内容が優先する。
【0004】
透明パネルまたは基板上の太陽熱制御コーティングは、赤外線(IR)を阻止しつつ可視光が透過するように設計されている。例えば、建築用ガラス及び自動車の窓に高い可視透過率、低放射率コーティングを適用することによって、冷暖房等の環境管理関連コストの大幅な削減をもたらす。
【0005】
一般に、高い可視透過率及び低放射率を備えたコーティングは、通常は透明な基板と光学コーティングを含む積層から成る。該積層は、複数の反射防止誘電体層間に配置された、高い赤外線反射率及び低透過率を有する1つ以上の金属薄層を含む。これらの仕組みは輻射熱を反射し、太陽熱と同様に冷気を絶縁する。今日使用されているほとんどの低放射率積層は、透明な誘電体を基礎にしている。一般に誘電体層の厚さは、光透過率が高く(>60%)なるように内側及び外側の反射率を減らすべく調整されている。赤外線反射金属層は、例えば、銀、銅あるいは金など事実上どのような反射金属であってもよい。銀(Ag)はどちらかといえば中間色であるため、本用途に最もよく使用される。通常、反射防止誘電体層は可視透過率を向上させるために選ばれた透明な材料である。
【0006】
従来の低放射率コーティングは、通常、コーティングが「中間」色、つまり、実質的に無色となるように、可視スペクトル全体にわたって比較的一定の反射を維持しようとする。しかしながら、従来の低放射率コーティングは、美観及び他の理由により、特定の用途に必要とされている反射色の極みを備えない。
【0007】
コーティングした基板で所望の特性を得るためには、複層コーティングの各層の組成及び厚さを慎重に選ばなければならない。例えば、Ag等の赤外線反射層の厚さは慎重に選ばなければならない。Ag層の放射率は、Agシート抵抗の低下と共に減少する傾向があることはよく知られている。このため、低放射率Ag層を得るためには、Ag層のシート抵抗はなるべく小さい方がよい。しかしながら、Ag層の厚さを増やすことは可視透過率をも低下させ、結果として、一般に好ましくない色となる。シート抵抗及び放射率を増やすことなくAg層厚を減らして可視透過率を上昇させ得ることが望ましい。
【0008】
Agから成る薄くて透明な金属層は、湿潤な状況において、例えば、空気によって運ばれる塩化物、硫化物、二酸化硫黄等、種々の腐食性物質と接すると腐食しやすい。Ag層を保護するために種々のバリア層をAg上に付着できる。しかしながら、従来のバリア層による保護では不十分なことが多い。
【0009】
多くの用途に使用されているコーティングされたガラスのコーティングは高い温度に曝されている。例えば、自浄式調理用オーブンのガラス窓のコーティングは、頻繁な逸脱を含み、つまり、洗浄サイクル中に480℃まで上昇することを含んで、120から230℃の調理温度まで繰り返し上昇される。さらに、コーティングされたガラスを焼きなましあるいは曲げる際には、コーティングもガラスと共に最長で数分間、約600℃以上の温度まで加熱される。これらの熱処理はAgコーティングの光学特性を不可逆的に劣化させる可能性がある。この劣化は、Agの上下層にわたって拡散する酸素によるAgの酸化によって生じることがある。劣化は、Agとガラスから移動する、例えば、ナトリウム(Na+)等のアルカリイオンとの反応によっても生じることがある。酸素又はアルカリイオンの拡散は、Agの上下誘電体層の劣化又は構造的改良によって促進及び拡大することがある。コーティングはこれらの高い温度に耐性がなければならない。しかしながら、これまで知られているAgを赤外線反射薄膜として採用している複層コーティングは、多くの場合、Ag薄膜が劣化せずにこのような温度に耐えることができない。
【0010】
低放射率コーティングについては、特許文献1及び特許文献2に開示されている。真空蒸着された銀を含む低放射率コーティングは、開口部用建材市場において現在市販されている。
【0011】
特許文献2には易酸化性金属を、焼なまし可能(temperable)な低放射率コーティングの保護に有効な、ヘーズ低減トップコート(保護膜)として使用することが記載されている。この発明は600℃を超える温度に曝した場合に生じるヘーズを低減する方法に関する。
【0012】
コーティングされた物品の特性を向上させるために金属膜、金属合金膜、及び金属酸化物コーティングが低放射率銀コーティング上に適用されてきた。特許文献2には、ガラス基板上に適用された全層のうちの最外層として付着された金属又は金属合金層を開示している。この金属又は金属合金層は酸化して反射防止コーティングとして働く。特許文献1には、金属酸化物層を反射防止層として蒸着させる方法を開示している。銀層を反射防止層の間に挟むことで、光の透過率を最適化する。
【0013】
都合の悪いことに、光学膜は、輸送及び取扱い中に引っかき及び腐食環境への露出によりしばしば損傷を受ける。金属薄膜層は、引っかき損傷を受け易いことは周知である。銀を基部とした低放射率コーティングは、腐食による不具合の影響を特に受けやすい。今日使用されているほとんどの低放射率積層は、これらの不具合を軽減するために低放射率薄積層の中あるいは上のどこかにバリア層を利用する。薄いバリアは、銀層の、水蒸気、酸素又は他の液体による腐食を低減するように機能する。中には、低放射率積層の硬度により、あるいは、外層を形成する場合は摩擦を減らすことにより、物理的な引っかきによる損傷を緩和する。
【0014】
強烈な太陽光の負荷を受ける地域と同様に準砂漠地帯では、現在の高透過低放射率製品は既に利益をもたらしているが、これらの低放射率製品を使用している家屋及び建物内での温度及び視覚的な快適性を極めるためには、熱及び光の負荷は未だに大きすぎる。
【0015】
ごく少数の低光透過率を有する低放射率積層を入手できるが、通常、これらの製品は以下の欠点:美観を損ねる高反射率、又は熱負荷の制御に不適当な高い日よけ係数、の少なくとも1つを持つ。
【0016】
ごく少数の市販低放射率製品が、所望の光学的特性及び日よけ係数を合わせ持つ。これらの特性を有する製品を、加工及び製造のためにふさわしくするためには、依然としてさらなる改良を必要とする。さらに、これらの低放射率コーティングは、保管及びの断熱ガラスユニットへ加工する際に特別な注意を必要とする軟質コーティングである。このようなコーティングの現在の機械的及び化学的耐久性を向上させることが望ましい。
【0017】
異なる設計の積層を一つの塗工機で製造する時、これら異なる設計における設定条件は必ずしも共通しているわけではないためにしばしば問題となる。中断時間及び塗工機の配置を変更することなく、1台の塗工機で同時に製造できる異なるコーティングを施すことが望ましい。
【0018】
さらに、安全上の理由で、機械的な強度を高めて破損の際に裂傷を負わないように、今ではより多くのガラスが熱処理されている。これは特に低SHGC製品について言える。コーティングによるエネルギー吸収が増加すると、その一部が太陽の放射に曝されて、もう一部が陰にあるとき、採光窓の潜在熱応力が増加する。通常の低放射率コーティングは熱強化あるいは焼きなましに耐えるようには設計されていない。このような条件では、コーティングを完全に破損し、美観を台無しにすることによって使用不能にできる。
【0019】
PPGインダストリーズ(PPG)は、低SHGC製品を市場に出しているが、極めて高い光反射率(Lawrence Berkeley Laboratories製のWindows5データベース(LBL Window5 database)参照)を特徴としている。さらに、この製品は引っかき傷を受けやすいという性質に起因して取扱いが難しいと出願人は理解している。 PPGによる特許文献3は、0.38(つまり、38%)を下回るSHGCを特徴とするが20%を超える光反射率を有するために結果として鏡のような外観を持ち、多くの用途には不適切なコーティングを開示している。
【0020】
カーディナル社(Cardinal)による特許文献4は、低いSHGCを有し、魅力的な外観を特徴とするコーティングを開示している。その化学的及び機械的耐久性に触れていないが、とりわけ、該文献はコーティングの耐久性に有益な層であるNiCrO/NiCr型の複層について言及していない。さらに、1次誘電体としての亜鉛(Zn)酸化物の使用は、コーティングの焼きなましを難しくあるいは無理にする。
【0021】
ガーディアン(Guardian)による特許文献5は、複数バリアを有する焼きなまし可能な二重Ag製品のスパッタリングに関する。しかしながら、高い光透過率を有するコーティングしか開示していない。
【0022】
ガーディアン(Guardian)による特許文献6は、焼きなましされることを特徴とする低光透過率コーティングに関する。しかし、0.40より高いSHGCを有する単一Agコーティングのみを例示している。
【0023】
サンゴバン(St. Gobain)による特許文献7は、次の:誘電体/吸収層(金属製、いずれは窒化される)/Ag/誘電体、の順序での積層に関する。Agの下にある金属層の存在は、Agの核生成を減少させる傾向にある。また、これは積層の機械的な耐久性をも弱める。
【0024】
サンゴバン(St. Gobain)による特許文献8は、光透過率を制御するために低放射率積層内での吸収材の使用を開示している。該文献は、2つの誘電体の間にある吸収層のクラッディング(cladding)に注目している。これは、熱処理の際に積層の熱的安定性を向上させることを目的としている。誘電体材料に囲まれた吸収層の位置が熱的安定性を保証する利点をいくらかもたらしているか否かにかかわらず、この構成は不都合であり、結果として製造効率を悪くしている。吸収層のスパッタリングは、塗工機内の「ガスのかけ合い(gas cross talk)」の悪影響を受ける。これは、吸収層の性質をより制御しにくくし、長期的な安定性を不確かにする。例えば、吸収層としての窒化チタン(TiN)が誘電体酸化物のコーティング領域の横でスパッタリングされると、窒化チタンは酸素で汚染される。そうすると、窒化チタン層の吸収能力が落ちる。これらの問題は、各コーティング領域でのガスの遮断状態を改善することによって対応できるが、この作業は高くつき、同じ塗工機で他の低光放射率コーティングを製造する際に好ましくない。
CPFilms社の特許文献9は、二重金属バリアを基部とした層構造に関する。
【0025】
このように、先行技術で見られる種々の問題を克服する低放射率コーティング積層(及びその製造方法)の必要性が依然として残る。特に、魅力的な外観を持つ、あるいは、一層魅力的で、機械的及び/又は化学的耐久性のある積層、及び所望により焼きなまし又は熱強化できる、低太陽熱利得係数を有する低放射率積層が必要とされている。さらに、専用の非標準型塗工機が無くても施すことのできる積層が必要である。
【特許文献1】米国特許第4,749,397号明細書
【特許文献2】米国特許第4,995,895号明細書
【特許文献3】国際公開第03/020656(A1)号パンフレット
【特許文献4】加国特許出願第2,428,860号明細書
【特許文献5】国際公開第03/042122号パンフレット
【特許文献6】国際公開第02/062717号パンフレット
【特許文献7】国際公開第03/010105号パンフレット
【特許文献8】国際公開第02/48065号パンフレット
【特許文献9】米国特許第6,007,901号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、従来の低放射率コーティングに関連した問題を解決するために、低太陽熱利得係数(つまり、low−g積層)を有し、魅力的な外観の、さらに通常の低放射率積層と同等あるいはより優れた化学的及び機械的耐久性を有する積層をもたらす改良されたコーティングを提供する。さらに、本発明は、標準的な製造方法に対応した製品を提供する。具体的には、例えば、標準塗工機からlow−g塗工機への移行の際には、塗工機のガス抜きあるいは配置変更を必要としない。さらに、驚くことに、本発明の実施形態によってコーティングされたガラス基板は、低放射率コーティングに関連して使用されている場合において通常見られるコーティングされたガラス基板の積層又は光学的品質の劣化を生じることなく、また、他の不都合を生じることなく、焼きなましあるいは熱処理できる。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、当技術分野において見られる低放射率層に、少なくとも1つの吸収薄層を導入することによって不都合を取り除く。吸収層の導入は、光反射率を増加させることなく総光透過率を低減する。このような光反射率の増加は、特に建物の内側を向いている窓ガラスでの場合にしばしば問題となっている。
【0028】
吸収材の適切な選択によりコーティングされたガラスの透過色を制御できる。吸収層は、好ましくは、Ag層及び誘電体を保護しているバリアの間に挿入されている。従って、本発明の一態様は、基板上に低放射率コーティングを提供し、該コーティングは基板の外側から順に、第1の誘電体層;第1のAg層;第1のバリア層;第1の吸収層;第2の誘電体層;第2のAg層;第2のバリア層;第2の吸収層;第3の誘電体層;及び、任意にトップコート層、を含み、該層における第1の吸収層又は第2の吸収層は任意である、つまり、2つの吸収層を必要としない。本発明は、2つ以上のAg層の代わりに1つのAg層を有する上述のコーティングを提供する。本発明によるコーティングは基板上に各層を付着させることによって形成されている。好適な製造方法には、マグネトロンスパッタリングによる付着を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
下記の詳細な説明において、本発明を実施することもできる種々の具体的な実施形態に言及している。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できるように十分詳細に記載されており、他の実施形態を採用する場合もあると理解され、本発明の精神または範囲から逸脱することなく構造的及び当然の変更もできる。
【0030】
本発明は、低太陽熱利得係数(SHGC)を有し、魅力的な外観の、一般的な低放射率積層と同等あるいはより優れた化学的及び機械的耐久性を有する低放射率積層をもたらす改良されたコーティングを提供する。さらに、本発明は標準的な製造方法に対応した製品を提供する。具体的には、特に、標準塗工機からlow−g塗工機への移行の際には、塗工機のガス抜きあるいは配置変更を必要としない。さらに、驚くことに、本発明の実施形態によってコーティングされたガラス基板は、低放射率コーティングに関連して使用されている場合において通常見られるような不都合がなく、焼きなましあるいは熱処理できる。
【0031】
本発明は、少なくとも1つの薄い吸収層を低放射率積層に導入することによって所望の特性を得る。吸収材の導入により光反射率を増加させることなく、総光透過率を減らす。増加した反射率は、特に建物の内側を向いている窓ガラスでの場合には問題となる。焼きなましに対する耐性は、誘電体又は吸収層の厚さを、または吸収層の特性を調整することによって向上させることができる。
【0032】
本発明の一態様は、少なくとも1つの吸収層を備えているコーティングを基板上に含んでいる低放射率積層を提供する。該低放射率積層は、約0.34より小さい、好適には約0.30より小さい、太陽熱利得係数(SHGC)を特徴とする。種々の実施形態において、積層は約42%から約46%の光透過率を有する。焼きなましの際に、この透過率は約1%上昇する。別の実施形態において該積層はネガティブa及びネガティブbの透過色を有する。
【0033】
別の一態様によれば、本発明は基板上に低放射率コーティングを提供し、該コーティングは、基板の外側から順に、第1の誘電体層、第1のAg層、第1のバリア層、第1の吸収層、第2の誘電体層、第2のAg層、第2の吸収層、第3の誘電体層、及び任意のトップコートを含む。第1の吸収層または第2の吸収層のいずれかは任意である。つまりこのような吸収層を2つは必要としない。第2のAg層と第2の吸収層との間に第2のバリア層があってもよい。基板はガラス製であることが好ましい。好適な実施形態では、これら2つのAg層は約80%以上のAg1/Ag2比を有し、バランスが取れている。しかしながら、別の実施形態では、該比は50%まで低い場合がある。偏りのないAg層を有することは、特に製造の観点において、あらゆる利点をもたらす。これら2つのターゲットがほぼ同じ割合で腐食するため、キャンペーン期間を最長にできる。第2のAgが第1のそれより厚い場合、例えば、塗工機をキャンペーン期間の早い時期にガス抜きを必要とし、これは製造費にかなり悪い影響を及ぼす。本発明はまた、上述のコーティングを提供するが、2つ以上のAg層の代わりに1つのAg層を有するコーティングを提供する。
【0034】
吸収層は、好ましくは、Ag層及び誘電体を保護しているバリアの間に挿入される。吸収材は、金属、合金、ケイ化物、吸収酸化物、吸収性灰色金属、窒化物、又はその他所望の効果が得られる適切な材料を含むことができる。好適な材料には、ケイ化物及びアルミニウム化合物と同様に、Ti、TiN、Si、NiCr、NiCrOx、Cr、Zr、Mo、W及びZrSi、ニッケル又はクロム合金、さらに、遷移金属、窒化物、亜窒化物及びこれらの亜酸化物を含むがこれらに限定されない。好適な焼きなまし可能及び焼きなましされていない吸収材の実施形態にはNiCrを含む。Tiは、焼きなましを行わない実施形態においては吸収材として効果がある。
【0035】
当業者は、吸収材の適切な選択によりコーティングされたガラスの透過色を制御できる。中間色(ネガティブa及びb、及び、バランスの取れたものが好ましい−−透過率及びガラス側反射率の最低必要条件が+2より小さいネガティブa及びab値である)は、より濃い緑がかったあるいは黄色がかった色合いよりも美しい。中間透過色は、ガラスを収容している断熱ガラスユニット(IGU)の規準に合った演色を最高にするために非常に好ましい。本発明は、所望により青色がかった色合いを得ることができる。
【0036】
従って、low−g設計における特定の材料は低放射率コーティングの透過率を下げること及び積層の色を所望の色に調整できることがわかっている。焼きなまし可能なコーティングの場合、好適な材料は薄膜層内で熱的に安定している。上述の吸収材の代わりに、その他多くの材料を使用できる。このような材料は、この透過率低下機能を実現するために適切な屈折率(n)及び吸光係数(k)の範囲で特定できるものである。焼きなまし可能なlow−g設計において、吸収層はさらなる熱平衡特性のみならず、適切な光学特性を有するであろう。
【0037】
参照によってその全体を本出願に援用する米国特許第6,416,872号明細書は、ファブリ・ペロー型の薄膜積層(金属/誘電体/金属)を含む日照調整構造の使用に関する。これら金属の1つは、赤外線反射材(銀)であり、もう1つは光学的吸収材である。光学的吸収材は、好適な光定数の範囲で表されている。本発明の好適な実施形態は、ファブリ・ペロー積層を同様に含むが、金属/金属/誘電体/金属/金属又は、より具体的に、金属/亜酸化吸収薄層(バリア)/金属/誘電体/金属/亜酸化吸収薄層(バリア)/金属から成る基本的な積層構造を備える。これら各ケースにおいて、一対の金属/金属の片方の金属は、赤外線反射金属であることが望ましく、他方が吸収金属材であることが望ましい。low−g吸収金属材は、米国特許第6,416,872号明細書の記載と同様に光定数の範囲を用いて表すことができる。low−g吸収材として光学的にふさわしい典型的な材料の光定数を、図6A及び図6Bにグラフ化している。図6Aに示すデータに基づき、図に示す金属吸収材の波長が550nmにおける好適な屈折率の範囲は、約1から約5.5の間である。図6Bに示すデータに基づき、図に示す金属吸収層の波長が550nmにおける吸光係数の範囲は、約1.75から約4.5の間である。好適な材料の範囲を限定するために役立つことがある別のパラメータは、550nmにおいて正の勾配を有する屈折率である。この特性により金属材料を、同じように図化した場合に通常550nmで負の勾配を有する、亜酸化物及び窒化物から区別するであろう。
【0038】
本発明の好適な実施形態において、吸収層は積層内の極めて特定された位置に挿入される。これは、コーティングされたガラスの製造及び処理に重要な他の特性、特に、全体的な耐久性及び製造の容易性を最適化するためである。
【0039】
各吸収層は約0.1nmから約8nmの厚さであることが望ましい。2つの吸収層が含まれている場合、第1の吸収層が第2の吸収層より厚いことが望ましい。第1の吸収層は、約1nmから約6nmであることが望ましく、1.5nmから約4nmであることがより望ましい。第2の吸収層は約0.1nmから約5nmの厚さであることが望ましく、約0.1nmから約4nmであることがより望ましい。別の実施形態では、第1の吸収層は約3nmの厚さを有する。さらに別の実施形態では、第2の吸収層は約0.5nmの厚さを有する。他の実施形態では、第1の吸収層は約3.6nmの厚さを有する。さらに他の実施形態では、第2の吸収層は約0.1nmの厚さを有する。
【0040】
好適な実施形態において、各誘電体層は別個に酸化物、窒化物又はオキシ窒化物を含む。誘電体層が酸化物を含む場合、該酸化物はTi、Zn、Sn、ZnSn合金又はBiターゲットからスパッタリングされる。酸化物はNbを含む場合もある。酸化物は、例えば、Al又はB、あるいは類似の要素を20重量%まで、好適には10重量%まで含む場合もある。通常、これらのドーパントは、シリコン塗工機のターゲットに伝導性を与えるために使用されている。誘電体層が窒化物又はオキシ窒化物を含む場合、該窒化物又はオキシ窒化物は、Si、SiAl、SiB、SiZrの入った窒化物又はオキシ窒化物、あるいは所望の効果を達成する他の好適な窒化物又はオキシ窒化物であってもよい。同様に、該窒化物又はオキシ窒化物は、塗工機のターゲットに伝導性を与えるために、例えば、Al又はB、あるいは類似の要素を約20重量%まで、好適には約10重量%まで含む場合もある。
【0041】
例えば、図1及び図3に示すように、3つの一次誘電体を採用する好適な実施形態において、少なくとも1つの誘電体層が半化学量論の状態にある。より好適には、これら3つの誘電体(例えば、SiAlOxNy)が全て半化学量論の状態にある。このような半化学量論層を使用することにより、種々の利点が得られる。例えば:
1.ターゲット面の化学的性質が半化学量論的であればSiAlスパッタターゲットからの付着率はより高い。シリコンを多く含んだ表面のスパッタ収率は、より多くの窒化シリコンを含む表面のそれより高い。より高い付着率は、塗工機をより高速で運転する際に有利となり、そしてより経済的である。
2.半化学量論窒化物のインデックスが大きいほど、同じ光学的厚さに対してより小なる物理的厚さを有する誘電体層を可能にする。半化学量論層が付着される際に、より少ないターゲット材が消費され、また、これは塗工機のより効率的な運転を可能にする。
3.インデックスがより大きい誘電体は、低放射率積層設計の光学特性の自由度を増やすことができる。透過及び反射に好適な色は、より小さいインデックスの化学量論材料と比べてより大きいインデックスの誘電体を用いてより容易に得ることもできる。
4.半化学量論層は、化学量論誘電体より良好な化学バリア特性を有する傾向にある。これは、より化学的に安定した、耐食性のある低放射率積層を可能にする。腐食性薬品は、脆弱な銀層に到達しにくくなる。
5.半化学量論誘電体の光学的吸収は、low−g積層の透過率を低減し、太陽熱利得係数を上げることに役立つ。半化学量論誘電体は、可視領域では光学的によく吸収し、赤外線領域ではより透明になる傾向にある。しかしながら、これらの材料は、可視透過率を低減するが、銀層の赤外線反射率特性を妨げる傾向にはない。
【0042】
金属吸収層は、可視及び赤外線の両領域で光学吸収する。low−g製品において、透過率を低減すべく金属材が使用されると、可視透過率及び赤外線反射率の両方が低減される。Low−e製品は、なるべく高い赤外線反射率を有することが望ましい。
これらの利点は、low−e積層に使用されるかもしれない半化学量論酸化物、オキシ窒化物及び窒化物に見られる傾向がある。
【0043】
これらのlow−g積層中の好適な誘電体に使用されている、シリコンに対するアルミニウムの比は10重量%Alである。他のSi:Al比を使用してもよい。実施形態によって、Si、O及びNの原子比率はだいたいSi0.4である。表面のシリコン・オキシ窒化誘電体は、光学干渉層としての主機能を果たし、銀の反射防止機能に寄与する。しかしながら、材料は、一つにはそのバリア特性及び硬度を目的として選ばれる。この材料は、銀の機械的及び化学的な保護に役立つ。
【0044】
図7はシリコン・オキシ窒化物の屈折率及び吸光係数を図示する。グラフ上の指数及び吸光係数は、化学式どおりの状態にあるSiAlOを2通り示す。これらは、low−gコーティングに使用されるであろう化学量論どおりのSiAlOのおおよその上限及び下限を表す。通常、好適な実施形態における化学量論は、これら2つの極値間にある。図8は、Low−g積層内のSiAlOに好適なおおよそのn及びk値を示す。
【0045】
好適な実施形態において、誘電体は、550nmで約2.05と約2.4との間の、より好ましくは約2.1と約2.3との間の屈折率を有する。好適な実施形態において、誘電体は、550nmで約0と約0.05との間の、より好ましくは約0.01と約0.02との間の吸光係数を有する。
【0046】
一つの好適な実施形態において、コーティングは、第1の誘電体層と第1のAg層との間に核生成層をさらに含む。別の好適な実施形態において、コーティングは、第2の誘電体層と第2のAg層との間に第2の核生成層をさらに含む。核生成層は、Ag層の特性を改善し、通常、例えば、Al、Sn、又はこれらの組み合わせの、但しこれらに限らない、約15重量%までの他の要素を加えた酸化亜鉛を基部とする。好適な実施形態において、ZnOの付着に使用されているスパッタリング・ターゲットは、約1.5%Alを含むZnAlOの緩衝層である。
【0047】
バリア層の上に誘電体をスパッタする時、バリア層はAg層をプラズマ照射から保護する。またバリア層は、O、O、HO及びNa+等攻撃的な化学種の拡散を制御することによって化学的耐久性を向上させる。好適な実施形態におけるバリアは透明である。バリアは、NiCr、NiCrOx、TiOx、NiCrNxOy、NiCrNx、Ti又は他の単一金属、あるいは複数の金属、あるいはこれらの亜窒化物又は亜酸化物を含むことができるが、これらに限らない。好適なバリアとしてNiCrOxがある。このような積層において、特に第1(つまり、底面)のNiCrOx層は、酸素を約15から60原子百分率含む場合もある。好適には、酸素の原子百分率は20%から55%の間にある。本発明のうち焼きなまし可能なものの熱に対する耐久性は、第1のNiCrOx層が酸素を約20原子百分率含んでいる時に向上した。
【0048】
任意の最上層が含まれている場合、化学的及び/又は機械的安定性にプラスの効果を与えることができる。最上層は、C、SiSn、ZrSi、SiSnO又はケイ化物を含むことができるが、これらに限らない。この呼び方は、異なる要素の化学量論あるいは原子比率に言及することを目的としいるわけではないことに注意されたい。例えば、ZrSiは、Zrの原子百分率が0から100%の間で変化して層を漸変できる、スパッタリングされた材料である。この層は、加熱によって酸化できる。通常、トップコートは、下に横たわる誘電体と比較して対照的な性質を有する。誘電体が酸化物の場合、トップコートは上記材料のいずれか、又は窒化物、又はSiNあるいはSixAlyNzOc等のオキシ窒化物であることが望ましい。一方、誘電体が窒化物又はオキシ窒化物の場合、トップコートは上記リストから選択されるか、酸化物(例えば、ZrO、ZrSiO、SnO、又はZrOxNy、TiO又は他の類似物質、しかし本願明細書に記載の特定の化学量論比に限定されない)であってもよい。好適なトップコートは、炭素であり、望ましくは、焼きなまし可能な製品の製造中に使用される。通常はスパッタリングされるこのようなコーティングは、厚さが4−8nmであることが好ましく、焼きなまし処理の際に焼いて除去される。
【0049】
別の実施形態において、本発明は基板上に低放射率コーティングを提供し、該コーティングは基板の外側から順に、約25nmまでの、好ましくは約23nmまでの厚さを有する第1の誘電体層;約8nmから約15nmの厚さを有する第1のAg層;約0.1nmから約4nmの厚さを有する第1のバリア層;約0.2nmから約8nmの厚さを有する第1の吸収層;約40nmから約75nmの厚さを有する第2の誘電体層;約8nmから約15nmの厚さを有する第2のAg層;任意に、約0.1nmから約4nmの厚さを有する第2のバリア層;約0.1nmから約8nmの厚さを有する第2の吸収層;約10nmから約40nmの厚さを有する第3の誘電体層;そして任意に、トップコート層、を含む。さらに別の実施形態において、コーティングは、第1の誘電体層と第1のAg層との間に核生成層を含み、この核生成層は、約2nmから約11nmの厚さを有する。また、さらに別の実施形態において、コーティングは、第2の誘電体層と第2のAg層との間に約2nmから約11nmの厚さを有する第2の核生成層を含む。厚さが約23nmの第1の誘電体層を有する積層は、特に焼きなましに適している。
【0050】
他の実施形態において、本発明は基板上に低放射率コーティングを提供し、該コーティングは基板の外側から順に、SiAlを含む、約3nmから約25nmの厚さを有する第1の誘電体層;ZnAlyOxを含む、約3nmから約11nmの厚さを有する第1の核生成層;約8nmから約12nmの厚さを有する第1のAg層;NiCrOを含む、約1nmから約4nmの厚さを有する第1のバリア層;NiCrを含む、約1.5nmから約4nmの厚さを有する第1の吸収層;SiAlを含む、約55nmから約75nmの厚さを有する第2の誘電体層;ZnAlyOxを含む、約3nmから約10nmの厚さを有する第2の核生成層;約10nmから約15nmの厚さを有する第2のAg層;任意に、NiCrOを含む、約2nmから約4nmの厚さを有する第2のバリア層;NiCrを含む、約0.7nmから約2.2nmの厚さを有する第2の吸収層;SiAlを含む、約24nmから約40nmの厚さを有する第3の誘電体層;そして任意に、トップコート層を含む。好適な実施形態においてNiCrOxを含む第2のバリア層が不在であるため、第2の吸収層が第2のAg層の上に直接付着されている。第2吸収層のNiCr金属の代わりに、同時スパッタリング(co-sputter)されたNiCr及びクロム、NiCr/Cr複層、又はいかなる灰色金属又は合金を使用してもよい。さらに別の選択肢として、あらゆるNi:Cr比率を有するニクロム合金、Ni:Cr比率が漸変するようになっているNiCr層、NiCrNxを形成すべく窒化物と反応させたNiCr層、及びいずれの金属もNiとCrの比率がいくつであってもよいNiCr/NiCrを含む光学吸収複層を含むがこれらに限定されない。
【0051】
さらに他の実施形態において、例えば図9に示すように、本発明は基板上に低放射率コーティングを提供し、該コーティングは基板の外側から順に、第1の誘電体層;第1の核生成層;第1のAg層;第1のバリア層;第1の光学吸収層;第2の誘電体層;第2の核生成層;第2のAg層;第2の光学吸収層;第3の誘電体層;及び、任意の、好ましくは引っかき耐性を有するトップコート層、を含む。層厚は本明細書内に記載している。例えば図10に示すように、好適な実施形態において、該コーティングは基板の外側から順に、SiAlOxNy/ZnO/Ag/NiCrOx/NiCr金属/SiAlOxNy/ZnO/Ag/NiCr金属/SiAlOxNy/任意のトップコート層、を含む。このため、本実施形態において、第2のNiCr金属吸収層は、第2のAg層の上に直接付着されている。この実施形態においては、積層又はコーティングされた基板の光学的品質の劣化を生じることなく焼きなましあるいは熱強化できる場合があり、又、低放射率コーティングに関連してこれらのような処理が行われる際にしばしば見られる他の不都合を生じることがない。この構成(第2の吸収層が第2のAg層の上に直接付着されている場合)は、改良された焼きなまし可能性に加え、優れた機械的耐久性を示す。この好適な実施形態では、色調を所望の目標値に合わせることがより容易思われる点も注目されている。第2の吸収層において、NiCr金属の代わりに、同時スパッタリングされたNiCr及びクロム、NiCr/Cr複層、又はいかなる灰色金属又は合金を使用してもよい。さらに別の選択肢として、あらゆるNi:Cr比を有するニクロム合金、Ni:Cr比が漸変するようになっているNiCr層、NiCrNxを形成すべく窒化物と反応させたNiCr層、及びいずれの金属のNiとCrとの比がいくつであってもよいNiCr/NiCrを含む光学吸収複層を含むがこれらに限定されない。
【0052】
さらに本発明は、少なくとも1つの吸収層を含む低放射率積層を提供し、該低放射率積層は約0.34より小さい、好ましくは約0.30小さい太陽熱利得係数(SHGC)を特徴とする。別の実施形態において、該積層は、約1/8インチ(約0.32cm)の厚さを有するガラス基板を含み、光透過率が約42%から約46%である。さらに別の実施形態において、該積層は、ネガティブa及びネガティブbの透過色を有する。
【0053】
さらに本発明は記載の低SHGCを有する低放射率積層を作る方法を提供し、該方法が本明細書内に記載のコーティングを基板上に付着することを含んでいる。本発明の複層コーティング内の層は、従来の物理的及び化学的蒸着手法で付着できる。これらの手法の詳細は当技術分野においてよく知られているため、ここでは繰り返して述べない。好適な付着手法には、スパッタリング法を含む。好適なスパッタリング法は、金属ターゲットを使用しているDCスパッタリング、及び、金属及び非金属ターゲットを使用しているACとRFスパッタリングを含む。全ての場合において、マグネトロンスパッタリングを用いることができる。スパッタリングは注入ガスの中で、又は反応ガスの中で反応的に実施できる。全ガス圧力は、5x10−2から8Nm(5x10−4から8x10−2mbar)、好適には、1x10−1から1Nm(1x10−3から1x10−2mbar)の範囲内に維持できる。スパッタリング電圧量は、200から1200V、好適には250から1000Vの範囲内にあってもよい。ダイナミックミキシング(dynamic)付着比は、25から4000nm-mm/W-sec、好適には30から700nm-mm/W-secの範囲にあってもよい。レイボルドシステム(Leybold Systems GmbH)によって製造されているモデル番号Typ A 2540 Z 5 H/13-22及びTyp A 2540 Z 5 H/20-29塗工機は、本発明の複層コーティングをスパッタ付着するのに適している。
【0054】
前述のように、本発明の低放射率コーティング内の銀複層は、銀の単層での場合より、非常に効率的に赤外線放射を反射し、また、透過波長と反射波長とを厳密に分けて遮断できる。
【0055】
本発明の複層コーティングは、基板上に付着されて、基板に機械的に支持されている。基板表面は、コーティングに対してテンプレートとしての役割を果たし、コーティングの表面形状に影響を与える。可視光線の透過を最大にするためには、基板の表面が光線の波長よりも小さい起伏を有することが望ましい。このような平滑面は、例えば、基板の溶融物を凝固させることによって形成できる。基板は、本発明の複層コーティングによって低減可能な放射率を有するどのような材料であってもよい。建築及び自動車への用途における基板は、優れた構造特性を有し、また、太陽エネルギーが集中する可視及び近赤外線スペクトル領域での吸収作用が最小となる材料が望ましい。結晶水晶、石英ガラス、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス及びプラスティック、例えば、ポリカーボネート及びアクリラートは、全て基板材料としてふさわしい。
【0056】
本明細書の実施形態において使用されているように、「の上へ付着」又は「の上に付着」とは、物質が基準となる層の上に直接又は間接的に施されること意味する。間接的に適用されている場合には、1つ以上の層が介在する場合もある。さらに、特記事項がない限り、「[物質1]/[物質2]/[物質3]/‥‥」又は「第1の[物質1]層;第1の[物質2]層;第2の[物質1]層;第2の[物質2]層;‥‥」などの形を用いて本発明のコーティングを表す際、重なる各物質は、先の物質の上に直接又は間接的に付着されていることを意味する。コーティングされた物品は、建築用窓(例えば、断熱ガラスユニット)、自動車用窓又は他のあらゆる好適な用途に関連して使用する場合もある。本明細書内に記載のコーティングされた物品は、本発明の異なる実施形態において熱処理されても、されていなくてもよい。図5は、自動車又は他の乗り物での使用(例えば、風防ガラス又は同様の積層板)に適した、本発明の一実施形態を示す。図示の実施形態において、本発明によるコーティングは積層の中に含まれており、該積層は2つのガラス基板及びポリビニルブチラール(PVB)層をも含む。コーティングは、PVBと面している限り第1のシート上にあっても、第2のシート上にあってもよい。
【0057】
ガラスコーティング分野において、特に、コーティングされたガラスの特性及び日照調整特性を定義する際に特定の用語が広く使用されている。本明細書内ではこれらの用語を周知の意味で使用している。例えば、下記のとおりである。
【0058】
反射された可視波長光の強度、即ち「反射率」は、その割合によって定義され、RYまたはRと表される(即ちRY値は明所視の反射率を、TY値は明所視の透過率を表す)。ここで、「X」はガラス側の場合は「G」、膜側の場合は「F」である。「ガラス側」(即ち「G」)は、ガラス基板のコーティングがある側と反対の側から見た場合を意味し、一方、「膜側」(即ち「F」)は、ガラス基板のコーティングがある側から見た場合を意味する。
【0059】
色特性は測定して、CIE LAB 1976 a*,b*座標及びスケール(即ち、CIE 1976 a*b*図、III. D65 10度観察者)を用いて表される。ここで、
は(CIE 1976)明度単位、
は(CIE 1976)赤‐緑単位、
は(CIE 1976)黄‐青単位
である。
【0060】
ハンターメソッド(Hunter method)(又は、単位)I11.C,10観測者、又は、CIE LUV u*v*座標の通常使用を示すために、例えば、添え字「h」等他の類似の座標を他の同様の意味に使用することもできる。これらの尺度は、1993年9月15日発行のASTM規格 D-2244-9「機器を用いた測定色座標から色差を計算するための標準試験方法(Standard Test Method for Calculation of Color Differences From Instrumentally Measured Color Coordinates)」、ASTM規格 E-308-95,ASTM規格年次本,Vol. 06.01「CIEシステムを使用して物体の色彩を計算するための標準方法(Standard Method for Computing the Colors of Objects by 10 Using the CIE System)」及び/又は1981年発行のアメリカ照明学会ライティング・ハンドブック(IES LIGHTING HANDBOOK)参考本に基づいて本明細書内に規定されている。
【0061】
「放射率(emissivity)」(あるいは、エミッタンス(emittance))と「透過率」とは、当該分野において周知であり、本明細書内ではその周知の意味で使用されている。従って、例えば、「透過率」は、日射透過率を意味し、これは可視光透過率(TvisのTY)と、赤外線透過率(TIR)と、紫外線透過率(TUV)とから成る。全太陽エネルギー透過率(TSまたはTsolar)は、これらの値の加重平均として表される。これらの透過率に関して、可視光透過率は、建築分野の場合では、標準光源I11.D65 10度技法に従って表現してもよい。一方、可視光透過率は、自動車分野の場合では、標準I11. A2度技法に従って表現してもよい(これらの技法については、例えばASTM E-308-95を参照。これらは参照によって本願に援用する)。放射率を目的として、特定の赤外域(即ち2,500〜40,000nm)が使用される。
【0062】
「放射率」(またはエミッタンス)(「E」又は「e」)とは、一定波長の光の吸収と反射の両方の測定値又は特性である。通常、式:E=1−反射率filmにより表される。建築分野で使用する場合、例えば、下記にて参照する、Lawrence Berkeley Laboratories製のWINDOW 4.1プログラム、LBL-35298 (1994)によって規定されているように、放射率値は、赤外スペクトルの「遠赤外域」(即ち、約2,500〜40,000nm)とも呼ばれるいわゆる「中間帯域」においてかなり重要である。本明細書において使用している「放射率」とは、「建築用板ガラス製品の放射率測定及び計算用の放射測定値を用いた標準試験方法(Standard Test Method for Measuring and Calculating Emittance of Architectural Flat Glass Products Using Radiometric Measurements)」と題されるASTM規格 E 1585-93で規定され、この赤外域で測定された放射率値を示すために使用される。参照によってこの規格とその規定を本願に援用する。この規格において、放射率は半球放射率(E)と垂直放射率(E)として表される。
【0063】
このような放射率値を測定するための実データ蓄積は、従来どおりであり、例えば「VW」アタッチメントを有するBeckman Model 4260分光光度計(Beckman Scientific Inst. 社製)を使用して行うこともできる。この分光光度計は、波長に対する反射率を測定し、その結果から、上記ASTM規格E 1585-93を使用して放射率を算出する。
【0064】
solarとは、全太陽エネルギー反射率(明細書内ではガラス側)を意味し、赤外線反射率、可視反射率及び紫外線反射率の加重平均である。Rsolarは、いずれも参照によって本明細書に援用する、自動車分野では既知のDIN 410及びISO 13837(1998年12月)22頁の表1に、建築分野では既知のASHRAE 142規準に従って計算することもできる。
【0065】
「ヘーズ(Haze)」は次のように定義される。多方向に拡散される光は、コントラストを失う。本明細書では「ヘーズ」を、光が通過する際に、入射ビームから平均して2.5度を超えてそれる光の割合、としてヘーズを定義するASTM D 1003に従って定義している。「ヘーズ」はByk Gardnerヘーズメータを用いて測定してもよい(全てのヘーズ値はこのようなヘーズメータで測定され、散乱光の割合として与えられる)。本明細書で使用している別の用語に「シート抵抗」がある。シート抵抗(R)は、当技術分野においてよく知られている用語であり、本明細書内ではその周知の意味で使用されている。ここでは、単位面積当たりのオーム数として報告している。一般にこの用語は、層構造を流れる電流に対する、ガラス基板上のあらゆる層構造の単位面積当たりの抵抗を意味し、オーム単位で表す。シート抵抗は、層あるいは層構造が赤外線エネルギーをどれだけ反射しているかを示し、従って、この特性を測るための物差しとして放射率とともに頻繁に使用されている。「シート抵抗」は、例として、4端子プローブオーム計、例えば、カリフォルニア州サンタクララのシグネトーン社(Signatone Corp.)製のモデルM−800にマグネトロン機器会社(Magnetron Instruments Corp.)のヘッドを付けた可欠4点端子抵抗率プローブを使用して簡便に測定することもできる。
【0066】
本明細書内の「化学的耐久性」又は「化学的に耐久性のある」とは、当技術分野における「化学的耐性のある」又は「化学安定性」と同じ意味に用いられている。化学的耐久性は、コーティングした2インチx5インチ(約5.08cmx約12.7cm)又は2インチx2インチ(約5.08cmx約5.08cm)のガラス基板のサンプルを約36℃の4.05%のNaCLと1.5%のHを含んだ約500mlの溶液に20分間浸して測定されている。化学的耐久性は、下記のクリーブランドテスト(Cleveland test)又は気候室でも測定できる。
【0067】
[クリーブランド室の準備]
各サンプルは、この実験用に4インチx12インチ(10.16cmx30.48cm)又は6インチx12インチ(15.24cmx30.48cm)に切断される。水は50℃±2℃に加熱され、室温は23℃±3℃(華氏73度±5度)に維持される。各サンプルは、薄膜側を下に向けて温水槽の上に置かれる。各サンプルは露出してから数分で濃縮水の厚い層で覆われる。時間の経過とともに、水はサンプルの表面を流れ落ちてサンプル上に新しい縮合物が形成される。試験の最初から最後までサンプルの上に濃縮水が存在する。
【0068】
[気候室の準備]
各サンプルは、この実験用に4インチx6インチ(10.16cmx15.24cm)に切断される。静的湿度試験での湿度は、98%の相対湿度(RH)に保たれ、温度は1時間の間で45℃と55℃の間を周期的に変化する。
【0069】
[測定の実施]
サンプルは、測定のために1,3及び7日の露出の後に取り出される。ヘーズ、放射率及び薄膜側の反射率が測定される。
デルタヘーズは次式によって計算される:
デルタヘーズ = 試験後ヘーズ − 試験前ヘーズ
デルタEは次式によって計算される:
デルタE = (デルタL^2+デルタa^2+デルタb^2)1/2
ここで、L,a,bは試験前測定値から試験後測定値を引いた値である。
放射率の変化の割合を計算するためには次式を使用されたい:
放射率の変化=(試験後E−試験前E)/(ガラスE−試験前E)^
【0070】
本明細書において使用されている「機械的耐久性」は次の試験により定義されている。この試験では、エリクセン494型ブラシ試験機及びスコッチブライト7448研磨材(SiC粒子を長方形パッドの繊維に接着して作られる)を使用し、サンプルに研磨材を押し付けるべく標準重量ブラシ又は改良ブラシ保持器が使用される。ブラシ又はブラシ保持器を用いて100から500回の乾燥あるいは湿潤行程を実施する。引っかきによる損傷は3つの方法:放射率の変化、膜側反射率のヘーズ及びEによって測定される。この試験は、傷をよりはっきりさせるように浸漬試験又は熱処理と組合せることができる。サンプルに135グラムの荷重を加えた200回の乾燥行程により、良い結果が得られる。必要であれば、行程数を減らす、又はより細かい研磨剤を使用できる。これはこの試験の利点の1つであり、サンプル間のレベル差によって必要となる対応、荷重及び/又は行程数を調整できる。より良いランク付けのためにより厳しい試験を行うことができる。試験の再現性は、指定期間に亘って同じ膜の多くのサンプルについて試験することによって調べることができる。
【0071】
本明細書における「熱処理」、「熱処理された」、及び「熱処理する」とは、ガラスを含有する物品の焼なまし、曲げ、又は熱処理を可能にするのに十分な温度までその物品を加熱することを意味する。この定義は、例えばコーティングされた物品を華氏約1100度(摂氏約593度)以上の温度(即ち約550℃〜700℃の温度)に十分な期間加熱して、焼なまし、熱処理、又は曲げを可能にすることを含む。
【0072】
「太陽熱利得係数(又はSHGC)」(「g」)は、当技術分野においてよく知られており、入射日射量に対する窓機構を通る全太陽熱利得の測定値を意味する。
【0073】
別途記載がなければ、下記の用語は、本明細書において次の意味を持つものとする。
「Ag」 銀
「TiO」 二酸化チタン
「NiCrO」 酸化ニッケルと酸化クロムとを含む合金又は混合物。酸化状態は化学量論の状態(stoichiometric)から半化学量論の状態(substoichiometric)間で変動する。
「NiCr」 ニッケルとクロムとを含む合金又は混合物。
【0074】
「SiAlN」 反応性スパッタリングされた窒化ケイ素アルミニウム。通常、スパッタリング・ターゲットは2から20重量%のAlを含む。スパッタリング・ガスはArとNの混合気体である。気体の混合状態及びスパッタリング力により、材料はより多くあるいはより少なく吸収する。
「SiAlN」 SI(N);反応性スパッタリングされた窒化ケイ素アルミニウム。通常、スパッタリング・ターゲットは2から20重量%のAlを含む。スパッタリング・ガスはAr、NとOの混合気体である。気体の混合状態及びスパッタリング力により、材料はより多くあるいはより少なく吸収する。
「ZnAl」 反応性スパッタリングされたZn酸化アルミニウム。通常、スパッタリング・ターゲットは2から20重量%のAlを含む。スパッタリング・ガスはArとOの混合気体である。
「ZnSnAl」 反応性スパッタリングされた錫(アルミニウム)亜鉛酸化物。一般に、スパッタリング・ターゲットはAlドーピングを任意に加えた錫亜鉛合金である。錫亜鉛合金には、亜鉛を多く含んだものから錫を多く含んだものまで幅広く含まれる。スパッタリング・ガスはArとNの混合気体である。
【0075】
「Zr」 ジルコニウム
「光学膜(optical coating)」 基板に施された1つ以上のコーティングで、これらが合わさって該基板の光学特性に影響するコーティング
「低放射率積層」 1つ以上の層から成る低熱放射率光学膜が施された透明基板
「バリア」 プロセス中に他の層を保護するために付着された層で、上の層の接着を改善する場合があり、プロセス後、存在しない場合もある。
「層」 ある機能と化学組成を有する厚みを持った物質。該物質の各面に異なる機能及び/又は化学組成を有する別の厚みを持った物質が結合されている。付着された層は、プロセス中の反応によりそのプロセス後、存在しない場合もある。
【0076】
「同時スパッタリング」 2つ以上の異なる物質から成る2つ以上のスパッタリング・ターゲットから基板に同時にスパッタリングすること。結果として付着されたコーティングは、該異なる物質の反応生成物又は該ターゲット物質の未反応混合物又はその両方から成る場合もある。
「金属間化合物(Intermetallic compound)」 特定の化学量論的分量の2つ以上の金属元素から成る合金系の特定相。これら金属元素は、電子又は格子間結合されて、どちらかといえば標準的な合金に典型的な固溶体として存在している。金属間化合物は、しばしば、金属単体での性質とは明らかに異なる性質を有する。特に硬さ又はもろさが増す。増加した硬さにより、ほとんどの標準的な金属又は合金に勝る耐傷性を持つ。
【0077】
「ブラシ」 本明細書の実施例において使用しているように、この用語は、(別途記載がない限り)ナイロンブラシ(注文番号0068.02.32、ブラシ重量は450グラム、一本一本の毛の直径は0.3mm、各毛は直径4mmのまとまりにして配置されている)を使用してエリクセンブラシ試験機(494型)で実施される湿潤ブラシ耐久性試験を意味する。この試験では1000行程(ここでの1行程はブラシの1往復動から成る1周期と等しい)実施される。各サンプルのコーティング側をブラシがけ処理し、このブラシがけ処理の際に脱イオン水に浸漬させる。
【0078】
種々の実施形態において、本発明による低放射率積層は、以下の独立した特性を示す。透過Yを約30から約60、好適には約35から約55、最も好適には約40から約50;ネガティブの透過a値、最も好適には約−1から約−6;望ましくは、ネガティブのab値、最も好適には約0から約−6;RgYが約8から約20、より好適には約10から約18、最も好適には約11から約17;ネガティブのRga値、最も好適には約−1から約−7;ネガティブのRgb値、最も好適には約−1から約−7;RfYが約2と約12の間、より好適には約2から約10、そして最も好適には約2から約8の間;ネガティブのRfa、最も好適には−2から約−20;望ましくはRfbが約−10から約+10、最も好適には約−6から約+6;さらに、SHGCが約0.10から0.30、最大で0.34、より好適には約0.15から約0.28、最も好適には約0.20から約0.25である。
【0079】
本発明を詳細に説明するために、以下の非限定的な実施例を示す。
【0080】
<実施例1>
図4に示すように、本実施例において:ガラス/12nmの酸化物/10nmのAg/2nmのNiCrO/4nmのNiCr/72nmの酸化物/13nmのAg/2nmのNiCrO/3nmのNiCr/23nmの酸化物/7nmのSiN、の構成を有する積層を形成すべく、ガラス基板上に低放射率コーティングが付着されている。酸化物は、Ti、Zn、Sn、ZnSn合金、またはBiターゲットからスパッタリングできる。酸化物はNbを含むこともできる。塗工機ターゲットに伝導性を与えるように、酸化物は20重量%までの、好適には10重量%までの、例えば、Al又はB、あるいは類似の要素を含む場合もある。SiNトップコートは任意である。この例示的なコーティングはネガティブa及びネガティブbを有し、魅力的な透過色を有する。SHGCは0.30より小さい。該コーティングは、良好な機械的及び化学的耐久性を有する。
【0081】
<実施例2>
本実施例において:約1/8インチ(約0.32cm)のガラス/0から15nmの誘電体/2から10nmの核生成層/8から15nmのAg/0.1から4nmのバリア/0.2から8nmの吸収層/40から75nmの誘電体/2から10nmの核生成層/8から18nmのAg/0.1から4nmのバリア/0.2から8nmの吸収層/10から40nmの誘電体/トップコート、の構成を有する積層を形成すべく、ガラス基板上に低放射率コーティングが付着されている。誘電体は酸化物(実施例1と同様に)又は窒化物又はSi、SiAl、SiB又はSiZrから成るオキシ窒化物であってもよく、塗工機ターゲットに伝導性を与えるように、20重量%までの、好適には10重量%までの、例えば、Al又はB等の要素を含む場合もある。核生成層は、Ag層の特性を改善し、一般的には、亜鉛酸化物をベースにして15重量%までの、例えば、Al又はSn又はこれらの組み合わせた他の要素を含む場合もある。
【0082】
バリアは、誘電体をその上にスパッタリングする際にAgをプラズマ照射から保護する。またバリアは、O、O、HO及びNa+等攻撃的な化学種の拡散を制御することによって化学的耐久性を向上させる。好適なバリアには、NiCr、NiCrOx、NiCrNxOy、TiOx、Ti及び他の金属を含むがこれらに限定されない。
【0083】
前述のように、トップコートは任意である。トップコートが含まれている場合、化学的及び機械的耐久性に良い影響を与えることができる。好適なトップコートには、C、ZrSi又はケイ化物が含まれるがこれらに限定されない。通常、トップコートは下にある誘電体と比べて対照的な性質を有する。誘電体が酸化物の場合、トップコートは上述の材料の一つ又は窒化物又はオキシ窒化物(例えば、SiN又はSiAlyNzOc)となるであろう。別の場合では、誘電体が窒化物又はオキシ窒化物のとき、トップコートは都合よく、例えば、ZrO、ZrSiO、SnO、ZrOxNy又はTiOであってもよいが、これらに限定されない。
【0084】
<実施例3>
本実施例において:約1/8インチ(約0.32cm)厚のガラス/3から15nmのSiAlxNyOw/3から10nmのZnAlyOx/8から12nmのAg/1から4nmのNiCrO/1.5から3.0nmのNiCr/55から65nmのSiAlxNyOw/3から10nmのZnAlyOx/10から15nmのAg/1から4nmのNiCrO/0.7から2.2nmのNiCr/24から32nmのSiAlxNyOw/任意のトップコート、の構成を有する積層を形成すべく、ガラス基板上に低放射率コーティングが付着されている。トップコートが含まれている場合、トップコートは1から5nmのC、1から10nmのZrO又はZrSiOから選択できるが、これらに限定されない。本実施例におけるコーティングは、断熱ガラスユニットでの測定と同様に、約42%から約46%の光透過率、約0.30より小さいSHGCを示し、透過色は灰色で緑から青い色合いに調整可能となっている。断熱ガラスユニットは、2の位置にコーティングのある1/8インチ(約0.32cm)のコーティングされたガラスと、1/2インチ(約1.27cm)の間隔をあけて1/8インチ(約0.32cm)の透明ガラスを含む。コーティングは、改良された化学的及び機械的耐久性を有する。NiCrO/NiCr複層は、求められている特性を得るために有益である。NiCrが特定の位置にあるため、既存の低放射率コーティングへの用途を主たる目的とした塗工機でコーティングを製造できる。該塗工機では、NiCrスパッタリング・ターゲットを特別に隔離する必要がない。上記にて例示した積層に見られる特性の一覧を下記の表に示す。
【表1】

【0085】
<実施例4>
本実施例は、本発明による厚さを有する、焼きなましされていない好適なコーティングの代表例である。厚さは、デックタック・プロフィルメータ(DekTak Profilometer)を用いて測定した。厚さを測定する際に、積層全体の初期厚さを測定した。続いて、最上層を塗工機内で施削して、最上のSiAlOyNx層を引いた積層の厚さを測定した。各層を1層ずつ施削して、最後に底部SiAlOyNxだけを測定するまで、これを繰り返した。測定値の誤差は約±0.5nmである。
【表2】

【0086】
<実施例5>
本実施例は、本発明による炭素トップコートを含む、焼きなまし可能な好適なコーティングの代表例である。厚さは上記実施例4と同様にデックタック・プロフィルメータを用いて測定した。これらの測定では、最上SiAlOxNy及び炭素トップコートの厚さを分けなかった。炭素の厚さは約5nmと推定されており、このため最上SiAlOxNy層の厚さは約33nmとなる。
【表3】

【0087】
<実施例6>
下記の表は、本発明によるコーティングの光学的及び電気測定値の代表例である。「low−g A」製品は、加熱処理されていない焼鈍製品である。「low−g T」製品は焼きなまし可能な製品であり、本発明によるトップコートを含む。「BB」とは、焼きなまし前の測定値を表し、「AB」とは、焼きなまし後の測定値を表す。「N/A」とは、この特定実施例の生成の際に測定値が得られなかったことを意味する。
【表4】

【0088】
<実施例7>
本実施例は本発明によるコーティングの仕様の概要を示す。本発明による好適な、焼きなましされていない及び焼きなまし可能なコーティングの光学的及び機械的特性は、以下の表に示す仕様の範囲に含まれる。
【表5】

【0089】
以下のページには、本発明による低放射率積層の実施例をさらに含む。第1組の実施例には、本発明によるさまざまな誘電体のみならず多様な吸収層にまで及ぶ種々の積層構造を含む。層厚はnmで表される。第2組の実施例には本発明による好適な積層構造を示す。第3組の実施例には、特に焼きなましにふさわしい、本発明による別の好適な積層構造を示す。これらのデータには焼きなまし前(BB--「焼く前(before bake)」)及び焼きなまし後(AB--「焼いた後(after bake」)に測定された光学的品質を含む。
【0090】
実施例の各組に使用されているように、「CPA」という表示は、特定のスパッタリング・ターゲットの大きさを意味する。実験計画におけるすべての層は、CPAと明記されていない限り長さ1メートルのターゲットからスパッタされている。このCPAスパッタリング・ターゲットの長さは37cmである。「em」とは、放射率を意味する。「Rs」とは、表面抵抗力(つまり、シート抵抗力)を意味し、単位面積当りのオーム数で測定されている。
【0091】
本発明は特定の実施形態について説明されているが、本明細書内に記載の特定の詳細に限定されるものではなく、むしろ当業者に種々の変更および改良を示唆するものも含み、これらはすべて特許請求の範囲に規定する本発明の範囲に含まれる。
【0092】

【0093】

【0094】

【0095】

【0096】

【0097】

【0098】

【0099】

【0100】

【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明による低SHGC、および、優れた機械的及び/又は化学的耐久性を示し魅力的な外観を有する低放射率積層の実施形態を示す。
【図2】本発明による低SHGC、および、優れた機械的及び/又は化学的耐久性を示し魅力的な外観を有する、Ag層の特性を改善するための核生成層を含む低放射率積層の別の実施形態を示す。
【図3】本発明による低SHGC、および、優れた機械的及び/又は化学的耐久性を示し魅力的な外観を有する低放射率積層のさらに別の実施形態を示す。
【図4】本発明による低SHGC、および、優れた機械的及び/又は化学的耐久性を示し魅力的な外観を有する低放射率積層のさらなる実施形態を示す。
【図5】2枚のガラス基板、1つのポリビニルブチラール層(PVB)及び本発明によるコーティングを含む自動車又は他の車両に使用するための低放射率積層の実施形態を示す。
【図6A】本発明によるlow-g吸収材としての使用に適している典型的な材料光学的定数データを示す。図6Aは、屈折率(n)に関するデータを示す。
【図6B】本発明によるlow-g吸収材としての使用に適している典型的な材料光学的定数データを示す。図6Bは、吸光係数(k)に関するデータを示す。
【図7】化学量論状態にある2つのSiAlOxNyについて、屈折率及び吸光係数のデータをグラフ化して示す。
【図8】本発明によるlow-g積層内のSiAlOxNyについての好適なn及びk値データをグラフ化して示す。
【図9】本発明による低SHGC、および、優れた機械的及び/又は化学的耐久性を示し魅力的な外観を有する低放射率積層の他の実施形態を示す。
【図10】本発明による低SHGC、および、優れた機械的及び/又は化学的耐久性を示し魅力的な外観を有する低放射率積層のさらに他の実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の低放射率コーティングであって、前記コーティングが前記基板の外側から順に
第1の誘電体層と、
第1のAg層と、
第1のバリア層と、
第1の吸収層と、
第2の誘電体層と、
第2のAg層と、
第2の吸収層と、
第3の誘電体層と
任意にトップコート層と
を含み、前記第1の吸収層又は前記第2の吸収層のいずれかが任意に選択される低放射率コーティング。
【請求項2】
前記第2のAg層と前記第2の吸収層との間に第2のバリア層をさらに含む請求項1に記載のコーティング。
【請求項3】
前記第1の誘電体層、前記第2の誘電体層または前記第3の誘電体層の少なくとも1つが半化学量論状態(substoichiometric)にある請求項1に記載の低放射率コーティング。
【請求項4】
前記第1の誘電体層、前記第2の誘電体層または前記第3の誘電体層のそれぞれが半化学量論状態にある請求項3に記載の低放射率コーティング。
【請求項5】
前記第1の誘電体層と前記第1のAg層との間に第1の核生成層をさらに含む請求項1に記載の低放射率コーティング。
【請求項6】
前記第2の誘電体層と前記第2のAg層との間に第2の核生成層をさらに含む請求項1に記載の低放射率コーティング。
【請求項7】
前記第1の吸収層と前記第2の吸収層が金属、合金、ケイ化物、吸収酸化物及び窒化物から成る群から選択される材料を個々に含む請求項1に記載の低放射率コーティング。
【請求項8】
前記第1の吸収層と前記第2の吸収層がTi,TiN,Si,NiCr,NiCrOx,Cr,Zr,Mo,W及びZrSiから成る群から選択される材料を個々に含む請求項1に記載の低放射率コーティング。
【請求項9】
前記第1の吸収層と前記第2の吸収層の少なくとも一方がNiCrを含む請求項8に記載の低放射率コーティング。
【請求項10】
前記第1の吸収層と前記第2の吸収層の少なくとも一方がCrを含む請求項8に記載の低放射率コーティング。
【請求項11】
前記第1の吸収層と前記第2の吸収層のそれぞれがNiCrを含む請求項8に記載の低放射率コーティング。
【請求項12】
前記第1の吸収層と前記第2の吸収層の少なくとも一方が前記コーティングの透過率を低下させることができる請求項1に記載の低放射率コーティング。
【請求項13】
前記少なくとも一方の吸収層は波長が550nmで約1から約5.5の屈折率を有する材料を含む請求項12に記載の低放射率コーティング。
【請求項14】
前記少なくとも一方の吸収層は波長が550nmで約1.75から約4.5の吸光係数を有する材料を含む請求項12に記載の低放射率コーティング。
【請求項15】
前記少なくとも一方の吸収層は波長に対する屈折率をグラフ化したときに550nmにおいて正の傾きを有する材料を含む請求項12に記載の低放射率コーティング。
【請求項16】
前記少なくとも一方の吸収層は波長に対する吸光係数をグラフ化したときに550nmにおいて正の傾きを有する材料を含む請求項12に記載の低放射率コーティング。
【請求項17】
前記第1の吸収層は第2の吸収層よりも厚い請求項1に記載の低放射率コーティング。
【請求項18】
前記第1の吸収層が約0.2nmから約8nmの厚さを有する請求項1に記載の低放射率コーティング。
【請求項19】
前記第1の吸収層が約1nmから約6nmの厚さを有する請求項18に記載の低放射率コーティング。
【請求項20】
前記第1の吸収層が約1.5nmから約4nmの厚さを有する請求項19に記載の低放射率コーティング。
【請求項21】
前記第2の吸収層が約0.1nmから約8nmの厚さを有する請求項1に記載の低放射率コーティング。
【請求項22】
前記第2の吸収層が約0.1nmから約5nmの厚さを有する請求項21に記載の低放射率コーティング。
【請求項23】
前記第2の吸収層が約0.1nmから約1nmの厚さを有する請求項22に記載の低放射率コーティング。
【請求項24】
前記第1の吸収層が約3nmの厚さを有する請求項1に記載の低放射率コーティング。
【請求項25】
前記第2の吸収層が約0.5nmの厚さを有する請求項24に記載の低放射率コーティング。
【請求項26】
前記第1の吸収層が約3.6nmの厚さを有する請求項1に記載の低放射率コーティング。
【請求項27】
前記第2の吸収層が約0.1nmの厚さを有する請求項26に記載の低放射率コーティング。
【請求項28】
前記第1の誘電体層、前記第2の誘電体層および前記第3の誘電体層がそれぞれ別個に酸化物、窒化物およびオキシ窒化物あるいはこれらの組み合わせから選択される材料を含む請求項1に記載の低放射率コーティング。
【請求項29】
前記第1の誘電体層、前記第2の誘電体層および前記第3の誘電体層の少なくとも1つが酸化物を含む請求項28に記載の低放射率コーティング。
【請求項30】
前記酸化物がTi、Zn、Sn、ZnSn合金またはBiターゲットからスパッタリングされる請求項29に記載の低放射率コーティング。
【請求項31】
前記酸化物がNbを含む請求項29に記載の低放射率コーティング。
【請求項32】
前記酸化物がAlおよびBから成る群から選択される要素を約20重量%まで含む請求項30に記載の低放射率コーティング。
【請求項33】
前記酸化物がAlおよびBから成る群から選択される要素を約10重量%まで含む請求項31に記載の低放射率コーティング。
【請求項34】
前記第1の誘電体層、前記第2の誘電体層および前記第3の誘電体層の少なくとも1つが窒化物またはオキシ窒化物を含む請求項28に記載の低放射率コーティング。
【請求項35】
前記窒化物またはオキシ窒化物がSi、SiAl、SiB、またはSiZrから成る窒化物またはオキシ窒化物である請求項34に記載の低放射率コーティング。
【請求項36】
前記窒化物またはオキシ窒化物がAlおよびBから成る群から選択される要素を約20重量%まで含む請求項35に記載の低放射率コーティング。
【請求項37】
前記窒化物またはオキシ窒化物がAlおよびBから成る群から選択される要素を約10重量%まで含む請求項36に記載の低放射率コーティング。
【請求項38】
前記第1の誘電体層、前記第2の誘電体層または前記第3の誘電体層の少なくとも1つが波長550nmにおいて約2.05と約2.4との間の屈折率を有する請求項1に記載の低放射率コーティング。
【請求項39】
前記第1の誘電体層、前記第2の誘電体層または前記第3の誘電体層の少なくとも1つが波長550nmにおいて約2.1と約2.3との間の屈折率を有する請求項38に記載の低放射率コーティング。
【請求項40】
前記第1の誘電体層、前記第2の誘電体層または前記第3の誘電体層の少なくとも1つが波長550nmにおいて約0と約0.05との間の吸光係数を有する請求項1に記載の低放射率コーティング。
【請求項41】
前記第1の誘電体層、前記第2の誘電体層または前記第3の誘電体層の少なくとも1つが波長550nmにおいて約0.01と約0.02との間の吸光係数を有する請求項40に記載の低放射率コーティング。
【請求項42】
基板上の低放射率コーティングであって、前記コーティングが前記基板の外側から順に
約25nmまでの厚さを有する第1の誘電体層と、
約8nmから約15nmの厚さを有する第1のAg層と、
約0.1nmから約4nmの厚さを有する第1のバリア層と、
約0.2nmから約8nmの厚さを有する第1の吸収層と、
約40nmから約75nmの厚さを有する第2の誘電体層と、
約8nmから約15nmの厚さを有する第2のAg層と、
約0.1nmから約8nmの厚さを有する第2の吸収層と、
約10nmから約40nmの厚さを有する第3の誘電体層と
任意にトップコート層と
を含む低放射率コーティング。
【請求項43】
前記第2のAg層と第2の吸収層との間に配置された約0.1nmから約4nmの厚さを有する第2のバリア層をさらに含む請求項42に記載のコーティング。
【請求項44】
第1の誘電体層と第1のAg層との間に第1の核生成層をさらに含み、前記第1の核生成層が約2nmから約11nmの厚さを有する請求項42に記載の低放射率コーティング。
【請求項45】
第2の誘電体層と第2のAg層との間に第2の核生成層をさらに含み、前記第2の核生成層が約2nmから約11nmの厚さを有する請求項1に記載の低放射率コーティング。
【請求項46】
基板上の低放射率コーティングであって、前記コーティングが前記基板の外側から順に
SiAlを含み約3nmから約30nmの厚さを有する第1の誘電体層と、
ZnAlyOxを含み約3nmから約11nmの厚さを有する第1の核生成層と、
約8nmから約12nmの厚さを有する第1のAg層と、
NiCrOxを含み約0.8nmから約2nmの厚さを有する第1のバリア層と、
NiCrを含み約1.5nmから約4nmの厚さを有する第1の吸収層と、
SiAlを含み約55nmから約75nmの厚さを有する第2の誘電体層と、
ZnAlyOxを含み約3nmから約10nmの厚さを有する第2の核生成層と、
約10nmから約15nmの厚さを有する第2のAg層と、
NiCrを含み約0.1nmから約2.2nmの厚さを有する第2の吸収層と、
SiAlを含み約24nmから約40nmの厚さを有する第3の誘電体層と
任意にトップコート層と
を含む低放射率コーティング。
【請求項47】
前記第2のAg層と前記第2の吸収層との間に配置された、NiCrOxを含み約2nmから約4nmの厚さを有する第2のバリア層をさらに含む請求項46に記載のコーティング。
【請求項48】
前記第1のAg層の前記第2のAg層に対する厚さ比が少なくとも約80%である請求項42に記載の低放射率コーティング。
【請求項49】
前記第1のAg層の前記第2のAg層に対する厚さ比が少なくとも約50%である請求項42に記載の低放射率コーティング。
【請求項50】
前記基板がガラスである請求項1に記載の低放射率コーティング。
【請求項51】
少なくとも1つの吸収層を含み、約0.30より小なる太陽熱利得係数(SHGC)を有することを特徴とする低放射率積層。
【請求項52】
前記積層がガラス基板を含む請求項51に記載の低放射率積層。
【請求項53】
前記ガラス基板が約1/8インチ(約0.32cm)の厚さを有する請求項52に記載の低放射率積層。
【請求項54】
前記積層が断熱ガラスユニットでの計測と同様に約42%から約46%の光透過率を有する請求項53に記載の低放射率積層。
【請求項55】
前記積層がネガティブa及びネガティブbの透過色を有する請求項51に記載の低放射率積層。
【請求項56】
優れた機械的または化学的耐久性を特徴とする請求項51に記載の低放射率積層。
【請求項57】
請求項1に記載のコーティングを基板上に付着することを含む、低太陽熱利得係数(SHGC)を有する低放射率積層の製造方法。
【請求項58】
前記付着がマグネトロンスパッタリングを含む請求項57に記載の方法。
【請求項59】
少なくとも1つの吸収層を含む低放射率積層であって、前記低放射率積層が
約30から約60のY透過値と、
ネガティブaの透過値と、
約8から約20のRgYと、
ネガティブRgaの透過値と、
約2から約12のRfYと、
ネガティブRfaの透過値と、
約0.10から約0.30のSHGCと
を有することを特徴とする低放射率積層。
【請求項60】
焼きなましまたは熱強化に対する耐性を特徴とする請求項51に記載の低放射率積層。
【請求項61】
前記積層の前記光学的品質が焼きなましまたは熱強化の後に低下しない請求項60に記載の低放射率積層。
【請求項62】
基板上の低放射率コーティングであって、前記コーティングが前記基板の外側から順に
SiAlOを含む第1の誘電体層と、
ZnAlOxを含む第1の核生成層と、
第1のAg層と、
NiCrOxを含む第1のバリア層と、
NiCr金属を含む第1の吸収層と、
SiAlOを含む第2の誘電体層と、
ZnAlOxを含む第2の核生成層と、
第2のAg層と、
NiCr金属を含む第2の吸収層と、
SiAlOを含む3の誘電体層と
任意にトップコート層と
を含む低放射率コーティング。
【請求項63】
前記第1のバリア層がNiCrOxを含む請求項1に記載の低放射率コーティング。
【請求項64】
前記NiCrOxが酸素を約15から約60原子比率含む請求項63に記載の低放射率コーティング。
【請求項65】
前記NiCrOxが酸素を約20から約50原子比率含む請求項64に記載の低放射率コーティング。
【請求項66】
前記NiCrOxが酸素を約20原子比率含む請求項65に記載の低放射率コーティング。
【請求項67】
前記第2のバリア層がNiCrOxを含む請求項2に記載の低放射率コーティング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−540320(P2008−540320A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511353(P2008−511353)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/018214
【国際公開番号】WO2006/124503
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507090421)エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr.,Suite 400,Alpharetta,GA 30022,U.S.A.
【Fターム(参考)】