説明

低床式車両

【課題】スクータ型自動二・三輪車などの低床式車両を軽量化し、スペース効率を高める。
【解決手段】上フレーム3に下フレーム4が複数箇所のフレーム結合点でボルト結合された車体フレーム2を有し、最前方のフレーム結合点FP1と最後方のフレーム結合点FP4との間で車体フレーム2にエンジン27が吊り下げられている。これにより、エンジン27を上フレーム3と下フレーム4の両方で支持することができ、上フレーム3の断面を大きくする必要がなくなる。また、車体フレーム2の断面形状は、各断面ごとのねじり中心から最も離れた部位が閉じた断面形状になっている。そのため、ねじりに対する抵抗力が増大し、ねじり剛性が高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクータ型自動二・三輪車などの低床式車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の低床式車両としては、上フレームに下フレームが3箇所(下フレームの前端部、中央部、後端部)のフレーム結合点で結合されて車体フレームを構成し、車体フレームの前端部にヘッドパイプが取り付けられ、最後方のフレーム結合点(下フレームの後端部)より後方でエンジンが上フレームに結合されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−312571号公報(段落〔0022〕〔0025〕の欄、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この構造においては、すべてのフレーム結合点がエンジン結合点より前方に位置するので、ヘッドパイプとエンジン結合点との間の剛性を高めようとする場合、後端結合点より後方の部分は上フレームのみで剛性を確保しなければならない。その結果、上フレームの断面が必然的に大きくなることから、低床式車両の重量が増加し、スペース効率が低下する。
【0004】
本発明は、こうした課題を解消することが可能な低床式車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
まず、請求項1に係る低床式車両の発明では、上フレームに下フレームがそれぞれ個別に構成され、複数箇所のフレーム結合点で結合された車体フレームを有する低床式車両であって、前記上フレームと前記下フレームとの間の位置で、かつ最後方のフレーム結合点の前方直近において、前記車体フレームとエンジンが結合されていることを特徴とする。
また、請求項2に係る低床式車両の発明では、上フレームに下フレームが複数箇所のフレーム結合点で結合された車体フレームを有する低床式車両であって、前記上フレームと前記下フレームとの間の位置で前記下フレームとエンジンが結合されていることを特徴とする。
また、請求項3に係る低床式車両の発明では、前記エンジンは、防振リンクを介して前記車体フレームに結合されていることを特徴とする。
また、請求項4に係る低床式車両の発明では、前記車体フレームの断面形状は、各断面ごとのねじり中心から最も離れた部位が閉じた断面形状になっていることを特徴とする。
また、請求項5に係る低床式車両の発明では、前記上フレームは、左右一体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、エンジン結合点が最前方のフレーム結合点と最後方のフレーム結合点との間に位置するため、エンジンを上フレームと下フレームの両方で支持することができる。その結果、上フレームの断面を大きくする必要がなくなることから、低床式車両を軽量化し、スペース効率を高めることができる。
【0007】
また、エンジンが防振リンクを介して車体フレームに結合されていると、エンジンの振動は防振リンクによって低減されてから車体フレーム、ひいてはタンデムシートおよびリヤシートに伝わるので、スクータ型自動二輪車の乗り心地が向上する。
【0008】
さらに、車体フレームについて、各断面ごとのねじり中心から最も離れた部位が閉じた断面形状になっていると、ねじりに対する抵抗力が増大し、ねじり剛性が高くなるため、同じねじり剛性であれば、車体フレームを一層軽量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明に係るスクータ型自動二輪車の第1の実施形態を示す斜視図、図2は図1に示すスクータ型自動二輪車の車体フレームを示す平面図、図3は図1に示すスクータ型自動二輪車の側面図、図4は図3に示すスクータ型自動二輪車の要部を示す詳細図、図5は図3に示すスクータ型自動二輪車のA−A線による断面図、図6は図3に示すスクータ型自動二輪車のB−B線による断面図、図7は本発明に係るスクータ型自動二輪車の第2の実施形態を示す要部側面図である。
【0011】
スクータ型自動二輪車1は、図1〜3に示すように、車体フレーム2を有しており、この車体フレーム2は、左右一体のアルミダイキャスト一体成型の上フレーム3と、左右一体のスチール溶接構造の下フレーム4とから構成されている。ここで、車体フレーム2の断面形状は、図5に示すように、各断面ごとのねじり中心CTから最も離れた部位(図5に示すD部分)が閉じた断面形状になっている。
【0012】
そして、上フレーム3の前端部には、図2および図3に示すように、ヘッドパイプ5が一体に形成されており、ヘッドパイプ5にはフロントフォーク6が操舵可能に連結されている。フロントフォーク6の上端部には、図1に示すように、ステアリングハンドル16が取り付けられており、ステアリングハンドル16には左右一対のバックミラー17が取り付けられている。一方、フロントフォーク6の下端部には前輪7が回動自在に支持されている。前輪7の側部には円環状のフロントブレーキディスク11が固着されており、フロントブレーキディスク11にはフロントブレーキキャリパ14が装着されている。また、前輪7の上方にはフロントフェンダ8が、フロントフォーク6に支持された形で添設されている。さらに、ヘッドパイプ5の前方には、図3に示すように、フロントカバー9が固着されており、フロントカバー9には、左右一対のヘッドライト12、左右一対のフロントウィンカ13およびウインドスクリーン39が取り付けられている。また、フロントカバー9より後方には、図1に示すように、左右一対のセンターカバー40が後方に延伸する形で連設されている。
【0013】
また、上フレーム3の下側前方には、図3に示すように、下フレーム4が4箇所(上フレーム3の前端部、中央やや前方部、中央部、中央やや後方部)のフレーム結合点FP1、FP2、FP3、FP4でボルト結合されている。すなわち、この下フレーム4は、その前端部がブラケット20を介して上フレーム3の前端部にボルト38で締結されているとともに、図3、図4および図6に示すように、後端部が上フレーム3の中央やや後方部にボルト38で締結されている。さらに、この下フレーム4の中央部は、ブラケット21を介して上フレーム3の中央やや前方部にボルト38で締結されているとともに、ブラケット22を介して上フレーム3の中央部にボルト38で締結されている。ここで、4箇所のフレーム結合点FP1、FP2、FP3、FP4は、ほぼ等間隔に配置している。
【0014】
そして、下フレーム4の前部には、図3に示すように、燃料タンク18およびラジエータ19が載置されている。また、下フレーム4の後部にはメインスタンド37が格納自在に取り付けられている。
【0015】
また、上フレーム3の下側後方には、図3に示すように、ユニットスイング装置25が2箇所(上フレーム3の中央やや後方部、後端部)のエンジン結合点EP1、EP2で結合されている。すなわち、このユニットスイング装置25は、前端近傍の上部が上フレーム3の中央やや後方部から防振リンク26を介して吊り下げられているとともに、後端部が上フレーム3の後端部からリヤクッション24を介して吊り下げられている。ここで、前方のエンジン結合点EP1は、図4に示すように、最後方のフレーム結合点FP4の前方直近(つまり、最後方のフレーム結合点FP4と、その前方のフレーム結合点FP3との間であって、最後方のフレーム結合点FP4の直近)に位置し、また、上フレーム3と下フレーム4との間(上フレーム3の上縁と下フレーム4の下縁との間)に位置している。なお、防振リンク26は、一対のラバーブッシュを互いにリンクで連結した構造を有するものである。
【0016】
そして、ユニットスイング装置25には後輪23が回動自在に支持されている。このユニットスイング装置25には、エンジン27、ベルトドライブ機構29などが内蔵されており、ベルトドライブ機構29を介してエンジン27の動力を後輪23に伝えることができる。
【0017】
また、上フレーム3の上側後方には、図3に示すように、段付きのフロントシート30が着脱自在に装着されており、フロントシート30の後ろ側にはリヤシート34が着脱自在に装着されている。さらに、リヤシート34の後ろ側にはバックレスト35が着脱自在に装着されている。そして、フロントシート30およびリヤシート34の下方には、2個のヘルメットと手袋などの運転用品を収納しうる収納室33が形成されている。
【0018】
また、上フレーム3の後方には、図3に示すように、ボディカバー32が取り付けられている。ボディカバー32には、左右一対のリヤコンビネーションライト31およびライセンスライト36が取り付けられているとともに、リヤフェンダ28が後輪23の上方に位置する形で取り付けられている。
【0019】
このような構成を有するスクータ型自動二輪車1においては、前方のエンジン結合点EP1が、最後方のフレーム結合点FP4と、その前方のフレーム結合点FP3との間に位置しているので、このエンジン結合点EP1を含む剛性を上フレーム3と下フレーム4の両方で支持することができる。その結果、上フレーム3の断面を大きくする必要がなくなることから、車体フレーム2、ひいてはスクータ型自動二輪車1を軽量化し、スペース効率を高めることができる。
【0020】
また、車体フレーム2は、上述したとおり、各断面ごとのねじり中心CTから最も離れた部位、つまり、ねじりモーメントが最大となる部位が閉じた断面形状になっているので、ねじりに対する抵抗力が増大し、ねじり剛性が高くなる。したがって、同じねじり剛性であれば、車体フレーム2を一層軽量化することができる。
【0021】
さらに、車体フレーム2は、図3に示すように、上フレーム3に対して下フレーム4が、ほぼ等間隔に配置している4箇所のフレーム結合点FP1、FP2、FP3、FP4でボルト結合によって剛接合された構造を有しているので、この点からも高いねじり剛性を発現することになる。
【0022】
また、スクータ型自動二輪車1による走行中は、路面状況に応じて後輪23が上下動を繰り返すことになるが、この後輪23の上下動を受けるユニットスイング装置25は、上述したとおり、リヤクッション24を介して車体フレーム2に支持されているので、後輪23の上下動はリヤクッション24によって緩和されてから車体フレーム2、ひいてはタンデムシート30およびリヤシート34に伝わる。また、ユニットスイング装置25は、防振リンク26を介して車体フレーム2に支持されているので、エンジン27の振動は防振リンク26によって低減されてから車体フレーム2、ひいてはタンデムシート30およびリヤシート34に伝わる。これらの結果、スクータ型自動二輪車1の乗り心地が向上する。
【0023】
なお、上述の実施形態においては、最後方のフレーム結合点FP4の前方直近にエンジン結合点EP1を設ける場合について説明したが、このエンジン結合点EP1は、図7に示すように、最後方の直前のフレーム結合点FP3の前方直近(ブラケット21の近傍)で、上フレーム3と下フレーム4との間に設けてもよい。エンジン結合点EP1が最前方のフレーム結合点FP1と最後方のフレーム結合点FP4との間であれば、エンジン結合点EP1を両持ち支持する効果を発現させることができる。
【0024】
なお、上述の実施形態においては、下フレーム4が4箇所のフレーム結合点FP1、FP2、FP3、FP4で上フレーム3に結合されている場合について説明したが、このフレーム結合点FP1、FP2、FP3、FP4は、複数箇所(2箇所以上)であればいくつであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、スクータ型自動二・三輪車、モペットその他の低床式車両に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るスクータ型自動二輪車(低床式車両)の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すスクータ型自動二輪車の車体フレームを示す平面図である。
【図3】図1に示すスクータ型自動二輪車の透視側面図である。
【図4】図3に示すスクータ型自動二輪車の要部を示す詳細図である。
【図5】図3に示すスクータ型自動二輪車のA−A線による断面図である。
【図6】図3に示すスクータ型自動二輪車のB−B線による断面図である。
【図7】本発明に係るスクータ型自動二輪車(低床式車両)の第2の実施形態を示す要部側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1……スクータ型自動二輪車(低床式車両)
2……車体フレーム
3……上フレーム
4……下フレーム
25……ユニットスイング装置
27……エンジン
CT……ねじり中心
EP1、EP2……エンジン結合点
FP1、FP2、FP3、FP4……フレーム結合点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上フレームに下フレームがそれぞれ個別に構成され、複数箇所のフレーム結合点で結合された車体フレームを有する低床式車両であって、
前記上フレームと前記下フレームとの間の位置で、かつ最後方のフレーム結合点の前方直近において、前記車体フレームとエンジンが結合されていることを特徴とする低床式車両。
【請求項2】
上フレームに下フレームが複数箇所のフレーム結合点で結合された車体フレームを有する低床式車両であって、
前記上フレームと前記下フレームとの間の位置で前記下フレームとエンジンが結合されていることを特徴とする低床式車両。
【請求項3】
前記エンジンは、防振リンクを介して前記車体フレームに結合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の低床式車両。
【請求項4】
前記車体フレームの断面形状は、各断面ごとのねじり中心から最も離れた部位が閉じた断面形状になっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の低床式車両。
【請求項5】
前記上フレームは、左右一体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の低床式車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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