説明

低誘虫照明システム

【課題】青色光光源を用いて積極的に昆虫類を誘引することにより、施設利用客が滞在する領域外に昆虫を殺戮することなく留め置くとともに、外的要因でランプの外球破損が起こってもガラス破片がランプ外に飛散しない低誘虫照明システムを提供する。
【解決手段】施設利用者が通常滞在する領域の近傍に設置される主光源として、透光性外管内部に発光管と前記発光管の周囲を取り囲む円筒状の透光性スリーブとマウント支持板とを含むランプ構成部品を前記透光性外管内に保持する外管マウントを有し、前記透光性スリーブの内外表面には紫外線反射膜を有し、前記透光性外管の外表面にフッ素樹脂からなる保護膜が被覆されている保護膜付メタルハライドランプを使用し、その他の領域には昆虫を誘引する青色光源を使用する照明システムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ施設、食品工場、薬品工場、製紙工場、店舗などの照明システムにおいて、昆虫類の誘引による不快感あるいは昆虫類の商品や生産過程の商品への混入を防止するための照明用昆虫係留システムに関し、特に殺虫剤などの化学的防除を行なうことなく、光源の光放射を利用した自然生態系にやさしい物理的な昆虫制御システムの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ練習場や打撃練習場などのスポーツ施設、または野球場やサッカー競技場などのスポーツ施設においては、照明施設の周辺にガ類、アブ、ハエ、カ等の昆虫類が集まり、施設周辺の民家に対して直接的な被害あるいは二次的な被害をもたらしていた。また、郊外型の大型店舗あるいは食品工場等においては、商品等への昆虫類の混入を防止するために、昆虫類の忌避あるいは誘引後の殺戮等により、照明施設の改善を行なっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に光に誘引される昆虫類の数を低減するための対処方法として、紫外放射用蛍光ランプを利用して昆虫を誘引し殺戮している電撃殺虫器等があるが、これはむやみに昆虫を殺戮することと、殺戮され殺虫器に貼りついた昆虫の死骸を処理する必要があることなどが問題となっている。近年、自然生態系の保全という見地から、昆虫類をむやみに殺戮するのではなく、適切に管理して保全するという考え方が浸透してきている。
【0004】
そこで、前記した施設の夜間照明施設において、昆虫類の誘引を低減するため、昆虫の誘引効果が低い光源として、波長365nm前後をカットした低誘虫形のメタルハライドランプや低誘虫形の蛍光ランプが使用されている。すなわち低誘虫形のランプでは、図4の分光分布図に例示したように昆虫の視感度範囲の波長をカットしているため、昆虫にとっては点灯しても非常に暗いランプに見える。多くの夜行性昆虫は光走行性を持ち、他に明るい光源があればそちらに向かうため、結果として低誘虫形ランプには昆虫が誘引されにくくなる。しかし、当該施設のみに紫外放射をカットしたランプを使用するという方法では、照明施設周辺に他の光源がない場合や、他の光源も同様に紫外放射をカットしている場合には、当然、昆虫類の誘引低減効果は低下する。
【0005】
そこで、昆虫類の誘引効果が低い紫外放射カット形の光源を使用する照明システムにおいて、施設の周辺に誘引光源を設け、目的とするエリア内での昆虫類の誘引を低減する方法も提案されている(特許文献−1)。
【0006】
【特許文献1】特開2003―009744号公報
【0007】
一方、上記の低誘虫照明システムを使用する施設の内、食品工場や薬品工場、製紙工場などに使用する照明には、万一外球が破損した場合でもガラスの破片がランプ外部に飛散せず、微小な欠片一片でも製品に混入させてはならないという要求がある。屋外スポーツ施設の照明においても、特にゴルフや野球などの球技用施設では流れ弾によってランプが破壊される可能性があり、そのような場合でもガラス破片が施設利用客を傷つけることがあってはならない。
【0008】
本発明は、特許文献1の発明を改良し上記課題を解決するためになされたものであり、屋外スポーツ照明施設等において特に有用であり、照明光に起因する施設及びその周辺の民家等に誘引される昆虫類による周辺住民等への直接的な被害を小さくし、かつ自然生態系への負荷を低減することができる照明用昆虫係留システムにおいて、ランプの発光管破裂時にはもちろん、外球が外的要因によって破壊された場合であってもガラスの破片がランプ外部に飛散せず、施設利用客を傷つけることがない照明用昆虫係留システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面は、各種の照明施設における施設照明用光源のうち、当該施設利用者が通常滞在する領域の近傍に設置されその領域を照明する主光源として、透光性外管内部に、発光物質を含む発光管と前記発光管の周囲を取り囲む円筒状の透光性スリーブとマウント支持板とを含むランプ構成部品を前記透光性外管内に保持する外管マウントを有し、前記透光性スリーブの内外表面の少なくとも一方に紫外線反射膜を有し、前記透光性外管の外表面にフッ素樹脂からなる保護膜が被覆されている保護膜付メタルハライドランプを使用し、当該施設利用者が通常滞在しない領域の近傍に設置されその領域を照明する誘虫用光源として昆虫誘引効果の高い紫外放射用光源や青色光を含む青色光光源を使用し、昆虫を殺戮することなく留め置く低誘虫照明システムである。
【0010】
本発明の第2の側面は、各種の屋外照明施設における施設照明用光源のうち、当該施設利用者が通常滞在する領域の近傍に設置される主光源として、透光性外管内部に、発光物質を含む発光管と前記発光管の周囲を取り囲む円筒状の透光性スリーブと透光性外管内表面に接触するとともに外部からの給電部に電気的に接続しているマウント支持板とを含むランプ構成部品を前記透光性外管内に保持する外管マウントを有し、前記透光性スリーブの内外表面の少なくとも一方に紫外線反射膜を有し、前記透光性外管の外表面にフッ素樹脂からなる保護膜が被覆されている保護膜付メタルハライドランプを使用し、当該施設利用者が通常滞在しない領域の近傍に設置されその領域を照明する誘虫用光源として昆虫誘引効果の高い紫外放射用光源や青色光を含む青色光光源を使用し、施設照明を点灯する時には前記誘虫用光源を先に点灯してから前記主光源を点灯し、施設照明を消灯する時には前記主光源と前記誘虫用光源とを同時に消灯するか、前者を先に消灯してから後者を消灯する低誘虫照明システムである。
【0011】
本発明の第3の側面は、前記低誘虫システムの主光源として、真空雰囲気の透光性外管内部に、発光物質として少なくとも1種以上の希土類沃化物を含む発光管と前記発光管の周囲を取り囲む円筒状の透光性スリーブとを含むランプ構成部品を前記透光性外管内に保持する外管マウントを有し、前記透光性スリーブの内外表面の少なくとも一方に紫外線反射膜を有し、前記外管マウントの一方に付設されたマウント支持板は、透光性外管内表面に接触するとともにランプ外部からの給電部と電気的に接続しており、前記透光性外管の外表面にフッ素樹脂からなる保護膜が被覆され、前記発光管は透光性セラミック材料からなる保護膜付メタルハライドランプを使用したことを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載された低誘虫照明システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、青色光光源を用いて積極的に昆虫類を誘引することにより、施設利用客が滞在する領域外に昆虫を殺戮することなく留め置くことができる。
【0013】
すなわち、施設内の主光源が紫外線をほとんど放出しないメタルハライドランプであるため、当該施設を利用する人間にとっては通常の照明とほぼ同等の明るさに感じられるが昆虫にとっては非常に暗い照明となる。昆虫は施設の特定位置に配置された、昆虫の視感度範囲波長の光を放出する誘虫用光源に向かうため、施設の利用客が通常滞在する領域内には昆虫が入り込まない。
【0014】
また、施設内の主光源が、紫外線反射膜を有する透光性スリーブによってランプ外への紫外線放出をカットするとともに、透光性外管の外表面にフッ素樹脂からなる保護膜が被覆されている保護膜付メタルハライドランプであるため、透光性外管外表面にキズがつきにくく透光性外管が割れにくいうえ、万一発光管が破裂した場合や外的要因によってランプの透光性外管に衝撃が加わった場合に透光性外管を構成するガラスが破損しても、透光性外管に被覆されているフッ素樹脂膜は破れないので、ガラスが破片となって周囲に飛散することがない。このため特許文献1の低誘虫照明システムと同じ長所を継承しつつ、施設利用客にとってより安全な照明システムとなる。
【0015】
さらに、屋外照明施設の場合、施設照明を点灯する時には前記誘虫用光源を先に点灯してから前記主光源を点灯し、施設照明を消灯する時には前記主光源と前記誘虫用光源とを同時に消灯するか、前者を先に消灯してから後者を消灯することにより、昆虫を十分に誘虫用光源側に引き付けている状態でのみ主光源を点灯していることになり、低誘虫照明システムの効果がより明確に発揮される。
【0016】
請求項3に係る本発明は、前記誘虫用光源に適したランプとして、真空雰囲気の透光性外管内部に、発光物質として少なくとも1種以上の希土類沃化物を含む発光管と前記発光管の周囲を取り囲む円筒状の透光性スリーブとを含むランプ構成部品を前記透光性外管内に保持する外管マウントを有し、前記透光性スリーブの内外表面の少なくとも一方に紫外線反射膜を有し、前記外管マウントの一方に付設されたマウント支持板は、透光性外管内表面に接触するとともにランプ外部からの給電部と電気的に接続しており、前記透光性外管の外表面にフッ素樹脂からなる保護膜が被覆され、前記発光管は透光性セラミック材料からなる保護膜付メタルハライドランプを使用することにより、前記ランプからの紫外域の発光が減少するので低誘虫ランプとして有利であることと、高演色・高効率性を同時に実現できる。すなわち本発明に記載されたランプは透光性外管の内部が真空であるため、発光管外表面からの放熱は放射に限られ、発光管壁面温度を高く保つことが可能になることから、封入されている金属ハロゲン化物の分子発光比率が増加するので高演色・高効率となり、人間にとっての施設照明としてより好ましいシステムが構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明による低誘虫照明システムの最良の実施形態は、各種の照明施設における施設照明用光源のうち、当該施設利用者が通常滞在する領域の近傍に設置されその領域を照明する主光源として、透光性外管内部に、発光物質を含む発光管と前記発光管の周囲を取り囲む円筒状の透光性スリーブとマウント支持板とを含むランプ構成部品を前記透光性外管内に保持する外管マウントとを有し、前記透光性スリーブの内外表面の少なくとも一方に紫外線反射膜を有し、前記透光性外管の外表面にフッ素樹脂からなる保護膜が被覆されている保護膜付メタルハライドランプを使用し、当該施設利用者が通常滞在しない領域の近傍に設置されその領域を照明する誘虫用光源として昆虫誘引効果の高い紫外放射用光源や青色光を含む青色光光源を使用している。また前記主光源を高効率且つ高演色のランプとする場合には、前記透光性外管の内部を真空雰囲気とし、前記発光管内に発光物質として少なくとも1種以上の希土類沃化物を含み、前記発光管は透光性セラミック材料からなり、前記外管マウントの一方に付設されたマウント支持板は、透光性外管内表面に接触するとともにランプ外部からの給電部と電気的に接続している保護管付メタルハライドランプを低誘虫システムの主光源として使用する。さらにこの低誘虫システムを屋外照明施設として使用する場合には、施設照明を点灯する時には前記誘虫用光源を先に点灯してから前記主光源を点灯し、施設照明を消灯する時には前記主光源と前記誘虫用光源とを同時に消灯するか、前者を先に消灯してから後者を消灯する。
【実施例1】
【0018】
図1に本発明を適用したゴルフ練習場の照明配置図を示す。利用者が位置する打席101側には、主光源として複数の真空雰囲気の透光性外管内部に、発光管と前記発光管の周囲を取り囲む円筒状の透光性スリーブと透光性外管内表面に接触するとともに外部からの給電部に電気的に接続しているマウント支持板とを含むランプ構成部品を前記透光性外管内に保持する外管マウントを有し、前記透光性スリーブの内外表面の少なくとも一方に紫外線反射膜を有し、前記透光性外管の外表面にフッ素樹脂からなる保護膜が被覆されている保護膜付メタルハライドランプを用いた投光器(低誘虫照明103)が設置されており、飛翔するボールやフェアウェイ等を照明するようにしてある。このランプは、波長380nmから780nmの可視放射領域での透過率は90%以上であり、かつ波長400nm以下の紫外放射領域では25%以下であり、紫外放射を低減することにより、昆虫類の光の走行性に基づく誘虫性を抑制することができる。
【0019】
また、練習場の周囲には誘虫用光源として青色光を発するランプを使用した昆虫係留用の投光器(青色光照明104)が複数設置され、フィールド102の周辺部を照明している。青色光照明104に使用するランプとしては周知の高圧水銀ランプが好適である。透光性外管内表面に蛍光体を塗布していない透明タイプがよい。また、さらに短波長領域の発光効率を高めた希土類系またはインジウム系メタルハライドランプを使用すればより好適である。
【0020】
また、低誘虫照明103は利用客が通常滞在する打席の上空に設置されているが、本実施例においては上述のような保護膜付ランプを使用しているため、鳥が照明器具に飛び込む、打球がランプに当たるなどの突発事故で透光性外管が破損してもガラス破片が利用客の頭上に降り注ぐことはない。
【0021】
上記保護膜付メタルハライドランプの一例を図3に示す。ランプのほぼ中央には発光管4があり、その周囲にUVカット膜11を被覆された透光性スリーブ6が透光性スリーブ固定板5a5bにより位置固定されている。透光性スリーブ固定板5a5bはそれぞれ金属製のフレーム3に接合され、フレーム3はマウント支持板13およびステム2の導入線と接続することによりフッ素樹脂被膜12が被覆された透光性外管7内に位置固定されている。フレーム3は位置固定用の部材であると同時に電気的接続用の部材を兼ねており、図示しない外部給電システムからの電力をステム2の導入線を介して発光管リード線9aまで伝えている。
図3の中で、口金8及び透光性外管7を除いた部品は、あらかじめ相互に接合され、外管マウント20として組み立てられた後、透光性外管7の材料であるガラス球に挿入され、溶封される。
【0022】
発光管4の内部には、沃化ホルミウム、沃化ツリウム、沃化ディスプロシウム、沃化ナトリウム、沃化タリウム、沃化セシウム、水銀、Arガスが封入されている。この発光管4自体の構成は、周知のセラミックメタルハライドランプと特に変わるものではなく、点灯時には発光管から可視光を中心として紫外線や赤外線を含む連続した波長を有する光が放出される。

【0023】
発光管4の周囲に設けられた透光性スリーブ6にはUVカット膜11として酸化亜鉛膜が被着されている。この被膜を構成する酸化亜鉛は、粒径が0.01〜0.1μmの超微粒子よりなり、該被膜の膜厚は0.5〜3.0μmが好適である。膜厚0.5μm未満では紫外線遮蔽効果が後述する性能を満足せず、3.0μm以上ではランプ寿命を1万2千時間以上としたときに前記被膜が剥がれ落ちる危険がある。さらに1.5μm以上2.5μm以下の範囲でUV遮蔽特性と透光性スリーブ6への膜付着強度とのバランスが最も良い。なお、透光性スリーブ6への酸化亜鉛被膜の形成は、酸化亜鉛の超微粒子と結着剤としてのシリカを混合して懸濁液を形成し、該懸濁液をスプレー塗装法により透光性スリーブ6へ噴霧した後、加熱することにより行なう。または、前記懸濁液へ透光性スリーブを浸漬した後、一定速度で引き上げてから乾燥、焼成を行なう、いわゆる「ディップ法」を適用すると、透光性スリーブの内外表面に同時に酸化亜鉛被膜を形成できる。またディップ法の変形で、前記透光性スリーブを前記懸濁液の液面に接触させた状態を保ちながら前記透光性スリーブ内を負圧にして懸濁液を透光性スリーブ内に引き上げた後、透光性スリーブ内圧力を調整しながら懸濁液面を一定速度で下げていくことによって透光性スリーブ内面のみに酸化亜鉛被膜を形成することができる。透光性スリーブの外面のみに酸化亜鉛被膜を形成する場合には、蒸着法が利用できる。
【0024】
前記透光性外管7の外表面にフッ素樹脂膜12を被覆するには、ランプをフッ素樹脂膜12無しで図3の形状まで加工した後、外表面を洗浄、乾燥後、プライマ−層を塗布後、フッ素樹脂の微粒子を静電塗装の方式で吹き付け、炉体に入れて加熱焼成する。
【0025】
前項の静電塗装工程において、透光性外管7内に不活性ガスが充填されていれば、透光性外管7の内表面に帯電した電荷は透光性外管7内に充填されているガスを介して金属部材に伝達され、ランプ外に流出するが、透光性外管7内が真空雰囲気の場合、透光性外管7の内表面に帯電した電荷はなかなか除去されず、フッ素樹脂粒子の付着を阻害する。そのためできあがったフッ素樹脂膜12の膜厚が大きくばらついたり、外表面の一部に被覆できない部分が残ることがある。
【0026】
この場合、請求項3に係る本発明のように、外管マウント20の一方に付設されたマウント支持板13がランプ外部からの給電部と電気的に接続しているように構成してあれば、透光性外管7の内表面に外部と電気的に導通している金属部品が直接接触しているため、透光性外管7の内表面に帯電した電荷が速やかに除去され、ムラのないフッ素樹脂被膜を形成することができる。
【0027】
請求項3に係る本発明のランプは透光性外管7の内部が真空であるため、発光管4外表面からの放熱は放射に限られ、発光管壁面温度を高く保つことが可能になることから、封入されている金属ハロゲン化物の分子発光比率が増加する。このような構成とすることの利点としては、紫外域の発光が減少するので低誘虫ランプとして有利であることと、高演色・高効率性を同時に実現できることが挙げられる。
【0028】
請求項3に係る本発明の保護膜付ランプにおいては、発光管周囲に設けられた紫外線反射膜付透光性スリーブによって短波長側の光が発光管側に戻されるため、ランプ外に出る光は、400nm以下の光の相対強度が20%未満、380nm以下の光の相対強度が1.5%未満である。この結果、図4からわかるように、人間にとっては明るくきれいな照明だが、昆虫はこのランプから発生する光の数%しか感じることができないため非常に暗い照明となる。
【0029】
このような構成により、ゴルフ練習場の外周近傍に昆虫を係留してむやみに殺戮することなく、打席101の近くには昆虫が入り込まない照明システムを構築でき、さらに万一打席近くの主要照明であるランプが破損した場合にも、透光性外管のガラス片が周囲に飛散しない照明システムにすることができる。
【実施例2】
【0030】
本実施例では、各照明の設置例及び使用するランプの種類は実施例1と同じだが、各照明を点灯または消灯するタイミングを、図2のように、施設照明を点灯する時には図2中にAで示す前記誘虫用光源を先に点灯してから図2中にBで示す前記主光源を点灯し、施設照明を消灯する時には前記主光源と前記誘虫用光源とを同時に消灯するか、前者を先に消灯してから後者を消灯する。
【0031】
青色光光源と保護膜付メタルハライドランプとの点灯消灯タイミングの差はその照明設備の規模や照明の灯数、配置などによって決められるが、実用上、点灯時には5分から15分、消灯時には1分から10分の時間差があれば利用客が通常滞在する領域内に昆虫が迷い込むことが無い。また低誘虫光源と昆虫誘引用の青色光光源とが最適位置に設置されるなど、誘引条件が適当であれば、消灯時には前記2種の照明を同時に消灯しても良い。
【0032】
このような点灯タイミングをとることによって、屋外施設内および施設周囲に散在していた昆虫が青色光照明に誘引され、十分に青色光照明側に引き付けているから主要照明を点灯していることになり、消灯時にもまず主要照明が消え、利用客が通常滞在する領域内に昆虫が入り込む可能性がなくなった後で青色光照明が消え、昆虫が青色光照明から離れることになる。したがって昆虫を無用に殺戮することなく人間の害にならない場所に誘導するという本発明の効果がより明確に発揮される。
【0033】
なお、以上の実施例ではゴルフ練習場に本発明を適用した例について説明したが、野球場の夜間照明においても、低誘虫の主光源を使用して施設利用客が通常滞在するグランドおよび観客席を照明し、青色光の誘虫用光源を使用してバックスクリーンなど人がいない場所を照明することにより、ほぼ同様の効果を得ることができる。野球場のグランド照明用器具は通常観客席の上方に設置されているために万一ランプの破片が降り注ぐと利用客に害をなすという従来システムの問題点もゴルフ練習場と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、屋外スポーツ照明施設等において、照明光に起因する施設及びその周辺の民家等に誘引される昆虫類による周辺住民等への直接的な被害を小さくし、かつ自然生態系への負荷を低減することができる照明用昆虫係留システムにおいて、発光管破裂時にはもちろん、外球が外的要因によって破壊された場合にもガラスの破片がランプ外部に飛散せず、施設利用客を傷つけることがない照明用昆虫係留システムを提供する技術である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る低誘虫照明システムのランプ配置例を示す配置図。
【図2】本発明に係る低誘虫照明システムの点灯タイミングの一例を示すタイミングチャート。
【図3】本発明に係る保護膜付メタルハライドランプの一例を示す一部断面図。
【図4】本発明に係る保護膜付メタルハライドランプの分光放射照度及び昆虫の分光視感度を示す図。
【符号の説明】
【0036】
3 フレーム
4 発光管
6 透光性スリーブ
7 透光性外管
11 UVカット膜
12 フッ素樹脂膜
13 マウント支持板
103 低誘虫照明
104 青色光照明

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種の照明施設における施設照明用光源のうち、当該施設利用者が通常滞在する領域の近傍に設置されその領域を照明する主光源として、透光性外管内部に、発光物質を含む発光管と前記発光管の周囲を取り囲む円筒状の透光性スリーブとマウント支持板とを含むランプ構成部品を前記透光性外管内に保持する外管マウントとを有し、前記透光性スリーブの内外表面の少なくとも一方に紫外線反射膜を有し、前記透光性外管の外表面にフッ素樹脂からなる保護膜が被覆されている保護膜付メタルハライドランプを使用し、当該施設利用者が通常滞在しない領域の近傍に設置されその領域を照明する誘虫用光源として昆虫誘引効果の高い紫外放射用光源や青色光を含む青色光光源を使用し、昆虫を殺戮することなく留め置く低誘虫照明システム。
【請求項2】
各種の屋外照明施設における施設照明用光源のうち、当該施設利用者が通常滞在する領域の近傍に設置される主光源として、透光性外管内部に、発光物質を含む発光管と前記発光管の周囲を取り囲む円筒状の透光性スリーブとマウント支持板とを含むランプ構成部品を前記透光性外管内に保持する外管マウントを有し、前記透光性スリーブの内外表面の少なくとも一方に紫外線反射膜を有し、前記透光性外管の外表面にフッ素樹脂からなる保護膜が被覆されている保護膜付メタルハライドランプを使用し、当該施設利用者が通常滞在しない領域の近傍に設置されその領域を照明する誘虫用光源として昆虫誘引効果の高い紫外放射用光源や青色光を含む青色光光源を使用し、施設照明を点灯する時には前記誘虫用光源を先に点灯してから前記主光源を点灯し、施設照明を消灯する時には前記主光源と前記誘虫用光源とを同時に消灯するか、前者を先に消灯してから後者を消灯する、低誘虫照明システム。
【請求項3】
前記透光性外管の内部は真空雰囲気であり、前記発光管内に発光物質として少なくとも1種以上の希土類沃化物を含み、前記発光管は透光性セラミック材料からなり、前記外管マウントの一方に付設されたマウント支持板は、透光性外管内表面に接触するとともにランプ外部からの給電部と電気的に接続している保護膜付メタルハライドランプを前記低誘虫システムの主光源として使用したことを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載された低誘虫照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−27940(P2009−27940A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192562(P2007−192562)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】