低級炭化水素芳香族化触媒及び芳香族化合物の製造方法
【課題】メタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度(ベンゼンとトルエンとキシレンの合計生成速度)の活性寿命安定性を向上させると共に触媒活性低下の原因となる炭素の生成速度を低減させて芳香族化合物の生成量を増大させる。
【解決手段】前記課題を解決するための低級炭化水素芳香族化触媒は低級炭化水素及び二酸化炭素と反応して芳香族化合物を生成させる触媒であって、担体であるメタロシリケートにモリブデンと銅を担持した後に焼成してなる。前記モリブデンは前焼成後のモリブデンの担持量が触媒全体量に対して2〜12重量%となると共に前記銅はモリブデンとのモル比Cu:Mo=X:1の比率が0.01〜0.8となるように担持するとよい。前記焼成時の焼成温度は550〜800℃とするとよい。前記メタロシリケートとしてはZSM−5、MCM−22のいずれかがある。
【解決手段】前記課題を解決するための低級炭化水素芳香族化触媒は低級炭化水素及び二酸化炭素と反応して芳香族化合物を生成させる触媒であって、担体であるメタロシリケートにモリブデンと銅を担持した後に焼成してなる。前記モリブデンは前焼成後のモリブデンの担持量が触媒全体量に対して2〜12重量%となると共に前記銅はモリブデンとのモル比Cu:Mo=X:1の比率が0.01〜0.8となるように担持するとよい。前記焼成時の焼成温度は550〜800℃とするとよい。前記メタロシリケートとしてはZSM−5、MCM−22のいずれかがある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタンを主成分とする天然ガス、バイオガス、メタンハイドレートの高度利用に関する。天然ガス、バイオガス、メタンハイドレートは地球温暖化対策として最も効果的なエネルギー資源と考えられ、その利用技術に関心が高まっている。メタン資源はそのままクリーン性を活かして次世代の新しい有機資源、燃料電池用の水素資源として注目されている。特に本発明はメタンからプラスチック類などの化学製品原料であるベンゼン及びナフタレン類を主成分とする芳香族化合物と高純度の水素ガスを効率的に製造するための触媒化学変換技術及びその触媒製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタンからベンゼン等の芳香族化合物と水素とを製造する方法としては触媒の存在下にメタンを反応させる方法が知られている。この際の触媒としてはZSM−5系のゼオライトに担持されたモリブデンが有効とされている(非特許文献1)。しかしながら、これらの触媒を使用した場合でも、炭素の析出が多いことやメタンの転化率が低いという問題を有している。この問題を解決するためにMo(モリブデン)等の触媒材料を多孔質のメタロシロケートに担持した触媒が提案されている(特許文献1〜特許文献3)。
【0003】
特許文献1〜特許文献3では担体である7オングストロームの細孔径を有する多孔質のメタロシリケートに金属成分が担持された触媒を用いることで低級炭化水素が効率的に芳香族化合物化され、これに付随して高純度の水素が得られることが確認されている。前記特許文献によると担体には前記金属成分としてモリブデン、コバルト、鉄等が担持されている。
【非特許文献1】JOURNAL OF CATALYSIS,1997,pp.165,pp.150−161
【特許文献1】特開平10−272366号公報
【特許文献2】特開平11−60514号公報
【特許文献3】特開2004−269398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メタンからベンゼン等の芳香族化合物と水素を製造する方法としては触媒の存在下にメタンを反応させる方法としてZSM−5にモリブデンを担持した触媒が有効とされている。
【0005】
しかし、この触媒が用いられた場合でも炭素の析出が多い。炭素の析出により触媒性能が短時間に劣化する。メタン転化率(芳香族化合物と水素の生成に利用されるメタンの利用率)が低い。特許文献1〜特許文献3のような触媒ではこの問題の改善が十分でないので芳香族化合物の製造効率をさらに高めるために一層優れた触媒の開発が望まれている。
【0006】
メタンをベンゼンに改質する触媒の活用にはメタンの転化率の向上は必須であるが、メタンの転化率を上げるにはメタンガス投入時の反応温度を上げる必要がある。しかしながら、特許文献1〜特許文献3のような触媒では原料ガスとの反応温度を上げると触媒の活性寿命が大幅に低下する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、前記課題を解決するための低級炭化水素芳香族化触媒は低級炭化水素及び炭酸ガスと反応して芳香族化合物を生成させる触媒であって担体であるメタロシリケートにモリブデンと銅を担持した後に焼成してなる。
【0008】
また、前記課題を解決するための芳香族化合物の製造方法は担体であるメタロシリケートにモリブデンと銅を担持した後に焼成してなる触媒に低級炭化水素及び炭酸ガスを反応させて芳香族化合物を生成する。
【0009】
以上の低級炭化水素芳香族化触媒及び芳香族化合物の製造方法によればメタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度(ベンゼンとトルエンとキシレンの合計生成速度)の活性寿命安定性が向上する。また、触媒活性低下の原因となる炭素の生成速度が低減する。前記触媒と反応させる炭酸ガスは一酸化炭素ガスに代えてもよい。
【0010】
前記メタロシリケートとしては4.5〜6.5オングストローム径の細孔を有する多孔質メタロシリケートであるZSM−5、MCM−22が例示列挙される。
【0011】
前記モリブデンはその担持量が焼成後の触媒全体量に対して2〜12重量%となると共に前記銅はモリブデンとのモル比Cu:Mo=X:1の比率が0.01〜0.8となるように担持するとよい。メタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度、BTX生成速度の安定性が長時間維持される。
【0012】
前記メタロシリケートにモリブデンと銅を担持した後の焼成時の焼成温度は550〜800℃であるとよい。触媒の強度及び特性(活性)が維持される。
【0013】
前記炭酸ガスの添加量は反応ガス全体に対して0.5〜6%の範囲であるとよい。炭酸ガスが過不足(0.5%未満)であると析出するコークの酸化作用が低くなり活性寿命安定性が低下し、逆に過剰(6%以上)であるとメタンガスの直接酸化反応により水素及び一酸化炭素が過剰に生成し、反応に必要なメタンガス濃度が低下するので、ベンゼンの生成量が低下する。そこで、反応ガス全体に対して炭酸ガスの添加量を0.5〜6%の範囲とすることでメタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度、BTX生成速度を効率よく安定させることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上の発明によればメタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度(ベンゼンとトルエンとキシレンの合計生成速度)の活性寿命安定性が向上する。また、触媒活性低下の原因となる炭素の生成速度が低減する。したがって、ベンゼン、トルエン等の有用成分である芳香族化合物の生成量が増大する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明に係る低級炭化水素芳香族化触媒はモリブデン及びその化合物から選ばれた少なくとも一種以上を触媒材料として含有する。芳香族化合物を製造する際には前記低級炭化水素芳香族化触媒は低級炭化水素の他に二酸化炭素と反応させる。前記金属成分を担持する担体は実質的に4.5〜6.5オングストローム径の細孔を有する多孔質メタロシリケートを含んでいる。このメタロシリケートには第一金属成分としてモリブデンが担持され、モリブデン以外の第二金属成分として銅が担持される。前記モリブデン成分及び銅成分は酢酸銅または硝酸銅とモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液に前記メタロシリケートを添加してモリブデン成分と銅成分とをメタロシリケートに含浸させた後に乾燥及び焼成に供すれば前記メタロシリケートに担持される。このように多孔質メタロシリケートにMoC(炭化モリブデン)すなわちモリブデン成分を単独で担持するのではなくモリブデン成分に加えて銅を第二金属成分として担持することにより触媒の安定性が得られる。特に、メタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度(ベンゼンとトルエンとキシレンの合計生成速度)の活性寿命安定性が向上する。
【0016】
以下の実施例に基づき本発明の低級炭化水素芳香族化触媒について説明する。
【0017】
1.低級炭化水素芳香族化触媒(以下、触媒と略称する)の製造
(比較例1)
比較例1の触媒はメタシリケートとしてアンモニウム型ZSM−5(SiO2/Al2O3=25〜70)が採用され、これにモリブデンのみが担持されたものである。
【0018】
(1)配合
無機成分の配合:ZSM−5(82.5重量%)、粘土(10.5重量%)、ガラス繊維(5重量%)
全体配合:前記無機成分(76.5重量%)、有機バインダー(17.3重量%)、水分(24.3重量%)
(2)成型
前記配合比率で前記無機成分と有機バインダーと水分とを配合し混練手段(ニーダ)によって混合、混練した。次に、この混合体を真空押し出し成型機によって棒状(径5mm×長さ10mm)に成型した。このときの成型時の押し出し圧力は2〜8MPaに設定した。
【0019】
(3)モリブデンの含浸
攪拌されたモリブデン酸アンモニウム水溶液に前記成型工程で得られた成型体を添加してモリブデン成分を前記成型体に含浸させた後に以下の乾燥及び焼成の工程に供した。尚、前記成型体は焼成後の触媒全体量に対してモリブデンの重量比が6重量%となるように添加した。
【0020】
(4)乾燥、焼成
乾燥工程では成型工程時に添加した水分を除去するために70℃で約12時間行なった。焼成工程では空気中で550℃、5時間焼成した。焼成工程での焼成温度は550〜800℃の範囲とした。550℃以下では担体の強度低下、800℃以上では特性(活性)の低下が起こるためである。焼成工程における昇温速度及び降温速度は90〜100℃/時に設定した。このとき、成型時に添加した有機バインダーが瞬時に燃焼しないように250〜450℃の温度範囲の中に2〜6時間程度の温度キープを2回実施してバインダーを除去した。昇温速度及び降温速度が前記速度以上であってバインダーを除去するキープ時間を確保しない場合にはバインダーが瞬時に燃焼して焼成体の強度が低下するためである。
【0021】
(5)炭化処理
前記焼成体をCH4とH2の混合ガス(メタン/水素=1/4の混合モル比)を流通下で700℃まで2時間で昇温させ、この状態を3時間維持させた後にこの雰囲気をCH4の反応ガスに切り替え、780℃まで昇温した。
【0022】
(比較例2)
比較例2の触媒はモリブデンとコバルトとを担持したもので、含浸工程以外は比較例1の触媒の配合及び製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0023】
含浸工程では酢酸コバルトとモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌させた状態の含浸水溶液に比較例1に係る成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分とコバルト成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンとコバルトとを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、コバルトの担持量はモリブデンとのモル比でコバルト:モリブデン=0.3:1.0となるように設定した。
【0024】
(比較例3)
比較例3の触媒はモリブデンと鉄とを担持したもので、含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0025】
含浸工程では酢酸鉄とモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌させた含浸水溶液に比較例1に係る成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と鉄成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと鉄とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、鉄の担持量はモリブデンとのモル比で鉄:モリブデン=0.3:1.0となるように設定した。
【0026】
(実施例1)
実施例1の触媒はモリブデンと銅とを担持したもので、含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0027】
含浸工程では酢酸銅とモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌された状態の含浸水溶液に比較例1に係る成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と銅成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと銅とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、銅の担持量はモリブデンとのモル比で銅:モリブデン=0.3:1.0となるように設定した。
【0028】
2.比較例及び実施例の触媒の評価
比較例及び実施例の触媒の評価法について述べる。
【0029】
固定床流通式反応装置のインコネル800H接ガス部カロライジング処理製反応管(内径18mm)に評価対象の触媒を14g充填(ゼオライト率82.50%)した。そして、この反応管に各種の反応ガスを供給して、反応空間速度=3000ml/g−MFI/h(CH4gas flow base)、反応温度780℃、反応時間24時間、反応圧力0.3MPaの条件で、触媒と反応ガスとを反応させた。この際、生成物の分析を行い、メタン転化率、水素生成速度、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度、BTX生成速度及び炭素生成速度を経時的に調べた。前記生成物の分析はTCD−GC、FID−GCを用いて行った。
【0030】
メタン転化率、水素生成速度、ベンゼン生成速度,ナフタレン生成速度、BTX生成速度及び炭素生成速度は次の通り定義される。
【0031】
「メタン転化率(%)」=〔(「原料メタン流速」−「未反応のメタン流速」)/「原料メタン流速」〕×100
「ベンゼン生成速度」=「触媒1gあたり、1秒間に生成したベンゼンのnmol数」。
【0032】
「ナフタレン生成速度」=「触媒1gあたり、1秒間に生成したナフタレンのnmol数」。
【0033】
「BTX生成速度」=「触媒1gあたり、1秒間に生成したベンゼン、トルエン及びキシレンの合計nmol数」。
【0034】
「炭素生成速度」=「触媒1gあたり、1秒間に生成した炭素のnmol数」。
【0035】
図1は比較例1に係る触媒(Mo)及び実施例1に係る触媒(Cu/Mo)を、反応ガスとして100%のメタンガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素添加メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合のメタン転化率の経時的変化を示す。
【0036】
図2は比較例1及び実施例1に係る触媒を、反応ガスとして100%のメタンガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素添加メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化を示す。
【0037】
図3は比較例1及び実施例1に係る触媒を、反応ガスとして100%のメタンガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素添加メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合のナフタレン生成速度の経時的変化を示す。
【0038】
図4は比較例1及び実施例1に係る触媒を、反応ガスとして100%のメタンガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素添加メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合のBTX生成速度の経時的変化を示す。
【0039】
図5は比較例1及び実施例1に係る触媒を反応ガスとして100%のメタンガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素添加メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合の炭素生成速度の経時的変化を示す。
【0040】
図1〜図4の特性図から明らかなように銅(Cu)をモリブデン(Mo)と共に担持した触媒は、100%メタンガスとの反応及び6.2%水素添加メタンガスとの反応においてモリブデン(Mo)のみを担持した触媒と同程度のメタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度を示しており、100%メタンガスとの反応及び6.2%水素添加メタンガスとの反応においては銅(Cu)を担持したことの効果はほとんど見られない。
【0041】
これに対して3%炭酸ガス添加メタンガスとの反応の場合、銅(Cu)をモリブデン(Mo)と共に担持した触媒のメタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度の活性寿命がモリブデン(Mo)のみを担持した触媒に比べ向上していることがわかる。
【0042】
すなわち、銅(Cu)をモリブデン(Mo)と共に担持した触媒によるメタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度の活性寿命の向上は炭酸ガスを含んだメタンガスとの反応において顕著に現れることが示された。また、図5の特性図から明らかなように炭酸ガスを含んだメタンガスと反応させると炭素生成速度が顕著に低下することが確認された。
【0043】
次に、比較例1〜比較例3及び実施例1に係る触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のメタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度、BTX生成速度及び炭素生成速度の経時的変化について検証した。検証方法を以下に示した。
【0044】
固定床流通式反応装置のインコネル800H接ガス部カロライジング処理製反応管(内径18mm)に評価対象の触媒を14g充填(ゼオライト率82.50%)した。そして、この反応管に反応ガスとして炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3とした)を供給して、反応空間速度=3000ml/g−MFI/h(CH4gas flow base)、反応温度780℃、反応時間24時間、反応圧力0.3MPaの条件で、触媒と反応ガスとを反応させた。この際、生成物の分析を行い、メタン転化率、水素生成速度、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度、BTX生成速度及び炭素生成速度を経時的に調べた。前記生成物の分析はTCD−GC、FID−GCを用いて行った。
【0045】
図6は比較例1〜比較例3及び実施例1に係る触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のメタン転化率の経時的変化を示す。この特性図に示されたメタン転化率の経時的変化から明らかなように実施例1の触媒(モリブデンと銅とを担持した触媒(Cu/Mo))によれば従来技術に係る比較例1の触媒(モリブデンのみを担持した触媒(Mo))比較例2の触媒(モリブデンとコバルトとを担持した触媒(Co/Mo))、比較例3の触媒(モリブデンと鉄とを担持した触媒(Fe/Mo))と比較してメタン転化率の活性寿命の安定性が向上している。
【0046】
図7は比較例1〜比較例3及び実施例1に係る触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化を示す。この特性図から明らかなように実施例1の触媒(Cu/Mo)によれば従来技術に係る比較例1の触媒(Mo)、比較例2の触媒(Co/Mo)、比較例3の触媒(Fe/Mo)と比較してベンゼン生成速度の活性寿命の安定性が向上している。
【0047】
図8は比較例1〜比較例3及び実施例1に係る触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のナフタレン生成速度の経時的変化を示す。この特性図から明らかなように実施例1の触媒(Cu/Mo)によれば従来技術に係る比較例1の触媒(Mo)、比較例2の触媒(Co/Mo)、比較例3の触媒(Fe/Mo)と比較してナフタレン生成速度の活性寿命の安定性が向上している。
【0048】
図9は比較例1〜比較例3及び実施例1に係る触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のBTX生成速度の経時的変化を示す。この特性図から明らかなように実施例1の触媒(Cu/Mo)によれば従来技術に係る比較例1の触媒(Mo)、比較例2の触媒(Co/Mo)、比較例3の触媒(Fe/Mo)と比較してBTX生成速度の活性寿命の安定性が向上している。
【0049】
図10は比較例1〜比較例3及び実施例1に係る触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合の炭素生成速度の経時的変化を示す。この特性図から明らかなように実施例1の触媒(Cu/Mo)によれば従来技術に係る比較例1の触媒(Mo)、比較例2の触媒(Co/Mo)、比較例3の触媒(Fe/Mo)と比較して炭素生成速度が小さくなっている。
【0050】
以上の実施例の結果から明らかなようにメタロシリケートにモリブデンの他に第二金属成分として銅を担持して低級炭化水素芳香族化触媒を成し、そしてこの触媒を低級炭化水素及び炭酸ガスと反応させることでメタン転化率の活性寿命安定性が向上することが示された。さらに、ベンゼン、トルエン等の有用成分であるBTX生成速度が安定すると共に触媒活性低下の原因となる炭素生成速度が低減することが示された。
【0051】
次にメタロシリケートにモリブデンと銅とを担持する場合にモリブデンに対する銅のモル比の依存性について検証した比較例及び実施例を以下に示した。
【0052】
(実施例2)
実施例2の触媒は銅:モリブデン=0.1:1.0のモル比で銅とモリブデンを担持したもので、成型体のサイズと含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0053】
成型工程では比較例1に係る無機成分と有機バインダーと水分との混合体を2〜8MPaの押し出し圧力で真空押し出し成型機によって棒状(径2.4mm×長さ5mm)に成型した。含浸工程では酢酸銅とモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌された状態の含浸水溶液に前記成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と銅成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと銅とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、銅の担持量はモリブデンとのモル比で銅:モリブデン=0.1:1.0となるように設定した。
【0054】
(実施例3)
実施例3の触媒は銅:モリブデン=0.3:1.0のモル比で銅とモリブデンを担持したもので、成型体のサイズと含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0055】
成型工程では比較例1に係る無機成分と有機バインダーと水分との混合体を2〜8MPaの押し出し圧力で真空押し出し成型機によって棒状(径2.4mm×長さ5mm)に成型した。含浸工程では酢酸銅とモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌された状態の含浸水溶液に前記成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と銅成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと銅とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、銅の担持量はモリブデンとのモル比で銅:モリブデン=0.3:1.0となるように設定した。
【0056】
(実施例4)
実施例4の触媒は銅:モリブデン=0.45:1.0のモル比で銅とモリブデンを担持したもので、成型体のサイズと含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0057】
成型工程では比較例1に係る無機成分と有機バインダーと水分との混合体を2〜8MPaの押し出し圧力で真空押し出し成型機によって棒状(径2.4mm×長さ5mm)に成型した。含浸工程では酢酸銅とモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌された状態の含浸水溶液に前記成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と銅成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと銅とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、銅の担持量はモリブデンとのモル比で銅:モリブデン=0.45:1.0となるように設定した。
【0058】
(実施例5)
実施例5の触媒は銅:モリブデン=0.6:1.0のモル比で銅とモリブデンを担持したもので、成型体のサイズと含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0059】
成型工程では比較例1に係る無機成分と有機バインダーと水分との混合体を2〜8MPaの押し出し圧力で真空押し出し成型機によって棒状(径2.4mm×長さ5mm)に成型した。含浸工程では酢酸銅とモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌された状態の含浸水溶液に前記成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と銅成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと銅とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、銅の担持量はモリブデンとのモル比で銅:モリブデン=0.6:1.0となるように設定した。
【0060】
(実施例6)
実施例6の触媒は銅:モリブデン=0.8:1.0のモル比で銅とモリブデンを担持したもので、成型体のサイズと含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0061】
成型工程では比較例1に係る無機成分と有機バインダーと水分との混合体を2〜8MPaの押し出し圧力で真空押し出し成型機によって棒状(径2.4mm×長さ5mm)に成型した。含浸工程では酢酸銅とモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌された状態の含浸水溶液に前記成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と銅成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと銅とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、銅の担持量はモリブデンとのモル比で銅:モリブデン=0.8:1.0となるように設定した。
【0062】
以上の実施例2〜6に係る触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のメタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度の経時的変化について評価した。評価法を以下に示した。
【0063】
固定床流通式反応装置のインコネル800H接ガス部カロライジング処理製反応管(内径18mm)に評価対象の触媒を14g充填(ゼオライト率82.50%)した。そして、この反応管に反応ガスとして炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3とした)を供給して、反応空間速度=3000ml/g−MFI/h(CH4gas flow base)、反応温度780℃、反応時間24時間、反応圧力0.3MPaの条件で、触媒と反応ガスとを反応させた。この際、生成物の分析を行い、メタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度を経時的に調べた。前記生成物の分析はTCD−GC、FID−GCを用いて行った。
【0064】
図11は前記評価法に実施例2に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.1)、実施例3に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.3)が供された場合のメタン転化率の経時的変化である。この特性図から明らかなように両者の触媒ともメタン転化率の活性寿命安定性が向上及び維持されることがわかる。
【0065】
図12は前記評価法に実施例2に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.1)、実施例3に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.3)が供された場合のベンゼン生成速度の経時的変化である。この特性図から明らかなように両者の触媒ともベンゼン生成速度の活性寿命安定性が向上及び維持されることがわかる。
【0066】
図13は前記評価法に実施例2に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.1)、実施例3に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.3)が供された場合のナフタレン生成速度の経時的変化である。この特性図から明らかなように両者の触媒ともナフタレン生成速度の活性寿命安定性が向上及び維持されることがわかる。
【0067】
図14は前記評価法に実施例2に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.1)、実施例3に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.3)が供された場合のBTX生成速度の経時的変化である。この特性図から明らかなように両者の触媒ともBTX生成速度の活性寿命安定性が向上及び維持されることがわかる。
【0068】
表1は前記評価法に基づく反応に実施例2〜6に係る触媒が供された場合の反応時間24時間後におけるメタン転化率、ベンゼン生成速度、BTX生成速度を開示する。
【0069】
【表1】
【0070】
表1から明らかなように実施例2〜実施例6のいずれの触媒が反応に供された場合でも、反応時間が24時間経過してもメタン転化率が10%以上、ベンゼン生成速度が990nmol/sg以上、BTX生成速度が1000nmol/sg以上となっており、触媒寿命安定性が長時間維持されることわかる。特に、実施例2及び実施例3に係る触媒が使用された場合の24時間後のベンゼン生成速度、BTX生成速度は実施例4〜6の触媒が使用された場合よりも高くなっている。したがって、モリブデンに対する銅のモル比が特に0.1〜0.3となるようにメタロシリケートにモリブデンと銅を担持させると触媒機能の長時間安定性の観点から一層優位であることがわかる。
【0071】
また、モリブデンに次いで担持される銅のモリブデンに対するモル比の依存性については前記銅のモル比が低いほどメタン転化率、ベンゼン生成速度、BTX生成速度の長期的安定性に優れる傾向にある。したがって、銅のモル比の下限が0.1未満であっても、例えばモリブデンに対する銅のモル比が0.01〜0.8であっても、触媒活性寿命の安定性の効果が得られるものと考えられる。
【0072】
以上説明した実施例は金属成分が担持されるメタシリケートにZSM−5が採用されているが、MCM−22が適用されても同様な効果を奏する。また、前記実施例ではモリブデンの担持量が焼成後の触媒全体量に対して6重量%となっているが、その担持量が触媒全体量に対して2〜12重量%の範囲で前述の実施例と同様な効果を奏する。さらに、前記実施例は前記評価法において芳香族化合物を生成するにあたりメタンと炭酸ガスのモル比がメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3である反応ガスと反応させているが、前記炭酸ガスの添加量は反応ガス全体に対して0.5〜6%の範囲であっても前述の実施例と同様な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】比較例1に係る触媒(Mo)及び実施例1に係る触媒(Cu/Mo)を、反応ガスとして100%のメタン(CH4)ガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素(H2)添加(Add)メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス(CO2)添加(Add)メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合のメタン転化率の経時的変化。
【図2】比較例1に係る触媒(Mo)及び実施例1に係る触媒(Cu/Mo)を、反応ガスとして100%のメタン(CH4)ガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素(H2)添加(Add)メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス(CO2)添加(Add)メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化。
【図3】比較例1に係る触媒(Mo)及び実施例1に係る触媒(Cu/Mo)を、反応ガスとして100%のメタン(CH4)ガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素(H2)添加(Add)メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス(CO2)添加(Add)メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合のナフタレン生成速度の経時的変化。
【図4】比較例1に係る触媒(Mo)及び実施例1に係る触媒(Cu/Mo)を、反応ガスとして100%のメタン(CH4)ガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素(H2)添加(Add)メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス(CO2)添加(Add)メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合のBTX生成速度の経時的変化。
【図5】比較例1に係る触媒(Mo)及び実施例1に係る触媒(Cu/Mo)を、反応ガスとして100%のメタン(CH4)ガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素(H2)添加(Add)メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス(CO2)添加(Add)メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合の炭素生成速度の経時的変化。
【図6】比較例1〜比較例3及び実施例1の各触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のメタン転化率の経時的変化。
【図7】比較例1〜比較例3及び実施例1の各触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化。
【図8】比較例1〜比較例3及び実施例1の各触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のナフタレン生成速度の経時的変化。
【図9】比較例1〜比較例3及び実施例1の各触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のBTX生成速度の経時的変化。
【図10】比較例1〜比較例3及び実施例1の各触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合の炭素生成速度の経時的変化。
【図11】炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)に実施例2に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.1)、実施例3に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.3)が供された場合のメタン転化率の経時的変化。
【図12】炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:二酸化炭素=100:3)との反応に実施例2に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.1)、実施例3に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.3)が供された場合のベンゼン生成速度の経時的変化。
【図13】炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:二酸化炭素=100:3)との反応に実施例2に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.1)、実施例3に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.3)が供された場合のナフタレン生成速度の経時的変化。
【図14】炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:二酸化炭素=100:3)との反応に実施例2に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.1)、実施例3に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.3)が供された場合のBTX生成速度の経時的変化。
【技術分野】
【0001】
本発明はメタンを主成分とする天然ガス、バイオガス、メタンハイドレートの高度利用に関する。天然ガス、バイオガス、メタンハイドレートは地球温暖化対策として最も効果的なエネルギー資源と考えられ、その利用技術に関心が高まっている。メタン資源はそのままクリーン性を活かして次世代の新しい有機資源、燃料電池用の水素資源として注目されている。特に本発明はメタンからプラスチック類などの化学製品原料であるベンゼン及びナフタレン類を主成分とする芳香族化合物と高純度の水素ガスを効率的に製造するための触媒化学変換技術及びその触媒製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタンからベンゼン等の芳香族化合物と水素とを製造する方法としては触媒の存在下にメタンを反応させる方法が知られている。この際の触媒としてはZSM−5系のゼオライトに担持されたモリブデンが有効とされている(非特許文献1)。しかしながら、これらの触媒を使用した場合でも、炭素の析出が多いことやメタンの転化率が低いという問題を有している。この問題を解決するためにMo(モリブデン)等の触媒材料を多孔質のメタロシロケートに担持した触媒が提案されている(特許文献1〜特許文献3)。
【0003】
特許文献1〜特許文献3では担体である7オングストロームの細孔径を有する多孔質のメタロシリケートに金属成分が担持された触媒を用いることで低級炭化水素が効率的に芳香族化合物化され、これに付随して高純度の水素が得られることが確認されている。前記特許文献によると担体には前記金属成分としてモリブデン、コバルト、鉄等が担持されている。
【非特許文献1】JOURNAL OF CATALYSIS,1997,pp.165,pp.150−161
【特許文献1】特開平10−272366号公報
【特許文献2】特開平11−60514号公報
【特許文献3】特開2004−269398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メタンからベンゼン等の芳香族化合物と水素を製造する方法としては触媒の存在下にメタンを反応させる方法としてZSM−5にモリブデンを担持した触媒が有効とされている。
【0005】
しかし、この触媒が用いられた場合でも炭素の析出が多い。炭素の析出により触媒性能が短時間に劣化する。メタン転化率(芳香族化合物と水素の生成に利用されるメタンの利用率)が低い。特許文献1〜特許文献3のような触媒ではこの問題の改善が十分でないので芳香族化合物の製造効率をさらに高めるために一層優れた触媒の開発が望まれている。
【0006】
メタンをベンゼンに改質する触媒の活用にはメタンの転化率の向上は必須であるが、メタンの転化率を上げるにはメタンガス投入時の反応温度を上げる必要がある。しかしながら、特許文献1〜特許文献3のような触媒では原料ガスとの反応温度を上げると触媒の活性寿命が大幅に低下する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、前記課題を解決するための低級炭化水素芳香族化触媒は低級炭化水素及び炭酸ガスと反応して芳香族化合物を生成させる触媒であって担体であるメタロシリケートにモリブデンと銅を担持した後に焼成してなる。
【0008】
また、前記課題を解決するための芳香族化合物の製造方法は担体であるメタロシリケートにモリブデンと銅を担持した後に焼成してなる触媒に低級炭化水素及び炭酸ガスを反応させて芳香族化合物を生成する。
【0009】
以上の低級炭化水素芳香族化触媒及び芳香族化合物の製造方法によればメタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度(ベンゼンとトルエンとキシレンの合計生成速度)の活性寿命安定性が向上する。また、触媒活性低下の原因となる炭素の生成速度が低減する。前記触媒と反応させる炭酸ガスは一酸化炭素ガスに代えてもよい。
【0010】
前記メタロシリケートとしては4.5〜6.5オングストローム径の細孔を有する多孔質メタロシリケートであるZSM−5、MCM−22が例示列挙される。
【0011】
前記モリブデンはその担持量が焼成後の触媒全体量に対して2〜12重量%となると共に前記銅はモリブデンとのモル比Cu:Mo=X:1の比率が0.01〜0.8となるように担持するとよい。メタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度、BTX生成速度の安定性が長時間維持される。
【0012】
前記メタロシリケートにモリブデンと銅を担持した後の焼成時の焼成温度は550〜800℃であるとよい。触媒の強度及び特性(活性)が維持される。
【0013】
前記炭酸ガスの添加量は反応ガス全体に対して0.5〜6%の範囲であるとよい。炭酸ガスが過不足(0.5%未満)であると析出するコークの酸化作用が低くなり活性寿命安定性が低下し、逆に過剰(6%以上)であるとメタンガスの直接酸化反応により水素及び一酸化炭素が過剰に生成し、反応に必要なメタンガス濃度が低下するので、ベンゼンの生成量が低下する。そこで、反応ガス全体に対して炭酸ガスの添加量を0.5〜6%の範囲とすることでメタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度、BTX生成速度を効率よく安定させることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上の発明によればメタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度(ベンゼンとトルエンとキシレンの合計生成速度)の活性寿命安定性が向上する。また、触媒活性低下の原因となる炭素の生成速度が低減する。したがって、ベンゼン、トルエン等の有用成分である芳香族化合物の生成量が増大する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明に係る低級炭化水素芳香族化触媒はモリブデン及びその化合物から選ばれた少なくとも一種以上を触媒材料として含有する。芳香族化合物を製造する際には前記低級炭化水素芳香族化触媒は低級炭化水素の他に二酸化炭素と反応させる。前記金属成分を担持する担体は実質的に4.5〜6.5オングストローム径の細孔を有する多孔質メタロシリケートを含んでいる。このメタロシリケートには第一金属成分としてモリブデンが担持され、モリブデン以外の第二金属成分として銅が担持される。前記モリブデン成分及び銅成分は酢酸銅または硝酸銅とモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液に前記メタロシリケートを添加してモリブデン成分と銅成分とをメタロシリケートに含浸させた後に乾燥及び焼成に供すれば前記メタロシリケートに担持される。このように多孔質メタロシリケートにMoC(炭化モリブデン)すなわちモリブデン成分を単独で担持するのではなくモリブデン成分に加えて銅を第二金属成分として担持することにより触媒の安定性が得られる。特に、メタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度(ベンゼンとトルエンとキシレンの合計生成速度)の活性寿命安定性が向上する。
【0016】
以下の実施例に基づき本発明の低級炭化水素芳香族化触媒について説明する。
【0017】
1.低級炭化水素芳香族化触媒(以下、触媒と略称する)の製造
(比較例1)
比較例1の触媒はメタシリケートとしてアンモニウム型ZSM−5(SiO2/Al2O3=25〜70)が採用され、これにモリブデンのみが担持されたものである。
【0018】
(1)配合
無機成分の配合:ZSM−5(82.5重量%)、粘土(10.5重量%)、ガラス繊維(5重量%)
全体配合:前記無機成分(76.5重量%)、有機バインダー(17.3重量%)、水分(24.3重量%)
(2)成型
前記配合比率で前記無機成分と有機バインダーと水分とを配合し混練手段(ニーダ)によって混合、混練した。次に、この混合体を真空押し出し成型機によって棒状(径5mm×長さ10mm)に成型した。このときの成型時の押し出し圧力は2〜8MPaに設定した。
【0019】
(3)モリブデンの含浸
攪拌されたモリブデン酸アンモニウム水溶液に前記成型工程で得られた成型体を添加してモリブデン成分を前記成型体に含浸させた後に以下の乾燥及び焼成の工程に供した。尚、前記成型体は焼成後の触媒全体量に対してモリブデンの重量比が6重量%となるように添加した。
【0020】
(4)乾燥、焼成
乾燥工程では成型工程時に添加した水分を除去するために70℃で約12時間行なった。焼成工程では空気中で550℃、5時間焼成した。焼成工程での焼成温度は550〜800℃の範囲とした。550℃以下では担体の強度低下、800℃以上では特性(活性)の低下が起こるためである。焼成工程における昇温速度及び降温速度は90〜100℃/時に設定した。このとき、成型時に添加した有機バインダーが瞬時に燃焼しないように250〜450℃の温度範囲の中に2〜6時間程度の温度キープを2回実施してバインダーを除去した。昇温速度及び降温速度が前記速度以上であってバインダーを除去するキープ時間を確保しない場合にはバインダーが瞬時に燃焼して焼成体の強度が低下するためである。
【0021】
(5)炭化処理
前記焼成体をCH4とH2の混合ガス(メタン/水素=1/4の混合モル比)を流通下で700℃まで2時間で昇温させ、この状態を3時間維持させた後にこの雰囲気をCH4の反応ガスに切り替え、780℃まで昇温した。
【0022】
(比較例2)
比較例2の触媒はモリブデンとコバルトとを担持したもので、含浸工程以外は比較例1の触媒の配合及び製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0023】
含浸工程では酢酸コバルトとモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌させた状態の含浸水溶液に比較例1に係る成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分とコバルト成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンとコバルトとを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、コバルトの担持量はモリブデンとのモル比でコバルト:モリブデン=0.3:1.0となるように設定した。
【0024】
(比較例3)
比較例3の触媒はモリブデンと鉄とを担持したもので、含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0025】
含浸工程では酢酸鉄とモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌させた含浸水溶液に比較例1に係る成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と鉄成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと鉄とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、鉄の担持量はモリブデンとのモル比で鉄:モリブデン=0.3:1.0となるように設定した。
【0026】
(実施例1)
実施例1の触媒はモリブデンと銅とを担持したもので、含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0027】
含浸工程では酢酸銅とモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌された状態の含浸水溶液に比較例1に係る成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と銅成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと銅とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、銅の担持量はモリブデンとのモル比で銅:モリブデン=0.3:1.0となるように設定した。
【0028】
2.比較例及び実施例の触媒の評価
比較例及び実施例の触媒の評価法について述べる。
【0029】
固定床流通式反応装置のインコネル800H接ガス部カロライジング処理製反応管(内径18mm)に評価対象の触媒を14g充填(ゼオライト率82.50%)した。そして、この反応管に各種の反応ガスを供給して、反応空間速度=3000ml/g−MFI/h(CH4gas flow base)、反応温度780℃、反応時間24時間、反応圧力0.3MPaの条件で、触媒と反応ガスとを反応させた。この際、生成物の分析を行い、メタン転化率、水素生成速度、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度、BTX生成速度及び炭素生成速度を経時的に調べた。前記生成物の分析はTCD−GC、FID−GCを用いて行った。
【0030】
メタン転化率、水素生成速度、ベンゼン生成速度,ナフタレン生成速度、BTX生成速度及び炭素生成速度は次の通り定義される。
【0031】
「メタン転化率(%)」=〔(「原料メタン流速」−「未反応のメタン流速」)/「原料メタン流速」〕×100
「ベンゼン生成速度」=「触媒1gあたり、1秒間に生成したベンゼンのnmol数」。
【0032】
「ナフタレン生成速度」=「触媒1gあたり、1秒間に生成したナフタレンのnmol数」。
【0033】
「BTX生成速度」=「触媒1gあたり、1秒間に生成したベンゼン、トルエン及びキシレンの合計nmol数」。
【0034】
「炭素生成速度」=「触媒1gあたり、1秒間に生成した炭素のnmol数」。
【0035】
図1は比較例1に係る触媒(Mo)及び実施例1に係る触媒(Cu/Mo)を、反応ガスとして100%のメタンガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素添加メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合のメタン転化率の経時的変化を示す。
【0036】
図2は比較例1及び実施例1に係る触媒を、反応ガスとして100%のメタンガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素添加メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化を示す。
【0037】
図3は比較例1及び実施例1に係る触媒を、反応ガスとして100%のメタンガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素添加メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合のナフタレン生成速度の経時的変化を示す。
【0038】
図4は比較例1及び実施例1に係る触媒を、反応ガスとして100%のメタンガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素添加メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合のBTX生成速度の経時的変化を示す。
【0039】
図5は比較例1及び実施例1に係る触媒を反応ガスとして100%のメタンガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素添加メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合の炭素生成速度の経時的変化を示す。
【0040】
図1〜図4の特性図から明らかなように銅(Cu)をモリブデン(Mo)と共に担持した触媒は、100%メタンガスとの反応及び6.2%水素添加メタンガスとの反応においてモリブデン(Mo)のみを担持した触媒と同程度のメタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度を示しており、100%メタンガスとの反応及び6.2%水素添加メタンガスとの反応においては銅(Cu)を担持したことの効果はほとんど見られない。
【0041】
これに対して3%炭酸ガス添加メタンガスとの反応の場合、銅(Cu)をモリブデン(Mo)と共に担持した触媒のメタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度の活性寿命がモリブデン(Mo)のみを担持した触媒に比べ向上していることがわかる。
【0042】
すなわち、銅(Cu)をモリブデン(Mo)と共に担持した触媒によるメタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度の活性寿命の向上は炭酸ガスを含んだメタンガスとの反応において顕著に現れることが示された。また、図5の特性図から明らかなように炭酸ガスを含んだメタンガスと反応させると炭素生成速度が顕著に低下することが確認された。
【0043】
次に、比較例1〜比較例3及び実施例1に係る触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のメタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度、BTX生成速度及び炭素生成速度の経時的変化について検証した。検証方法を以下に示した。
【0044】
固定床流通式反応装置のインコネル800H接ガス部カロライジング処理製反応管(内径18mm)に評価対象の触媒を14g充填(ゼオライト率82.50%)した。そして、この反応管に反応ガスとして炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3とした)を供給して、反応空間速度=3000ml/g−MFI/h(CH4gas flow base)、反応温度780℃、反応時間24時間、反応圧力0.3MPaの条件で、触媒と反応ガスとを反応させた。この際、生成物の分析を行い、メタン転化率、水素生成速度、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度、BTX生成速度及び炭素生成速度を経時的に調べた。前記生成物の分析はTCD−GC、FID−GCを用いて行った。
【0045】
図6は比較例1〜比較例3及び実施例1に係る触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のメタン転化率の経時的変化を示す。この特性図に示されたメタン転化率の経時的変化から明らかなように実施例1の触媒(モリブデンと銅とを担持した触媒(Cu/Mo))によれば従来技術に係る比較例1の触媒(モリブデンのみを担持した触媒(Mo))比較例2の触媒(モリブデンとコバルトとを担持した触媒(Co/Mo))、比較例3の触媒(モリブデンと鉄とを担持した触媒(Fe/Mo))と比較してメタン転化率の活性寿命の安定性が向上している。
【0046】
図7は比較例1〜比較例3及び実施例1に係る触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化を示す。この特性図から明らかなように実施例1の触媒(Cu/Mo)によれば従来技術に係る比較例1の触媒(Mo)、比較例2の触媒(Co/Mo)、比較例3の触媒(Fe/Mo)と比較してベンゼン生成速度の活性寿命の安定性が向上している。
【0047】
図8は比較例1〜比較例3及び実施例1に係る触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のナフタレン生成速度の経時的変化を示す。この特性図から明らかなように実施例1の触媒(Cu/Mo)によれば従来技術に係る比較例1の触媒(Mo)、比較例2の触媒(Co/Mo)、比較例3の触媒(Fe/Mo)と比較してナフタレン生成速度の活性寿命の安定性が向上している。
【0048】
図9は比較例1〜比較例3及び実施例1に係る触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のBTX生成速度の経時的変化を示す。この特性図から明らかなように実施例1の触媒(Cu/Mo)によれば従来技術に係る比較例1の触媒(Mo)、比較例2の触媒(Co/Mo)、比較例3の触媒(Fe/Mo)と比較してBTX生成速度の活性寿命の安定性が向上している。
【0049】
図10は比較例1〜比較例3及び実施例1に係る触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合の炭素生成速度の経時的変化を示す。この特性図から明らかなように実施例1の触媒(Cu/Mo)によれば従来技術に係る比較例1の触媒(Mo)、比較例2の触媒(Co/Mo)、比較例3の触媒(Fe/Mo)と比較して炭素生成速度が小さくなっている。
【0050】
以上の実施例の結果から明らかなようにメタロシリケートにモリブデンの他に第二金属成分として銅を担持して低級炭化水素芳香族化触媒を成し、そしてこの触媒を低級炭化水素及び炭酸ガスと反応させることでメタン転化率の活性寿命安定性が向上することが示された。さらに、ベンゼン、トルエン等の有用成分であるBTX生成速度が安定すると共に触媒活性低下の原因となる炭素生成速度が低減することが示された。
【0051】
次にメタロシリケートにモリブデンと銅とを担持する場合にモリブデンに対する銅のモル比の依存性について検証した比較例及び実施例を以下に示した。
【0052】
(実施例2)
実施例2の触媒は銅:モリブデン=0.1:1.0のモル比で銅とモリブデンを担持したもので、成型体のサイズと含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0053】
成型工程では比較例1に係る無機成分と有機バインダーと水分との混合体を2〜8MPaの押し出し圧力で真空押し出し成型機によって棒状(径2.4mm×長さ5mm)に成型した。含浸工程では酢酸銅とモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌された状態の含浸水溶液に前記成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と銅成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと銅とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、銅の担持量はモリブデンとのモル比で銅:モリブデン=0.1:1.0となるように設定した。
【0054】
(実施例3)
実施例3の触媒は銅:モリブデン=0.3:1.0のモル比で銅とモリブデンを担持したもので、成型体のサイズと含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0055】
成型工程では比較例1に係る無機成分と有機バインダーと水分との混合体を2〜8MPaの押し出し圧力で真空押し出し成型機によって棒状(径2.4mm×長さ5mm)に成型した。含浸工程では酢酸銅とモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌された状態の含浸水溶液に前記成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と銅成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと銅とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、銅の担持量はモリブデンとのモル比で銅:モリブデン=0.3:1.0となるように設定した。
【0056】
(実施例4)
実施例4の触媒は銅:モリブデン=0.45:1.0のモル比で銅とモリブデンを担持したもので、成型体のサイズと含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0057】
成型工程では比較例1に係る無機成分と有機バインダーと水分との混合体を2〜8MPaの押し出し圧力で真空押し出し成型機によって棒状(径2.4mm×長さ5mm)に成型した。含浸工程では酢酸銅とモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌された状態の含浸水溶液に前記成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と銅成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと銅とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、銅の担持量はモリブデンとのモル比で銅:モリブデン=0.45:1.0となるように設定した。
【0058】
(実施例5)
実施例5の触媒は銅:モリブデン=0.6:1.0のモル比で銅とモリブデンを担持したもので、成型体のサイズと含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0059】
成型工程では比較例1に係る無機成分と有機バインダーと水分との混合体を2〜8MPaの押し出し圧力で真空押し出し成型機によって棒状(径2.4mm×長さ5mm)に成型した。含浸工程では酢酸銅とモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌された状態の含浸水溶液に前記成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と銅成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと銅とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、銅の担持量はモリブデンとのモル比で銅:モリブデン=0.6:1.0となるように設定した。
【0060】
(実施例6)
実施例6の触媒は銅:モリブデン=0.8:1.0のモル比で銅とモリブデンを担持したもので、成型体のサイズと含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0061】
成型工程では比較例1に係る無機成分と有機バインダーと水分との混合体を2〜8MPaの押し出し圧力で真空押し出し成型機によって棒状(径2.4mm×長さ5mm)に成型した。含浸工程では酢酸銅とモリブデン酸アンモニウムとで調整した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌された状態の含浸水溶液に前記成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と銅成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと銅とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、銅の担持量はモリブデンとのモル比で銅:モリブデン=0.8:1.0となるように設定した。
【0062】
以上の実施例2〜6に係る触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のメタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度の経時的変化について評価した。評価法を以下に示した。
【0063】
固定床流通式反応装置のインコネル800H接ガス部カロライジング処理製反応管(内径18mm)に評価対象の触媒を14g充填(ゼオライト率82.50%)した。そして、この反応管に反応ガスとして炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3とした)を供給して、反応空間速度=3000ml/g−MFI/h(CH4gas flow base)、反応温度780℃、反応時間24時間、反応圧力0.3MPaの条件で、触媒と反応ガスとを反応させた。この際、生成物の分析を行い、メタン転化率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度を経時的に調べた。前記生成物の分析はTCD−GC、FID−GCを用いて行った。
【0064】
図11は前記評価法に実施例2に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.1)、実施例3に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.3)が供された場合のメタン転化率の経時的変化である。この特性図から明らかなように両者の触媒ともメタン転化率の活性寿命安定性が向上及び維持されることがわかる。
【0065】
図12は前記評価法に実施例2に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.1)、実施例3に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.3)が供された場合のベンゼン生成速度の経時的変化である。この特性図から明らかなように両者の触媒ともベンゼン生成速度の活性寿命安定性が向上及び維持されることがわかる。
【0066】
図13は前記評価法に実施例2に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.1)、実施例3に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.3)が供された場合のナフタレン生成速度の経時的変化である。この特性図から明らかなように両者の触媒ともナフタレン生成速度の活性寿命安定性が向上及び維持されることがわかる。
【0067】
図14は前記評価法に実施例2に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.1)、実施例3に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.3)が供された場合のBTX生成速度の経時的変化である。この特性図から明らかなように両者の触媒ともBTX生成速度の活性寿命安定性が向上及び維持されることがわかる。
【0068】
表1は前記評価法に基づく反応に実施例2〜6に係る触媒が供された場合の反応時間24時間後におけるメタン転化率、ベンゼン生成速度、BTX生成速度を開示する。
【0069】
【表1】
【0070】
表1から明らかなように実施例2〜実施例6のいずれの触媒が反応に供された場合でも、反応時間が24時間経過してもメタン転化率が10%以上、ベンゼン生成速度が990nmol/sg以上、BTX生成速度が1000nmol/sg以上となっており、触媒寿命安定性が長時間維持されることわかる。特に、実施例2及び実施例3に係る触媒が使用された場合の24時間後のベンゼン生成速度、BTX生成速度は実施例4〜6の触媒が使用された場合よりも高くなっている。したがって、モリブデンに対する銅のモル比が特に0.1〜0.3となるようにメタロシリケートにモリブデンと銅を担持させると触媒機能の長時間安定性の観点から一層優位であることがわかる。
【0071】
また、モリブデンに次いで担持される銅のモリブデンに対するモル比の依存性については前記銅のモル比が低いほどメタン転化率、ベンゼン生成速度、BTX生成速度の長期的安定性に優れる傾向にある。したがって、銅のモル比の下限が0.1未満であっても、例えばモリブデンに対する銅のモル比が0.01〜0.8であっても、触媒活性寿命の安定性の効果が得られるものと考えられる。
【0072】
以上説明した実施例は金属成分が担持されるメタシリケートにZSM−5が採用されているが、MCM−22が適用されても同様な効果を奏する。また、前記実施例ではモリブデンの担持量が焼成後の触媒全体量に対して6重量%となっているが、その担持量が触媒全体量に対して2〜12重量%の範囲で前述の実施例と同様な効果を奏する。さらに、前記実施例は前記評価法において芳香族化合物を生成するにあたりメタンと炭酸ガスのモル比がメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3である反応ガスと反応させているが、前記炭酸ガスの添加量は反応ガス全体に対して0.5〜6%の範囲であっても前述の実施例と同様な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】比較例1に係る触媒(Mo)及び実施例1に係る触媒(Cu/Mo)を、反応ガスとして100%のメタン(CH4)ガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素(H2)添加(Add)メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス(CO2)添加(Add)メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合のメタン転化率の経時的変化。
【図2】比較例1に係る触媒(Mo)及び実施例1に係る触媒(Cu/Mo)を、反応ガスとして100%のメタン(CH4)ガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素(H2)添加(Add)メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス(CO2)添加(Add)メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化。
【図3】比較例1に係る触媒(Mo)及び実施例1に係る触媒(Cu/Mo)を、反応ガスとして100%のメタン(CH4)ガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素(H2)添加(Add)メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス(CO2)添加(Add)メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合のナフタレン生成速度の経時的変化。
【図4】比較例1に係る触媒(Mo)及び実施例1に係る触媒(Cu/Mo)を、反応ガスとして100%のメタン(CH4)ガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素(H2)添加(Add)メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス(CO2)添加(Add)メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合のBTX生成速度の経時的変化。
【図5】比較例1に係る触媒(Mo)及び実施例1に係る触媒(Cu/Mo)を、反応ガスとして100%のメタン(CH4)ガスと反応させた場合、反応ガスとして6%水素(H2)添加(Add)メタンガス(メタンと水素のモル比はメタン:水素=100:6.2)と反応させた場合、反応ガスとして3%炭酸ガス(CO2)添加(Add)メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)と反応させた場合の炭素生成速度の経時的変化。
【図6】比較例1〜比較例3及び実施例1の各触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のメタン転化率の経時的変化。
【図7】比較例1〜比較例3及び実施例1の各触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化。
【図8】比較例1〜比較例3及び実施例1の各触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のナフタレン生成速度の経時的変化。
【図9】比較例1〜比較例3及び実施例1の各触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合のBTX生成速度の経時的変化。
【図10】比較例1〜比較例3及び実施例1の各触媒をメタンと炭酸ガスと共に反応させた場合の炭素生成速度の経時的変化。
【図11】炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:炭酸ガス(二酸化炭素)=100:3)に実施例2に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.1)、実施例3に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.3)が供された場合のメタン転化率の経時的変化。
【図12】炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:二酸化炭素=100:3)との反応に実施例2に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.1)、実施例3に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.3)が供された場合のベンゼン生成速度の経時的変化。
【図13】炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:二酸化炭素=100:3)との反応に実施例2に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.1)、実施例3に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.3)が供された場合のナフタレン生成速度の経時的変化。
【図14】炭酸ガス添加メタンガス(メタンと炭酸ガスのモル比はメタン:二酸化炭素=100:3)との反応に実施例2に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.1)、実施例3に係る触媒(Moに対するCuのモル比Cu/Mo=0.3)が供された場合のBTX生成速度の経時的変化。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低級炭化水素及び炭酸ガスと反応して芳香族化合物を生成させる触媒であって、
担体であるメタロシリケートにモリブデンと銅を担持した後に焼成してなること
を特徴とする低級炭化水素芳香族化触媒。
【請求項2】
前記モリブデンはその担持量が焼成後の触媒全体量に対して2〜12重量%となると共に前記銅はモリブデンとのモル比Cu:Mo=X:1の比率が0.01〜0.8となるように担持することを特徴とする請求項1に記載の低級炭化水素芳香族化触媒。
【請求項3】
前記メタロシリケートにモリブデンと銅を担持した後の焼成時の焼成温度は550〜800℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の低級炭化水素芳香族化触媒。
【請求項4】
前記メタロシリケートはZSM−5、MCM−22のいずれかであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の低級炭化水素芳香族化触媒。
【請求項5】
担体であるメタロシリケートにモリブデンと銅を担持した後に焼成してなる触媒に低級炭化水素と炭酸ガスとを含む反応ガスを反応させて芳香族化合物を生成すること
を特徴とする芳香族化合物の製造方法。
【請求項6】
前記炭酸ガスの添加量は反応ガス全体に対して0.5〜6%の範囲であることを特徴とする請求項5に記載の芳香族化合物の製造方法。
【請求項1】
低級炭化水素及び炭酸ガスと反応して芳香族化合物を生成させる触媒であって、
担体であるメタロシリケートにモリブデンと銅を担持した後に焼成してなること
を特徴とする低級炭化水素芳香族化触媒。
【請求項2】
前記モリブデンはその担持量が焼成後の触媒全体量に対して2〜12重量%となると共に前記銅はモリブデンとのモル比Cu:Mo=X:1の比率が0.01〜0.8となるように担持することを特徴とする請求項1に記載の低級炭化水素芳香族化触媒。
【請求項3】
前記メタロシリケートにモリブデンと銅を担持した後の焼成時の焼成温度は550〜800℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の低級炭化水素芳香族化触媒。
【請求項4】
前記メタロシリケートはZSM−5、MCM−22のいずれかであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の低級炭化水素芳香族化触媒。
【請求項5】
担体であるメタロシリケートにモリブデンと銅を担持した後に焼成してなる触媒に低級炭化水素と炭酸ガスとを含む反応ガスを反応させて芳香族化合物を生成すること
を特徴とする芳香族化合物の製造方法。
【請求項6】
前記炭酸ガスの添加量は反応ガス全体に対して0.5〜6%の範囲であることを特徴とする請求項5に記載の芳香族化合物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−260006(P2008−260006A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293011(P2007−293011)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
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