説明

低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタック

【課題】電池スタック中、膜電極の各部位が受ける力の不均一、翼端板の歪みを解消する。
【解決手段】
本発明は、膜電極1や、双極板2、コレクションリードプレート3、電気絶縁ダミープレート4及び締付リング5を含み、1つの電気絶縁プレート4と一対のコレクションリードプレート3によって、1セットの電流出力機構を構成する低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタックであり、膜電極1や楔形双極板2及び電流出力機構などによって円筒形の燃料電池スタックを囲むとともに、2つの締付リング5によって、一つの機構に締め付けられ、それぞれ円筒形燃料電池スタックの上下両軸端に接続される上端フラットエンド6と下端フラットエンド7が含まれ、上端フラットエンド6と下端フラットエンド7の中には、水素又は/及び空気又は/及び冷却液の流れるスペースが設けられ、それと対応する流体の入口9、出口10が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池関わるもので、特に低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の低温起動と低温条件での運行は、国際上でも比較的先端的な課題となっている。なぜならば、燃料電池の低温起動性能は燃料電池の実用化程度と直接的な影響があり、その使用範囲に影響があるからである。
【0003】
一般的な燃料電池発電システムの場合、燃料電池の運行において、水による増湿が必要とするだけでなく、燃料電池スタックの冷却にも水による冷却を必要としている。そのため、温度が0℃以下になると、燃料電池の低温起動が非常に難しくなる。もし、燃料電池の水が良く管理されていない条件で、0℃以下の温度で起動すると、電池システムが正常に起動されなくなる。また、0℃以下の場合、電池システムは良く氷結するので、システムに永久的な損傷をもたらす恐れもある。
【0004】
アメリカ特許6699612には一種の電池システムが記載されているが、中には、グリコールの不凍液を循環させて燃料電池から生じる熱量を冷やすシステムが含まれている。それと同時に不凍液はラジエーター中の燃料ガスと混合され、燃料中の水分を除去する。また、システムには水除け機構があって、適時に不凍液中の水を除去して、不凍液の濃度を確保する。明らかなことに、このシステムは非常に煩雑である。
【0005】
アメリカ特許6727013には一種の燃料電池の温度を維持する方法が記載されているが、この方法は主に燃料電池設備のスタンバイ状態での温度維持を利用しており、外部加熱システムを利用して燃料電池スタックを加熱している。明らかなことに、燃料電池スタックの温度を確保するために、システムは絶えずエネルギーを消耗しなければならない。特許の中には低温起動に関わる内容は含まれていない。
【0006】
アメリカ特許6746789には主に外部接続のカタリシス反応装置を利用して、低温の下で、水素と空気を直接低温状態で燃焼させて、熱量と水分を発生させてから、燃料電池のエア陰極又は陽極に提供する。燃料電池システムは空気を酸化剤及び冷却剤としているので、電池システムをシンプルにするとともに、燃料電気の低温起動性能を向上できるが、このシステムもやはり煩雑である。
【0007】
アメリカ特許7014935には燃料電池スタックの両端電池に存在する問題の解決方法を提示している。電池の運行中、特に低温起動の運行において、燃料電池スタックの両端電池は水温などの影響によって、水温の不均一性などの問題を引き起こし易い。特許に両端電池に対して処理を行い、電池の耐食性を向上させることによって、電池スタックの低温操作性を向上する方法が提示されており、この特許では端面電池の耐食性だけを向上することができるが、燃料電池スタック中、両端電池の水温の不均一性は解決できない。
【0008】
アメリカ特許6764786には燃料電池スタックの特別な燃料リードプレートと翼端板が記載されており、特許中、燃料電池スタックの翼端板は一般的に厚い金属プレートとなっており、比較的ばかでかくて値段も高く、ヒートキャパシティーも高く熱量のロスも高いと指摘されている。燃料電池スタックは運行温度が低いか、或いは低温起動の際、翼端板の所にて熱のロスが発生し易く、性能の良くなく、燃料電池の低温起動スピードに影響をもたらすとともに、低温起動の際、逆圧力が生じ易いので、永久的な損傷を来たしている。特許では強度が高く、ヒートキャパシティーも低い放熱翼端板を提案して、燃料電池スタックの低温起動と低温運行の際に発生する問題を部分的に解決している。
【0009】
アメリカ特許6824901には燃料電池スタックの翼端電池と翼端板との間に多孔質の熱絶縁プレートを設置する方法を提示して、燃料電池の低温快速起動によって生じる問題を解決している。特許中に記載されている熱絶縁プレートは多孔質のグラファイト・プレートで、隙間率は50〜70%に達している。しかし、多孔質グラファイト・プレートの断熱効果は限りがあるので、ただ翼端電池から翼端板への熱の伝導を遮断しただけで、この方法は燃料電池システムの低温快速起動問題を部分的に解決したものとなる。
【0010】
アメリカ特許5595834には円筒形の電池スタックが提示されており、それぞれの電池の極板は全て円形のチップで、しかも、電池にはダミープレートが一定の距離に伸びだされて放熱することとなっている。そのため、体積が大きく、端面電池と内部電池との間には水温にアンバランスがあり、特に比較的低い温度ではもっと酷くなるという特徴を持っている。
【0011】
アメリカ特許5470671には円筒形の燃料電池スタックが記載されており、その中の電池の全ての陰極側は電池装置の円周上に取り付けられており、大気中に放熱している。この技術の欠点は伝統的な電池スタックの構造が使用できなく、体積が大きく、しかも、電池の電圧が低く、電池のパワーが低いと言うことである。
【0012】
アメリカ特許5595834には円筒形の電池が記載されており、非常にコンパクトで、電池の極板が電池と重なって形成される構造となっている。放熱の原因で、この電池は比較的高い環境温度では運行できないようになっている。なぜならば、電池スタックの中には両端電池があって、この電池は低温にて起動しても、水温の不均一などの問題があり、その低温起動性能に影響をもたらすからである。
【0013】
上記燃料電池の特許技術を纏めて見ると、燃料電池の低温起動には主に不凍媒質のチェンジや、外部加熱、電池スタック中端面電池に対する特別な処理、又は全体電池スタックに対する水温管理の向上などが含まれているが、特に端面電池の水温均一性などの問題は、その低温起動性に大きな影響がある。
【0014】
燃料電池の低温起動性にとって、最も簡単で、理想的な方法は、水素と空気を直接燃料電池システム中に入れて、電池を比較的低い電圧の下で運行させ、電池自体に熱量を発生される熱量で速やかに燃料電池スタックを加熱して、燃料電池スタックの低温起動を実現する。このようにすると外部の補助加熱装置などに依頼する必要がなくなる。事実上、燃料電池システムの湿度の増加を下げることは非常に良い低温起動方法である。例えばアメリカ特許6746789に記載されている通り、湿度の増加を下げて、エア冷却燃料電池を使用することによって、燃料電池システムの煩雑程度を低減することができる。
【特許文献1】アメリカ特許第6699612号公報
【特許文献2】アメリカ特許第6727013号公報
【特許文献3】アメリカ特許第6746789号公報
【特許文献4】アメリカ特許第7014935号公報
【特許文献5】アメリカ特許第6764786号公報
【特許文献6】アメリカ特許第6824901号公報
【特許文献7】アメリカ特許第5595834号公報
【特許文献8】アメリカ特許第5470671号公報
【0015】
しかし、目下、エア冷却燃料電池の場合、電池スタックの仕事率密度が低く、仕事率の範囲が小さいという問題がある。一般的に、その仕事率範囲は何百ワットで、何千ワットの燃料電池はきわめて少ない。少し大きなエア冷却燃料電池には主に電池スタックの集積が比較的難しいだけでなく、システムの仕事率も比較的低く、一般的に100〜150W/Lしかない。大型エア冷却燃料電池スタック、例えば、仕事率が何千ワットから十数万ワットの電池スタックはもっと少ない。そのため、大型燃料電池スタックは一般的に水又は不凍液を冷却媒質としており、しかも、一般的なエア冷却型燃料電池には端部電極での水温アンバランス問題が存在している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記問題を解決すために、低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタックの提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の目的は、次の手段によって実現される。つまり、低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタックには、複数の膜電極や、複数の双極板、少なくとも一対のコレクションリードプレート、少なくとも1つの電気絶縁ダミープレート及び2つの締付リングなどを含んでおり、前記複数の双極板は楔形の双極板であり、楔形双極板上にはエアの流れ場や、水素の流れ場及び冷却流体の流れ場などが設置されており、前記少なくとも一対のコレクションリードプレートと少なくとも1つの電気絶縁ダミープレートは、1つの電気絶縁ダミープレートを一対のコレクションリードプレートの間に挟ませることによって、少なくとも1セットの電流出力機構を構成する。また、前記複数の膜電極や、複数の楔形双極板及び少なくとも1セットの電流出力機構は1つの円筒形の燃料電池スタックを囲むとともに、2つの締付リングによって、一つの機構に締め付けられる。そして、それぞれ円筒形燃料電池スタックの上下両軸端に接続される上端フラットエンドと下端フラットエンドが含まれており、前記電気絶縁ダミープレートは平面構造又は楔形構造となっており、厚さは0.01〜3mmである。
【0018】
また、前記上端フラットエンドと下端フラットエンドの中には、水素又は/及び空気又は/及び冷却液の流れるスペースが設けられており、それと対応する流体の入口・出口が設けられている。
【0019】
前記楔形双極板は1枚のインテグラル構造の楔形双極板にすることができ、2枚の楔形単極板を組み合わせるか、又は1枚の楔形単極板上に1枚の平面単極板を組み合わせるか、若しくは2枚の平面単極板と1枚の楔形極板によって構成することもできる。
【0020】
前記楔形双極板は、金属プレートや、グラファイト・プレート、フレキシブル・グラファイト・プレートなど中の一種又は二種によって構成される。
【0021】
前記電流出力機構は1セットとなっており、当該セットの電流出力機構は円筒形燃料電池スタックのファースト・シングル電池とラスト・シングル電池との間に設置される。
【0022】
前記電気出力機構は2セット又は2セット以上となっており、個々の電流出力機構はそれぞれ円筒形燃料電池スタックの異なる位置に設置されており、燃料電池スタック中の複数のシングル電池を平均的に対応する2つ又は2つ以上の電池ユニットに分けられる。
【0023】
前記締付リングの内孔は次第にストレート孔と喇叭孔の2つの部分となっており、2つの締付リングはそれぞれ円筒形燃料電池スタックの両端に嵌められ、複数セットの締付ナットと締付ボルトによって、しっかりと締め付けられるが、締付リングの喇叭孔を利用して円面を段々収縮させて、円筒形電池スタックの端部を締付リングのストレート孔部分に入れることによって、電池スタック中の複数の膜電極と複数の双極板をしっかりと締め付けられる。
【0024】
前記締付リングの内孔はストレート孔となっており、2つの締付リングはそれぞれ直接にすでに締め付けられた円筒形燃料電池スタックの両端に嵌められる。
【0025】
前記複数の楔形双極板において、コレクションリードプレートと隣接する楔形双極板の厚さはその他楔形双極板の厚さより小さい。
【0026】
前記円筒形燃料電池スタックの外周にはエア・フィルターが包まれており、前記リング形上端フラットエンドの外側にはファンが取り付けられている。
【発明の効果】
【0027】
本発明は低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタックに関わるものであり、上記技術手段の使用によって、既存の技術に比べて、次のような長所と特徴がある。
1.電池スタックの中には一般電池スタックのようなばかでかい電池翼端板がなく、その代わりに締付リングを使用したため、非常にコンパクトである。
2.電池スタック中の双極板は、通常の燃料電池の平面双極板とは違って、楔形となっており、1枚の電気絶縁ダミープレートが1対のコレクションリードプレートの間に挟まれて、1セットの電流出力機構となっており、2つのコレクションリードプレートは、ただ1枚の電気絶縁ダミープレートによって隔てられて、非常に近く寄せられている。電池スタックの中には一般的に、1セット以上の電池スタックの電流出力機構が設置されており、電池スタックの電流増加、電圧降下が容易となり、集積程度も高くなる。
3.電池スタック中、膜電極の各部位の受ける力は非常に均一であり、翼端板の歪などの問題もない。一般電池スタックは翼端板の強度の原因によって、一定の翼端板の変形が生じるので、膜電極の平面が受ける力は不均一となる。
4.電池スタックのファースト電極とラスト電極の水温のバランスが良く、その他電極とほぼ同じぐらいで、0℃以下での低温起動に最適である。
5.エア冷却式電池スタックの流体の流れる溝は一般的に楔形構造となっているが、これによって、エア冷却流体の流れ溝の塞ぎを低減し、エア冷却の熱伝道面積を増やすことができ、熱交換と電池スタック内部の熱分布の均一性に有利である。
6.電池スタックの仕事率は著しく増加し、仕事率と体積とのサイズは三次方程式関係を有する。例えば、円筒の直径と高さが8cmの電池の場合、その仕事率120Wであるが、円筒の直径と高さが16cmの電池の場合、その仕事率は1KWとなり、円筒の直径と高さが32cmの電池スタックの場合、その仕事率が8KWとなる。しかも、構造がコンパクトで、電池スタック及びシステムは広い仕事率範囲において、高い仕事率密度を保つことができる。一般電池スタックの仕事率の増加は一般的に1次元方向に増加されるが、2次元、3次元方向に増加される場合、集積度は低くなる。
7.楔形双極板と膜電極はしっかりと貼り付けられており、しかも独特な楔形構造となっているので、電池スタックは震動や、衝突などの外部の力に良く耐える。
8.楔形双極板の流体流れ溝は一般的に貫通溝となっているので、製造のコストが低く、大量生産に最適である。
9.電極は一般的な長方形構造となっているので、資材の利用率が非常に高い。
10.電池スタックのエアフィルターは直接円筒形電池スタックの外部に設置されるので、優れたシステム集積度を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1の通り、本発明は低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタックであり、中には、複数の膜電極1や、複数の楔形双極板2、少なくとも1対のコレクションリードプレート3、少なくとも1つの電気絶縁ダミープレート4、2つの締付リング5、上端フラットエンド6、下端フラットエンド7及び遠心ファン8などが含まれる。その中、電気絶縁ダミープレート4は1対のコレクションリードプレート3の間に挟まれて、1セットの電流出力機構を構成しており、複数の膜電極1や、複数の楔形双極板2、及び少なくとも1セットの電流出力機構は1つの円筒形燃料電池スタックを囲むとともに、2つの締付リング5によって、1つの機構にしっかりと締め付けられる。上端フラットエンド6と下端フラットエンド7はそれぞれ円筒形電池スタックの上下両軸端に連結されており、電気絶縁ダミープレート4は平面構造(楔形構造にすることもできる)となっており、厚さは0.05mm(一般的には0.01〜3mmの間にする)である。上端フラットエンド6と下端フラットエンド7には水素の流れる溝が設置されており、上端フラットエンド6の側面には水素の入口9があり、下端フラットエンド7の側面には水素の出口10がある。本実施例において、電流出力機構は1セットとなっており、当該セットの電流出力機構は円筒形燃料電池スタックのファースト・シングル電池とラスト・シングル電池の間に設置されている。
【0029】
本発明中の楔形双極板2は金属プレートや、グラファイト・プレート、フレキシブル・グラファイト・プレートなどの中の任意一種又は二種によって構成されるが、1枚のインテグラル構造の楔形双極板にすることができ、2枚の楔形単極板を組み合わせるか、或いは1枚の楔形単極板に1枚の平面単極板を組み合わせるか、若しくは2枚の平面単極板に1枚の楔形板を合わせることもできる。電池スタックのあらゆる楔形双極板において、コレクションリードプレートと隣接する楔形双極板の厚さはその他楔形双極板の厚さより小さい。図2の通り、図2は本発明中、楔形双極板2の1つの実施例の立体構造を示した略図であり、本実施例中、楔形双極板2の両面にはエアの流れ場と水素の流れ場が設置されており、エアの流れ場には複数の楔形双極板表面のラジアル方向に沿って貫通されたエア流れ溝が含まれており、複数のエア流れ溝の深さは楔形双極板の厚さに対応して、その厚さも薄いものから厚いものへと変化させることができ、溝全体の深さを均一にすることもできる。水素の流れ場には、複数の楔形双極板表面のアキシアル方向に沿って貫通された水素流れ溝が含まれており、図2に示されているとおり、21はエア流れ溝、22は溝肩、23はシールライン溝であり、水素流れ溝は図に示されていない。
【0030】
図3の通り、図3は本発明中、1セットの電流出力機構の立体構造を示した略図である。本発明中の電流出力機構は1つの電気絶縁ダミープレート4が1対のコレクションリードプレート3の間に挟まれて構成されており、1つの燃料電池スタックにおいて、このような電流出力機構は少なくとも1セットは有すべきである。1セットの電流出力機構を使用する場合、当該セットの電流出力機構は円筒形燃料電池スタックのファスト・シングル電池とラスト・シングル電池との間に設置される。2セット又は2セット以上の電流出力機構を使用する場合、各セットの電流出力機構はそれぞれ円筒形燃料電池スタックの異なる位置に設置され、燃料電池中の複数のシングル電池を対応する2つ又は2つ以上の電池ユニットに分ける。
【0031】
図4の通り、図4は本発明中、楔形双極板のもう一つの実施例の立体構造を示した分解略図であり、図に示されている通り、1は膜電極である。本実施例において、楔形双極板2は2枚の楔形単極板2Aと2Bによって構成されており、その中、楔形単極板2Aの1つの側面には反応エアの流れ場(膜電極に向いて)が設置されており、もう一つの側面には冷却エアの流れ場が設置されており、楔形単極板2Bの1つの側面には水素の流れ場(膜電極向けに)が設置されており、図の中の2A′は、2Aが一定の角度に回転した形状となっているが、その目的はもう一面の反応エアの流れ場を示すためで、組み立てる場合には、楔形単極板2Aのエアの流れ場のある面を楔形単極板2Bの流れ場のない面に貼り付ける。
【0032】
図5の通り、図5は本発明の低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタックの第2実施例の全体構造を示した略図であり、当該実施例は図4に示された双極板を使用している。200枚のこのような双極板2や、対応する数量のMEA、2セットの電流出力機構(セットごとに2つのコレクションリードプレート3と1つの電気絶縁ダミープレートを含む)などによって、直径がφ340×340mm、中空部分はφ220×340mmである10KWの円筒形燃料電池スタックが囲まれる。その中、双極板の長さは340mmで、MEAの有効面積は180cm2である。その中、冷却エア流れ溝と反応エアの流れ溝は別々となっている。電池スタックの上端フラットエンド6上には反応エア入口11が設置されており、放熱ファン8が設置されており、電池スタック下端フラットエンド7上には反応エア出口12が設置されている。この円筒形燃料電池スタックには、2セットの電流出力機構があって、燃料電池を二つの電池ユニットに分けるが、これによって電池スタックの出力電圧を下げることができ、電池スタックの出力電流を大きくすることができる。
【0033】
本発明中の締付リング5の構造は2種類にすることができるが、その一種はその内孔を次第にストレート孔とラッパ孔などの2部分によって構成される。このような構造の締付リングは円筒形の燃料電池スタックに嵌める際、複数の締付ナットと締付ボルトによって締め付けられるが、締付リングのラッパ孔の段々に収縮する円面を利用して円筒形電池スタックの端部を締付リングのストレート孔部分に入るようにして、電池スタック中の複数の膜電極と複数の双極板を締め付ける。もう一種の締付リングの内孔はストレート孔にすることができるが、このような構造の締付リングは円筒形の燃料電池スタックに嵌め込まれる際、それぞれ直接にすでに締め付けられた円筒形燃料電池スタックの両端に嵌め込まれる。
【0034】
図6の通り、図6は本発明の燃料電池スタック及び補助システムの基本構造を示した略図であり、本実施例において、燃料電池の双極板の長さは400mmで、MEAの有効面積は240cm2であり、240枚の双極板や、対応する数量のMEA及び1セットの電流出力機構によって、25KWの円筒形燃料電池スタックが囲まれる。
【0035】
補助システムには水素貯蔵ボンベ31や、減圧弁32、ガス・水分離機33、水素循環ポンプ34、電磁弁35、エア・フィルター36、エアファン37、液体循環ポンプ38、ラジエーター及び放熱ファン39などが含まれる。その中、エア・フィルター36は電池スタックを囲むように電池スタックの周りに設置される。
【0036】
我々は本発明の翼端板無し燃料電池スタックによって構成された発電システムを使用して、低温起動テストを行った。その中、燃料電池中の双極板は2枚の単極板を組み合わせて構成されており、1枚の単極板は平面フレキシブル・グラファイト・プレートであり、もう一枚の単極板は楔形グラファイト・プレートであり、楔形グラファイト・プレート上には反応と放熱機能を同時に有するエア流れ溝が設置されている。このような双極板80枚と対応する数量のMEA(MEAの有効面積は52cm2)及び1セットの電流出力機構によって、直径φ180×160mmで、中空部分がφ100×160mmの1.2KW円筒形燃料電池スタックが囲まれる。低温起動のテストプロセスは次の通りである。発電システムの低温起動温度は-18℃で、回路基板をコントロールして、水素入口の電磁弁と出口の電磁弁を開いて、水素を電池スタックに充満させてから、水素出口の電磁弁を閉める。この時、電池スタックによって生じる電気エネルギーは充分ファンを回せることができ、電池スタックの反応に最小量のエアを提供することができる。燃料電池に比較的大きな負荷を加えて、一般的にシングル電池の電圧を0.2Vに維持し、瞬間ショートなどの操作を提供するが、電池スタックには大量の熱が発生し、温度が速やかに上がり、30s以内に電池スタックの温度は0℃に達する。我々は当該電池スタックに対して100回以上の上記低温起動を行った結果、各ユニット電池の運行は正常で、電池の性能が下がる現象が見つからなかった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタックの第1実施例の全体構造略図である。
【図2】本発明中、楔形双極板の一種の実施例の立体構造略図である。
【図3】本発明中、1セットの電流出力機構の立体構造略図である。
【図4】本発明中楔形双極板のもう一種の実施例の立体構造略図である。
【図5】本発明の低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタックの第2実施例の全体構造略図である。
【図6】本発明を含む燃料電池スタック及び補助システムの基本構造略図である。
【符号の説明】
【0038】
膜電極…1 楔形双極板…2 楔形単極板…2A,2B
コレクションリードプレート…3
電気絶縁ダミープレート…4 締付リング…5
上端フラットエンド…6 下端フラットエンド…7
遠心ファン…8 水素の入口…9 水素の出口…10
反応エア入口…11 反応エア出口…12
エア流れ溝…21 溝肩…22 シールライン溝…23
水素貯蔵ボンベ…31 減圧弁…32 ガス・水分離機…33
水素循環ポンプ…34 電磁弁…35
エア・フィルター…36 エアファン…37
液体循環ポンプ…38 ラジエーター及び放熱ファン…39

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の膜電極や、複数の双極板、少なくとも一対のコレクションリードプレート、少なくとも1つの電気絶縁ダミープレート及び2つの締付リングなどを含んでおり、前記複数の双極板は楔形の双極板であり、楔形双極板上にはエアの流れ場や、水素の流れ場及び冷却流体の流れ場などが設置されており、前記少なくとも一対のコレクションリードプレートと少なくとも1つの電気絶縁ダミープレートは、1つの電気絶縁ダミープレートを一対のコレクションリードプレートの間に挟ませることによって、少なくとも1セットの電流出力機構を構成し、前記複数の膜電極や、複数の楔形双極板及び少なくとも1セットの電流出力機構は1つの円筒形の燃料電池スタックを囲むとともに、2つの締付リングによって、一つの機構に締め付けられ、それぞれ円筒形燃料電池スタックの上下両軸端に接続される上端フラットエンドと下端フラットエンドが含まれており、前記電気絶縁ダミープレートは平面構造又は楔形構造となっており、厚さは0.01〜3mmであり、また、前記上端フラットエンドと下端フラットエンドの中には、水素又は/及び空気又は/及び冷却液の流れるスペースが設けられており、それと対応する流体の入口、出口が設けられていることを特徴とする低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1において、前記楔形双極板は1枚のインテグラル構造の楔形双極板にすることができ、2枚の楔形単極板を組み合わせるか、又は1枚の楔形単極板上に1枚の平面単極板を組み合わせるか、若しくは2枚の平面単極板と1枚の楔形板によって構成されることを特徴とする低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項1において、前記楔形双極板は、金属プレートや、グラファイト・プレート、フレキシブル・グラファイト・プレートなどの中の任意一種によって構成されることを特徴とする低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項1において、前記電流出力機構は1セットとなっており、当該セットの電流出力機構は円筒形燃料電池スタックのファースト・シングル電池とラスト・シングル電池との間に設置されることを特徴とする低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタック。
【請求項5】
請求項1において、前記電気出力機構は2セット又は2セット以上となっており、個々の電流出力機構はそれぞれ円筒形燃料電池スタックの異なる位置に設置されており、燃料電池スタック中の複数のシングル電池を平均的に対応する2つ又は2つ以上の電池ユニットに分けられることを特徴とする低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタック。
【請求項6】
請求項1において、前記締付リングの内孔は次第にストレート孔と喇叭孔の2つの部分となっており、2つの締付リングはそれぞれ円筒形燃料電池スタックの両端に嵌められ、複数セットの締付ナットと締付ボルトによって、しっかりと締め付けられるが、締付リングの喇叭孔を利用して円面を段々収縮させて、円筒形電池スタックの端部を締付リングのストレート孔部分に入れることによって、電池スタック中の複数の膜電極と複数の双極板をしっかりと締め付けられることを特徴とする低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタック。
【請求項7】
請求項1において、前記締付リングの内孔はストレート孔となっており、2つの締付リングはそれぞれ直接にすでに締め付けられた円筒形燃料電池スタックの両端に嵌められることを特徴とする低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタック。
【請求項8】
請求項1において、前記複数の楔形双極板中、コレクションリードプレートと隣接する楔形双極板の厚さはその他楔形双極板の厚さより小さいということを特徴とする低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタック。
【請求項9】
請求項1において、前記円筒形燃料電池スタックの外周にはエア・フィルターが包まれており、前記リング形上端フラットエンドの外側にはファンが取り付けられていることを特徴とする低温起動に適する翼端板無し燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−534802(P2009−534802A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506896(P2009−506896)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【国際出願番号】PCT/CN2007/001236
【国際公開番号】WO2007/128202
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508308190)
【Fターム(参考)】