説明

低粘性ペースト樹脂組成物

【課題】塩化ビニル系ペースト樹脂組成物、特に無機物が配合された系において、減粘効果が高く、経時の粘度変化が少なく、高せん断速度から低せん断速度までの広範囲な減粘効果が高く、揮発性の少ない、かつ安全性の高い減粘剤を含有した低粘性ペースト樹脂組成物を提供する。
【解決手段】塩化ビニル系ペースト用樹脂100質量部に対して、縮合ヒドロキシ脂肪酸を0.1から5.0質量部、及びアルキル基の炭素数が8〜18の脂肪酸と炭素数が1〜18の脂肪族モノアルコールの脂肪族モノアルコール脂肪酸エステルを1.0から10質量部、含有することを特徴とするペースト樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙、玩具、床材、手袋、シーリング材などに利用されている低粘性ペースト樹脂組成物に関し、詳しくは塩化ビニル系ペースト樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト樹脂組成物は塩化ビニル等のモノマーを乳化重合やミクロ懸濁重合して得られた樹脂ラテックスを噴霧乾燥した樹脂粉体と、可塑剤{通常、ジオクチルフタレート(DOP)やジイソノニルフタレート(DINP)が使用される。}、希釈剤、炭酸カルシウム等の無機系化合物(フィラーともいわれる。)、顔料、難燃剤、発泡剤、安定剤等を配合したもので、加工法はカレンダー加工、押出し機による加工、回転成形、スラッシュ成形、ディップ成形などのモールディング加工、スプレッド加工、スプレー加工など様々な加工法がその用途により利用されている。
【0003】
多くのペースト樹脂組成物はコストダウンや剛性の向上の目的で大量の無機系化合物などを添加しているために液粘度が高くなってしまい加工しにくいという問題点がある。
【0004】
この問題に対して、ペースト樹脂組成物の加工における作業性、加工性改良の目的でペースト液粘度を低下させる減粘剤が使用されている。一般には減粘剤としてアルキルベンゼンやミネラルスピリット、パラフィンなどの炭化水素系化合物、陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどが知られている。
【0005】
減粘剤の主流としては炭化水素系化合物がコストと性能から多く使用されてきたが、昨今の環境への配慮からVOC(揮発性有機化合物;Volatile Organic Compounds)が大きな問題となってきている。特にペースト樹脂組成物を用いて加工される壁紙などではVOCがシックハウスの原因物質と特定され、その対応が求められている。
【0006】
塩化ビニル系ペースト樹脂組成物の非炭化水素系減粘剤として、多価アルコール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル(例えば、特許文献1参照)、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(例えば、特許文献2参照)、炭素数1から20の脂肪酸と炭素数1から20の脂肪族アルコールのエステルで合計の炭素数が5から35のものとアルキル基の炭素数が8から20のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを併用する技術(例えば、特許文献3参照)が知られているが、低せん断速度から高せん断速度までの広範囲な減粘効果、コストに関して満足のいくものではなく、更なる改善が望まれていた。
【特許文献1】特開平11−130893号公報
【特許文献2】特開平9−324090号公報
【特許文献3】特開2001−335696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、塩化ビニル系ペースト樹脂組成物、特に無機物が配合された系において、減粘効果が高く、経時の粘度変化が少なく、高せん断速度から低せん断速度までの広範囲な減粘効果が高く、揮発性の少ない、かつ安全性の高い減粘剤を含有した低粘性ペースト樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、下記構成によって解決できた。
1.塩化ビニル系ペースト用樹脂100質量部に対して、
縮合ヒドロキシ脂肪酸(以下「A成分」という。)を0.1から5.0質量部、
及びアルキル基の炭素数が8〜18の脂肪酸と炭素数が1〜18の脂肪族モノアルコールの脂肪族モノアルコール脂肪酸エステル(以下「B成分」という。)を1.0から10質量部
含有することを特徴とするペースト樹脂組成物。
【0009】
2.上記A成分とB成分の比率が、A/B=1/99〜50/50であることを特徴とする前記1に記載のペースト樹脂組成物。
【0010】
3.塩化ビニル系ペースト用樹脂100質量部に対して、
ヨウ素価が70以上である大豆油、なたね油、大豆油、ひまわり油、綿花油、トウモロコシ油、オリーブ油、ひまし油などの不飽和脂肪酸トリグリセリド(以下「C成分」という。)から選ばれる1種又は2種以上を、1.0から5.0質量部
含有することを特徴とする前記1又は2に記載のペースト樹脂組成物。
【0011】
4.塩化ビニル系ペースト用樹脂100質量部に対して、
可塑剤を20から120質量部、無機系化合物を10から200質量部
含有することを特徴とする前記1、2又は3のいずれかに記載のペースト樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明品を用いることで、塩化ビニル系ペースト樹脂組成物、特に無機系化合物の配合された系において、高せん断速度から低せん断速度までの広範囲で優れた減粘効果が発揮され、また経時の粘度変化も少ない安定したペースト樹脂組成物が得られた。
【0013】
また、同ペースト樹脂組成物を成型した場合でもシートの表面状態、ブリード性において従来品と比べ弊害を与えなかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において減粘剤として用いられる縮合ヒドロキシ脂肪酸(A成分)とは、ヒドロキシ脂肪酸の縮合物である。ヒドロキシ脂肪酸とは、分子内に1個以上の水酸基を有する脂肪酸であり、具体的に示すと、例えば、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、水素添加ヒマシ油脂肪酸(12−ヒドロキシステアリン酸の他に少量のステアリン酸及びパルミチン酸を含有する脂肪酸)、サビニン酸、2−ヒドロキシテトラデカン酸、イプロール酸、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、ヤラピノール酸、ユニぺリン酸、アンブレットール酸、アリューリット酸、2−ヒドロキシオクタデカン酸、18−ヒドロキシオクタデカン酸、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸、カムロレン酸、フェロン酸、セレブロン酸、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられ、これらの一種又は二種以上の混合物として利用される。ヒドロキシ脂肪酸の中では炭素数8〜22のものが好ましく、更に好ましくは炭素数12〜20である。その中でもリシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、水素添加ヒマシ油脂肪酸が好ましく、リシノレイン酸と12−ヒドロキシステアリン酸が特に好ましい。
【0015】
上記ヒドロキシ脂肪酸を、触媒無添加または、触媒として酸、アルカリ、金属酸化物などを用いて150℃から250℃の範囲で脱水縮合反応することにより得られる。縮合度は2から7が好ましい。縮合ヒドロキシ脂肪酸の配合量は、最終製品の性能面から、塩化ビニル系ペースト用樹脂100質量部に対し、0.1質量部から5.0質量部である。配合量が5.0質量部を超える場合には、ペースト樹脂組成物の高せん断速度下での粘度低下が劣り、成型後の表面にべたつきが見られ好ましくない。一方、0.1重量部に満たない場合、本発明の効果が得られない。
【0016】
縮合度は、次式で求められる。
縮合度=縮合前の脂肪酸の中和価/縮合後の酸価。
中和価とは、脂肪酸1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmgである。
【0017】
また、酸価とは、油脂およびエステル1g中に含まれている遊離脂肪酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmgである。
【0018】
測定例を用いて説明すると、縮合前のリシノレイン酸の中和価は、181であった。
縮合ヒドロキシ脂肪酸の酸価が25の場合、縮合度は181/25=7.24となる。
【0019】
本発明に用いられる脂肪族モノアルコール脂肪酸エステル(B成分)の脂肪酸については、アルキル基の炭素数が8から18のものであり、一般に市販されているカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、イソステアリン酸などが挙げられる。炭素数が8未満及び炭素数が18を超える脂肪酸は、塩化ビニル系ペースト用樹脂に混合する際に分散性が悪いため好ましくなく、また、塩化ビニル系ペースト樹脂組成物の減粘効果が劣る。
【0020】
脂肪族モノアルコールに関しては、炭素数が1から18の1価のアルコールであり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどが挙げられる。炭素数が18を超える1価のアルコールは、塩化ビニル系ペースト用樹脂に混合する際に分散性が悪いため好ましくなく、また、塩化ビニル系ペースト樹脂組成物の減粘効果が劣る。
【0021】
本発明に用いられる(A成分)と(B成分)の比率は、1/99〜50/50であることが好ましい。(A成分)が(B成分)より多くなると、高せん断速度下でのペースト樹脂組成物の粘度低下が劣る傾向にあり好ましくない。
【0022】
脂肪族モノアルコール脂肪酸エステル(B成分)の合成法としては脂肪酸とアルコールを等モルで仕込み触媒無添加または触媒として酸、アルカリ、金属酸化物などを添加し、高温でエステル化する方法が一般に知られている。脂肪族モノアルコール脂肪酸エステル(B成分)の配合量は、最終製品の性能面から、塩化ビニル系ペースト用樹脂100質量部に対し、1.0質量部から10質量部である。配合量が10質量部を超える場合には、成型後の表面にべたつきが見られ好ましくない。一方、1.0質量部未満では、本発明の効果が得られない。
【0023】
ヨウ素価が70以上である不飽和脂肪酸トリグリセライド(C成分)については市販されている大豆油、なたね油、大豆油、ひまわり油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ひまし油などが挙げられる。ヨウ素価が70以上である不飽和脂肪酸トリグリセライドは、低せん断速度下での粘度低下に優れ、また比較的分子量が大きいため揮発し難くい特徴がある。
【0024】
ヨウ素価70未満の不飽和脂肪酸トリグリセライドに関しては、融点が高いことによるハンドリング性の悪さ及びペースト用樹脂に混合する際の分散性が悪いため、結果としてペースト樹脂組成物の粘度低下効果が劣り、また成型後の成型品表面のブリードや荒れが見られ好ましくない。
【0025】
ヨウ素価70以上の不飽和脂肪酸トリグリセリド(C成分)の配合量は、最終製品の性能面から、塩化ビニル系ペースト用樹脂100質量部に対し、1.0質量部から5.0質量部である。配合量が5.0質量部を超える場合には、成型後の表面にべたつきが見られ好ましくない。一方、1.0質量部未満では、本発明の効果が得られない。
【0026】
好ましい本発明の塩化ビニル系ペースト樹脂組成物は、塩化ビニル系ペースト用樹脂と可塑剤、安定剤、無機系化合物(フィラー)などと、本発明の減粘剤を含有する。
【0027】
本発明で用いられる塩化ビニル系ペースト用樹脂としては、数平均重合度が約600から約2000の範囲のポリ塩化ビニルまたはビニル系共重合体である。ビニル系共重合体としてはポリ塩化ビニリデン、塩化ビニルとエチレン、プロピレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、マレイン酸、アクリル酸などのモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0028】
塩化ビニル系ペースト用樹脂はペースト配合に最も利用されており、ビニルモノマーを乳化重合や微粒子縣濁重合などにより、0.1μmから50μmの真球状に近い形状物として得られた重合度600から2000のものが好適に用いられる。
【0029】
本発明で使用される可塑剤についてはDOP(ジオクチルフタレート)やDINP(ジイソノニルフタレート)などのフタル酸系化合物、トリオクチルトリメリテートなどの芳香族多塩基酸エステル、DOA(ジ−2−エチルヘキシルアジペート),DINA(ジイソノニルアジペート)などのアジピン酸系化合物などの二塩基酸化合物、クエン酸、トリメリット酸などの三塩基酸化合物、りん酸系化合物、オクチルオレートなどの脂肪酸エステル類、エポキシ化大豆油などのエポキシ系化合物、アセチル化モノグリセライドなどが挙げられる。可塑剤の配合量は、最終製品の性能面から、塩化ビニル系ペースト用樹脂100質量部に対し、20質量部から120質量部が好ましい。
【0030】
本発明で使用される安定剤については金属石鹸系のBa/Zn系、Ca/Zn系やSn系安定剤、Pb系安定剤等が挙げられる。
【0031】
本発明で使用される無機系化合物については一般的に炭酸カルシウムが挙げられるが、タルク、カオリンクレー、マイカ、シリカ、アルミナ、硫酸バリウムが他に挙げられる。無機系化合物の添加量は、減粘効果や最終製品の性能面から、塩化ビニル系ペースト用樹脂100質量部に対し、10〜200質量部が好ましい。
【0032】
本発明において、発泡剤が配合される場合、発泡剤としてはアゾジカルボン酸アミド(ADCA)が一般的であるが、他にアゾビスイソブチルニトリル(AIBN)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等が挙げられる。
【0033】
本発明のペースト樹脂組成物は、上記成分以外に通常のペースト用に使用される希釈剤、滑剤、難燃剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宣含有することができる。
【0034】
本発明のペースト樹脂組成物は、塩化ビニル系ペースト用樹脂に上記可塑剤等の添加剤を添加し、通常用いられるリボンブレンダー、スーパーミキサー、ディスパー、ディゾルバーなどで攪拌することにより得られる。このようにして、得られたペースト樹脂組成物は、経時での粘度上昇も少なく、希釈剤を用いる場合よりも環境負荷は少ない。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
[実施例及び比較例試料の調整]
本発明のA成分である縮合ヒドロキシ脂肪酸は、リシノレイン酸及び12−ヒドロキシステアリン酸を用いて縮合反応を行った。
【0036】
ヒドロキシ脂肪酸の縮合反応は、リシノレイン酸又は12−ヒドロキシステアリン酸800gを1000L容フラスコに仕込み、アルカリ触媒を加え、不活性ガス気流下で200℃まで加熱混合し、目的の酸価になるまで縮合反応を行った。
使用原料については市販品を使用した。
上記反応品の詳細は表1にまとめた。
【0037】
【表1】

【0038】
本発明の脂肪族モノアルコール脂肪酸エステル(B成分)は、脂肪族モノアルコール部分をラウリルアルコール、オレイルアルコールを用い、脂肪酸にはオレイン酸を用いてエステル化反応を行った。
【0039】
エステル化反応は、ラウリルアルコール又はオレイルアルコール1モルとオレイン酸1モルをフラスコに仕込み、不活性ガス気流下、無触媒で250℃まで加熱混合し、エステル化反応を行った。
使用原料については市販品を使用した。
上記反応品の詳細は表2にまとめた。
【0040】
【表2】

【0041】
C成分は、菜種白絞油(ヨウ素価=111、日清オイリオ社製)、ハイオレイックひまわり油(ヨウ素価=84、不二製油社製)を用いた。実施例中にそれぞれC−1、C−2で示した。
【0042】
比較用サンプルについては、以下を使用した。
(1)ポリグリセリン縮合リシノレート:リケマールPR−300(理研ビタミン社製)
(2)脂肪族モノアルコール脂肪酸エステル:ベヘニルベヘネート
ベヘニルアルコール(炭素数22)1モルとベヘニン酸(炭素数22)1モルをフラスコに仕込み、不活性ガス気流下、無触媒で250℃まで加熱混合し、エステル化を行った。
(3)不飽和脂肪酸トリグリセリド:精製パーム油(ヨウ素価=52、不二製油社製)
【0043】
[実施例1〜6及び比較例1〜8]
塩化ビニル系ペースト用樹脂としてZEST PQB83(重合度700;新第一塩ビ社製)、可塑剤としてDINP(大八化学社製)およびDINA(三建化工社製)、炭酸カルシウム、酸化チタン、Ba/Zn系安定剤、ADCA系発泡剤を下記表3の比率で配合したものをベース配合とした。
【0044】
上記ベース配合に減粘剤を添加し真空脱泡のできる撹拌機にて10分間、700rpmで混合、脱泡し、塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を調整した。
配合比を表3にまとめた。
また、各実験例、比較例の処方内容を表4にまとめた。
【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
調整された塩化ビニル系ペースト樹脂組成物について下記の方法で粘度(初期粘度と経時粘度)と成型後の分散状態観察(発泡セル状態の確認)、成型品の表面状態(べたつきの有無)の確認を実施した。
【0048】
(1)粘度については脱泡後の塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を2時間、3日間、7日間25℃で保管し、ブルックフィールドBL型粘度計(東京計器社製)のNo.4ローターを用い、回転数6rpm、12rpm、30rpm、60rpmで粘度測定した。
【0049】
ただし、計器上、6rpmでは100000mPa・s以上、12rpmでは50000mPa・s以上、30rpmでは20000mPa・s以上、60rpmでは100000mPa・s以上の粘度は、測定することができない。
評価結果は表5の[まとめ1]に記載した。
【0050】
(2)成形後の分散状態については、所定のサイズの成型枠(縦/横=150/130mm)に調整後、24時間経った塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を、厚み約0.5mmになるように流し込み、200℃の乾燥機に4分保管しゲル化させシートを作成した。
【0051】
同シートの表面の分散状態を肉眼で観察し発泡セル状態の確認を行った。
判定基準としては、
◎:分散性が良好で表面が均一状態
○:極く一部に分散不良が見られる状態
△: 部分的に分散不良が見られる状態
×:分散性が悪く全体に分散不良部が見られる状態
評価結果は表6の[まとめ2]に記載した。
【0052】
(3)成型品の表面状態は、上記(2)で製造したシートを25℃の保管庫に保管し1週間後の表面のべたつき状態を感覚で評価した。
【0053】
判定基準としては、
◎:べたつきなし
△:わずかにべたつく
×:べたつき有り。
評価結果は表6の[まとめ2]に記載した。
【0054】
(4)減粘剤の揮発性評価は、セイコー電子工業社製の示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA6200)を用いて、空気流量200ml/minにて30から300℃の温度範囲を10℃/minで昇温し、その時の減粘剤自身の重量減少率を測定した。
評価結果は表7の[まとめ3]に記載した。
【0055】
【表5】

【0056】
【表6】

【0057】
【表7】

【0058】
表5〜7の結果から明らかなように、本発明の実施例ではペースト樹脂組成物の低粘度化が計られ、加工性の著しい向上が期待できる。また、成型品の表面状態も優れたものが得られる。また、表7の揮発性の結果から、成型加工温度(200度付近)での減粘剤の揮発が少なく、低揮発性のペースト樹脂組成物が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上の結果から、本発明により、ペースト樹脂組成物の系、特に無機系化合物が配合された系において、減粘効果高く、経時の粘度変化が少なく、そのものの安全性が高く、配合コストの削減のために低添加量で効果が高く、低揮発性である減粘剤を配合したペースト樹脂組成物を提供でき、壁紙、玩具、床材、手袋、シーリング材などの広範囲の用途が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系ペースト用樹脂100質量部に対して、
縮合ヒドロキシ脂肪酸(以下「A成分」という。)を0.1から5.0質量部、
及びアルキル基の炭素数が8〜18の脂肪酸と炭素数が1〜18の脂肪族モノアルコールの脂肪族モノアルコール脂肪酸エステル(以下「B成分」という。)を1.0から10質量部
含有することを特徴とするペースト樹脂組成物。
【請求項2】
上記A成分とB成分の比率が、A/B=1/99〜50/50であることを特徴とする請求項1に記載のペースト樹脂組成物。
【請求項3】
塩化ビニル系ペースト用樹脂100質量部に対して、
ヨウ素価が70以上である大豆油、なたね油、大豆油、ひまわり油、綿花油、トウモロコシ油、オリーブ油、ひまし油などの不飽和脂肪酸トリグリセリド(以下「C成分」という。)から選ばれる1種又は2種以上を、1.0から5.0質量部
含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のペースト樹脂組成物。
【請求項4】
塩化ビニル系ペースト用樹脂100質量部に対して、
可塑剤を20から120質量部、無機系化合物を10から200質量部
含有することを特徴とする請求項1、2又は3のいずれかに記載のペースト樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−273981(P2006−273981A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93857(P2005−93857)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(390010674)理研ビタミン株式会社 (236)
【Fターム(参考)】