低温損失および音響ノイズを低減したNMRイメージングシステム
磁気共鳴イメージングシステムは、トンネル状の有効内部空間において強い主磁場を発生させる装置を収容する外部低温容器(10)と、高周波励起装置と、内部空間の周囲の円筒リング状の空間に設置される一組のソレノイド勾配コイル(2)と、電子制御回路と、を含む。上記ドーナツ状の低温容器(10)は、室温に保たれた円筒状の内部空間を規定する真空容器(102)であって、その内側に一組のソレノイド勾配コイル(2)が設置される真空容器(102)と、20K〜80Kの範囲の温度に維持される少なくとも1つの熱シールド(103、104)と、5Kより低い温度に維持される冷却ボックス(105)と、強い主磁場を発生させる装置を支持する形成体(101)と、を同心円状に含む。さらに、音響ノイズおよび低温損失を減少させるために、上記一組のソレノイド勾配コイル(2)と上記真空容器(102)との間に少なくとも1つの追加封体(107)が設置され、上記追加封体(107)は、7×10-8Ωm以上の電気抵抗と前記外部低温容器(10)の他の各構成要素の特性周波数より低いあるいは同等である特性周波数とを有する伝導性材料伝導性の材料からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温損失および音響ノイズを低減したNMR(核磁気共鳴)イメージングシステムを提供する。
【0002】
本発明はまた、磁気共鳴イメージング(MRI)システムにおける音響ノイズおよび低温損失を低減する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
例えば、磁気共鳴イメージング装置の一例が欧州特許出願公開第1952170号(参考文献[1])に記載されている。
【0004】
図1に詳細に示すMRI装置7は、主に以下の要素を備えている。:
・マグネット1(このマグネット1は、対象領域4(対象物または患者5の画像化すべき部分)において、一定かつ略均一な(すなわち、均質な)主磁場B0ベクトルを生じさせる。最新の装置では、このマグネット1は、超伝導コイル11、12を含む。この超伝導コイル11、12を正常に機能させるためには、非常に低い温度まで冷却する必要がある。そのため、超伝導コイル11、12は、常圧で沸点が4.2Kである液体ヘリウムに浸漬されている。したがって、超伝導コイル11、12は、適切な低温タンク10に収容されている。(図2));
・一組のコイル2(このコイル2は、従来の導体(銅)を用いて作製され、主磁場の勾配を空間における3つの直交する方向(x、y、z)に生じさせるためのものである。ここで、軸Ozは、通常、主磁場の方向に伸びている。これらの磁場勾配が、所定のシーケンスで加えられることによって、画像構築の基礎となる空間のコーディングを行うことができる。磁気共鳴イメージングプロセスでは、非常に高い電流(典型的には数百アンペア)を勾配コイルにおいて非常に短期間(約百マイクロ秒のオーダー)で確立(または除去)する、あるいは、エコープラナーイメージング(EPI)におけるシーケンスのように、非常に高い電流を短期間で1キロヘルツ(kHz)に近い周波数を用いて反転する必要がある。);
・少なくとも1つのアンテナ3(このアンテナ3は、局地的な磁場の値に応じた周波数(例えば、3テスラ(T)の磁場における水のプロトンの場合、約127.729メガヘルツ(MHz))を用いて、対象領域における核磁気モメントの歳差運動を励起および検出するための高周波信号を送信および受信するためのものである。);
・電子システム(勾配パルスのための増幅器24〜26、高周波の発生検出器31など)およびシーケンス制御や画像再構築のためのデータ処理システム32〜34(図4参照)。
【0005】
主磁場B0ベクトルにさらされた勾配コイル21〜23(図3)の導体に電流を流すと、磁場および電流に対して垂直な方向にローレンツ力(またはラプラス力)と呼ばれる力が働く。この電流の確立、除去、あるいは反転の期間は非常に短いため、実際に機械的な衝撃が発生し、動作中のMRI装置の特徴的なノイズの原因となる。
【0006】
主磁場が弱く、勾配パルスの間隔が十分に広い場合は、全く耐えられるカチカチという音が聞こえる。しかしながら、最近の装置では、ますます強い勾配と非常に“強烈な”撮像シーケンス(例えばEPIシーケンス)とともに、ますます強い主磁場(参考文献[2]で言及されている、最上位機種の臨床装置における3T、実験的な装置における7T、開発中の装置における12T程度といったもの)が用いられている。勾配コイルがローレンツ力を受けることにより、患者を怖がらせかねない、耐えがたい音響ノイズが引き起こされ、耳保護具の装着が必要となるだけでなく、勾配コイルを破損しかねない機械的な振動が引き起こされる。
【0007】
参考文献[3]は、この分野における最近の事情を要約している。低温損失、すなわち、ヘリウム蒸発損にも、非常に大きな増加が見られる(参考文献[4]参照)。
【0008】
超伝導マグネットの低温封体(低温保持装置10)および勾配コイル2の構造、および勾配コイル−マグネット間の相互作用のメカニズムを以下に示す。
【0009】
低温保持装置10の各構成要素は、“膨らんだ”末端で接続された、薄い金属の円筒(厚さ2〜3ミリ、内径約1メートル、外径2メートル)で構成され、小さな略長方形の軸方向断面を有するドーナツ状の空間を形成している(図5および6参照)。ここで考慮されている問題では、勾配コイルに最も近い内側の円筒のみが大きな役割を果たす。これらの構成要素は、内側から外側に向かって:
・真空容器102(これは、通常ステンレス鋼からなる。いわゆる“インナーホール”あるいは“トンネル”と呼ばれる室温に保たれた円筒で、この円筒に勾配発生システム2が挿入される。);
・熱シールド103(これは、通常アルミニウムからなる。約80kelvins(K)の温度に維持される。);
・必要に応じて、第2熱シールド104(これは、良好な熱伝導材料からなる。約20Kに維持される。);
・ヘリウムタンク105(これは、“ヘリウム容器”あるいは“冷却ボックス”とも呼ばれ、通常ステンレス鋼からなる。マグネットが低い温度、例えば、超流体ヘリウム内で動作するため、常圧でヘリウムの沸点である4.2K以下の温度に保たれる。);および、
・形成体101(これは、一般的にアルミニウム合金からなる。超伝導コイル11、12を支持している。)、を含む。
【0010】
機械工学用語では、これらの薄い円筒状の封体(直径および長さに対して厚みが小さいもの)は、“シェル”と呼ばれる。これらの封体を構成する材料が等方性である場合(一般的に等方性であるが)、これらは機械的な観点から、密度ρ、および、2つの弾性定数である弾性率またはヤング率Eとポアソン比νとによって特徴付けられる。機械的な計算には、ラメ定数:
【数1】
が用いられる。
【0011】
係数μは、せん断率または剛性とも呼ばれ、Gで表される。
【0012】
電気的な観点からは、これらの材料は電気伝導率σによって特徴付けられる。
【0013】
勾配に関して最も単純な構造はz勾配であり、理論モデルとしては、マクスウェルコイルと呼ばれる。このコイルでは、軸Oz上で、
【数2】
の座標に位置する半径a0の2つの円形コイルが、同じ強さで逆方向の電流±Iを帯びている。これらのコイルは、原点O近傍の対象領域において、略均一な磁場(磁場変動に関して線形という用語が使われる)の成分Bzの勾配:
【数3】
を生じさせる。これらのマクスウェルコイルは、均一な磁場を発生させるヘルムホルツコイルに相当する。実際には、導体は限られた部分でジュール効果による熱を消散させなければならないので、必要な直線性を有する勾配の形成に適するように配置された電流の層になる(例えば、フランス特許第2588997号:参考文献[5]参照)。
【0014】
勾配コイルにおける電流のパルスによって、周囲の導体(特に、低温保持装置の封体)に電流が誘起される。この電流は“渦電流”と呼ばれ、コイルの影響を制限するのに重要である。この現象を起こすための最も効果的な方法の1つに、一組目のコイルの外側に一定の距離をおいて逆電流を有する二組目のコイルを設けることによって、“スクリーニング”あるいは“シールディング”を積極的に用いるという方法がある。ただし、所定の勾配を形成するのに、嵩が増えることと、より高い電力を必要とするという欠点がある。参考文献[5]に、この一例が示されている。導体に主磁場が及ぼす磁力は、電流の方向やコイルの半径を増やすか減らすかによってz勾配を発生させるため、軸Ozの径方向の発振と縦方向の発振とを組み合わせて、比較的単純な振動モードが得られる。
【0015】
磁場の成分Bzに勾配:
【数4】
あるいは、
【数5】
を発生させるコイルの最も一般的な実施形態では、“ゴレイコイル”と呼ばれる鞍状の導体が用いられる(図3参照)。参考文献[5]は、この実用的な実施形態の一例を記載しており、z勾配に関するスクリーニングはフランス特許第2621125号に説明されている通りに実施できる(参考文献[6])。ここで、電流の層を帯びる円筒は、磁力によってバナナ形状に湾曲しやすく、その場合の発振モードは、z勾配の場合より複雑である。
【0016】
これらの勾配コイルに特有な振動を減少させることは、本発明の主たる目的ではない:これについては、参考文献[1]において代替案が提案されている。本発明は主に、音響ノイズおよび低温損失の主な原因の1つとして現在認識されている、低温保持装置の封体において勾配コイルが誘起する渦電流および振動を低減することを目的とする。
【0017】
勾配−マグネット間の相互作用のメカニズムは、米国特許第6707302号(参考文献[7])および米国特許第7514928号(参考文献[8])において定性的に明確に分析されており、これらの文献は、有害な影響を低減可能な低温保持装置の内部配置を提案している。
【0018】
米国特許第7141974号および米国特許第7375526号(参考文献[9])は、渦電流およびその有害な影響を低減する他の手法を提案している。この手法は、銅などの良導体材料からなる追加封体を用いることにより、既知の積極的なスクリーニング(例えば、参考文献[6]参照)に消極的なスクリーニングを加えている。しかしながら、これによって得られる改善も、実際には不十分であった。
【0019】
したがって、様々なパラメータの影響をより良く理解し、実用的な配置を導き出すためには、正確で定量的なモデル化が必要である。
【0020】
低温保持装置−勾配コイルシステムは、一方は機械的に、他方は電磁気的に、偏微分方程式によって規定されている。主磁場B0ベクトルが存在しなければ、これら二組の方程式は独立している。これらが主磁場を介して結合されることで、問題が著しく複雑化する。
【0021】
機械的な式を導く1つの方法は、ラメ(Lame)のベクトル方式:
【数6】
であり、ここで、Uベクトルは対象点における変位ベクトルであり、Fベクトルは単位体積あたりの力の密度である。主磁場が存在しない場合、このFベクトルは重量まで減少し、各要素の支持体の大きさを除いて、この問題に及ぼす影響は重要ではない。しかし、主磁場が存在し、単位体積あたりの密度Jベクトルの電流が誘起されると、電磁気的な式:
【数7】
と結合させる項が存在する。
【0022】
ここでは説明していないが、他の機械的な式は、各構成要素の境界面条件(特に、封体を構成する円筒管の末端における境界面条件)に関係する。
【0023】
機械的な式と同様に、電磁気的な式もいくつかの方法で求めることができる。例えば、周知のマクスウェルの方程式による微分公式、あるいは以下の積分公式:
【数8】
によって導かれる。
【0024】
上記式において、JMベクトルは各封体のいずれか1点Mにおける渦電流の密度であり、UMベクトルは変位ベクトルであり、AMベクトルは同点の磁気ポテンシャルのベクトルである。AMベクトルは、勾配コイルにおける電流によって生じるベクトルポテンシャルA0Mベクトルすなわち励起ポテンシャルと、全渦電流によって点Mで生じるベクトルポテンシャルA´Mベクトルと、の合計である。第3の式の積分は、伝導性封体の全体の体積にわたって行われる。Pは流動点を表す。QPは点Pにおける単位体積あたりの電荷密度である。E´Mベクトルはこの電荷の分布によって点Mで生じる電場である。ここで、
【数9】
および
【数10】
であり、cは真空下における光の速さである。最後の式は、全ての点において有効であり、電荷の保存を表している。複雑化を避けるため、上記最後2つの式は単位体積あたりの電荷密度を用いて一般的な形式で表されている。実際には、この電荷の密度は表面のものであり、最後から2番目の式の体積積分が表面の積分に変換され、最後の式は導体の境界面条件に変換される。これらの式は、第1の式において、主磁場を介した機械的な式:
【数11】
と結合させる項が存在しない場合に、誘起される電流の値を求めるための周知の式である。
【0025】
実際には、これらの式はいわゆる変位電流を考慮しない近似式であるが、系の変動に特徴的な時間(ここでは、勾配パルスの立ち上がり時間であり、1マイクロ秒(μs)で<<300mとなる)で光が移動する距離と比較して、系のサイズ(メートルオーダー)が小さい場合、この近似は完全に正当化される。この近似は、電磁気学においては、準定常状態あるいは準永久レジーム近似としてよく知られている。これらの式の系は、広範にわたる文献で主題とされている様々な方法(有限要素、境界要素、モーメント法、スペクトル法または擬似スペクトル法など)を用いて解が得られる。
【0026】
任意の形状の勾配パルスに対する系の反応は、直接求められるものではなく、角周波数:
【数12】
の正弦波の励起に対する反応である。式が線形であるため、任意の形状の励起に対する反応は、そのフーリエ成分に対する反応を重畳することで得られる。
【0027】
変位、電流密度、および電荷密度の重ねあわせの原理があるが、励起が純粋な正弦波ではない場合、電流密度の二乗で表される消失電力は、電流密度を合計した後に計算しなければならない。
【0028】
観察される現象は、シェルにおける様々な振動モードに左右される。シェルの振動は、特に、航空(航空機やロケットなど)および造船(潜水艦など)の分野において、広範に検討されてきた。この主題に関する情報は、参考文献[10]および[11]に見出すことができる。
【0029】
単一円筒のシェルの一例として、軸Oz、平均半径a、厚さe、および長さ2bを有する簡略化されたモデルの円筒を検討する。この円筒を、均一な主磁場:
【数13】
にさらし、円筒の正中面xOyに対して対称で起点での振幅が勾配G0である2つのマクスウェルコイルに代表されるz勾配によって、角周波数ωで正弦的に励起する。
【0030】
円筒のシェルが取り得る振動モードは、非常に複雑であり得るが、“呼吸”モードと呼ばれる最も単純なモードは、平均半径aの薄い円筒の場合、式:
【数14】
で表される角周波数(この周波数は厚さと実質的に無関係である)の純粋な径方向への振動である。
【0031】
対応するピリオド:
【数15】
は、実質的に音波が円筒の外周を移動するのにかかる時間である。より正確には、固体内を伝播する2つのタイプの波、すなわち、縦波または圧縮波と呼ばれる速い波でかかる時間と横波またはせん断波と呼ばれる遅い波でかかる時間との中間の時間である。
【0032】
ある状況において励起され得る全ての振動モードは、特性周波数から推定される周波数を有し、同じオーダーの大きさにとどまる。
【0033】
この状況は、3つの長さのスケール、すなわち、円筒の半径a、厚さe、および、ある周波数における渦電流の分布に特徴的なシェルの厚さ:
【数16】
によって特徴付けられ、特に、ここで円筒の材料に特徴的な周波数:
【数17】
でのシェルの厚さδ0で特徴付けられる。一般的な材料を用いた場合、平均直径1mの円筒においてこの周波数f0は常に1000ヘルツ(Hz)〜2000Hzのオーダーにある。
アルミニウム:1704.6Hz
銅:1341.2Hz
ステンレス鋼:1559.9Hz
【0034】
問題の解は、下記の条件が満たされていれば簡単であろう。
e<<δ<<a
しかし、残念ながらこの条件は、対象となっている材料、すなわち、eとδ0がミリメートルオーダーで同じ大きさである材料には、適用できない。封体(ここでは円筒)の厚さにおける渦電流の分布は、均一ではなく、周波数およびB0ベクトルを介した結合に大きく依存するので、解を得るのに不可欠な要素である。以下の記載は、詳細に(電流分布、変位成分など)解決方法を示すものではないが、円筒全体における電力の消失を周波数の関数(“電力スペクトル”)として示している。振動、音響ノイズ、および消失電力は、実際には連動しており、消失電力が減少すれば、同時に全て減少する。
【0035】
例えば、図13は、以下の特性を有する銅円筒における励起の周波数f(Hz)の関数として、消失電力Pのスペクトルをワット(W)で示している。
a=0.45m
b=1m
e=5ミリメートル(mm)
ρ=8960キログラム/立方メートル(kg/m3)
E=138ギガパスカル(GPa)
ν=0.364
f0=1490.244Hz
σ=58メガジーメンス/メートル(MS/m)(100% IACS)
δ0=1.712mm
円筒は簡単に支持されており、末端は完全に自由である。マクスウェルコイルは、半径a0=0.3mで、主磁場B0=11.75Tにおいて、1メートル(mT/m)あたり振幅G0=100ミリテスラの勾配を発生させる。
【0036】
当業者は、自由に選択した方法で、これらの結果を検証するのに必要な全てのデータを利用可能である。
【0037】
しかしながら、計算上の記載と同程度に単純な構成(渦電流線は軸Ozを中心とする円であり、電流密度Jベクトルは方位成分まで減少し、単位体積あたりの電荷密度はゼロに等しく、変位ベクトルUベクトルは径方向の成分および軸方向または縦方向の成分を含み、方位成分はゼロである)においても、スペクトルは1080Hz近傍で非常に顕著なピークを有し、複雑化されている(図13、カーブA10参照)。
【0038】
薄い円筒シェルの理論により、径方向の動きを防止し軸方向の動きを許容する各末端壁で円筒の両末端が閉塞された場合の構成の固有周波数を、正確に分析して示すことができる。これらの周波数は、式:
【数18】
の解である。ここで、
【数19】
およびmは整数である。周波数は自由な末端の場合と同様である。例えば、m=2およびm=4の場合、ピーク周波数は、それぞれ2205Hzおよび4250Hz付近にある。
【0039】
消失電力が大きいので、勾配コイルを積極的にスクリーニングする必要がある。
【0040】
計算は線形弾性(すなわち、発振の振幅が小さい)の枠内で有効である。したがって、この計算により得られた値は、基本的に理論上の値であり、実際はその値に達する前に非線形な現象が起こり、破断が生じる。
【0041】
得られた値は、勾配の振幅の二乗に比例し、主磁場の増加関数である。
【0042】
図5および図6に示すような4つの封体102〜105を有する低温保持装置と、コイル形成体101とを備え、主磁場が7Tである実際のシステムを想定する。図7は、慎重にスクリーニングされた振幅50mT/mのz勾配で得た、これらの封体、あるいは、形成体101〜105のそれぞれにおいて消失される電力の各スペクトルA101、A102、A103、A104、A105を示す。このスクリーニングは、決して完璧ではありえないため、この例は、最良の市販勾配コイルが有するスクリーニング性能に左右される。冷却ボックス105および形成体101において消失される電力のスペクトルは、ヘリウムの蒸発に対応する。
【0043】
x勾配またはy勾配は、周波数のピーク形状および配置が若干異なっても、励起された振動モードもまた異なるので、同様の結果を生じる。
【0044】
音響ノイズは、ステンレス鋼製の第1封体102の振動(カーブA102)に主に起因し、ヘリウム損失は、主に第4の封体において消失されるエネルギー(冷却ボックス105−カーブA105)に起因する。コイル形成体101において消失される電力(カーブA101)は、著しく低い。
【0045】
勾配パルスあるいはEPIシーケンスが、スペクトルの一部を励起するフーリエ成分を含まないことは実際には不可能であり、大きな電力消失および音響ノイズを伴う強い振動を引き起こしていることが分かる。通常用いられるEPIシーケンスの基本周波数は、約600Hz〜700Hzであり、最も強い高調波は、第3高調波、すなわち、1800Hz〜2100Hzである。これは、スペクトルの一部にかかるので、絶対に避けなければならない。このような状況は、実験によってはっきりと実証されている(参考文献[12]参照)。
【0046】
米国特許第6707302号および米国特許第7514928号(参考文献[7]および[8])によれば、振動およびその影響を減少させるために、低温保持装置の封体を変更することが提案されている。これらの変更は、他の機械的要件あるいは低温要件と競合しており、その効果は先験的に保証されていない。さらに、一旦マグネットが構築され、低温保持装置が閉塞された後での変更は、全く不可能ではないにしろ、非常に困難である。
【0047】
米国特許第7375526号(参考文献[9])によれば、勾配コイルと低温保持装置の内側の円筒との間に、非常に良好な電気伝導体である銅などの材料からなる円筒を挿入する解決方法が提案されている。
【0048】
厚さ10mmの銅円筒を上記の低温保持システムに挿入することによって、図8に示すスペクトルが得られる。ここで、追加されたカーブA106は、銅円筒において消失される電力のスペクトルを表す。大きな改善が見られるが、1000Hz〜1500Hz付近に見られる非常に有害なピークは消えていない。
【発明の概要】
【0049】
本発明は上述の欠点を克服するものであり、磁気共鳴イメージング装置における音響ノイズおよび低温損失を、装置全体の設計を変更する必要なしに、簡単かつ安価により大きく減少させることを目的とする。
【0050】
本発明は、低温損失および音響ノイズを低減した磁気共鳴イメージングシステムを用いて、この目的を達成する。当該システムは、軸Zを有するトンネル形状の有効内部空間において強い主磁場B0ベクトルを発生させる超伝導コイルと、
高周波の励起と、それに応じて上記有効内部空間に定置された人体または対象物から発せられる高周波信号の処理とを行う手段と、
強い主磁場B0ベクトルを発生させる上記超伝導コイルを収容する外部低温容器と上記有効内部空間との間に位置する円筒リング状の空間に設置され、強い主磁場B0ベクトルに追加の磁場成分を重畳する、一組のソレノイド勾配コイルと、
電子制御回路と、を備え、
上記ドーナツ状の外部低温容器は、室温に保たれた軸Zを有するトンネル形状の上記有効内部空間を規定し、その内側には上記一組のソレノイド勾配コイルが設置され、
上記外部低温容器は、上記有効内部空間から順に、真空容器と、20K〜80Kの範囲の温度に維持される少なくとも1つの第1熱シールドと、5Kより低い温度に維持されるヘリウム貯蔵容器と、強い主磁場B0ベクトルを発生させる超伝導コイルを支持する形成体と、を備えている。
当該システムは、
上記外部低温容器がさらに、上記一組のソレノイド勾配コイルと上記真空容器との間に設置される少なくとも1つの追加封体を含み、
上記追加封体が、7×10-8Ωm以上の電気抵抗と上記外部低温容器の他の各構成要素の特性周波数より低いあるいは同等である純粋に径方向の振動特性周波数とを有する伝導性材料からなり、
上記伝導性材料が、鉛、スズ、スズ合金、および、鉛と、スズ、ビスマス、カドミウムの少なくとも1つの元素との合金のうちの1つの材料からなることを特徴とする。
【0051】
第1の実施形態において、振動が直接伝達することを避けるために、上記追加封体は、上記一組のソレノイド勾配コイルあるいは上記真空容器のいずれにも機械的に接続されていない中間管を含んでもよい。
【0052】
別の実施形態において、上記追加封体は、上記一組のソレノイド勾配コイルと機械的に接続された中間管を含んでもよい。
【0053】
さらに別の実施形態において、上記追加封体は、上記真空容器と機械的に接続された中間管を含んでもよい。
【0054】
上記追加封体は、接着剤あるいは溶接によって、上記真空容器と機械的に接続された中間管を含んでもよい。
【0055】
上記真空容器は、有利には、ステンレス鋼製である。
【0056】
特に所定の実施形態において、上記低温容器は、80K以下の温度に維持される第1熱シールドおよび20K以下の温度に維持される第2熱シールドを含む。
【0057】
いずれか1つまたは両方の上記熱シールドは、有利には、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。
【0058】
上記冷却ボックスは、有利には、ステンレス鋼製である。
【0059】
上記形成体は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金で構成できる。
【0060】
例えば、上記追加封体は、0.4m〜0.5mの範囲の平均半径、8mm〜12mmの範囲の厚さ、および2m〜4mの範囲の長さを有する管状構造を含む。
【0061】
上記システムは、上記に規定される特徴を有する2つまたは3つの同心追加封体を含んでもよい。
【0062】
本発明はまた、磁気共鳴イメージングシステムにおける音響ノイズおよび低温損失を低減する方法を提供する。このシステムは、軸Zを有するトンネル形状の有効内部空間において強い主磁場B0ベクトルを発生させる超伝導コイルと、
高周波の励起と、それに応じて上記有効内部空間に定置された人体または対象物から発せられる高周波信号の処理とを行う手段と、
強い主磁場B0ベクトルを発生させる上記超伝導コイルを収容する外部低温容器と上記有効内部空間との間に位置する円筒リング状の空間に設置され、強い主磁場B0ベクトルに追加の磁場成分を重畳する、一組のソレノイド勾配コイルと、
電子制御回路と、を備え、
上記ドーナツ状の外部低温容器は、室温に保たれた軸Zを有するトンネル形状の上記有効内部空間を規定し、その内側には一組のソレノイド勾配コイルが設置され、
上記外部低温容器は、上記有効内部空間から順に、真空容器と、20K〜80Kの範囲の温度に維持される少なくとも1つの第1熱シールドと、5Kより低い温度に維持されるヘリウム貯蔵容器と、強い主磁場B0ベクトルを発生させる超伝導コイルを支持する形成体と、を備える。
当該方法は、上記外部低温容器における上記一組のソレノイド勾配コイルと上記真空容器との間に少なくとも1つの追加封体を挿入する工程を含み、
上記追加封体が、7×10-8Ωm以上の電気抵抗と上記外部低温容器の他の各構成要素の特性周波数より低いあるいは同等である純粋に径方向の振動特性周波数とを有する伝導性材料からなり、
上記伝導性材料が、鉛、スズ、スズ合金、および、鉛と、スズ、ビスマス、カドミウムの少なくとも1つの元素との合金のうちの1つの材料からなることを特徴とする。本発明は、勾配コイルと低温保持装置の内部管との間に挿入される追加封体(あるいは、利用可能な空間の機能を有して挿入された連続する封体)の必要性に言及している。この封体は、下記の特性を有している必要がある:
低温保持装置内の封体の特性周波数とできるだけ異なる特性周波数f0を有し、参考文献[9]において推奨されるような、銅などの通常の良導体に当てはまらないこと;
むしろ伝導性が低く高い渦電流を帯びない、参考文献[9]に教示されているものとは全く逆の導体であること。
【図面の簡単な説明】
【0063】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照し、以下の特定の本発明の実施形態に関する記載から明らかになる。
【図1】本発明を適用可能な磁気共鳴イメージング装置の一例を示す軸方向断面の模式図である。
【図2】図1に示すような磁気共鳴イメージング装置において利用可能な低温保持装置の一例を示す模式的な切欠透視図である。
【図3】図1に示すような装置において利用可能な一組の勾配コイルの模式透視図である。
【図4】MRI装置と接続されている電子機器およびコンピュータ制御の模式図である。
【図5】MRI装置において利用可能な低温保持装置の既知の一例を示す軸方向半断面の模式図である。
【図6】図6に示す低温保持装置の横断面である。
【図7】図5および図6に示す低温保持装置の各構成要素における周波数関数としての電力スペクトルのカーブである。
【図8】図5および図6に示す低温保持装置に銅などの非常に良好な電気伝導体材料からなる円筒を追加した場合の、各構成要素における周波数関数としての電力スペクトルのカーブである。
【図9】機械的に自由な追加封体と共に、本発明の磁気共鳴イメージング装置において利用可能な低温保持装置の第1実施例の横断面模式図である。
【図10】図9に示す低温保持装置の各構成要素における周波数関数としての電力スペクトルのカーブである。
【図11】一組の勾配コイルと機械的に接続された追加封体と共に、本発明の磁気共鳴イメージング装置において利用可能な低温保持装置の第2実施例の横断面模式図である。
【図12】真空容器と機械的に接続された追加封体と共に、本発明の磁気共鳴イメージング装置において利用可能な低温保持装置の第2実施例の横断面模式図である。
【図13】銅円筒を含む理論上の一例における周波数関数としての電力スペクトルのカーブである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明は、図1〜図6を参照して上記で説明したような磁気共鳴イメージングシステム7に適用される。この磁気共鳴イメージングシステム7は、室温に保たれ勾配発生システム2を収容する例えばステンレス鋼製の真空容器102と、アルミニウムなどの良好な熱伝導体材料からなる少なくとも1つの熱シールド103および104と、ヘリウムの沸点である4.2Kに保たれた、例えばステンレス鋼製の冷却ボックス105と、を含む低温保持装置10を用いる。
【0065】
封体102〜105は、同心上にある。冷却ボックス105は、主磁場を生じさせるマグネット1を構成する超伝導コイルを支持する、例えばアルミニウム合金製の形成体101を包含する。
【0066】
低温保持装置10と相互に作用する勾配発生システム2は、図3に示すように、X方向の勾配コイル21、X方向に対して垂直なY方向の勾配コイル22、およびXおよびY方向に対して垂直なZ方向の勾配コイル23を用いて作製でき、イメージング装置の軸に沿って整列されている。この勾配発生システム2については、再度説明しない。
【0067】
低温保持装置10の各構成要素102〜105は、半球形の末端によって接続された薄い金属の円筒(厚さ2〜3ミリ、内径約1メートル、および、外径2メートル)で構成され、略長方形の軸方向断面を有する小さなドーナツ状の空間を形成する(図5参照)。シェルを構成するこれらの封体は、それぞれ温度が異なる。
【0068】
例えば図9は、室温に保たれた真空容器102、約80Kの温度に保たれた第1熱シールド103、約20Kの温度に保たれた第2熱シールド104、およびヘリウムの沸点である4.2Kに保たれたヘリウム貯蔵容器あるいは冷却ボックス105を示す。マグネット1を構成する形成体101および超伝導コイルもまた、ヘリウムの沸点に保たれる。
【0069】
本発明によれば、勾配発生システム2と、低温保持装置10の内側の円筒102との間に、下記の特徴を有する少なくとも1つの追加円筒封体107が挿入されている:
低温保持装置における他の封体102〜105の特性周波数とできるだけ異なる特性周波数f0を有し、参考文献[9]で推奨されるような銅などの通常の良導体に当てはまらないこと;および、
むしろ伝導性が低く高い渦電流を帯びない、参考文献[9]に教示されているものとは全く逆の導体であること。
【0070】
また、利用可能な空間として機能し、同じ特性を有する連続する複数の追加封体、例えば2つのあるいは3つの追加封体107を挿入することも可能である。しかしながら、ひとつの封体で既に、低温保持装置の既存構造全体を変更することなく、かなりの利点が得られる。
【0071】
追加封体107に求められる第1の特性について述べると、f0についての上記説明は、ヤング率が低く単位体積あたりの密度が高い、あるいはその逆の材料を用いる必要があることを表している。直径1mの円筒の特性周波数は以下の通りである。
ベリリウム:3968.8Hz
鉛:421.0Hz
スズ:892.3Hz
ウラン:1080.8Hz
最初の2つの材料は、最も“極端な”周波数を有するが、ベリリウムおよびその化合物はその毒性により実際には使用不可能である。したがって、この材料は除去されなければならない。さらに、抵抗が4×10-8Ωmと低すぎるため、第2の基準を満たせない。これに対し、鉛は抵抗が21×10-8Ωmと比較的高く、特にスズ、ビスマスまたはカドミウムを用いて鉛合金を作製することにより特性周波数および抵抗の両方を最適な値に“調整する”ことができるため、極めて適している。鉛合金の特性の例は、例えば参考文献[13]および[14]に示されている。
【0072】
代替の実施形態として、追加封体107は、直径1mの円筒で特性周波数が892.3Hzで抵抗が10×10-8Ωmであるスズを用いて実施することも可能である。さらに劣化ウランがあるが、特性周波数があまりに高く(直径1mの円筒で1080.8Hz)実用化は難しい。
【0073】
図9に示す実施形態において、振動が直接伝達することを防ぐために、勾配発生システム2あるいは低温保持装置の真空容器102に機械的に接続されていない管状の追加中間封体107が用いられている。
【0074】
例えば、追加中間封体107は、平均半径0.44m、厚さ10mm、長さ3.6mの大きさで、通常の鉛の円筒から構成することができる。これにより、図10に示すエネルギー消失スペクトルが得られる。このスペクトルから、追加封体(図7)を含まない、あるいは、銅などの非常に良好な導体である材料からなる円筒封体(図8:銅円筒において消失された電力のスペクトルを表すカーブA106を参照)を含む先行技術の装置と比べて、勾配の有害な効果が著しく低減していること、特に、1000Hz〜1500Hz近傍におけるピークがなくなっていることがわかる。
【0075】
図10において、カーブA107は、鉛円筒107において消失された電力のスペクトルを表す。この電力スペクトルA107は、周波数が1700Hzオーダーに達するまでに鉛円筒107において消失された電力は約200Wより低い状態であることを示し、他の全ての封体101〜105の電力スペクトルA101〜A105では、電力の劇的な低減が見られる。
【0076】
特に、通常音響ノイズの主な原因となる第1ステンレス鋼封体102に関する電力スペクトルA102は、500Hz付近にわずか100Wオーダーのピークを有している。一方、追加封体を含まない先行技術のシステム(図7参照)では、このピークは1700Hz付近で1300〜2000Wの範囲にあり、参考文献[9]に教示されるように(図8参照)銅の伝導性封体を挿入したとしても、1200Hz付近で750Wオーダーのピークが存在している。
【0077】
同様に、本発明のシステムでは、鉛からなる円筒状の追加封体のおかげで冷却ボックス105の電力スペクトルA105における消失ピーク(図10参照)が400Hz付近の周波数で約50Wオーダー以下である。一方、追加封体を含まない先行技術のシステム(図7参照)では、このピークは1700Hz付近で600Wオーダーであり、参考文献[9]に教示されるように(図8参照)銅の伝導性封体を挿入したとしても、1300Hz付近で250Wオーダーのピークが存在している。
【0078】
追加封体107の電気抵抗が高いほど結果は良くなるが、明らかに、効果がない絶縁性の材料は選択するべきではない。つまり、所定の装置(勾配コイルおよび低温保持装置)に利用な可能材料の中から最適な組み合わせを選択する。円筒107の長さおよび厚さも同様に、所定の勾配発生システムおよび低温保持装置について最良の結果が得られるように調整可能である。
【0079】
一般に、従来のMRIシステムにおける追加封体107は、平均半径0.4m〜0.5mの範囲、厚さ8mm〜12mmの範囲、および長さ2m〜4mの範囲の管状構造を有する。
【0080】
図9に示す実施形態では、勾配発生システム2または低温保持装置10と機械的に接続されていない中間管107が用いられている。これは、振動が直接伝達されないようにするためである。ただし、他の実施形態によれば、鉛あるいは同等の材料の円筒108は、その固有振動を変更する、とりわけ減少させるために、一組の勾配コイル2と機械的に接続されていてもよい(図11)。
【0081】
鉛あるいは同等な材料からなる円筒状の層109もまた、その振動特性を変更するために低温保持装置10の内側の管102と機械的に接続されて(例えば、接着または溶接されて)いてもよい(図12)。
【0082】
勾配発生システム2および低温保持装置10について、1つ以上の鉛円筒107、108、または109を含む最良の構成、および、その鉛円筒を勾配発生システム2または低温保持装置10の内側の管102と機械的に接続するか否かは、上述の方法を用いてモデル化することにより決定できる。
【0083】
なお、好ましい実施形態は、できるだけ低い特性周波数f0と少なくとも鉛と同程度の高い電気抵抗とを有する鉛合金または鉛からなる機械的に自由な中間管107であることには変わりない。
【0084】
また、スズまたはスズ合金からなる中間管を用いた実施形態によれば、銅あるいは他の非常に良好な電気伝導体材料からなる管を用いた実施形態と比べて、わずかに性能は劣るものの、音響ノイズおよび低温損失の低減が大きく改善された代替の解決策が得られる。
【0085】
<引用参照文献>
[1] 欧州特許出願公開第1952170号、Guy Aubert
[2] The Whole Body 11.7 T MRI Magnet for Iseult/INUMAC Project, Vedrine, P.; Aubert, G.; Beaudet, F.; Belorgey, J.; Beltramelli, J.; Berriaud, C.; Bredy, P.; Chesny, P.; Donati, A.; Gilgrass, G.; Grunblatt, G.; Juster, F.P.; Molinie, F.; Meuris, C.; Nunio, F.; Payn, A.; Quettier, L.; Rey, J.M.; Schild, T.; Sinanna, A., IEEE Transactions on Applied Superconductivity, vol.18, no.2, pp.868-873, June 2008
[3] MRI Acoustic Noise: Sources and Mitigation, William A. Edelstein, ISMRM High Field Workshop, March 25-28, 2007
[4] Problems of measurement of the helium boil off rate of tomographic magnets, Pavel Hanzelka & Jaroslav Horky, Cryogenics 39, pp. 647-649, 1999
[5] フランス特許第2588997号、Guy Aubert
[6] フランス特許第2621125号、Guy Aubert
[7] 米国特許第6707302号、Guenter Riess
[8] 米国特許第7514928号、Michael Westphal
[9] 米国特許第7141974号および米国特許第7375526号、William A. Edelstein et al.
[10] An improved first-approximation theory for thin shells, J. Lyell Sanders, Jr, NASA, 1959
[11] A set of simple, accurate equations for circular cylindrical elastic shells, James G. Simmonds, Int. J. Solids Structures, 1966, vol 2 pp 525-541
[12] Echo Planar Imaging at 4 Tesla With Minimum Acoustic Noise, D.G. Tomasi & T. Ernst, Journal of magnetic resonance imaging, 18, pp. 128-130, 2003
[13] http://www.indium.com/products/alloychart.php
[14] Structure, mechanical properties and electrical resistivity of rapidly solidified Pb-Sn-Cd and Pb-Bi-Sn-Cd alloys, Mustafa Kamal, Abu Bakr El-Blediwi, Mohamed Bashir Karman, Journal of material science, materials in electronics 9, pp. 425-428, 1998
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温損失および音響ノイズを低減したNMR(核磁気共鳴)イメージングシステムを提供する。
【0002】
本発明はまた、磁気共鳴イメージング(MRI)システムにおける音響ノイズおよび低温損失を低減する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
例えば、磁気共鳴イメージング装置の一例が欧州特許出願公開第1952170号(参考文献[1])に記載されている。
【0004】
図1に詳細に示すMRI装置7は、主に以下の要素を備えている。:
・マグネット1(このマグネット1は、対象領域4(対象物または患者5の画像化すべき部分)において、一定かつ略均一な(すなわち、均質な)主磁場B0ベクトルを生じさせる。最新の装置では、このマグネット1は、超伝導コイル11、12を含む。この超伝導コイル11、12を正常に機能させるためには、非常に低い温度まで冷却する必要がある。そのため、超伝導コイル11、12は、常圧で沸点が4.2Kである液体ヘリウムに浸漬されている。したがって、超伝導コイル11、12は、適切な低温タンク10に収容されている。(図2));
・一組のコイル2(このコイル2は、従来の導体(銅)を用いて作製され、主磁場の勾配を空間における3つの直交する方向(x、y、z)に生じさせるためのものである。ここで、軸Ozは、通常、主磁場の方向に伸びている。これらの磁場勾配が、所定のシーケンスで加えられることによって、画像構築の基礎となる空間のコーディングを行うことができる。磁気共鳴イメージングプロセスでは、非常に高い電流(典型的には数百アンペア)を勾配コイルにおいて非常に短期間(約百マイクロ秒のオーダー)で確立(または除去)する、あるいは、エコープラナーイメージング(EPI)におけるシーケンスのように、非常に高い電流を短期間で1キロヘルツ(kHz)に近い周波数を用いて反転する必要がある。);
・少なくとも1つのアンテナ3(このアンテナ3は、局地的な磁場の値に応じた周波数(例えば、3テスラ(T)の磁場における水のプロトンの場合、約127.729メガヘルツ(MHz))を用いて、対象領域における核磁気モメントの歳差運動を励起および検出するための高周波信号を送信および受信するためのものである。);
・電子システム(勾配パルスのための増幅器24〜26、高周波の発生検出器31など)およびシーケンス制御や画像再構築のためのデータ処理システム32〜34(図4参照)。
【0005】
主磁場B0ベクトルにさらされた勾配コイル21〜23(図3)の導体に電流を流すと、磁場および電流に対して垂直な方向にローレンツ力(またはラプラス力)と呼ばれる力が働く。この電流の確立、除去、あるいは反転の期間は非常に短いため、実際に機械的な衝撃が発生し、動作中のMRI装置の特徴的なノイズの原因となる。
【0006】
主磁場が弱く、勾配パルスの間隔が十分に広い場合は、全く耐えられるカチカチという音が聞こえる。しかしながら、最近の装置では、ますます強い勾配と非常に“強烈な”撮像シーケンス(例えばEPIシーケンス)とともに、ますます強い主磁場(参考文献[2]で言及されている、最上位機種の臨床装置における3T、実験的な装置における7T、開発中の装置における12T程度といったもの)が用いられている。勾配コイルがローレンツ力を受けることにより、患者を怖がらせかねない、耐えがたい音響ノイズが引き起こされ、耳保護具の装着が必要となるだけでなく、勾配コイルを破損しかねない機械的な振動が引き起こされる。
【0007】
参考文献[3]は、この分野における最近の事情を要約している。低温損失、すなわち、ヘリウム蒸発損にも、非常に大きな増加が見られる(参考文献[4]参照)。
【0008】
超伝導マグネットの低温封体(低温保持装置10)および勾配コイル2の構造、および勾配コイル−マグネット間の相互作用のメカニズムを以下に示す。
【0009】
低温保持装置10の各構成要素は、“膨らんだ”末端で接続された、薄い金属の円筒(厚さ2〜3ミリ、内径約1メートル、外径2メートル)で構成され、小さな略長方形の軸方向断面を有するドーナツ状の空間を形成している(図5および6参照)。ここで考慮されている問題では、勾配コイルに最も近い内側の円筒のみが大きな役割を果たす。これらの構成要素は、内側から外側に向かって:
・真空容器102(これは、通常ステンレス鋼からなる。いわゆる“インナーホール”あるいは“トンネル”と呼ばれる室温に保たれた円筒で、この円筒に勾配発生システム2が挿入される。);
・熱シールド103(これは、通常アルミニウムからなる。約80kelvins(K)の温度に維持される。);
・必要に応じて、第2熱シールド104(これは、良好な熱伝導材料からなる。約20Kに維持される。);
・ヘリウムタンク105(これは、“ヘリウム容器”あるいは“冷却ボックス”とも呼ばれ、通常ステンレス鋼からなる。マグネットが低い温度、例えば、超流体ヘリウム内で動作するため、常圧でヘリウムの沸点である4.2K以下の温度に保たれる。);および、
・形成体101(これは、一般的にアルミニウム合金からなる。超伝導コイル11、12を支持している。)、を含む。
【0010】
機械工学用語では、これらの薄い円筒状の封体(直径および長さに対して厚みが小さいもの)は、“シェル”と呼ばれる。これらの封体を構成する材料が等方性である場合(一般的に等方性であるが)、これらは機械的な観点から、密度ρ、および、2つの弾性定数である弾性率またはヤング率Eとポアソン比νとによって特徴付けられる。機械的な計算には、ラメ定数:
【数1】
が用いられる。
【0011】
係数μは、せん断率または剛性とも呼ばれ、Gで表される。
【0012】
電気的な観点からは、これらの材料は電気伝導率σによって特徴付けられる。
【0013】
勾配に関して最も単純な構造はz勾配であり、理論モデルとしては、マクスウェルコイルと呼ばれる。このコイルでは、軸Oz上で、
【数2】
の座標に位置する半径a0の2つの円形コイルが、同じ強さで逆方向の電流±Iを帯びている。これらのコイルは、原点O近傍の対象領域において、略均一な磁場(磁場変動に関して線形という用語が使われる)の成分Bzの勾配:
【数3】
を生じさせる。これらのマクスウェルコイルは、均一な磁場を発生させるヘルムホルツコイルに相当する。実際には、導体は限られた部分でジュール効果による熱を消散させなければならないので、必要な直線性を有する勾配の形成に適するように配置された電流の層になる(例えば、フランス特許第2588997号:参考文献[5]参照)。
【0014】
勾配コイルにおける電流のパルスによって、周囲の導体(特に、低温保持装置の封体)に電流が誘起される。この電流は“渦電流”と呼ばれ、コイルの影響を制限するのに重要である。この現象を起こすための最も効果的な方法の1つに、一組目のコイルの外側に一定の距離をおいて逆電流を有する二組目のコイルを設けることによって、“スクリーニング”あるいは“シールディング”を積極的に用いるという方法がある。ただし、所定の勾配を形成するのに、嵩が増えることと、より高い電力を必要とするという欠点がある。参考文献[5]に、この一例が示されている。導体に主磁場が及ぼす磁力は、電流の方向やコイルの半径を増やすか減らすかによってz勾配を発生させるため、軸Ozの径方向の発振と縦方向の発振とを組み合わせて、比較的単純な振動モードが得られる。
【0015】
磁場の成分Bzに勾配:
【数4】
あるいは、
【数5】
を発生させるコイルの最も一般的な実施形態では、“ゴレイコイル”と呼ばれる鞍状の導体が用いられる(図3参照)。参考文献[5]は、この実用的な実施形態の一例を記載しており、z勾配に関するスクリーニングはフランス特許第2621125号に説明されている通りに実施できる(参考文献[6])。ここで、電流の層を帯びる円筒は、磁力によってバナナ形状に湾曲しやすく、その場合の発振モードは、z勾配の場合より複雑である。
【0016】
これらの勾配コイルに特有な振動を減少させることは、本発明の主たる目的ではない:これについては、参考文献[1]において代替案が提案されている。本発明は主に、音響ノイズおよび低温損失の主な原因の1つとして現在認識されている、低温保持装置の封体において勾配コイルが誘起する渦電流および振動を低減することを目的とする。
【0017】
勾配−マグネット間の相互作用のメカニズムは、米国特許第6707302号(参考文献[7])および米国特許第7514928号(参考文献[8])において定性的に明確に分析されており、これらの文献は、有害な影響を低減可能な低温保持装置の内部配置を提案している。
【0018】
米国特許第7141974号および米国特許第7375526号(参考文献[9])は、渦電流およびその有害な影響を低減する他の手法を提案している。この手法は、銅などの良導体材料からなる追加封体を用いることにより、既知の積極的なスクリーニング(例えば、参考文献[6]参照)に消極的なスクリーニングを加えている。しかしながら、これによって得られる改善も、実際には不十分であった。
【0019】
したがって、様々なパラメータの影響をより良く理解し、実用的な配置を導き出すためには、正確で定量的なモデル化が必要である。
【0020】
低温保持装置−勾配コイルシステムは、一方は機械的に、他方は電磁気的に、偏微分方程式によって規定されている。主磁場B0ベクトルが存在しなければ、これら二組の方程式は独立している。これらが主磁場を介して結合されることで、問題が著しく複雑化する。
【0021】
機械的な式を導く1つの方法は、ラメ(Lame)のベクトル方式:
【数6】
であり、ここで、Uベクトルは対象点における変位ベクトルであり、Fベクトルは単位体積あたりの力の密度である。主磁場が存在しない場合、このFベクトルは重量まで減少し、各要素の支持体の大きさを除いて、この問題に及ぼす影響は重要ではない。しかし、主磁場が存在し、単位体積あたりの密度Jベクトルの電流が誘起されると、電磁気的な式:
【数7】
と結合させる項が存在する。
【0022】
ここでは説明していないが、他の機械的な式は、各構成要素の境界面条件(特に、封体を構成する円筒管の末端における境界面条件)に関係する。
【0023】
機械的な式と同様に、電磁気的な式もいくつかの方法で求めることができる。例えば、周知のマクスウェルの方程式による微分公式、あるいは以下の積分公式:
【数8】
によって導かれる。
【0024】
上記式において、JMベクトルは各封体のいずれか1点Mにおける渦電流の密度であり、UMベクトルは変位ベクトルであり、AMベクトルは同点の磁気ポテンシャルのベクトルである。AMベクトルは、勾配コイルにおける電流によって生じるベクトルポテンシャルA0Mベクトルすなわち励起ポテンシャルと、全渦電流によって点Mで生じるベクトルポテンシャルA´Mベクトルと、の合計である。第3の式の積分は、伝導性封体の全体の体積にわたって行われる。Pは流動点を表す。QPは点Pにおける単位体積あたりの電荷密度である。E´Mベクトルはこの電荷の分布によって点Mで生じる電場である。ここで、
【数9】
および
【数10】
であり、cは真空下における光の速さである。最後の式は、全ての点において有効であり、電荷の保存を表している。複雑化を避けるため、上記最後2つの式は単位体積あたりの電荷密度を用いて一般的な形式で表されている。実際には、この電荷の密度は表面のものであり、最後から2番目の式の体積積分が表面の積分に変換され、最後の式は導体の境界面条件に変換される。これらの式は、第1の式において、主磁場を介した機械的な式:
【数11】
と結合させる項が存在しない場合に、誘起される電流の値を求めるための周知の式である。
【0025】
実際には、これらの式はいわゆる変位電流を考慮しない近似式であるが、系の変動に特徴的な時間(ここでは、勾配パルスの立ち上がり時間であり、1マイクロ秒(μs)で<<300mとなる)で光が移動する距離と比較して、系のサイズ(メートルオーダー)が小さい場合、この近似は完全に正当化される。この近似は、電磁気学においては、準定常状態あるいは準永久レジーム近似としてよく知られている。これらの式の系は、広範にわたる文献で主題とされている様々な方法(有限要素、境界要素、モーメント法、スペクトル法または擬似スペクトル法など)を用いて解が得られる。
【0026】
任意の形状の勾配パルスに対する系の反応は、直接求められるものではなく、角周波数:
【数12】
の正弦波の励起に対する反応である。式が線形であるため、任意の形状の励起に対する反応は、そのフーリエ成分に対する反応を重畳することで得られる。
【0027】
変位、電流密度、および電荷密度の重ねあわせの原理があるが、励起が純粋な正弦波ではない場合、電流密度の二乗で表される消失電力は、電流密度を合計した後に計算しなければならない。
【0028】
観察される現象は、シェルにおける様々な振動モードに左右される。シェルの振動は、特に、航空(航空機やロケットなど)および造船(潜水艦など)の分野において、広範に検討されてきた。この主題に関する情報は、参考文献[10]および[11]に見出すことができる。
【0029】
単一円筒のシェルの一例として、軸Oz、平均半径a、厚さe、および長さ2bを有する簡略化されたモデルの円筒を検討する。この円筒を、均一な主磁場:
【数13】
にさらし、円筒の正中面xOyに対して対称で起点での振幅が勾配G0である2つのマクスウェルコイルに代表されるz勾配によって、角周波数ωで正弦的に励起する。
【0030】
円筒のシェルが取り得る振動モードは、非常に複雑であり得るが、“呼吸”モードと呼ばれる最も単純なモードは、平均半径aの薄い円筒の場合、式:
【数14】
で表される角周波数(この周波数は厚さと実質的に無関係である)の純粋な径方向への振動である。
【0031】
対応するピリオド:
【数15】
は、実質的に音波が円筒の外周を移動するのにかかる時間である。より正確には、固体内を伝播する2つのタイプの波、すなわち、縦波または圧縮波と呼ばれる速い波でかかる時間と横波またはせん断波と呼ばれる遅い波でかかる時間との中間の時間である。
【0032】
ある状況において励起され得る全ての振動モードは、特性周波数から推定される周波数を有し、同じオーダーの大きさにとどまる。
【0033】
この状況は、3つの長さのスケール、すなわち、円筒の半径a、厚さe、および、ある周波数における渦電流の分布に特徴的なシェルの厚さ:
【数16】
によって特徴付けられ、特に、ここで円筒の材料に特徴的な周波数:
【数17】
でのシェルの厚さδ0で特徴付けられる。一般的な材料を用いた場合、平均直径1mの円筒においてこの周波数f0は常に1000ヘルツ(Hz)〜2000Hzのオーダーにある。
アルミニウム:1704.6Hz
銅:1341.2Hz
ステンレス鋼:1559.9Hz
【0034】
問題の解は、下記の条件が満たされていれば簡単であろう。
e<<δ<<a
しかし、残念ながらこの条件は、対象となっている材料、すなわち、eとδ0がミリメートルオーダーで同じ大きさである材料には、適用できない。封体(ここでは円筒)の厚さにおける渦電流の分布は、均一ではなく、周波数およびB0ベクトルを介した結合に大きく依存するので、解を得るのに不可欠な要素である。以下の記載は、詳細に(電流分布、変位成分など)解決方法を示すものではないが、円筒全体における電力の消失を周波数の関数(“電力スペクトル”)として示している。振動、音響ノイズ、および消失電力は、実際には連動しており、消失電力が減少すれば、同時に全て減少する。
【0035】
例えば、図13は、以下の特性を有する銅円筒における励起の周波数f(Hz)の関数として、消失電力Pのスペクトルをワット(W)で示している。
a=0.45m
b=1m
e=5ミリメートル(mm)
ρ=8960キログラム/立方メートル(kg/m3)
E=138ギガパスカル(GPa)
ν=0.364
f0=1490.244Hz
σ=58メガジーメンス/メートル(MS/m)(100% IACS)
δ0=1.712mm
円筒は簡単に支持されており、末端は完全に自由である。マクスウェルコイルは、半径a0=0.3mで、主磁場B0=11.75Tにおいて、1メートル(mT/m)あたり振幅G0=100ミリテスラの勾配を発生させる。
【0036】
当業者は、自由に選択した方法で、これらの結果を検証するのに必要な全てのデータを利用可能である。
【0037】
しかしながら、計算上の記載と同程度に単純な構成(渦電流線は軸Ozを中心とする円であり、電流密度Jベクトルは方位成分まで減少し、単位体積あたりの電荷密度はゼロに等しく、変位ベクトルUベクトルは径方向の成分および軸方向または縦方向の成分を含み、方位成分はゼロである)においても、スペクトルは1080Hz近傍で非常に顕著なピークを有し、複雑化されている(図13、カーブA10参照)。
【0038】
薄い円筒シェルの理論により、径方向の動きを防止し軸方向の動きを許容する各末端壁で円筒の両末端が閉塞された場合の構成の固有周波数を、正確に分析して示すことができる。これらの周波数は、式:
【数18】
の解である。ここで、
【数19】
およびmは整数である。周波数は自由な末端の場合と同様である。例えば、m=2およびm=4の場合、ピーク周波数は、それぞれ2205Hzおよび4250Hz付近にある。
【0039】
消失電力が大きいので、勾配コイルを積極的にスクリーニングする必要がある。
【0040】
計算は線形弾性(すなわち、発振の振幅が小さい)の枠内で有効である。したがって、この計算により得られた値は、基本的に理論上の値であり、実際はその値に達する前に非線形な現象が起こり、破断が生じる。
【0041】
得られた値は、勾配の振幅の二乗に比例し、主磁場の増加関数である。
【0042】
図5および図6に示すような4つの封体102〜105を有する低温保持装置と、コイル形成体101とを備え、主磁場が7Tである実際のシステムを想定する。図7は、慎重にスクリーニングされた振幅50mT/mのz勾配で得た、これらの封体、あるいは、形成体101〜105のそれぞれにおいて消失される電力の各スペクトルA101、A102、A103、A104、A105を示す。このスクリーニングは、決して完璧ではありえないため、この例は、最良の市販勾配コイルが有するスクリーニング性能に左右される。冷却ボックス105および形成体101において消失される電力のスペクトルは、ヘリウムの蒸発に対応する。
【0043】
x勾配またはy勾配は、周波数のピーク形状および配置が若干異なっても、励起された振動モードもまた異なるので、同様の結果を生じる。
【0044】
音響ノイズは、ステンレス鋼製の第1封体102の振動(カーブA102)に主に起因し、ヘリウム損失は、主に第4の封体において消失されるエネルギー(冷却ボックス105−カーブA105)に起因する。コイル形成体101において消失される電力(カーブA101)は、著しく低い。
【0045】
勾配パルスあるいはEPIシーケンスが、スペクトルの一部を励起するフーリエ成分を含まないことは実際には不可能であり、大きな電力消失および音響ノイズを伴う強い振動を引き起こしていることが分かる。通常用いられるEPIシーケンスの基本周波数は、約600Hz〜700Hzであり、最も強い高調波は、第3高調波、すなわち、1800Hz〜2100Hzである。これは、スペクトルの一部にかかるので、絶対に避けなければならない。このような状況は、実験によってはっきりと実証されている(参考文献[12]参照)。
【0046】
米国特許第6707302号および米国特許第7514928号(参考文献[7]および[8])によれば、振動およびその影響を減少させるために、低温保持装置の封体を変更することが提案されている。これらの変更は、他の機械的要件あるいは低温要件と競合しており、その効果は先験的に保証されていない。さらに、一旦マグネットが構築され、低温保持装置が閉塞された後での変更は、全く不可能ではないにしろ、非常に困難である。
【0047】
米国特許第7375526号(参考文献[9])によれば、勾配コイルと低温保持装置の内側の円筒との間に、非常に良好な電気伝導体である銅などの材料からなる円筒を挿入する解決方法が提案されている。
【0048】
厚さ10mmの銅円筒を上記の低温保持システムに挿入することによって、図8に示すスペクトルが得られる。ここで、追加されたカーブA106は、銅円筒において消失される電力のスペクトルを表す。大きな改善が見られるが、1000Hz〜1500Hz付近に見られる非常に有害なピークは消えていない。
【発明の概要】
【0049】
本発明は上述の欠点を克服するものであり、磁気共鳴イメージング装置における音響ノイズおよび低温損失を、装置全体の設計を変更する必要なしに、簡単かつ安価により大きく減少させることを目的とする。
【0050】
本発明は、低温損失および音響ノイズを低減した磁気共鳴イメージングシステムを用いて、この目的を達成する。当該システムは、軸Zを有するトンネル形状の有効内部空間において強い主磁場B0ベクトルを発生させる超伝導コイルと、
高周波の励起と、それに応じて上記有効内部空間に定置された人体または対象物から発せられる高周波信号の処理とを行う手段と、
強い主磁場B0ベクトルを発生させる上記超伝導コイルを収容する外部低温容器と上記有効内部空間との間に位置する円筒リング状の空間に設置され、強い主磁場B0ベクトルに追加の磁場成分を重畳する、一組のソレノイド勾配コイルと、
電子制御回路と、を備え、
上記ドーナツ状の外部低温容器は、室温に保たれた軸Zを有するトンネル形状の上記有効内部空間を規定し、その内側には上記一組のソレノイド勾配コイルが設置され、
上記外部低温容器は、上記有効内部空間から順に、真空容器と、20K〜80Kの範囲の温度に維持される少なくとも1つの第1熱シールドと、5Kより低い温度に維持されるヘリウム貯蔵容器と、強い主磁場B0ベクトルを発生させる超伝導コイルを支持する形成体と、を備えている。
当該システムは、
上記外部低温容器がさらに、上記一組のソレノイド勾配コイルと上記真空容器との間に設置される少なくとも1つの追加封体を含み、
上記追加封体が、7×10-8Ωm以上の電気抵抗と上記外部低温容器の他の各構成要素の特性周波数より低いあるいは同等である純粋に径方向の振動特性周波数とを有する伝導性材料からなり、
上記伝導性材料が、鉛、スズ、スズ合金、および、鉛と、スズ、ビスマス、カドミウムの少なくとも1つの元素との合金のうちの1つの材料からなることを特徴とする。
【0051】
第1の実施形態において、振動が直接伝達することを避けるために、上記追加封体は、上記一組のソレノイド勾配コイルあるいは上記真空容器のいずれにも機械的に接続されていない中間管を含んでもよい。
【0052】
別の実施形態において、上記追加封体は、上記一組のソレノイド勾配コイルと機械的に接続された中間管を含んでもよい。
【0053】
さらに別の実施形態において、上記追加封体は、上記真空容器と機械的に接続された中間管を含んでもよい。
【0054】
上記追加封体は、接着剤あるいは溶接によって、上記真空容器と機械的に接続された中間管を含んでもよい。
【0055】
上記真空容器は、有利には、ステンレス鋼製である。
【0056】
特に所定の実施形態において、上記低温容器は、80K以下の温度に維持される第1熱シールドおよび20K以下の温度に維持される第2熱シールドを含む。
【0057】
いずれか1つまたは両方の上記熱シールドは、有利には、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。
【0058】
上記冷却ボックスは、有利には、ステンレス鋼製である。
【0059】
上記形成体は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金で構成できる。
【0060】
例えば、上記追加封体は、0.4m〜0.5mの範囲の平均半径、8mm〜12mmの範囲の厚さ、および2m〜4mの範囲の長さを有する管状構造を含む。
【0061】
上記システムは、上記に規定される特徴を有する2つまたは3つの同心追加封体を含んでもよい。
【0062】
本発明はまた、磁気共鳴イメージングシステムにおける音響ノイズおよび低温損失を低減する方法を提供する。このシステムは、軸Zを有するトンネル形状の有効内部空間において強い主磁場B0ベクトルを発生させる超伝導コイルと、
高周波の励起と、それに応じて上記有効内部空間に定置された人体または対象物から発せられる高周波信号の処理とを行う手段と、
強い主磁場B0ベクトルを発生させる上記超伝導コイルを収容する外部低温容器と上記有効内部空間との間に位置する円筒リング状の空間に設置され、強い主磁場B0ベクトルに追加の磁場成分を重畳する、一組のソレノイド勾配コイルと、
電子制御回路と、を備え、
上記ドーナツ状の外部低温容器は、室温に保たれた軸Zを有するトンネル形状の上記有効内部空間を規定し、その内側には一組のソレノイド勾配コイルが設置され、
上記外部低温容器は、上記有効内部空間から順に、真空容器と、20K〜80Kの範囲の温度に維持される少なくとも1つの第1熱シールドと、5Kより低い温度に維持されるヘリウム貯蔵容器と、強い主磁場B0ベクトルを発生させる超伝導コイルを支持する形成体と、を備える。
当該方法は、上記外部低温容器における上記一組のソレノイド勾配コイルと上記真空容器との間に少なくとも1つの追加封体を挿入する工程を含み、
上記追加封体が、7×10-8Ωm以上の電気抵抗と上記外部低温容器の他の各構成要素の特性周波数より低いあるいは同等である純粋に径方向の振動特性周波数とを有する伝導性材料からなり、
上記伝導性材料が、鉛、スズ、スズ合金、および、鉛と、スズ、ビスマス、カドミウムの少なくとも1つの元素との合金のうちの1つの材料からなることを特徴とする。本発明は、勾配コイルと低温保持装置の内部管との間に挿入される追加封体(あるいは、利用可能な空間の機能を有して挿入された連続する封体)の必要性に言及している。この封体は、下記の特性を有している必要がある:
低温保持装置内の封体の特性周波数とできるだけ異なる特性周波数f0を有し、参考文献[9]において推奨されるような、銅などの通常の良導体に当てはまらないこと;
むしろ伝導性が低く高い渦電流を帯びない、参考文献[9]に教示されているものとは全く逆の導体であること。
【図面の簡単な説明】
【0063】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照し、以下の特定の本発明の実施形態に関する記載から明らかになる。
【図1】本発明を適用可能な磁気共鳴イメージング装置の一例を示す軸方向断面の模式図である。
【図2】図1に示すような磁気共鳴イメージング装置において利用可能な低温保持装置の一例を示す模式的な切欠透視図である。
【図3】図1に示すような装置において利用可能な一組の勾配コイルの模式透視図である。
【図4】MRI装置と接続されている電子機器およびコンピュータ制御の模式図である。
【図5】MRI装置において利用可能な低温保持装置の既知の一例を示す軸方向半断面の模式図である。
【図6】図6に示す低温保持装置の横断面である。
【図7】図5および図6に示す低温保持装置の各構成要素における周波数関数としての電力スペクトルのカーブである。
【図8】図5および図6に示す低温保持装置に銅などの非常に良好な電気伝導体材料からなる円筒を追加した場合の、各構成要素における周波数関数としての電力スペクトルのカーブである。
【図9】機械的に自由な追加封体と共に、本発明の磁気共鳴イメージング装置において利用可能な低温保持装置の第1実施例の横断面模式図である。
【図10】図9に示す低温保持装置の各構成要素における周波数関数としての電力スペクトルのカーブである。
【図11】一組の勾配コイルと機械的に接続された追加封体と共に、本発明の磁気共鳴イメージング装置において利用可能な低温保持装置の第2実施例の横断面模式図である。
【図12】真空容器と機械的に接続された追加封体と共に、本発明の磁気共鳴イメージング装置において利用可能な低温保持装置の第2実施例の横断面模式図である。
【図13】銅円筒を含む理論上の一例における周波数関数としての電力スペクトルのカーブである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明は、図1〜図6を参照して上記で説明したような磁気共鳴イメージングシステム7に適用される。この磁気共鳴イメージングシステム7は、室温に保たれ勾配発生システム2を収容する例えばステンレス鋼製の真空容器102と、アルミニウムなどの良好な熱伝導体材料からなる少なくとも1つの熱シールド103および104と、ヘリウムの沸点である4.2Kに保たれた、例えばステンレス鋼製の冷却ボックス105と、を含む低温保持装置10を用いる。
【0065】
封体102〜105は、同心上にある。冷却ボックス105は、主磁場を生じさせるマグネット1を構成する超伝導コイルを支持する、例えばアルミニウム合金製の形成体101を包含する。
【0066】
低温保持装置10と相互に作用する勾配発生システム2は、図3に示すように、X方向の勾配コイル21、X方向に対して垂直なY方向の勾配コイル22、およびXおよびY方向に対して垂直なZ方向の勾配コイル23を用いて作製でき、イメージング装置の軸に沿って整列されている。この勾配発生システム2については、再度説明しない。
【0067】
低温保持装置10の各構成要素102〜105は、半球形の末端によって接続された薄い金属の円筒(厚さ2〜3ミリ、内径約1メートル、および、外径2メートル)で構成され、略長方形の軸方向断面を有する小さなドーナツ状の空間を形成する(図5参照)。シェルを構成するこれらの封体は、それぞれ温度が異なる。
【0068】
例えば図9は、室温に保たれた真空容器102、約80Kの温度に保たれた第1熱シールド103、約20Kの温度に保たれた第2熱シールド104、およびヘリウムの沸点である4.2Kに保たれたヘリウム貯蔵容器あるいは冷却ボックス105を示す。マグネット1を構成する形成体101および超伝導コイルもまた、ヘリウムの沸点に保たれる。
【0069】
本発明によれば、勾配発生システム2と、低温保持装置10の内側の円筒102との間に、下記の特徴を有する少なくとも1つの追加円筒封体107が挿入されている:
低温保持装置における他の封体102〜105の特性周波数とできるだけ異なる特性周波数f0を有し、参考文献[9]で推奨されるような銅などの通常の良導体に当てはまらないこと;および、
むしろ伝導性が低く高い渦電流を帯びない、参考文献[9]に教示されているものとは全く逆の導体であること。
【0070】
また、利用可能な空間として機能し、同じ特性を有する連続する複数の追加封体、例えば2つのあるいは3つの追加封体107を挿入することも可能である。しかしながら、ひとつの封体で既に、低温保持装置の既存構造全体を変更することなく、かなりの利点が得られる。
【0071】
追加封体107に求められる第1の特性について述べると、f0についての上記説明は、ヤング率が低く単位体積あたりの密度が高い、あるいはその逆の材料を用いる必要があることを表している。直径1mの円筒の特性周波数は以下の通りである。
ベリリウム:3968.8Hz
鉛:421.0Hz
スズ:892.3Hz
ウラン:1080.8Hz
最初の2つの材料は、最も“極端な”周波数を有するが、ベリリウムおよびその化合物はその毒性により実際には使用不可能である。したがって、この材料は除去されなければならない。さらに、抵抗が4×10-8Ωmと低すぎるため、第2の基準を満たせない。これに対し、鉛は抵抗が21×10-8Ωmと比較的高く、特にスズ、ビスマスまたはカドミウムを用いて鉛合金を作製することにより特性周波数および抵抗の両方を最適な値に“調整する”ことができるため、極めて適している。鉛合金の特性の例は、例えば参考文献[13]および[14]に示されている。
【0072】
代替の実施形態として、追加封体107は、直径1mの円筒で特性周波数が892.3Hzで抵抗が10×10-8Ωmであるスズを用いて実施することも可能である。さらに劣化ウランがあるが、特性周波数があまりに高く(直径1mの円筒で1080.8Hz)実用化は難しい。
【0073】
図9に示す実施形態において、振動が直接伝達することを防ぐために、勾配発生システム2あるいは低温保持装置の真空容器102に機械的に接続されていない管状の追加中間封体107が用いられている。
【0074】
例えば、追加中間封体107は、平均半径0.44m、厚さ10mm、長さ3.6mの大きさで、通常の鉛の円筒から構成することができる。これにより、図10に示すエネルギー消失スペクトルが得られる。このスペクトルから、追加封体(図7)を含まない、あるいは、銅などの非常に良好な導体である材料からなる円筒封体(図8:銅円筒において消失された電力のスペクトルを表すカーブA106を参照)を含む先行技術の装置と比べて、勾配の有害な効果が著しく低減していること、特に、1000Hz〜1500Hz近傍におけるピークがなくなっていることがわかる。
【0075】
図10において、カーブA107は、鉛円筒107において消失された電力のスペクトルを表す。この電力スペクトルA107は、周波数が1700Hzオーダーに達するまでに鉛円筒107において消失された電力は約200Wより低い状態であることを示し、他の全ての封体101〜105の電力スペクトルA101〜A105では、電力の劇的な低減が見られる。
【0076】
特に、通常音響ノイズの主な原因となる第1ステンレス鋼封体102に関する電力スペクトルA102は、500Hz付近にわずか100Wオーダーのピークを有している。一方、追加封体を含まない先行技術のシステム(図7参照)では、このピークは1700Hz付近で1300〜2000Wの範囲にあり、参考文献[9]に教示されるように(図8参照)銅の伝導性封体を挿入したとしても、1200Hz付近で750Wオーダーのピークが存在している。
【0077】
同様に、本発明のシステムでは、鉛からなる円筒状の追加封体のおかげで冷却ボックス105の電力スペクトルA105における消失ピーク(図10参照)が400Hz付近の周波数で約50Wオーダー以下である。一方、追加封体を含まない先行技術のシステム(図7参照)では、このピークは1700Hz付近で600Wオーダーであり、参考文献[9]に教示されるように(図8参照)銅の伝導性封体を挿入したとしても、1300Hz付近で250Wオーダーのピークが存在している。
【0078】
追加封体107の電気抵抗が高いほど結果は良くなるが、明らかに、効果がない絶縁性の材料は選択するべきではない。つまり、所定の装置(勾配コイルおよび低温保持装置)に利用な可能材料の中から最適な組み合わせを選択する。円筒107の長さおよび厚さも同様に、所定の勾配発生システムおよび低温保持装置について最良の結果が得られるように調整可能である。
【0079】
一般に、従来のMRIシステムにおける追加封体107は、平均半径0.4m〜0.5mの範囲、厚さ8mm〜12mmの範囲、および長さ2m〜4mの範囲の管状構造を有する。
【0080】
図9に示す実施形態では、勾配発生システム2または低温保持装置10と機械的に接続されていない中間管107が用いられている。これは、振動が直接伝達されないようにするためである。ただし、他の実施形態によれば、鉛あるいは同等の材料の円筒108は、その固有振動を変更する、とりわけ減少させるために、一組の勾配コイル2と機械的に接続されていてもよい(図11)。
【0081】
鉛あるいは同等な材料からなる円筒状の層109もまた、その振動特性を変更するために低温保持装置10の内側の管102と機械的に接続されて(例えば、接着または溶接されて)いてもよい(図12)。
【0082】
勾配発生システム2および低温保持装置10について、1つ以上の鉛円筒107、108、または109を含む最良の構成、および、その鉛円筒を勾配発生システム2または低温保持装置10の内側の管102と機械的に接続するか否かは、上述の方法を用いてモデル化することにより決定できる。
【0083】
なお、好ましい実施形態は、できるだけ低い特性周波数f0と少なくとも鉛と同程度の高い電気抵抗とを有する鉛合金または鉛からなる機械的に自由な中間管107であることには変わりない。
【0084】
また、スズまたはスズ合金からなる中間管を用いた実施形態によれば、銅あるいは他の非常に良好な電気伝導体材料からなる管を用いた実施形態と比べて、わずかに性能は劣るものの、音響ノイズおよび低温損失の低減が大きく改善された代替の解決策が得られる。
【0085】
<引用参照文献>
[1] 欧州特許出願公開第1952170号、Guy Aubert
[2] The Whole Body 11.7 T MRI Magnet for Iseult/INUMAC Project, Vedrine, P.; Aubert, G.; Beaudet, F.; Belorgey, J.; Beltramelli, J.; Berriaud, C.; Bredy, P.; Chesny, P.; Donati, A.; Gilgrass, G.; Grunblatt, G.; Juster, F.P.; Molinie, F.; Meuris, C.; Nunio, F.; Payn, A.; Quettier, L.; Rey, J.M.; Schild, T.; Sinanna, A., IEEE Transactions on Applied Superconductivity, vol.18, no.2, pp.868-873, June 2008
[3] MRI Acoustic Noise: Sources and Mitigation, William A. Edelstein, ISMRM High Field Workshop, March 25-28, 2007
[4] Problems of measurement of the helium boil off rate of tomographic magnets, Pavel Hanzelka & Jaroslav Horky, Cryogenics 39, pp. 647-649, 1999
[5] フランス特許第2588997号、Guy Aubert
[6] フランス特許第2621125号、Guy Aubert
[7] 米国特許第6707302号、Guenter Riess
[8] 米国特許第7514928号、Michael Westphal
[9] 米国特許第7141974号および米国特許第7375526号、William A. Edelstein et al.
[10] An improved first-approximation theory for thin shells, J. Lyell Sanders, Jr, NASA, 1959
[11] A set of simple, accurate equations for circular cylindrical elastic shells, James G. Simmonds, Int. J. Solids Structures, 1966, vol 2 pp 525-541
[12] Echo Planar Imaging at 4 Tesla With Minimum Acoustic Noise, D.G. Tomasi & T. Ernst, Journal of magnetic resonance imaging, 18, pp. 128-130, 2003
[13] http://www.indium.com/products/alloychart.php
[14] Structure, mechanical properties and electrical resistivity of rapidly solidified Pb-Sn-Cd and Pb-Bi-Sn-Cd alloys, Mustafa Kamal, Abu Bakr El-Blediwi, Mohamed Bashir Karman, Journal of material science, materials in electronics 9, pp. 425-428, 1998
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温損失および音響ノイズを低減した核磁気共鳴イメージングシステムであって、
軸Zを有するトンネル形状の有効内部空間(4)において強い主磁場B0ベクトルを発生させる超伝導コイル(1)と、
高周波の励起と、それに応じて前記有効内部空間(4)に定置された人体(5)または対象物から発せられる高周波信号の処理とを行う手段(3)と、
強い主磁場B0ベクトルを発生させる前記超伝導コイル(1)を収容する外部低温容器(10)と前記有効内部空間(4)との間に位置する円筒リング状の空間に設置され、強い主磁場B0ベクトルに追加の磁場成分を重畳する、一組のソレノイド勾配コイル(2)と、
電子制御回路(31〜34、24〜26)と、を備え、
前記ドーナツ状の外部低温容器(10)は、室温に保たれた軸Zを有するトンネル形状の前記有効内部空間を規定し、その内側には一組のソレノイド勾配コイル(2)が設置され、
前記外部低温容器(10)は、前記有効内部空間(4)から順に、真空容器(102)と、20K〜80Kの範囲の温度に維持される少なくとも1つの第1熱シールド(103)と、5Kより低い温度に維持されるヘリウム貯蔵容器と、強い主磁場B0ベクトルを発生させる超伝導コイル(1)を支持する形成体(101)と、を備え、
当該核磁気共鳴イメージングシステムは、
前記外部低温容器(10)が、前記一組のソレノイド勾配コイル(2)と前記真空容器(102)との間に設置される少なくとも1つの追加封体(107;108;109)をさらに含み、
前記追加封体(107;108;109)が、7×10-8Ωm以上の電気抵抗と、前記外部低温容器(10)の他の各構成要素の特性周波数より低いあるいは同等である純粋に径方向の振動特性周波数とを有する伝導性材料からなり、
前記伝導性材料が、鉛、スズ、スズ合金、および、鉛と、スズ、ビスマス、カドミウムの少なくとも1つの元素との合金のうちの1つの材料からなることを特徴とする、核磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項2】
前記一組のソレノイド勾配コイル(2)と前記真空容器(102)との間に配置された管であって、それらと機械的に接続されていない管によって前記追加封体(107)が構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記追加封体(108)が、前記一組のソレノイド勾配コイル(2)と機械的に接続された管によって構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記追加封体(109)が、前記真空容器(102)と機械的に接続された管によって構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記追加封体(109)が、前記真空容器(102)と接着剤あるいは溶接によって機械的に接続された管によって構成されることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記低温容器(10)が、80K以下の温度で維持される前記第1熱シールド(103)と、20K以下の温度で維持される第2熱シールド(104)とを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1熱シールド(103、104)が、アルミニウムあるいはアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記真空容器(102)および前記ヘリウム貯蔵容器(105)が、ステンレス鋼からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記形成体(101)が、アルミニウムあるいはアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記追加封体(107;108;109)が、0.4m〜0.5mの範囲の平均半径、8mm〜12mmの範囲の厚さ、および2m〜4mの範囲の長さを有する管状構造を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
当該システムが、前記一組のソレノイド勾配コイル(2)と前記真空容器(102)との間に配置された2つまたは3つの同心追加封体(107;108;109)を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
磁気共鳴イメージングシステムにおける音響ノイズおよび低温損失を低減する方法であって、
前記システムは、軸Zを有するトンネル形状の有効内部空間(4)において強い主磁場B0ベクトルを発生させる超伝導コイル(1)と、
高周波の励起と、それに応じて前記有効内部空間(4)に定置された人体(5)または対象物から発せられる高周波信号の処理とを行う手段(3)と、
強い主磁場B0ベクトルを発生させる前記超伝導コイル(1)を収容する外部低温容器(10)と前記有効内部空間(4)との間に位置する円筒リング状の空間に設置され、強い主磁場B0ベクトルに追加の磁場成分を重畳する、一組のソレノイド勾配コイル(2)と、
電子制御回路(31〜34、24〜26)と、を備え、
前記ドーナツ状の外部低温容器(10)は、室温に保たれた軸Zを有するトンネル形状の前記有効内部空間を規定し、その内側には一組のソレノイド勾配コイル(2)が設置され、
前記外部低温容器(10)は、前記有効内部空間(4)から順に、真空容器(102)と、20K〜80Kの範囲の温度に維持される少なくとも1つの第1熱シールド(103)と、5Kより低い温度に維持されるヘリウム貯蔵容器と、強い主磁場B0ベクトルを発生させる前記超伝導コイル(1)を支持する形成体(101)と、を備え、
当該方法は、
前記外部低温容器(10)における前記一組のソレノイド勾配コイル(2)と前記真空容器(102)との間に少なくとも1つの追加封体(107;108;109)を挿入する工程を含み、
前記追加封体(107;108;109)が、7×10-8Ωm以上の電気抵抗と、前記外部低温容器(10)の他の各構成要素の特性周波数より低いあるいは同等である純粋に径方向の振動特性周波数とを有する伝導性材料からなり、
前記伝導性材料が、鉛、スズ、スズ合金、および、鉛と、スズ、ビスマス、カドミウムの少なくとも1つの元素との合金のうちの1つの材料からなることを特徴とする方法。
【請求項1】
低温損失および音響ノイズを低減した核磁気共鳴イメージングシステムであって、
軸Zを有するトンネル形状の有効内部空間(4)において強い主磁場B0ベクトルを発生させる超伝導コイル(1)と、
高周波の励起と、それに応じて前記有効内部空間(4)に定置された人体(5)または対象物から発せられる高周波信号の処理とを行う手段(3)と、
強い主磁場B0ベクトルを発生させる前記超伝導コイル(1)を収容する外部低温容器(10)と前記有効内部空間(4)との間に位置する円筒リング状の空間に設置され、強い主磁場B0ベクトルに追加の磁場成分を重畳する、一組のソレノイド勾配コイル(2)と、
電子制御回路(31〜34、24〜26)と、を備え、
前記ドーナツ状の外部低温容器(10)は、室温に保たれた軸Zを有するトンネル形状の前記有効内部空間を規定し、その内側には一組のソレノイド勾配コイル(2)が設置され、
前記外部低温容器(10)は、前記有効内部空間(4)から順に、真空容器(102)と、20K〜80Kの範囲の温度に維持される少なくとも1つの第1熱シールド(103)と、5Kより低い温度に維持されるヘリウム貯蔵容器と、強い主磁場B0ベクトルを発生させる超伝導コイル(1)を支持する形成体(101)と、を備え、
当該核磁気共鳴イメージングシステムは、
前記外部低温容器(10)が、前記一組のソレノイド勾配コイル(2)と前記真空容器(102)との間に設置される少なくとも1つの追加封体(107;108;109)をさらに含み、
前記追加封体(107;108;109)が、7×10-8Ωm以上の電気抵抗と、前記外部低温容器(10)の他の各構成要素の特性周波数より低いあるいは同等である純粋に径方向の振動特性周波数とを有する伝導性材料からなり、
前記伝導性材料が、鉛、スズ、スズ合金、および、鉛と、スズ、ビスマス、カドミウムの少なくとも1つの元素との合金のうちの1つの材料からなることを特徴とする、核磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項2】
前記一組のソレノイド勾配コイル(2)と前記真空容器(102)との間に配置された管であって、それらと機械的に接続されていない管によって前記追加封体(107)が構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記追加封体(108)が、前記一組のソレノイド勾配コイル(2)と機械的に接続された管によって構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記追加封体(109)が、前記真空容器(102)と機械的に接続された管によって構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記追加封体(109)が、前記真空容器(102)と接着剤あるいは溶接によって機械的に接続された管によって構成されることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記低温容器(10)が、80K以下の温度で維持される前記第1熱シールド(103)と、20K以下の温度で維持される第2熱シールド(104)とを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1熱シールド(103、104)が、アルミニウムあるいはアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記真空容器(102)および前記ヘリウム貯蔵容器(105)が、ステンレス鋼からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記形成体(101)が、アルミニウムあるいはアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記追加封体(107;108;109)が、0.4m〜0.5mの範囲の平均半径、8mm〜12mmの範囲の厚さ、および2m〜4mの範囲の長さを有する管状構造を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
当該システムが、前記一組のソレノイド勾配コイル(2)と前記真空容器(102)との間に配置された2つまたは3つの同心追加封体(107;108;109)を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
磁気共鳴イメージングシステムにおける音響ノイズおよび低温損失を低減する方法であって、
前記システムは、軸Zを有するトンネル形状の有効内部空間(4)において強い主磁場B0ベクトルを発生させる超伝導コイル(1)と、
高周波の励起と、それに応じて前記有効内部空間(4)に定置された人体(5)または対象物から発せられる高周波信号の処理とを行う手段(3)と、
強い主磁場B0ベクトルを発生させる前記超伝導コイル(1)を収容する外部低温容器(10)と前記有効内部空間(4)との間に位置する円筒リング状の空間に設置され、強い主磁場B0ベクトルに追加の磁場成分を重畳する、一組のソレノイド勾配コイル(2)と、
電子制御回路(31〜34、24〜26)と、を備え、
前記ドーナツ状の外部低温容器(10)は、室温に保たれた軸Zを有するトンネル形状の前記有効内部空間を規定し、その内側には一組のソレノイド勾配コイル(2)が設置され、
前記外部低温容器(10)は、前記有効内部空間(4)から順に、真空容器(102)と、20K〜80Kの範囲の温度に維持される少なくとも1つの第1熱シールド(103)と、5Kより低い温度に維持されるヘリウム貯蔵容器と、強い主磁場B0ベクトルを発生させる前記超伝導コイル(1)を支持する形成体(101)と、を備え、
当該方法は、
前記外部低温容器(10)における前記一組のソレノイド勾配コイル(2)と前記真空容器(102)との間に少なくとも1つの追加封体(107;108;109)を挿入する工程を含み、
前記追加封体(107;108;109)が、7×10-8Ωm以上の電気抵抗と、前記外部低温容器(10)の他の各構成要素の特性周波数より低いあるいは同等である純粋に径方向の振動特性周波数とを有する伝導性材料からなり、
前記伝導性材料が、鉛、スズ、スズ合金、および、鉛と、スズ、ビスマス、カドミウムの少なくとも1つの元素との合金のうちの1つの材料からなることを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−525161(P2012−525161A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506552(P2012−506552)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050778
【国際公開番号】WO2010/125285
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(510225292)コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ (97)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F−75015 Paris, FRANCE
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050778
【国際公開番号】WO2010/125285
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(510225292)コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ (97)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F−75015 Paris, FRANCE
【Fターム(参考)】
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