説明

低酸素症を処置するための医薬および方法ならびにその医薬についてスクリーニングするための方法

【課題】新規の低酸素症を処置するための方法などの提供。
【解決手段】プロリルヒドロキシラーゼ調節因子を同定する方法であって、該方法は、以下の工程:a)、プロリルヒドロキシラーゼ、推定プロリルヒドロキシラーゼ調節因子、および光生成融合タンパク質を接触する工程であって、該光生成融合タンパク質は、プロリルヒドロキシラーゼに対する結合特性を有するHIFαポリペプチド部分および光生成ポリペプチド部分を含み、ここで、該光生成ペプチド部分の光生成が、HIFαに対するプロリルヒドロキシラーゼの結合に有利な条件下で該HIFαポリペプチド部分に対するプロリルヒドロキシラーゼの結合に基づいて変化して、試験サンプルを形成する、工程;およびb)該試験サンプル中で生成された光を測定することによって、プロリルヒドロキシラーゼを調節する該推定プロリルヒドロキシラーゼ調節因子の能力を決定する工程
を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府により助成された研究に対する陳述)
本発明は、米国政府の補助によりなされた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
細胞がどのように周辺酸素の変化を感じとるかは、生物学において中心的な問題である。哺乳動物細胞において、酸素の欠乏すなわち低酸素症は、配列特異的DNA結合転写因子(HIF(低酸素症誘導性因子)と称される)の安定化を導き、このHIFは、脈管形成およびグルコース代謝のようなプロセスに関連する種々の遺伝子の転写を活性化する。
【0003】
組織虚血は、罹患率および死亡率の主要な原因である。虚血は、例えば、発作、深静脈血栓症、肺塞栓および腎不全から生じる組織への血液供給の欠乏によりもたらされる慢性虚血から生じ得る。虚血組織はまた、腫瘍においても見出される。
【0004】
HIFは、αサブユニットおよびβサブユニットからなるヘテロ二量体(アリール炭化水素レセプター核輸送体すなわちARNTとも称される)としてDNAに結合する。αサブユニットは、酸素の存在下で迅速にポリユビキチン化され、そして分解されるが、一方βサブユニットは、構成的に安定である。フォン・ヒッペル−リンダウ(VHL)病は、血管内皮増殖因子(VEGF)のような低酸素症誘導性mRNAを過剰誘導する、高度に血管性の腫瘍の発達によって特徴付けられる遺伝性癌症候群である。VHL腫瘍サプレッサー遺伝子の産物(pVHL)は、エロンギン(elongin)B、エロンギンC、Cul2およびRbx1を含む多タンパク質複合体の成分である。この複合体は、SCF(Skp1/Cdc53またはCullin/F−ボックス)ユビキチンリガーゼとの構造的類似性および機能的類似性を保有する。酸素の存在下で、pVHLは、HIFαサブユニットに直接結合し、そしてそれらをポリユビキチン化および破壊へと標的化する。機能的pVHLを欠く細胞は、HIFを分解できず、従って、HIF標的遺伝子にコードされるmRNAを過剰誘導する。
【0005】
近年、細胞増殖の制御における分子機構を理解する方向への進歩がまたなされている。異常な細胞増殖は、癌のような疾患の発生および進行における特徴的な事象である。哺乳動物の細胞周期の進行は、サイクリンの調整された出現および破壊と関連する。異なるサイクリンは、異なる細胞周期の移行に関連する。例えば、サイクリンEは、G1後期および初期S期において活性であり、サイクリンAは、S期において活性であり、そしてサイクリンBは、有糸分裂において活性である。サイクリンは、サイクリン依存性キナーゼ(cdk)に結合する。この状況において、サイクリンは、それらのパートナーcdkの触媒活性を活性化し、そしてまた基質認識において役割を果たす。
【0006】
いくつかの転写調節タンパク質(例えば、pRBホモログのp107およびp130、E2FファミリーのメンバーであるE2F1、E2F2およびE2F3、転写同時活性化因子p300およびNPAT(AT遺伝子座にマップされた核タンパク質))は、サイクリンA/cdk2および/またはサイクリンE/cdk2と共に安定な複合体を形成する。これらタンパク質は全て、DNAに直接的または間接的に結合する。従って、このような複合体は、ゲノム内の特定の部位において、サイクリンA/cdk2またはサイクリンE/cdk2の濃度を増加させるためのビヒクルとして作用し得る。このように、サイクリンA/cdk2およびサイクリンE/cdk2は、転写およびDNA複製のようなプロセスにおいて比較的直接的な役割を果たし得る。これら2つのプロセスは、正常な細胞増殖において基本的であり、そして異常な細胞増殖(例えば、癌)の間に乱される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明によって以下が提供される:
(1)プロリルヒドロキシラーゼ調節因子を同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
a)、プロリルヒドロキシラーゼ、推定プロリルヒドロキシラーゼ調節因子、および光生成融合タンパク質を接触する工程であって、該光生成融合タンパク質は、プロリルヒドロキシラーゼに対する結合特性を有するHIFαポリペプチド部分および光生成ポリペプチド部分を含み、ここで、該光生成ペプチド部分の光生成が、HIFαに対するプロリルヒドロキシラーゼの結合に有利な条件下で該HIFαポリペプチド部分に対するプロリルヒドロキシラーゼの結合に基づいて変化して、試験サンプルを形成する、工程;およびg
b)該試験サンプル中で生成された光を測定することによって、プロリルヒドロキシラーゼを調節する該推定プロリルヒドロキシラーゼ調節因子の能力を決定する工程
を包含する、方法。
(2)プロリルヒドロキシラーゼの調節因子に対するアッセイであって、該アッセイは、以下;
a)調節因子の非存在下でプロリルヒドロキシラーゼが該HIF1αポリペプチド部分に作用し得る条件下で、プロリルヒドロキシラーゼ、HIF1α部分および推定調節因子を化合物を接触させる工程;および
b)該調節因子化合物によって生じるプロリルヒドロキシラーゼ阻害の度合を測定する工程;
を包含する、アッセイ。
(3)前記試験サンプルがpVHLをさらに含む、項目2に記載の方法。
(4)項目2に記載の方法であって、ここで、前記HIF1αポリペプチド部分は、アミノ酸配列 Y−X−Leu−X−Pro−X−X−X−X−Y’を含み、ここで、
a)Proは、ヒドロキシル化プロリンであり;
b)X、X、X、XおよびXは、独立して、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、PheまたはTrpであり;
c)Xは、Ser、Thr、またはTyrであり;そして
d)YおよびY’は、独立して、存在するか、または存在せず、存在する場合には、これらは独立して1〜600アミノ酸を有するペプチドを含む、
方法。
(5)前記HIF1αポリペプチド部分が、野生型HIF1αに従って番号づけられたHIF1αのN末端残基1〜600に対応するアミノ酸配列を含み、ここで、残基564がヒドロキシル化プロリンである、項目2に記載の方法。
(6)前記HIF1αポリペプチド部分が、野生型HIFαに従って番号づけられたHIF1αのN末端残基1〜600に対応するアミノ酸配列を含み、ここで、残基402がヒドロキシル化プロリンである、項目2に記載の方法。
(7)前記HIF1αポリペプチド部分が、野生型HIF1αに従って番号づけられたHIF1αのN末端残基1〜600に対応するアミノ酸配列を含み、ここで、残基402および残基564のいずれかまたは両方がヒドロキシル化プロリンである、項目2に記載の方法。
(8)項目2に記載の方法であって、ここで、前記HIFαポリペプチド部分が、野生型HIF1αに従って番号づけられたHIF1αの残基564を含んで、該残基564に隣接するか、そして/または該残基564の周囲にある、残基に対応する4〜12のアミノ酸配列を含み、ここで、残基564はヒドロキシル化プロリンである、方法。
(9)項目2に記載の方法であって、ここで、前記HIF1αポリペプチド部分が、野生型HIF1αに従って番号づけられたHIF1αの残基564を含んで、該残基564に隣接するか、そして/または該残基564の周囲にある、残基に対応する12〜14のアミノ酸配列を含み、ここで、残基564はヒドロキシル化プロリンである、方法。
(10)項目2に記載の方法であって、前記HIF1αポリペプチド部分が、野生型HIF1αに従って番号づけられたHIF1αの残基564を含んで、該残基564に隣接するか、そして/または該残基564の周囲にある、残基に対応する20〜30のアミノ酸配列を含み、ここで、残基564はヒドロキシル化プロリンである、方法。
(11)項目2に記載の方法であって、前記HIF1αポリペプチド部分が、野生型に従って番号づけられたHIF1αの残基564を含んで、該残基564に隣接するか、そして/または該残基564の周囲にある、残基に対応する80〜120のアミノ酸配列を含み、ここで、残基564はヒドロキシル化プロリンである、方法。
(12)項目1に記載の方法であって、前記リガンド結合部位に対するリガンド結合によって、前記光生成融合タンパク質のリン酸化状態を変更することなしに、該光生成融合タンパク質の光生成が変更される、方法。
(13)前記HIF1αポリペプチド部分が、野生型HIFαに従って番号づけされた野生型HIFαのアミノ酸の残基555〜575を含む、項目2に記載の方法。
(14)野生型HIFαに従って番号づけされた野生型HIFαポリペプチドの残基555〜575を含む、HIFαポリペプチド。
(15)被験体における低酸素または虚血に関連する障害を処置または予防する方法であって、該方法は、項目1に記載の方法によって同定された化合物を、それを必要としている被験体に投与する工程を包含し、該化合物によって、プロリルヒドロキシラーゼの発現または活性が低減され、その結果、該低酸素および虚血に関連する障害が処置される、方法。
(16)項目15に記載の方法であって、ここで、前記化合物がプロリルヒドロキシラーゼ抗体、またはプロリルヒドロキシラーゼペプチドをコードする核酸の発現を低減する核酸である、方法。
(17)前記核酸がプロリルヒドロキシラーゼアンチセンス核酸である、項目16に記載の方法。
(18)前記低酸素および虚血に関連する障害が、心筋梗塞、発作、癌、および糖尿病からなる群より選択される、急性事象である、項目15に記載の方法。
(19)前記低酸素および虚血に関連する障害が、組織瘢痕によって引き起こされない慢性事象である、請項目15に記載の方法。
(20)前記低酸素および虚血に関連する障害が、深静脈血栓症、肺塞栓症、および腎不全からなる群より選択される、慢性事象である、項目15に記載の方法。
(21)前記被験体におけるHIFの半減期が前記化合物に曝されていない被験体と比較して増大した、項目15に記載の方法。
(22)被験体において新脈管形成または血管新生を増大する方法であって、該方法は、プロリルヒドロキシラーゼの発現および活性を低減する項目1に記載の方法によって同定される化合物を、それを必要としている被験体に投与する工程を包含する、方法。
(23)被験体における癌を処置する方法であって、プロリルヒドロキシラーゼの発現および活性を増大する項目1に記載の方法によって同定される化合物を、それを必要としている被験体に投与する工程を包含する、方法。
(24)細胞増殖障害を処置する方法であって、該方法は、被験体に有効量の融合タンパク質を投与することを包含し、該融合タンパク質は、プロリルヒドロキシラーゼに対する結合特徴を有するHIFαポリペプチド部分をおよび自殺ポリペプチド部分含み、その結果、該細胞増殖障害が処置される、方法。
(25)低酸素または虚血に関連する障害を処置する方法であって、該方法は、被験体に有効量の融合タンパク質を投与することを包含し、該融合タンパク質は、プロリルヒドロキシラーゼに対する結合特徴を有するHIFαポリペプチド部分をおよび自殺ポリペプチド部分含み、その結果、該低酸素または虚血に関連する障害が処置される、方法。
(26)低酸素性腫瘍細胞を殺傷する方法であって、該方法は、被験体に有効量の融合タンパク質を投与することを包含し、該融合タンパク質は、プロリルヒドロキシラーゼに対する結合特徴を有するHIFαポリペプチド部分をおよび自殺ポリペプチド部分含み、その結果、該低酸素腫瘍が殺傷される、方法。
(27)細胞増殖障害の処置をモニターする方法であって、該方法は、以下:
a)プロリルヒドロキシラーゼに対する結合特徴を有するHIFαポリペプチド部分、自殺ポリペプチド部分、および光生成ポリペプチド部分を含む、有効量の融合タンパク質を被験体に投与する工程であって、ここで、該光生成タンパク質の光生成が、該HIFαポリペプチド部分に対するプロリルヒドロキシラーゼの結合に基づいて変化し、その結果、該細胞増殖障害が処置される、工程および
b)該光生成融合タンパク質によって生成される光を測定することによって、細胞増殖を阻害する該融合タンパク質の能力をモニターする、工程
による、方法。
(28)有効量の融合タンパク質を被験体に投与することによって、細胞増殖障害を処置する方法であって、該融合タンパク質は、サイクリン/cdk結合部位および自殺タンパク質ポリペプチド部分を含み、その結果、該細胞増殖障害が処置される、方法。
(29)細胞増殖障害の処置をモニターする方法であって、該方法は、以下:
a)サイクリン/cdk結合部位、自殺タンパク質ポリペプチド部分、および光生成ポリペプチド部分を含む、有効量の融合タンパク質を被験体に投与する工程であって、ここで、該光生成融合タンパク質の光生成が、該サイクリン/cdk結合部位に対するサイクリンの結合に基づいて変化し、その結果、該細胞増殖障害が処置される、工程;および
b)該光生成融合タンパク質によって生成される光を測定することによって、細胞増殖を阻害する該融合タンパク質の能力をモニターする、工程
による、方法。
(30)細胞増殖を阻害する候補化合物をスクリーニングする方法であって、該方法は、以下の工程:
a)該候補化合物ならびにサイクリン/cdk結合部位および光生成ポリペプチド部分
を含む光生成融合タンパク質と細胞を接触させる工程であって、ここで、該光生成融合タンパク質の光生成が、該サイクリン結合部位でのサイクリンの結合に基づいて変化し、該サイクリンの結合が癌組織を示す、工程および
b)該細胞のルミネセンスを測定することによって、細胞増殖を阻害する該候補化合物の能力を決定する、工程
を包含する、方法。
(31)項目30に記載の方法によって同定される細胞増殖阻害化合物。
(32)障害についての活性もしくは効力の調節因子または障害の素因についてスクリーニングする方法であって、該方法は、以下:
a)障害に対する増大した危険に瀕している試験動物に試験化合物を投与する工程であって、ここで、該試験動物は光生成融合タンパク質を組換え的に発現し、該融合タンパク質は、リガンド結合部分および光生成ポリペプチド部分を含み、ここで、該光生成融合タンパク質の光生成は、該リガンド結合部位におけるリガンドの結合に基づいて変化し、該リガンド結合部位は、障害または該障害の産物に関連する実体においてリガンドを認識する、工程;
b)該光生成融合タンパク質および実体の局在を可能にする工程であって、ここで、該リガンド結合部位と該障害に関するリガンドとの間の接触によって、該光生成ポリペプチド部分の光生成を変更する同一直線上のエフェクター部位の改変を生じる、工程;
c)工程(a)の該化合物を投与する工程の後に、該試験動物中の該光生成ポリペプチド部分のルミネセンスを検出する工程;および
d)該試験動物中の該光生成ポリペプチド部分のルミネセンスと、該化合物が投与されていないコントロール動物中の該光生成ポリペプチド部分のルミネセンスとを比較する工程であって、ここで、該コントロール動物と比較して、該試験動物中の該光生成ポリペプチド部分の活性における変化は、該試験化合物が障害の効力の調節因子または障害の素因であることを示す、工程;
を包含する、方法。
(33)前記障害が低酸素関連障害である、項目32に記載の方法。
(34)前記障害が、癌、糖尿病、心臓疾患および発作からなる群より選択される、項目32に記載の方法。
(35)インビボでの抗低酸素化合物の効果を決定するための非侵襲的な方法であって、該方法は、以下:
a)光生成融合タンパク質または該光生成融合タンパク質を発現する細胞を被験体に投与する工程であって、該融合タンパク質は、ユビキチンリガーゼ結合部位および光生成ポリペプチド部分を含み、ここで、該光生成融合タンパク質の光生成は、該ユビキチンリガーゼ結合部位におけるユビキチンリガーゼの結合に基づいて変化し、該ユビキチンリガーゼ結合部位は、低酸素組織中の低酸素状態において存在するユビキチンリガーゼを認識する工程;
b)該被験体中の低酸素組織への光生成する融合タンパク質または細胞の局在化を可能にする工程であって、ここで、該ユビキチンリガーゼ結合部位とユビキチンリガーゼとの間の接触によって、該光生成ポリペプチド部分の光生成を変更する同一直線上のエフェクター部位の改変を生じる、工程;
c) 該局在化した融合タンパク質のルミネセンスを測定することによって、低酸素症を阻害する該候補化合物の能力を決定する、工程;
を包含する、方法。
(36)項目35に記載の方法であって、ここで、前記リガンド結合部分は、アミノ酸配列 Y−X−Leu−X−Pro−X−X−X−X−Y’を含み、ここで、
a)Proは、ヒドロキシル化プロリンであり;
b)X、X、X、XおよびXは、独立して、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、PheまたはTrpであり;
c)Xは、Ser、Thr、またはTyrであり;そして
d)YおよびY’は、独立して、存在するか、または存在せず、存在する場合には、これらは独立して1〜600アミノ酸を有するペプチドを含む、
方法。
(37)前記リガンド結合部位が、野生型HIF1αに従って番号づけられたHIF1αのN末端残基1〜600に対応するアミノ酸配列を含み、ここで、残基564がヒドロキシル化プロリンである、項目35に記載の方法。
(38)前記リガンド結合部位が、野生型HIF1αに従って番号づけられたHIF1αのN末端残基1〜600に対応するアミノ酸配列を含み、ここで、残基402がヒドロキシル化プロリンである、項目35に記載の方法。
(39)前記リガンド結合部位が、野生型HIF1αに従って番号づけられたHIF1αのN末端残基1〜600に対応するアミノ酸配列を含み、ここで、残基402および残基564のいずれかまたは両方がヒドロキシル化プロリンである、項目35に記載の方法。
(40)項目35に記載の方法であって、前記リガンド結合部位が、野生型HIF1αに従って番号づけらたHIF1αの残基564を含んで、該残基564に隣接するか、そして/または該残基564の周囲にある、残基に対応する4〜12のアミノ酸配列を含み、ここで、残基564はヒドロキシル化プロリンである、方法。
(41)項目35に記載の方法であって、前記リガンド結合部位が、野生型HIF1αに従って番号づけらたHIF1αの残基564を含んで、該残基564に隣接するか、そして/または該残基564の周囲にある、残基に対応する12〜14のアミノ酸配列を含み、ここで、残基564はヒドロキシル化プロリンである、方法。
(42)項目35に記載の方法であって、前記リガンド結合部位が、野生型HIF1αに従って番号づけらたHIF1αの残基564を含んで、該残基564に隣接するか、そして/または該残基564の周囲にある、残基に対応する20〜30のアミノ酸配列を含み、ここで、残基564はヒドロキシル化プロリンである、方法。
(43)項目35に記載の方法であって、前記リガンド結合部位が、野生型に従って番号づけらたHIF1αの残基564を含んで、該残基564に隣接するか、そして/または該残基564の周囲にある、残基に対応する80〜120のアミノ酸配列を含み、ここで、残基564はヒドロキシル化プロリンである、方法。
(44)哺乳動物被験体におけるに研究の下で抗細胞増殖化合物の効果を検出するための非侵襲的な方法であって、該方法は、以下:
a)光生成融合タンパク質または該光生成融合タンパク質を発現する細胞を被験体に投与する工程であって、該光生成融合タンパク質は、サイクリン/cdk結合部位および光生成ポリペプチド部分を含み、ここで、該光生成融合タンパク質の光生成が、該サイクリン結合部位におけるサイクリンの結合に基づいて変化し、該サイクリン結合は、細胞増殖組織を示す、工程;
b)該被験体中の細胞増殖組織への光生成する融合タンパク質または細胞の局在化を可能にする工程であって、ここで、該サイクリン結合部位とサイクリンとの間の接触によって、該光生成ポリペプチド部分の光生成を変更する同一直線上のエフェクター部位の改変を生じる、工程;
c) 該局在化した光生成融合タンパク質からのルミネセンスを測定することによって、該候補化合物の細胞増殖を阻害する能力を決定する、工程;
を包含する、方法。
(45)被験体における低酸素および虚血に関連する障害を処置または予防するための方法であって、該方法は、HIFのプロリルヒドロキシル化を調節する化合物をそれを必要としている被験体に投与する工程を包含し、その結果、該低酸素または虚血に関連する障害が処置される、方法。
(46)前記化合物がHIFのプロリルヒドロキシル化を低減する、項目46に記載の方法。
(47)前記化合物がHIFのプロリルヒドロキシル化を増大する、項目46に記載の方法。
(48)被験体におけるHIF代謝回転を調節する方法であって、該方法は、HIFのプロリルヒドロキシル化を調節する化合物を、それを必要としている被験体に投与する工程を包含し、その結果、HIF代謝回転が調節される、方法。
(49)前記化合物がHIFのプロリルヒドロキシル化を増大する、項目49に記載の方法。
(50)前記化合物がHIFのプロリルヒドロキシル化を低減する、項目49に記載の方法。
(51)被験体におけるHIF関連障害を処置または予防する方法であって、該方法は、HIFのプロリルヒドロキシル化を調節する化合物を、それを必要としている被験体に投与する工程を包含し、その結果、HIF関連障害が妨げられるか、逆転されるか、または安定化される、方法。
(52)前記化合物がHIFのプロリルヒドロキシル化を増大する、項目52に記載の方法。
(53)前記化合物がHIFのプロリルヒドロキシル化を低減する、項目52に記載の方法。
(54)前記HIF関連障害が、心筋梗塞、発作、癌、および糖尿病からなる群より選択される、項目52に記載の方法。
(発明の要旨)
本発明は、一部、HIF(これは、プロリルヒドロキシラーゼによって、そのヒドロキシル化状態を介して調節される)の活性の調節が、プロリルヒドロキシラーゼまたはその分解を担うHIFのセグメントのヒドロキシル化もしくは非ヒドロキシル化を調節する治療化合物の使用によって、(例えば、インビボでの)疾患状態(例えば、低酸素症または癌のような細胞増殖障害)を制御または調節するために使用され得るという発見に関する。
【0008】
このように、本発明は、1つの局面において、被験体において低酸素または虚血に関連する障害を処置または予防する方法に関し、ここでHIFのプロリルヒドロキシル化を調節する治療化合物が被験体に投与され、その結果、低酸素または虚血に関連する障害が処置される。これらの化合物は、HIFのプロリルヒドロキシル化を増加または減少させ得る。
【0009】
あるいは、被験体におけるHIFのターンオーバー(代謝回転)は、HIFのプロリルヒドロキシル化を調節する(増加または減少させる)治療化合物を、それを必要とする被験体に投与することによって被験体において調節され得、その結果、HIFのターンオーバーが調節される。
【0010】
HIF関連障害(例えば、心筋梗塞、発作、癌または糖尿病)は、HIFのプロリルヒドロキシル化を調節する化合物を、それを必要とする被験体に投与することによって処置され得、その結果、この障害は、予防、逆転または安定化される。
【0011】
本発明に従って、プロリルヒドロキシラーゼモジュレーターは、いくつかの方法を使用して同定され得る。1つの実施形態において、プロリルヒドロキシラーゼ、推定プロリルヒドロキシラーゼモジュレーターならびにプロリルヒドロキシラーゼおよび光生成融合ポリペプチド部分に対する結合特性を有するHIFαポリペプチド部分を含む光生成融合タンパク質(ここで、光生成ポリペプチド部分の光生成は、HIFαポリペプチド部分へのプロリルヒドロキシラーゼの結合の際に変化する)は、HIFαへのプロリルヒドロキシラーゼの結合を促進する条件下で接触されて、試験サンプルを形成する;そして推定プロリルヒドロキシラーゼモジュレーターがプロリルヒドロキシラーゼを調節する能力は、試験サンプルにおける光生成を測定することによって決定される。
【0012】
プロリルヒドロキシラーゼモジュレーターについてのアッセイは、本発明に含まれ、ここで、プロリルヒドロキシラーゼ、HIF1αポリペプチド部分および推定モジュレーター化合物は、モジュレーターの非存在下でプロリルヒドロキシラーゼがHIF1αポリペプチド部分に対して作用し得る条件下で接触され;そしてモジュレーター化合物によって引き起こされるプロリルヒドロキシラーゼ阻害の程度が測定される。有利な実施形態において、試験サンプルは、pVHLをさらに含み得る。HIF1αポリペプチド部分は、望ましくは、アミノ酸配列Y−X−Leu−X−Pro−X−X−X−X−Y’を含み、ここで、Proは、ヒドロキシル化プロリンであり;X、X、X、XおよびXは、独立して、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、PheまたはTrpであり;Xは、Ser、ThrまたはTyrであり;そしてYおよびY’は、独立して、存在するかまたは存在せず、そして存在する場合、独立して、
1〜600アミノ酸を有するペプチドを含む。さらに有利な実施形態において、HIF1αポリペプチド部分は、HIF1αのN末端残基1〜600(野生型HIF1αに従って番号付けする)に対応するアミノ酸配列を含み、ここで、残基564は、ヒドロキシル化プロリンであり;HIF1αのN末端残基1〜600(野生型HIF1αに従って番号付けする)に対応するアミノ酸配列を含み、ここで残基402は、ヒドロキシル化プロリンであり;またはHIF1αポリペプチド部分は、HIF1αのN末端残基1〜600(野生型HIF1αに従って番号付けする)に対応するアミノ酸配列を含み、ここで、残基402および564のいずれかまたは両方は、ヒドロキシル化プロリンである。HIF1αポリペプチド部分はまた、野生型HIFαのアミノ酸555〜575野生型HIF1αに従って番号付けする)を含み得る。
【0013】
あるいは、HIF1αポリペプチド部分は、野生型HIF1αに従って番号付けしたHIF1αの残基564に隣接する残基および/または残基564の周辺の残基(残基564を含む)に対応する4〜12アミノ酸配列を含み得るか(ここで、残基564は、ヒドロキシル化されたプロリンである);野生型HIF1αに従って番号付けしたHIF1αの残基564に隣接する残基および/または残基564の周辺の残基(残基564を含む)に対応する12〜14アミノ酸配列を含み得るか(ここで、残基564は、ヒドロキシル化されたプロリンである);野生型HIF1αに従って番号付けしたHIF1αの残基564に隣接する残基および/または残基564の周辺の残基(残基564を含む)に対応する20〜30アミノ酸配列を含み得るか(ここで、残基564は、ヒドロキシル化されたプロリンである);あるいは、野生型HIF1αに従って番号付けしたHIF1αの残基564に隣接する残基および/または残基564の周辺の残基(残基564を含む)に対応する80〜120アミノ酸配列を含み得る(ここで、残基564は、ヒドロキシル化されたプロリンである)。
【0014】
本発明はまた、野生型HIFαに従って番号付けした野生型HIFαのアミノ酸555〜575を含むHIFαポリペプチドを含む。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、被験体中の低酸素症関連障害または虚血関連障害(例えば、心筋梗塞、発作、癌、もしくは糖尿病)を処置または予防する方法に関し、ここで、上記の方法によって同定された化合物は、プロリルヒドロキシラーゼの発現または活性を低下させ、その結果、低酸素症関連障害または虚血関連障害が、処置される。このような化合物は、プロリルヒドロキシラーゼ抗体、またはプロリルヒドロキシラーゼポリペプチドをコードする核酸の発現を低下させる核酸(例えば、プロリルヒドロキシラーゼアンチセンス核酸)であり得る。他の低酸素症関連障害または虚血関連障害(例えば、深静脈血栓症、肺塞栓、および腎不全のような慢性事象)が、本発明の化合物によって処置され得る。
【0016】
本発明の別の局面において、本発明の化合物は、癌を処置する際または新脈管形成もしくは血管新生を増加させる際の用途を見出し、ここで、本発明の化合物(例えば、本明細書中に記載される方法によって同定されるような化合物)は、そのような化合物を必要とする被験体に投与され、その結果、プロリルヒドロキシラーゼの発現または活性が低下される。
【0017】
本発明は、一部、光生成融合タンパク質(または光生成融合タンパク質を発現する細胞)の使用に関し、ここで、この光生成融合タンパク質は、リガンド結合部位および光生成ポリペプチド部分を特徴とする。この光生成融合タンパク質(「LGP」)は、光生成ポリペプチド部分の光生成が、リガンド結合部位におけるリガンドの結合によって変化するという特徴を有する。このリガンドは、特定の条件下(例えば、低酸素状態)の環境でのみ活性であり得、その結果、この光生成融合タンパク質は、このような条件下でのみ「オ
ン(状態)になるか(turn on)」または「オフ(状態)になる(turn off)」。
【0018】
本発明の光生成融合タンパク質は、低酸素症、癌、糖尿病、心臓疾患または発作のような障害の活性もしくは潜在またはそのような障害に対する素因の活性もしくは潜在の調節因子についてスクリーニングするために使用され得る。例えば、試験化合物は、そのような障害に対する危険性が増加した試験動物に投与され得(ここで、この試験動物は、光生成融合タンパク質を組換え発現する)、光生成融合タンパク質の局在化を可能にし、その試験化合物の投与後の試験動物中の光生成ポリペプチド部分のルミネセンスを検出し、そしてその試験動物中の光生成ポリペプチド部分のルミネセンスが、その試験化合物を投与されていないコントロール動物中の光生成ポリペプチド部分のルミネセンスと比較される。コントロール動物と比較した、試験動物における光生成ポリペプチド部分の活性の増加は、この試験化合物が、例えば、プロリルヒドロキシラーゼの調節因子であり得ることを示す。
【0019】
別の実施形態において、インビボにおける抗低酸素症化合物の効果は、ユビキチンリガーゼ結合部位および光生成ポリペプチド部分を含む光生成融合タンパク質またはその光生成融合タンパク質を発現する細胞を被験体(例えば、哺乳動物)に投与し、その被験体中の低酸素症組織におけるその光生成融合タンパク質または光生成融合タンパク質細胞の局在化を可能にし;そしてその低酸素症組織からの局在化された光生成融合タンパク質のルミネセンスを測定することによって、決定され得る。
【0020】
哺乳動物被験体において研究中の抗細胞増殖化合物の効果を決定するために、本発明に従う方法がまた提供され、この方法は、サイクリン/cdk結合部位を含む光生成融合タンパク質または本発明のその光生成融合タンパク質を発現する細胞を試験被験体に投与し、融合タンパク質または細胞の局在化を可能にし、局在化された光生成融合タンパク質からのルミネセンスを測定し;そしてその局在化された光生成融合タンパク質を画像化し、それによって抗細胞増殖化合物の効果を決定することによる。
【0021】
細胞増殖障害の処置は、本発明の実施形態によってモニターされ得、例えば、プロリルヒドロキシラーゼに対する結合親和性を有するHIFαポリペプチド部分、自殺ポリペプチド部分、および光生成ポリペプチド部分を含む有効量の融合タンパク質を被験体に投与し(ここで、この光生成融合タンパク質の光生成は、プロリルヒドロキシラーゼがHIFαポリペプチド部分に結合する際に変化し、その結果、細胞増殖障害が処置される)、そしてその光生成融合タンパク質によって生成される光を測定することで細胞増殖を阻害するその融合タンパク質の能力をモニターすることによって、モニターされ得る。あるいは、細胞増殖障害の処置は、サイクリン/cdk結合部位、自殺タンパク質ポリペプチド部分、および光生成ポリペプチド部分を含む有効量の光生成融合タンパク質を被験体に投与し(ここで、この光生成融合タンパク質の光生成は、サイクリン/cdk結合部位へのサイクリンの結合の際に変化し、その結果、その細胞増殖障害が処置される);そしてその光生成融合タンパク質によって生成される光を測定することから細胞増殖を阻害するその融合タンパク質の能力をモニターすることによって、モニターされ得る。
【0022】
本発明の他の実施形態は、HIF1αおよびpVHLを含むタンパク質複合体に対して特異的な抗体を含み、これらはまた本発明内にあるように詳述される。
【0023】
(発明の詳細な説明)
(定義)
便宜上、明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲中に使用される特定の用語をここにまとめる。
【0024】
「HIFαポリペプチド部分」は、HIF1α、HIF2α、またはHIF3αのアミノ酸配列の全体または一部を含む。
【0025】
「HIF1αポリペプチド部分」は、HIF1αのアミノ酸配列(例えば、配列番号10)の全体もしくは一部か、野生型HIF1αに従って番号付けしたHIF1αのN末端残基1〜600に対応するアミノ酸配列か(ここで、残基402および残基564のいずれかまたは両方が、プロリンまたはヒドロキシル化プロリンである)、あるいはHIF1αの残基402および/もしくは残基564に隣接する残基および/またはHIF1αの残基402および/もしくは残基564の周囲の残基(HIF1αを含む)に対応する80〜120アミノ酸配列、20〜30アミノ酸配列、12〜14アミノ酸配列、または4〜12アミノ酸配列(ここで、残基402および/または残基564はプロリンまたはヒドロキシル化プロリンである)である。
【0026】
「同一線上エフェクター部位」は、リガンド結合後の事象によって作用した場合に、光生成ポリペプチド部分のその現在の光発光状態を変化させる(すなわち、オンまたはオフ)光生成ポリペプチド部分の領域を含む。同一線上エフェクター部位を構成するこれらの領域は、例えば、コンフォメーションの湾曲、化学修飾(例えば、同一線上エフェクター部位中の残基のユビキチン化)、または同一線上エフェクター部位の全部もしくは一部の切断によって、これを実行し得る。
【0027】
「プロリルヒドロキシラーゼに対する結合特徴を有する」とは、例えば、本発明のスクリーニング方法に適したHIFαポリペプチド部分を生成する特性をいい、そしてこれには、プロリルヒドロキシラーゼ結合に適切であるかもしくは適合されたHIFポリペプチド配列、ならびにpVHLが認識しかつ結合するネイティブHIF配列もしくは野生型HIF配列が挙げられる。
【0028】
「ユビキチンリガーゼに対する結合特徴を有する」とは、例えば、本発明のスクリーニング方法に適したHIFαポリペプチド部分を生成する特性をいい、これには、例えば、プロリルヒドロキシラーゼによってヒドロキシル化されたヒドロキシル化プロリン残基を有するネイティブなHIFポリペプチド配列または例えば、本明細書中に規定されるような「HIF1αポリペプチド部分」が挙げられる。
【0029】
「局在(局在化)」は、目的の実体(例えば、腫瘍)の被験体の特定領域を決定することを含む。
【0030】
「ケンプチド(kemptide)」としては、ブタ肝臓ピルビン酸キナーゼ中のリン酸化部位配列の一部に対応する、合成cAMPペプチド基質が挙げられる。「マランチド(malantide)」としては、種々の組織におけるcAMP依存性タンパク質キナーゼおよびプロテインキナーゼCの基質が挙げられる。
【0031】
「低分子」は、約5kD未満の分子量、そして最も好ましくは約4kD未満の分子量を有する組成物を含む。低分子としては、例えば、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣物、炭水化物、脂質または他の有機分子もしくは無機分子であり得る。「感染の広がり」は、初期感染部位以外の宿主部位の、病原体による拡大およびコロニー形成を含む。しかし、この用語はまた、初期感染部位における病原体の大きさおよび/または数の増大を含み得る。
【0032】
「リガンド」としては、分子、低分子、生体分子、薬物、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、タンパク質複合体、抗体、核酸、または細胞が挙げられる。
【0033】
「リガンド結合部位」としては、リガンドが結合する光生成融合タンパク質上の位置が挙げられ、ここで、光生成ポリペプチド部分は、リガンド結合の直接的または間接的な結果として活性化または不活性化される。リガンド結合部位への結合は、本明細書中の以下に記載されるように、直接的か、または、例えば、他のタンパク質と組合わせたタンパク質二量体化を介して間接的であり得る。
【0034】
「標的化部分」としては、本発明の光生成融合タンパク質が標的器官に選択的に送達されることを可能にする部分が挙げられる。例えば、治療化合物の脳への送達が所望される場合、キャリア分子は、能動輸送または受動輸送のいずれかにより脳へのその化合物の標的化を可能にする部分を含み得る。実例となるように、キャリア分子は、例えば、米国特許第4,540,564号および同第5,389,623号(共に、Bodor)に記載されるように、レドックス部分を含み得る。これらの特許は、脳へ進入し得るジヒドロピリジン部分に連結された薬物を開示する(これらは、脳にトラップされる荷電ピリジニウム種に酸化される)。従って、化合物は脳に蓄積する。多くの標的化部分が公知であり、例えば、アシアロ糖タンパク質(例えば、Wu、米国特許第5,166,320号を参照のこと)およびレセプター媒介エンドサイトーシスを介して細胞に輸送される他のリガンドが挙げられる。標的化部分は、光生成融合タンパク質に共有結合的または非共有結合的に結合され得る。この標的化部分はまた、ベクターに結合され得る。
【0035】
「生物発光(バイオルミネセンス)」分子または「生物発光(バイオルミネセンス)」部分としては、光を生成するために化学エネルギーを利用する発光物質を含む。
【0036】
「蛍光」分子または「蛍光」部分は、単一の電子的に励起された状態を介した発光の分子または部分が挙げられ、これは照射源の除去後、非常に短い期間である。発光された蛍光の波長は、励起イルミネーションの波長よりも長い(ストークスの法則)。なぜなら、励起光の一部は、蛍光分子によって熱に変換されるからである。
【0037】
「実体」としては、低分子(例えば、環状有機分子);高分子(例えば、タンパク質);ポリマー;タンパク質;多糖;核酸;粒子、不活性な材料;細胞小器官;微生物(例えば、ウイルス、細菌、酵母および真菌);細胞(例えば、真核生物細胞);胚;プリオン;腫瘍;全ての型の病原体および病原物質;ならびに粒子(例えば、ビーズおよびリポソーム)が挙げられるが、これらに限定されない。別の局面において、実体は、画像化される哺乳動物被験体を構成する細胞の全体または細胞のいくつか(例えば、疾患組織または障害をうけた組織)であり得るか、またはこれらの細胞もしくは研究中の状態によって産生される化合物もしくは分子であり得る。本発明が特定の有用性を有する実体はとしては、腫瘍、増殖細胞、病原体、および低酸素組織を含む細胞環境が挙げられる。
【0038】
「感染因子」としては、寄生虫、ウイルス、真菌、細菌、またはプリオンを含む。
【0039】
「プロモーター誘導事象」としては、選択された誘導性プロモーターの直接的な誘導または間接的な誘導を生じる事象を含む。
【0040】
「異種遺伝子」としては、宿主生物にトランスフェクトされた遺伝子が挙げられる。代表的に、異種遺伝子は、トランスフェクトまたは形質転換される細胞のゲノムDNAから本来誘導されない遺伝子をいう。
【0041】
「不透明性媒体」としては、「従来」不透明である媒体を含み、完全に不透明である必要はない。従って、不透明媒体としては、透明でも半透明でもないと通常みなされる媒体を含み、そして木製の板、ならびに哺乳動物の身および皮膚のようなものが挙げられる。
【0042】
「光生成」または「発光の(ルミネセンスの)」とは、化学反応または照射の吸収を介して光(燐光発光、蛍光発光、および生物発光を含む)を生成する特性を含む。
【0043】
「光」としては、約300nm〜約1100nmの間の波長を有する電磁照射を含む。
【0044】
被験体中の局在を検出するための「非侵襲性」の方法は、従来の手術または生検のような大規模に侵入性の方法は含まない。
【0045】
「光生成融合タンパク質」は、光生成部分または発光部分(すなわち、光生成ポリペプチド部分)およびリガンド結合部位を有する本発明のタンパク質を含む。一般的に、目的のリガンドが光生成融合タンパク質のリガンド結合部位に結合する場合、この光生成ポリペプチド部分の光生成特性が変化する(「暗」から「明」へ、またはこの逆のいずれか)。
【0046】
「光生成ポリペプチド部分」は、安定な形態で存在する場合に容易に検出可能な光源を提供するような、当業者に公知の任意のタンパク質を含む。非限定的な例としては、米国特許第5,683,888号、同第5,958,713号、同第5,650,135号に記載される光生成タンパク質(例えば、フェレドキシンIV、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼファミリー、およびエクオリンファミリー)が挙げられる。好ましい実施形態において、光生成ポリペプチド部分は、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、および青色蛍光タンパク質のようなタンパク質である。
【0047】
組織虚血は、病的状態および死亡の主要な原因である。原則として、HIFを安定化する薬物は、脈管形成および低酸素症の適合性を増大し得る。低酸素症によるHIFの活性化は、複雑であり、そしてタンパク質の安定化、核局在化、DNA結合能力、および転写活性化機能を含む。プロリンヒドロキシル化が酸素の存在下におけるHIFの代謝回転を支配するという発見は、HIF調節の種々の局面の下にある機構の分析を容易にする。
【0048】
本発明はまた、HIF−1関連障害の発症を処置(すなわち、低減、予防、または遅延)し、新脈管形成または血管新生を調節する種々の方法を提供する。HIF−1媒介障害の例としては、慢性低酸素症および急性低酸素症、または虚血関連障害(例えば、組織障害および組織瘢痕)が挙げられる。急性低酸素症または急性虚血関連障害としては、例えば、心筋梗塞、発作、癌および糖尿病(例えば、組織障害および組織瘢痕)が挙げられる。慢性低酸素症または慢性虚血関連障害としては、例えば、深静脈血栓症、肺塞栓、および腎不全が挙げられる。
【0049】
1つの局面において、本発明は、プロリルヒドロキシラーゼの発現または活性を低下させる化合物を被験体に投与することによって、低酸素症関連障害もしくは虚血関連障害を処置または予防する方法、または新脈管形成もしくは血管新生を調節する方法を提供する。プロリルヒドロキシラーゼの例としては、ヒトEgl−9またはヒトEgl−9ホモログが挙げられる(Epsteinら、Cell 107:43−45,2001)。化合物は、プロリルヒドロキシラーゼ抗体、プロリルヒドロキシラーゼポリペプチドをコードする核酸の発現を低下させる核酸(例えば、プロリルヒドロキシラーゼアンチセンス核酸)、または本発明の方法のいずれかによって同定された化合物であり得る。好ましくは、被験体中のHIFの半減期は、その化合物の非存在下と比較して、その化合物の存在下で延長される。
【0050】
さらなる局面において、本発明は、プロリルヒドロキシラーゼの発現または活性を増大
する化合物を被験体に投与することによって、被験体中の癌を処置する方法を含む。好ましくは、化合物は、本発明の方法によって同定された化合物である。
【0051】
別の局面において、本発明は、HIFのプロリルヒドロキシル化を調節する化合物を被験体に投与することによって、被験体中の低酸素症または虚血関連障害を処置または予防するための方法を提供する。
【0052】
なお更なる局面において、本発明は、HIF関連障害が予防されるか、逆転されるか、または安定化されるようにHIFのプロリルヒドロキシル化を調節する化合物を被験体に投与することによって、HIF関連障害を処置または予防するための方法を提供する。
【0053】
なお別の局面において、本発明は、プロリルヒドロキシル化を調節する化合物を被験体に投与することによって、被験体中のHIF代謝回転を調節するための方法を提供する。
【0054】
「調節する」とは、HIFのプロリルヒドロキシル化を増大または低下させることを意味する。プロリルヒドロキシル化を阻害する化合物としては、抗線維症剤として開発されたいくつかの低分子プロリンヒドロキシラーゼインヒビターが挙げられる。
【0055】
被験体は、好ましくは哺乳動物である。哺乳動物は、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得る。種々の局面において、被験体としては、冠動脈疾患、大脳疾患、または末梢動脈疾患を有する被験体、および1つ以上の治癒していない創傷を有する被験体が挙げられる。
【0056】
本発明はさらに、プロリルヒドロキシル化を同定または検出する方法に関し、ここで、その基質ペプチド(または基質ポリペプチド)は、pVHLと接触される(ここで、pVHL結合の量が、ヒドロキシル化の程度を反映する)。1つの実施形態において、ペプチドは、HIF1aの555〜575に対応する。HIFペプチドは、(例えば、ニトロセルロースフィルターまたは96ウェルプレートの底に)固定され得るか、または溶液中で遊離であり得る。pVHLへの結合は、当業者が精通している種々の標準的な方法を用いてモニターされ得る。
【0057】
プロリルヒドロキシラーゼの調節は、種々の用途を有する。プロリルヒドロキシラーゼの阻害は、細胞周期進行ならびに新脈管形成を促進するかおよび/または低酸素症における細胞生存もしくは細胞機能を促進する多数のタンパク質の産生、特定の臨床状態(特に、冠動脈不全、大脳不全および脈管不全のような虚血性状態)の処置における所望される結果を促進し得る。
【0058】
本発明のアッセイに使用されるVHLは、任意の適切な哺乳動物VHL(特に、ヒトVHL)であり得る。ヒトVHLがクローニングされ、そしてこの遺伝子の供給源は、当業者によって容易に同定され得る。その配列は、Genbank登録番号AF010238およびL15409として入手可能である。他の哺乳動物VHLもまた利用可能である(例えば、マウスVHL(登録番号U12570)およびラット(登録番号U14746およびS80345))。非哺乳動物のホモログとしては、C.elegansのVHL様タンパク質(登録番号F08G12)が挙げられる。VHL遺伝子配列はまた、例えば、ヒトVHL遺伝子配列の全体または一部をプローブとして使用し、他の種の中のVHL遺伝子の配列を回収し、そして決定することによって、慣用的なクローニング技術によって得られ得る。広範な種々の技術がこれに対して利用可能であり、例えば、mRNAの適切な供給源(例えば、胚細胞または肝細胞由来)を用いた遺伝子のPCR増幅およびクローニング、哺乳動物、脊椎動物、無脊椎動物、または真菌供給源由来のcDNAライブラリーを得ること(例えば、上記の供給源のうちの1つ由来のcDNAライブラリー)、スト
リンジェントな条件下で本発明のポリヌクレオチドを用いてそのライブラリーをプローブ化すること、そして哺乳動物のVHLタンパク質の全体または一部をコードするcDNAを回収することである。適切なストリンジェントな条件としては、固体支持体(フィルター)上での50% ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mM クエン酸ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10% 硫酸デキストラン、および20μg/ml サケ精子DNAを含む溶液中で42℃で一晩インキュベーションするハイブリダイゼーション、続いて0.03M 塩化ナトリウムおよび0.03M クエン酸ナトリウム(すなわち、0.2×SSC)中、約50℃〜約60℃において洗浄することを含む。部分的なcDNAが得られた場合、全長コード配列は、プライマー伸長技術によって決定され得る。
【0059】
全体のVHLタンパク質(それらの変異体および他の改変体を含む)を使用することは必要ではない。VHLのフラグメントは使用され得、但し、このようなフラグメントは、HIFαサブユニットの標的ドメインと相互作用する能力を保持する。VHLのフラグメントは、当業者に公知の任意の適切な方法において作製され得る。適切な方法としては、VHLをコードするDNAのフラグメントの組換え発現が挙げられるが、これに限定されない。このようなフラグメントは、VHLをコードするDNAを採集する工程、発現されるべき部分の任意の部位のいずれかの側面で適切な制限酵素認識部位を同定する工程、ならびにDNAからその部分を切り出す工程によって作製され得る。ついで、この部分は、標準的な市販の発現系における適切なプロモーターに作動可能に連結され得る。別の組換えアプローチは、適切なPCRプライマーと共にDNAの関連部分を増幅することである。VHLの小さなフラグメント(約20または30アミノ酸まで)はまた、当該分野で周知のペプチド合成方法を使用して作製され得る。一般的なフラグメントは、少なくとも40、好ましくは少なくとも50、60、70、80または100アミノ酸サイズである。
【0060】
HIFαサブユニットタンパク質は、野生型全長VHLタンパク質に結合する能力を有する任意のヒトまたは他の哺乳動物タンパク質、あるいはそれらのフラグメントであり得、その結果、この結合は酸素正常状態の細胞環境において、破壊のためにサブユニットを標的化することが可能である。
【0061】
多くのHIFαサブユニットタンパク質がクローニングされている。これらとしては、HIFα(Genbank受託番号U22431として利用可能な配列)、HIF2α(Genbank受託番号U81984として利用可能)、ならびにHIF3α(Genbank受託番号AC007193およびAC079154として利用可能)が挙げられる。これらは、全てヒトHIF3αサブユニットタンパク質である。他の種由来のHIFαサブユニットタンパク質としては、マウスHIF1α(受託番号AF003695、US9496およびX95580)、ラットHIF1α(受託番号Y09507)、マウスHIF2α(受託番号U81983およびD89787)ならびにマウスHIF3α(受託番号AF060194)が挙げられる。他の哺乳動物、脊椎動物、無脊椎動物または真菌の相同体が、得られるVHL相同体について上に記載されるのと類似の技術によって得られ得る。
【0062】
HIFαサブユニットの改変体は、天然に存在するHIFαサブユニット(特にヒトHIFαサブユニット)に対して少なくとも45%アミノ酸同一性、好ましくは少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または98%同一性を有する合成改変体のような改変体が使用され得る
HIFαサブユニットタンパク質のフラグメントおよびその改変体が使用され得、但し、これらのフラグメントは、野生型VHL、好ましくは野生型ヒトVHLと相互作用する能力を保持する。このようなフラグメントは、望ましくは、少なくとも20、好ましくは少なくとも40、50、75、100、200、250、400アミノ酸サイズである。
あるいは、このようなフラグメントは、12〜14アミノ酸サイズであり得るか、または4アミノ酸ほどの小ささであり得る。最も所望されるこのようなフラグメントは、ヒトHIF1αにおいて見出された領域555〜575または他のHIFαサブユニットタンパク質におけるその等価な領域を含む。必要に応じて、このフラグメントはまた、転写活性化を担うタンパク質の1つ以上のドメインを含む。本明細書中におけるHIFαサブユニットタンパク質についての言及は、文脈が明確にそうでない場合でない限り、上記の変異体およびフラグメント(VHLタンパク質に機能的に結合し得る)を含む。
【0063】
本発明は、HIF安定化を促進すること(例えば、その化合物がHIF安定化を促進する場合、融合タンパク質を検出するのに適切な条件下で、化合物、虚血組織、および本発明の融合タンパク質とを接触すること)において、活性について推定インヒビター化合物を試験する(「スクリーニング」)ための方法をさらに提供する。この方法(本明細書中において「スクリーニングアッセイ」とも称される)は、HIF安定化を促進するモジュレーター(すなわち、候補化合物または試験化合物あるいは候補薬剤または試験薬剤(例えば、ペプチド、ペプチド模倣物、低分子または他の薬物))を同定するために使用され得る。本発明はまた、本明細書中に記載されるスクリーニングアッセイにおいて同定される化合物、および本明細書中に記載されるような処置のための薬学的組成物を含む。
【0064】
別の実施形態において、本発明は、プロリルヒドロキシル化を同定または検出する方法に関し、ここで、この基質ペプチド(またはポリペプチド)は抗体と接触し、ここで結合された抗体の量はヒドロキシル化の程度を反映する。1つの実施形態において、このペプチドは、HIF1α555〜575に対応する。HIFペプチドは、(例えば、ニトロセルロースフィルター上または96ウェルプレートの底部に)固定されるか、または溶液中に遊離され得る。抗体への結合は、当業者に良く知られている種々の標準的な方法を用いてモニターされ得る。
【0065】
本発明のなお別の実施形態は、プロリルヒドロキシル化を同定または検出する方法に関し、ここで、ポリペプチドは、標識(例えば、放射性)、プロリンおよびプロリルヒドロキシラーゼ存在下で翻訳され、その得られた標識されたポリペプチドを加水分解すること、および薄層クロマトグラフィーのような分析手段によって、標識されたヒドロキシプロリン取り込みを検出することに関する。
【0066】
本発明のさらなる実施形態は、プロリルヒドロキシル化を同定または検出する方法に関し、ここで、この基質ペプチド(またはポリペプチド)は、推定インヒビターの存在下または非存在下で、プロリルヒドロキシラーゼの供給源と接触され、そしてプロリルヒドロキシル化の程度は、上記の3つの段落のうちの任意の1つに記載されるようにモニターされる。1つの実施形態において、このペプチドは、HIF1α 555〜575に対応し、そしてこのプロリルヒドロキシラーゼは哺乳動物細胞の抽出物から構成される。別の実施形態において、このペプチドは、HIF1a 555〜575に対応し、そしてこのプロリルヒドロキシラーゼは精製されたEgl9または部分的に精製されたEgl9から構成される。さらに、特に有用な実施形態は、この方法を用いて同定されるようなプロリルヒドロキシル化の低分子インヒビター、および虚血によって特徴付けられる疾患を処置するためのインヒビターの使用に関する。
【0067】
DNA配列およびアミノ酸配列のパーセント相同性(同一性とも呼ばれる)は、市販のアルゴリズムを用いて算出され得る。以下のプログラム(National Center for Biotechnology Informationにより提供される)が、相同性を決定するために使用され得る:BLAST、gapped BLAST、およびPSI−BLAST(これらは、デフォルトパラメータを用いて使用され得る)。アルゴリズムGAP(Genetics Computer Group、Madison
、WI)は、NeedlemanおよびWunschアルゴリズムを使用して、一致数が最大になり、そしてギャップ数が最小になる2つの完全配列を整列させる。一般的に、デフォルトパラメータ(ギャップクリエーションペナルティ(gap creation penalty)=12およびギャップエクステンションペナルティ(gap extension penalty)=4)が使用される。本明細書中での用語「相同性」および「相同な」のいずれかの使用は、例えば、2つのヌクレオチド配列が適切な条件下で組換えするのに十分類似することのみを必要とする「相同組換え」のような用語の標準的な使用と一致して、比較される配列間のいかなる必要な評価の関係も意味しない。
【0068】
スクリーニングアッセイの正確なフォーマットは、慣用的な技術および知見を用いて変更され得る。VHL、HIFαサブユニット、および必要な場合、さらなる成分の量は、アッセイのスケールに依存して変更され得る。一般的に、当業者は、比較的等量(1:10〜100:1、好ましくは、1:1〜10:1、VHL:HIFαサブユニットのモル比)の2つの成分を選択する。しかし、この範囲外で実施され得る特定のアッセイフォーマットが存在し得る。
【0069】
本発明のアッセイが細胞内で実施される場合、その細胞は、酸素正常状態の環境を提供または増強するために処理され得る。「酸素正常状態(normoxic)」は、通常の空気中で見出されるのと同様の酸素レベル(例えば、約21%Oおよび5%CO(残りは窒素である))を意味する。当然、これらの正確な比が使用される必要はなく、互いに独立して変更され得る。一般的に、10〜30%の酸素、1〜10%のCO、および残りの窒素または他の比較的不活性かつ非毒性の気体が使用され得る。酸素正常状態は、例えば、上記のように過酸化水素の存在下で細胞を培養することにより、細胞中で誘導または増強され得る。
【0070】
あるいは、またはコントロールのために、細胞はまた、低酸素条件下で培養され得る。「低酸素」は、酸素レベルが減少した環境を意味する。細胞培養における最も好ましい酸素レベルは、低酸素状態の規定について0.1%〜1.0%である。低酸素は、単に、低下した酸素レベルの存在下で細胞を培養することにより、細胞中で誘導され得る。この細胞はまた、低酸素を模倣し、そしてHIFαサブユニットの発現を調節する化合物で処理され得る。このような化合物として、鉄キレート剤、コバルト(II)、ニッケル(II)、またはマンガン(II)が挙げられる。これらの全ては、20〜500μM(例えば、100μM)の濃度で使用され得る。鉄キレート剤としては、デスフェリオキサミン、O−フェナントロリン、またはヒドロキシピリジノン(例えば、1,2−ジエチルヒドロキシピリジノン(CP94)または1,2−ジメチルヒドロキシピリジノン(CP20))が挙げられる。
【0071】
本発明のアッセイが実施され得る細胞として、真核生物細胞(例えば、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、霊長類細胞、およびヒト細胞)が挙げられる。哺乳動物細胞は、本来の細胞または形質転換された細胞(腫瘍細胞株を含む)であり得る。これらの細胞は、HIFと相互作用することが既知の他のタンパク質(VHLタンパク質およびARNTタンパク質の場合、xサブユニットタンパク質およびVHLタンパク質、例えば、エロンガンCタンパク質およびエロンガンBタンパク質、HIFの場合、サブユニットタンパク質)を発現するようにか、または発現しないように改変され得る。
【0072】
無細胞系において、このようなさらなるタンパク質は、例えば、適切な組換え発現ベクターからの発現により提供されることにより、含まれ得る。
【0073】
細胞中で実施されるアッセイにおいて、推定モジュレーター化合物の効果が測定され得るように、複合体に十分なHIFαサブユニットを動員するために、VHLの十分な発現
を達成することが望ましい。VHLおよびHIFαサブユニットの発現レベルは、相当広い制限内で変更され得、その結果、この2つの細胞内レベルは、広い割合(例えば、1:10〜1000:1、好ましくは1:1〜100:1のVHL:HIFαサブユニットのモル比)で変化し得る。
【0074】
本発明のアッセイに添加され得る推定モジュレーター化合物の量は、通常、使用される化合物の型に依存する試行錯誤により決定される。代表的に、約0.01〜100μMの濃度の推定モジュレーター化合物が使用される(例えば、0.1〜10μM)。モジュレーター化合物は、相互作用をアゴナイズまたはアンタゴナイズする化合物であり得る。相互作用のアンタゴニスト(インヒビター)が特に望ましい。
【0075】
使用され得るモジュレーター化合物は、薬物スクリーニングプログラムにおいて使用される天然の化学化合物または合成化学化合物であり得る。いくつかの特徴付けられた成分または特徴付けられていない成分を含む植物の抽出物もまた使用され得る。
【0076】
本発明は、一部、光生成融合タンパク質を用いたインビボ、インビトロ、およびインシリコでの酵素活性およびタンパク質−タンパク質相互作用の検出、位置決め、および定量に関する方法および組成物に関する。この融合タンパク質は、酵素および他のリガンドと結合し得るドメイン、ならびにこの結合のコンセンサスとして改変され得るドメインを含む。光生成ドメインは、蛍光タンパク質および生物発光タンパク質由来の領域を含むがこれらに限定されない。光の発生は、公知の方法(例えば、インビボ、インビトロ、またはインシリコ(例えば、生存細胞またはインタクトな生物、細胞培養系、組織切片、またはアレイにおいて)での適切な機器(例えば、CCDカメラ)を用いた検出により検出される。
【0077】
本発明の光生成融合タンパク質は、発光反応に関与し得、それによって異なる生物学的、生化学的、化学的、および物理的現象が測定される。光生成融合タンパク質は、光を発生するようにかまたは発生しないように、あるいは光を発生させるように改変され得る。光生成融合タンパク質は、リガンド結合部位および光生成ポリペプチド部分を含み、このポリペプチド部分の生物発光は、リガンド結合部位におけるリガンドの結合において変化する。
【0078】
解釈により拘束されることを望まないが、リガンド結合部位は、光生成ポリペプチド部分の「スイッチ」としての意味で作用する。すなわち、リガンドがリガンド結合部位に結合する場合、光生成ポリペプチド部分は、光を発生するか、あるいは、リガンド結合の際に光を発生するのを停止する。実施形態において、「スイッチの切り換え(switching on or off)」は、「同一直線上のエフェクター部位」によりなされ得る。このエフェクター部位は、リガンド結合後の現象により作用される場合に光生成ポリペプチド部分のその現在の光発生状態を変化させる(すなわち、オンまたはオフ)光生成ポリペプチド部分の領域を含む。同一直線上のエフェクター部位を構成する領域は、例えば、コンフォメーションの変形、化学的改変(例えば、同一直線上のエフェクター部位における残基のユビキチン結合)、または同一直線上のエフェクター部位の全てまたは一部の切断によりこのことをなし得る。
【0079】
光生成融合タンパク質の光生成ポリペプチド部分の選択は、非侵襲的な様式で外部から検出され得るように動物組織を貫通し得る光を生成するようになされるべきである。媒体(例えば、動物組織(大部分が水で構成される))を通過する光の能力は、光の強度および波長により主に決定される。
【0080】
単一容量において生成される光の強度が大きければ、その光はより容易に検出される。
単一容量において生成される光の強度は、個々の光生成ポリペプチド部分のスペクトルの特徴、および単一容量におけるその部分の濃度に依存する。従って、高濃度の光生成ポリペプチド部分を実体中または実体上に配置するスキーム(例えば、リポソームの高効率の充填または細胞中での光生成融合タンパク質の高レベルの発現)は、代表的に、より明るい光生成融合タンパク質(LGP)を生成し、これは、例えば、各実体に単一のLGMのみを結合させるスキームよりも、組織のより深い層を通して検出することがより容易である。
【0081】
組織の層を通じた検出可能性を支配する第2の因子は、発生する光の波長である。水は、動物組織の吸収特徴を概算するために使用され得る。なぜならば、ほとんどの組織は、大部分が水で構成されるからである。水は、より長い波長の光(赤色範囲)をより短い波長の光よりも容易に通過させることが周知である。
【0082】
従って、黄色から赤色の範囲(550〜1100nm)の光を発生する光生成ポリペプチド部分は、代表的に、より短い波長で発光する部分よりも好ましい。しかし、良好な結果は、486nmの範囲で発光するLGMを用いて本発明を実施する際に達成され得る(しかし、これが最適な発光波長ではない)。
【0083】
(蛍光に基づく部分)
蛍光分子は発光するために光の投入を必要とするので、本発明におけるそれらの使用は、生物発光分子の使用よりも関連し得る。代表的に、被験体から検出される蛍光光子シグナルと混ざらないように励起光を遮断することに注意が払われる。明確な注意としては、放射源における励起フィルターの配置が挙げられる。適切に選択された励起フィルターは、蛍光部分により発生される光子と類似の波長を有する光子の大部分をブロックする。同様に、遮断フィルターが、蛍光光子の波長以外の波長を有する光子の大部分を選別するために、検出器にて使用される。上記のようなフィルターは、種々の販売元(Omega Optical,Inc.(Brattleboro,Vt.)を含む)から獲得され得る。
【0084】
あるいは、適切な励起波長付近(蛍光発生波長付近ではない)の高強度の光を生成するレーザーが、蛍光部分を励起するために使用され得る。x−y移動機構は、レーザーが、例えば、共焦点顕微鏡におけるように被験体をスキャンし得るように使用され得る。
【0085】
さらなる注意として、放射源は、被験体の後方に配置され、そして遮断され得、その結果、検出器の部位に到達する放射線光子のみが、常に被験体を通過する光子である。さらに、蛍光部分を励起するのに使用される光の波長に対して減少した感受性を有する検出器が選択され得る。
【0086】
小さな蛍光分子の利点は、それらが、より大きな光生成部分よりも、それらの結合される実体の生物活性と干渉する可能性が低いことである。さらに、本発明と共に使用するのに適した種々の励起スペクトルおよび発光スペクトルを有する市販の蛍光分子が獲得され得る。例えば、Molecular Probes(Eugene、Oreg.)は、多くのフルオロフォア(Lucifer Yellow(428nmにて吸収、そして535nmにて発光)およびNile Red(551nmにて吸収、そして636nmにて発光)が挙げられる)を販売している。さらに、種々の結合スキームと共に使用するための種々の基を有する誘導体化されたこの分子が、(例えば、Molecular Probesから)獲得され得る。
【0087】
(生物発光に基づく部分)
化学発光(化学反応の結果としての発光)および生物発光(生存生物からの可視的な発
光)の主題は、多くの局面において、完全に研究されている。
【0088】
蛍光部分を超える生物発光部分の利点は、シグナルにバックグラウンドが実質的に存在しないことである。検出される唯一の光は、外来の生物発光部分により生じる光である。対照的に、蛍光部分を励起するのに使用される光は、しばしば、意図する標的と異なる物質の蛍光を生じる。このことは特に、「バックグラウンド」が生存動物の内部環境と同じくらい複雑である場合にあてはまる。
【0089】
好ましい実施形態において、リガンドとしては、光生成ポリペプチド部分を改変し得る(その結果、改変された場合に光を発生するかまたは発生しない)酵素が挙げられる。使用の際には、これは、例えば、光生成融合タンパク質が実体上のリガンドまたはその実体により生成されるリガンドと接触し、そのリガンドがリガンド結合部位と結合し、光生成ポリペプチド部分の光生成特性を変更する場合に起こる。例を、以下に挙げる。
【0090】
本発明の特に有用な実施形態において、E3ユビキチンリガーゼに対する結合部位および改変部位にてE3により改変され得る光生成ポリペプチド部分を含む光生成融合タンパク質は、診断および処置目的で使用され得る。ユビキチンリガーゼ(例えば、E3)は、それらの基質に存在する同一直線上の「T」(図1を参照のこと)に結合する。例として、SCF(Skp1/Cdc53/F−ボックス)ユビキチンリガーゼ、VBC(pVHL/エロンガンB/エロンガンC)ユビキチンリガーゼ、およびMDM2ユビキチンリガーゼが挙げられる。光生成タンパク質(例えば、GFPおよびルシフェラーゼ)が、活性を喪失することなく異種ポリペプチドに融合され得ることは既に確立されている。いくつかの実施形態において、光生成ポリペプチド部分は、ユビキチンアクセプター部位としてアクセス可能な表面に曝されたリジン残基を含むように改変され得る。第1の実施形態において、本発明の光生成融合タンパク質は、生存組織および動物において虚血をモニターするために使用され得る。第1の実施形態は、VBCに対する結合部位として作用するHIF1α(低酸素誘導因子1α)由来のポリペプチドを含む。この結合部位は、プロリンヒドロキシル化の結果として、酸素の存在下でVBCにより認識されるのみである。第1の実施形態の光生成融合タンパク質は、低酸素性の細胞において有利に安定であるが、十分に酸素供給された細胞においては不安定である。関連する実施形態において、上記のHIF由来ポリペプチドは、(固形腫瘍におけるような)虚血性細胞の選択的な殺傷において使用され得る自殺部分(例えば、タンパク質(例えば、HSV TKまたはE1Aのようなアデノウイルスタンパク質))に融合され得る。
【0091】
結合および/または改変部位は、サイクリン依存性キナーゼ、ATM/ATR、JNKキナーゼ、およびレセプターチロシンキナーゼを含む種々のキナーゼについて当該分野で周知である。1つの実施形態において、光生成融合タンパク質は、目的のキナーゼについての結合部位に融合され得る。いくつかの実施形態において、選択されたキナーゼについての1つ以上の結合部位を光生成融合タンパク質に導入することが有用である。例として、リン酸化セリン、スレオニン、およびチロシンは、それらの負電荷によって、頻繁に、アスパラギン酸残基および/またはグルタミン酸残基を模倣するので、個々のアスパラギン酸残基およびグルタミン酸残基は、セリン、スレオニン、またはチロシンと置換される(キナーゼ改変部位の関係で)。このような置換は、単一でおよび組み合わせてなされ得る。別の実施形態において、改変部位は、キナーゼ改変部位をコードするリンカーを使用して、光生成タンパク質のリンカースキャンを実行することによって、経験的に決定され得る。さらに別の実施形態において、光生成ポリペプチド部分は変異(無作為な変異誘発または標的化された変異誘発のいずれか)されて、光生成ポリペプチド部分がキナーゼによって選択的に不活性化または活性化される改変部位が生成される。この変異誘発は、キナーゼに対する条件性を与えられた細胞(例えば、酵母)を用いて実施される。なおさらに別の実施形態において、キナーゼ改変部位は、光生成ポリペプチド部分の三次元構造の
知見と組み合わせて、選択されたキナーゼの結合部位と光生成ポリペプチド部分の一次配列との比較に基づき、インシリコで設計される。
【0092】
以下に記載されるさらなる実施形態において、光生成ポリペプチド部分は、サイクリン/cdk2複合体により認識されるポリペプチドに融合される。この酵素は、+1位のプロリンについての絶対条件の下で、セリンまたはスレオニンをリン酸化する。例として、GFPは、1つのスレオニン−プロリン部位および2つのアスパラギン酸−プロリン部位を含む13個のプロリン残基を含む。1つの実施形態において、光生成タンパク質(例えば、GFP)は、サイクリン/cdk2結合部位(例えば、Y−Lys−X−Leu−K−X−Leu−Y’(配列番号9))に融合される。光生成タンパク質は、サイクリン/cdk2によりリン酸化および不活性化され、サイクリン/cdk2の存在下で選択的にオフ(off)である検出可能なシグナルを提供する。別の実施形態において、光生成ポリペプチド部分は変異され、その結果、サイクリン/cdk2によりリン酸化および活性化されない。この変異の例は、2つのアスパラギン酸−プロリン部位をセリン(またはスレオニン)−プロリンに変異することである。
【0093】
このさらなる実施形態において、リガンド結合部位は、サイクリン/cdk2複合体により認識されるポリペプチド(例えば、Y−Lys−X−Leu−K−X−Leu−Y’(ここで、X、Xは、独立して任意の1つ以上のアミノ酸であり;そしてYおよびY’は、独立して存在するかまたは非存在であり、そして必要な場合、独立して1〜600個のアミノ酸を有するペプチドを含む)を含むポリペプチド)である。
【0094】
このような標的ペプチドの例は、RB:PKPLKKLRFD(配列番号1)である。このさらなる実施形態の関連する局面において、リガンド結合部位は、アミノ酸配列Y−X−Arg−Arg−Leu−Y’を含む。ここで、Xは、LysまたはCysであり;そしてYおよびY’は、独立して、存在するかまたは非存在であり、そして所望の場合、独立して、1〜600個のアミノ酸を含むペプチドを含む。このさらなる実施形態のこの関連する局面の標的ペプチドの2つの非限定的な例は:E2F1:GRPPVKRRLDLE(配列番号2)(E2F1由来);およびp21:CCSKACRRLFGP(配列番号3)(p21タンパク質由来)である。
【0095】
このさらなる実施形態の融合タンパク質は、上記の標準的な組換えDNA技術により生成され得る。
【0096】
このさらなる実施形態の光生成融合タンパク質のリガンド結合部位は、網膜芽腫(RB)タンパク質から獲得される。Adamsら、1999 Mol.Cell Biol.
19:1068は、RBタンパク質を記載している。RBポリペプチドは、928個のアミノ酸残基を含む。以下により詳細に記載されるように、このリガンド結合部位は、RBに由来する固有のサイクリン結合ドメインを含む。上記の光生成融合タンパク質において、Yは、1個と900個との間のアミノ酸残基を含み、好ましくは、「N末端」RBアミノ酸1〜868の配列に対応する。従って、好ましい実施形態において、Yは、RBのN末端アミノ酸の任意の配列(例えば、残基794〜829など、および残基1〜868を含む)を含み得る。Y’はまた、1個と600個の間のアミノ酸残基を含み、好ましくは、「C末端」RBアミノ酸879〜928の配列に対応する。従って、好ましい実施形態において、Y’は、RBのC末端アミノ酸の任意の配列(例えば、残基879〜910など、および残基879〜928を含む)を含み得る。YおよびY’はまた、上記のN末端およびC末端RB配列に存在するアミノ酸の保存的置換を含み得る。さらなる実施形態において、YおよびY’は存在しない。
【0097】
このさらなる実施形態の光生成融合タンパク質は、「癌性組織」または異常な細胞増殖
およびそれによって癌の危険に曝された組織を検出する方法を提供する。インサイチュでの新生物に起因して癌性となる組織に加えて、例えば、光生成融合タンパク質はまた、遠位の器官および/または組織に存在する癌性転移組織を検出する方法を提供する。従って、このような組織は、癌である疑いのある組織と、光生成融合タンパク質とを、適切な条件下で接触させて、癌組織における光生成融合タンパク質のリン酸化を引き起こし、それによって癌組織の存在を検出することによって検出され得る。この実施形態の光生成融合タンパク質のリガンド結合部位は、このタンパク質をリン酸化するサイクリン−サイクリン依存性キナーゼ(cdk)複合体に対する結合部位を提供し、サイクリン−cdk複合体の存在下で光を発生させるかまたは発生させない。従って、適切な条件下で、光生成融合タンパク質は、癌性でない組織においてリン酸化されるかまたは不活性であり、そして癌性である組織(例えば、原発性組織および転移性組織)においてリン酸化されず、光発生特性を持続する。
【0098】
別の有用な実施形態において、光生成ポリペプチド部分は、サイクリン/cdk2複合体により認識されるポリペプチドに融合される。この酵素は、+1位のプロリンについての絶対条件の下で、セリンまたはスレオニンをリン酸化する。例として、GFPは、1つのスレオニン−プロリン部位および2つのアスパラギン酸−プロリン部位を含む13個のプロリン残基を含む。1つの実施形態において、光生成タンパク質(例えば、GFP)は、サイクリン/cdk2結合部位(例えば、Y−Lys−X−Leu−K−X−Leu−Y’(配列番号9))に融合される。光生成タンパク質は、サイクリン/cdk2によりリン酸化および不活性化され、サイクリン/cdk2の存在下で選択的にオフ(off)である検出可能なシグナルを提供する。別の実施形態において、光生成ポリペプチド部分は変異され、その結果、サイクリン/cdk2によりリン酸化および活性化されない。この変異の例は、2つのアスパラギン酸−プロリン部位をセリン(またはスレオニン)−プロリンに変異することである。
【0099】
リン酸化は、タンパク質を翻訳後改変するための最も重要な様式のうちの1つであり、そしてリン酸化は、細胞生理学的プロセス(輸送、増殖、分化)を調節する。例えば、リン酸化は、細胞分裂のすべての期(G1期からS期への移行、S期の間の細胞の進行、およびM期への移行に関与する。腫瘍タンパク質と、遺伝子発現および遺伝子複製に関与する腫瘍サプレッサータンパク質との生理学的機能もまた、リン酸化により調節される。多くの増殖因子およびそのレセプターは、種々のヒト腫瘍において変異または過剰発現されているオンコジーンによりコードされる。これらのオンコジーンの変異または過剰発現は、抑制されない細胞分裂、および正常細胞から悪性細胞への形質転換をもたらす。本発明の実施形態において、光生成融合タンパク質は、リン酸結合部位および改変部位(例えば、タンパク質「ホスファターゼ」により改変可能なリン酸化アミノ酸残基)を含み得る。
【0100】
ほとんどのプロテアーゼに関して、その酵素結合部位および改変部位は、大きく一致し、そして短いペプチド中に含まれ得る。1つの実施形態において、光生成融合タンパク質は、プロテアーゼ結合部位と、そのプロテアーゼにより切断可能である改変部位とを含み得る。その結合部位および改変部位は、同じ部位であっても、または2つの別個の領域にあってもよい。その結合部位および改変部位が一致している1つの実施形態において、所定の光生成タンパク質のリンカー走査変異誘発が、その一致している結合部位/改変部位をコードするリンカーを使用して実行される。生じる変異体は、プロテアーゼ欠損細胞において光発光活性を保存しかつインビトロおよびインビボでプロテアーゼ感受性を示す、結合部位/改変部位を含む光生成融合タンパク質である。本明細書中に記載される第3の実施形態において、HIVプロテアーゼ部位を含む光生成融合タンパク質は、HIVの存在または非存在(この場合、発光しないHIVポジティブ細胞を用いる)をモニターするために特に有用である。別の実施形態において、その光生成融合タンパク質は、光生成ポリペプチド部分の発光活性を阻害するタンパク質にリンカーを介して融合されている。そ
のリンカーは、HIVプロテアーゼの結合部位/改変部位を含む。従って、その結合部位/改変部位での切断は、その阻害するタンパク質部分を除去し、それによりHIVポジティブである細胞においてポジティブシグナルを生じるはずである。
【0101】
図1Aに一般的に示されるように、本発明の融合タンパク質の実施形態は、光結合部位「T」、レポータードメイン(例えば、光生成タンパク質部分」)「R」、および改変部位「X」を含む。標的部位「T」への酵素「E」(リガンド)の結合は、改変部位「X」の改変を生じ、このことは、レポータードメイン「R」が発光するかまたは発光しないかのいずれかを引き起こす。
【0102】
この部位「T」および改変部位「X」は、図1Bに示されるように、融合タンパク質上に別個にありかつシスであり得る。「T」または「X」のいずれかが、その融合タンパク質のアミノ末端に対して近位または遠位であり得る。
【0103】
図1Cに示される別の実施形態において、融合タンパク質の「T」および「X」が、その融合タンパク質の1ドメイン内で一致している。関連する実施形態において、その一致する「T/X」は、その融合タンパク質のアミノ末端でも、カルボキシ末端でもあり得、またはそのいずれの末端でもないかもしれない。
【0104】
図1Dに示されるさらなる実施形態において、「T」は、「X」を含む融合タンパク質と会合したタンパク質上にある。関連する実施形態において、標的部位「T」は、融合タンパク質上にあり、そして改変部位「X」は、その融合タンパク質と物理学的に会合しているタンパク質上にあり、その会合したタンパク質の改変は、発光するかまたは発光しないかのいずれかである融合タンパク質を生じる。部位「T」および改変部位「X」の叙述は、限定的であることを意図されない。「T」は、その融合タンパク質のアミノ末端でも、カルボキシ末端でもあり得、またはそのいずれの末端でもないかもしれず、そして「X」は、その会合されたタンパク質のアミノ末端でも、カルボキシ末端でもあり得、またはそのいずれの末端でもないかもしれない。
【0105】
本発明はまた、リガンド結合部位配列「T」が未知である融合タンパク質を包含する。(例えば、図2Aにおいて示されるような)この実施形態において、その融合タンパク質は、第1のヘテロダイマー化ドメインまたはホモダイマー化ドメイン(「HD1」)を含む。その融合タンパク質上の改変部位「X」を改変可能な酵素「E」は、「HD1」と相互作用する第2のヘテロダイマー化ドメインまたはホモダイマー化ドメイン(「HD2」)と融合される。関連する実施形態において、酵素「E」についての標的部位「T」は、その融合タンパク質中に、ランダムペプチドライブラリーまたは非ランダムペプチドライブラリーに由来する1つ以上のポリペプチド配列を挿入することによって、生成され得る。
【0106】
関連する実施形態(図2B)において、酵素標的部位「T」を含むタンパク質「A」の結合ドメインは、融合タンパク質の結合ドメイン「B」と相互作用し、このことは、改変部位「X」にある融合タンパク質「B」のレポータードメイン「R」を改変して、その融合タンパク質が発光するかもしくは発光しないか、または光が発光されるのを引き起こすように、改変する酵素「E」を生じる。第1の実施形態において、そのリガンド結合部位は、VBCの結合部位として作用するHIF1α(低酸素誘導性因子1α)に由来するポリペプチド(例えば、アミノ酸配列Y−X−Leu−X−Pro−X−X−X−X−Y’(配列番号11)を含み;ここで、
Proは、ヒドロキシル化プロリンであり、
、X、X、X、X、およびXは、VHL結合特性を改変も変化もさせないように選択された、アミノ酸である。X、X、X、X、およびXは、望まし
くは独立してGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、またはTrpであり、そしてXは、望ましくはSer、Thr、またはTyrであり;そして
YおよびY’は、独立して、存在するかまたは存在せず、存在する場合は、1〜600アミノ酸を有するペプチドを独立して含む。
【0107】
好ましい実施形態において、そのリガンド結合部位は、HIF1αのN末端残基1〜600に対応するアミノ酸配列を含み、残基402および564のいずれかまたは両方が、プロリンまたはヒドロキシル化プロリンである。より好ましい実施形態において、そのリガンド結合部位は、HIF1αの残基402および/または564と隣接しそして/あるいは取り囲む(残基402および/または564を含む)残基に対応する、80〜120アミノ酸配列、20〜30アミノ酸配列、12〜14アミノ酸配列、または4〜12アミノ酸配列を含み、ここで、残基402および/または564は、プロリンまたはヒドロキシル化プロリンである。「隣接しそして/または取り囲む残基」とは、特定の残基(例えば、残基564)の前、その残基の後、またはその残基と隣接するかのいずれかである、HIF1αの関連配列を含むことが意図される。
【0108】
そのようなタンパク質は、酸素検出タンパク質として有効に使用され得る。その融合タンパク質は、標準的組換えDNA技術により生成され得る。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントが、例えば、連結のための平滑末端または付着末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、適切なように付着末端を充填すること、望ましくない結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的連結を使用することによって、従来の技術に従ってインフレームで一緒に連結される。別の実施形態において、その融合遺伝子は、従来技術(自動DNA合成機を含む)により合成され得る。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅が、2つの連続的な遺伝子フラグメント間に相補的突出を生じるアンカープライマーを使用して実行され得、その2つの連続的遺伝子フラグメントは、その後、キメラ遺伝子配列を生成するようにアニーリングおよび再増幅され得る(例えば、Ausubelら編、CURRENT PROTOCOLS IN
MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons、1992を参照のこと)。
【0109】
上記のリガンド結合部位は、HIF1αタンパク質に由来する。米国特許第6,222,018号は、HIFタンパク質および実質的に純粋な形態でのそのHIFタンパク質の調製物を記載する。HIFは、サブユニットHIF1αおよびアイソフォームHIF1βから構成される。HIF1αポリペプチドは、826アミノ酸残基を含む。下記により詳細に記載されるように、この特定の融合タンパク質のリガンド結合部位は、HIF1α由来の独特のユビキチンリガーゼ結合ドメインを含む。この融合タンパク質において、存在する場合は、Yは、1個と600個との間のアミノ酸残基を含み、好ましくは、そのアミノ酸残基は、「N末端」HIF1αアミノ酸残基1〜555の配列に対応する。従って、好ましい実施形態において、Yは、HIF1αのN末端アミノ酸(例えば、残基554〜555、553〜555、552〜555など、残基1〜555までを含む)の任意の配列を示し得る。Y’もまた、1個と600個との間のアミノ酸残基を含み、好ましくは、そのアミノ酸残基は、「C末端」HIF1αアミノ酸残基576〜826の配列に対応する。従って、好ましい実施形態において、Y’は、HIF1αのC末端アミノ酸(例えば、残基576〜577、576〜578、576〜579など、残基576〜826までを含む)の任意の配列を示し得る。YおよびY’はまた、上記のN末端HIF1α配列およびC末端HIF1α配列中に存在するアミノ酸の保存的置換を含み得る。上記に規定されるリガンド結合の好ましい実施形態において、YおよびY’は存在しない。さらなる好ましい実施形態において、XはMetであり、XはLeuであり、XはAlaであり、XはTyrであり、XはProであり、そしてXはMetである。その融合タ
ンパク質の特に好ましい実施形態において、そのリガンド結合部位は、アミノ酸配列Asp−Leu−Asp−Leu−Glu−Met−Leu−Ala−Pro−Tyr−Ile−Pro−Met−Asp−Asp−Asp−Phe−Gln−Leu−Argを有し、そのアミノ酸配列は、HIF1αアミノ酸残基556〜575に対応し、アミノ酸残基564にあるヒドロキシル化プロリンを有する。
【0110】
本発明はまた、本発明の融合タンパク質または融合ポリペプチドをコードする核酸分子を提供する。(本明細書中で使用される場合、用語ポリペプチドとタンパク質とは、互換可能である)。「単離された」核酸分子は、その核酸の天然供給源中に存在する他の核酸分子から分離されている、核酸分子である。単離された核酸分子の例としては、ベクター中に含まれる組換えDNA分子、異種宿主細胞中に維持される組換えDNA分子、部分精製または実質的に精製された核酸分子、および合成DNA分子または合成RNA分子が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、「単離された」核酸分子(例えば、cDNA分子)は、組換え技術により生成された場合は他の細胞物質も培養培地も実質的に含まず、または化学合成された場合は化学前駆物質も他の化学物質も実質的に含まない。
【0111】
本発明の核酸は、標準的PCR増幅技術に従って、cDNA、mRNA、またはゲノムDNAをテンプレートとして使用し、そして適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、増幅され得る。そのようにして増幅された核酸は、適切なベクター中にクローニングされ得、そしてDNA配列分析により特徴付けされ得る。さらに、そのヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドは、標準的合成技術によって、例えば、自動DNA合成機を使用して、調製され得る。従って、本発明はまた、本発明の核酸を含むベクターを提供する。好ましい実施形態において、そのベクターは、その核酸分子に作動可能に連結されたプロモーターをさらに含む。さらなる好ましい実施形態において、本発明は、本発明のベクターを含む細胞を提供する。
【0112】
例えば、第1の実施形態の光生成融合タンパク質は、低酸素組織、または慢性的低酸素症になりやすく従って虚血の危険がある組織を検出するための手段を提供する。発作、心臓発作または塞栓症の出現に起因して虚血になる組織に加えて、例えば、その融合タンパク質はまた、腫瘍中に存在する虚血性組織を検出する方法を提供する。従って、本発明は、酸素正常状態組織においてその融合タンパク質のユビキチン化を引き起こすに適切な条件下で、低酸素であると疑われる組織をその光生成融合タンパク質と接触させ、それにより低酸素症組織の存在を検出することによって、そのような組織を検出するために使用され得る。下記により完全に記載されるように、その光生成融合タンパク質のリガンド結合部位はまた、酸素の存在下でそのタンパク質を破壊するユビキチンリガーゼの結合部位を提供する。従って、適切な条件下で、本発明の光生成融合タンパク質は、低酸素症ではない(すなわち、十分に酸化されている)組織において「不安定な」組織または破壊された組織であり、そして低酸素である(すなわち、十分な酸素を欠く)組織において「安定である」かまたはその発光特性を保存する。
【0113】
第3の実施形態は、「感染した組織」または感染性因子と接触しやすく従って感染の危険がある組織を検出するための(例えば、HIVの存在または非存在をモニターするための)手段を提供する。第3の実施形態のリガンド結合部位は、プロテアーゼ(例えば、感染関連プロテアーゼ)の結合部位を含む。例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)タンパク質前駆体Pr55(gag)タンパク質のプロテアーゼ切断部位としては、p2/NC、NC/p1およびNC/TFPが挙げられる。
【0114】
この第3の実施形態の光生成融合タンパク質のリガンド結合部位は、HIV−1タンパク質に由来し得る。この第3の実施形態の標的ペプチドの1つの非限定的例は、
Y−GSGIFLETSL−Y’(配列番号6)(Beckら(2000)Viro
logy 274(2):391−401を参照のこと)。
【0115】
YおよびY’は、独立して、存在するかまたは存在せず、存在する場合は、1〜600アミノ酸を有するペプチドを独立して含み、そして「」は、プロテアーゼによる融合タンパク質の切断部位を示す。
【0116】
感染性因子による急性感染または慢性感染に起因して感染状態になる組織に加えて、例えば、この光生成融合タンパク質は、例えば、感染している疑いがある組織を、感染した組織における光生成融合タンパク質のタンパク質分解を引き起こすに適切な条件下で本発明の光生成融合タンパク質と接触させ、それにより感染した組織の存在を検出することによって、遠位器官および/または遠位組織中に存在する感染した組織を検出する際に使用され得る。この第3の実施形態の光生成融合タンパク質のリガンド結合部位は、そのタンパク質を分解または改変し、1つ以上のプロテアーゼの存在下でそのタンパク質に光を発光させるかまたは発光させない、プロテアーゼの結合部位を提供する。従って、適切な条件下で、光生成融合タンパク質は、感染している組織においてタンパク質分解され得るかまたは不活性であり得(るが、タンパク質分解が光生成をもたらす場合が存在し得る)、そして感染している組織においてタンパク質分解されず、そのタンパク質の発光特性を保存し得る。
【0117】
本発明の光生成融合タンパク質の第4の実施形態は、光生成タンパク質部分およびリガンド結合部位を含み、ここでそのリガンド結合部位は、「会合している」タンパク質に結合可能であるアミノ酸配列を含む。その会合は、共有結合または非共有結合により生じ得る。この会合したタンパク質は、それ自体が、光生成融合タンパク質であり得、その光生成融合タンパク質は、その発光する光生成融合タンパク質に結合可能な結合ポリペプチドと、発光する光生成融合タンパク質を改変可能な酵素とを、含む。
【0118】
この第4の実施形態の標的ペプチドの非限定的例は、
HD1:WFHGKLSR(登録番号P29353,ヒトSHC1;配列番号4のアミノ酸488〜495)
である。
【0119】
この標的ポリペプチドは、SH2ドメインを含む。従って、SH2ドメインを含む会合している任意のタンパク質は、その第4の実施形態の標的ペプチドと相互作用するはずである。この第4の実施形態の会合しているタンパク質の結合ペプチドの非限定的例は、
HD2:WNVGSSNR(登録番号P27986,ヒトPI3K p85サブユニット;配列番号5のアミノ酸624〜631)
である。
【0120】
この第4の実施形態の別の非限定的例は、FK506結合ドメイン(FKBP12)ドメイン部分をGFPと融合し、そしてFRAPドメイン部分をSkplまたはelonginCと融合することである。従って、FKBP12とFRAPとの高親和性相互作用を促進するラパマイシンの存在下で、コアE3リガーゼ機構は、GFPと結合しそしてGFPを破壊し、その生物発光を、ラパマイシンがどこに存在しようとも消滅させる。
【0121】
この第4の実施形態の光生成融合タンパク質のリガンド結合部位は、ヒトSHC1タンパク質に由来する。マイトジェニックシグナル伝達に関与するSH2ドメインを含むSHC1タンパク質を記載する、Pelicciら(1992)Cell 70:93〜104を参照のこと。
【0122】
この第4の実施形態の光生成融合タンパク質は、その酵素結合部位が規定されていない
場合、酵素的活性を検出するための手段を提供する。
【0123】
サイクリン/cdk活性が、本発明の別の実施形態においてアッセイされ得、その実施形態において、試験サンプルが、サイクリン/cdk結合部位と光生成ポリペプチド部分とを含む光生成融合タンパク質と接触され、その後、その試験サンプルにおけるサイクリン/cdk活性の存在または量が、その試験サンプルの発光を測定することによって決定される。
【0124】
本発明は、なおさらに、改変LGPをコードする単離されたDNAを含むDNA構築物に関し、そのDNA構築物において、1つ以上のアミノ酸が、リガンド結合部位(例えば、ユビキチンリガーゼ認識部位またはプロテアーゼ認識部位)を提供するように置換、挿入または欠失されており、そのLGPの発光は、そのリガンド結合部位へのリガンドの結合の際に変化する。
【0125】
本発明はまた、リガンド結合部位(例えば、ユビキチンリガーゼ結合部位)またはHIF1αポリペプチド部分と、光生成ポリペプチド部分とを有する、光生成融合タンパク質に関する。別の実施形態は、サイクリン/cdk結合部位、自殺タンパク質ポリペプチド部分と、光生成ポリペプチド部分とを含む、光生成融合タンパク質;ならびにタンパク質ダイマー化ドメインと光生成タンパク質部分とを含む、光生成融合タンパク質を特徴とする。好ましい実施形態において、その光生成融合タンパク質は、そのリガンド結合部位にリガンドが結合する際に、その光生成ポリペプチド部分の発光が、その融合タンパク質のリン酸化状態を変化させることなく変化するという特性を有する。
【0126】
本発明は、HIF1αポリペプチド部分またはサイクリン/cdk結合部位と、自殺タンパク質ポリペプチド部分を含む、融合タンパク質にさらに関する。光生成ポリペプチド部分が、必要に応じて含まれ得る。これらのタンパク質構築物は、特定の細胞(例えば、低酸素症腫瘍細胞)を破壊するために選択的に標的とするために使用され得る。例えば、本発明は、低酸素障害または虚血性障害を処置する方法を包含し、この方法は、プロリルヒドロキシラーゼに結合親和性を有するHIFαポリペプチド部分と、自殺ポリペプチド部分とを含む融合タンパク質の有効量を被験体に投与することにより、その結果、その低酸素症障害または虚血性障害が処置される。低酸素症腫瘍細胞を殺傷する方法もまた企図され、この方法において、その融合タンパク質/自殺タンパク質の有効量が被験体に投与され、その結果、その低酸素症腫瘍細胞が殺傷される;そして細胞増殖障害を処置する方法もまた企図され、この方法は、サイクリン/cdk結合部位と自殺タンパク質ポリペプチド部分とを含む融合タンパク質の有効量を被験体に投与することにより、その結果、その細胞増殖障害が処置される。
【0127】
他のスクリーニング方法はまた、本発明の一部である。例えば、障害(例えば、癌、糖尿病、心臓疾患、発作または低酸素症関連障害)の活性また潜伏の修飾因子または障害に対する素因は、障害の危険性が増加した試験動物に試験化合物を投与すること(ここで、試験動物はリガンド結合部位および光生成ポリペプチド部分を含む光生成融合タンパク質を組換え発現し、ここで、光生成融合タンパク質の光生成は、リガンド結合部位でのリガンド結合の際に変化し、そしてリガンド結合部位は、障害に関連する実体または障害の産物上のリガンドを認識す);光生成融合タンパク質および実体の局在化を可能にすること(ここで、リガンド結合部位と障害に関連するリガンドとの間の接触は、光生成ポリペプチド部位の光生成を変更する共直線エフェクター部位の改変を引き起こす);化合物の投与後の試験動物における光生成ポリペプチド部分の発光を検出すること;およびコントロール動物における光生成ポリペプチド部分の発光と試験動物における光生成ポリペプチド部分の発光を比較すること(ここで、コントロールと比較した試験動物において光生成ポリペプチド部分の活性の変化は、この試験化合物が該当の障害の潜伏または該当の障害に
対する素因の修飾因子であることを示す)によって同定され得る。
【0128】
本発明は、インビボで抗低酸素化合物の効果を非侵襲的に決定するために有利に使用され得る。本発明の光生成融合タンパク質またはこの融合タンパク質を発現する細胞は、ユビキチンリガーゼ結合部位および光生成ポリペプチド部分を含み、ここで、光生成融合タンパク質の光生成は、ユビキチンリガーゼ結合部位でのユビキチンリガーゼの結合の際に変化し、低酸素組織において低酸素状態で存在するユビキチンリガーゼを認識するユビキチンリガーゼ結合部位は、被験体に投与される。被検体中の低酸素組織における光生成融合タンパク質または細胞の局在化(ここで、ユビキチンリガーゼ結合部位とユビキチンリガーゼとの間の接触は、光生成ポリペプチド部分の光生成を変更する共直線エフェクター部位の改変を引き起こす)が生じ、そして低酸素症を阻害する候補化合物の能力は、局在した光生成融合タンパク質の発光を測定することによって決定される。
【0129】
本発明の試験化合物は、以下に挙げられる当該分野で公知のコンビナトリアルライブラリー方法における多数のアプローチのいずれかを用いて得られ得る:生物学的ライブラリー;空間的にアドレス可能な並行固相ライブラリーまたは液相ライブラリー;逆重畳を必要とする合成ライブラリー方法;「1ビーズ1化合物(one−bead one−compound)」ライブラリー方法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー方法。生物学的ライブラリーアプローチは、ペプチドライブラリーに限定されるが、一方、他の4つのアプローチは、化合物のペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは低分子ライブラリーに適用可能である。例えば、Lam,1997.Anticancer Drug Design 12:145を参照のこと。
【0130】
化学的および/または生物学的混合物(例えば、真菌、細菌または藻類の抽出物)のライブラリーは、当該分野で公知であり、そして本発明の任意のアッセイを用いてスクリーニングされ得る。分子ライブラリーの合成方法の例は、例えば、以下において当該分野で見出され得る:DeWittら、1993.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6909;Erbら、1994.Proc Natl.Acad.Sci U.S.A.91:11422;Zuckermannら、1994.J.Med.Chem.37:2678;Choら、1993.Science 261:1303;Carrellら、1994.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carellら、1994.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061;およびGallopら、1994.J.Med Chem.37:1233。
【0131】
化合物のライブラリーは、溶液中に(例えば、Houghten,1992.Biotechniques 13:412−421)、またはビーズ上に(Lam,1991.Nature 354:82−84)、チップ上に(Fodor,1993 Nature 364:555−556)、細菌に(Ladner、米国特許第5,223,409号)、胞子に(Ladner、米国特許第5,233,409号)、プラスミドに(Cullら、1992.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865−1869)またはファージ上に(ScottおよびSmith,1990.Science 249:386−390;Devlin,1990.Science 249:404−406;Cwirlaら、1990.Proc.Natl Acad Sci.U.S.A.87:6378−6382;Felici,1991.J.Mol.Biol 222:301−310;Ladner、米国特許第5,233,409号)存在し得る。
【0132】
本発明は、個体中の低酸素状態、癌または感染を測定する方法を提供し、それによってその個体に対する適切な治療的薬剤または予防的薬剤を選択する(本明細書中で「薬理ゲ
ノム学(pharmacogenomics)」という)薬理ゲノム学は、個体の遺伝子型に基づく個体の治療的処置または予防的処置のための薬剤(例えば、薬物)の選択を可能にする(例えば、個体の遺伝子型は、特定の薬剤に対して応答する個体の能力を決定するために試験される)。本発明のなお別の局面は、臨床試験において低酸素状態、癌または感染に対する薬剤(例えば、薬物、化合物)の影響、モニタリングに関する。
【0133】
従って、本明細書中に記載される診断的方法をさらに、使用して、低酸素状態、癌または感染に関連する疾患または障害を有する被験体または低酸素状態、癌または感染に関連する疾患または障害の発達の危険性がある被験体を同定し得る。さらに、本明細書中に記載される予防的アッセイを使用して、被験体が低酸素状態、癌または感染に関連する疾患または障害を処置するための薬剤(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣物(peptidomimetic)、タンパク質、ペプチド、核酸、低分子または他の薬物候補)を投与されるべきか否かを決定し得る。
【0134】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて新規の薬剤を含む。用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、薬学的投与と適合性の任意のおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗細菌剤または抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むことが意図される。適切なキャリアは、Remington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版(この分野における標準的な参考教本(これは、本明細書中で参考として援用される))に記載される。このようなキャリアまたは希釈剤の好ましい例としては、限定されないが、水、生理食塩水、フィンガー溶液(finger’s solutions)、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。リポソームおよび非水溶性ビヒクル(例えば、不揮発油)もまた使用され得る。薬学的に受容可能な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野で周知である。任意の都合よい媒体または薬剤が、活性化合物と不適合性である場合を除き、組成物中のそれらの使用が意図される。補充的な活性化合物はまた、この組成物中へ取り込まれ得る。
【0135】
本発明の薬学的組成物は、その意図される投与の経路と適合するように処方される。投与の経路の例としては、非経口的投与(例えば、静脈内、皮内、皮下)、経口的投与(例えば、吸入)、経皮投与(例えば、局所的)、経粘膜投与および直腸投与が挙げられる。非経口的適用、皮内適用または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る:注射のための水、生理的食塩水、不揮発油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒のような滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗細菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムのような抗酸化薬;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩のような緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースのような張性調節のための薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基で調節され得る。非経口的調製物は、アンプル、使い捨てシリンジまたはガラスもしくはプラスチックで作られた複数用量バイアル中に包まれ得る。
【0136】
注射可能な使用に適切な薬学的組成物としては、滅菌水溶液(水溶性の場合)または滅菌した注射可能な溶液または分散剤の即席の調製のための分散剤および滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与のために、適切なキャリアとしては、生理食塩水、静菌性水、Cremophor ELTM(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は、滅菌されなければならず、そして容易な注射針通過性が存在する程度まで流動的であるべきである。これは、製造および貯蔵の状態下で安定でなければならず、そして細菌および真菌のような微生物の混入活動に対して守られなければならない。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレン
グリコールなど)および適切なそれらの混合物を含む、溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用によって、分散剤の場合、必要な粒子の大きさの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の活動の予防は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど)によって達成され得る。多くの場合において、組成物中に等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、塩化ナトリウム)を含むことが好ましい。注射可能な組成物の延長された吸収は、吸収を遅延する薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を組成物中に含むことによってもたらされ得る。
【0137】
滅菌した注射可能な溶液は、適切な溶媒の中に上記に列挙された成分の1つまたは組み合わせとともに、必要とされる量の活性化合物を取り込むことによって調製され得、必要である場合、次いでフィルター滅菌され得る。一般的に、分散剤は、基本的な分散媒体および上記の列挙された必要とされる他の成分を含む滅菌したビヒクルに活性化合物を取り込むことによって調製される。滅菌した注射可能な溶液の調製ための滅菌した粉末の場合、調製方法は、事前に滅菌濾過されたそれらの溶液から活性成分および任意のさらに所望される成分の粉末を得る、真空乾燥および凍結乾燥である。
【0138】
一般に、経口組成物は、不活性希釈剤または食用のキャリアを含む。これらは、ゼラチンカプセルに包まれるか、または錠剤に圧縮される。経口の治療的投与の目的のために、活性化合物は、賦形剤と共に取り込まれ得、そして錠剤、トローチまたはカプセルの形態で使用され得る。経口組成物はまた、うがい薬としての使用のために液体キャリアを使用して調製され得、ここで、液体キャリア中の化合物は、経口的に適用され、そしてうがいされ(swish)、吐き出されるかまたは飲み込まれる。薬学的に適合性の結合剤、および/または、アジュバント物質は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、いずれかの以下の成分または類似の性質の化合物を含み得る:微結晶性セルロース、トラガカントガムまたはゼラチンのようなバインダー;スターチまたはラクトースのような賦形剤、アルギン酸、Primogelまたはコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSteroteのような潤沢剤(lubricant);コロイド状二酸化ケイ素のような潤滑剤(glidant);スクロースまたはサッカリンのような甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバーのような香味料。
【0139】
吸入での投与のために、化合物は、適切な噴霧剤(例えば、二酸化炭素のようなガス)またはを含む圧縮された容器もしくはディスペンサーネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0140】
全身投与はまた、経粘膜手段または経皮手段によってであり得る。経粘膜投与または経皮投与のために浸透されるべき、障壁に適切な浸透剤が、処方物中に使用される。このような浸透剤は、一般的に当該分野で公知であり、そして例えば、経粘膜投与のために、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻内スプレーまたは坐薬の使用を介して達成され得る。経皮投与のために、活性化合物は、一般的に当該分野で公知であるような、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲルまたはクリームで処方される。
【0141】
化合物はまた、坐薬(例えば、従来の坐薬基剤(例えば、ココアバターおよび他のグリセリド)と共に)または直腸送達のための保持浣腸の形態で調製され得る。
【0142】
1つの実施形態において、活性化合物は、身体からの迅速な排除から化合物を保護するキャリアと共に調製される(例えば、制御放出処方物)移植片およびマイクロカプセル化
送達系を含む))。生分解性の生体適合性ポリマー(例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸)が使用され得る。このような処方物の調製方法は、当業者に明らかである。これらの物質はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incから商業的に得られ得る。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染させた細胞に標的化されたリポソームを含む)もまた、薬学的に受容可能なキャリアとして使用され得る。これらは当業者に公知の方法に従って(例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるように)調製され得る。
【0143】
投与の容易さおよび投薬の均一性のために、投薬単位形態で経口的組成物または非経口的組成物を処方するのに特に有利である。本明細書中で使用されるような投薬単位形態は、処置されるべき被験体にとって均一性投薬として適した物理的分散単位をいう;それぞれの単位は、必要とされる薬学的キャリアに関連して所望される治療的効果を生じるように計算され、予め決定された量の活性化合物を含む。本発明の投薬単位形態の特定は、化合物の独特な特徴および達成されるべき特定の治療的効果、ならびに個体の治療のためのこのような活性化合物を配合する当該分野で固有の制限によって影響され、そして化合物の独特な特徴および達成されるべき特定の治療的効果、ならびに個体の治療のためのこのような活性化合物を配合する当該分野で固有の制限に直接依存する。
【0144】
本発明は、本発明の光生成融合タンパク質を含むように改変または結合体化され得る実体を含む。このような結合体化実体または改変実体は、光放射実体または単純な結合体をいう。これら結合体自体は、例えば、分子、高分子、粒子、微生物または細胞の形態を取り得る。実体に光生成融合タンパク質を結合体化するために使用される方法は、光生成融合タンパク質および実体の性質に依存する。例示的な結合体化の方法は、以下に記載される実体の関係において議論される。
【0145】
(低分子) 本発明において有用であり得る低分子実体は、病原体もしくは内因性のリガンドまたはレセプターと特異的に相互作用する化合物を含む。このような分子の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:薬物または治療的化合物;毒素(例えば、特定の種の有害な生物(クモ、ヘビ、サソリ、渦鞭毛藻類、巻貝(marine snail)および細菌を含む)の毒液に存在する毒素);増殖因子(例えば、NGF、PDGF、TGFおよびTNF);サイトカイン;および生体活性ペプチド。
【0146】
低分子は、低分子の生体活性が実質的に影響されない方法で、光生成融合タンパク質に好ましくは結合体化される。結合体化は、代表的に天然の化学物質であり、そして当業者に公知の任意の種々の方法によって行なわれ得る。
【0147】
本発明の光生成融合タンパク質に結合体化した低分子は、ヒトの状態または疾患の動物モデルにおいてか、または処置されるべきヒト被験体に直接的にかのいずれかで使用され得る。例えば、腫瘍細胞上に発現したレセプターに高い親和性で結合する低分子は、腫瘍を局限化しそして腫瘍の大きさの推定を得るために、そして腫瘍の増殖または転移における変化をモニターし、次いで、推定の治療的薬剤を用いて治療するために動物モデルにおいて使用され得る。このような分子はまた、癌患者において上記のように、腫瘍の特徴をモニターするために使用され得る。
【0148】
(高分子) 高分子(例えば、ポリマーおよび生体高分子)は、本発明の実行において有用な実体の別の例を構成する。例示的な高分子としては、抗体、抗体フラグメント、光生成融合タンパク質および特定のベクター構築物が挙げられる。
【0149】
商業的供給原から購入されるか、または当該分野で公知の方法によって作製される抗体
または抗体フラグメントは、光生成ポリペプチド部分に抗体を結合体化すること、被験体に結合体を投与すること(例えば、注射)によって、抗原部位に結合体を局在化させること、および結合体を画像化することによって、哺乳動物被験体におけるそれらの抗体を局在化するために使用され得る。
【0150】
抗体および抗体フラグメントは、本発明における実体としての使用のためのいくつかの利点を有する。抗体および抗体フラグメントは、これらの性質によって、これらの独自の標的化部分を構成する。さらに、これらの大きさは、いくつかの型の光生成融合タンパク質(蛍光低分子ならびに蛍光タンパク質および生物発光タンパク質を含む)を有する結合体にそれらを受け入れ易くし、例えば、細胞またはリポソームと比較してより迅速にこれらを拡散させ得る。
【0151】
光生成融合タンパク質は、抗体またはフラグメントに直接的にか、または例えば蛍光二次抗体を用いることで間接的に、結合体化され得る。直接的結合体化は、例えば、抗体または抗体フラグメントに対する蛍光団の標準的化学カップリングによってか、または遺伝子工学を介して達成され得る。キメラすなわち融合タンパク質は構築され得、これらは、蛍光タンパク質または生物発光タンパク質に結合した抗体遺伝子または抗体フラグメントを含む。例えば、Casadeiらは、哺乳動物細胞においてエクオリンおよび抗体の融合タンパク質を発現し得るベクター構築物の作製方法を記載する。
【0152】
抗体を含む結合体は、本発明の多数の用途において使用され得る。例えば、Eセレクチン(selection)(これは炎症部位で発現する)に対する標識化抗体は、炎症の局限化のため、そして推定の抗炎症性薬剤の効果をモニターするために使用され得る。
【0153】
ベクター構築物はまた、それ自体、本発明に適用可能な高分子実体を構成し得る。例えば、真核生物の発現ベクターが構築され得、これは、選択されたプロモーター(すなわち、治療的遺伝子によって標的化された細胞中で発現されるプロモーター)の制御下で、治療的遺伝子および光生成分子をコードする遺伝子を含む。本発明の方法を用いてアッセイされた光生成分子の発現は、治療的遺伝子の発現の位置およびレベルを決定するために使用され得る。このアプローチは、治療的遺伝子の発現が、処置された個体または動物モデルにおいて即座の表現型を有さない場合、特に有用であり得る。
【0154】
(ウイルス) 本発明の特定の局面について有用な別の実体は、ウイルスである。多くのウイルスは、哺乳動物宿主に感染する病原体であるので、ウイルスは、光生成融合タンパク質に結合体化され得、そして、感染の開始部位および伝播を研究するために使用され得る。さらに、光生成融合タンパク質で標識化されたウイルスは、感染または感染の伝播を阻害する薬物をスクリーニングするために使用され得る。
【0155】
ウイルスは、光生成融合タンパク質に結合体化された抗体を用いてか、または、例えば、当該分野で公知のとおりにビリオンをビオチン化し、次いで、それらを、検出可能な部分(例えば、蛍光分子)に連結されたストレプトアビジンに曝露することによってかのいずれかで、間接的に標識化される。
【0156】
あるいは、ビリオンは、当該分野で公知の方法を使用して、ローダミンのような蛍光団を用いて直接的に標識化され得る。ウイルスはまた、光生成融合タンパク質を発現するように遺伝子的に操作され得る。標識化ウイルスはまた、局在化され、感染の進行をモニターし、そして、感染の伝播を阻害するのに有効な薬物をスクリーニングするために、動物モデル中で使用され得る。例えば、ヘルペスウイルス感染は、皮膚損傷として明らかである一方、このウイルスはまた、ヘルペス脳炎を引き起こし得る。このような感染は、上記の任意の方法によって標識化されたウイルスを使用して局在化およびモニターされ、そし
て、様々な抗ウイルス剤が、中枢神経系(CNS)感染における効力について試験され得る。
【0157】
(粒子) 粒子(ビーズ、リポソームなどを含む)は、本発明の実施において有用な別の実体を構成する。それらのより大きなサイズに起因して、粒子は、例えば低分子よりも、多数の光生成融合タンパク質に結合体化され得る。これは、より高い濃度の光発光を生じ、この光発光は、短い曝露を使用してか、または組織の肥大層を介して検出され得る。さらに、リポソームは、本質的に純粋な標的化部分、またはリガンド(例えば、それらの表面上の抗原または抗体)を含むように構築され得る。さらに、リポソームは、例えば、相対的に高濃度まで、光生成タンパク質分子で充填され得る。
【0158】
さらに、2つの型のリポソームは、同一の細胞型に標的化され得、その結果、光は、両方が存在する場合にのみ生成される。例えば、1つのリポソームは、ルシフェラーゼを保有し得る一方、他のリポソームは、ルシフェリンを保有する。これらのリポソームは、標的化部分を保有し得、そして、これらの2つのリポソーム上の標的化部分は、同一であっても、異なってもよい。感染細胞上のウイルスタンパク質を使用して、感染された組織または器官を同定し得る。免疫系の細胞は、単一細胞表面マーカーまたは多数細胞表面マーカーを使用して局在化され得る。
【0159】
リポソームを、好ましくは、例えば、リン脂質−ポリエチレングリコール結合体の取り込みにより表面コーティングして、血液循環時間を延長し、そして、血流を介した多くの標的化を可能にする。この型のリポソームは、周知である。
【0160】
(細胞) 細胞(原核生物細胞および真核生物細胞の両方)は、本発明の実施において有用な別の要素を構成する。粒子のように、細胞は、比較的高濃度の光生成部分で充填され得るが、光生成部分が、例えば、細胞をトランスフェクトするために使用される異種遺伝的構築物によって提供され得るという利点を有する。さらに、「標的化部分」、または、被験体内の所望された位置に細胞を標的化するのに有効な分子を発現する細胞が、選択され得る。あるいは、細胞は、適切な標的化部分を発現するベクター構築物を用いてトランスフェクトされ得る。
【0161】
使用される細胞型は、用途に依存する。例えば、細菌細胞を使用して、感染プロセスを研究し得、そして、高レベルの時間分解能および空間分解能を用いて、感染プロセスに対する薬物または治療因子の効果を評価し得る。例えば、この細菌細胞は、高レベルの光生成融合タンパク質、ならびに高レベルの標的化タンパク質を発現するために、容易にトランスフェクトされ得る。さらに、選択された抗原に対する抗体を発現するコロニーを同定するためにスクリーニングされ得る表面結合化抗体を発現する細菌を含む、E.coliライブラリー(Stratagene,La Jolla,Calif.)を取得することが可能である。次いで、このコロニー由来の大腸菌は、光生成タンパク質についての遺伝子を含む第2のプラスミドを用いて形質転換され得、そして、形質転換体を、上記のような本発明の方法において利用し、哺乳動物宿主中で抗原を局在化する。
【0162】
病原性細菌は、光生成融合タンパク質に結合体化され得、そして、インビボで感染プロセスを追跡し、そして、感染の阻害の際の効力について、可能性のある抗感染薬物(例えば、新規な抗生物質)を評価するために、動物モデル中で使用され得る。
【0163】
真核生物細胞もまた、本発明の局面において有用である。適切な発現ベクター(所望の調節エレメントを含む)は、市販されている。このベクターを使用して、様々な真核生物細胞(初代培養細胞、体細胞、リンパ細胞などを含む)中で、所望の光生成タンパク質を発現し得る構築物を生成し得る。この細胞は、一過的な発現研究で使用され得るか、また
は、細胞株の場合では、適切な形質転換体のために選択され得る。
【0164】
形質転換された細胞中の光生成タンパク質の発現は、種々の選択された任意のプロモーターを使用して調節され得る。例えば、この細胞が、発現されたリガンドまたはレセプターによって、被験体中の部位に標的化された光発光部分として使用される場合、構成的に活性なプロモーター(例えば、CMVプロモーターまたはSV40プロモーター)が、使用され得る。このような構築物で形質転換された細胞をまた使用して、例えば、細胞を死滅させることによって光生成を阻害する化合物についてアッセイし得る。
【0165】
あるいは、形質転換された細胞はまた、この細胞が、被験体中で均一に分布され、そして、特定の条件下(例えば、ウイルスによる感染またはサイトカインによる刺激の場合)のみ光生成融合タンパク質を発現するように投与され得る。これらの刺激または他の刺激に関連する因子に応答するプロモーターは、当該分野で公知である。関連した局面において、誘導型プロモーター(例えば、Tetシステム)を使用して、光生成タンパク質の発現を一過的に活性化し得る。
【0166】
例えば、CD4+リンパ細胞は、tat応答性HIV LTRエレメントを含む構築物で形質転換され得、そして、HIVによる感染についてのアッセイとして使用され得る。このような構築物で形質転換された細胞は、SCID−huマウスに導入され得、そして、ヒトHIV感染およびAIDSについてのモデルとして使用され得る。
【0167】
光生成融合タンパク質を発現するように、例えば、構成的に活性なプロモーターで形質転換された腫瘍細胞株を使用して、腫瘍の増殖および転移をモニターし得る。形質転換された腫瘍細胞は、動物モデルに注射され得、そして、腫瘍塊の形成が可能となり得、そして、腫瘍塊のサイズおよび転移が、推定される増殖インヒビターまたは転移インヒビターでの処置の間、モニターされ得る。腫瘍細胞はまた、調節可能なプロモーターを含む構築物で形質転換された細胞から生成され得、このプロモーターの活性は、様々な感染因子または治療的化合物に対して感受性である。
【0168】
(細胞形質転換) 原核生物細胞および真核生物細胞の両方についての形質転換法は、当該分野で周知である。適切な調節エレメントおよび複数のクローニング部位を含むベクターが、広く市販されている(例えば、Stratagene,La Jolla,Calif.またはClontech,Palo Alto,Calif.)。
【0169】
別の局面において、本発明は、光生成融合タンパク質またはタンパク質の複合体をコードする異種遺伝子構築物を含む、トランスジェニック動物を含む。この構築物は、選択されたプロモーターによって促進され、そして、例えば、光生成タンパク質の機能的発現に必要な種々のアクセサリータンパク質、ならびに選択マーカーおよびエンハンサーエレメントを含み得る。
【0170】
このプロモーターの活性化は、光生成融合タンパク質およびアクセサリータンパク質をコードする遺伝子の増大した発現を生じる。このプロモーターの活性化は、選択された成体適合性要素か、またはこの要素の一部とプロモーターエレメントとの相互作用によって、達成される。この活性化が、動物の一部においてのみ生じる場合、その一部における細胞のみが、光生成タンパク質を発現する。
【0171】
光生成融合タンパク質は、代表的には、任意の種々の方法によって被験体に投与され、被験体内の局在下および画像化を可能にする。被験体からの光子発光の画像化または測定は、数十分持続し得るので、この被験体は、画像化プロセスの間、望ましく固定化される。光生成ポリヌクレオチド部分の画像化は、例えば、極度に低レベルの光(代表的には単
一の光子事象)を検出し得、そして、画像が構成されるまで光子発光を組込み得る光検出器の使用を含む。このような感応性の光検出器の例としては、単一光子事象がカメラによって検出される前に、この事象を増強するデバイス、および検出系に固有のバックグラウンドノイズを超えて単一光子を検出し得るカメラ(例えば、液体窒素で冷却される)が挙げられる。
【0172】
一旦、光子発光画像が生成されると、発光された光子の供給源についての参考のフレームを提供するために(すなわち、被験体に関して、光生成融合タンパク質を局在化するため)、この画像は、代表的には、被験体の「正常」に反映された光画像上に上書きされる。次いで、このような「複合」画像を分析し、被験体中の標的の位置および/または量を決定する。
【0173】
被験体中の意図される部位に局在化された光生成融合タンパク質は、多数の方法で画像化される。このような画像化のための指針、ならびに特定の実施例が、以下に記載される。
【0174】
(光生成融合タンパク質の局在化) 「標的化」結合体(すなわち、標的部分を含む結合体−−特定の部位にて被験体または動物内にこの結合体を局在化させるように設計された、分子または形態)の場合、局在化は、被験体内の結合された「局在化」要素と、非結合の「遊離」要素との間の平衡が本質的に達成された時の状態をいう。このような平衡が達成される速度は、投与の経路に依存する。例えば、血栓を局在化するために静脈内注射によって投与された結合体は、注射の数分以内で、局在化、または血栓での蓄積を達成し得る。一方、調内での感染を局在化するために経口的に投与された結合体は、局在化を達成するために数時間かかり得る。
【0175】
あるいは、局在化は、単に、実体が投与された後の選択された期間での、被験体または動物内でのこの要素の位置をいう。関連する局面において、例えば、光生成部分を発現する注射された腫瘍細胞の局在化は、動物内の部位をコロニー化し、そして、腫瘍塊を形成する細胞からなり得る。
【0176】
別の実施例の目的で、局在化は、投与後に分散型となる場合に達成される。例えば、被験体または動物の全体にわたる種々の器官において酸素濃度を測定するために投与された結合体の場合、この結合体が、本質的に、被験体または動物において分散の定常状態に達した場合、「局在型」または情報を与える状態となる。
【0177】
上記の場合の全てにおいて、局在化を達成する時間の合理的見積もりは、当業者によって作製され得る。さらに、時間の関数としての局在化状態は、本発明の方法に従う光発光結合体の画像化によって理解され得る。
【0178】
使用される「光検出器デバイス」は、適切な期間で、哺乳動物内からのかすかな光の画像化を可能にし、そして、このようなデバイスからのシグナルを使用して画像を構築するのに十分高い感応性を有するべきである。
【0179】
非常に明るい光生成部分を使用すること、および/または画像化される被験体または動物の表面付近に局在する光生成融合タンパク質を検出することが可能な場合、一対の「暗視」ゴーグル、または標準的光感応性ビデオカメラ(例えば、Silicon Intensified Tube(SIT)camera(例えば、Hammamatsu Photonic Systems,Bridgewater,N.J.))が使用され得る。しかし、さらに代表的には、光検出のより感応的な方法が必要とされる。
【0180】
極度に低い光レベルにおいて、単位領域あたりの光子流束は、非常に低くなるので、画像化されるシーンは、もはや連続しそうにない。代わりに、この光子流束は、時間的におよび空間的に互いに離れている個々の光子によって表せられる。モニターを見ると、このような画像は、光の閃輝点として現われ、それぞれが、単一の検出された光子を表す。長期にわたりデジタル画像処理装置にこれらの検出された光子を蓄積することによって、画像は、取得され得、そして、構築され得る。各画像点での信号が、強度値を割り当てられる通常のカメラとは対照的に、光子計数画像化において、信号の振幅は、有意性を有さない。目的は、信号(光子)の存在を単に検出すること、および長期にわたってその位置に関する信号の出現を計測することである。
【0181】
以下に記載する光検出器デバイスの少なくとも2つの型は、個々に光子を検出し得、そして、画像処理装置によって分析され得る信号を生成する。ノイズを減少した光検出デバイス(Reduced−Noise Photodetection Device)は、光子シグナルを増幅することとは対照的に、光子検出器中のバックグラウンドノイズを減少させることにより、感応性を達成する。ノイズは、検出器アレイを冷却することにより、主に減少される。このデバイスは、電荷結合素子(CCD)カメラを含み、これは、「裏薄化(backthinned)」され、冷却されたCCDカメラとしていわれる。より感応性のある装置において、冷却工程は、例えば、液体窒素を使用して達成され、このことは、CCDアレイの温度を、約−120℃の状態にする。「裏薄化」は、光子が検出されるために進む路程を減少させ、その結果、量子効率を増大させる超薄層裏当て板をいう。特定の感応性裏薄化低温CCDカメラは、「TECH512」であり、これは、Photometrics,Ltdより入手可能な一連の200カメラである(Tucson,Ariz)。
【0182】
「光子増幅デバイス」は、光子が検出スクリーンに衝突する前に光子を増幅する。このクラスは、増強装置(例えば、マイクロチャネル増強装置)を備えるCCDカメラを含む。マイクロチャネル増強装置は、代表的に、カメラの検出スクリーンに垂直で、かつ同じ広がりを持つ金属アレイのチャネルを備える。このアレイのチャネルに入る光子の大半は、抜け出る前に、チャネルの側面に接触する。アレイにわたって印加される電圧は、各光子の衝突から多くの電子の放出を生じる。このような衝突からの電子は、「ショットガン」パターン中のそれらのチャネルの起点から抜け出て、そして、カメラによって検出される。
【0183】
増感マイクロチャネルアレイを直列に配置することによってなおさら高い感応性を達成し得、その結果、第1の段階で生成された電子は、再度、第2の段階で増幅された電子の信号を生じる。しかし、感応性の増加は、空間的分解を代償にして達成され、このことは、増幅のさらなる各段階で減少される。例示的なマイクロチャネル増強装置に基づく単一光子検出デバイスは、C2400シリーズであり、Hamamatsuから入手可能である。
【0184】
画像処理装置は、例えば、モニターに表示され得るか、またはビデオプリンターにプリントされ得る画像を構築するために、光子を計測する光検出器デバイスによって生成される信号を加工する。このような画像処理装置は、代表的には、上記された感応性光子計測カメラを備えるシステムの一部として販売され、従って、同一の供給源から入手可能である。画像処理装置は、通常、パソコン(例えば、IBMに互換性のあるPCまたはApple Macintosh(Apple Computer,Cupertino,Calif.))に接続され、このパソコンは、購入された画像システムの一部として備えられても備えられなくてもよい。一旦、画像がデジタルファイルの形式になると、それらは、種々の画像加工プログラム(例えば、「ADOBE PHOTOSHOP」,Adobe Systems,Adobe Systems,Mt.View,Calif.)に
よって操作され得、そして、プリントされ得る。
【0185】
このデバイスの検出領域は、光子発光の一貫した測定が取得され得る領域として規定される。光学レンズを使用するカメラの場合、検出領域は、単に、レンズによってカメラに一致された視野である。同様に、光検出器デバイスが、一対の「暗視」ゴーグルである場合、検出領域は、このゴーグルの視野である。
【0186】
あるいは、検出領域は、密接に充填されたアレイに整列される光ファイバーケーブルの末端によって規定される表面であり得る。このアレイは、ケーブル間の空間とは対照的に、このケーブルの末端によって覆われる領域を最大にするように構築され、そして、被験体に近接に配置される。例えば、プレキシガラスのように透明な材料は、被験体に隣接して配置され得、そして、アレイは、被験体とは反対の透明な材料に隣接して固定され得る。
【0187】
このアレイの反対側の光ファイバーケーブル末端は、検出デバイスまたは増感デバイス(例えば、マイクロチャネル増強装置の入力末端)に直接的に接続され、このことは、レンズに対する必要性を排除する。この方法の利点は、光子の散乱および/または損失を、被験体と検出器との間の巨大な空間の一部を排除することによって、および/またはレンズを排除することによって、削減する。なおさらに高い伝達レンズは、前方のレンズ要素に達するわずかな光のみを伝達する。
【0188】
より高い強度のLGPと共に、光ダイオードアレイは、光子発光を測定するために使用され得る。光ダイオードアレイは、比較的柔軟なシートに組込まれ、これによって、開業医は、被験体の周りのアレイを部分的に「包む」ことが可能なる。このアプローチはまた、光子の損失を最小にし、さらに、生物発光の三次元画像を取得する手段を提供する。他のアプローチは、三次元画像を生成するために使用され得、被験体のまわりに配置される複数の検出器、または走査型検出器を含む。
【0189】
動物または被験体の全体が、光検出デバイスの検出領域に必ずしも必要ではないということは理解される。例えば、被験体の特定の領域に局在化することが知られている光発光結合体を測定する場合、その領域からの光および十分な周囲の「暗い」帯域のみが、所望の情報を取得するために、測定される必要がある。
【0190】

(被験体の固定化) 被験体の二次元画像または三次元画像を生成することが所望される場合において、光子放出が測定されている期間、光検出デバイスの検出場内に固定化され得る。シグナルが、十分に明るい場合、画像は、約20ミリ秒未満に測定された光子放出から構築され得、そしてこの被験体は、特に振動されず、この被験体が、測定期間の開始時に検出デバイスの場にあることを保証すること以外は、特別な固定化の予防策(precaution)を必要としなくてもよい。
【0191】
他方、光子放出測定が、約20ミリ秒よりも長くかかり、そして被験体が、振動される場合、この被験体の攪拌の程度と釣り合った、光子放出測定の間の被験体の固定化を保証する予防策は、構築された画像における空間情報を保存するために考慮される必要がある。例えば、被験体が、ヒトであり、そして光子放出測定時間が、数秒のオーダーである場合、この被験体は、光子放出測定(画像化)の間、単にできる限り静止したままであることを要求され得る。他方、被験体が、動物(例えば、マウス)である場合、この被験体は、例えば、麻酔または機械的拘束デバイスを使用して固定化され得る。
【0192】
被験体または動物から放出される光の総量のみを測定することが所望される場合におい
て、被験体は、長期間にわたる光子放出測定であっても必ずしも固定化される必要がない。必要なことは、被験体が、画像化の間、光検出器の検出場に拘束されることだけである。しかし、このような測定の間、被験体を固定化することが、得られる結果の一貫性を改善し得ることが予期される。なぜなら、検出される光子が通過する組織の厚さは、動物間でより均一であるからである。
【0193】
(画像化の間のさらなる考慮) 蛍光発光部分の可視化は、励起光源、および光検出器を必要とする。さらに、励起光源は、発光部分からの光子放出を測定する間、点灯されることが理解される。
【0194】
適切な、フルオロフォアの選択、光源の配置ならびにフィルターの選択および配置(これら全てが有益な画像の構築を容易にする)は、蛍光発光部分に関する節において上記される。
【0195】
(高分解能画像化) 組織による光子散乱は、総光子放出の測定を介してLGMを画像化することによって得られ得る分解能を制限する。本発明はまた、LGMの発光が、被験体内の選択された点に集束され得るが、組織において有意に散乱せず、高分解能画像の構築を可能にする外部源に同期化される実施形態を含むことが理解される。例えば、集束した超音波シグナルは、画像化される被験体を三次元で走査するために使用され得る。超音波の焦点にある領域からの発光は、超音波によって光に与えられる特徴的な振動によって他の光子放出から分離され得る。
【0196】
(光子放出画像の構築) 例外的に明るい発光部分および/または被験体の表面近傍の発光融合タンパク質の局在化に起因して、一対の「暗所視」ゴーグルまたは高感度ビデオカメラを、画像を得るために使用した場合、この画像は、ビデオモニター上で単に眺められ得るかまたは表示され得る。所望される場合、ビデオカメラからのシグナルは、画像処理装置を介して転送され得、この画像処理装置は、メモリ中に個々のビデオフレームを分析もしくは印刷のために保存し得、そして/またはコンピュータ上での分析および印刷のためにこの画像をデジタル化し得る。
【0197】
あるいは、光子計数アプローチが使用される場合、光子放出の測定は、画像処理装置において、各ピクセル位置で検出された光子の数を表す数のアレイを生成する。これらの数は、代表的には、光子計数を規格化することによって(固定した、予め選択した値に対してかまたは任意のピクセルにおいて検出された最大数に対してかのいずれか)、そしてこの規格化した数を、モニター上に表示される輝度(グレースケール)かもしくは色(擬似色)に変換することによって、画像を作製するために使用される。擬似色表示において、代表的な色の割当は、以下のとおりである。ゼロの光子計数でピクセルは、黒に、低い計数は、青に、そして最高の光子計数値に対する赤まで、計数が増加すると波長が増加した色に割り当てられる。モニター上の色の位置は、光子放出の分布、従って発光融合タンパク質の位置を表す。
【0198】
結合体に対する参照のフレームを提供するために、光子放出が測定された(固定化されたままの)被験体のグレースケール画像が、代表的に構築される。このような画像は、例えば、薄暗い室内照明中、画像化チャンバー、またはボックスへのドアを開放すること、および反射された光子(代表的には、光子放出を測定するためにかかる時間の画分(fraction)について)測定することによって、構築され得る。このグレースケール画像は、光子放出測定の前または後のいずれかに構築され得る。光子放出の画像は、代表的には、グレイスケール画像上に重ね合わされて、被験体に関する光子放出の合成画像を生成する。
【0199】
例えば、選択された生体適合性部分の分布および/または局在化に対する処置の効果を記録するために、経時的に、局在化および/または光放出結合体からのシグナルを追跡することが所望される場合、光子放出の測定、または画像化は、一連の画像を構築するために選択された時間間隔で繰り返され得る。この間隔は、数分ほどの短さか、または数日もしくは数週間の長さであり得る。
【0200】
(光子放出画像の分析) 本発明の方法によって、そして/または組成物を使用して作製された画像は、種々の方法によって分析され得る。これらは、単純な視覚的試験から、精神的評価、および/またはハードコピーの印刷、洗練されたデジタル画像分析までにわたる。分析から得られた情報の解釈は、観察下の現象および使用されている要素に依存する。
【0201】
(適用:腫瘍細胞の局在化)
被験体における腫瘍の増殖および転移性広がり(spread)は、本発明の方法および組成物を使用してモニタリングされ得る。特に、個体が、原発腫瘍で診断される場合において、腫瘍細胞に対して指向したLGPは、腫瘍の境界を規定するため、ならびに原発腫瘍塊由来の細胞が、遠位部位に移動および転移増殖をしたか否かを決定するための両方に使用され得る。例えば、LGP(例えば、腫瘍抗原に対して指向され、そしてLGPとともにロードされた抗体を含むリポソーム)は、被験体に投与され得、被験体中の腫瘍細胞への結合を可能にされ、画像化され、そして光子放出の領域は、腫瘍細胞の領域と関連付けられ得る。
【0202】
関連した局面において、腫瘍が局在しているLGPを利用する画像(上記されるようなもの)は、選択された時間間隔で作製されて、被験体における経時的な腫瘍の増殖、進行および転移をモニタリングし得る。このようなモニタリングは、抗腫瘍治療の結果を記録するため、または腫瘍の増殖もしくは転移を阻害するのに有用な推定上の治療化合物のスクリーニングの一部として有用であり得る。
【0203】
本発明の実施において、組織および発光融合タンパク質は、インビトロで接触され得、例えば、ここで、1つ以上の生物学的サンプル(例えば、血液、血清、細胞、組織)が、組織の生存度を維持するために当業者に公知の組織培養条件下で基板上に配列され、次いで、この融合タンパク質が、組織培養物へ添加される。本発明の方法の好ましい実施形態において、組織は、哺乳動物組織、特にヒト組織である。
【0204】
本発明の方法はまた、インビボで実施され得、ここで、生物学的サンプルおよび発光融合タンパク質は、この被験体中に存在する虚血性組織における融合タンパク質の検出を可能にする条件下で、虚血性組織を含むと推測される被験体に、融合タンパク質(または融合タンパク質をコードするベクター)を投与することによって接触される。従って、本発明はまた、予測的な医療の分野に関し、この分野では、診断アッセイ、予後アッセイ、薬理ゲノム学、および臨床試験のモニタリングを、予後(予測)目的のために使用して、それによって個体を予防的に処置する。従って、本発明の1つの局面は、生物学的サンプルにおける虚血性組織の存在を決定し、それによって個体が、疾患もしくは障害に罹患しているか否か、または低酸素状態に関連した障害を発生する危険に曝されているか否かを決定するための診断アッセイに関する。本発明はまた、個体が、虚血から生じる状態を発生する危険に曝されているか否かを決定するための予後(または予測)アッセイを提供する。
【0205】
ここで、図面を参照すると、図1Aは、本発明の異なる融合タンパク質の略図である。「T」は、融合タンパク質上の酵素標的部位を示し、「E」は、酵素を示し、「X」は、融合タンパク質上の改変部位を示し、そして「R」は、融合タンパク質のレポータードメ
インを示す。「E」による「X」での改変により、融合タンパク質が活性または不活性「オン/オフ」になる。図1Bは、1つの実施形態を示し、ここで、「T」および「X」は、別々のドメインであり、そして融合タンパク質上でシス(cis)にある。図1Cは、本発明の1つの実施形態を示し、ここで、融合タンパク質の「T」および「X」は、この融合タンパク質のドメイン内の対応である。図1Dは、本発明の1つの実施形態を示し、ここで、「T」は、「X」を含む融合タンパク質に結合したタンパク質上にある。
【0206】
図2は、本発明の異なる融合タンパク質の略図である。図2Aは、本発明の融合タンパク質および結合タンパク質の略図であり、ここで、融合タンパク質および結合タンパク質「A」は、酵素の酵素標的部位に対応する、公知のホモ二量化またはヘテロ二量化ドメイン「HD」を含み、ここで、融合タンパク質上のHDへの酵素結合「A」の結合は、「X」での融合タンパク質の改変を生じる。図2Bは、本発明の1つの関連した局面であり、ここで、酵素標的部位「T」を含むタンパク質「A」の結合ドメインは、融合タンパク質の結合ドメイン「B」と相互作用し、この相互作用は、この融合タンパク質が、光を放出するかもしくはしないか、または放出されるべき光を生じるかもしくは生じないように、改変部位「X」で融合タンパク質「B」のレポータードメイン「R」を改変する酵素「E」を生じる。
【0207】
図3は、HIFの改変された形態に結合するpVHLを示す。(A)は、増加した量のデスフェロキサミン(desferoxamine)(2、10、100、1000μm)または塩化コバルト(2、10、100、1000μm)で処理し、そしてコントロール(レーン1)または抗HIF2α抗体とともに免疫沈降したpVHL欠損腎臓癌細胞を示す。結合したタンパク質を、精製したpVHL/エロンジン(elongin)B/エロンジンC(VBC)複合体とともに、抗HIF2aイムノブロット(IB)によってか、またはファーウエスタン(farwestern)(FW)分析によって検出した。(B)は、低酸素状態または酸素正常状態下、制限された温度で増殖したts20細胞のVBCファーウエスタンおよび抗HIF2αイムノブロット分析を示す。(CおよびD)は、酸素依存性分解ドメイン(ODD)を含み、E.coli中で産生され、グルタチオンSepharose上で回収され、そしてウサギ網状赤血球溶解物とともに30℃で90分間インキュベートされた、GST−HIF1α(530〜652)を示す。(D、レーン3)において、網状赤血球溶解物を、最初に20分間熱不活性化した。ストリンジェントな洗浄に続いて、GST−ODDタンパク質を、VBCファーウエスタンおよび抗GSTイムノブロット分析に供した。
【0208】
図4は、Leu562およびPro564が、インタクトである場合、HIF1α由来ペプチドに結合するpVHLを示す。(A)は、固定化された、GST−pVHL複合体、エロンジンB複合体、エロンジンC複合体への、示された35S−標識Gal4−HIF1α融合タンパク質の結合を示す。(B)は、残基561〜残基568の示された置換を有するビオチン化HIF1α(556〜575)ペプチドへの35S−標識pVHLの結合を示す。「+」は、pVHLの添加前のプログラムされていない網状赤血球溶解物とのペプチドのプレインキュベーションを示す。(CおよびD)は、抗HA抗体で免疫沈降されたか、または固定化GST−VBC複合体で捕捉された35S−標識野生型(WT)タンパク質、Pro564Ala全長HA−HIF1αタンパク質およびLeu562Ala全長HA−HIF1αタンパク質(パネルC)ならびにGal4−HA−HIF1α(530〜652)タンパク質(パネルD)を示す。WG=コムギ胚芽抽出物;Retic=ウサギ網状赤血球溶解物。
【0209】
図5は、Leu562およびPro564に関連したHIFのユビキチン化(ubiquitination)および分解を示す。(A)は、安定にトランスフェクトされて野生型pVHLを産生するpVHL欠損腎臓癌細胞から調製されるか、または空のベクター
を用いて調製された、S100抽出物の存在下での、35S−標識野生型、Leu562A、およびPro564A Gal4−HA−HIF1α(530〜652)のインビトロでのユビキチン化を示す。(B)は、ツメガエル(xenopus)卵抽出物における35S−標識野生型、Leu562Ala、およびPro564Alaのインビトロでの分解を示す。(C)は、デスフェロキサミンの非存在または存在下で、野生型またはP564A HA−HIF1αをコードするプラスミド(1.5μgまたは3.5μg)で過渡的にトランスフェクトされたCOS7細胞の抗HAイムノブロット分析である。
【0210】
図6は、pVHL−結合に関連したプロリンヒドロキシル化を示す。(A)は、ウサギ網状赤血球溶解物でのインキュベーションに続く、野生型ビオチン化HIF(556〜575)ペプチド、Pro564Alaビオチン化HIF(556〜575)ペプチド、およびLeu562Alaビオチン化HIF(556〜575)ペプチドのMALDI−TOF分析である。(B)は、ウサギ網状赤血球溶解物またはコムギ胚芽抽出物とともに3H−プロリン(Proline)の存在下、インビトロで翻訳され、そしてゲルバンド精製されたGal4−HA−HIF(555〜575)を示す。酸加水分解に続いて、プロリンおよびヒドロキシプロリンを、薄層クロマトグラフィーを用いて分離した。破線の円は、ニンヒドリン染色されたプロリンマーカーおよびヒドロキシプロリンマーカーの位置を示す。
【0211】
図7は、pVHLが、ヒドロキシル化プロリン564を含むHIF1αを特異的に認識することを例証する。(AおよびB)は、残基561〜残基568の示された置換を有するビオチン化HIF1α(556〜575)ペプチドへの35S−標識pVHLの結合を示す。(C)は、制限された温度(レーン1)または許容性の温度(レーン2〜6)で増殖し、そして抗HIF1α(レーン1および2)または抗HA抗体(レーン3〜7)で免疫沈降された、安定にトランスフェクトされてHA−pVHLを産生するts20細胞を示す。結合したタンパク質を、サンプル緩衝液(レーン1および2)を煮沸することによってか、または示されたペプチドでの処理によって溶出し、次いで抗HIF1α抗体を用いてイムノブロットした。(D)は、安定にトランスフェクトされて野生型pVHL(WT8)を産生するか、または35Sメチオニンで代謝的に標識された空のベクター(RC3)で安定にトランスフェクトされ、溶解され、そして残基564の示された置換を有する固定化されたビオチン化HIF1α(556〜575)ペプチドとともにインキュベートしたpVHL欠損腎臓癌細胞を示す。特異的に結合したタンパク質を、オートラジオグラフィーによって検出した。
【0212】
図8は、TETr−サイクリンAおよびTETr−サイクリンEの産生を例証する。(A)は、TETr−サイクリン融合タンパク質の略図である。(B)は、TETr−サイクリンAおよびTETr−サイクリンEの産生を示す。示されたサイクリンAタンパク質またはサイクリンEタンパク質を産生するようにトランスフェクトされた細胞を、溶解し、そして示された抗体と共にイムノブロット(IB)した。(C)は、SAOS−2細胞におけるTETr−サイクリンAおよびTETr−サイクリンEによるpRBのリン酸化を示す。示されたサイクリンと共にHAタグ化pRBを産生するようにトランスフェクトされたpRB欠損SAOS−2細胞を、溶解し、そして抗HA抗体を用いてイムノブロットした。G1期およびS期におけるトランスフェクトされた細胞の%を、蛍光細胞分析分離装置(FACS)によって決定した。
【0213】
図9は、差示的に転写に影響するDNA結合サイクリンAおよびDNA結合サイクリンEを示す。(A)は、TATAボックスを含む最小限のCMVプロモーターの上流の7つのTETracyclineオペレーター配列(TETo)を含むレポータープラスミド(pUHC13−3)の略図である。(B、C)は、pUHC13−3レポータープラスミドと共に示されたTETr融合タンパク質をコードするプラスミドおよびβ−ガラクト
シダーゼをコードするプラスミドを用いて同時トランスフェクトされたU2OS細胞を示す。グラフの下部に示される番号は、TETrプラスミドの量(μg)を示す。β−ガラクトシダーゼについて規格化された48時間後のルシフェラーゼ活性を、決定した。リプレッション倍数(fold repression)は、示されたTETr融合タンパク質について補正されたルシフェラーゼの値によって割った、TETr単独について補正されたルシフェラーゼの値である。活性化倍数(fold activation)は、TETr単独について補正されたルシフェラーゼの値によって割った、示されたTETr融合タンパク質について補正されたルシフェラーゼの値を表す。
【0214】
図10は、DNA結合に依存したサイクリンAおよびサイクリンEによる転写調節を例証する。(A)は、pUHC13−3レポータープラスミドおよびβ−ガラクトシダーゼをコードするプラスミドと共に示されたTETr融合タンパク質をコードするプラスミドを用いて同時トランスフェクトしたU2OS細胞を示す。24時間後、ドキシサイクリンを、2μg/mlの最終濃度まで添加し、ここで、「+」によって示した。24時間後、β−ガラクトシダーゼ活性について補正したルシフェラーゼ活性を決定し、そしてTETr単独を産生する細胞に対するリプレッション倍数または活性化倍数として表現した。(B)は、pUHC13−3レポータープラスミドおよびβ−ガラクトシダーゼをコードするプラスミドと共に示されたサイクリンをコードするプラスミドを用いて同時トランスフェクトしたU2OS細胞を示す。リプレッション倍数および活性化倍数を、(A)におけるように決定した。(C)は、示された番号のTETo結合部位を含む最小限のHSV−TKプロモーターレポータープラスミドおよびβ−ガラクトシダーゼをコードするプラスミドと共に、TETrまたはTETr−サイクリンEをコードするプラスミドと同時トランスフェクトしたU2OS細胞を示す。ドキシサイクリンを、(A)におけるように添加した。
【0215】
図11は、サイクリンボックスが、DNA結合サイクリンAによって転写抑制のために要求されることを例証する。(A)U2OS細胞を、pUHC13−3レポータープラスミドおよびβ−ガラクトシダーゼをコードするプラスミドと共に示されたTETr−サイクリンA改変体をコードするプラスミドを用いて同時トランスフェクトした。細胞抽出物を調製し、そしてβ−ガラクトシダーゼ活性について補正したルシフェラーゼ活性を、TETr単独を産生する細胞に対するリプレッション倍数(抑制(倍))として表現した。(B)示されたTETr−サイクリンA改変体を、35S−メチオニンの存在下でインビトロで翻訳し、そしてGST−cdk2およびグルタチオンセファロース(Sepharose)とともにインキュベートした。特異的に結合したタンパク質を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、そしてオートラジオグラフィーによって検出した。並行して、20%のインプットタンパク質を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、そしてオートラジオグラフィーによって検出した。(C)示されたTETr−サイクリンA改変体とともにHAタグ化pRB単独を産生するようにトランスフェクトされたpRB欠損SAOS−2細胞を溶解し、そして抗HA抗体を用いてイムノブロットした。
【0216】
図12は、cdk2に結合し、そして基質と相互作用するその能力に関連したサイクリンEによる転写活性化を示す。(A)U2OS細胞を、pUHC13−3レポータープラスミドおよびβ−ガラクトシダーゼをコードするプラスミドと共に示されたTETr−サイクリンE改変体をコードするプラスミドを用いて同時トランスフェクトした。細胞抽出物を調製し、そしてβ−ガラクトシダーゼについて補正したルシフェラーゼ活性を、TETr単独を産生する細胞に対する活性化倍数として表現した。(B)示されたTETr−サイクリンE改変体を、35S−メチオニンの存在下、インビトロで翻訳し、そしてGST−cdk2およびグルタチオンセファロースとインキュベートした。特異的に結合したタンパク質を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、そしてオート
ラジオグラフィーによって検出した。並行して、20%のインプットタンパク質を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、そしてオートラジオグラフィーによって検出した。(C)示されたTETr−サイクリンE改変体と共にHA−タグ化pRBを産生するようにトランスフェクトしたpRB欠損SAOS−2細胞を溶解し、そして抗HA抗体を用いてイムノブロットした。
【0217】
図13は、cdk2触媒活性依存性DNA結合サイクリンEによる転写活性化を示す。(A、B)U2OS細胞を、TETr−サイクリンAまたはTETr−サイクリンEをコードするプラスミドおよび、示された場合、cdk2のドミナントネガティブ(dn)形態をコードする漸増量のプラスミドを用いて、一時的に同時トランスフェクトした。細胞抽出物を調製し、βガラクトシダーゼ活性に対して補正されたルシフェラーゼ活性を決定した。補正されたルシフェラーゼ値を、TETr単独と比較して、抑制の倍数(A)または活性化の倍数(B)として示した。(C)U2OS細胞を、TETr−cdk2またはTETr−cdk2(N132A)をコードするプラスミド、およびサイクリンAまたはサイクリンEのいずれかをコードするプラスミドを用いて、一時的にトランスフェクトした。細胞抽出物を調製し、βガラクトシダーゼ活性に対して補正されたルシフェラーゼ活性を決定した。補正されたルシフェラーゼ値を、TETr単独と比較して、活性化の倍数として示した。
【0218】
図14は、内因性サイクリンEおよびサイクリンAにおける細胞周期依存性変化によって媒介される転写の効果を示す。(A、B)7つのTETo部位を含むルシフェラーゼレポータープラスミド(pUHC13−3)およびTETr−cdk2をコードするプラスミドを用いて安定にトランスフェクトされる3T3細胞を、72時間血清欠乏させ、そしてその後、それらの細胞に血清を再供給した。その後、種々の時点で細胞のアリコートを取り出し、そのアリコートを、示された抗体を用いた免疫ブロット分析のために溶解するかまたはヨウ化プロピジウム染色とそれに続く蛍光活性化細胞分類(FACS)によってDNA含量について分析するかのいずれかを行った。(C)TETr−cdk2(黒四角)またはTETr−cdk2(N132A)(白四角)をコードするプラスミドの非存在下(白丸)または存在下での7つのTETo部位を含むルシフェラーゼレポータープラスミド(pUHC13−3)で安定にトランスフェクトされた3T3細胞を、72時間血清欠乏させ、次いで、ドキシサイクリン存在下または非存在下でそれらの細胞に血清を再供給した。その後、種々の時点でルシフェラーゼアッセイを、実施した。血清による一般的な効果を補正するために、ドキシサイクリン非存在下の各時点でのルシフェラーゼ値を、ドキシサイクリン存在下で得られたルシフェラーゼアッセイを引くことによって補正した。補正後、2つの細胞集団についてのルシフェラーゼ値を、時間0で得られた対応するルシフェラーゼ値に比べて示した。平行して、TETr−cdk2を産生する細胞を溶解し、抗サイクリンA抗体または抗サイクリンE抗体を用いて免疫沈降した。次いで、この免疫沈降物を使用して、インビトロでヒストンH1をリン酸化した。
【実施例】
【0219】
(実施例1.低酸素応答性ポリペプチドの特徴付け)
本発明の第1の実施形態(例えば、低酸素応答性LGPを使用すること)の効力を実証するために、pVHLとHIFの相互作用を試験した。pVHLを結合するのに十分なHIF1αポリペプチドが、本明細書中で開示される。pVHLは、酸素依存性分解ドメイン(ODD)と呼ばれるHIF1αの領域に直接結合する。pVHLは、ウサギ網状赤血球溶解物中に産生されるHIFを認識するが、コムギ胚芽溶解物中またはE.coli中に産生されるHIFは認識しない。さらに、コムギ胚芽由来HIFまたはE.coli由来HIFは、ヒト細胞抽出物、ウサギ細胞抽出物、またはxenopus細胞抽出物と37℃でプレインキュベーション後、pVHLに結合する。例えば、E.coli中で産生されたグルタチオンS−トランスフェラーゼ−ODD融合タンパク質は、ファーウェスタ
ン(farwestern)アッセイにおいてVBCによって認識されなかった(図3C)。しかし、これらのタンパク質は、ウサギ網状赤血球溶解物とのプレインキュベーション後、認識された。類似する結果が、種々の大きさのGST−ODD融合タンパク質を用いて得られ、この結果は、ファーウェスタンブロットシグナルが、VBCと網状赤血球由来タンパク質との偽の相互作用を示す可能性を排除した。VBCは、熱不活性化された網状赤血球溶解物とインキュベートされたGST−ODD融合タンパク質を認識しなかった(図3D)。HIF残基555〜575を含むGal4−HIF融合タンパク質は、固定されたGST−VHL、エロンギン(elongin)B、エロンギンC複合体に特異的に結合した(図4A)。35S−標識化タンパク質の転写/翻訳のインビトロでの共役を、製造業者の使用説明書に従って実施した(TNT,Promega)。また、HIF残基556〜575に対応するビオチン化ペプチドは、網状赤血球溶解物とのプレインキュベーション後、pVHLに結合した(図4B)。ペプチド結合研究について、1μgのビオチン化ペプチドは、30μlのモノマーアビジンセファロース(Pierce)に結合された。示された場合、ペプチドを、50μlのウサギ網状赤血球溶解物と30℃で90分間、プレインキュベーションした。次いで、セファロースを、NETN(20mM Tris pH8.0、100mM NaCl、1mM EDTA、0.5% non−idet P40)で3回洗浄し、そしてこのセファロースを、500μlのEBC中または500μlの35S−放射標識化細胞抽出物(サブコンフルエントの100mm皿からの細胞と等価)中に4μlの35S−HA−pVHLを含む結合反応において使用した。振盪しながら4℃で1時間のインキュベーションした後、このセファロースを、NETNで4回洗浄した。結合したタンパク質を、SDS含有サンプル緩衝液中で煮沸することによって溶出し、そして、オートラジオグラフィーで検出した。HIFのこの領域は、高度に保存された8マー(MLAPYIPM)を含み、この領域は、8つの連続したアラニンに変異される場合、細胞内でHIF安定化をもたらす。この領域のアラニンスキャンは、Leu562およびPro564がこのアッセイでpVHLに特異的に結合するために必須であることを示した(図4B)。対照的に、このペプチドの1つの潜在的なリン酸アクセプター(Tyr565)の変異は、Tyr565Phe変異がHIF安定性に影響しなかった以前の研究と一致して、pVHL結合に影響しなかった。さらに、上に記載されるアッセイでのpVHLのGST−ODDへの結合は、フォスファターゼ処理によって影響されなかった。
【0220】
pVHLのHIF1αへの結合は、HIF1αの残基Leu562またはPro564に決定的に依存する。重要なことには、全長HIF1αまたはGal4−ODD融合タンパク質の状況においてLeu562またはPro564のいずれかの変異によってまた、pVHL結合活性が喪失された(それぞれ、図4Cおよび図4D)。網状赤血球溶解物を用いて作製されたGal4−ODDは、コムギ胚芽抽出物を用いて作製されたGal4−ODDに比べて電気泳動的に異なるバンドを含んだ(図4D)。この電気泳動的に異なるタンパク質は、VBCに結合し、そしてLeu562AlaおよびPro564Ala転写産物中に検出されなかった。図4D中で2つの矢印を付されたバンドの等電点は、2次元ゲル電気泳動後同一で、これは推定される改変がタンパク質の電荷の変化に影響を与えないことを示す。
【0221】
結合後のpVHLによるHIF1αの改変もまた、HIF1αの残基Leu562またはPro564に決定的に依存する。示されたLeu562Ala変異またはPro564Ala変異を有するGal4−HIF融合タンパク質は、インビトロでのpVHL依存性ポリユビキチン化を、対応する野生型タンパク質と比較して減少した(図5A)。定量的に類似する結果を、対応する全長HIF1α種を用いて獲得したが、このアッセイは、Gal4−ODD融合タンパク質を用いる場合に比べてそれほど手間がかからなかった。同様に、HIF1αPro564AlaおよびHIF1αLeu562Alaは、xenopus抽出物を用いて実施されたインビトロ分解アッセイにおいて、野生型HIF1α
よりさらにより安定であった(図5B)。xenopus卵抽出物を、当該分野で周知のように作製し、そして使用まで凍結して保存した。分解反応は、8μlの卵抽出物、0.1μlの100mg/mlシクロへキサミド(cyclohexamide)、0.25μlのエネルギー再生ミックス(energy regeneration mix)、0.25μlのウシユビキチン、および0.4μlの35S−放射標識化HIFを含み、この反応は室温で実施された。示された時点で、1μlのアリコートを取り出し、サンプル緩衝液中に入れた。サンプルを、5〜15%勾配ゲル上で分離し、そしてオートラジオグラフィーで分析した。ビオチン化HIF(556〜575)ペプチドを、ウサギ網状赤血球溶解物と共にインキュベートし、洗浄し、遊離ビオチンを用いて溶出し、そして質量分光法によって分析した。1μgのHPLC精製したペプチドを、30μlのモノマーアビジンセファロースに結合し、そして室温で1時間、転倒混和しながら100μlのウサギ網状赤血球溶解物と共にインキュベートした。短時間の遠心分離の後、網状赤血球溶解物を除去し、新鮮な網状赤血球溶解物を加え、そしてこのサイクルを6回繰り返した。次いで、このセファロースをNETNで4回、PBSで1回洗浄した。この改変されたペプチドを、50μlの20mM酢酸アンモニウム[pH7.0]、2mMビオチン中に溶出した。これらの実験において、Met561およびMet568をアラニンに変換し、分析の間のメチオニン残基の擬似酸化を防止した。この二重アラニン置換は、対応する単一置換同様、pVHL結合に影響しなかった。ウサギ網状赤血球溶解物を用いたHIF(556〜575)ペプチドの処理によって、MALDI−TOFアッセイにおいて第2のピークが出現し、このことは、分子量16の増加を示す(図6A)。このピークは、網状赤血球溶解物を用いたインキュベーションの前は、検出可能ではなく、対応する網状赤血球処理Leu562Alaペプチドおよび網状赤血球処理Pro564Alaペプチドにおいても検出されなかった(図6A)。同じ装置を使用したポストソース(postsource)減衰分析は、Pro564での+16の付加を見出した。同様に、エレクトロスプレーイオントラップ質量分光法/質量分光法(MS/MS)分析は、Pro564での+16の付加と一致し、Leu562のそのような改変を除外した。最後に、網状赤血球処理HIF(556〜575)ペプチドのMS/MS分析によって、564位にヒドロキシプロリンを含むように合成されたHIF(556〜575)ペプチドを用いて得られたパターンと同一であるイオンのパターンが生成された。次に、Gal4−HIF(555〜575)を、ウサギ網状赤血球溶解物またはコムギ胚芽抽出物を使用して、インビトロで、H−プロリンの存在下で翻訳し、ゲルバンドを精製し、そして酸加水分解および薄層クロマトグラフィーにかけた。2mlのH−P標識化Gal4−HIF(555〜575)のインビトロ翻訳物を、50μgの抗HA抗体(12CA5,Roche)を用いて、免疫沈降し、12%SDS−ポリアクリルアミドゲル上で分離し、そしてPVDF膜に転写した。Gal4−HIF(555〜575)を、オートラジオグラフィーで可視化し、そしてPVDFの対応する領域を切り出し、105℃で3時間、100μlの10N
HCl中でのインキュベーションによって加水分解した。サンプルを、エバポレートして乾燥状態にし、10μgの非標識プロリンおよび4−OHプロリン(Sigma)を含む20μlのHO中に再懸濁し、第1の次元においてフェノール−蒸留水および第2の次元においてN−ブタノール−酢酸−水を使用した2次元薄層クロマトグラフィーによって分析した。ニンヒドリンを使用して標準物質を可視化した後、放射標識化プロリンを、オートラジオグラフィーによって検出した。ウサギ網状赤血球溶解物中に産生されるが、コムギ胚芽中には産生されないGal4−HIFは、ヒドロキシプロリンを含んだ(図6B)。
【0222】
pVHLは、プロリン水酸化決定基を特異的に認識する。564位にヒドロキシプロリンを含むHIF(556〜575)ペプチドは、網状赤血球溶解物を用いた前処理ありまたはなしでpVHLに結合した(図7A)。Leu562Alaペプチドの質量分析法分析によって、Leu562がHIF改変に必要であることが示された(図6A)。実際に、pVHLは、Leu562Ala置換を有しかつ残基564にヒドロキシプロリンを有
するHIF(556〜575)ペプチドに結合した(図7B)。このことは、Leu562の第1の役割がPro564のヒドロキシル化を可能にすることであることを示す。2つのアプローチを、ヒドロキシル化HIFペプチドが細胞由来のpVHL複合体と相互作用し得ることを示すために使用した。ts20細胞を、E1ユビキチン活性化酵素に温度感受性変異を保持するHAタグ化pVHLを作製するために遺伝子工学によって作り変えた。ts20細胞を、pIRES−HA−VHL、pIRES−HA−VHL(Y98H)、pIRES−Neo(Invitrogen)を用いてトランスフェクトし、そしてこれらの細胞を、1mg/mlのG418の存在下で選択した。個々のG418耐性コロニーを、クローニングシリンダー(cloning cylinder)を用いて単離し、それらのコロニーを増殖した。HA−VHLまたはHA−VHL(Y98H)を産生する細胞を、抗HA免疫ブロット分析によって同定した。HIFは、HA−pVHLと、限定温度(restrictive temperature)にて共免疫沈降した。この方法でpVHLに結合したHIFは、ヒドロキシル化HIF(556〜575)ペプチドによって溶出され得るが、非改変ペプチドによって溶出されない(図7C)。図7Cに示される試験について、ts20細胞を、限定温度または許容温度で14時間増殖し、90分間メチオニンを欠乏し、次いで、35S−met(500mCi/ml)を補充したメチオニンフリー培地中で90分間増殖した。細胞を、冷PBSで1度洗浄し、EBCで溶解し、そして抗HA(12CA5;Rocheまたは抗HIF1α(NB100−105);Novus)で免疫沈降した。NETNでの5回の洗浄後、結合タンパク質を、サンプル緩衝液中で煮沸することによってまたは7μgの指示されたペプチドを含む65μlのPBS中でインキュベーションすることによって溶出した。さらに、HIFは、HIF(556〜575)Pro564Alaペプチドによってもポリヒドロキシプロリンペプチドによっても溶出されなかった(図7C)。アフィニティークロマトグラフィーを、固定化ペプチドおよびHA−pVHLを産生する代謝的に標識された対応腎臓癌細胞(WT8)または産生しない代謝的に標識された対応腎臓癌細胞(RC3)を用いて実施した。786−Oサブクローンを、1時間欠乏させ、35S−met(500mCi/ml)を補充したメチオニンフリー培地中で3時間増殖し、1度氷冷PBSで洗浄し、そしてEBC中で溶解した。プロリンヒドロキシル化HIF(556〜575)ペプチドは、pVHLおよびpVHL結合タンパク質(エロンギンB、エロンギンC、およびCul2)の予想電気泳動移動度を有するタンパク質に、特異的に結合した(図7D)。この実験におけるpVHLの同一性を、ウェスタンブロット分析によって確認した。同様に、内因性pVHLのヒドロキシル化ペプチドへの結合を、293胎児腎臓細胞を使用して検出した。プロリン564がアラニンに転換されたHIF1α変異体は、細胞内で安定化され、そして低酸素症模倣デフェロキサミンに非感受性であった(図5C)。
【0223】
HIF1αタンパク質は、低酸素条件下で安定化され、罹患組織において(例えば、固形腫瘍、糖尿病性網膜障害または虚血性心臓組織において)、プロ新脈管形成因子を部分的に調節することによって、低酸素症を、予防、軽減および/または逆転するために機能する。HIF1α部分を含む光生成タンパク質はまた、低酸素症組織中で安定化される。pVHLユビキチン経路を介するHIF1αタンパク質またはHIF1α含有LGPの破壊は、プロリルヒドロキシラーゼがHIF1αタンパク質を改変し、その結果pVHLがHIF1αに結合しこれを改変する場合、例えば、酸素正常状態の間、生じる。この改変プロセスは、動的スイッチとして作用し、本発明の第1の実施形態のような、HIF1α含有光生成融合タンパク質の生物発光を調節する。HIF1α含有光生成融合タンパク質は、低酸素症組織(例えば、癌)をインサイチュで動的に画像化するために、そして低酸素症調節化合物をスクリーニングするためにまたはその効力を試験するために有用である。
【0224】
(実施例2)
以下の実施例は、低酸素症組織を画像化するための本発明の光生成融合タンパク質の効
力を示す。
【0225】
HIF1αの酸素依存性分解ドメイン(ODD)は、酸素存在下で、HIF1αを不安定化する。この領域は、pVHLによって認識される。pVHLは、ODD内に位置し、HIF1αの残基555〜575に対応する、ペプチド性決定基に直接、特異的に結合する。このペプチドの中心部において、保存されたプロリン残基(残基564)が存在し、酸素の存在下で、酵素的にヒドロキシル化される。この残基は、pVHLの結合についてのシグナルを提供する。要するに、酸素の存在下で、HIFペプチドは、ヒドロキシル化され、pVHLによって認識される。酸素の非存在下(低酸素症)において、この改変は生じず、pVHLはHIFに結合しない。
【0226】
(ODD−LUCプラスミドの構築)
第1のセットの実験において外来ペプチドをpVHL依存性タンパク質分解に対して標的化するために、小HIFペプチド(555〜575)がシスで機能する能力を、評価した。このために、アミノ酸555〜575(以下では、「ODD」)をコードするHIF
cDNAを、都合の良い制限部位を導入したオリゴヌクレオチドを用いて、PCR増幅し、消化し、そしてゲルバンドを精製した。次いで、このPCRフラグメントを、pGL3プラスミド(Promega)に含まれる、発光飛翔昆虫ルシフェラーゼcDNAの3’に、インフレームで、サブクローニングした。得られたルシフェラーゼ−ODDキメラのcDNAを、哺乳動物細胞でのインビトロ翻訳研究および発現研究を容易にするためにpcDNA3(Invitrogen)にサブクローニングした。同時に、野生型発光飛翔昆虫ルシフェラーゼをコードするpcDNA3プラスミドおよび野生型HIF1aをコードするpcDNA3プラスミドを、コントロールとして使用した。
【0227】
(ODD−ルシフェラーゼのVBC−GSTプルダウン)
ODD−ルシフェラーゼタンパク質がpVHLに結合し得るかどうかを決定するために、GST−VHL、エロンギンB、およびエロンギンC(「GST−VBC」)を、E.coli内で産生し、そしてグルタチオンセファロース上でトリマー複合体として回収した。以前の研究によって、pVHLがエロンギンBおよびエロンギンCの非存在下では、適切に折りたたまれないことが示された。HIF1α、ODD−ルシフェラーゼ、および野生型ルシフェラーゼを、35Sメチオニンの存在下で、ウサギ網状赤血球溶解物(RRL)またはコムギ胚芽抽出物(WG)を使用して、インビトロで翻訳した(図15)。インビトロ翻訳反応由来のアリコートを、グルタチオンセファロースに前もって結合した組換えVBC−GSTに加え、そして1時間インキュベートした。次いで、このセファロースを洗浄し、そして結合したタンパク質を、12% SDSポリアクリルアミドゲル上で分離した。次いで、このゲルを乾燥し、フィルムに露光した。pVHLは、網状赤血球産生HIF1αおよびODD−Lucに結合したが、Lucに結合しなかった(レーン4、8および12を比較のこと)。さらに、pVHLは、コムギ胚芽がHIFプロリルヒドロキシラーゼを欠損しているので、コムギ胚芽産生ODD−Lucに結合しなかった(レーン6および8を比較のこと)。従って、このデータは、ODD−LucがpVHLによって特異的に認識されたことを示す。
【0228】
(ペプチド競合アッセイ)
pVHLが、RRLによって産生されるODD−Lucに結合したが、WGによって産生されるODD−Lucには結合しなかったという観察によって、ODD−Lucは、HIFと同様に、pVHLによって認識されるために、プロリルヒドロキシル化を受ける必要があることを強く示唆された。このことをさらに研究するために、GST−VBC結合実験を、Pro564がヒドロキシル化された(P−OH)またはそれがヒドロキシル化されていない(P)合成HIF(555〜575)ペプチドの存在下で、繰り返した。GST−VBCを、漸増濃度(0〜5μg)のコントロール(P)ペプチドまたはP−OH
ペプチドのいずれかと混合した。次いで、次に、(血球分解物中の)インビトロで翻訳されたLuc、ODD−Luc、またはHIF1αを加え、このいずれかのタンパク質が、結合P−OHのいずれかと効率的に競合し、解離し得るかどうかを観察した。HIFおよびODD−Lucは、非常に高い濃度のP−OHでさえも、P−OHペプチドと効率的に競合し、解離し得た。従って、ODD−Lucを用いて得られた結果は、真性のHIFを用いて実施された、以前の結合の研究を再現した(図16)。
【0229】
(細胞中のルシフェラーゼ活性)
予備実験において、ODD−Lucのインビトロ翻訳物が、野生型ルシフェラーゼに匹敵するインビトロでのルシフェラーゼ活性を保持することが確認された。ODD−Lucが細胞内で酸素感受性であるかどうかを問い始めるために、一過性トランスフェクションアッセイを実施した。実験の第1のセットにおいて、100mmの組織培養プレートに、1プレート当たり8×10HeLa細胞を播種した。18時間後、この細胞を、Renillaルシフェラーゼをコードする内部コントロールプラスミドと一緒に、ODD−Lucまたは野生型LucをコードするpcDNA3プラスミドを用いて、リポフェクタミン(Gibco)を使用して、一過的にトランスフェクトした。トランスフェクション24時間後、この細胞を、6ウェルプレートに分割し、そして吸着させ、そして8〜12時間増殖した。ちょうどこの時、この低酸素症模倣デフェロキサミン(DFO)または塩化コバルト(CoCl2)を、2連のウェルにて、それぞれ最終濃度500mMおよび200mMで、培地に直接添加した。さらに、いくつかのウェルを、コントロールを提供するために、処理しなかった。DFOおよびCoCl2での処理の12時間後、この細胞を、Passive Lysis緩衝液(Promega)で溶解し、室温で20分間振盪し、製造業者の使用説明書に従って、発光飛翔昆虫ルシフェラーゼおよびRenillaルシフェラーゼについてアッセイした。結果を、2連のウェルで得、それを平均した(図17)。
【0230】
未処理の細胞において、ODD−Lucのルシフェラーゼの値は、野生型Lucで得られた値の約30%であった。HeLa細胞が野生型pVHLを有すること、およびこれらの実験が酸素存在下で増殖された細胞を使用してなされたことに注意のこと。低酸素擬症(hypoxia−mimetic)の追加は、ODD−Lucのルシフェラーゼ活性の著しい増加を導いたが、一方でこのような誘導は、野生型ルシフェラーゼでは全く検出されなかった。ODD−ルシフェラーゼの誘導されたレベルは、野生型ルシフェラーゼで得られたレベルと同等であった。これらの結果は、ODD−Lucが細胞内でpVHL依存的なタンパク質分解を受けやすいが、一方で野生型Lucはそうではないという考えに一致する。
【0231】
(ヌードマウスにおける異種移植片腫瘍中のODD−Lucの画像化)
哺乳動物系において、ODD−Luc遺伝子が実際に低酸素または低酸素擬症によって調節されることを確認するために、以下の実験を行った。皮下に腫瘍を移植する容易さ、そしてその腫瘍が増殖および血管新生する能力を考慮すると、皮下レベルで腫瘍のルシフェラーゼ活性を画像化し、低酸素に対するODD−Lucの応答の評価する能力を、以下のように試験した。
【0232】
ODD−LucおよびLucで安定にトランスフェクションされたポリクローナルなHela細胞を作製した。これらのクローンをPBS中に懸濁してそして計数した。1注入部位につき10細胞を、ヌードマウス側腹部に二連で皮下投与した(図18)。触診可能な腫瘍の増殖の時点(約3〜4日)で、マウスに麻酔のためのフェノバルビタールの腹腔内注入を施し、体重で調整した用量のルシフェリンを注入して、そして体躯全体をXenogen Cameraを用いて画像化した。ルシフェラーゼ活性の差異が単なる腫瘍の大きさ単独の関数ではないことを確認するために、二次元腫瘍測定を行った。そしてそ
の二次元腫瘍測定は、ほぼ等価であった。
【0233】
図18は、ODD−Luc(右側)およびLuc(左側)を二連で注入された、3匹の異なるマウスを示す。ODD−Lucを注入した部位は、明らかにルシフェラーゼのシグナルを減少させた。このように、これらのデータは、ルシフェラーゼ活性の実際の減少(間接的にODD−Lucのユビキチン化および分解)を示す。
【0234】
(実施例3.DNA結合部位を含む光生成融合タンパク質)
本発明の第2の実施形態(インビボ、インビトロまたはインシリコ(in silico)で遺伝子転写を動態学的にモニターするための、核酸と相互作用し得るLGP)の有効性を実証するために、転写の際のサイクリンの影響を試験した。転写の誘導または抑制のいずれかをモニターすることは有用であるので、転写に対して特異的な影響を有するサイクリンを調査した。
【0235】
DNA結合モチーフのサイクリンとの融合は、サイクリンのcdkへの結合も、サイクリン/cdk複合体のキナーゼ活性も変化させなかった。Gly−Serの繰り返しからなる柔軟な介在リンカーを用いてサイクリンAまたはサイクリンEと融合したTETリプレッサーDNA結合ドメイン(TETr)(GossenおよびBujard、1992)からなる融合タンパク質をコードする、哺乳動物発現プラスミドを作製した(図8A)。哺乳動物細胞にトランスフェクトした後、これらのプラスミドの両方は、予想される大きさの安定なタンパク質を生じた(図8B)。TETr−サイクリンAおよびTETr−サイクリンEは、それらの融合していない対照物と同様に、cdk2と結合し(図11および図12)、そしてインビトロでp107をリン酸化し得た。さらに、TETr−サイクリンAおよびTETr−サイクリンEの両方が、pRB欠損腫瘍細胞に野生型pRBと同時導入した場合、pRBのリン酸化を促進し、そしてpRBに誘導されるG1/S期阻害を迂回させた(図8C)。
【0236】
サイクリンAおよびサイクリンEは、転写に劇的に影響する。U2OS細胞を、種々のTETr融合タンパク質をコードするプラスミド、およびCMVプロモーター由来のTATAボックスの上流の7つのTETo結合部位を含むルシフェラーゼレポータープラスミドで一過性にトランスフェクションした(図9A)。TETrはTETo部位に特異的に結合する。予想通り、TETr−RBはこのレポータープラスミドからの転写を抑制したが、一方でTETr−E2F1はこのレポーターを活性化した(図9B−C)。このレポータープラスミドで観察される基礎活性はおそらくは、潜在的なエンハンサー配列の存在を反映する。このアッセイおよび引き続くアッセイにおいて、TETrドメイン単独では本質的に不活性だった。驚くべきことに、TETr−サイクリンAおよびTETr−サイクリンEの両者は、このアッセイにおいて転写に劇的に影響し、そして正反対の方向に影響した。TETr−サイクリンAは転写を約80%転写を低下させ(1/5に抑制)、TETr−サイクリンEは転写を10倍に増加させた(図9B−C)。ドキシサイクリンは、TETrのTEToへの結合を妨げて、そしてTETr−サイクリンAおよびTETr−サイクリンEの転写効果を完全にブロックした(図10A)。予想通り、ドキシサイクリンもまた、TETr−RBおよびTETr−E2F1の転写効果をブロックした。これらは、並行して試験した。さらに、融合していないサイクリンAおよびサイクリンEは、TETo駆動性レポータープラスミドに対して全く影響を有さなかった(図10B)。CMV由来のTATAボックスを、最小のHSV TKプロモーターで置換した、1つ、2つ、3つまたは7つのTEToを含むレポーターを使用して、実験を繰り返した(GossenおよびBujard、1992)(図10C)。TETr−サイクリンEもまた、ドキシサイクリンが阻害可能な様式でこれらのレポーターを活性化した。HSV TKの系統のレポーターを用いて観察された活性の程度は、CMV−TATAベースのレポーターを用いた程度よりも低く、このことは、これらのレポーターおよびHSV VP16転
写活性化ドメインと融合されたTETrを用いて得られた以前の結果(GossenおよびBujard)と合致していた。これらのレポーターからの低い基礎レベル転写は、サイクリンAによる抑制分析を不可能とした。
【0237】
cdkに結合するサイクリンの特定のドメインは、サイクリン媒介性の転写調節に重要である。サイクリンAおよびサイクリンEの種々の同一線上(colinear)フラグメントと融合したTETrをコードするプラスミドを使用して、これら分子のどの領域が転写調節に必要されるかを決定した(図11および図12)。生じた全ての融合タンパク質を、一過性トランスフェクション実験において同等のレベルで発現させた。サイクリンA(1〜310)は、野生型サイクリンAと同様に、TETrと融合した場合に、転写を抑制した(図11A)。サイクリンAのこのフラグメントは、cdk2には結合せず(図11B)、そして細胞中に導入された場合、pRBのリン酸化を誘導し得ない(図11C)。逆に、測定可能な程度でcdk2と相互作用し(図11B)そしてpRBのリン酸化を誘導する(図11C)サイクリンAの点変異体(E220A)(Schulmanら、1998)は、これらのアッセイにおいて転写を抑制しなかった(図11A)。この変異は、サイクリンAのサイクリンボックスに位置する(図11A)。TETr−サイクリンAはまた、p107−/−;p130−/−のマウス繊維芽細胞において試験した場合、転写を抑制した。そしてサイクリンA(1−310)はp107にもp130にも結合しない。cdk2に結合し(図12B)そしてpRBのリン酸化を誘導し得る(図12C)サイクリンEの変異体のみを、転写アクチベーターとして記録した(図12A)。例えば、Schulmanら(1998)は、基質の結合およびcdk2とのアセンブリーに重要であるサイクリンAの残基を同定した。サイクリンEにおける類似な残基の変異は、変異体(サイクリンE L134A/Q174A)を生じ、この変異体は、同様にcdk2に結合できず(図12)そしてpRBをリン酸化できなかった(図12C)。この変異体は、転写を活性化しなかった(図12)。これらの結果に合致して、cdk2のドミナントネガティブ形態は、サイクリンEによる転写活性化をブロックした(図13B)が、サイクリンAによる転写抑制に対しては全く効果を有さなかった(図13A)。同様に、キナーゼドメインが完全である条件で、サイクリンEは、TETr−cdk2融合体と協働して転写を活性化したが、サイクリンAは活性化しなかった(図13C)。TETr−cdk2とキナーゼ欠損TETr−cdk2(N132A)との同等産生を、イムノブロットアッセイによって確認した。XenopusのサイクリンE(Jacksonら、1995)もまた、ヒトの対照物と同様に、これらのアッセイにおいて転写を活性化した(データは示さず)。サイクリンボックスに影響を与える点変異を有するxenopusのサイクリンE改変体が不活性であったので、この活性は特異的であった。
【0238】
本発明の第2の実施形態は、インビボでの転写の動態学的に画像化するために有用である。例えば、サイクリンEは、生理学的条件の下で転写を活性化し得る。3T3細胞を、TETr−cdk2コードするプラスミドと共に、またはこれを伴わずに、選択マーカーを含むプラスミドおよびTEToレポータープラスミドでトランスフェクトした。薬剤選択の後、安定なトランスフェクタントをポリクローナルなプールとして維持して、そして血清飢餓させて休眠期にした。血清を再供給した後の様々な時点で細胞溶解物を調製して、そしてイムノブロットアッセイ、インビトロキナーゼアッセイ、およびルシフェラーゼアッセイにおいて使用した(図14)。同時並行して、細胞のアリコートを、FACSによってDNA含有量について分析した。この系において、S期開始は血清添加後18〜20時間に始まった。予想通り、ルシフェラーゼ活性は、サイクリンEタンパク質レベルおよびサイクリンE関連キナーゼ活性の増加と同時発生的に、TETr−cdk2産生細胞において増加した(図14A〜C)。このような増加は、等価な量のTETr−cdk2(N132A)を産生する細胞、またはレポーターのみでトランスフェクションされた細胞においては観察されなかった(図14Cおよびデータは示さず)。これらの細胞中のTETr−cdk2の量が内在性cdk2の量よりも低かったことに注意すること(図14
B)。従って、これらの結果は、過剰発現の人工産物ではないようである。サイクリンEのレベルが低下して、そしてサイクリンAのレベルが上昇を開始したので、ルシフェラーゼの値は低下した。
【0239】
本発明の第2の実施形態は、サイクリン結合ドメインを含むLGPと、部分的に関係する。従って、これらのLGPは、細胞周期関連遺伝子(例えば、癌遺伝子および腫瘍抑制遺伝子)の転写において、変化を動態学的に定量するために有用である。サイクリン結合部分を含むLGPが、細胞増殖を受ける領域(例えば、腫瘍)に局在し得、そして細胞増殖媒介性化合物の有効性をスクリーニングして、そして決定するために使用され得る。
【0240】
(材料および方法)
(細胞株およびトランスフェクション)
U2OSヒト骨肉腫細胞を、10%の熱不活性化したfetalclone(Hyclone)(FC)、100単位/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシン、および2mM L−グルタミン(PSG)を補充したDulbecco’s modified Eagle培地(DMEM)中で増殖させた。SAOS−2ヒト骨肉腫細胞、およびNIH3T3マウス繊維芽細胞を、10%の熱不活性化したウシ胎仔血清(FBS)およびPSGを補充したDMEM中で増殖させた。pCMV−neoおよびpUHC13−3レポータープラスミド単独、またはpSG5−TETr−cdk2もしくはpSG5−TETr−cdk2(N132A)と共にトランスフェクションしたNIH3T3の安定なサブクローンを、0.7mg/mlのG418で維持した。記載されるように(ChenおよびOkayama、1987)、2×Bes緩衝化生理食塩水(2×BBS)/リン酸カルシウムを使用して、細胞をトランスフェクトした。示される場合、トランスフェクション後24時間に、ドキシサイクリン(Sigma)を終濃度2μg/mlまで添加した。細胞を、収集前にさらに24時間ドキシサイクリン中で維持した。
【0241】
(プラスミド)
pRcCMV−cdk2ドミナントネガティブ(van den HeuvelおよびHarlow、1993)を、Dr.Ed.Harlowから供与を受けて;pVL1393−cdk2(N132A)(Xuら、1994)を、Dr.Helen Piwnica−Wormsから供与を受けて;pCD19(TedderおよびIsaacs、1989)を、Dr.Thomas Tedderから供与を受けて、そしてpUHC13−3;ptet1−T81−luc、ptet2−T81−luc、ptet3−T81−lucおよびptet7−T81−luc(GossenおよびBujard、1992)を、Dr.Manfred Gossenから供与を受けた。pSG5−TETr−E2F1、pSG5−TETr−RB、pSG5−HA−RB(Sellers、1995)、pGEX−2TK−cdk2(Adamsら、1996)は、先に記載した。pSG5−TETr−cyclinAを作製するために、プロテインホスファターゼ1(PP1)cDNAを、最初に、オリゴ 5’−GCGCTGATCAGGCGGAGGCGGATCAGGAGGAGGAGGATCAGGCGGAGGAGGATCAGGATCCATGTCCGACAGCGAGAA−3’(配列番号7)および5’−GCGCGAATTCATTTCTTGGCTTTGGCAGA−3’(配列番号8)を用いてPCR増幅した。このPCR産物をBclIおよびEcoRIを用いて切断して、BamHIおよびEcoRIで切断したpSG5−TETrにサブクローニングして、pSG5−TETr−(Gly−Ser)−PP1)を作製した。サイクリンAのオープンリーディングフレーム(ORF)を、5’にBamHI部位を、そして3’にEcoRI部位を導入したプライマーを用いてPCR増幅して、そしてこれら2つの酵素で切断したpSP72(Promega)にサブクローニングして、pSP72−cyclinAを作製した。次いで、pSG5−TETr−(Gly−Ser)−PP1からのPP1「スタッファー」をBamHIおよびEcoRIで消化することにより切除して、そしてpSP72
−cyclinAからのサイクリンA cDNAインサートで置換した。pSG5−TETr−cyclinEを作製するために、pRcCMV−cyclinE中のサイクリンE ORFを、5’にBglII部位および3’にEcoRI部位を導入したプライマーを用いて、PCR増幅した。このPCR産物をこれら2つの酵素で切断して、pSG5−TETr−PP1のBamHI−EcoRI骨格にライゲーションした。同時並行して、これらの限定されたサイクリンAおよびサイクリンE PCR産物を、BamHIおよびEcoRIで切断したpSG5−HAにサブクローニングして、それぞれ、pSG5−HA−cyclinAおよびpSG5−HA−cyclinEを作製した。サイクリンAのN末端およびC末端の欠失変異体、ならびにサイクリンEのN末端およびC末端の欠失変異体をコードするプラスミドを、所望のコード領域を選択的に増幅するPCRプライマーを使用することによる、類似の様式で作製した。pSG5−TETr−cdk2およびpSG5−TETr−cdk2(N132A)を作製するために、それぞれpRcCMV−cdk2もしくはpVL1393−cdk2(N132A)中のcdk2 ORFを、5’にBamHI部位および3’にEcoRI部位を導入したプライマーを用いて、PCR増幅した。このPCR産物をこれら2つの酵素で消化して、pSG5−TETr−PP1のBamHI−EcoRI骨格にライゲーションした。全てのPCR反応をPfu DNAポリメラーゼを用いて実施して、そしてサイクリンA、サイクリンEまたはcdk2のオープンリーディングフレーム全体を含むプラスミドの確実性を、直接のDNA配列決定により確認した。pSG5−TETr−cyclinA(E220A)およびpSG5−TETr−cyclinE(L134A/Q174A)を、pSG5−TETr−cyclinAおよびpSG5−TETr−cyclinEをそれぞれテンプレートとして使用して、Transformer Site−Directed Mutagenesis
Kit(Clontech)を製造業者の指示書に従って使用して作製し、そしてDNA配列決定により確認した。
【0242】
(抗体およびイムノブロット分析)
モノクローナル抗TETrをClontechより購入して、そして抗HA(12CA5)をBoehringer Mannheimより購入した。ポリクローナル抗サイクリンA(SC−751)、モノクローナル抗サイクリンEおよびポリクローナル抗サイクリンE(SC−247,SC−481)、ならびにポリクローナル抗cdk2(SC−163)を、Santa Cruzより購入した。細胞抽出液を、EBC緩衝液(50mM
Tris[pH8],120mM NaCl,0.5% Nonidet P−40)中での溶解により作製した。イムノブロット分析のために、約100μgの細胞抽出液を1レーンあたりにロードした。ニトロセルロースフィルターを、一次抗体のインキュベーション前に、TBS−T(10mM Tris[pH8],0.05% Tween,150mM NaCl)中の4%粉ミルク/1%ヤギ血清において、室温で1時間ブロッキングした。抗HA(12CA5)を濃度1.0μg/mlで、抗TETr抗体を1:500希釈(v/v)で、抗サイクリンA(SC−751)を1:1,000希釈(v/v)で、抗サイクリンE(SC−247,SC−481)を1:1,000希釈(v/v)で、そして抗cdk2(SC−163)を1:1,000希釈(v/v)で使用した。TBS/Tで4回洗浄した後、結合した抗体を、アルカリホスファターゼ結合体化二次抗体を使用して検出した。
【0243】
(GSTプルダウンアッセイ)
グルタチオンS−トランスフェラーゼプルダウンアッセイを、基本的には以前に記載されたように(Kaelinら、1991)実施した。結合反応は、1mlのNETN(20mM Tris[pH8],100mM NaCl,1mM EDTA、0.05% Nonidet P−40)中に、TNTキット(Promega)を用いて作製された10μlの35S放射性標識されたインビトロ翻訳物、および約1μgの示されるGST融合タンパク質を含んだ。揺り動かしながら4℃で1時間インキュベートした後、このセ
ファロースをNETNで5回洗浄した。結合したタンパク質は、SDSを含むサンプル緩衝液中でボイルすることにより溶出させて、そしてSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離した。GST融合タンパク質の同等のローディングをクマシーブリリアントブルー染色により確認し、35S放射性標識されたタンパク質をフルオログラフィーにより検出した。
【0244】
(FACS/細胞周期分析)
蛍光活性化セルソーター(FACS)を、本質的には記載されるように(Qinら、1995)行った。簡潔に述べると、100mmディッシュで増殖したサブコンフルエントなSAOS−2細胞を、示されるサイクリンをコードするプラスミドと一緒に、2μgのpCD19および10μgのpSG5−HA−RBでトランスフェクションした。72時間後、トリプシン−EDTAを用いて細胞を収集して、FITC結合体化抗CD19抗体(CALTAG)およびヨウ化プロピジウムを用いて染色した。サンプルを、FACScan(Becton Dickinson)を用いて2色FACS(two−color
FACS)により分析した。細胞周期同調のために、細胞を、10%FBSで刺激する前に無血清DMEM中で72時間飢餓させた。
【0245】
(ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイ)
TETr融合物の転写アッセイのために、サブコンフルエントなU2OS細胞を、6ウェルプレート中で2つ組で、1μgのpCMV−μgal、1μgのpUHC13−3レポータープラスミド、およびTETr融合タンパク質をコードする3μgの示されるプラスミドで、一過性にトランスフェクションした。各反応混合物が、等量のpSG5−TETr骨格を含むように、十分な親のpSG5−TETrを添加した。トランスフェクション後48時間に、ルシフェラーゼ活性およびβ−ガラクトシダーゼ活性を、以前に記載されるように(Qin、1995)決定した。
【0246】
(インビトロキナーゼアッセイ)
500μgの細胞抽出物を、プロテインAセファロースおよび1μgの抗サイクリンE(SC−481)抗体または抗サイクリンA(SC−751)抗体と共に、最終容量0.5mlで、4℃で1時間インキュベートした。次いでセファロースをNETNで5回、そしてIPキナーゼ(IPK)緩衝液(50mM Tris−HCl[pH7.5],10mM MgCl,1mM DTT)で3回洗浄した。次いでセファロースを、2μlのヒストンH1(1mg/ml)および1μlの[γ−32P]ATP(6,000Ci/mmol、10mCi/ml)を添加した27μlのIPK緩衝液に再懸濁して、そして30℃で30分間インキュベートした。反応をレムリ(Laemmli)サンプル緩衝液の添加によって停止させ、ボイルし、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、そして、オートラジオグラフィーに供した。
【0247】
【数1】







(等価物)
当業者は、本明細書中に記載された特定の手順に対して多数の等価物を認識するか、または慣用的にすぎない実験を使用してそれらの等価物を確認し得る。このような等価物は、本発明の範囲内にあるとみなされ、そして添付の特許請求の範囲によ包含される。本出願全体に渡って引用された全ての参考文献、発行された特許および公開された特許出願は、本明細書により参考として援用される。それら特許、出願、およびの他の書類の、適切
な構成成分、プロセスおよび方法が、本発明およびその実施形態ために選択され得る。
【図面の簡単な説明】
【0248】
【図1】図1は、本発明の異なる融合タンパク質の概略図である。
【図2】図2は、本発明の異なる融合タンパク質の第2の概略図である。
【図3A】図3Aは、改変形態のHIFに対するpVHL結合を示す。
【図3B】図3Bは、改変形態のHIFに対するpVHL結合を示す。
【図3C】図3Cは、改変形態のHIFに対するpVHL結合を示す。
【図3D】図3Dは、改変形態のHIFに対するpVHL結合を示す。
【図4A】図4Aは、Leu562およびPro564がインタクトである場合の、HIF1α由来のペプチドに対するpVHL結合を示す。
【図4B】図4Bは、Leu562およびPro564がインタクトである場合の、HIF1α由来のペプチドに対するpVHL結合を示す。
【図4C】図4Cは、Leu562およびPro564がインタクトである場合の、HIF1α由来のペプチドに対するpVHL結合を示す。
【図4D】図4Dは、Leu562およびPro564がインタクトである場合の、HIF1α由来のペプチドに対するpVHL結合を示す。
【図5A】図5Aは、Leu562およびPro564に連結されたHIFのユビキチン化および分解を示す。
【図5B】図5Bは、Leu562およびPro564に連結されたHIFのユビキチン化および分解を示す。
【図5C】図5Cは、Leu562およびPro564に連結されたHIFのユビキチン化および分解を示す。
【図6A】図6Aは、pVHL結合に関連したプロリンヒドロキシル化を示す。
【図6B】図6Bは、pVHL結合に関連したプロリンヒドロキシル化を示す。
【図6C】図6Cは、pVHL結合に関連したプロリンヒドロキシル化を示す。
【図6D】図6Dは、pVHL結合に関連したプロリンヒドロキシル化を示す。
【図7A】図7Aは、pVHLがヒドロキシル化プロリン564を有するHIF1αを特異的に認識することを示す。
【図7B】図7Bは、pVHLがヒドロキシル化プロリン564を有するHIF1αを特異的に認識することを示す。
【図7C】図7Cは、pVHLがヒドロキシル化プロリン564を有するHIF1αを特異的に認識することを示す。
【図7D】図7Dは、pVHLがヒドロキシル化プロリン564を有するHIF1αを特異的に認識することを示す。
【図8】図8は、TETr−サイクリンAおよびTETr−サイクリンEの生成を示す。
【図9】図9は、転写に差次的に影響を与えるDNA結合サイクリンAおよびDNA結合サイクリンEを示す。
【図10】図10は、DNA結合に依存するサイクリンAおよびサイクリンEによる転写調節を示す。
【図11−1】図11は、サイクリンボックスが、DNA結合サイクリンAによる転写抑制に必要とされることを示す。
【図11−2】図11は、サイクリンボックスが、DNA結合サイクリンAによる転写抑制に必要とされることを示す。
【図12】図12は、サイクリンEによる転写活性化が、cdk2に結合し、そして基質と相互作用するその能力に関連することを示す。
【図13】図13は、DNA結合サイクリンEによる転写活性化がcdk2触媒活性に依存することを示す。
【図14】図14は、内因性サイクリンEおよび内因性サイクリンAにおける細胞周期依存性変化によって媒介される、転写効果を示す。
【図15】図15は、実施例2で得られた結果を示す。
【図16】図16は、実施例2で得られた結果を示す。
【図17】図17は、実施例2で得られた結果を示す。
【図18】図18は、実施例2で得られた結果を示す。
【図19】図19は、HIF1αの野生型配列(登録番号Q16665(配列番号10))を示す。
【図20】図20は、キナーゼCdk2が、サイクリンEまたはサイクリンAのいずれかに結合した場合に、その基質のリン酸化を指向し得ることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書等に記載されるような、低酸素症を処置するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−150382(P2008−150382A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2664(P2008−2664)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【分割の表示】特願2002−572960(P2002−572960)の分割
【原出願日】平成14年3月20日(2002.3.20)
【出願人】(500204740)ダナ−ファーバー キャンサー インスチチュート インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】