説明

低誘電率及び低損失特性を有するポリp−キシリレン系重合体ならびにこれを用いた絶縁材、印刷回路基板および機能性素子

【課題】低誘電率、低損失特性、及び優れた工程性を有する低損失絶縁材として有用である新規なポリp−キシリレン系重合体、及びこれを用いた絶縁材、印刷回路基板、機能性素子を提供する。
【解決手段】ポリp−キシリレン系重合体は、下記化学式(1)で表される繰り返し単位を少なくとも1種含むことを特徴とする。


(式中、R、R、R、及びRの少なくとも一つは独立に置換または非置換のC6−C20のアリール基であり、nは400〜900の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電損失による低い誘電定数を有するポリp−キシリレン系重合体及びこれを用いた絶縁材、印刷回路基板、機能性素子に関し、特に、下記化学式(1)で表される繰り返し単位を少なくとも1種含むポリp−キシリレン系重合体ならびにこれを用いた絶縁材、印刷回路基板および機能性素子に関する。
【化1】

(式中、R、R、R、及びRの少なくとも一つは独立に置換または非置換のC6−C20のアリール基であり、残りのR〜Rはそれぞれ独立に水素もしくは置換または非置換のC1−C3の直鎖状または分枝状アルキル基であり、nは400〜900の整数を示す。)
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路(IC)の発展により回路の小型化が可能となり、さらに高集積化による多機能化、高性能化が可能となった。これにより、このような高集積回路を実装してまた他の素子との電気的接続を目的とするインターポーザ、パッケージ、印刷回路基板などにも高集積化が要求される。従来多層基板は、基板上層部に全ての部品を実装していた。しかしながら、多数または一部の部品を多層基板内部に内蔵することにより、集積度をさらに高め、小型化・高容量化を達成できる埋め込み型印刷回路基板(embedded PCB)の開発が強く求められている。埋め込み型印刷回路基板とは、部品を3次元実装(内蔵)することによりサイズを減少させ、高周波における電気的性能を向上させることができるパッケージまたは基板のことである。
【0003】
埋め込み型印刷回路基板は、半導体及び受動部品を内蔵する多層基板であって、高密度化、高機能化、及び高周波特性を有する。電子部品の小型化、薄化および軽量化の必要により、高密度集積回路(LSI)の小型化も発展し、集積回路の超微細配線が可能となった。しかしながら、高い消費電力およびチップ部品の実装に懸念があるため、受動部品が使用され、かつ基板内層に直接受動素子を内蔵した埋め込み型印刷回路基板がより求められている。低損失誘電体(LLD)は、RF(radio frequency)埋め込み型印刷回路基板に絶縁材または機能性素子(例えば、フィルターなど)として使用できる基板材料である。電子部品の小型化・高周波化のため、低クロストーク、低伝送損失が要求されている。このような高周波パッケージ及びモジュールなどに適した、低誘電特性及び低損失特性を有する新たな絶縁材の開発が求められている。フィルターなどをパッケージ内部に埋め込むための高いQ値(Q value)を有する材料も、小型化のために必要である。低損失誘電体は、埋め込み型印刷回路基板において配線間または機能性素子間の絶縁材、およびパッケージの剛性を維持する構造材の役割をする。高密度集積回路の動作周波数が高くなり、微細配線を使用することから、パッケージにおいてもさらに高い配線密度が要求される。しかし、このような高い配線密度では配線間のノイズの発生が高くなるため、絶縁材の誘電定数寄生容量、および誘電損失は、絶縁損害を減するために低減しなければならない。
【0004】
既存のベンゾシクロブテン(BCB)材料は、優れた特性にもかかわらず、高いコストのため、印刷回路基板(PCB)への適用が困難である。また、液晶ポリマー(LCP)は、特性は優れているが、熱可塑性樹脂の特性のため、印刷回路基板の処理に問題点があった。このために、絶縁特性や処理可能性を備えた新たな材料の開発が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、埋め込み型印刷回路基板の基板材料(例えば、絶縁材または機能性素子)として用いることができる低誘電定数及び処理可能性を備えた新規な低損失誘電材の材料として、ポリp−キシリレン系重合体及びこれを用いた絶縁材、印刷回路基板および機能性素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明者らは多様なポリp−キシリレン系重合体を製造し、その重合体の誘電定数、誘電損失係数、熱分解開始温度、およびガラス転移温度を特定する実験をした結果、低誘電定数及び処理可能性を備えた新規低損失絶縁材用材料を開発することに至った。
【0007】
本発明の一実施形態では、下記化学式(1)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ含む、ポリp−キシリレン系重合体が提供される。
【化2】

(式中、R、R、R、及びRの少なくとも一つは独立に置換または非置換のC6−C20のアリール基であり、その他のR〜Rはそれぞれ独立に水素、置換または非置換のC1−C3の直鎖状アルキル基、もしくは置換または非置換のC1−C3の分枝状アルキル基であり、nは400〜900の整数である。)
【0008】
上述した重合体は、極性官能基のない炭化水素からなるパリレン系物質である。この重合体は金属触媒を使用しなくても合成でき、低誘電特性を有する。また、上述した重合体は、熱的・機械的特性にも優れているため、低誘電基板の材料として好適である。
【0009】
さらに、このような重合体は、最近ポリマー基板材料分野で注目されているハロゲンフリー製品にも適用することができる。
【0010】
化学式(1)のR及びRの一つは置換または非置換のC6−C20のアリール基で、R及びRの一つは置換または非置換のC6−C20のアリール基で、および残りのR〜Rは水素であることができる。
【0011】
本発明の一実施例によれば、上記アリール基は、例えば、下記化学式(2)で表されるアリール基から選択されることができる。
【化3】

【0012】
さらに、上記化学式(1)において、アリール基ではない残りのR〜Rは、水素、もしくは例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル基などのアルキル基から選択される、置換または非置換のC1−C3の直鎖状または分枝状アルキル基であることができる。
【0013】
本発明の一実施例によれば、上記ポリp−キシリレン系重合体は、下記化学式(3)で表されるポリp−キシリレン系重合体であることができる。
【化4】

(式中、nは400〜900の整数を示す。)
【0014】
上記化学式(3)の化合物は多様な方法により作成でき、具体的には、例えば、下記化学反応式(4)の工程で繰り返し単位の単量体を作成し、これをギルチ(Gilch)重合反応により重合させて作成することができる。
【化5】

【0015】
上述したような、本発明のポリp−キシリレン系重合体は、誘電率が1GHzで2.0〜3.0の範囲であり、誘電損失係数(tanδ)は1GHzで0.001〜0.005の範囲であり、熱分解開始温度(TGA onset temperature range、T5%)は390℃〜405℃の範囲であり、およびガラス転移温度は230℃〜240℃である。このように、本発明のポリp−キシリレン系重合体の特徴は、ポリp−キシリレンの低誘電特性をそのまま保持しながら、結合されたアリール基により優れた処理可能性が得られることである。
【0016】
本発明の好ましい一実施例による重合体から製造されたフィルムは、350℃以上で熱分解が開始され、ガラス転移温度は240℃以上であるため、熱的および機械的に安定している。また、フィルムとして製作された場合、透明、柔軟、かつスピンコーティング時の接着力にも優れる。
【0017】
本発明の一実施例によるポリp−キシリレン系重合体は、低損失誘電体材料として用いることができる。
【0018】
本発明の他の実施形態によれば、上記ポリp−キシリレン系重合体を使用する絶縁材が提供される。上記絶縁材は埋め込み型印刷回路基板または機能性素子に用いることができる。上記絶縁材の誘電率は1GHzで1.0〜3.0の範囲であり、好ましくは、1.0〜2.0である。また、上記絶縁材の誘電損失係数は1GHzで0.001〜0.005の範囲であり、好ましくは、0.001〜0.003である。
【0019】
有機ベースの基板技術は焼結工程が不要であるという工程上の特徴を有し、工程の簡素化が可能となる。
【0020】
また、上記絶縁材を基板の樹脂に用いることができ、上記絶縁材を基板の樹脂に用いた場合、パターン間のノイズ発生および絶縁損失も低減される。上記絶縁材は、基板のフィラー、基板の絶縁層、及びガラス纎維などの低誘電特性を必要とする構造には、制限されずに使用することができる。
【0021】
さらに、上記絶縁材は、多数または一部の部品を基板内部に内蔵できる埋め込み型印刷回路基板または機能性素子に用いることができる。
【0022】
本発明のさらなる他の実施形態では、上記絶縁材を含む埋め込み型印刷回路基板または機能性素子が提供される。
【0023】
本発明のまた他の実施形態によれば、アリールアルデヒドまたはアリールアルキルケトンを製造するステップと、上記作成した化合物にジハロベンゼンを添加してグリニャール反応を行うステップと、還元ステップと、上記還元された化合物と、アリールアルデヒドまたはアリールアルキルケトンとをグリニャール反応させるステップと、ハロゲン化するステップと、ギルチ重合反応させるステップと、を含む、ポリp−キシリレン系重合体の製造方法が提供される。
【0024】
一実施例によれば、上記アリールアルキルケトンのアルキル基は、水素、もしくは置換または非置換のC1−C3の直鎖状または分枝状アルキル基であり得る。
【0025】
また、一実施例によれば、上記アリールアルデヒド及びアリールアルキルケトンのアリール基は、下記化学式(2)で表される群から選択されることができる。
【化6】

【0026】
一実施例によれば、上記アリールアルデヒドはベンズアルデヒドであり、上記アリールアルキルケトンはフェニルメチルケトンであり、上記ジハロベンゼンはジブロモベンゼンであり得る。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ポリp−キシリレン系重合体を用いた絶縁材、印刷回路基板、及び機能性素子を用いて低誘電性を有する材料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】熱重量分析計を用いて本発明の実施例1による重合体の熱分解温度を測定したグラフである。
【図2】示差走査熱量計を用いて本発明の実施例1による重合体のガラス転移温度を測定したグラフである。
【図3】図3aおよびbは、RFインピーダンス/材料分析器を用いて、本発明の実施例1による重合体の誘電正接を測定したグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、製造例及び実施例により本発明を詳細に説明し、下記の製造例及び実施例は、単に説明するためのものであって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0030】
[実施例1]ジフェニルポリp−キシリレン系重合体の合成
(1)単量体の合成
【化7】

先ず、上記の化学反応式(5)で表されるように、4-ブロモベンズヒドロールを合成した。滴下漏斗及び還流冷却器を備える乾燥された三つ口フラスコにマグネシウム片14.6g(600mmol、1.20equiv.)を入れ、乾燥されたジエチルエーテル50ml内で、アルゴン雰囲気下で20分間撹拌した。次に、ヨウ素を少量添加し、混合物をさらに20分間撹拌した。この反応混合物に、500mlのジエチルエーテルに117.0gの(500mmol、1.00equiv.)ジブロモベンゼンを溶解した溶液を点滴添加した。添加後、混合物を1時間還流させた。混合物を室温に冷却し、過量のマグネシウム片をアルゴン雰囲気下で濾過した。この反応混合物に、400mlのジエチルエーテルに47.7g(450mmol、0.9equiv.)のベンズアルデヒドを溶解した溶液を点滴添加(drop‐wise addition)した。この混合物を2時間還流した後、反応混合物を氷水に入れた。この反応混合物をpH3〜4に調整した後、クロロホルムで3回にわたって抽出した。有機層をNaHCOの飽和溶液で中和し、NaSOで乾燥した。溶媒を蒸溜し、生成物を真空状態で5時間乾燥した。生成物をGC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析)で分析した結果、0.2%のジブロモベンゼン、2.1%のベンズヒドロール、86.3%の4−ブロモベンズヒドロール、及び11.4%のα,α’−ジヒドロキシジフェニル−p−キシロールの混合物であることが分かった。この生成物は後に還元反応を行った。
【0031】
【化8】

上記の化学反応式(6)で表されるように、4-ブロモジフェニルメタンを作成した。還流冷却器及び内部温度計を備える三つ口フラスコに4−ブロモベンズヒドロールを入れ、500mlの酢酸、113g(445mmol)のヨウ素、及び226ml、50wt%の亜リン酸(2.2mol)と混合した。この混合物を80℃で24時間加熱後冷却した。反応混合物を後に700mlの氷水を添加し、反応生成物を5回にわたってヘキサン(毎回200ml)で抽出した。有機層を10wt%のKOH溶液及び200mlの飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄し、飽和NaSO溶液で2回にわたって洗浄した。溶媒を蒸溜し、真空状態で乾燥して、61%(276mmol)の収率、沸点は103℃(5×10−2mbar)である生成物を得た。
【0032】
生成物のNMR分析結果は下記の通りである。
H NMR(400MHz、CHCl)δ:7.37−6.80(m、9H、ArH)、3.75(s、2H、PhCHPh)
13C NMR(400MHz、CHCl)δ:41.4(PhCHPh)、119.9(ArC−Br)、140.6−126.2(ArC)
【0033】
【化9】

上記の化学反応式(7)で表されるように、上述した化学反応式5の4−ブロモベンズヒドロールの作成工程と同様に、α,α’−ジフェニル−α−ヒドロキシル−p−キシレンを作成した。粗生成物はクロロホルムに溶解した後、シリカゲルが充填されたG60カラムを通して濾過された。溶媒の蒸溜後に、生成物をヘキサン/クロロホルム混合物(9:1v/v)を用いて再結晶して、収率は86%であり、融点は64℃である生成物を得た。
【0034】
生成物のNMR分析資料は下記の通りである。
H NMR(300MHz、CDCl)δ:7.31−7.10(m、14H、ArH)、5.63(s、1H、−CHOH−、3.86(s、2H、-CH-)、2.46(s1H、−OH)
13C NMR(75MHz、CDCl)δ:144.0−126.3(ArC)、76.2−(CHOH)−、41.8(−CH−)
【0035】
【化10】

次に、上記の化学反応式(8)で表されるように、α,α’−ジフェニル−α−ヒドロキシル−p−キシレンの塩素化反応を行った。滴下漏斗及び還流冷却器を備える三つ口フラスコ内で62mmolに相当するアルコールを100mlのクロロホルムに溶解し、0℃に冷却した。溶液に60mlの濃塩酸(37wt%)をゆっくり添加した後、混合物を0℃で20分間撹拌した。この反応混合物を1時間還流後、有機層をNaHCO飽和溶液で中和した。有機層は、NaSOで乾燥した。溶液を蒸溜し、生成物を5時間真空状態で乾燥した。粗生成物をクロロホルムに溶解し、シリカゲルを充填したG60カラムで濾過した。溶媒の蒸溜後、生成物はヘキサン/クロロホルム混合物(9:1v/v)を用いて再結晶し、収率は82%であり、融点は73℃である生成物を得た。
【0036】
生成物のNMR分析資料は下記の通りである。
H NMR(300MHz、CDCl)δ:7.20−7.00(m、14H、ArH)、6.00(s、1H、−CHCl−、3.86(s、2H、-CH-)
13C NMR(75MHz、CDCl)δ:141.0−126.1(ArC)、64.0(−CH(Cl)−)、41.4(−CH−)
【0037】
(2)単量体を用いたポリp−キシリレン系重合体の合成
【化11】

上記の化学反応式(9)で表されるように、ギルチ重合反応によるジフェニル−ポリキシリレン(Diph‐PPX)の合成を行った。乾燥された三つ口フラスコ内の85mlの乾燥ジオキサンに、1.82g(16.2mmol、2.0equiv.)のカリウムt−ブトキシドをアルゴン雰囲気下で注入した。溶液を沸点まで加熱し、8.1mmol(1.0equiv.)のフッ素単量体を含むジオキサン12mlを添加した。混合物を3時間還流し、600mlのメタノール内で沈殿された。反応生成物を濾過して乾燥した。メタノール内での再溶解及び再沈殿することにより、収率は81%である生成物を得た。
【0038】
生成物のNMR分析資料は下記の通りである。
H NMR(300MHz、CDCl)δ:7.10−6.40(m、14H、ArH)、4.32(s、2H、PhCH−CHPH−)
13C NMR(75MHz、CDCl)δ:143.3−125.5(ArC)、56.0(PhCH−CHPH)
【0039】
(3)実施例1により合成された重合体の物性測定
<物性測定方法>
熱重量分析計(TGA)
熱重量分析実験は、TGA2050(TA Instruments社製)を用いて行った。10mgの重合体サンプルを使用し、窒素雰囲気下で700℃まで10℃/分で昇温した。
【0040】
測定結果を図1に示す。図1から分かるように、重合体の熱分解温度は350℃以上であって、熱的に非常に安定していることが分かる。
【0041】
示差走査熱量計(DSC)
示差走査熱量分析実験は、DSC2010及びDSC2910(TA Instruments社製)を用いて行った。サンプルの重量は5mgであった。全ての重合体サンプルは10℃/分で300℃まで加熱し、その後、10℃/分で30℃まで冷却した。このような加熱及び冷却後の最初のスキャンの後、それぞれのサンプルに対して同一工程で二回目のスキャンを行った。
【0042】
測定結果を図2に示す。図2から分かるように、重合体のガラス転移温度が240℃以上であって、熱的及び機械的に非常に安定していることが分かる。
【0043】
屈折率及びフィルムの厚さ
屈折率は薄膜分析器のFilmetrics F20(FilmetricsInc.社製)を用いて632.8nmの波長で測定した。サンプルを測定する前に、Si−ウェハ(Si−Wafer)スタンダードサンプル(厚さ=7254.7Å)上のSiOをテストした。重合体はシクロヘキサンに12重量%で溶解し、3000rpmで30秒間、シリコンウェハ上にスピンコートし、サンプルを60℃で1日間真空乾燥し、均一で純粋なフィルムがSiウェハ上に得られた。フィルムは、スピンコーティング時に透明で、かつ優れた柔軟性および接着力を有していた。
【0044】
誘電定数、誘電正接、及びフィルム製造
誘電定数は、金属−絶縁体−金属(MIM)の並列キャパシタンス方法で測定した。重合体フィルムは後述する方法で製造した。重合体粉末をテフロン(登録商標)製の二つの半部(halve)を有するモールドに注入した。その後、モールドを二つのステンレス鋼プラテン(platen)で加圧し、真空オーブンで200℃で4時間加熱した。水中で冷却した後、モールドの二つの半部を分離してフィルムを取り出した。 振動数1MHz〜1GHzの範囲で、RFインピーダンス/材料分析器、Agilent E4991A(Agilent Technologies社製)を用いて誘電定数及び誘電正接を測定した。フィルムをテストヘッド及び装着部にロードした。
【0045】
測定結果を図3a及び図3bに示す。図3a及び図3bから分かるように、誘電正接が0.002〜0.003であって、低誘電特性に非常に優れたことが分かる。
<物性測定結果>
a)分子量:Mn:190,000、Mw/Mn:2.4
b)重合度(Dp):400−900単量体単位
c)ガラス転移温度(Tg):230〜240℃
d)熱分解開始温度(T5%):390〜405℃
e)屈折率:1.59
f)溶解能:ジフェニルポリp−キシリレンは、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム(CHCl)、アセトン、トルエン、及び塩素原子が含まれている全ての溶媒に対して溶解が可能であった。
g)誘電定数範囲:500MHzで2.8、1GHzで2.8
h)誘電正接範囲(Tanδ):500MHzで0.002、1GHzで0.003
【0046】
以上、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野で通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載した本発明の思想及び領域から脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更させることができることを理解できよう。
【0047】
本発明は上述した実施例に限定されず、および本発明の原理および技術思想の範囲で当業者によるいくつかの変更が行われることは明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ含む、ポリp−キシリレン系重合体。
【化1】

(式中、R、R、R、及びRの少なくとも一つは独立に置換または非置換のC6−C20のアリール基であり、残りのR〜Rはそれぞれ独立に水素もしくは置換または非置換のC1−C3の直鎖状または分枝状アルキル基であり、nは400〜900の整数を示す。)
【請求項2】
前記R及びRの一つは置換または非置換のC6−C20のアリール基であり、R及びRの一つは置換または非置換のC6−C20のアリール基であり、その他のR〜Rは水素であることを特徴とする、請求項1に記載のポリp−キシリレン系重合体。
【請求項3】
前記アリール基が、下記化学式(2)で表される群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載のポリp−キシリレン系重合体。
【化2】

【請求項4】
前記ポリp−キシリレン系重合体は、下記化学式(3)で表されるものであることを特徴とする、請求項1に記載のポリp−キシリレン系重合体。
【化3】

(式中、nは400〜900の整数を示す。)
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の、ポリp−キシリレン系重合体を含む絶縁材。
【請求項6】
前記絶縁材は、埋め込み型印刷回路基板または機能性素子に用いられることを特徴とする、請求項5に記載の絶縁材。
【請求項7】
前記絶縁材の誘電損失係数は、1GHzで0.001〜0.005の範囲であることを特徴とする、請求項5に記載の絶縁材。
【請求項8】
請求項5に記載の絶縁材を含む、埋め込み型印刷回路基板。
【請求項9】
請求項5に記載の絶縁材を含む、機能性素子。
【請求項10】
アリールアルデヒドまたはアリールアルキルケトンを用意するステップと、
前記用意した化合物にジハロベンゼンを添加してグリニャール(Grignard)反応を行うステップと、
還元ステップと、
前記還元された化合物と、アリールアルデヒドまたはアリールアルキルケトンとをグリニャール反応させるステップと、
ハロゲン化するステップと、
ギルチ(Gilch)重合反応させるステップと、
を含む、ポリp−キシリレン系重合体の製造方法。
【請求項11】
前記アリールアルキルケトンのアルキル基は、水素もしくは置換または非置換のC1−C3の直鎖状または分枝状アルキル基であることを特徴とする、請求項10に記載のポリp−キシリレン系重合体の製造方法。
【請求項12】
前記アリールアルデヒド及びアリールアルキルケトンのアリール基は、下記化学式(2)で表される群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載のポリp−キシリレン系重合体の製造方法。
【化4】

【請求項13】
前記アリールアルデヒドは、ベンズアルデヒドであり、前記アリールアルキルケトンは、フェニルメチルケトンであり、前記ジハロベンゼンは、ジブロモベンゼンであることを特徴とする、請求項10に記載のポリp−キシリレン系重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−53333(P2010−53333A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68529(P2009−68529)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】