説明

低挿入力コネクタ

【課題】従来の低挿入力コネクタに必要だったねじ部のような複雑な螺旋加工が必要でなく、簡単な傾斜面だけをオスコネクタ側に形成し、かつ汎用のトルクレンチを用いるだけで、低い力でハウジングを嵌合および離脱することができる低挿入力コネクタを提供する。
【解決手段】ストッパ板30とトルクレンチ40を用いて第1ハウジング10と第2ハウジング20を低挿入力で嵌合する低挿入力コネクタは、第2ハウジング20が正面に十字開口部20Cを備え、第1ハウジング10が、第2ハウジング20との仮嵌合状態で十字開口部20Cに対応する部位の一方側に挿入用斜面10S1と他方側に挿入用斜面10S1と逆向きの離脱用斜面10S2が形成されており、トルクレンチ40のT字レンチ40Tをストッパ板30を介して十字開口部20Cに挿入して一方側に回わすと第1ハウジング10と第2ハウジング20が低い力で嵌合する。また、逆側に回わすと離脱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低挿入力コネクタに関するもので、特に、従来製品のような複雑な螺旋加工を必要としないで低い力でハウジングを嵌合および離脱することができる低挿入力コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の低挿入力コネクタとしては、特許文献1に記載された発明が知られている。
図12は特許文献1に記載された低挿入力コネクタを説明する図で、(A)は第1コネクタと第2コネクタの平面断面図、(B)は第1コネクタと第2コネクタの斜視図である。
特許文献1に記載された低挿入力コネクタは、オスコネクタ110とメスコネクタ120とハンドル130とから成るもので、オスコネクタ110はハウジングに貫設した軸孔の出口からコネクタ嵌合方向に係止爪部110Tを有する可撓係止アーム110Fと抜け防止突起110Nとを設けてなり、メスコネクタ120は可撓係止アーム110Fの係止爪部110Tに対する仮係合部120Kと本係合部120Hとをコネクタ嵌合方向に順次設けると共に軸孔の延長上に螺合突起120Jを設けてなり、ハンドル130は螺合突起120Jに対するねじ部130Jをハンドル130の軸の先端に設けると共に抜け防止突起110Nに対する挿通溝130Mを有する環状部130Kと、挿通溝130Mに連通し、抜け防止突起110Nと括れ部110Cとを順次係合可能な環状溝130Cとを連成してなるハンドルの回動軸とにより構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2613998号公報
【0004】
〈特許文献1記載の低挿入力コネクタの作用〉
オスコネクタ110とメスコネクタ120を仮係合させた状態で、ハンドル130の軸先端をオスコネクタ110の軸孔110Aに挿通させ、抜け防止突起110Nを挿通溝130Mに挿通させると共に可撓係止アーム110Fの括れ部110Cを環状溝130Cに係合させる。可撓係止アーム110Fの係止爪部110Tは、メスコネクタ120の仮係合孔120Kに係合してコネクタ相互の位置合わせを行わせ、次いでハンドル130の軸先端を押し込むと、可撓係止アーム110Fの括れ部110Cを外側に押し拡げて係止爪部110Tの仮係合を解除させる。オスコネクタ110の抜け防止突起110Nは、ハンドル130の環状溝130Cに係合してハンドル軸を軸方向に固定させ、メスコネクタ120の螺合突起120Jは、ハンドル130の挿通溝130M内に位置する。そしてハンドル取っ手130Hでハンドル130の軸を半回転させることにより、螺合突起120Jをねじ部130Jに沿って引き上げる。螺合突起120Jは半転したねじ部130Jの挿通切欠部上に位置し、オスコネクタ110の抜け防止突起110Nは環状部130Kの挿通溝130M上にそれぞれ位置し、オスコネクタ110の可撓係止アーム110Fは拡開した状態で係止爪部110Tをメスコネクタ120の本係合孔120Hに対向して位置させ、最後に両コネクタ110,120からハンドル軸を引き抜くことにより、係止爪部110Tがメスコネクタ120の本係合孔120Hに係合して両コネクタ110,120のロックを行わせる。
【0005】
〈特許文献1記載の低挿入力コネクタの問題点〉
以上の如く特許文献1記載の発明によれば、コネクタ嵌合後は回動軸を引き抜くからコネクタの肥大化や重量化が防止され、コネクタが完全嵌合したことを確認でき、コネクタの不完全嵌合が防止されるという効果がある反面、低挿入力のために用いられる回動軸がねじ部を備えているため、複雑な螺旋加工が必要となる問題点があった。
【0006】
〈本発明の目的〉
本発明は上記欠点を解決するためになされたもので、ねじ部のような複雑な螺旋加工が必要でなくなる低挿入力コネクタを提供することを目的としている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、本願の第1発明は、トルクレンチを用いて第1ハウジングと第2ハウジングとが低挿入力で嵌合する低挿入力コネクタであって、前記第1ハウジングが正面に十字開口部を備え、前記第2ハウジングが、前記第1ハウジングとの仮嵌合状態で前記十字開口部に対応する部位の一方側に挿入用斜面と他方側に前記挿入用斜面と逆向きの離脱用斜面が形成されており、前記トルクレンチが把持部と前記把持部を把持した状態で正面にT字レンチを備え、前記T字レンチを前記十字開口部に挿入して前記一方側に回わすと前記T字レンチが前記挿入用斜面を押すことで前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが接近し、前記T字レンチを同じく前記十字開口部に挿入して前記他方側に回わすと前記T字レンチが前記離脱用斜面を押すことで前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが離れていくことで、第1ハウジングと第2ハウジングとが低い力で嵌合または離脱することを特徴としている。
【0008】
第2発明は、第1発明の低挿入力コネクタにおいて、前記第2ハウジングの一方側の前記挿入用斜面と他方側の前記離脱用斜面がそれぞれ前記十字開口部の交点に対して点対称に形成されていることを特徴としている。
【0009】
第3発明は、第1発明または第2発明の低挿入力コネクタにおいて、前記トルクレンチがその軸部に把持側からT字レンチ側に向けて第1突起と第2突起を備え、前記軸部が通り抜けかつ前記第1突起と第2突起が通り抜けできない大きさの開口部が一辺端部から中央に向かってあけられたストッパ板を備え、嵌合時に前記ストッパ板を前記第1突起に係止させ、離脱時に前記ストッパ板を前記第2突起に係止させることで、前記T字レンチの前記十字開口部からの挿入長さを調節できるようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、従来の低挿入力コネクタに必要だったねじ部のような複雑な螺旋加工が必要でなく、簡単な傾斜面だけをオスコネクタ側に形成し、かつ汎用のトルクレンチを用いるだけで、低い力で両ハウジングを嵌合および離脱することができる低挿入力コネクタを得ることができる。
【0011】
第2発明によれば、傾斜面が2箇所に設けられるので、安定して操作性のよい低挿入力コネクタを得ることができる。
【0012】
第3発明によれば、ストッパ板を用いることで、T字レンチの十字開口部からの挿入長さを調節できるので、熟練を必要としなくなり、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明に係る低挿入力コネクタの各部品を示す分解斜視図である。
【図2】図2はトルクレンチを用いた嵌合直前の状態を示す斜視図である。
【図3】図3はT字レンチ作動部を説明する図で、(A)はオスハウジングの正面図、(B)はT字レンチ作動部の拡大正面図である。
【図4】図4(A)は図2のオスハウジングのT字レンチ作動部を底部と右側部の方向から見た斜視図、図4(B)は図2のオスハウジングのT字レンチ作動部を上部と右側部の方向から見た斜視図である。
【図5】図5は本発明で使用するトルクレンチの側面図である。
【図6】図6は本発明の低挿入力コネクタの嵌合手順を説明する図で、(A)はオスハウジングとメスハウジングを仮嵌合した状態をメスハウジング側から見た正面図、(B)は同じくそれの平面断面図で、両図において(1)は仮嵌合時、(3)は嵌合完了時、(2)はその途中の図である。
【図7】図7はトルクレンチのT字レンチの一端がオスハウジングの上部作動部の挿入用斜面の開始する辺の位置に到達し、他端が下部作動部の挿入用斜面の開始する辺の位置に到達している状態を示す斜視図である。
【図8】図8は、本発明に係る低挿入力コネクタが嵌合している状態を示す斜視図である。
【図9】図9は嵌合状態の低挿入力コネクタをトルクレンチを用いて離脱させる状態を示す斜視図である。
【図10】図10は本発明の低挿入力コネクタの離脱手順を説明する図で、(A)はオスハウジング10とメスハウジング20が嵌合した状態をメスハウジング側から見た正面図、(B)は同じくそれの平面断面図で、両図において(1)は嵌合時、(3)は嵌合離脱時、(2)はその途中の図である。
【図11】図11は、本発明の低挿入力コネクタのメスハウジングの十字開口部の正面図である。
【図12】図12は特許文献1に記載された低挿入力コネクタを説明する図で、(A)は第1コネクタと第2コネクタの平面断面図、(B)は第1コネクタと第2コネクタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、ねじ部のような複雑な螺旋加工を必要としない本発明に係る低挿入力コネクタについて、以下に図面を用いて説明する。
【0015】
〈本発明の低挿入力コネクタを構成する4つの部品〉
図1は本発明に係る低挿入力コネクタの各部品を示す分解斜視図、図2はトルクレンチを用いた嵌合直前の状態を示す斜視図である。本発明の低挿入力コネクタは4つの部品から構成されている。すなわち、それらは、図1および図2に示すように、オスハウジング10、メスハウジング20、ストッパ板30、トルクレンチ40(図2)である。
以下に、この4つの部品の形状・構造について説明する。
【0016】
〈オスハウジング10〉
オスハウジング10は内部に空間を有する箱状をしており、メスハウジングの接続端子と接続される多数の接続端子(図示は省略)を内部に収容している。その内部空間に同じく箱状をしたメスハウジング20が嵌め込まれる。オスハウジング10の箱形状は、背面部10W(図2)、上部10A(図2)、底部10B(図2)、右側部10R(図2)、左側部10L(図2)から成り、嵌合方向に開口し、ここからメスハウジング20が嵌め込まれる。内部空間に以下で説明するT字レンチ作動部10Tが備えられている。上部10A(図2)の左右方向の中央で前側寄りにストッパ板挿入穴10Kがあけられている。
【0017】
《T字レンチ作動部10T》
図3はT字レンチ作動部を説明する図で、(A)はオスハウジングの正面図、(B)はT字レンチ作動部の拡大正面図である。図4(A)は図2のオスハウジング10のT字レンチ作動部10Tを底部10Bと右側部10Rの方向から見た斜視図、図4(B)は図2のオスハウジング10のT字レンチ作動部10Tを上部10Aと右側部10Rの方向から見た斜視図である。
図3および図4において、T字レンチ作動部10Tは、トルクレンチ40(図5)のT字レンチ40T(図5)が入り込める空隙を空けた横溝空間10H(図3(A))を境にして上下にそれぞれ以下に述べる上部作動部Toと下部作動部Tuとから成っている。
【0018】
《上部作動部To》
上部作動部Toは全体が略箱状をしており、横溝空間10Hの中心から真上に延びる縦溝空間10V(図3(A))を境にして箱の右側下方に以下に述べる挿入用斜面10S1と、左側下方に以下に述べる離脱用斜面10S2が形成されている。
【0019】
《挿入用斜面10S1》
図3(B)において、挿入用斜面10S1は、図で手前側(メスハウジング20(図2)側)の正面(灰色)の両角(かど)にある2つの点P1とP2を結ぶ辺H12から出発して、図で奥側(背面部10W(図2)側)の面(白色)上にある角(かど)の点P3に向けて辺H12の長さを狭めながら最後の点P3では点となる全体で三角形P1(手前)・P2(手前)・P3(奥)をなす斜面である。図3では、挿入用斜面10S1は、上部作動部Toの正面の裏側に形成されているので見えない(三角形P1・P2・P3の斜辺H23を点線で示している。)。
【0020】
《離脱用斜面10S2》
離脱用斜面10S2は、図で奥側(背面部10W(図2)側)の面(白色)の両角(すみ)にある2つの点P4とP5を結ぶ辺H45から出発して、図で手前側(メスハウジング20(図2)側)の面(灰色)にある角(かど)の点P6に向けて辺H45の長さを狭めながら最後の点P6では点となる全体で三角形P1(奥)・P2(奥)・P3(手前)をなす斜面である。図3では、離脱用斜面10S2は、上部作動部Toの奥側から手前正面側に向けて三角形P1・P2・P3(ハッチングで示す部分)で形成されているのが見える。
【0021】
《下部作動部Tu》
下部作動部Tuは上部作動部Toと同じく全体が略箱状をしており、横溝空間10Hと縦溝空間10Vの交差する点を中心に点対称をなしている。すなわち、縦溝空間10Vを境にして箱の左側上方に挿入用斜面10S1と、右側上方に離脱用斜面10S2が形成されている。
【0022】
《挿入用斜面10S1》
挿入用斜面10S1は、図で手前側(メスハウジング20(図2)側)の正面の両角にある2つの頂点P1とP2を結ぶ辺H12から出発して、図で奥側(背面部10W(図2)側)の面にある角の点P3に向けて辺H12の長さを狭めながら最後の点P3では点となる全体で三角形P1(手前)・P2(手前)・P3(奥)をなす斜面である。図3では、挿入用斜面10S1は、上部作動部Toの正面の裏側に形成されているので、見えない(三角形P1・P2・P3の斜辺H23を点線で示している。)。挿入用斜面10S1は、下部作動部Tuの正面の裏側に形成されているので見えない(三角形の斜辺を点線で示している。)。
【0023】
《離脱用斜面10S2》
離脱用斜面10S2は、図で奥側(背面部10W(図2)側)の面の両角にある2つの点P4とP5を結ぶ辺H45から出発して、図で手前側(メスハウジング20(図2)側)の面にある角の点P6に向けて辺H45の長さを狭めながら最後の点P6では点となる全体で三角形P1(奥)・P2(奥)・P3(手前)をなす斜面である。図3では、離脱用斜面10S2は、上部作動部Toの奥側から手前正面側に向けて三角形P1・P2・P3(ハッチングで示す部分)で形成されているのが見える。
【0024】
〈メスハウジング20〉
図1および図2において、メスハウジング20はオスハウジング10の開口空間からその内部に収容される箱状をしており、内部にはオスハウジングの接続端子と接続される多数の接続端子(図示は省略)を収容している。メスハウジング20をオスハウジング10に嵌合したとき、オスハウジング10のT字レンチ作動部10Tの障害にならないように、メスハウジング20にはT字レンチ作動部10Tに対応する部位が抉(えぐ)られた開口部20Kを上下面に備えている。
また、オスハウジング10の横溝空間10Hと縦溝空間10Vに対応させて、メスハウジング20の正面に十字の開口部20Cが設けられている。十字開口部20Cの長さはトルクレンチ40(図5)のT字レンチ40Tの長さ以上であり、十字開口部20Cの幅はトルクレンチ40(図5)のT字レンチ40T(図5)が出入りできる大きさとなっている。
【0025】
〈ストッパ板30〉
ストッパ板30は図1に示すように矩形状(もちろん矩形状に限定されるものではない。)の板に一辺から中心に延びる開口部30Cがあけられている。開口部30Cの大きさは、トルクレンチ40(図5で後述)のT字レンチ40Tの軸部40Cが通りかつ軸部40Cの2箇所に設けられた嵌合時使用突起40S1と離脱時使用突起40S2が通れない大きさとなっている。ストッパ板30をトルクレンチ40の軸部40Cの嵌合時使用突起40S1の前方(T字レンチ40T側)に嵌め込むことにより、嵌合時にT字レンチ40Tがメスハウジング20に挿入される長さが規制され、また、ストッパ板30をトルクレンチ40の軸部40Cの離脱時使用突起40S2の前方(T字レンチ40T側)に嵌め込むことにより、離脱時にT字レンチ40Tがメスハウジング20に挿入される長さが規制される。
【0026】
〈トルクレンチ40〉
図5は本発明で使用するトルクレンチ40の側面図である。トルクレンチ40は把持部40Gと、把持部40Gを把持した状態で正面にT字レンチ40Tと、を備えている。T字レンチ40Tはその軸部40Cの先端に上下方向に延びる短軸から成るT字状をした金属棒で、軸部40Cの2箇所に嵌合時使用突起40S1と離脱時使用突起40S2が設けられている。T字レンチ40Tを90度正回転させながらで挿入用斜面10S1を押すことにより、オスハウジング10はメスハウジング20に接近するようになる。また、T字レンチ40Tを90度逆回転させながらで離脱用斜面10S2を押すことにより、オスハウジング10はメスハウジング20から離れていくようになる。
【0027】
〈本発明の低挿入力コネクタによる嵌合の手順〉
次ぎに、本発明の低挿入力コネクタによる嵌合手順について図6を用いて説明する。
図6は本発明の低挿入力コネクタの嵌合手順を説明する図で、(A)はオスハウジング10とメスハウジング20を仮嵌合した状態をメスハウジング側から見た正面図、(B)は同じくそれの平面断面図で、両図において(1)は仮嵌合時、(3)は嵌合完了時、(2)はその途中の図である。
(1)オスハウジング10にメスハウジング20を仮嵌合する(図6(1)参照)。
(2)トルクレンチ40(図5)の軸部40Cの嵌合時使用突起40S1のT字レンチ40T側(図で右側)にストッパ板30(図1)の開口部30Cを差し込み、固定する(図2参照)。
(3)ストッパ板30を取り付けたトルクレンチ40(図5)の先端部のT字レンチ40Tを図2のメスハウジング20の十字開口部20Cの縦開口部に挿入する(図2参照)。
(4)T字レンチ40Tを深く挿入していくと、嵌合時使用突起40S1で移動が規制されているストッパ板30がメスハウジング20の正面に当接してT字レンチ40Tはそれ以上の挿入が阻止される(図6(1))。
この時、トルクレンチ40の先端部のT字レンチ40Tは、その一端がオスハウジング10の上部作動部Toの挿入用斜面10S1の開始する辺H12(図3(B)・手前)の位置に到達しており、他端が下部作動部Tuの挿入用斜面10S1の開始する辺H12(図3(B)・手前)の位置に到達している。
図7はこの状態を示しており、T字レンチ40Tは上部作動部Toおよび下部作動部Tuの挿入用斜面10S1の開始辺に到達している。
(5)トルクレンチ40の把持部40Gをメスハウジング20側へ押し付けながら垂直方向(時計の12時)から水平方向(時計の3時)に時計方向に回転させると、先端部のT字レンチ40Tはその両端が挿入用斜面10S1を手前に押し上げるように作用するので、オスハウジング10はメスハウジング20側へ接近し始める(図6(2))。
(6)トルクレンチ40の把持部40Gを回転させて水平方向(時計の3時)になると、先端部のT字レンチ40Tはその両端が挿入用斜面10S1の先端の点P3(奥)に達しているので、オスハウジング10は最もメスハウジング20に接近している。この状態で両者の嵌合が完了している(図6(3))。
このように、トルクレンチ40の把持部40Gはテコの原理で先端部のT字レンチ40Tを回転させるので、低い力でオスハウジング10とメスハウジング20の嵌合をさせることができる。
(7)トルクレンチ40を水平方向にした状態で図2のメスハウジング20の十字開口部20Cの水平開口部から抜き去って、オスハウジング10とメスハウジング20の嵌合動作は終了する。
【0028】
〈本発明の低挿入力コネクタの効果〉
以上のように、本発明によれば、従来の低挿入力コネクタに必要だったねじ部のような複雑な螺旋加工が必要でなく、簡単な傾斜面をオスコネクタ側に形成し、かつ汎用のトルクレンチとストッパ板を用いるだけで、製造が容易でかつ故障し難い低挿入力のコネクタを得ることができる。
【0029】
〈本発明の低挿入力コネクタによる離脱の手順〉
次ぎに、本発明の低挿入力コネクタの離脱の手順について図8〜図10を用いて説明する。図8は、本発明に係る低挿入力コネクタが嵌合している状態を示す斜視図、図9は嵌合状態の低挿入力コネクタをトルクレンチを用いて離脱させる状態を示す斜視図である。図10は本発明の低挿入力コネクタの離脱手順を説明する図で、(A)はオスハウジング10とメスハウジング20が嵌合した状態をメスハウジング側から見た正面図、(B)は同じくそれの平面断面図で、両図において(1)は嵌合時、(3)は嵌合離脱時、(2)はその途中の図である。
(1)図8のようにオスハウジング10とメスハウジング20は嵌合している。この状態で、メスハウジング20の上部のストッパ板挿入穴10Kにストッパ板30を挿入し、メスハウジング20内に収納する。
(2)トルクレンチ40(図9)の先頭側のT字レンチ40Tをメスハウジング20の十字開口部20Cの縦開口部に挿入する。
(3)T字レンチ40Tを挿入していくと、離脱時使用突起40S2がストッパ板30に当接して、T字レンチ40Tはそれ以上の挿入が阻止される(図10(1))。この時、トルクレンチ40の先端部のT字レンチ40Tは、その一端がオスハウジング10の上部作動部Toの離脱用斜面10S2の開始する辺H45(図3(B)・奥)の位置に到達しており、他端が下部作動部Tuの離脱用斜面10S2の開始する辺H45(図3(B)・奥)の位置に到達している。
図7はこの状態を示しており、T字レンチ40Tは上部作動部Toおよび下部作動部Tuの離脱用斜面10S2の開始辺に到達している。嵌合時はこの状態からT字レンチ40Tを時計方向に回したが、離脱時はこの状態からT字レンチ40Tを反時計方向に回すのが特徴である。
(4)トルクレンチ40の把持部40Gをメスハウジング20側へ押し付けながら垂直方向(時計の12時)から水平方向(時計の9時)に反時計方向に回転させると、先端部のT字レンチ40Tはその両端が離脱用斜面10S2を向こうへ押し出すように作用するので、オスハウジング10はメスハウジング20側から遠ざかり始める(図10(2))。
(5)トルクレンチ40の把持部40Gを回転させて水平方向(時計の9時)になると、先端部のT字レンチ40Tはその両端が離脱用斜面10S2の先端の点P6(手前)に達しているので、オスハウジング10は最も遠くにメスハウジング20を押し出している。この状態で両者の離脱が完了している(図10(3))。
このように、トルクレンチ40の把持部40Gはテコの原理で先端部のT字レンチ40Tを回転させるので、低い力でオスハウジング10とメスハウジング20の嵌合を離脱させることができる。
(6)トルクレンチ40を水平方向にした状態で図9のメスハウジング20の十字開口部20Cの水平開口部から抜き去って、オスハウジング10とメスハウジング20の離脱動作は終了する。
【0030】
〈T字レンチ40Tと十字開口部20Cの関係〉
図11は、本発明の低挿入力コネクタのメスハウジング20の十字開口部20Cの正面図である。以上の説明から分かるように、嵌合開始時も離脱開始時もT字レンチ40Tは十字開口部20Cの垂直開口部(時計の6時−12時方向開口部)に挿入する。
その後、嵌合時はT字レンチ40Tを時計方向に3時まで90度水平に回し、離脱時はT字レンチ40Tを反時計方向に9時まで90度水平に回す。
そして、嵌合完了後も離脱完了後もT字レンチ40Tは十字開口部20Cの水平開口部(時計の3時−9時方向開口部)から抜き去ればよい。
【0031】
〈本発明の低挿入力コネクタの効果〉
以上のように、本発明によれば、従来の低挿入力コネクタに必要だったねじ部のような複雑な螺旋加工が必要でなく、簡単な傾斜面だけをオスコネクタ側に形成し、かつ汎用のトルクレンチとストッパ板を用いるだけで、壊れにくい丈夫な低挿入力コネクタを得ることができる。
【符号の説明】
【0032】
10 オスハウジング
10A 上部
10B 底部
10L 左側部
10R 右側部
10W 背面部
10T T字レンチ作動部
10K ストッパ板挿入穴
10H 横溝空間
10V 縦溝空間
10S1 挿入用斜面
10S2 離脱用斜面
20 メスハウジング
20C 十字開口部
20K 開口部
30 ストッパ板
30C 開口部
40 トルクレンチ
40C 軸部
40G 把持部
40T T字レンチ
40S1 嵌合時使用突起
40S2 離脱時使用突起
To 上部作動部
Tu 下部作動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクレンチを用いて第1ハウジングと第2ハウジングとが低挿入力で嵌合する低挿入力コネクタであって、
前記第1ハウジングが正面に十字開口部を備え、
前記第2ハウジングが、前記第1ハウジングとの仮嵌合状態で前記十字開口部に対応する部位の一方側に挿入用斜面と他方側に前記挿入用斜面と逆向きの離脱用斜面が形成されており、
前記トルクレンチが把持部と前記把持部を把持した状態で正面にT字レンチを備え、
前記T字レンチを前記十字開口部に挿入して前記一方側に回わすと前記T字レンチが前記挿入用斜面を押すことで前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが接近し、
前記T字レンチを同じく前記十字開口部に挿入して前記他方側に回わすと前記T字レンチが前記離脱用斜面を押すことで前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが離れていくことで、第1ハウジングと第2ハウジングとが低い力で嵌合または離脱することを特徴とする低挿入力コネクタ。
【請求項2】
前記第2ハウジングの一方側の前記挿入用斜面と他方側の前記離脱用斜面がそれぞれ前記十字開口部の交点に対して点対称に形成されていることを特徴とする請求項1記載の低挿入力コネクタ。
【請求項3】
前記トルクレンチがその軸部に把持側からT字レンチ側に向けて第1突起と第2突起を備え、
前記軸部が通り抜けかつ前記第1突起と第2突起が通り抜けできない大きさの開口部が一辺端部から中央に向かってあけられたストッパ板を備え、
嵌合時に前記ストッパ板を前記第1突起に係止させ、離脱時に前記ストッパ板を前記第2突起に係止させることで、前記T字レンチの前記十字開口部からの挿入長さを調節できるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の低挿入力コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−38657(P2012−38657A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179615(P2010−179615)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】