説明

低温流体昇圧用ポンプシステム

【課題】油圧モータ駆動される低温流体昇圧ポンプにおいて、ガス流入に伴う負荷の急激な減少により、駆動源の油圧モータに生じる過回転を防止した低温流体昇圧用ポンプシステムを提供する。
【解決手段】低温流体タンクから導入した低圧の低温流体を昇圧する油圧モータ32で駆動する低温流体昇圧ポンプ20と、油圧モータ32と該油圧モータ32に油圧を供給する油圧ポンプ30との間を連結する油圧流路31に設置された開度調整可能な制御弁33と、低温流体昇圧ポンプ20の上流側で計測した低温流体の流量値の減少に合わせて制御弁33の開度を調整する制御部40とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガス(LNG)等の低温流体を昇圧する低温流体昇圧用ポンプシステムに係り、特に、油圧ポンプにて駆動された油圧モータを駆動源とする低温流体昇圧ポンプの油圧モータ過回転防止に関する。
【背景技術】
【0002】
各種用途に適用される低温流体昇圧用ポンプシステムは、流体の種類によっては防爆エリアに設置される。防爆エリアに設置された場合には、低温流体昇圧用ポンプシステムを構成する低温流体昇圧ポンプの駆動源として油圧モータが使用されている。
しかし、油圧モータにて駆動される低温流体昇圧ポンプは、作動流体としたLNGや液体水素が気化したガスを吸入した場合、すなわち、液体を取り扱う低温流体昇圧ポンプに気体が流入すると、低温流体昇圧ポンプの負荷が急激に減少することによって、油圧モータの回転が過回転の状態になる。
【0003】
低温流体昇圧用ポンプシステムに使用される低温流体昇圧ポンプとしては、たとえば下記の特許文献1に開示されたものがあり、図2に概要を示して簡単に説明する。
図2の低温流体昇圧ポンプ1は、図示しない駆動部によりピストン2を往復動させるピストンポンプであり、図中の符号3はピストンロッド、4はシリンダブロック、5はシリンダ、6はピストンリング、7はピストン溝である。この低温流体昇圧ポンプ1は、ピストン2が往復動することにより、流体入口8aからシリンダ5内に導入した低温流体を昇圧して流体出口8bから流出させる。なお、図中の符号9a,9bは、流体入口8a及び流体出口8bに設置された逆止弁である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−287570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、設置場所が防爆エリアとなる低温流体昇圧用ポンプシステムの場合には、低温流体昇圧ポンプの駆動源として油圧モータが使用されている。
しかし、油圧モータにより駆動される低温流体昇圧用ポンプは、作動流体とした液化水素あるいはLNGが気化したガスを吸入した場合、すなわち、液体を取り扱う低温流体昇圧用ポンプに気体が流入すると、低温流体昇圧ポンプの負荷が急激に減少するため、油圧モータの回転数が過回転の状態となる。
【0006】
このような油圧モータの過回転は、油圧モータが破損する原因となるだけでなく、低温流体昇圧ポンプのピストンが往復動する速度を増すことにもなるので、ピストンの焼きつき等を生じる原因となる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、油圧モータ駆動される低温流体昇圧ポンプにおいて、ガス流入に伴う負荷の急激な減少により、駆動源の油圧モータに生じる過回転を防止した低温流体昇圧用ポンプシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る低温流体昇圧用ポンプシステムは、低温流体タンクから導入した低圧の低温流体を昇圧する油圧モータ駆動の低温流体昇圧ポンプと、前記油圧モータと該油圧モータに油圧を供給する油圧ポンプとの間を連結する油圧流路に設置された開度調整可能な制御弁と、前記低温流体昇圧ポンプの上流側で計測した低温流体の流量値の減少に合わせて前記制御弁の開度を調整する制御部とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
このような低温流体昇圧用ポンプシステムによれば、低温流体タンクから導入した低圧の低温流体を昇圧する油圧モータ駆動の低温流体昇圧ポンプと、油圧モータと該油圧モータに油圧を供給する油圧ポンプとの間を連結する油圧流路に設置された開度調整可能な制御弁と、前記低温流体昇圧ポンプの上流側で計測した低温流体の流量値の減少に合わせて前記制御弁の開度を調整する制御部とを備えているので、低温流体が気化して発生したガスの混入により低温流体流量値が減少した場合には、制御部が制御弁の開度を調整して油圧モータに供給する油圧を低減する。この結果、油圧モータにより駆動される低温流体昇圧ポンプは、ポンプ負荷の低減に応じて油圧モータの出力も低下するので、油圧モータが過回転の状態になることを防止できる。
【0009】
上記の発明において、前記制御弁の開度は、前記低温流体の流量値の計測位置と前記低温流体昇圧ポンプとの間の配管長に応じて生じる流量変化の時間差を考慮して調整されることが好ましく、これにより、最適のタイミングで制御弁の開度を調整して油圧モータの過回転を防止できる。
【発明の効果】
【0010】
上述した本発明によれば、低温流体を昇圧する低温流体昇圧用ポンプシステムに設置した油圧モータ駆動の低温流体昇圧ポンプは、低温流体が気化したガスの流入に伴う急減な負荷減少の影響を受けて、油圧ポンプが過回転の状態になることを防止できる。従って、過回転の運転に起因して油圧モータや低温流体昇圧ポンプが破損することを防止し、信頼性の高い低温流体昇圧用ポンプシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る低温流体昇圧用ポンプシステムの一実施形態を示した図で、(a)はブースタポンプ周辺の要部構成例を示す系統図、(b)はブースタポンプの上流で計測した流量と制御弁の弁開度との関係を時間経過とともに示す説明図である。
【図2】低温流体昇圧ポンプの一例として、ピストン式ポンプの構成例を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る低温流体昇圧用ポンプシステムの一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す低温流体昇圧用ポンプシステム10は、ディーゼルエンジンの燃料として供給される低温流体の液化天然ガス(LNG)を昇圧するものである。図示の低温流体昇圧用ポンプシステム10は、LNGタンク(低温流体タンク)から導入した低圧のLNGを昇圧する油圧モータ駆動の低温流体昇圧ポンプ20、すなわち油圧モータ32により駆動される低温流体昇圧ポンプ20と、油圧モータ32とこの油圧モータ32に油圧を供給する油圧ポンプ30との間を連結する油圧流路31に設置された開度調整可能な制御弁33と、低温流体昇圧ポンプ20の上流側で計測したLNG流量値の減少に合わせて制御弁33の開度を調整する制御部40とを備えている。
【0013】
低温流体昇圧ポンプ20は、油圧ポンプ30から油圧流路31を介して油圧の供給を受ける油圧モータ32により駆動される。そして、油圧流路31には、低温流体昇圧ポンプ20の出口側に、すなわち油圧モータ32から油圧ポンプ30に油圧を戻す油圧流路32に、開度調整可能な制御弁33が設置されている。
なお、図中の符号1は、低温流体昇圧ポンプ20の上流側に設置されてバッファとして機能するサクションドラムである。
【0014】
一方、LNG(低温流体)供給ラインPFには、低温流体昇圧ポンプ20の上流側でLNGの流量を計測するとともに、計測したLNG流量値を制御部40に入力する流量計50が設けられている。
【0015】
制御部40は、流量計50から入力されるLNG流量値に応じて、制御弁33の開度信号を出力する。すなわち、制御部40は、LNG流量値の減少に合わせて、制御弁33の開度を調整するものである。
制御部40による制御弁33の開度制御は、LNGが気化した天然ガスの混入により、流量計50で計測したLNG流量値が減少すると、制御弁33の開度を絞って油圧モータ32に供給する油圧を低減するものである。すなわち、制御部40は、LNGに天然ガスが混入すると、LNG流量値が減少するとともに低温流体昇圧ポンプ20のポンプ負荷も低下するので、低温流体昇圧ポンプ20を駆動する油圧モータ32の出力が低下するように油圧の調整を実施する。
【0016】
このように、制御部40が制御弁33の開度を調整し、油圧モータ32に供給する油圧を低減すると、油圧モータ駆動の低温流体昇圧ポンプ20は、ポンプ負荷の低減に応じて油圧モータ32の出力も低下するので、油圧モータ32が過回転の状態になることが防止される。
ところで、上述した制御部40は、たとえば図1(b)に示すように、流量変化の時間差を考慮して制御弁33の開度を調整することが望ましい。なお、制御弁33は、油圧モータ32の近くにあり、油圧調整の時間差は無視できるものとする。
【0017】
具体的に説明すると、低温流体昇圧ポンプ20における実際の流量変化には、流量計50で検出した流量変化からLNG供給ラインPFの配管長及び流速に応じた時間遅れがある。そこで、LNG供給ラインPFの配管長及び流速から時間遅れΔtを算出し、実際に行う制御弁33の開度調整は、流量変化を検出した時間t1からΔt遅れた時間t2で開始する。
このような時間差を考慮した制御を行えば、低温流体昇圧ポンプ20で実際に流量変化が生じるときにあわせて、油圧モータ32の出力を低下させることができるので、より実効性の高い制御となる。すなわち、LNG流量値の計測位置と低温流体昇圧ポンプ20との間の配管長が長い場合でも、流量変化の時間差を考慮して最適のタイミングで制御弁33の開度を調整し、低温流体昇圧ポンプ20の過回転を確実に防止できる。
【0018】
従って、上述した本実施形態の低温流体昇圧用ポンプシステム10によれば、LNG供給ラインPFに設置した油圧モータ駆動の低温流体昇圧ポンプ20は、液体のLNGに気体の天然ガスが流入しても、負荷の急激な減少に伴って油圧モータ32が過回転の状態になることを防止できる。このため、油圧モータ32及び低温流体昇圧ポンプ20が過回転の状態で運転されることに起因して、低温流体昇圧ポンプ20の焼き付きや破損を防止することが可能になるので、信頼性の高い低温流体昇圧用ポンプシステムとなる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0019】
10 低温流体昇圧用ポンプシステム
20 低温流体昇圧ポンプ
30 油圧ポンプ
31 油圧流路
32 油圧モータ
33 制御弁
40 制御部
50 流量計


【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温流体タンクから導入した低圧の低温流体を昇圧する油圧モータ駆動の低温流体昇圧ポンプと、前記油圧モータと該油圧モータに油圧を供給する油圧ポンプとの間を連結する油圧流路に設置された開度調整可能な制御弁と、前記低温流体昇圧ポンプの上流側で計測した低温流体の流量値の減少に合わせて前記制御弁の開度を調整する制御部とを備えていることを特徴とする低温流体昇圧用ポンプシステム。
【請求項2】
前記制御弁の開度は、前記低温流体の流量値の計測位置と前記低温流体昇圧ポンプとの間の配管長に応じて生じる流量変化の時間差を考慮して調整されることを特徴とする請求項1に記載の低温流体昇圧用ポンプシステム。


【図1】
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【図2】
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