説明

低屈折率コーティング組成物

硬化すると、薄膜であっても低屈折率で、表面硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、及び良好な硬化性を有する膜を与えるコーティング組成物が提供される。一実施形態として、フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子、少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子、及びエチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分を含む組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化性組成物、この組成物を硬化してなる膜、その膜の製造方法、及びその膜を含む物品に関する。本発明はハードコート層又はディスプレイシステムに対するその膜の適用に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティング組成物の開発において、様々な試みがなされて、薄膜であっても優れた表面硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、及び硬化性を有する低屈折率コーティング層の作製に用いられるコーティング組成物の開発には関心が依然もたれている。本発明の目的としては、そのようなコーティング組成物の提供が挙げられる。
【0003】
米国特許番号第6,391,459号では、フッ素化ウレタンオリゴマーを含む放射線硬化性組成物が論じられている。米国特許番号第6,160,067号では、重合性不飽和基を有する反応性シリカ粒子について言及されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、硬化すると、薄膜であっても低屈折率で、表面硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、及び/又は良好な硬化性を有する膜となる組成物を提供することが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態として、本発明の組成物は、
a) フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子、
b) 少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子、及び
c) エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分
を含む放射線硬化性組成物である。
【0006】
他の実施形態として、本発明は、
a) 基板、
b) ハードコート層、
c) 前記ハードコート層上の高屈折率膜、及び
d) 低屈折率膜
を含み、
上記低屈折率膜が、
i) フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子、
ii) 少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子、及び
iii) エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分
を含む組成物を硬化して得られる物品に関する。
【0007】
本発明の他の実施形態としては、組成物からの膜の製造方法が提供される。本発明の組成物は、様々な用途の、例えば、光ファイバー、フォトニック結晶ファイバー、インク及びマトリックス、光メディア、ハードコート、及び/又はディスプレイ用のコーティングを提供するために用いられる。
【0008】
本発明の他の側面としては、ディスプレイモニター(例えば、援用する米国特許番号第6,091,184号及び6,087,730号に記載の技術を用いたもの等のフラットスクリーンコンピューター及び/又はテレビモニター)、光学ディスク、タッチスクリーン、スマートカード、フレキシブルグラス等の基板上の膜を形成する本発明の組成物の用途に関する。
本発明は、例えばLCD(液晶ディスプレイ)及びOLED(有機発光ダイオード)ディスプレイ用途のプラスチック基板の開発に特に関する。
【0009】
本発明の組成物は、コーティング組成物として用いることができる。例えば、本発明の組成物は基板をコートするのに用いてもよい。好適なコートされる基板としては、有機基板が挙げられる。
有機基板としては、好ましくは、ポリノルボルネン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、ポリイミド、フルオレンポリエステル(例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、及びイソフタル酸、テレフタル酸又はこれらの混合物由来の内部重合繰り返しユニットから本質的になるポリマー)、セルロース(例えば、トリアセテートセルロース)、及び/又はポリエーテルナフタレンを含む基板のような重合(プラスチック)基板である。
特に好ましい基板は、ポリノルボルネン基板、フルオレンポリエステル基板、トリアセテートセルロース基板、及びポリイミド基板等である。
【発明の効果】
【0010】
他の本発明の目的、効果、特徴は、明細書中に記載されており、一部は以下の検討から当業者には明白である。本願に開示されている本発明は、目的、効果、特徴の特定の集まりや組合せに限定されない。記載された目的、効果、特徴の様々な組み合わせが、本願に開示された本発明を構成すると考えられる。
【発明の詳細な説明】
【0011】
定義:
「ナノ粒子」とは、粒子の混合物で、その混合物の大部分の粒子の大きさが1μm未満である。
「ナノ粒子の大きさ」(又は(ナノ粒子の粒径))とは、球状の粒子については粒子の直径を言う。球状でない粒子については、ナノ粒子のある面からその対向面までの直線距離で一番長い距離を言う。
「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートである。
「反応性ナノ粒子」とは、少なくとも1つの反応基(例えば、重合性基)を有するナノ粒子である。
【0012】
本発明は、中でも、
a) フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子、
b) 少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子、及び
c) エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分
を含む放射線硬化性組成物に関する。
【0013】
[反応性ナノ粒子]
反応性ナノ粒子の製造方法は、様々である。一実施形態としては、反応性ナノ粒子は金属酸化物ナノ粒子(A)、及びそれに化学的に結合している成分(B)を含むことができる。成分(B)は、少なくとも1つの反応基、例えば重合性基を有する。
【0014】
一実施形態において、金属酸化物ナノ粒子(A)として、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化アンチモン及び酸化セリウムからなる群から選ばれるナノ粒子を挙げられる。一実施形態において、ナノ粒子(A)は単独の金属酸化物である。他の実施形態ではナノ粒子(A)は異なる金属酸化物の混合物である。尚、ケイ素は通常の用法では金属ではないが、本発明の便宜上、本発明の金属酸化物ナノ粒子に酸化ケイ素が含まれるということは、当業者であれば理解できる。
【0015】
金属酸化物ナノ粒子(A)は、例えばパウダー状、又は水又は溶媒に分散した状態(ゾル)で用いてもよい。金属酸化物が分散した状態で用いる場合は、他の成分との相溶性及び分散性の観点から、分散媒体としては有機溶媒が好ましい。硬化物に優れた透明性が必要とされる用途では、金属酸化物の溶媒分散を用いることは特に望ましい。
有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、及びオクタノールのようなアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノンのようなケトン、エチルアセテート、ブチルアセテート、エチルラクテート及びγ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートのようなエステル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルのようなエーテル、ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素、及びジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドンのようなアミドが挙げられる。
【0016】
一実施形態において、ナノ粒子(A)には、コロイダルケイ素酸化物ナノ粒子が含まれる。そのようなケイ素ナノ粒子で入手可能なものは、例えば商品名で、日産化学工業株式会社製のメタノールシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等がある。
入手可能なパウダー状シリカの例として、商品名で、AEROSIL130、AEROSIL300、AEROSIL380、AEROSIL TT600及びAEROSIL OX50(日本アエロジル株式会社製)、Sidex H31、H32、H51、H52,H121、H122(旭硝子株式会社製)、E220A、E220(日本シリカ工業株式会社製)、SYLYSIA470(富士シリシア化学株式会社製)、及びSG Flake(日本板硝子株式会社製)がある。
【0017】
市販のアルミナ分散の例として、分散水溶液であるアルミナゾル−100、−200、−520(商品名、日産化学工業株式会社製)、アルミナ分散イソプロパノールであるAS−150l(商品名、住友大阪セメント株式会社製)、アルミナ分散トルエンであるAS−150T(商品名、住友大阪セメント株式会社製)がある。
亜鉛アンモチン酸塩パウダーの水分散製品の例としては、Celnax(商品名、日産化学工業株式会社製)がある。
アルミナ、チタン酸化物、スズ酸化物、インジウム酸化物、亜鉛酸化物のパウダー及び溶媒分散製品の例としては、Nano Tek(商品名、シーアイ化成株式会社製)がある。
アンモチンスズドープ酸化物の水分散ゾルの例としては、SN−100D(商品名、石原産業株式会社製)がある。ITOパウダーの例としては、三菱マテリアル株式会社製の製品があり、及びセリウム酸化物の水分散の例としてはNeedral(商品名、多木化学株式会社製)がある。
【0018】
金属酸化物ナノ粒子(A)の形状は、所望の用途に適した形状であればよく、球形、非球形、中空、多孔質、棒状、板状、繊維状、非晶質、及び/又はこれらの組み合わせ等が挙げられる。例えば、ナノ粒子は棒状で中空、又は板状で多孔質等でよい。
【0019】
一実施形態において、多数のナノ粒子(A)(例えば、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも94%、少なくとも96%、又は少なくとも98%)の粒径は、900nm未満であり、例えば、750nm未満、600nm未満、500nm未満、300nm未満、又は150nm未満、100nm未満、さらには75nm未満である。
一実施形態において、多数のナノ粒子(A)(例えば、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも94%、少なくとも96%、又は少なくとも98%)のサイズは、少なくとも0.1nmであり、例えば、少なくとも1nm、少なくとも5nm、少なくとも10nm、又は少なくとも20nmである。
粒子サイズの決定方法としては、BET吸光度法、光学又は走査型電子顕微鏡法、又は原子間力顕微鏡法(AFM)イメージングが挙げられる。
【0020】
一実施形態において、ナノ粒子(A)の平均サイズは900nm未満であり、例えば、750nm未満、600nm未満、500nm未満、300nm未満、又は150nm未満、100nm未満、さらには75nm未満である。
一実施形態において、ナノ粒子(A)の平均粒径は、少なくとも0.1nmであり、例えば、少なくとも1nm、少なくとも5nm、少なくとも10nm、又は少なくとも20nmである。
【0021】
成分(B)は、例えば、反応基を有する有機成分及び/又は無機成分である。成分(B)に含まれる反応基の例として、(メタ)アクリレート又はビニルエーテル基のようなエチレン性不飽和基を挙げられる。
一実施形態において、成分(B)は下記式(1)で表される1以上の基を有する。
【0022】
−X−C(=Y)−NH− (1)
(式中、XはNH、O(酸素原子)又はS(硫黄原子)であり、YはO又はSである。)
式(1)で表される基としては、例えば、ウレタン結合[−O−C(=O)−NH−]、−O−C(=S)−NH−又はチオウレタン結合[−S−C(=O)−NH−]がある。
【0023】
また、一実施形態において、成分(B)はシラノール基又は加水分解でシラノール基を形成する基を有する。
【0024】
成分(B)の例としては、ウレタン結合[−O−C(=O)−NH−]、及び/又はチオウレタン結合[−S−C(=O)−NH−]、及び分子中に少なくとも2つの重合可能不飽和基を含むアルコキシシラン成分が挙げられる。
ナノ粒子(A)との反応に適した成分(B)の具体例は、下記構造式Iで示される。
【0025】
【化1】

他の例として、例えば、下記式(2)で示される成分がある。
【0026】
【化2】

(式中、Rはメチル基であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、mは1又は2であり、nは1〜5の整数であり、Xは炭素数1〜6の2価のアルキレン基であり、Yは直鎖、環状、分鎖の炭素数3〜14の2価の炭化水素基であり、Zは直鎖、環状、分鎖の炭素数2〜14の2価の炭化水素基である。Zはエーテル結合を含んでもよい。)
【0027】
式(2)で示される成分は、例えば、メルカプトアルコキシシラン、ジイソシアネート及びヒドロキシ基含有多官能性(メタ)アクリレートを反応させて調製できる。
【0028】
調製方法の例としては、例えばメルカプトアルコキシシランをジイソシアネートと反応させ、チオウレタン結合を有する中間体を生成し、残存イソシアネートをヒドロキシ基含有多官能性(メタ)アクリレートと反応させてウレタン結合を有する生成物を得る方法がある。
【0029】
ジイソシアネートをヒドロキシ基含有多官能性メタクリレートと反応させてウレタン結合を有する中間体を生成し、残存イソシアネートをメルカプトアルコキシシランと反応させることで、上記と同じ生成物を得ることができる。しかしながら、この方法は、メルカプトアルコキシシランと(メタ)アクリル基の副反応が生じるので、得られる生成物の純度に劣るうえ、ゲル状である場合もある。
【0030】
式(2)に示される当該成分を調製するに用いるメルカプトアルコキシシランの例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらのうち、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ−メルカプトプロピルメチルジメキシシランが好ましい。
【0031】
メルカプトアルコキシシランの市販品の例としては、SH6062(東レダウコーニングシリコーン株式会社製)等が挙げられる。
【0032】
ジイソシアネートの例としては、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−へキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化ビスフェノールAジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート等が挙げられる。これらのうち、2,4−トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及び水素化キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0033】
ポリイソシアネート化合物の市販品の例としては、TDI−80/20、TDI−100、MDI−CR100、MDI−CR300、MDI−PH、NDI(三井日曹ウレタン株式会社製)、Coronate T、Millionate MT、Milionate MR、HDI(日本ポリウレタン工業株式会社)、Takenate600(武田化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0034】
ヒドロキシ基含有多官能性(メタ)アクリレートの例としては、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。これら化合物は、式(2)で表される化合物中において、少なくとも2つの重合可能不飽和基を形成する。
【0035】
メルカプトアルコキシシラン、ジイソシアネート及びヒドロキシ基含有多官能性(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で又は2以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
式(2)で表される成分を調製する際に、メルカプトアルコキシシラン、ジイソシアネート及びヒドロキシ基含有多官能性(メタ)アクリレートは、ジイソシアネートのメルカプトアルコキシシランに対するモル比が好ましくは0.8〜1.5、より好ましくは1.0〜1.2となるように用いる。モル比が0.8未満の場合、組成物の保存安全性が低下するおそれがある。一方、モル比が1.5を超える場合は、分散性が低下するおそれがある。
【0037】
アクリル基の嫌気性重合及びアルコキシシランの加水分解を避けるため、式(2)で表される成分を乾燥空気中で調製すると好ましい。反応温度は好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜80℃である。
【0038】
式(2)で表される成分の調製において、調製時間を短縮するため、ウレタン化反応において従来の触媒を用いてもよい。触媒としては、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジ(2−エチルへキサン塩)及びオクチルチントリアセテートが挙げられる。一実施形態において、触媒は、触媒及びジイソシアネートの総量に対して0.01〜1重量%加える。
【0039】
式(2)で表される化合物の熱重合を避けるため、調製の際に熱重合阻害剤を加えてもよい。熱重合阻害剤の例としては、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン等が挙げられる。熱重合阻害剤は、熱重合阻害剤及びヒドロキシ基含有多官能性(メタ)アクリレートの総量に対して、好ましくは0.01〜1重量%加える。
【0040】
式(2)で表される成分は、溶媒中で調製してもよい。溶媒としては、メルカプトアルコキシシラン、ジイソシアネート及びヒドロキシ基含有多官能性(メタ)アクリレートと反応せず、沸点が200℃以下の任意の溶媒を適宜選択できる。
【0041】
そのような溶媒の具体例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノンようのようなケトン、エチルアセテート、ブチルアセテート及びアミルアセテートのようなエステル、トルエン及びキシレンのような炭化水素等が挙げられる。
【0042】
アルコキシシラン成分の具体例としては、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及びビニルトリメトキシシランのような分子中に不飽和二重結合を有する成分、γ−グリシドオキシプロピルトリエトキシシラン及びγ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシランのような分子中にエポキシ基を有する成分、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン及びγ−アミノプロピルトリメトキシシランのような分子中にアミノ基を有する化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ−メルカプトプロピルトリエトキシシランのような分子中にメルカプト基を有する成分、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランのようなアルキルシラン等が挙げられる。これらのうち、表面処理された酸化物粒子の分散安定性の観点から、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランが好ましい。
【0043】
成分(B)の反応性基は、様々でよい。反応性基として、上述したように、例えば、不飽和重合可能基等が挙げられる。反応性基としては、例えば、アクリレート、メタアクリレート、プロペニル、ビニル、ブタジエニル、スチリル、エチニル、シンナモイル、ビニルエーテル、マレアート、アクリルアミド、エポキシ、オキセタン、アミン−エン及びチオール−エン基が挙げられる。
【0044】
また、成分(B)の反応性基は、異なる基と組み合わせて重合性を示す基でよい。そのような組み合わせとして、例えば、カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物とエポキシの組み合わせ、酸と水酸化物、特に2−ヒドロキシアルキルアミドとの組み合わせ、アミンとイソシアネート、例えばブロック化イソシアネート、ウレトジオン又はカルボジイミドとの組み合わせ、エポキシと、アミン又はジシアノジアミドとの組み合わせ、ヒドラジンアミドとイソシアネートとの組み合わせ、水酸化化合物とイソシアネート、例えばブロック化イソシアネート、ウレトジオン又はカルボジイミドとの組み合わせ、水酸化化合物と無水物との組み合わせ、水酸化化合物と(エーテル化)メチロールアミド(アミノ樹脂)との組み合わせ、チオールとイソシアネートの組み合わせ、チオールとアクリレートとの組み合わせ(任意でラジカル開始)、アセトアセテートとアクリレートとの組み合わせ、及びカチオン架橋剤を用いる場合は、エポキシ化合物とエポキシ又は水酸化化合物との組み合わせが挙げられる。従って、例えば、成分(B)の一部が反応性基としてアミン基を有し、他の部分が反応性基としてイソシアネート基を有して重合性組み合わせを形成してもよい。
【0045】
さらに用いることのできる反応性基として、水分硬化性イソシアネート、アルコキシ/アシルオキシシラン、アルコキシチタネート、アルコキシジルコネート、又はユリア−、ユリア/メラミン−、メラミン−ホルムアルデヒド又はフェノールホルムアルデヒド(レゾール、ノボラック型)の水分硬化性混合物、又は例えばアクリレート、メタクリレート、マレアート/ビニルエーテル等の放射線硬化性(過酸化−、又は光開始)エチレン性不飽和モノ及び多官能性モノマー及びポリマー、又はスチレン及び/又はメタクリレート中の放射線硬化性(過酸化−、又は光開始)不飽和(例えばマレイン又はフマル)ポリエステル等を挙げられる。
【0046】
反応性粒子の調製方法について、反応性ナノ粒子及びその製造方法の好適な例としては、エリヤマらの米国特許番号6160067号及び国際公開00/4766号パンフレットに記載されており、これら両文献の全てを援用する。
金属酸化物ナノ粒子(A)は、通常の貯蔵状態では吸着した水分として、ナノ粒子の表面に水分を有する場合が多い。加えて、ヒドロキシド、ハイドレート等のシラノール基形成成分と反応する成分は、少なくとも酸化物ナノ粒子の表面に存在する場合が多い。従って、架橋可能反応性ナノ粒子は、シラノール基形成成分及び酸化物粒子(A)を混合し、この混合物を撹拌しながら加熱することにより調製できる。この反応は、酸化物ナノ粒子(A)と有機成分(B)が有するシラノール基形成部位が効率的に結合するために、水分存在下で行われることが望ましい。
【0047】
反応促進のため、好ましくは脱水剤を添加する。脱水剤としては、ゼオライト、無水シリカ及び無水アルミナ等の無機化合物、及びメチルオルトホーメート、エチルオルトホーメート、テトラエトキシメタン及びテトラブトキシメタン等の有機化合物を用いることができる。通常、有機化合物を脱水剤として用いる、即ち、例えばメチルオルトホーメート及びエチルオルトホーメート等のオルトエステルを通常用いる。
【0048】
フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子及び少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子の製造方法については、下記実施例に記載されている。
【0049】
一実施形態において、反応性ナノ粒子は、1以上の反応性基を有する成分(B)に加えて、1以上の反応性基を有さない有機成分も含む。
【0050】
[フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子及び少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子]
「フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子」とは、金属酸化物ナノ粒子と化学的に結合している成分が、フッ素化基を含まないことを意味する。
「少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子」とは、任意に存在するフッ素化基を含まない成分とは別に、フッ素化基を含む成分が結合した反応性ナノ粒子と定義される。これらフッ素化基含有成分は反応性基を含有してもしなくてもよい。換言すれば、フッ素化基は反応性基を含む成分に、存在してもしなくてもよい。
反応性基を含まないフッ素化基含有成分としては、例えば、フルオアルキル分子成分を含むトリメトキシランがある。具体的には、パーフルオロヘキシルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2,テトラヒドロデシルトリエトキシシラン又はパーフルオロデシルエチルトリメトキシシランが挙げられる。
【0051】
フッ素化基の例としては、これらに限定されないが、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ジフルオロエチル、トリフルオロエチル、テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ジフルオロプロピル、トリフルオロプロピル、テトラフルオロプロピル、ペンタフルオロプロピル、ヘキサフルオロプロピル、ヘプタフルオロプロピル、ジフルオロブチル、トリフルオロブチル、テトラフルオロブチル、ペンタフルオロブチル、ヘキサフルオロブチル、ヘプタフルオロブチル、オクタフルオロブチル、ジフルオロペンチル、トリフルオロペンチル、テトラフルオロペンチル、ペンタフルオロペンチル、ヘキサフルオロペンチル、ヘプタフルオロペンチル、オクタフルオロペンチル、炭素数1〜30の分鎖又は直鎖のアルカン又はアルコールの同様のパーフルオロ誘導体及び、炭素数1〜30の分鎖又は直鎖のアルカン又はアルコールの1,1,2,2−テトラヒドロフルオロ誘導体、部分的にエトキシ化又はプロポキシ化された前記フッ素化アルカン/アルコール又は1,1,2,2−テトラヒドロフルオロアルカン/アルコールを挙げられる。一実施形態において、フッ素化基を有する反応性粒子は、フルオロアルキル基を含む。
【0052】
本発明の一実施形態において、おいて、フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子の少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子に対する重量比は、1:10〜20:1であり、例えば、1:9〜9:1、1:1〜15:1、3:1〜10:1、3:1〜約9:1又は6:1〜約8:1である。
【0053】
一実施形態において、フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子の、全ての反応性粒子及びエチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分の総重量に対する重量百分率は、20%〜90%であり、例えば、40〜90%、60〜90%又は75〜90%である。
一実施形態において、フッ素化基を有する反応性ナノ粒子の、全ての反応性粒子及びエチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分の総重量に対する重量百分率は、5%〜50%であり、例えば、5〜35%、5〜25%又は10〜15%である。
【0054】
[エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分]
一実施形態において、エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分は、1以上のエチレン性不飽和基及び1以上のウレタン基を含むフッ素化オリゴマーである。
【0055】
フッ素化ウレタンオリゴマーは、少なくともフッ素化ポリオール、ポリイソシアネート及びエチレン性不飽和を含む反応性モノマーの反応生成物でもよい。この反応性モノマーは、例えば(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、マレアート、フマレート又は他のエチレン性不飽和基をその構造中に含むことができる。
【0056】
一実施形態において、フッ素化ウレタンオリゴマーの分子量は約700〜約10000g/molであり、例えば、約1000〜約5000g/molである。
【0057】
フッ素化ウレタンオリゴマーの調製に用いることのできるフッ素化ポリオールとしては、例えばフッ素化ポリメチレン酸化物、ポリエチレン酸化物、ポリプロピレン酸化物、ポリテトラメチレン酸化物又はそれらの共重合体が挙げられる。一実施形態において、フッ素化ポリオールは、エチレン酸化物でエンドキャップする。
好適なフッ素化ポリオールとしては、例えばソルベイ ソレクシス株式会社で販売しているフルオロリンク液系(フルオロリンクL,C,D,B,E,B1,T,L10,A10,D10,S10,C10,E10,T10又はF10)又はフォンブリンZドールTX系が挙げられる。これらポリオールは、エチレン酸化物でエンドキャップされたフッ素化ポリ(エチレン酸化物−メチレン酸化物)共重合体である。
他の好適なポリオールとしては、ヘキサフルオロプロペン及びヒドロキシブチルアクリレートのアクリル共重合体、又はトリフルオロエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチルアクリレートのアクリル共重合体のような分鎖又は主鎖にフッ素化官能基を有するアクリルオリゴマー又はテレケロマー(telechelomer)等が挙げられる。他の好適なフッ素化ポリオールとしては、3M株式会社で販売されているL−12075及びデュポンで販売されているMPDシリーズのポリオールのようなポリオールが挙げられる。
【0058】
フッ素化ウレタンオリゴマーの調製に用いることができるポリイソシアネートとしては、様々な有機ポリイソシアネートの1種又はその混合物が挙げられる。ポリイソシアネートをフッ素化ポリオール及びエチレン性不飽和イソシアネート反応性化合物と反応させて、エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分を生成してもよい。
これらポリイソシアネートのうち、好ましくはジイソシアネートである。代表的なジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチレンジジクロヘキサンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、4−クロロ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロへキシレンジイソシアネート、及びそれぞれTDI末端ポリテトラメチレンエーテルグリコール及びTDI末端ポリエチレンアジピン酸エステルのようなポリアルキル酸化物及びポリエステルグリコールジイソシアネート等が挙げられる。
【0059】
一実施形態において、フッ素化ポリオールとポリイソシアネートは、フッ素化ポリオールのポリイソシアネートに対する重量比が約1.5:1〜約7.5:1で、組み合わせる。フッ素化ポリオール及びポリイソシアネートは、反応を容易にするため、触媒存在下で反応させてもよい。ウレタン反応の触媒としては、ジブチリチンジラウレート等がこの目的のためには好適である。
【0060】
イソシアネート末端プレポリマーは、エチレン性不飽和官能基含有イソシアネート反応性官能性モノマーと反応させてエンドキャップしてもよい。エチレン性不飽和官能基としては、アクリレート、ビニルエーテル、マレアート、フマレート又は他の類似化合物が好ましい。
所望の(メタ)アクリレート官能基でイソシアネート末端プレポリマーをエンドキャップするのに有用な好適なモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシ官能性アクリレート等が挙げられる。
【0061】
所望のビニルエーテル官能基でイソシアネート末端プレポリマーをエンドキャップするのに有用な好適なモノマーとしては、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル及び1,4−シクロヘキサンジメチロールモノビニルエーテル等が挙げられる。
所望のマレアート官能基でプレポリマーをエンドキャップするのに有用な好適なモノマーとしては、マレイン酸及びヒドロキシ官能性マレアート等が挙げられる。
【0062】
プレポリマー中に残る全てのイソシアネート官能基と反応し、所望の官能基でプレポリマーをエンドキャップするために、アクリレート、ビニルエーテル、マレアート又は他のエチレン性不飽和基を含むモノマーに十分な量のイソシアネート反応性官能基があると望ましい。尚、「エンドキャップ」とは、官能基がプレポリマーの2つの末端のそれぞれをキャップすることをいう。
【0063】
イソシアネート反応性エチレン性不飽和モノマーは、フッ素化ポリオール及びイソシアネートの反応生成物と反応する。この反応は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)等のような抗酸化物質存在下で行われると好ましい。
【0064】
一実施形態において、エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分は、23℃において、少なくとも2500センチポイズ(「cps」)の粘度を有し、例えば、少なくとも5000cps、少なくとも7500cps、少なくとも10000cps、少なくとも25000cps又は少なくとも50000cpsの粘度を有する。一実施形態において、上記粘度は、最大限で10000000cpsであり、例えば、最大限で5000000cps、又は最大限で1000000cpsである。
【0065】
一実施形態において、エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分の、全ての反応性粒子及びエチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分の合計重量に対する百分率は、少なくとも0.75wt%であり、例えば、少なくとも1wt%、少なくとも2wt%、少なくとも3wt%、又は少なくとも5wt%である。
一実施形態において、エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分の、全ての反応性粒子及びエチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分の合計重量に対する百分率は、最大限で35wt%であり、例えば、最大限で25wt%、最大限で15wt%、最大限で10wt%、又は最大限で8wt%である。
【0066】
[希釈モノマー]
一実施形態において、本発明の組成物は、例えばコーティング組成物の粘度を下げるため、希釈モノマーを含む。希釈モノマーとしては、分子中に1つの重合可能ビニル基を有する重合可能単官能ビニルモノマー、及び分子中に2以上の重合可能ビニル基を有する重合可能多官能ビニルモノマーのような重合可能ビニルモノマーが挙げられる。
【0067】
単官能希釈モノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルピリジンのような単官能ビニルモノマー、イソボルニル(メタ)アクリレート又は4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、へプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートのようなアクリル構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0068】
多官能希釈モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、及びビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0069】
希釈モノマーは例えばフッ素化等のハロゲン化されているとよい。
フッ素化希釈モノマーとしては、例えば、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート又は1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート等のフッ素化アクリレートモノマーが挙げられる。
【0070】
一実施形態において、本発明のコーティング組成物は、全ての反応性粒子及びエチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分の総重量に対して、0〜20wt%の1以上の希釈物を含み、例えば、0.1〜10wt%、0.25〜5wt%又は0.5〜2.5wt%である。
【0071】
[添加物]
本発明のコーティング組成物は、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、接着促進剤、コーティング表面改良剤、熱重合開始剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、防腐剤、可塑剤、潤滑剤、溶媒、フィラー、抗劣化剤及び湿潤改良剤のような様々な添加物を含んでもよい。
抗酸化剤としては、イルガノックス1010,1035,1076,1222(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)、アンチジーンP,3C,FR、スミライザーGA−80(住友化学工業株式会社製)等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、チヌビンP,234,320,326,327,328,329,213(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)、Seesorb102,103,110,501,202,712,704(シプロ化成株式会社製)等が挙げられる。
光安定剤としては、チヌビン292,144,622LD(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)、サノールLS770(三共株式会社製)、Sumisorb TM−061(住友化学工業株式会社製)等が挙げられる。
接着促進剤としてのシランカップリング剤としては、γ−メルカプトプロピルメチルモノメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルモノエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、β−メルカプトエチルモノエトキシシラン、β−メルカプトエチルトリエトキシシラン、β−メルカプトエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシルプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシルプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン及びγ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これら化合物の市販品としては、SILAACE S310,S311,S320,S321,S330,S510,S520,S530,S610,S620,S710,S810(チッソ株式会社製)、Silquest A−174NT(OSiスペシャルティ−クロンプトン株式会社製)、SH6062,AY43−062,SH6020,SZ6023,SZ6030,SH6040,SH6076,SZ6083(東レダウコーニングシリコーン株式会社製)、KBM403,KBM503,KBM602,KBM603,KBM803,KBE903(信越シリコーン株式会社製)等が挙げられる。また、アクリル酸のような酸性接着促進剤を用いてもよい。ユーシービー株式会社のEb168又はEb170のようなリン酸エステルは好適な接着促進剤である。
コーティング表面改良剤としては、ジメチルエチルシロキサンポリエーテルのようなシリコン添加剤、及びDC−57,DC−190(ダウコーニング株式会社製)、SH−28PA,SH−29PA,SH−30PA,SH−190(東レダウコーニングシリコーン株式会社製)、KF351,KF352,KF353,KF354(信越化学工業株式会社製)、L−700,L−7002,L−7500,FK−024−90(日本ユニカー株式会社製)のような市販品が挙げられる。
【0072】
一実施形態において、本発明の組成物は、エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分の総重量に対して、約0.01〜約10重量%の接着促進剤を含む。
一実施形態において、本発明の組成物は、エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分の総重量に対して、約0.01〜約5重量%の抗酸化剤を含む。
【0073】
光重合開始剤としては、例えば、ヒドロキシ又はアルコキシ官能アセトフェノン誘導体、ヒドロキシアルキルフェニルケトン、及び/又はベンゾイルジアリールフォスフィンオキシドが挙げられる。
光重合開始剤の具体例としては、イルガキュア651(ベンジルメチルケタール又は2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタノン、チバガイギー社製)、イルガキュア184(1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニルケトンが活性成分、チバガイギー社製)、Darour1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンが活性成分、チバガイギー社製)、イルガキュア907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、チバガイギー社製)、イルガキュア369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンが活性成分、チバガイギー社製)、Esacure KIP150(ポリ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オン}、フラテリランベルチ社製)、Esacure KIP100F(ポリ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オン}及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの混合物、フラテリランベルチ社製)、Esacure KTO46(ポリ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オン},2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド及びメチルベンゾフェノン誘導体の混合物、フラテリランベルチ社製)、Lucirin TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製)、イルガキュア819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、チバガイギー社製)、イルガキュア1700(25:75%のビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの混合物、チバガイギー社製)等が挙げられる。
【0074】
例えばビニルエーテル基及び他のエチレン性不飽和基のような2つの異なるタイプのエチレン性不飽和基を有するオリゴマーは、これらの光重合開始剤の存在下、急速に共重合させ急速に光硬化させてもよい。また、重合開始剤が無い場合に、異なるタイプのエネルギーに曝露して急速に相互作用させてもよい。
【0075】
一実施形態において、光重合開始剤は、本発明の組成物中に、全ての反応性ナノ粒子及びエチレン政府飽和フッ素化ウレタン成分の総重量に対して、約0.01〜約20.0重量%存在し、例えば、約1〜15重量%、4〜12重量%又は5〜10重量%存在する。
【0076】
一実施形態において、光重合開始剤の量は、コーティング組成物の全重量に対して、少なくとも2重量%であり、例えば少なくとも5重量%である。
【0077】
一実施形態において、本発明は、
a)全ての反応性ナノ粒子及びエチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分の総重量に対して50重量%〜90重量%のフッ素化基を含まない反応性ナノ粒子、
b)全ての反応性ナノ粒子及びエチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分の総重量に対して5重量%〜20重量%の少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子、及び
c)全ての反応性ナノ粒子及びエチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分の総重量に対して1〜10重量%の1以上のエチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分
を含む放射線硬化性組成物に関する。
【0078】
一実施形態において、本発明は、
a)フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子、及び
b)少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子
を含み、粒子(a)の粒子(b)に対する比が少なくとも1:1である組成物に関する。
【0079】
一実施形態において、本発明は、
a)フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子、及び
b)少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子
を含み、粒子(a)の粒子(b)に対する比が0.95:1未満である組成物に関する。
【0080】
一実施形態において、本発明は、
a)反応性ナノ粒子、及び
b)1以上のエチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分
を含み、上記反応性ナノ粒子の上記エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分に対する比が少なくとも6:1である組成物に関する。
【0081】
[コーティング及び特性]
本発明の一実施形態として、組成物はヘッドウェイリサーチ社製EC101DTスピンコーターを用いて、基材上にスピンコートされる。
組成物液1mlを、スピンコーターの固定台上に固定された3”×3”の基材上に蒸着した。塗布した液体/基材を次に、3000rpm/sの回転加速度で、12秒間、回転速度7500rpmでスピンコートした。スピンコーティング後の得られた湿った薄膜をさらに室温で60秒間脱水した。脱水薄膜を、窒素雰囲気下でFusionD−lampを用いて、紫外線量2.0J/cmを照射した。この放射線量はインターナショナル・ライト社製390Bライトバグ紫外線放射計を用いて測定した。塗布前には溶媒中で全固体量5%まで希釈されたコーティング液は、塗布及び硬化後には膜厚が0.10〜0.15μmとなった。
【0082】
一実施形態において、本発明の組成物は、硬化すると低屈折率膜となる。一実施形態において、この膜の屈折率は1.50未満であり、例えば、1.35〜1.50の範囲であり、例えば、1.40〜1.48、1.42〜1.46又は1.432〜1.50である。
【0083】
一実施形態において、本発明の組成物は硬化すると優れた表面硬度及び優れた耐摩耗性を有する被膜となる。これらは、膜硬度に関する鉛筆試験及び摩耗性試験で特徴づけられる。
一実施形態において、被膜は、少なくとも鉛筆硬度Fを有し、例えば少なくともH又は少なくとも2Hを有する。また一実施形態において、被膜は、摩耗性試験において傷が付かない。
これら試験については実施例において述べる。
【0084】
組成物の硬化の程度は、反応したアクリル化飽和状態の百分率(%RAU)で示すことができる。%RAU測定の試験方法は本明細書の実施例において述べる。
一実施形態において、本発明の組成物は硬化すると、少なくとも40%の%RAUを有し、例えば45%〜90%又は55%〜70%を有する。
【0085】
本発明の組成物は、反射防止ディスプレイシステム用低屈折率層として用いることができる。反射防止ディスプレイシステムは、基板、基板上のハードコート層、ハードコート層上の高屈折率層、低屈折率層を含む。
【0086】
ディスプレイ用の好適な基板としては、有機基板等が挙げられ、例えば、ポリノルボルネン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、ポリイミド、セルロース、セルローストリアセテート、フルオレンポリエステル及び/又はポリエーテルナフタレン等のプラスチック基板が挙げられる。
【0087】
基板は、コーティング前に前処理してもよい。例えば、基板をコロナ又は高エネルギー処理できる。また、基板はエマルジョン塗布のような化学処理をしてもよい。
【0088】
一実施形態において、基板は、ヒドロキシル基、カルボン酸基、及び/又はトリアルコキシシラン基(例えばトリメトキシシラン)のような官能基を含む。このような官能基を含むと、基板に対する被膜の接着性が改善され得る。
【0089】
一実施形態において、本発明の組成物は、光ファイバーの1次コーティング、光ファイバーの2次コーティング、マトリックスコーティング、結束材料、インクコーティング、フォトニック結晶ファイバーコーティング、光ディスク用接着剤、ハードコートコーティング又はレンズーコーティングにも用いることができる。
【0090】
本発明は、
a) 基板、
b) ハードコート層、
c) 前記ハードコート層上の高屈折率膜、及び
d) 低屈折率膜
を含む物品であって、
前記低屈折率膜が、
i) フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子、
ii) 少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子、及び
iii) エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分
を含む組成物を硬化して得られる物品に関する。
【0091】
[低屈折率膜の製造方法]
本発明は、少なくとも下記成分を混合する低屈折率膜の製造方法にも関する。
a) フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子
b) 少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子、及び
c) エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分
【0092】
本発明は、
a)i) フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子、
ii) 少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子、及び
iii) エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分
を含む放射線硬化性組成物を調製し、
b)前記放射線硬化性組成物を物品にコートする
物品用膜の製造方法にも関する。
【実施例】
【0093】
本発明の特別の実施形態として及び本発明の実施及び効果を示すために実施例を以下に記す。下記実施例は、例示のためのものであって、いかなる方法によっても明細書又は特許請求の範囲を限定するものではない。
【0094】
[組成物I(フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子を含む)の調製]
組成物Iの調製に用いる成分及びそれらの相対量を下記表1に示す。アクリレート基の重合を阻害する化合物であるHQMMEと共に、アクリレート基を含むトリメトキシシラン化合物(Int−12A)をナノシリカ酸化物粒子のMEK懸濁液(MEK−ST)に添加することで、ナノシリカ酸化物粒子を表面グラフトした。シラングラフト反応の触媒作用のために、少量の水(MEK−STの総重量の1.7重量%)をMEK−ST懸濁液に加えた。混合液を撹拌しながら60℃で少なくとも3時間還流した。次に、アルコキシシラン化合物であるMTMSを混合液に加えて撹拌し、60℃で少なくとも1時間還流した。脱水剤であるOFMを混合液に加えて撹拌し、60℃で少なくとも1時間還流した。
【0095】
【表1】

【0096】
[組成物II(少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子を含む)の調製]
フッ素化アクリル化MT−STの調製に用いる成分及びそれらの相対量を下記表2に示す。アクリレート基の重合を阻害する化合物であるHQMMEと共に、アクリレート基を含むトリメトキシシラン化合物(Int−12A)をナノシリカ酸化物粒子のメタノール懸濁液(MT−ST)に添加することで、ナノシリカ酸化物粒子を安定化した。MT−ST懸濁液に存在する少量の水(MT−STの総重量の1.7重量%)が、シラングラフト反応を容易にした。混合液を撹拌しながら60℃で少なくとも3時間還流した。次に、フッ素化アルコキシシラン化合物であるTDFTEOSを混合液に加えて撹拌し、60℃で少なくとも1時間還流した。次に、アルコキシシラン化合物であるMTMSを混合液に加えて撹拌し、60℃で少なくとも1時間還流した。脱水剤であるOFMを混合液に加えて撹拌し、60℃で少なくとも1時間還流した。
【0097】
【表2】

【0098】
[エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分の調製]
エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分は、下記表3の成分を反応させることにより調製した。
【0099】
【表3】

【0100】
このように調製したエチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分(以下、H−I−フルオリンクE−I−Hと言う)は、下記表4の成分と混合し、中間組成物Aを形成した。
【0101】
【表4】

【0102】
最後に、下記表5の成分を混合して組成物IIIを調製した。
【0103】
【表5】

【0104】
下記表6A(重量%は組成物の総重量に対する値)の成分を混合して実施例1の組成物及び比較例1−10の組成物を調製した。評価結果を表6Bに示す。
【0105】
【表6A】

【0106】
【表6B】

【0107】
[被膜特性の評価(試験方法)]
[鉛筆試験による膜硬度の測定(鉛筆硬度)]
鉛筆硬度は、標準方法ASTM D3363に準拠して測定した。
ガラス基板上で組成物を硬化し、被膜基板を堅い水平面上に配置する。鉛筆を膜に対して45°(試験者から離れたポイントで)で固く握り、試験者から離れるように押して6.5mm(1/4インチ)の線を引く。
この動作を一番硬い鉛筆から始め、硬度を落としながら以下の2点になるまで続ける。1つめは、鉛筆が膜を破ったり削ったりできなくなるまで(鉛筆硬度)であり、2つめは鉛筆が膜を引っ掻くことができなくなるまで(引っ掻き硬度)である。
【0108】
膜の鉛筆硬度は以下にリストされている文字で表現される(左から右へ行くに従って膜の硬さが増す)
4B,3B,2B,B,HB,F,H,2H,3H,4H
膜の硬さが、F,H,2H,3H,4Hのグループのいずれかで表現される場合、その膜は十分に硬いと認められる。
【0109】
[硬化膜の屈折率の測定]
顕微鏡のスライドガラスをテストコーティングでコーティングし、このコーティングを紫外線露光して硬化する。(標準硬化条件:溶媒蒸発、1.0J/cmで硬化、Fusion 300W D−ランプ、大気中)。レーザーブレードを用いて、硬化膜に2mm×2mm四角形を切る。硬化膜から、交互に四角形をとりのぞく。スライドを平行軸透過光用の10倍顕微鏡に設置し、開口率が少なくとも0.7までの対象物を取り付ける。顕微鏡に備え付けの照明機構の通り道に狭い帯域幅の干渉フィルターを設置して、単色光を用いる。外部光源を用いる場合は、単色光分光器を用いて連続可変源としてもよい。
用いる通常の波長は589nm又はSodium D線で、屈折率を「n」とする。硬化膜を屈折率が既知の標準液(カーギル液体屈折率指数、マックローン顕微鏡株式会社から市販されている標準グループ)と比較する。ボトルアプリケーターロッドを用いて、カバースリップ片に隣接して少量の屈折率液の小さな一滴を適用し、毛細管現象より、屈折率液をカバースリップ下に届かせて、被膜四角形周辺の空間を満たす。顕微鏡の焦点を調整して、サンプルと対象物間の距離を広げると、ベッケ線は高屈折率媒体の方へ移動する。
被膜がこの液より高屈折率であるならば、焦点が「上」に動くとベッケ線が四角形の輪郭の中に動く。四角形の輪郭が消えるか、又はベッケ線が先の観察から観察されたものから方向を逆にするまで、新しい被膜四角形について上記と同様の工程を繰り返す。最初の観察により示される屈折率の不一致の方向に従って、より高い又はより低い屈折率液を選ぶ。被膜四角形の輪郭が消えず、隣り合う二つの液が見出された(ベッケ線の移動の相反するサインである)場合は、物質の屈折率は二つの値の間にあり、おそらくはその範囲の中央にある。
【0110】
[耐摩耗性試験]
被膜基板を堅い水平面上に配置する。研究用清掃ペーパー(キムワイプEX−L(商標登録)、キンバリークラーク社から入手可能)で試験者の手の指の周りを包む。中程度の指圧で、硬化膜上を紙で前後に2−3回擦る。硬化膜について、擦り傷を確認し、できた傷を下記の基準に従って、評価した。
0:目視で傷なし
1:目視でかすかに傷ついている
2:硬化膜が目視で中程度に傷ついている
3:硬化膜が完全に剥がれている又は傷ついている
研究用清掃ペーパーで擦って傷ができることは、硬化膜の硬さが低いこと、及び/又は硬化膜の架橋密度が低いこと、及び/又は光重合性基の硬化が不完全であること、及び/又は硬化膜の基板への接着が弱いことを、示す。
【0111】
[紫外線硬化性被膜の硬化度(%RAU)の測定]
KBr結晶上にコーティング液滴を、厚さ約0.1ミクロンで完全におおうまで、スピンコーティングする。このサンプルを100同時スキャン(100 co−added scans)によりスキャンし、スペクトルを吸光度に変換する。コーティング液のアクリレート吸光度のネットピーク面積を測定する。ほとんどのアクリレート系コーティング液については、810cm−1の吸光度を用いる。
被膜が810cm−1に又はその近辺に強い吸収が現れるシリコン又は他の成分を含む場合は、他のアクリレート吸光度を用いる。
【0112】
ネットピーク面積は、ベースライン法を用いて測定する。ベースライン法とは、ピークのどちらか一方側で、吸光度の極小値に接してベースラインを引き、ピークの下方及びベースラインの上方の面積を測定する方法である
【0113】
大気中、Fusion 300W D−ランプを用いて、サンプルを1.0J/cmで硬化する。サンプルのFTIRスキャン及び硬化被膜のスペクトルに対するネットピーク吸光度の測定を繰り返す。ベースライン頻度はコーティング液と必ずしも同じである必要ないが、測定帯のどちらか一方側で、吸光度の極小値に対してベースラインが接するように選ばなくてはいけない。
コーティング液及び硬化被膜のスペクトルのアクリレートではない基準ピークについて、ピーク面積の測定を繰り返す。同じ構成のその後の各分析については、同じベースラインポイントを有する同じ基準ピークを利用すべきである。
【0114】
コーティング液について、基準吸光度に対するアクリレート吸光度の比は、下記式を用いて決定する。
=AAL/ARL
(式中、AAL=コーティング液のアクリレート吸光度の面積
RL=コーティング液の基準吸光度の面積
=コーティング液の面積比)
【0115】
同様に、硬化被膜について、基準吸光度に対するアクリレート吸光度の比は、下記式を用いて決定する。
=AAF/ARF
(式中、AAL=硬化被膜のアクリレート吸光度の面積
RL=硬化被膜の基準吸光度の面積
=硬化被膜の面積比)
【0116】
最後に、硬化度を反応アクリレート不飽和百分率(%RAU)として下記式を用いて計算する。
【0117】
【数1】

(式中、R=コーティング液の面積比
=硬化被膜の面積比)
【0118】
多官能アクリレートを相当量含む組成物は、十分硬化した場合、比較的低い%RAU(通常、55−70%台)であることが知られている。これは、アクリレートネットワークのガラス化によると考えられる。このガラス化は、未反応アクリレートがネットワーク内で十分移動できなくさせ、それによりフリーラジカルが増殖する。尚、その逆も同様である。
記載されている本発明の具体的実施形態については、当業者に多くの修正点が容易に明らかであったり、示唆されたりするだろう。従って、本発明は下記請求項の精神や範囲のみに限定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子、
b) 少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子、及び
c) 1以上のエチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分
を含む放射線硬化性組成物。
【請求項2】
前記両反応性ナノ粒子が金属酸化物を含む請求項1に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項3】
少なくとも1つのフッ素化基を有する前記反応性ナノ粒子が、前記金属酸化物に結合した有機成分を含む請求項2に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項4】
前記有機成分が不飽和重合可能基を有する請求項3に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項5】
前記不飽和重合可能基がアクリレート、(メタ)アクリレート、プロペニル、ビニル、ブタジエニル、スチリル、エチニル、シンナモイル、ビニルエーテル、マレアート、アクリルアミド、エポキシ、オキセタン、アミン−エン、又はチオール−エンである請求項4に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項6】
前記フッ素化基が、前記不飽和重合可能基を有する有機成分に位置する請求項4又は5に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項7】
前記フッ素化基が、前記不飽和重合可能基を有する有機成分に位置しない請求項4又は5に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項8】
前記フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子の前記少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子に対する比が1:9〜9:1である請求項1〜7のいずれかに記載の放射線硬化性組成物。
【請求項9】
前記反応性ナノ粒子のフッ素化基がフルオロアルキル基である請求項1〜8のいずれかに記載の放射線硬化性組成物。
【請求項10】
硬化すると屈折率が1.5未満である請求項1〜9のいずれかに記載の放射線硬化性組成物。
【請求項11】
硬化すると鉛筆硬度がF以上である請求項1〜10のいずれかに記載の放射線硬化性組成物。
【請求項12】
%RAUが少なくとも40%である請求項1〜11のいずれかに記載の放射線硬化性組成物。
【請求項13】
硬化して耐摩耗性試験を行っても傷がつかない請求項1〜12のいずれかに記載の放射線硬化性組成物。
【請求項14】
a) 成分(a)、(b)及び(c)の総重量に対して、50〜90wt%のフッ素化基を含まない反応性ナノ粒子、
b) 成分(a)、(b)及び(c)の総重量に対して、5〜20wt%の少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子、及び
c) 成分(a)、(b)及び(c)の総重量に対して、1〜10wt%のエチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分
を含む放射線硬化性組成物。
【請求項15】
a) フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子
b) 少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子、
c) エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分、及び
d) 1以上の光重合開始剤
を含み、
RIが1.50未満であり、硬化すると鉛筆硬度がFを超え、及び%RAUが55〜70%である放射線硬化性組成物。
【請求項16】
a) 有機成分を含み、前記有機成分が不飽和重合可能基及びフッ素化基をその構造中に有し、前記有機成分が結合している反応性ナノ粒子、及び
b) エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分
を含む放射線硬化性組成物。
【請求項17】
前記反応性粒子がフッ素化基を含まない有機成分をさらに含む請求項16に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項18】
硬化後に、光ファイバー1次コーティング、光ファイバー2次コーティング、マトリックスコーティング、結束材料、インクコーティング、フォトニック結晶ファイバーコーティング、光ディスク用接着剤、ハードコートコーティング、ディスプレイコーティング、又はレンズコーティングに用いられる請求項16又は17に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項19】
a) フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子
b) 少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子、及び
c) エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分
を含む低屈折率膜の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれかに記載の組成物をコートされた基材の表面に塗布する低屈折率膜を有する物品の製造方法。
【請求項21】
a)i) フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子、
ii) 少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子、及び
iii) エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分
を含む放射線硬化性組成物を調製し、
b)前記放射線硬化性組成物を物品にコートする
物品用被膜の製造方法。
【請求項22】
前記物品が光ファイバー、フォトニック結晶ファイバー、光ディスク、光ファイバーリボン、ハードコート層、又はディスプレイ又はレンズ用反射防止層である請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
請求項1〜18のいずれかに記載の放射線硬化性組成物を硬化してなる低屈折率膜。
【請求項24】
少なくとも一部が請求項1〜17のいずれかに記載の組成物を硬化して得られた被膜でコートされているプラスチック基板を含むディスプレイモニター。
【請求項25】
請求項1〜17のいずれかに記載の組成物を硬化して得られた被膜を含む反射防止システム。
【請求項26】
a) 基板、
b) ハードコート層、
c) 前記ハードコート層上の高屈折率被膜、及び
d) 低屈折率膜
を含み、
前記低屈折率膜が、
i) フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子、
ii) 少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子、及び
iii) エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分
を含む組成物を硬化して得られる物品。
【請求項27】
前記物品が反射防止ディスプレイである請求項26の物品。
【請求項28】
前記基板がポリノルボルネン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、ポリイミド、セルロース、セルローストリアセテート、フルオレンポリエステル、又はポリエーテルナフタレンである請求項26又は27に記載の物品。
【請求項29】
a) フッ素化基を含まない反応性ナノ粒子、及び
b) 少なくとも1つのフッ素化基を有する反応性ナノ粒子
を含み、
前記粒子(a)の粒子(b)に対する比が少なくとも1:1である組成物。
【請求項30】
a) 反応性ナノ粒子、及び
b) 1以上のエチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分
を含み、
前記反応性ナノ粒子の前記エチレン性不飽和フッ素化ウレタン成分に対する比が少なくとも6:1である放射線硬化性組成物。
【請求項31】
硬化すると、
a) 屈折率が1.5未満、及び
b) 鉛筆硬度がF以上
である放射線硬化性組成物。
【請求項32】
硬化すると%RAUが少なくとも40である請求項31に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項33】
硬化すると、
a) 屈折率が1.5未満、及び
b) 鉛筆硬度がF以上
である放射線硬化性コーティング組成物を含むディスプレイパネル。

【公表番号】特表2007−533816(P2007−533816A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509408(P2007−509408)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000289
【国際公開番号】WO2005/103177
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】