説明

低湿処理設備

【課題】ワーク処理空間をワーク処理に要求される低湿環境に安定的に保つ。
【解決手段】周辺空間に対する連通口4,5を備える隔壁2によりワーク処理空間3を囲い、このワーク処理空間3に除湿空気SA1を供給して、ワーク処理空間3を低湿環境にする低湿化用の給気手段8,19aを備える低湿処理設備において、連通口4,5を、拡張側開口がワーク処理空間3に対して開口するベルマウス構造29にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリチウム電池の生産ラインなど、高度の低湿環境においてワークの処理を行なう低湿処理設備に関し、
詳しくは、周辺空間に対する連通口を備える隔壁によりワーク処理空間を囲い、このワーク処理空間に除湿空気を供給して、前記ワーク処理空間を低湿環境にする低湿化用の給気手段を備える低湿処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の低湿処理設備として、除湿空気(ドライエア)の供給により内部を高度の低湿環境(例えば、露点温度が−60℃)にするトンネル状のワーク処理空間を設け、このワーク処理空間に複数の抵抗板をワーク搬送方向に並べて設置し、これら抵抗板にワークを通過させる開口を形成することで、それら抵抗板によりワーク移動に伴うワーク処理空間での圧力変動を抑制して、ワーク処理空間を安定した低湿環境に保つようにするものが提案されている。
【0003】
そして、この設備においては、抵抗板に形成する開口(単に板材を切り抜いた状態の開口)を、抵抗板に沿うスライド板の移動により開口面積の調整が可能な開口にしたり、搬送ワークの当接に伴う弾性変形で開くゴム板製の押し開き扉を備える開口にすることが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4239437号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来設備では、ワーク処理空間への除湿空気の供給に伴い、抵抗板における上記切り抜き状の開口を通じて(扉を備える開口ではその扉が開放されたときに)ワーク処理空間から外部の周辺空間に向かう空気流が生じるが、この空気流が抵抗板の切り抜き状開口を通過する際、通過空気の流れ(特に開口縁部における通過空気の流れ)に乱れが生じて部分的な渦流や逆流が発生し、この気流乱れのために、各々の抵抗板において抵抗板の下流側(周辺空間側)における相対的に高湿な空気が抵抗板の上流側に侵入し、これが原因でワーク処理空間の低湿環境が不安定になるとともに平均湿度が高くなって、ワーク処理空間でのワーク処理に悪影響を及ぼす問題があった。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、開口構造に対する合理的な改良により上記の如き問題を効果的に解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、
周辺空間に対する連通口を備える隔壁によりワーク処理空間を囲い、このワーク処理空間に除湿空気を供給して、前記ワーク処理空間を低湿環境にする低湿化用の給気手段を備える低湿処理設備であって、
前記連通口を、拡張側開口が前記ワーク処理空間に対して開口するベルマウス構造にしてある点にある。
【0008】
この構成によれば、ワーク処理空間への除湿空気の供給に伴い連通口を通じてワーク処理空間から周辺空間に向かう空気流が生じることにおいて、連通口における通過空気の流れ(特に連通口の入口部における流れ)を、上記ベルマウス構造による気流案内により乱れの少ない円滑かつ安定的な流れにすることができて、連通口を先述した従来設備における抵抗板開口の如き単なる切り抜き状の開口にするのに比べ、通過気流の乱れに原因する連通口の下流側から上流側への高湿空気の侵入を効果的に防止することができ、これにより、ワーク処理空間を一層安定的にワーク処理に適した低湿環境に保つことができる。
【0009】
また、ワーク処理空間の低湿化も一層促進することができて、その分、ワーク処理空間に対する除湿空気の供給風量を低減するなどして運転コストを低減する、あるいは、ワーク処理空間を平均湿度のより低い一層高度な低湿環境にすることもできる。
【0010】
なお、この構成の実施において、連通口はどのような用途の開口であってもよく、また、常開の開口に限らず、扉を備える開閉可能な開口であってもよい。
【0011】
さらに、上記ベルマウス構造の横断面形状も円形に限られるものではなく、三角形や四角形あるいはそれ以上の多角形であってもよく、また、楕円などであってもよい。
【0012】
本発明の第2特徴構成は、
前記連通口のベルマウス構造における縮小側開口部をベルマウス構造の中心軸芯方向に延びる直筒状部にしてある点にある。
【0013】
この構成によれば、ベルマウス構造による気流案内とそれに続く上記直筒状部による気流案内との協働により、連通口における通過空気の流れ(特に連通口の出口部における流れ)を一層乱れの少ない円滑かつ安定的な流れにすることができて、通過気流の乱れに原因する連通口の下流側から上流側への高湿空気の侵入を一層効果的に防止することができ、これにより、ワーク処理空間をさらに安定的にワーク処理に適した低湿環境に保つことができ、また、ワーク処理空間の低湿化もさらに効果的に促進することができる。
【0014】
本発明の第3特徴構成は、
前記連通口が、前記ワーク処理空間に対するワーク搬入出口である点にある。
【0015】
この構成によれば、ワーク搬入出のために常開となる、ないしは、頻繁に開放されるワーク搬入出口において、前述の如くベルマウス構造による気流案内により通過気流の乱れに原因する下流側から上流側への高湿空気の侵入を効果的に防止するから、ワーク処理空間における低湿環境の安定化やワーク処理空間の低湿化促進をより確実かつ効果的に達成することができる。
【0016】
なお、この構成の実施において、ワーク搬入出口は、搬入口と搬出口とが兼用のものに限らず、搬入口と搬出口とが各別のものであってもよい。
【0017】
本発明の第4特徴構成は、
前記連通口を通じて前記ワーク処理空間に連通し、かつ、前記周辺空間に対して開口する外部開口を備える補助室を設け、
前記連通口のベルマウス構造化とともに、前記外部開口を、拡張側開口が前記補助室に対して開口するベルマウス構造にしてある点にある。
【0018】
この構成によれば、連通口において前述の如くベルマウス構造による気流案内により通過気流の乱れに原因する下流側から上流側への高湿空気の侵入を効果的に防止するのに加えて、連通口と直列な上記外部開口についても同様にベルマウス構造による気流案内により通過気流の乱れに原因する下流側から上流側への高湿空気の侵入を効果的に防止することができ、これにより、ワーク処理空間における低湿環境の安定化やワーク処理空間の低湿化促進を一層確実かつ効果的に達成することができる。
【0019】
なお、この構成の実施においては、補助室を直列配置の複数の補助分室に区画し、補助分室どうしを連通する分室連通口も、拡張側開口が上流側の補助分室に対して開口するベルマウス構造にするようにしてもよい。
【0020】
本発明の第5特徴構成は、
前記給気手段による前記ワーク処理空間への除湿空気の供給に伴い前記周辺空間に除湿空気を供給する補助給気手段を設け、
この補助給気手段により前記周辺空間に供給する除湿空気の一部又は全部を、前記周辺空間に供給する通常給気状態から前記ワーク処理空間に供給する非常時給気状態に切り換える給気切換手段を設けてある点にある。
【0021】
この構成によれば、何らかの原因でワーク処理空間に外部の高湿空気が侵入する状態になったとき、あるいは、その虞が生じたとき、上記の通常給気状態から非常時給気状態に切り換えて、ワーク処理空間に対する除湿空気の供給風量を増大させることにより、その風量増大によるワーク処理空間の気圧上昇をもってワーク処理空間への外部からの高湿空気の侵入を阻止することができ、また、その侵入を阻止した状態での除湿空気の供給によりワーク処理空間の低湿化も継続することができ、これにより、ワーク処理空間への高湿空気侵入によるワーク処理への悪影響を一層確実かつ効果的に防止することができる。
【0022】
また、通常給気状態では、ワーク処理空間の周辺空間にも除湿空気を供給して、その周辺空間もある程度低湿化することで、ワーク処理空間を一層効果的に低湿化することができる。
【0023】
なお、この構成の実施において、補助給気手段により供給する除湿空気は、給気手段によりワーク処理空間に供給する除湿空気と湿度が同等程度の空気に限られるものではなく、給気手段によりワーク処理空間に供給する除湿空気よりある程度高湿の空気であってもよい。
【0024】
本発明の第6特徴構成は、
常閉扉を備える臨時開口を前記隔壁に設け、
前記連通口のベルマウス構造化とともに、前記臨時開口を、拡張側開口が前記ワーク処理空間に対して開口するベルマウス構造にしてある点にある。
【0025】
この構成によれば、連通口において前述の如くベルマウス構造による気流案内により通過気流の乱れに原因する下流側から上流側への高湿空気の侵入を効果的に防止するのに加えて、上記常閉扉が開放されたときにおける臨時開口においても同様に、ベルマウス構造による気流案内により通過気流の乱れに原因する下流側から上流側への高湿空気の侵入を効果的に防止することができ、これにより、ワーク処理空間における低湿環境の安定化やワーク処理空間の低湿化促進をさらに確実かつ効果的に達成することができる。
【0026】
本発明の第7特徴構成は、
前記臨時開口における前記常閉扉の開放時に前記ワーク処理空間に対する除湿空気の給気風量を自動的に増大させる風量制御手段を設けてある点にある。
【0027】
この構成によれば、常閉扉の開放時にワーク処理空間に対する除湿空気の給気風量を自動的に増大させることにより、前述した非常時供給状態への切り換え時と同様に、その風量増大によるワーク処理空間の気圧上昇をもって臨時開口を通じたワーク処理空間への外部からの高湿空気の侵入を阻止することができ、また、その侵入を阻止した状態での除湿空気の供給によりワーク処理空間の低湿化も継続することができ、これにより、ワーク処理空間への高湿空気侵入によるワーク処理への悪影響を一層確実かつ効果的に防止することができる。
【0028】
本発明の第8特徴構成は、
前記隔壁に、前記ワーク処理空間の気圧上昇によりダンパ前後の気圧差が大きくなるほど開度が大きくなる差圧ダンパを設けてある点にある。
【0029】
この構成によれば、上記差圧ダンパの開度変化によりワーク処理空間の気圧変化が抑制されることで、前述した連通口のベルマウス構造化と相俟って、連通口での通過気流の乱れに原因する下流側から上流側への高湿空気の侵入を一層効果的に防止することができ、これにより、ワーク処理空間における低湿環境の安定化やワーク処理空間の低湿化促進をさらに確実かつ効果的に達成することができる。
【0030】
なお、この構成の実施において前述の補助室を設ける場合、上記差圧ダンパはワーク処理空間と補助室との間の隔壁部分に設けて、ワーク処理空間と補助室との気圧差に応じて開度変化させるようにするのが望ましい。
【0031】
また、その場合、補助室とその外部の周辺空間との間にも、補助室の気圧上昇によりダンパ前後の気圧差が大きくなるほど開度が大きくなると同様の差圧ダンパを装備するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態を示すシステム構成図
【図2】処理域出口の湿度分布を示すグラフ
【図3】ベルマウス構造を示す斜視図
【図4】第2実施形態を示すシステム構成図
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔第1実施形態〕
図1は低湿処理設備を示し、1はリチウム電池の製造などを行なう作業室であり、この作業室1の室内には、局所ドライエリアとして隔壁2により囲ったトンネル状のワーク処理空間3を設けてある。
【0034】
ワーク処理空間3の一端において隔壁2にはワーク搬入口4を形成し、ワーク処理空間3の他端において隔壁2にはワーク搬出口5を形成し、これらワーク搬入出口4,5(換言すれば、作業室内の周辺空間に対してワーク処理空間3を連通させる連通口)の開口面積は、ワーク処理空間3の内部横断面積より小さく制限してある。
【0035】
ワーク処理空間3の内部は、ワーク搬出入口4,5を通じてワークWを搬送する一連のワーク搬送ラインLにしてあり、ワーク搬入口4を通じてワーク処理空間3に搬入したワークWを、ワーク処理空間3の内部において所要の低湿度雰囲気下で処理し、処理済のワークWをワーク搬出口5を通じてワーク処理空間3から搬出する。
【0036】
ワーク処理空間3の一端側には、ワーク搬入口4の通過に先立ちワークWを通過させる入口側の補助室6を形成し、ワーク処理空間3の他端側には、ワーク搬出口5を通過したワークWを通過させる出口側の補助室7を形成してあり、これら入口側補助室6のワーク入口6a、及び、出口側補助室7のワーク出口7a(換言すれば、作業室内の周辺空間に対して開口する補助室6,7の外部開口)の開口面積も、各補助室6,7の内部横断面積より小さく制限してある。
【0037】
ワーク処理空間3には内部の空気を排出する排気口3bを設けてあり、また同様に、各補助室6,7にも内部の空気を排出する補助室排気口6b,7bを設けてある。
【0038】
8はワーク処理空間3を低湿化する吸着ロータ式除湿機であり、この除湿機8は、吸着剤Xを保持させた通気性の吸着ロータ8aを備え、再生域9とパージ域10と処理域11と第2処理域12と外気処理域13との5域を、その順に吸着ロータ回転方向Rの上手側から並べた状態で吸着ロータ8aの回転域に区画形成した構造にしてある。
【0039】
つまり、処理域11、第2処理域12、外気処理域13の夫々では、吸着ロータ8aの回転に伴い、それら各域11〜13に空気通過させて、それら通過空気MA,RA2,OAを各域11〜13に位置する吸着ロータ部分に通風することで、それら吸着ロータ部分の保持吸着剤Xによる水分吸着により各通過空気MA,RA2,OAを除湿し、それら除湿した空気を各域11〜13の出口から送出する。
【0040】
また、再生域9では、吸着ロータ8aの回転に伴い、高温の再生用気体HAを再生域9に通過させて、その高温再生用気体HAを再生域9に位置する吸着ロータ部分に通風することで、その吸着ロータ部分における保持吸着剤Xの吸着水分(即ち、先の処理域11、第2処理域12、外気処理域13での吸着水分)を高温再生用気体HAに脱着させ、これにより、その吸着ロータ部分の保持吸着剤Xを再生する。
【0041】
そしてまた、パージ域10では、吸着ロータ8aの回転に伴い、パージ用気体PAをパージ域10に通過させて、そのパージ用気体PAをパージ域10に位置する吸着ロータ部分に通風することで、その吸着ロータ部分(即ち、先の再生域通過で昇温した吸着ロータ部分)を次の処理域11への移行に先立ち冷却するとともに、その吸着ロータ部分に残存する再生用気体HAを掃気する。
【0042】
なお、この除湿機8では、再生域9から再生域出口路14へ排出される使用済再生用気体HA′の一部HA″を循環路15を通じて再生用加熱器16に導くとともに、パージ域10から排出される使用済パージ用気体PA′をパージ域出口路17を通じて同じく再生用加熱器16に導き、これら使用済再生用気体HA′の一部HA″と使用済パージ用気体PA′との混合気体を再生用加熱器16で加熱して、その混合加熱気体を高温再生用気体HAとして再生域入口路18を通じ再生域9に送給する。
【0043】
また、再生域9から再生域出口路14へ排出される使用済再生用気体HA′のうち、循環路15を通じて再生用加熱器16に導くもの以外は再生域出口路14を通じて外部へ排出する。
【0044】
処理域11と第2処理域12と外気処理域13との3域夫々での通過空気MA,RA2,OAに対する除湿効果を比較すると、再生域9及びパージ域10を通過した再生処理直後の吸着ロータ部分が通過する処理域11での除湿効果が最も高いが、処理域11だけを見た場合、吸着ロータ式除湿機8では一般に、処理域11の出口における除湿空気SAの湿度分布に図2のグラフBに示す如き吸着ロータ回転方向Rでの偏りが生じ、極言すれば、相対的に除湿度の高くて低湿の除湿空気SA1と、相対的に除湿度が低くて高湿の除湿空気SA2とが処理域11の出口から並列的に送出される状態になる。
【0045】
このことに着目して本例の除湿機8では、上記湿度分布に従って処理域11の出口を、除湿度の高い第1除湿空気SA1が送出される第1出口11Xと、除湿度の低い第2除湿空気SA2が送出される第2出口11Yとに吸着ロータ回転方向Rで区分し、第1出口11Xから送出される第1除湿空気SA1(例えば露点温度−80℃の除湿空気)を第1給気路19aを通じワーク処理空間3に供給することで、ワーク処理空間3をワーク処理に必要な低湿度状態(例えば露点温度−70℃以下)に調整するようにしてある。
【0046】
また、第2出口11Yから送出される第2除湿空気SA2(例えば露点温度−60℃の除湿空気)を、作業室1の室内(即ち、作業室1におけるワーク処理空間3の周辺空間)に第2給気路19bを通じて供給することで、作業室1の室内(周辺空間)をサブドライエリアとしてワーク処理空間3に準じた低湿度状態(例えば露点温度−30℃以下)に調整する。
【0047】
即ち、除湿機8および第1給気路19aは、除湿度の高い除湿空気をワーク処理空間3に供給してワーク処理空間3を低湿環境にする低湿化用の給気手段を構成する。
また、除湿機8及び第2給気路19bは、除湿度の低い除湿空気をワーク処理空間3の周辺空間に供給して、その周辺空間をワーク処理空間3に準じた低湿環境にする補助給気手段を構成する。
【0048】
具体的には、本例の除湿機8では、処理域11の出口における上記湿度分布が、同図2のグラフBに示す如く、吸着ロータ回転方向Rにおける処理域11の中央よりも少し吸着ロータ回転方向Rの上手側の部分に最も低湿度となる底部が形成される湿度分布になることに従って、処理域11の出口を、吸着ロータ回転方向Rの上手側に位置する上手側出口11aと、吸着ロータ回転方向Rの下手側に位置する下手側出口11bと、それら上手側出口11aと下手側出口11bとの間に位置する中央出口11cとに3分割し、これら区分出口のうち上記湿度分布の最底部と、それに続く深底部とに対応位置する中央出口11cを上記第1出口11Xとし、上手側出口11aと下手側出口11bとの夫々を上記第2出口11Yとしてある。
【0049】
厳密に言えば、上記湿度分布の最底部と、それに続く深底部とが中央出口11cの開口範囲内に対応位置するように、上記3つの分割出口11a〜11cの吸着ロータ回転方向Rにおける開口範囲を互いに異ならせてあり、特に、中央出口11cの吸着ロータ回転方向Rにおける開口範囲を、下手側出口11bの吸着ロータ回転方向Rにおける開口範囲より小さくしてある。
【0050】
つまり、このように処理域11から送出される除湿空気SAのうち相対的に除湿度が高くて低湿な第1除湿空気SA1のみをワーク処理空間3に供給することで、処理域11から送出される除湿空気SAの全量をワーク処理空間3に供給するのに比べ、ワーク処理空間3を一層効果的かつ効率的に低湿化し得るようにしてある。
【0051】
また、第2出口11Yから送出される第2除湿空気SA2を作業室1におけるワーク処理空間3の周辺空間に供給して、その周辺空間(作業室1内)もワーク処理空間3に準じた低湿度状態にすることで、ワーク処理空間3における低湿度状態をより安定的に保持し得るようにしてある。
【0052】
なお、処理域11の出口における除湿空気SAの湿度分布に上記の如き吸着ロータ回転方向Rでの偏りが生じるのは、処理域11に位置する吸着ロータ部分に進入した除湿対象空気MAが吸着ロータ8aの回転により吸着ロータ回転方向Rの下手側へ若干位置ズレした状態で処理域11の出口から除湿空気SAとして送出されることと、処理域11内でも吸着ロータ回転方向Rの下手側ほど保持吸着剤Xの吸着水分量が多くなって除湿効果が徐々に低下することとの相互関係や、パージ域10から処理域11に移行した直後の吸着ロータ部分が未だ十分に冷却されていないことなどが一因になっていると推察される。
【0053】
ワーク処理空間3は開口面積を制限したワーク搬出入口4,5の通気抵抗、並びに、入口側及び出口側の補助室6,7の存在により、除湿度の高い第1除湿空気SA1の充満状態に保持されるが、第1給気路19aを通じた第1除湿空気SA1の供給に伴いワーク処理空間3から排出される第1排出空気RA1は、一部を排気口3bを通じて第1還気路20へ排出し、残部はワーク搬出入口4,5を通じて入口側及び出口側の補助室6,7に受け入れる。
【0054】
そして、ワーク搬出入口4,5を通じて各補助室6,7に受け入れたワーク処理空間3からの第1排出空気RA1の一部は、入口側補助室6のワーク入口6a及び出口側補助室7のワーク出口7aを通じて作業室1における周辺空間に受け入れ、他方、ワーク搬出入口4,5を通じて各補助室6,7に受け入れたワーク処理空間3からの第1排出空気RA1の残部は、補助室排出空気として各補助室6,7の補助室排気口6b,7bを通じて第1還気路20へ排出し、これら補助室排出空気RA1はワーク処理空間3の排気口3bを通じて排出された第1排出空気RA1とともに第1還気路20を通じて処理域11に還送する。
【0055】
これに対し、第2給気路19bを通じた第2除湿空気SA2の供給、並びに、入口側及び出口側の補助室6,7を通じた第1排出空気RA1の受け入れに伴いサブドライエリアとしての作業室1から排出される第2排出空気RA2は、その一部を排気路21を通じて系外に排出し、残部を第2還気路22を通じ第2処理域12に送給して第2処理域12に位置する吸着ロータ部分に通風することで除湿する。
【0056】
また、外気路23を通じて導く外気OAを外気処理域13に送給して外気処理域13に位置する吸着ロータ部分に通風することで除湿する。
【0057】
そして、第2処理域12から送出される除湿第2排出空気RA2′を第2処理域出口路24を通じて、第1還気路20が導く第1排出空気RA1に合流させるとともに、外気処理域13から送出される除湿外気OA′を外気処理域出口路25を通じて、同じく第1還気路20が導く第1排出空気RA1に合流させ、これにより、ワーク処理空間3の排気口3bから排出される低湿の第1排出空気RA1と、補助室排気口6b,7bから排出される補助室排出空気RA1(実質的にはワーク処理空間3から排出される低湿の第1排出空気)と、第2処理域12から送出される除湿第2排出空気RA2′と、外気処理域13から送出される除湿外気OA′とを混合して、その混合空気MAを主たる除湿対象空気(即ち、ワーク処理空間3及び作業室1における周辺空間に供給する除湿空気SAの原空気)として処理域11に送給する。
【0058】
つまり、処理域11よりも除湿効果の低い第2処理域12で予め除湿した除湿第2排出空気RA2′及び、第2処理域12よりもさらに除湿効果の低い外気処理域13で予め除湿した除湿外気OA′を低湿の第1排出空気RA1に混合して、その混合空気MAを主たる除湿対象空気として処理域11に送給することで、外気混合による湿度面での混合損失、及び、排気混合による湿度面での混合損失を回避して、処理域11の除湿負荷を軽減し、これにより、前述した第1出口11Xと第2出口11Yとの区分によるワーク処理空間3の低湿化促進と相俟って、ワーク処理空間3を一層効率的かつ効果的に低湿化し得るようにしてある。
【0059】
なお、パージ域10に通過させるパージ用気体PAについては、外気処理域13から外気処理域出口路25へ送出される除湿外気OA′の一部を外気処理域出口路25からパージ域入口路25Bへ分流させて、その分流除湿外気OA′をパージ用気体としてパージ域10に通過させるようにしてある。
【0060】
サブドライエリアとしての作業室1に第2除湿空気SA2を供給する第2給気路19bには、給気切換手段として、第2給気路19bから分岐してワーク処理空間3に接続した分岐給気路26を設けるとともに、第2除湿空気SA2を第2給気路19bを通じて作業室1に供給する通常給気状態と、第2除湿空気SA2を第2給気路19bから分岐給気路26を通じてワーク処理空間3に供給する非常時給気状態とに、第2除湿空気SA2の給気状態を切り換える給気切換ダンパ27を設けてある。
【0061】
即ち、ワーク処理空間3の隔壁2に設けられた常閉扉である非常用ドア28aが開かれるなどして、作業室1の室内空気などの相対的に高湿な外部空気がワーク処理空間3に侵入する状態になったとき、ないし、その虞が生じたときには、上記給気切換ダンパ27により第2除湿空気SA2の給気状態を上記の通常給気状態から非常時給気状態に切り換えて、第2除湿空気SA2の一部又は全部を第1除湿空気SA1とともにワーク処理空間3に供給することで、ワーク処理空間3の気圧を上昇させてワーク処理空間3への外部空気の侵入を防止するとともに、その侵入防止状態での第1及び第2除湿空気SA1,SA2の供給により、ワーク処理空間3の低湿状態を確実かつ安定的に保持し得るようにしてある。
【0062】
なお、非常用ドア28aが開かれたとき給気切換ダンパ27を切り換えて、第2除湿空気SA2の給気状態を通常給気状態から非常時給気状態に切り換える場合、ドアセンサにより非常用ドア28aの開扉を検知したり、ワーク処理空間3の気圧を圧力センサにより検出して、その気圧検出に基づき非常用ドア28aの開扉を検知し、これら開扉検知に基づいて給気切換ダンパ27を自動的に切り換え動作させる風量制御手段を設けるのが望ましい。
【0063】
換言すれば、この風量制御手段は、常閉扉の開放時にワーク処理空間3に対する除湿空気の給気風量を自動的に増大させる。
【0064】
図1においてFはファンを示し、また、Vは風量調整用のダンパを示す。
【0065】
周辺空間に対する連通口であるワーク処理空間3のワーク搬出入口4,5、並びに、周辺空間に対して開口する外部開口である各補助室6,7のワーク入出口6a,7aの夫々は、図1及び図3に示すように、拡張側開口29aが上流側(即ち、ワーク処理空間3の側)に対して開口し、かつ、縮小側開口29bが下流側(即ち、周辺空間の側)に対して開口するラッパ状のベルマウス構造にしてある。
【0066】
また、非常用ドア28aを装備した臨時開口としての非常口28も同様のベルマウス構造にしてある。
【0067】
つまり、上記ベルマウス構造による気流案内により各口4,5,6a,7a,28の通過気流を乱れの少ない円滑かつ安定的な気流し、これにより、通過気流の乱れによる部分的な渦流や逆流に原因して各口下流側の相対的に高湿な空気が各口の上流側へ侵入することを防止し、そのことで、ワーク処理空間3を一層確実かつ安定的にワーク処理に適した低湿環境に保ち得るように、また、ワーク処理空間3を一層効果的かつ効率的に低湿化し得るようにしてある。
【0068】
上記ベルマウス構造について具体的には、縦断面視において筒孔の内周面が拡張側開口29aの側ほど筒孔中心軸芯pから大きく離間する湾曲形状(即ち、ラッパ状)の筒体29cを開口形成部材とし、その筒体29cをワーク処理空間3の隔壁2や補助室6,7の室壁に対して貫通状態に装備することで、その筒体29cの筒孔を上記の各口4,5,6a,7a,28にしてある。
【0069】
筒体29cは、その拡張側開口29aがワーク処理空間3の隔壁2や補助室6,7の室壁における壁面上に位置する状態にして装備してあり、筒体29cにおける縮小側開口29bの部分は、ワーク処理空間3の隔壁2や補助室6,7の室壁から空気通過方向の下流側へ突出させてある。
【0070】
また、壁から突出させる筒体29cの縮小側開口部は、筒孔中心軸芯p(即ち、ベルマウス中心軸芯)の方向に延びる直筒状部29dにしてあり、この直筒状部29dによる通過気流の案内により、上記ベルマウス構造による通過気流の案内と相俟って、各口4,5,6a,7a,28における通過気流を一層乱れの少ないものにする。
【0071】
なお、筒体29cにおける筒孔の横断面形状は円形に限られるものではなく、四角形やその他の多角形あるいは楕円形状などであってもよい。
【0072】
ワーク処理空間3と各補助室6,7との間の隔壁部分には、ワーク処理空間3の気圧上昇によりダンパ前後の気圧差が大きくなるほど開度が大きくなる差圧ダンパ30を装備してあり、また、各補助室6,7と周辺空間との間の仕切壁部分にも、各補助室6,7の気圧上昇によりダンパ前後の気圧差が大きくなるほど開度が大きくなる同様の差圧ダンパ31を装備してある。
【0073】
即ち、これら差圧ダンパ30の開度変化により、ワーク処理空間3や各補助室6,7の気圧変動を抑制することで、前記した各口4,5,6a,7a,28のベルマウス構造化と相俟って、各口4,5,6a,7a,28での通過気流の乱れに原因する下流側から上流側への高湿空気の侵入を一層確実かつ効果的に防止する。
【0074】
〔第2実施形態〕
図4は、ワーク処理空間3に要求される低湿度条件が比較的緩くて高湿で、ワーク処理空間3と作業室1における周辺空間との湿度差条件が比較的小さい場合に好適な簡易式の低湿ワーク処理設備を示す。
【0075】
この簡易式の低湿ワーク処理設備では、第1実施形態の低湿ワーク処理設備との主な相違点として、第2処理域12、第2還気路22、ワーク処理空間3の排気口3b、補助室排気口6b,7bを省略してある。
【0076】
そして、第1給気路19aを通じた第1除湿空気SA1の供給に伴いワーク処理空間3から排出される第1排出空気RA1は、その全量をワーク搬出入口4,5から入口側及び出口側の補助室6,7を通じてサブドライエリアとしての作業室1内に受け入れる。
【0077】
また、第2給気路19bを通じた第2除湿空気SA2の供給、並びに、入口側及び出口側の補助室6,7を通じた第1排出空気RA1の受け入れに伴いサブドライエリアとしての作業室1から排出される第2排出空気RA2は、その一部を排気路21を通じて系外に排出し、残部は還気路22Aを通じて処理域11に送給する。
【0078】
外気処理域13から送出される除湿外気OA′は、外気処理域出口路25Aを通じて還気路22Aにおける第2排出空気RA2に合流させ、これにより、サブドライエリアとしての作業室1からの第2排出空気RA2と除湿外気OA′とを混合して、その混合空気MAを主たる除湿対象空気として処理域11に送給するようにしてある。
【0079】
ワーク処理空間3のワーク搬出入口4,5、各補助室6,7のワーク入出口6a,7a、非常用ドア28aを備える非常口28の夫々は、第1実施形態と同様、ベルマウス構造にしてあり、また、ワーク処理空間3と各補助室6,7との間の隔壁部分、及び、各補助室6,7と周辺空間との間の仕切壁部分には、第1実施形態と同様の差圧ダンパ30,31を装備してある。
【0080】
なお、第1実施形態の低湿処理設備と同等の構成部分については、第1実施形態で用いた符号と同一の符号を付してある。
【0081】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を列記する。
【0082】
前述の実施形態では、除湿機8における処理域11の出口を第1出口11Xと第2出口11Yと区分して、第1出口11Xから送出される除湿度の高い第1除湿空気SA1をワーク処理空間3に供給し、第2出口11Yから送出される除湿度の低い第2除湿空気SA2をワーク処理空間3の周辺空間に供給する例を示したが、これに代え、ワーク処理空間3に供給する除湿空気とその周辺空間に供給する除湿空気とを各別の除湿機により生成すうようにしてもよく、また、周辺空間に対する除湿空気の供給を省略して、ワーク処理空間3にのみ除湿空気を供給するようにしてもよい。
【0083】
前述の実施形態では、各口4,5,6a,7a,28をベルマウス構造29にするのに、拡張側開口29aが壁面上に位置するように筒体29cを装備したが、逆に、縮小側開口29bを壁面上に位置させて拡張側開口29aの部分を壁面から突出させるように筒体29cを配置してもよく、また、拡張側開口29aの部分と縮小側開口29bの部分との両方を互いに逆向きに壁面から突出させるように筒体29cを配置してもよい。
【0084】
ベルマウス構造29にしてワーク処理空間3の隔壁2に設ける連通口は、ワーク搬入出口に限られるものではなく、ワーク処理機器の移動用開口やワーク処理操作の操作用開口、あるいは、点検口などの常閉扉を備える臨時開口など、どのような用途の開口であってもよい。
【0085】
また、ワーク処理空間3の用途も、リチウム電池の製造に限らず、低湿度環境を必要とする用途であれば、どのような用途であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明による低湿処理設備は、低湿度環境を要する各種分野において、その低湿度環境の形成に適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
4,5 連通口,ワーク搬入出口
2 隔壁
3 ワーク処理空間
SA1,SA2 除湿空気
8,19a 給気手段
29a 拡張側開口
29 ベルマウス構造
29d 直筒状部
6a,7a 外部開口
6,7 補助室
8,19b 補助給気手段
26,27 給気切換手段
28a 常閉扉
28 臨時開口
30 差圧ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺空間に対する連通口を備える隔壁によりワーク処理空間を囲い、このワーク処理空間に除湿空気を供給して、前記ワーク処理空間を低湿環境にする低湿化用の給気手段を備える低湿処理設備であって、
前記連通口を、拡張側開口が前記ワーク処理空間に対して開口するベルマウス構造にしてある低湿処理設備。
【請求項2】
前記連通口のベルマウス構造における縮小側開口部をベルマウス構造の中心軸芯方向に延びる直筒状部にしてある請求項1記載の低湿処理設備。
【請求項3】
前記連通口が、前記ワーク処理空間に対するワーク搬入出口である請求項1又は2記載の低湿処理設備。
【請求項4】
前記連通口を通じて前記ワーク処理空間に連通し、かつ、前記周辺空間に対して開口する外部開口を備える補助室を設け、
前記連通口のベルマウス構造化とともに、前記外部開口を、拡張側開口が前記補助室に対して開口するベルマウス構造にしてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の低湿処理設備。
【請求項5】
前記給気手段による前記ワーク処理空間への除湿空気の供給に伴い前記周辺空間に除湿空気を供給する補助給気手段を設け、
この補助給気手段により前記周辺空間に供給する除湿空気の一部又は全部を、前記周辺空間に供給する通常給気状態から前記ワーク処理空間に供給する非常時給気状態に切り換える給気切換手段を設けてある請求項1〜4のいずれか1項に記載の低湿処理設備。
【請求項6】
常閉扉を備える臨時開口を前記隔壁に設け、
前記連通口のベルマウス構造化とともに、前記臨時開口を、拡張側開口が前記ワーク処理空間に対して開口するベルマウス構造にしてある請求項1〜5のいずれか1項に記載の低湿処理設備。
【請求項7】
前記臨時開口における前記常閉扉の開放時に前記ワーク処理空間に対する除湿空気の給気風量を自動的に増大させる風量制御手段を設けてある請求項6記載の低湿処理設備。
【請求項8】
前記隔壁に、前記ワーク処理空間の気圧上昇によりダンパ前後の気圧差が大きくなるほど開度が大きくなる差圧ダンパを設けてある請求項1〜7のいずれか1項に記載の低湿処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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