説明

低減されたアセトアルデヒド含量を有するコポリマーの製造方法

≦10ppmの明らかに低減されたアセトアルデヒド含量を有し、オキシアルキレングリコール−アルケニルエーテル及び不飽和モノカルボン酸誘導体もしくは不飽和ジカルボン酸誘導体をベースとするコポリマーの製造方法が提案される。それぞれ多様な構造グループからなっていてよい前記コポリマーは、まず最初に通常、5〜100℃の温度で水溶液中でのラジカル重合により製造される。引き続き、反応溶液を重合反応の終了後に>8.0のpH値でまず最初に20〜95℃の温度に調節し、かつこれらの温度で、<500ppmの低いアセトアルデヒド含量に達するまでさらに反応させるか、又はしかし反応溶液を重合反応の終了後に≦7.0のpH値に調節する。ついで、場合により、反応溶液を、加圧処理を実施することによるか又はしかし4〜11のpH値で少なくとも1つの硫黄化合物又はアミン化合物を添加することによる、物理的な及び/又は化学的な追加処理にかけることができる。最後に、所望の最終pH値に調節されることができる。特許請求の範囲に記載の方法を用いて、アルデヒド含量は、許容される極限値の範囲へ低下されることができるので、経済的に及び効率的に、建築化学的な使用分野において、それらの依然として変わらずに良好な加工特性及び生成物特性により特徴付けられるポリマー生成物が得られ、その場合に特にこれらのポリマーを用いて製造された建築製品に不利な作用を及ぼさない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、低減されたアセトアルデヒド含量を有するコポリマーの製造方法である。
【0002】
本発明により包含されるような、コポリマーは、技術水準から十分に知られており、かつ本質的に不飽和モノカルボン酸誘導体もしくは不飽和ジカルボン酸誘導体及びオキシアルキレングリコール−アルケニルエーテルをベースとしている。この種のポリマーは、例えば、独国特許出願公開(DE-A1)第199 26 611号明細書に既に記載されている。
【0003】
これらのコポリマーは、主に建築化学的な使用分野において、かつそこではとりわけ、セメントのような無機結合剤用の添加剤として、及び特に流動化剤として、使用される。その場合に、特に、鉱物質又は瀝青質(bituminoesen)の結合剤又はその他の硫酸カルシウムをベースとする建築材料に基づく無機及び有機の固体の水性懸濁液に適している。前記コポリマーは、しかしまた同様に、粉末状の分散結合剤をベースとする水性懸濁液用の添加剤として使用されることができる。セラミック材料、耐火材料並びに油田建築材料の分野におけるこれらのコポリマーの使用も既に記載されている。
【0004】
また、前記コポリマーは、相対的に高い使用温度ですら抜群の保水性を有し、かつこれらは、顔料含有塗料、プラスター、接着用モルタル、充填用コンパウンド(Spachtelmassen)、接合充填剤(Fugenfuellern)、吹付けコンクリート、水中コンクリート、掘穿セメント及び他の建築化学製品に加工状態並びに硬化もしくは乾燥された状態で卓越した応用技術的特性を付与するのに適している。
【0005】
ホルムアルデヒドの問題点は、メラミン及びホルムアルデヒドをベースとする縮合生成物であるポリマーの場合に深刻であることが判明している。確かに、縮合生成物中の遊離ホルムアルデヒド含量を劇的に低下させることはできているが、しかしこれは多少手間のかかる処理手段によってできるに過ぎない。
【0006】
欧州特許(EP-B1)第0 336 165号明細書及び欧州特許(EP-B1)第0 817 807号明細書によれば、低いホルムアルデヒド含量を有する縮合生成物は、これらが三段階法により製造されることによって達成され、その際に常に最後の工程として後処理段階が続き、その段階により、縮合生成物が≧10の強塩基性pH値及び/又は100℃までの温度で、遊離ホルムアルデヒド含量が所望の一定の値に達するまで後処理される。また、選択的な方法、例えば米国特許(US)第4,677,159号明細書及び独国特許出願公開(DE-A1)第195 06 218号明細書によるものには、多段階法が起用されており、この方法はたいてい多少は費用のかかる後処理工程と結び付いている。こうして、通常、アルデヒド含量を、ガスの導通により並びにアルデヒド捕捉剤の添加により数日の期間にわたり低下させることが試みられる。
【0007】
ポリカルボキシラートエーテルをベースとするポリマーの場合に、最近、これらが、顔料用の分散剤としての使用の際に、塗料及びラッカー工業のための現行の規定による100ppmの極限値を超えるアセトアルデヒド量が放出されうることが指摘された。ポリカルボキシラートエーテル含有溶液は、例えば、重合反応の終了後に、簡単に800超、それどころか8000ppmまでのアルデヒド含量(ホルムアルデヒド及び/又はアセトアルデヒド)を有しうる。
【0008】
一般的に述べたアルデヒドの問題点に基づいて、かつ特にポリカルボキシラートをベースとするコポリマー中の高められたアセトアルデヒド含量及びそれと結び付いた、それらの建築化学的な使用の場合に、とりわけ屋内領域において考えられる健康上の問題に関して、本発明には、オキシアルキレングリコール−アルケニルエーテル及び不飽和モノカルボン酸誘導体もしくは不飽和ジカルボン酸誘導体をベースとするコポリマーを製造するのに、50〜100℃の温度で水溶液中でのラジカル重合により実施する、改善された方法を提供するという課題が課された。この方法の優先的な目的は、低減されたアセトアルデヒド含量を有し、かつVOC(揮発性有機化合物)の低減又はそれどころか極小化に寄与する生成物を得ることであった。本発明による方法で得ることができるコポリマーは、その際に、請求項1記載の構造グループ(Baugruppen)1.1及び1.2及び/又は1.3及び1.4からなる。生成物中のアセトアルデヒド含量はあわせて、それぞれ現行の極限値未満へ明らかに低下されるべきであるだけでなく、本発明による手段により、生成物の貯蔵安定性並びにそれぞれの応用分野におけるそれらの加工技術的特性及び有効性の妨げも生じないべきである。さらに、得ようとするアセトアルデヒド低減は、相対的に単純な手段により達成されうるべきであり、その際に優先的に経済的な側面が大変重要であった。
【0009】
この課題は、相応する製造方法で解決され、前記方法は、本発明によれば、反応溶液を重合反応の終了後に処理工程a1)において>8.0のpH値でまず最初に20〜95℃の温度に調節し、かつこれらの温度で、<500ppmの低いアセトアルデヒド含量に達するまでさらに反応させるか、又は処理工程a2)において反応溶液を重合反応の終了後に≦7.0のpH値に調節し、かつ
場合によりb)反応溶液を、b1)加圧処理を実施するか又はb2)4〜11のpH値でシステイン、システアミン、アントラニル酸アミド、亜硫酸塩、重亜硫酸塩及びエタノールアミンからの系列の少なくとも1つの化合物を添加することによる、物理的な(b1)及び/又は化学的な(b2)追加処理にかけ、かつ
最後にc)所望の最終pH値に調節することにより、特徴付けられる。
【0010】
意外なことに、本発明による方法で、これらの変えた反応操作により、典型的には約800〜1000ppmのアセトアルデヒド含量がとりわけ、例えば反応溶液中の50質量%の固体含量で望ましくない副生物を生じることなく、明らかに100ppm未満に低減できることが明らかになった。付加的に、一方では、溶液の形のこうして得られた反応生成物の特性、例えばそれらの粘度が、変わらないか又はごく僅かな程度にのみ変わり、かつ良好な貯蔵安定性がさらに保証されていることが確認できた。知られた卓越した加工特性及び生成物特性に関して、これらが、提案された付加的な変法を用いても何ら制限を受けていないことが付加的に明らかになり、これらは特に建築化学的な使用分野におけるそれらの使用、かつここではとりわけ、それらの液状化作用に関係している。あわせて、技術水準からの経験に基づいて及びとりわけ、たいてい付加的な費用のかかる後処理段階を有する多段階法に依存している多数の変法に基づいて、相対的に高いアセトアルデヒド含量が比較的単純な物理的な及び/又は化学的な手段により明らかに、健康を脅かす潜在性を何ら有しない範囲へ低下されることができることは予測できなかった。完全に意外なことに、貯蔵安定性は、生成物中の低減されたアセトアルデヒド含量に基づいて部分的に付加的に明らかに改善されたことも確認された。
【0011】
ポリマー主成分に基づいて、本発明による方法は、相対的に幅広い生成物範囲に応用可能である。しかしながら、本発明による方法を用いてR1がメチル基である及び/又はM1がナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンの群から選択される一価又は二価の金属カチオンを表すポリマーが得られる場合に、アセトアルデヒド含量が特に印象的に減少されることが明らかになった。同様に、本発明による方法は、前記ポリマー成分中でR2=フェニルの場合に前記フェニル基がなおヒドロキシル基、カルボキシ基又はスルホン酸基により置換されている場合及び付加的に又は選択的に式IIに関してp=0及びm=2を表す場合に、有利であることがわかった。
【0012】
本発明により、式Ia及び/又はIb及び/又はIcの構造グループ55〜75モル%、式IIの構造グループ19.5〜39.5モル%、式IIIa及びIIIbの構造グループ0.5〜2モル%並びに式IVa及びIVbの構造グループ5〜20モル%を含有するポリマーが製造される変法が特に好ましい。
【0013】
本発明は、しかしまた、ポリマーが、式I、II、III及びIVの構造グループの総和を基準として50モル%まで及び特に20モル%までの、モノマーがビニル誘導体又は(メタ)アクリル酸誘導体である構造グループを付加的に含有する変法も規定する。モノマーのビニル誘導体として、これに関連して、特に好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン、プロピレン、イソブテン、N−ビニルピロリドン、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸又はビニルホスホン酸が考慮に値する。成分Iが、モノマーの(メタ)アクリル酸誘導体としてヒドロキシアルキル(メタ)アクリラート、アクリルアミド、メタクリルアミド、AMPS、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル又はシクロヘキシルアクリラートを使用して製造されたポリマーが特に好ましい。
【0014】
特許請求の範囲に記載の方法は、1000〜200000g/molの平均分子量を有するコポリマー中のアセトアルデヒド含量の低減に特に適している。
【0015】
本発明による方法を用いて極めて幅広い範囲のコポリマーを得ることができるにも拘わらず、特許請求の範囲に記載の方法の実施は相対的に簡単に設計される。こうして、本発明は、変法a1)を10.0〜13.0のpH値で実施することを規定し、その際に15〜95℃及び特に25〜80℃の温度範囲が好ましいとみなされる。本発明は、また、処理工程a2)における反応溶液のpH値が3.0〜6.0及び好ましくは5.0〜6.0の値に調節される変法を顧慮する。それぞれの構造グループは、有利には反応溶液に、特定の添加順序で添加される。選択的に、全ての構造グループ(すなわち前記モノマー)はしかしまた唯一の定義された作業工程において添加されることができる。しかしまた挙げた添加変法の混合も可能である:こうして、例えば、1つの構造グループの全量が1つの工程において、かつ残部が共通して、特定の時間間隔内で又はしかしまたそれぞれの構造グループに応じて互いに異なる時間間隔で、添加されることができる。本発明の範囲内で、また、反応溶液が、処理工程a2)において、重合反応の終了後に、緩衝点(Pufferpunkt)に達するまでさらに酸性に維持することが規定されている。ポリマー溶液の温度を処理工程a2)において、酸性条件で5〜100℃の範囲内に維持することは、同様に可能である。重合をラジカル反応として実施することは、特に有利であるとみなされる。
【0016】
処理段階a2)及び/又はb)における酸性条件の調節は、鉱酸及び/又は有機酸を用いて及び特に塩酸又は硫酸で行われるべきである。
【0017】
挙げたpH値の調節に関して、塩基及び酸の塩が、反応溶液中でより低い温度でも、前記溶液の添加された固体含量で晶出をまねかない塩基及び酸が使用されるべきである。
【0018】
原則的に、反応温度を低下させることも確かに十分に可能であるが、しかしながら、そのことから、経済的な視点のもとで、反応時間のたいてい是認できない増加及びそれと結び付いたより長い容器占有時間(Kesselbelegungszeit)が付随して現れる。
【0019】
同様に、処理工程a1)及びa2)に加え、物理的なb1)及び/又は化学的なb2)追加処理が実施されることが規定されている。これに関連して、それぞれの必要性及び極限値に相応して、アセトアルデヒド含量を十分に低下させるために、複数の選択的な又は補足的な手段が考慮に値する。本発明により、物理的な追加処理b1)が加圧処理の形で実施される変法が本質的にカバーされる。このためには、好ましくは、特に温度が70〜90℃に高められる処理工程が考慮に値し、これは、最良には真空条件下に行われる。特に好ましくは、この変法は、空気又は不活性ガスの導通によって付随され、それにより、アルデヒド含分は重合溶液から付加的に追い出される。補足的又は選択的に、しかしまた処理は、塩基性環境中で70〜80℃の高められた温度で実施されることもできる。アセトアルデヒドの分解に加え、それにより、しかしたいていポリマー溶液中にアセトアルデヒドよりも少ない量で存在しうるホルムアルデヒドも、分解される。特に、塩基性処理を用いて、妨げるアルデヒド含分が除去されることができた生成物の場合に、それらのスランプフローが、建築化学的用途において有意に変わらなかったことがわかり、その際に一般的に、生成物特性が、本発明の手段により大体において変わらないままであることが強調されうる。
【0020】
塩基性処理に加え、化学的な後処理工程(b2)として発明に本質的には、少なくとも1つの硫黄化合物又はアミン化合物の添加が規定されており、その際に4〜11のpH値でシステイン、システアミン、亜硫酸塩、重亜硫酸塩及びエタノールアミンからの系列の化合物が添加される。
【0021】
処理工程b2)において、前記化合物又はそれらの混合物は、好ましい変法によれば、0.05〜10.0質量%、好ましくは0.1〜5.0質量%及び特に好ましくは0.3〜2.0質量%である量で添加されるべきであり、その際にこれらの記載は、全反応溶液をそれぞれ基準としている。
【0022】
処理工程b2)に特に適しているのは、ピロ亜硫酸塩及び特にピロ亜硫酸Na、エタノールアミン及びアントラニル酸アミドであり、これらはそれぞれ、それ自体単独で、しかし2つ及び3つの、特にそれら相互の組合せでも、添加されることができる。
【0023】
最後の処理工程c)に関して、本発明により、5〜50℃の好ましい温度範囲及び特に20℃での温度が提案される。さらに、最後の処理工程において、ポリマー溶液のpH値は、5.0〜7.0、特に6.0〜7.0の値に及び特に好ましくは6.5のpH値に調節されるべきである。任意のさらなる特徴は、処理工程c)におけるpH値調節をアルカリ液及び特に水酸化ナトリウム水溶液で行うことにある。
【0024】
最後に、本発明はまた、処理段階a1)及びa2)に前接続された工程において、反応溶液が重合反応の終了後に>8.0のpH値でまず最初に20〜95℃の温度に調節され、かつ反応がこれらの温度で、ついで<500ppmの低いアセトアルデヒド含量に達するまで続けられることもさらに顧慮する。
【0025】
アセトアルデヒドは、議論されるコポリマー中で、主に加水分解過程により生じ、それには、優先的にビニルエーテル分解が、特に酸性環境中で、付随して現れる。さらに、PEG鎖の分解が、高められたアセトアルデヒド含量の原因としてみなされうる。高いアセトアルデヒド含量の発生にともに関わるのは、しかしながら、コポリマーの製造の際に常に必要なpHに依存した反応操作とみなされるべきである。
【0026】
既に何度も述べたように、本発明による処理工程は、高められたアセトアルデヒド含量の低下のために、化学的な及び/又は物理的な手段により行われることができ、その際に物理的な手段は主に、温度増加とみなされうる。これに関連して、前記ポリマー溶液を、適した温度増加により滅菌することも、推奨に値しうるかもしくは十分でありうるものであり、そのために反応溶液から生きている微生物又はそれらの休眠状態のものが除去される。細菌及び菌類の栄養細胞は、約60℃の温度で5〜10分以内に死滅し;酵母胞子及び菌類胞子は80℃を上回り、及び細菌の胞子は120℃を上回り、これらの高められた温度の約15分の作用期間で死滅する。これらの手段を用いて、反応溶液は、記載された加水分解過程と匹敵して、同様に解重合過程及びアルデヒド形成をまねきうる微生物を原因としている分解反応から回避される。
【0027】
付加的な変法として、本発明は、処理工程b)において、すなわち部分工程b1)及び/又はb2)において、付加的にアセトアルデヒドを形成するのに対する防止剤を添加する可能性も顧慮し、そのためには、例えば殺生物剤が適している。しかし、変法a)の前、その間又はその後に、空気又は不活性ガスを反応溶液に導通させることも可能である。
【0028】
特定の場合に、化学的な処理手段として酸化剤を添加することも可能であり、そのためにはとりわけ過酸化物、例えば過酸化水素が適している。
【0029】
本発明による方法及び好ましい追加手段を用いて、アセトアルデヒド含量が、好ましくは溶液として、≦100ppmであるコポリマー生成物が得られる。好ましくは、本発明によれば、≦10ppmのアセトアルデヒド含量を有する生成物が得られる。これらの値の測定は、通常、DIN.V ENV 13999-3(GC−MS)により行われる。
【0030】
こうして処理されたポリマーの溶液特性、しかしまたそれらの加工特性及びそれぞれの使用特性は、それぞれの手段によっては不利に変わらず、それどころか特定部分で有利な影響を及ぼしうるので、本発明により製造されるコポリマーは、技術水準から知られているような全ての使用分野にも利用可能である。
【0031】
好ましくは、本発明による方法で得られるコポリマーは、有機顔料又は無機顔料用の分散剤として又はしかしまた充填剤として及びここでは極めて特に好ましくは粘稠な配合物中で使用される。しかし同様に、こうして得ることができるコポリマーを、一般的に建築化学的用途において及び特に好ましくは水硬性結合剤、例えばセメント、石灰、セッコウ、硬セッコウ等を含有する水性建築材料系用の添加剤として特に、使用することが可能である。
【0032】
本方法のさらなる利点は、アセトアルデヒド含量が少なくとも四週にわたって安定に所望の値に低減されている生成物が得られることにある。
【0033】
特許請求の範囲に記載の方法を用いて、オキシアルキレングリコール−アルケニルエーテル及び不飽和モノカルボン酸誘導体もしくは不飽和ジカルボン酸誘導体をベースとするコポリマーは、通常の場合に800〜1000ppmであり、それどころか8000ppmまで達しうるアセトアルデヒド含量から、100ppm未満及び特に好ましくは<10ppmの値に簡単に低減することができる。
【0034】
次の実施例は、提案された方法の利点を説明する。
【実施例】
【0035】
例1
温度計、撹拌機、還流冷却器及び別個の供給用の2つの入口を備えた10l二重壁反応容器中に、メチルポリエチレングリコール−1100−モノビニルエーテル(平均分子量1100g/モル)3300g(3.00モル)を溶融物として50℃で装入した。水道水3200gを添加し、その際にビニルエーテルの強アルカリ性水溶液が得られた。撹拌及び冷却しながら、水137.20g中に溶解された無水マレイン酸(30%溶液に相当)58.80g(0.60モル)並びに別個に20%カセイソーダ水10.86gを添加し、その際に温度を30℃未満に維持した。
【0036】
引き続き、ブタノールで開始され、単官能性NH2を末端基とするエチレンオキシド/プロピレンオキシド−ブロックポリマー(EO 4、PO 27;分子量 1800g)と無水マレイン酸との反応生成物33.00g(0.0165モル)を、短時間で強力に撹拌しながら、添加し、連続してFeSO4・7H2O 930mg、3−メルカプトプロピオン酸5.97g及び50%過酸化水素水34.40gを添加した。30℃の温度で、引き続き3−メルカプトプロピオン酸17.90gの追加の調節剤量を含有する水道水843g(25%溶液)中に溶解させたアクリル酸281.00g(3.90モル)を、75分の期間にわたって装入混合物に添加した。これとは別個に、ナトリウムヒドロキシメタン−スルフィナート二水和物の2%水溶液252mlの計量供給を95分の期間にわたって行い、その際に温度は最大35.4℃に上昇した。
【0037】
添加が終わった後もしくは重合反応の終了後に、なお15分間撹拌し、30℃で及び20%カセイソーダ水801.70gの添加により、6.50のpH値に調節した。黄色がかって着色した濁った水性配合物は、固体40.6質量%を含有していた。コポリマーの質量平均分子量は、35350g/モルであった、収量:9203g。
【0038】
例2
− 例1で記載されたように − 行ったが、しかしながらそこで使用されたビニルエーテル(MW=1100)の代わりに、平均分子量2000g/モルを有するビニルエーテルを使用した。
【0039】
次の使用量の構造形成成分を使用した:
アクリル酸 205.60g(2.853モル)
メチルポリエチレングリコール−2000−モノビニルエーテル 3156.80g(1.5784モル)
ポリ(PO−ブロック−EO)−マレインアミド酸(MW1900g/モル) 47.35g(0.025モル)
無水マレイン酸 92.80g(0.946モル)
固体42.7質量%を有する、濁って黄色がかって着色した生成物8731.7gが得られた。質量平均分子量は32150g/モルであった。
【0040】
例1及び2の溶液を、重合反応の終了後にDIN.V ENV 13999-3(GC;MS)によるアセトアルデヒド測定にかけて、こうしてその後の処理手段のための初期値を決定した(初期値1)。[それぞれ示されたアセトアルデヒド値は、GASTEC Detector Tube No. 92 M/Lを用いて、ガス室中で試験溶液について測定した]。
【0041】
処理手段を、例1及び2によるそれぞれの出発溶液を、11.0のpH値でまず最初に約85℃の温度に調節し、かつアセトアルデヒド含量が≦500ppmになるまで、さらに反応させた(初期値2)後に、第1表に従って実施した。
【0042】
【表1】

【0043】
第2表、試験7〜12による処理工程a及びb2の組合せによる本発明による処理手段を、同様に例1及び2の出発溶液を用いて実施した;アセトアルデヒドの初期値1に加え、出発溶液のpH値及び温度を変えた:
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシアルキレングリコール−アルケニルエーテル及び不飽和モノカルボン酸誘導体もしくは不飽和ジカルボン酸誘導体をベースとし、低減されたアセトアルデヒド含量を有するコポリマーの製造方法であって、前記コポリマーが、
1.1)式Ia及び/又はIb及び/又はIc
【化1】

[式中、
1は、水素であるか、又は炭素原子1〜20個を有する脂肪族炭化水素基であり、
1は、−Oa1、−O−(CmH2mO)n−R2、−NH−(Cm2mO)n−R2であり、
1は、水素、一価又は二価の金属カチオン、アンモニウムイオン、有機アミン基であり、
aは、1/2又は1であり、
2は、水素、炭素原子1〜20個を有する脂肪族炭化水素基、炭素原子5〜8個を有する脂環式炭化水素基、炭素原子6〜14個を有する置換もしくは非置換のアリール基であり、
1は、O、NR2であり、
mは、2〜4であり、かつ
nは、0〜200である]で示される構造グループ51〜95モル%
及び
1.2)一般式II
【化2】

[式中、R3は、水素を表すか、又は炭素原子1〜5個を有する脂肪族炭化水素基を表し、
pは、0〜10を表し、
かつR2、m及びnは前記の意味を表す]で示される構造グループ1〜48.9モル%
及び/又は
1.3)式IIIa又はIIIb
【化3】

[式中、S1は、−H、−COOa1、−COOR5であり、
1は、
【化4】

−W1−R7
−CO−[NH−(CH23s−W1−R7
−CO−O−(CH2z−W1−R7
−(CH2z−V1−(CH2z−CH=CH−R2
1=−COOR5又はCOOa1の場合に−COOR5であり、
1は、−CO−NH−、−O−、−CH2O−であり、
2は、−NH−CO−、−O−、−OCH2−であり、
1は、−O−CO−C64−CO−O−又は−W1−であり、
1は、
【化5】

であり、
4は、H、CH3であり、
5は、炭素原子3〜20個を有する脂肪族炭化水素基、炭素原子5〜8個を有する脂環式炭化水素基、炭素原子6〜14個を有するアリール基であり、
6は、R2
【化6】

であり、
7は、R2
【化7】

であり、
rは、2〜100であり、
sは、1、2であり、
zは、0〜4であり、
xは、1〜150であり、
yは、0〜15である]で示される構造グループ0.1〜5モル%並びに
1.4)一般式IVa及び/又はIVb
【化8】

[式中、a、M1、X1及びY1について前記の意味を表す]で示される構造グループ0〜47.9モル%
からなり、かつ前記製造を5〜100℃の温度で水溶液中でのラジカル重合により行い、以下:
処理工程a1)において、反応溶液を重合反応の終了後に>8.0のpH値でまず最初に20〜95℃の温度に調節し、かつこれらの温度で、<500ppmの低いアセトアルデヒド含量に達するまでさらに反応させるか、又は
処理工程a2)において、反応溶液を重合反応の終了後に≦7.0のpH値に調節し、かつ
場合によりb)反応溶液を、b1)加圧処理を実施することによるか又はb2)4〜11のpH値で、システイン、システアミン、アントラニル酸アミド、亜硫酸塩、重亜硫酸塩及びエタノールアミンからの系列の少なくとも1つの化合物を添加することにより、物理的なb1)及び/又は化学的なb2)追加処理にかけ、かつ最後に
c)所望の最終pH値に調節する
ことを特徴とする、コポリマーの製造方法。
【請求項2】
1がメチル基を表す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1が、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンの群から選択される一価又は二価の金属カチオンを表す、請求項1又は2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
2がフェニルの場合に、前記フェニル基がさらにヒドロキシル基、カルボキシル基又はスルホン酸基により置換されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
式II中でp=0及びm=2を表す、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
式Ia及び/又はIb及び/又はIcの構造グループ55〜75モル%、式IIの構造グループ19.5〜39.5モル%、式IIIa及び/又はIIIbの構造グループ0.5〜2モル%並びに式IVa及び/又はIVbの構造グループ5〜20モル%を含有するポリマーを製造する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ポリマーが、式I、II、III及びIVの構造グループの総和を基準として、50モル%まで、特に20モル%までの構造グループを付加的に含有し、前記構造グループのモノマーは、ビニル誘導体又は(メタ)アクリル酸誘導体である、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
モノマーのビニル誘導体として、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン、プロピレン、イソブテン、N−ビニルピロリドン、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸又はビニルホスホン酸が使用された、請求項7記載の方法。
【請求項9】
モノマーの(メタ)アクリル酸誘導体として、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリラート、アクリルアミド、メタクリルアミド、AMPS、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル又はシクロヘキシルアクリラートが使用された、請求項7記載の方法。
【請求項10】
1000〜200000g/molの平均分子量を有するコポリマーが得られる、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
処理工程a1)において反応を10.0〜13.0のpH値で及び/又は15.0〜95.0℃及び特に25〜80℃の温度で実施する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
処理工程a2)において反応を3.0〜6.0及び好ましくは5.0〜6.0のpH値で実施する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
構造グループを、特定の時間的な添加順序で反応溶液に添加する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
処理工程a2)において、反応溶液を重合反応の終了後に、緩衝点に達するまで酸性にさらに維持する、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
処理工程a2)において、ポリマー溶液の温度を、酸性条件で5〜100℃の範囲内で維持する、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
処理段階a2)及び/又はb)における酸性条件の調節を、鉱酸及び/又は有機酸を用いて及び特に塩酸及び/又は硫酸で行う、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
ポリマー溶液に、処理工程b2)において前記化合物又はそれらの混合物を、全反応溶液をそれぞれ基準として、0.05〜10.0質量%、好ましくは0.1〜5.0質量%及び特に好ましくは0.3〜2.0質量%の量で添加する、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
処理段階c)における温度を、5〜50℃の範囲内及び特に20℃で維持する、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
最後の処理工程c)におけるポリマー溶液のpH値を、5.0〜7.0、特に6.0〜7.0の値に及び特に好ましくは6.5の値に調節する、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
処理工程d)においてpH値調節を、アルカリ液及び特に水酸化ナトリウム水溶液で行う、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
処理段階a1)及びa2)に前接続された工程において、反応溶液を重合反応の終了後に>8.0のpH値でまず最初に20〜95℃の温度に調節し、かつ反応をこれらの温度で、<500ppmの低いアセトアルデヒド含量に達するまで続ける、請求項1から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
コポリマー生成物が、好ましくは溶液として、≦100ppmのアセトアルデヒド含量で得られる、請求項1から21までのいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
アセトアルデヒド含量が≦10ppm(DIN.V ENV 13999-3;GC-MSにより測定)であるコポリマー生成物が得られる、請求項1から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
アセトアルデヒド含量が少なくとも4週にわたって低減されている生成物が得られる、請求項1から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
有機顔料もしくは無機顔料又は充填剤用の分散剤として、極めて特に好ましくは粘稠な配合物における、請求項1から24までのいずれか1項記載の方法で得られたコポリマーの使用。
【請求項26】
建築化学的用途における、特に水性建築材料系、特に好ましくはセメント、石灰、セッコウ、硬セッコウ等のような水硬性結合剤を含有する水性建築材料系用の添加剤としての、請求項1から24までのいずれか1項記載の方法で得られたコポリマーの使用。
【請求項27】
水硬性結合剤用の分散剤としての、請求項26記載の使用。

【公表番号】特表2011−527355(P2011−527355A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517055(P2011−517055)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057182
【国際公開番号】WO2010/003753
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】