説明

低温での溶解性を改善した粉末洗剤組成物

【課題】 低温水下や撹拌力が不充分な状態で洗濯した際に起こる洗剤凝集物の生成を効率的に防止でき、洗濯中には優れた溶解性を示す粉末洗剤組成物を提供すること。
【解決手段】 界面活性剤を10〜40%含み平均粒径が150μm以上の界面活性剤粒子(A)を、
平均粒径が30μm未満のアルミノ珪酸塩粒子(B)と、
有機物を50%以上含み平均粒径が30μm未満の接触角50°以上の粒子(C)とで表面処理してなる、複合粒子(P)を含有し、
前記有機物に由来するIR強度とアルミノ珪酸塩に由来するIR強度との粉砕前後の相対面積強度比が1.01〜20である粉末洗剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温での水への溶解性を改善した、衣類等繊維製品に用いることができる粉末洗剤組成物に関する。詳しくは、界面活性剤粒子を、アルミノ珪酸塩粒子と有機物含有粒子とで表面処理した複合粒子を含有する粉末洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体粒子のハンドリング性、崩壊性、貯蔵安定性、溶解性等に関する種々の問題点を解決するため、固体粒子を水溶性高分子化合物で造粒する方法(特許文献1)や、固体粒子表面を被覆する方法等(特許文献2)が提案されてきた。
なかでも、粉末洗剤組成物の分野では、界面活性剤を含む洗剤粒子が、冬季における洗濯中にゲル化・凝集して溶け残る現象がしばしば観察される。また、近年、洗濯機の大型化による浴比の低下や、省エネ設計による濯ぎ水量の低下が進むとともに、粉末洗剤組成物を漬け置きして使用する方法等も広く使用されるようになってきた。従って、低温水を使用する洗濯時や、攪拌力が不十分な状態における洗濯時に、洗剤粒子の溶け残りが発生しやすい状況にあると言える。
この問題を解決するため、洗剤粒子の表面を水溶性高分子で被覆する方法が提案されている(特許文献3)。
【0003】
一方では、粉末洗剤組成物に種々の機能を付与すべく、様々な粒子をブレンドする技術が提案されている。この場合、ブレンドされた粒子が互いに影響し合い、粉末洗剤の溶解性を低下させるという問題を招来することがあった。特に、洗剤粒子に水溶性無機化合物を粉体混合すると、水溶性無機化合物が水と接触して水和する際に洗剤粒子と激しく凝集して凝集体を生成し、これが溶け残る現象が問題となっていた。
この問題を解決するため、洗剤粒子をノニオン界面活性剤で被覆するとともに、水溶性無機化合物を水溶性有機物溶液及び/又は固体粉体で被覆する技術が提案されている(特許文献4)。
【0004】
被覆技術としては、さらに、水に不溶の粉体又は漂白活性化剤等の造粒物を、多価金属イオンと反応する官能基を有する水溶性高分子化合物で被覆した後、多価金属イオンで架橋する技術(特許文献5、6)が提案されている。これらの技術は、貯蔵安定性や多水性組成物に配合したときの形体安定性の向上を目的としたものである。
また、粒状洗剤に粉体混合することを目的とした水溶性無機化合物粒子に対して、様々な被覆技術が提案されている。例えば、水溶性無機化合物を水溶性高分子化合物で造粒し、顆粒の溶解速度や洗濯時の分散性を改善する技術が提案されている(特許文献7、8)。また、水溶性無機化合物に対し、アルカリ金属珪酸塩等の水難溶性無機化合物を複数混合したり、これらを複合化したりする技術や、水溶性無機化合物担体に濃厚シリケート溶液を吹きつけてコートする技術等が提案されている(特許文献9、10、11)。これらの被覆技術も、粒子の貯蔵安定性及び洗浄力向上への寄与を主眼としたものである。
【0005】
一方、水溶性無機化合物の溶解性に関する問題に対して、難水溶性(有機)化合物で無機化合物を被覆する技術も提案されている。例えば、溶解速度を制御する技術として、高級アルコールを用いた被覆法が提案されている(特許文献12)。
また、撹拌力が充分加わる条件下において、低温水で洗濯する際の溶け残りを改善する技術として、脂肪酸塩で被覆する方法(特許文献13、14)、水溶性アルカリ無機粒子をアニオン界面活性剤の酸前駆体で被覆すると同時に表面で中和する方法等が提案されている(特許文献15、16)。
さらに、粉末洗剤組成物分野におけるその他の被覆技術として、洗剤成分をアルミノ珪酸塩と水溶性高分子で被覆することにより、流動性改良効果及び微粉形成抑制効果を有する洗剤組成物や、二酸化ケイ素粒子と水溶性高分子とで被覆した、貯蔵安定性に優れた粒状洗剤等が提案されている(特許文献17、18)。
また、粉末洗剤組成物に通常用いられるアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、水溶性無機化合物、ポリエチレングリコール等の水溶性粘結剤等を、種々組み合わせて顆粒を調製し、酵素や漂白剤等の活性を安定化させる手法、界面活性剤自体の加水分解を抑制する手法等も提案されている(特許文献19、20、21)。
さらに、第1段階がアルミノ珪酸塩などの洗剤成分及び洗剤組成物の粉砕物によるコーティング、第2段階がセルロースポリマ−及び糖を含むコーティング剤によるコーティングである、2段階のコーティングより製造される粒状洗剤組成物が提案されている(特許文献22)。
【0006】
しかしながら、これら各文献に記載された方法も、低温水を用いた洗濯時において、洗剤凝集物の形成を抑制し、その溶け残りを防止するという効果においては充分なものであるとは言い難い。
以上のように、低温水下や撹拌力が不充分な状態で洗濯した際に起こる洗剤凝集物の生成を効率的に防止でき、洗濯中には優れた溶解性を示す粒状洗剤組成物が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開平3−53000号公報
【特許文献2】特開2001−293354号公報
【特許文献3】特開平7−242899号公報
【特許文献4】特開2002−266000号公報
【特許文献5】特表平11−514402号公報
【特許文献6】特開昭63−130522号公報
【特許文献7】特開昭63−20398号公報
【特許文献8】特表2001−505240号公報
【特許文献9】特開平8−60200号公報
【特許文献10】特開平4−275400号公報
【特許文献11】特開2000−34496号公報
【特許文献12】特開2001−510501号公報
【特許文献13】特開平1−229098号公報
【特許文献14】特開平10−237498号公報
【特許文献15】特開2001−81498号公報
【特許文献16】特開平10−158699号公報
【特許文献17】特表2000−505834号公報
【特許文献18】特開平6−172800号公報
【特許文献19】特開平6−192697号公報
【特許文献20】特開平4−345700号公報
【特許文献21】特開平3−265699号公報
【特許文献22】特表2000−505834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、低温水下や撹拌力が不充分な状態で洗濯した際に起こる洗剤凝集物の生成を効率的に防止でき、洗濯中には優れた溶解性を示す粉末洗剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、界面活性剤を10〜40%含み平均粒径が150μm以上の界面活性剤粒子(A)を、
平均粒径が30μm未満のアルミノ珪酸塩粒子(B)と、
有機物を50%以上含み平均粒径が30μm未満である接触角50°以上の粒子(C)とで表面処理してなる、複合粒子(P)を含有し、
下記式(1)で表される相対面積強度比R1/R2が1.01〜20である、
粉末洗剤組成物を提供する。

R1/R2=(O1/Z1)/(O2/Z2) (1)

(式中、O1は、粉末洗剤組成物中に含まれる粒子(C)中の有機物に由来するIR強度を表し、Z1は、粉末洗剤組成物中に含まれるアルミノ珪酸塩粒子(B)中のアルミノ珪酸塩に由来するIR強度を表し、R1は、相対面積強度O1/Z1を表す;
O2は、粉末洗剤組成物をすりつぶした後の粒子(C)中の有機物に由来するIR強度を表し、Z2は、粉末洗剤組成物をすりつぶした後のアルミノ珪酸塩粒子(B)中のアルミノ珪酸塩に由来するIR強度を表し、R2は相対面積強度O2/Z2を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明により、低温での水への溶解性に優れる粉末洗剤組成物が得られる。本発明の組成物はまた、発塵が抑制されているので取り扱いが容易である。本発明の組成物はまた、長期保存後の流動性及び非固化性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
界面活性剤粒子(A)
本発明において使用できる界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等があげられる。
アニオン界面活性剤としては、従来洗剤として使用されているものであれば、特に限定されるものではなく、各種のアニオン界面活性剤を使用することができる。例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)炭素数8〜18のアルキル基を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)
(2)炭素数10〜20のアルキル硫酸塩(AS)又はアルケニル硫酸塩
(3)炭素数10〜20のα−オレフィンスルホン酸塩(AOS)
(4)炭素数10〜20のアルカンスルホン酸塩
【0012】
(5)炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を有し、平均付加モル数が10モル以下のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド又はそれらの混合物を付加したアルキルエーテル硫酸塩(AES)又はアルケニルエーテル硫酸塩
(6)炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を有し、平均付加モル数が10モル以下のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド又はそれらの混合物を付加したアルキルエーテルカルボン酸塩又はアルケニルエーテルカルボン酸塩
(7)炭素数10〜20のアルキルグリセリルエーテルスルホン酸等のアルキル多価アルコールエーテル硫酸塩
(8)炭素数10〜20の高級脂肪酸塩
(9)炭素数8〜20の飽和又は不飽和α−スルホ脂肪酸(α−SF)塩又はそのメチル、エチルもしくはプロピルエステル等。
これらのアニオン界面活性剤は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0013】
このうち、上記(1)直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)のアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム又はカリウム塩等)、(3)AOS、(5)AES、(8)高級脂肪酸のアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム又はカリウム塩等)、(9)α−SFのアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム又はカリウム塩等)が好ましい。
なかでも、炭素数10〜14のアルキル基を有するLASのアルカリ金属塩、炭素数12〜18のAOSのアルカリ金属塩、炭素数12〜18の高級脂肪酸塩のアルカリ金属塩及び炭素数12〜18のα−SFのアルカリ金属塩がさらに好ましい。
【0014】
ノニオン界面活性剤としては、従来洗剤として使用されているものであれば、特に限定されるものではなく、各種のノニオン界面活性剤を使用することができる。例えば、以下のものを挙げることができる。
(10)炭素数6〜22、好ましくは8〜18の脂肪族アルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを平均3〜30モル、好ましくは5〜20モル付加したポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル
この中でも、ポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキル(又はアルケニル)エーテルが好適である。ここで使用される脂肪族アルコールとしては、第1級アルコール、第2級アルコールが挙げられる。また、そのアルキル基は、分岐鎖を有していてもよい。脂肪族アルコールとしては、第1級アルコールが好ましい。
(11)ポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)フェニルエーテル
【0015】
(12)長鎖脂肪酸アルキルエステルのエステル結合間にアルキレンオキサイドが付加した、例えば下記一般式(1)で表される脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート

1CO(OA)nOR2 (1)

(式中、R1COは、炭素数6〜22、好ましくは8〜18の脂肪酸残基を示し、OAは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はこれらの混合物等の炭素数2〜4、好ましくは2〜3のアルキレンオキサイドの付加単位を示し、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、一般に3〜30、好ましくは5〜20の数である。R2は炭素数1〜3の置換基を有してもよい低級(炭素数1〜4)アルキル基を示す。)
(13)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
(14)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル
(15)ポリオキシエチレン脂肪酸エステル
(16)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
(17)グリセリン脂肪酸エステル
【0016】
このうち、(10)融点が50℃以下でHLBが9〜16のポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキル(又はアルケニル)エーテル、及び(12)脂肪酸メチルエステルにエチレンオキサイドが付加した脂肪酸メチルエステルエトキシレート又は脂肪酸メチルエステルにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドが付加した脂肪酸メチルエステルエトキシプロポキシレートが好ましい。
なかでも、(10)融点が50℃以下でHLBが9〜16のポリオキシエチレンアルキルエーテル、(12)炭素数12〜18の脂肪酸メチルエステルにエチレンオキサイドが付加した脂肪酸メチルエステルエトキシレートがさらに好ましい。
界面活性剤粒子(A)中における界面活性剤の含量は、10〜40%であり、15〜40%であるのが好ましく、18〜35%であるのが最も好ましい。
アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを併用する場合、アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを、質量比にして、10:1〜1:10の割合で使用するのが好ましい。
【0017】
界面活性剤粒子(A)は、界面活性剤に加えて、無機化合物、水溶性高分子化合物、溶解促進剤等を含有する。
無機化合物としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、結晶性層状珪酸ナトリウム、非結晶性層状珪酸ナトリウム等のアルカリ性塩、硫酸ナトリウム等の中性塩、オルソリン酸塩、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、メタリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、フィチン酸塩等のリン酸塩、結晶性アルミノ珪酸塩、無定形アルミノ珪酸塩等を使用することができる。このうち、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、硫酸ナトリウムが好ましい。炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、硫酸ナトリウムがより好ましい。
界面活性剤粒子(A)中における無機化合物の含量は、10〜80質量%であるのが好ましく、20〜70質量%であるのが好ましく、25〜50%であるのが最も好ましい。
水溶性高分子化合物としては、アクリル酸系高分子化合物やセルロース系高分子化合物であるのが好ましく、アクリル酸重合体、アクリル酸/マレイン酸の共重合体、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシアルキルセルロース誘導体、ポリアセタールカルボン酸塩がさらに好ましい。重量平均分子量1000〜80000のアクリル酸/マレイン酸の共重合体が特に好ましい。重量平均分子量1000〜20000のポリエチレングリコールもまた好ましい。
【0018】
界面活性剤粒子(A)中における水溶性高分子化合物の含量は、0.1〜10重量%であるのが好ましく、0.2〜7重量%であるのが好ましい。
溶解促進剤としては、炭酸カリウムや、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等の無機アンモニウム塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、キュメンスルホン酸ナトリウム等の炭素数1〜5の短鎖アルキルを有するベンゼンスルホン酸塩、安息香酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸、D−グルコース、尿素、蔗糖等の水溶性物質を使用することができる。このうち、炭酸カリウム、塩化ナトリウムが好ましく、炭酸カリウムがより好ましい。
界面活性剤粒子(A)中における溶解促進剤の含量は、1〜15重量%であるのが好ましく、2〜10重量%であるのがより好ましい。
その他、膨潤性水不溶性物質、帯電防止剤、再汚染防止剤、増量剤、還元剤、漂白活性化触媒を含有することができる。例えば、クエン酸塩、アミノカルボン酸塩、ヒドロキシアミノカルボン酸塩が好ましい。
【0019】
界面活性剤粒子(A)の平均粒子径は、200〜1500μmであるのが好ましく、250〜1000μmであるのがより好ましく、300〜700μmであるのが最も好ましい。平均粒子径がこのような範囲にあると、溶解性の点で好ましい。なお、本明細書において、粒子径は、実施例記載の方法により測定することができる。
界面活性剤粒子(A)の嵩密度は、0.4〜1.2g/cm3であるのが好ましく、0.5〜1.0g/cm3であるのがより好ましく、0.7〜0.9g/cm3であるのが最も好ましい。嵩密度がこのような範囲にあると、1箱あたりの容積を小さくすることができるので好ましい。なお、本明細書において、嵩密度は、JIS K 3362に従って測定することができる。
界面活性剤粒子(A)の水分量は、溶解性と保存安定性の点から、4〜10質量%であるのが好ましく、5〜9質量%であるのがより好ましく、6〜8%であるのが最も好ましい。なお、本明細書において、水分量は、赤外線水分計(kett社製など)により測定することができる。
本発明の粉末洗剤組成物において、界面活性剤粒子(A)は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは70質量%の量で含まれる。
【0020】
界面活性剤粒子(A)は、例えば、以下の方法により製造することができる。即ち、原料粉末及びバインダー成分(界面活性剤、水、液体高分子成分等)を捏和・混練した後、押し出して造粒する押し出し造粒法、捏和・混練した後、得られた固形洗剤を破砕して造粒する捏和・破砕造粒法、原料粉末にバインダー成分を添加し撹拌羽根で撹拌して造粒する撹拌造粒法、原料粉末を転動させつつバインダー成分を噴霧して造粒する転動造粒法、原料粉末を流動化させつつ、液体バインダーを噴霧し造粒する流動層造粒法等により製造することができる。
【0021】
アルミノ珪酸塩粒子(B)
本発明において用いるアルミノ珪酸塩としては、好ましいアルミノ珪酸塩としては、下記一般式(I):

1(M2O)・Al23・y1(SiO2)・w1(H2O) (I)

(式中、Mはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子、x1、y1及びw1は各成分のモル数を示し、一般的には、x1は0.7〜1.5、y1は0.8〜6の数、w1は任意の正数を示す。)
で表される結晶性アルミノ珪酸塩、下記一般式(II)又は(III):

2(M2O)・Al23・y2(SiO2)・w2(H2O) (II)

(式中、Mはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子、x2、y2及びw2は各成分のモル数を示し、一般的には、x2は0.7〜1.2、y2は1.6〜2.8、w2は0又は任意の正数を示す。)

3(M2O)・Al23・y3(SiO2)・z3(P25)・w3(H2O)(III)

(式中、Mはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子、x3、y3、z3及びw3は各成分のモル数を示し、一般的には、x3は0.2〜1.1、y3は0.2〜4.0、z3は0.001〜0.8、w3は0又は任意の正数を示す。)
で表される無定形アルミノ珪酸塩等が挙げられる。このうち、式(I)で表されるのが好ましく、A型ゼオライト、P型ゼオライトが特に好ましい。A型ゼオライトがより好ましい。
尚、本発明において、アルミノ珪酸塩粒子(B)に替えて、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどのスメクタイト類;セリサイト、イライト、白雲母、金雲母などの雲母類;あるいはバーミキュライト、緑泥石、パイロフィライト、タルク、カオリン鉱物、蛇紋石、セピオライト、アロフェン、ハイドロタルサイトなどの粘土鉱物を使用することもできる。
【0022】
本発明の粉末洗剤組成物中において、アルミノ珪酸塩粒子(B)の含量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜5質量%、最も好ましくは1.5質量%である。
本発明で用いるアルミノ珪酸塩粒子(B)は、市販品をそのまま用いることができる。例えば、水澤化学(株)から商品名シルトンBで発売されているものを使用することができる。
アルミノ珪酸塩粒子(B)の平均粒子径は30μm未満であり、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.3〜7μmである。平均粒子径がこのような範囲にあると、洗浄後の衣類に残らないので好ましい。
アルミノ珪酸塩粒子(B)の1次粒径は、界面活性剤粒子(A)の1/5以下であるのが好ましく、1次粒径が粒子(A)の1/10以下であるのがより好ましい。1次粒径がこのような範囲にあると、界面活性剤粒子Aに対して安定して存在できるので好ましい。
なお、1次粒径とは、攪拌下における流動パラフィン溶媒中での粒径をいい、Particle Size Analyzer等により測定することができる。
アルミノ珪酸塩粒子(B)は、水分や製造工程で発生する微量の不純物等の成分を含有してもよいが、粒子(B)の全量に対して5%以下であるのが好ましい。
【0023】
粒子(C)
有機物としては、脂肪酸、例えば炭素数10〜20の飽和又は不飽和脂肪酸、具体的にはラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等;高級脂肪酸ジカルボン酸、例えば前記高級脂肪酸のジカルボン酸;高級アルコール、例えば炭素数12〜22の飽和又は不飽和アルコール、具体的にはヘキサデカノールの1モルエチレンオキシド付加体、オクタデカノールの1モルエチレンオキシド付加体等;HLB5以下、好ましくは3以下の高級アルコール又は高級脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物、例えば前記高級アルコール又は前記高級脂肪酸のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加物、具体的にはパルミチン酸の1モルエチレンオキシド付加体等;高級脂肪酸エステル、例えば前記高級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、具体的にはパルミチン酸メチルエステル等;及び高級脂肪酸のグリセライド、具体的にはラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等のモノ、ジ又はトリグリセライド等を使用することができる。存在する場合、塩の形態で使用することもできる。塩を形成する対イオンとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のイオン、カルシウム等のアルカリ土類金属のイオン等があげられる。このうち、脂肪酸(塩)が好ましく、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が好ましく、ラウリン酸が最も好ましい。
粒子(C)中における有機物の含量は、55質量%以上であるのが好ましく、60質量%以上であるのがより好ましい。有機物の含量がこのような範囲にあると、複合粒子Pに有効に疎水性を付与できるので好ましい。
粒子(C)は、有機物に加えて、界面活性剤や(A)粒子の任意成分を含有することができる。
【0024】
粒子(C)の接触角は、60°以上であるのが好ましく、70°以上であるのがより好ましく、80°以上であるのが最も好ましい。なお、本発明において、接触角は、接触角計等により測定することができる。接触角がこのような範囲にあると、複合粒子Pに有効に疎水性を付与できるので好ましい。
粒子(C)の平均粒子径は、0.1〜10μmであるのが好ましく、0.1〜5μmであるのがより好ましい。粒子(C)の平均粒子径がこのような範囲にあると、界面活性剤粒子Aに対して安定して存在できるので好ましい。
粒子(C)は、界面活性剤や(A)粒子の任意成分等を本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。
本発明の粉末洗剤組成物中における粒子(C)の量は、0.001〜5質量%であるのが好ましく、0.1〜3質量%であるのがより好ましく、0.1〜1質量%であるのが最も好ましい。
粒子(C)は、有機物を、粉砕することにより製造することができる。また、通常ビルダーとして使用される炭酸ナトリウム粒子、硫酸ナトリウム粒子などを核粒子とし、これに攪拌造粒機等を用いて有機物をコーティングし、必要により粉砕することにより製造することができる。粉砕は、通常、ピンミル等を用いて行うことができる。
【0025】
<任意成分>
本発明の粉末洗剤組成物は、上記粒子(A)〜粒子(C)に加え、粉末洗剤組成物に通常含まれている成分を任意に含有することができる。このような成分としては、ビルダー顆粒、酵素粒子、漂白剤粒子、漂白活性化剤粒子、香料、染料、顔料等があげられる。
ビルダー顆粒は、本発明の組成物に対して、10〜40質量%の量で含まれるのが好ましい。より好ましくは12〜30質量%、さらに好ましくは15〜20質量%である。
酵素粒子等は、各成分の効果により異なるが、本発明の粉末洗剤組成物に対して、0.01〜10%の量で含まれるのが好ましい。詳しくは、酵素粒子0.2〜1.5質量%、漂白剤粒子2〜10質量%、漂白活性化剤粒子1〜5質量%が好ましい。酵素としては、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等を使用することができる。
これらの任意成分も通常粒子の形態で本発明の組成物中に含まれるが(「(D)粒子」と称することもある)、その平均粒子径は、溶解性や製品の外観上の観点から、界面活性剤粒子(A)と同程度であるのが好ましい。界面活性剤粒子(A)の嵩密度と(D)粒子の嵩密度との差は、製造時や輸送時の分級の観点から、±0.3以内であるのが好ましく、±0.25以内であるのがより好ましく、同程度であるのが最も好ましい。
【0026】
<複合粒子(P)の製造>
本発明の複合粒子(P)は、例えば(A)〜(C)粒子の所定量を水平円筒型転動混合機中で所定時間混合することにより製造することが出来る。
【0027】
<相対面積強度の測定法>
本発明は、粉末洗剤組成物中に含まれる粒子(C)中の有機物に由来するIR強度(O1)と粉末洗剤組成物中に含まれるアルミノ珪酸塩粒子(B)中のアルミノ珪酸塩に由来するIR強度(Z1)との相対面積強度(R1=O1/Z1)と、粉末洗剤組成物をすりつぶした後の粒子(C)中の有機物に由来するIR強度(O2)と粉末洗剤組成物(A)をすりつぶした後のアルミノ珪酸塩粒子(B)中のアルミノ珪酸塩に由来するIR強度(Z2)との相対面積強度(R2=O2/Z2)との比(R1/R2)が、1.01〜20であることを特徴とする。
有機物のIR強度(O1,O2)と結晶性アルミノ珪酸塩のIR強度(Z1,Z2)の相対面積強度(O1/Z1,O2/Z2)は、例えばフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)や光音響分光法(PAS)を併用する方法(以下、「FT−IR/PAS」と略記する)により測定することができる。FT−IR/PASにより、試料の表面から深さ方向における目的物質(有機物及びアルミノ珪酸塩)の分布状態を確認することができる。
粉末洗剤組成物の構造を保持した状態で測定した場合と粉砕して均一な状態で測定した場合のそれぞれについて求めたアルミノ珪酸塩の特性ピークに対する有機物の特性ピークの相対面積強度を比較することによって粉末洗剤組成物の構造上の特徴を特定することができる。R1/R2は、粉末洗剤組成物(P)の表面におけるアルミノ珪酸塩粒子(B)と有機物粒子(C)の質量比を意味し、この値が大きい程、複合粒子(P)の表面上に存在するアルミノ珪酸塩粒子(B)に対する有機物粒子(C)の質量比が大きいことを意味する。
この相対面積強度の測定により、界面活性剤粒子(A)に粒子(B)や粒子(C)が含まれていても、粉末洗剤組成物表面の特徴を確認することが可能である。
R1/R2は、1.03〜10であるのが好ましく、1.05〜1.5であるのがより好ましく、1.05〜1.15であるのが最も好ましい。R1/R2がこのような範囲にあると、低温における水への溶解性に優れるので好ましい。
如何なる理論にも拘束されるものではないが、界面活性剤粒子の表面に存在する疎水性を有する粒子と結晶性アルミノ珪酸塩粒子の最適な比が、界面活性剤粒子を含む粒子間への冷水の浸透を抑制しゲル化を遅延させたことで、凝集を抑制できるものと考えられる。
【0028】
R1/R2の求め方を、有機物としてオレイン酸ナトリウムを使用する場合を例にして以下に説明する。
界面活性剤粒子表面にアルミノ珪酸塩粒子(B)と(C)オレイン酸ナトリウムとを所定量添加後、水平円筒型転動混合機中で1分間混合することにより界面活性剤粒子(A)を調製し、必要により任意成分を混合することにより粉末洗剤組成物を得る。得られた粉末洗剤組成物をPASセルに充填する。一方、該粉末洗剤組成物を、メノウ乳鉢等で十分に粉砕して均一な状態(粒径74μm以上の粒子がなくなるまで)にし、別のPASセルに充填する。これを比較試料とする。PASセルとしては、例えばMTEC社製Photoacoustics Model 300型光音響検出器を使用することができる。
FT−IR/PASの測定は、例えばPERKIN ELMER社製Spectrum One型赤外分光光度計を用いることにより行う。測定条件は例えば分解能8cm-1、スキャン速度0.20cm/sec、積算16回とする。
粉末洗剤組成物のPASスペクトルにおいて、オレイン酸ナトリウム、結晶性アルミノ珪酸塩の特性ピークをそれぞれ1560cm-1(−COO−の逆対称伸縮振動)、1009cm-1(Si−O−Siの逆対称伸縮振動)として、これらのピークの面積または強度を読み取る。
ピーク面積は、ピークの両端の谷を結んだベースラインとピーク形状を示すラインで囲まれた部分の面積を読み取る。なお、上記IR強度の算出に際して、ピークの重なりが著しく、ピーク面積算出が困難な場合は、ピークトップとその点から下ろした垂線とピークの両端の谷を結んだベースラインの交点までの強度を各成分のIR強度としてもよい。
【実施例】
【0029】
<界面活性剤粒子(A)の製造>
撹拌装置を具備したジャケット付き混合槽に水を入れ、温度を60℃に調整した。これにα−SF−Naとノニオン界面活性剤を除く界面活性剤、及びPEG#6000を添加し、10分間撹拌した。続いてMA(アクリル酸/マレイン酸コポリマーナトリウム塩)と蛍光剤とを添加した。さらに10分間撹拌した後、粉末A型ゼオライトの一部(2.0%相当量(対各粒子、以下同じ)の捏和時添加用、3.2%相当量の粉砕助剤用、1.5%相当量の表面被覆用の各A型ゼオライトを除く)、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び亜硫酸ナトリウムを添加した。さらに20分間撹拌して水分38%の噴霧乾燥用スラリーを調製した後、向流式噴霧乾燥塔を用いて熱風温度280℃の条件で噴霧乾燥し、平均粒子径320μm、嵩密度0.30g/cm3、水分5%の噴霧乾燥粒子を得た。
一方、原料の脂肪酸エステルをスルホン化し、中和して得られたα−SF−Naの水性スラリー(水分濃度25%)に、ノニオン界面活性剤の一部(α−SF−Naに対して25%)を添加し、水分を11%になるまで薄膜式乾燥機で減圧濃縮して、α−SF−Naとノニオン界面活性剤の混合濃縮物を得た。
上述の噴霧乾燥粒子、この混合濃縮物、2.0%相当量のA型ゼオライト、0.5%相当量の噴霧添加用を除く残りのノニオン界面活性剤及び水を連続ニーダー((株)栗本鐵工所製、KRC−S4型)に投入し、捏和能力120kg/hr、温度60℃の条件で捏和し、界面活性剤含有混練物を得た。この界面活性剤含有混練物を穴径10mmのダイスを具備したペレッターダブル(不二パウダル(株)製、EXDFJS−100型)を用いて押し出しつつ、カッターで切断し(カッター周速は5m/s)長さ5〜30mm程度のペレット状界面活性剤含有成型物を得た。
次いで、得られたペレット状界面活性剤含有成型物に粉砕助剤としての粒子状A型ゼオライト(平均粒子径180μm)を3.2%相当量添加し、冷風(10℃、15m/s)共存下で直列3段に配置したフィッツミル(ホソカワミクロン(株)製、DKA−3)を用いて粉砕した(スクリーン穴径:1段目/2段目/3段目=12mm/6mm/3mm、回転数:1段目/2段目/3段目いずれも4700rpm)。
<粒子(C)の製造>
表3の組成に従って、コロプレックス160Z(微粉砕ピンミル)を使用し、供給量100kg/hr、ミルのディスク周速85m/secで粉砕を行って、粒子(C)を調製した。
【0030】
<粉末洗剤組成物の製造>
水平円筒型転動混合機(円筒直径585mm、円筒長さ490mm、容器131.7Lのドラム内部壁面に内部壁面とのクリアランス20mm、高さ45mmの邪魔板を2枚有するもの)で、充填率30容積%、回転数22rpm、25℃の条件で表記載の比で(A)粒子、(B)粒子、粒子(C)を加え、全体の量に対し0.5%相当量のノニオン界面活性剤と香料を噴霧しつつ、1分間転動し表面改質して粒子を得た。
得られた粒子の一部を着色するために、界面活性剤含有粒子をベルトコンベアで0.5m/sの速度で移送しつつ(ベルトコンベア上の界面活性剤含有粒子層の高30mm、層幅300mm)その表面に色素の20%水分散液を噴霧した。
その後、同水平円筒型転動混合機中で酵素やその他の粉体成分を混合することで粉末洗剤組成物を得た。
【0031】
<平均粒径の測定>
界面活性剤粒子(A)
各サンプル及びその混合物について、目開き1680μm、1410μm、1190μm、1000μm、710μm、500μm、350μm、250μm、149μm、の9段の篩と受け皿を用いて分級操作を行った。分級操作は、受け皿に目開きの小さな篩から目開きの大きな篩の順に積み重ね、最上部の1680μmの篩の上から100g/回のベースサンプルを入れ、蓋をしてロータップ型篩い振盪機((株)飯田製作所製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、10分間振動させた後、それぞれの篩及び受け皿上に残留したサンプルを篩目ごとに回収して、サンプルの質量を測定した。
受け皿と各篩との質量頻度を積算していくと、積算の質量頻度が、50%以上となる最初の篩の目開きをaμmとし、aμmよりも一段大きい篩の目開きをbμmとし、受け皿からaμmの篩までの質量頻度の積算をc%、またaμmの篩上の質量頻度をd%として、次式により平均粒子径(重量50%)を求めた。
【0032】
【数1】

【0033】
アルミノ珪酸塩粒子(B)
平均粒子径は、コールター社製LS−230 Particle Size Analyzerを使用し、体積基準の平均粒子径を求めた。
粒子(C)
平均粒子径は、コールター社製LS−230 Particle Size Analyzerを使用し、体積基準の平均粒子径を求めた。
<接触角測定法>
サンプル調整:スライドガラスに両面テープを貼り、粒子(C)を敷き詰めた後、余分な粉を払い落した。
測定法:温度20℃の水をサンプルに滴下後、30秒後の接触角を自動接触角計(CA−QIシリーズ、協和界面科学製)により測定した。5回の測定平均を、接触角とした。
<相対面積強度比R1/R2の算出方法>
得られた粉末洗剤組成物をPASセルに充填した。PASセルとしては、MTEC社製Photoacoustics Model 300型光音響検出器を使用した。
FT−IR/PASの測定は、PERKIN ELMER社製Spectrum One型赤外分光光度計を用いることにより行った。測定条件は分解能8cm-1、スキャン速度0.20cm/sec、積算16回とした。
粉末洗剤組成物のPASスペクトルにおいて、ラウリン酸ナトリウム、結晶性アルミノ珪酸塩の特性ピークをそれぞれ1560cm-1(−COO−の逆対称伸縮振動)、1009cm-1(Si−O−Siの逆対称伸縮振動)として、これらのピークの面積を読み取り各成分のIR強度とした。
なお、ピーク面積は、ピークの両端の谷を結んだベースラインとピーク形状を示すラインで囲まれた部分の面積を読み取った。
以上から読み取った粉末洗剤組成物中に含まれる粒子(C)中の有機物に由来するIR強度をO1、粉末洗剤組成物中に含まれるアルミノ珪酸塩粒子(B)中のアルミノ珪酸塩に由来するIR強度をZ1とし、相対面積強度R1=O1/Z1を算出した。
同様に、該粉末洗剤組成物を、メノウ乳鉢等で十分に粉砕して均一な状態(粒径74μm以上の粒子がなくなるまで)にし、別のPASセルに充填し、これを比較試料とした。この比較試料についても同様な操作で粉末洗剤組成物をすりつぶした後の粒子(C)中の有機物に由来するIR強度をO2、粉末洗剤組成物をすりつぶした後のアルミノ珪酸塩粒子(B)中のアルミノ珪酸塩に由来するIR強度をZ2とし、相対面積強度R2=O2/Z2を算出した。
上記R1、R2より、上記式(1)を用いて相対面積強度の比R1/R2を算出した。
【0034】
<嵩密度の測定>
嵩密度はJIS K3362に従って測定した。
<溶解性(低温凝集性)の評価>
三菱電機製二槽式洗濯機CW−C30A1のパルセータの4分割された扇状の窪みの1つの外周の近くに粉末洗剤組成物30.0gを集合状態で置き、これを崩さずに衣料1.5kg(木綿肌着50質量%、ポリエステル/綿混紡肌着50質量%)を洗濯槽に投入し、洗剤に直接水が当らないように10L/minの流量で5℃の水道水30Lを注水し、注水終了後に静置した。注水開始から3分間後、ソフト水流で攪拌を開始し、3分間攪拌した後に排水し、衣料及び洗濯槽に残留する粉末洗剤組成物の状態を下記の評価基準によって目視判定した。評価基準の◎、○、△を合格とした。また、下記記載の「凝集物」とは、洗剤粒子が凝集した直径3mm以上の塊をいう。
〔評価基準〕
◎:凝集物がない。
○:凝集物が殆どない。
△:凝集物が少量残留している。
×:凝集物が多量に残留している。
【0035】
<発塵性評価法>
柴田社製のデジタルダストインジケーターを高さ50cm、縦横30cmの密閉容器中の上部にセットし、洗剤組成物30gを高さ50cmから落下させ、落下後最大の発塵カウント数(cpm;カウントパーミニッツ)を読みとった。発塵カウント数と発塵の程度との関係は以下の通りであり、△以上を合格とした。
◎:20cpm以下
○:20cpm超、50cpm以下
△:50cpm超、100cpm以下
×:100cpm超
【0036】
また、アルミノ珪酸塩粒子(B)と粒子(C)との合計量に対する粒子(C)の量と、溶解性と発塵性の関係を図1に、図2にR1/R2と溶解性と発塵性の関係を示す。
図1から、C粒子の配合量が増加するにつれて、溶解性は向上する一方、発塵性はC粒子の配合量の増加につれて、悪化する傾向にあることがわかる。
図2から、P粒子表面にC粒子が多く存在するほど、溶解性が向上するが、過剰量存在すると発塵性が悪化する傾向にあることがわかる。





【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】






【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
実施例中で用いた原料を下記に示す。
界面活性剤粒子(A)
<界面活性剤>
・α−SF−Na:炭素数14:炭素数16=18:82のα−スルホ脂肪酸メチルエステルのナトリウム塩(ライオン(株)製、AI=70%、残部は未反応脂肪酸メチルエステル、硫酸ナトリウム、メチルサルフェート、過酸化水素、水等)
・LAS−K:直鎖アルキル(炭素数10〜14)ベンゼンスルホン酸(ライポンLH−200(ライオン(株)製)LAS−H純分96%)を界面活性剤組成物調製時に48%水酸化カリウム水溶液で中和する)。表1中の配合量は、LAS−Kとしての質量%を示す。
・AOS−K:炭素数14〜18のアルキル基をもつα−オレフィンスルホン酸カリウム(ライオン(株)製)
・石鹸:炭素数12〜18の脂肪酸ナトリウム(ライオン(株)製、純分:67%、タイター:40〜45℃、脂肪酸組成:C12:11.7%、C14:0.4%、C16:29.2%、C18F0(ステアリン酸):0.7%、C18F1(オレイン酸):56.8%、C18F2(リノール酸):1.2%、分子量:289)
・ノニオン界面活性剤:ECOROL26(ECOGREEN社製炭素数12〜16のアルキル基をもつアルコール)の酸化エチレン平均15モル付加体(純分90%、融点:43℃、HLB15.4)
【0043】
<水溶性高分子>
・MA剤:アクリル酸/マレイン酸コポリマーNa塩、アクアリックTL−400(日本触媒(株)製)(純分40%水溶液)
・PEG#6000:ライオン(株)製ポリエチレングリコール、商品名PEG#6000M
<無機化合物>
・A型ゼオライト:シルトンB(水澤化学(株)製、純分80%)
・炭酸カリウム:炭酸カリウム(粉末)(旭硝子(株)製、平均粒子径490μm、嵩密度1.30g/cm3
・硫酸ナトリウム:中性無水芒硝(日本化学工業(株)製)
・亜硫酸ナトリウム:無水亜硫酸曹達(神州化学(株)製)
<その他>
・色素:群青(大日精化工業(株)製、Ultramarine Blue)
・香料A:特開2002−146399号公報[表11]〜[表18]に示す香料組成物A
・香料B:特開2002−146399号公報[表11]〜[表18]に示す香料組成物B
・蛍光剤:チノパールCBS−X(チバスペシャルティケミカルズ)/チノパールAMS−GX(チバスペシャルティケミカルズ)=3/1(質量比)の混合物
【0044】
アルミノ珪酸塩粒子(B)
・A型ゼオライト:シルトンB(水澤化学(株)製、純分80%)
・P型ゼオライト:DOUCIL A24(イネオスシリカ社製)
【0045】
粒子(C)
<有機物>
・ラウリン酸:日本油脂(株)製、NAA−122、融点43℃
・パルミチン酸メチルエステル:ライオン(株)製、パステルM−16、融点30℃
<その他>
・炭酸ナトリウム:粒灰(旭硝子(株)製、平均粒子径320μm、嵩密度1.07g/cm3
(D)粒子
・酵素粒子A:カンナーゼ12T(ノボザイムズ製)/LIPEX100T(ノボザイムズ製)/ステインザイム12T(ノボザイムズ製)/セルザイム0.7T(ノボザイムズ製)=5/2/1/2(質量比)の混合物
・酵素粒子B:サビナーゼ12T(ノボザイムズ製)/LIPEX100T(ノボザイムズ製)/ステインザイム12T(ノボザイムズ製)/セルザイム0.7T(ノボザイムズ製)=5/2/1/2(質量比)の混合物
・表面処理無機化合物粒子:国際公開WO2004/094313号公報 第39〜40頁記載の製造方法1に従って製造した。
・漂白剤:三菱瓦斯化学(株)製、過炭酸ナトリウム、SPC−D、有効酸素量13.2%、平均粒子径760μm
・漂白活性化剤:国際公開WO2004/094313号公報 第55頁記載の漂白活性化剤造粒物Aの調製方法に従って製造した漂白活性化剤造粒物。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】アルミノ珪酸塩粒子(B)と粒子(C)との合計量に対する粒子(C)の量と、溶解性及び発塵性との関係を示す。
【図2】R1/R2と溶解性との関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤を10〜40%含み平均粒径が150μm以上の界面活性剤粒子(A)を、平均粒径が30μm未満のアルミノ珪酸塩粒子(B)と、
有機物を50%以上含み平均粒径が30μm未満であり接触角50°以上の粒子(C)とで表面処理してなる、複合粒子(P)を含有し、
下記式(1)で表される相対面積強度比R1/R2が1.01〜20である、
粉末洗剤組成物。

R1/R2=(O1/Z1)/(O2/Z2) (1)

(式中、
O1は、粉末洗剤組成物中に含まれる粒子(C)中の有機物に由来するIR強度を表し、Z1は、粉末洗剤組成物中に含まれるアルミノ珪酸塩粒子(B)中のアルミノ珪酸塩に由来するIR強度を表し、R1は、相対面積強度O1/Z1を表す;
O2は、粉末洗剤組成物をすりつぶした後の粒子(C)中の有機物に由来するIR強度を表し、Z2は、粉末洗剤組成物をすりつぶした後のアルミノ珪酸塩粒子(B)中のアルミノ珪酸塩に由来するIR強度を表し、R2は相対面積強度O2/Z2を表す。)
【請求項2】
(C)成分の有機物が脂肪酸及び/又はその塩であることを特徴とする請求項1に記載の粉末洗剤組成物。
【請求項3】
R1/R2が1.03〜10である請求項1又は2記載の粉末洗剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−9087(P2007−9087A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192814(P2005−192814)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】