説明

低音増幅回路

【課題】 簡易な構成で低域を増強する。
【解決手段】 LPF41を通過した入力信号は、高周波音発生部42からの帯域外の高周波音が加算器43で加算される。D/A44でアナログに変換された加算器43からの出力はアナログボリューム45で調整され、アナログボリューム45の出力から高周波音の成分をHPF48により抽出する。抽出された高周波音の成分のレベルA’と、加算器43で加算された高周波音のレベルAとのレベル比A’/Aに応じてLPF41における高域の減衰特性を制御する係数を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オーディオ再生において、低音の迫力感を増強させる低音増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、聴感を改善するために、新たに音響成分を生成し付加する信号処理を行うことが知られている。一般的に周波数拡張と呼ばれる技術では高域成分のみを付加することが多いが、実際の製品においては効果がわかりにくいことから、効果を誰でもわかりやすく認識してもらうために、高域や低域側の拡張も行うようにしている。低域側の拡張を行う従来の低域増強回路100の回路構成を図6に示し、低域増強回路100の動作を示す信号の周波数特性の図を図7に示す。
図6に示す低域増強回路100において、基本周波数検出部110は入力された入力信号から基本周波数fsを検出し、検出された基本周波数fsを1/2に分周する。入力信号の不要な高域成分はローパスフィルタ(LPF)111により取り除かれ、LPF111の出力に1/2に分周されたsin(2πfs/2)の正弦波信号が乗算器112により乗算される。
【0003】
ここで、LPF111から出力される入力信号の周波数特性を図7(a)に示すが、この入力信号は基本周波数fsが含まれる周波数f1から周波数f2の範囲の周波数成分を含んでいる。この入力信号にsin(2πfs/2)の正弦波信号を乗算すると、図7(b)に示すように、周波数(f1−fs/2)から周波数(f2−fs/2)までの範囲の周波数成分からなる信号Aと、(f1+fs/2)から周波数(f2+fs/2)までの範囲の周波数成分からなる信号Bとが生成される。そして、乗算器112に後続しているLPF113により低域側だけの信号Aが抽出される。LPF113から出力される信号Aが図7(c)に示されている。この信号Aは、AMP114により増幅されて元の入力信号に加算器115により加算されて出力される。これにより、低域の信号とされる信号Aが入力信号に付加されて低域が増強されるようになる。
【0004】
図6に示す低域増強回路100は、低域増強回路100のマイクロプログラムを組み込んだDSPにより実現することができる。しかし、入力信号から基本周波数fsを検出する処理が重いという欠点があった。そこで、入力信号から基本周波数fsを検出する処理を不要とした従来の低域増強回路200が知られている。低域増強回路200の回路構成を図8に示し、低域増強回路200の動作を示す波形図を図9に示す。
図8に示す低域増強回路200は、LPF200により入力信号から不要な広域性分を取り除き分周回路211に入力信号を入力している。分周回路211は、入力信号における上り方向のゼロクロス点および下り方向のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出部と、2ビットのカウンタと、波形を反転する波形反転部を備えている。そして、ゼロクロス検出部がゼロクロス点を検出する毎に2ビットのカウンタが1ずつインクリメントされ、2ビットカウンタのカウント値が「1」「2」の時にだけ波形を波形反転部により反転させる。
【0005】
例えば、分周回路211に入力される入力信号の波形が図9(a)に示す波形とされていると、ゼロクロス検出部は図9(a)に示すように、時点t1,t2,t3,t4,t5においてゼロクロス点を検出する。すると、図9(a)に示すように、2ビットカウンタは時点t1でカウント値が「0」(オーバフローして「0」になる)となり、時点t2でカウント値が「1」となり、時点t3でカウント値が「2」となり、時点t4でカウント値が「3」となる。時点t5ではオーバフローしてカウント値は「0」に戻るようになる。そして、波形反転部は2ビットカウンタのカウント値が「1」「2」の時、すなわち、時点t2−t3の期間、および、時点t3−t4の期間入力信号の波形を反転する。これにより、図9(b)に示すように入力信号の波形が反転される。この分周回路211から出力される入力信号の波形を参照すると、期間t1−t2の期間に続いて期間t2−t3の期間の波形が正方向になるよう反転され、また、期間t4−t5の期間の前の期間t3−t4の期間の波形が負方向になるよう反転されることから、分周回路211において、入力信号を1/2に分周した信号成分が生成されることになる。
【0006】
このようにして1/2に分周された入力信号では、波形反転に伴って波形に不連続点が生じ、この不連続点に基づいて高調波成分が発生されるようになる。そこで、分周回路211に後続するLPF212により、発生された高調波成分を除去する。なお、LPF212のカットオフ周波数は、LPF210のカットオフ周波数よりも高く設定される。また、分周回路211の処理により、その出力信号に聴感上不快とされる超低域成分(サブソニック)を含む場合があるので、LPF212に後続するハイパスフィルタ(HPF)213により、この超低域成分を除去する。HPF213のカットオフ周波数は例えば50Hzに設定される。HPF213から出力される入力信号は、AMP214により増幅されて元の入力信号に加算器215により加算されて出力される。これにより、分周回路211により生成された低域信号が入力信号に付加されて低域が増強されるようになる。このように、分周回路211により波形を反転しても加算器215からの出力に元の波形の成分は残っていることから、聴感上の問題は生じることなく低域を増強することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開2007−178675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の低域増強回路200においては、入力信号の2周期分の波形を単位として検出したゼロクロスの時点に基づいて処理を行うことにより、1周期目の後半の半周期と2周期目の前半の半周期の波形を反転させて、低域成分を生成している。このように、従来の低域増強回路200では、煩雑な処理を行うことにより低域成分を発生させなければならないという問題点があった。
そこで、本発明は、簡易な構成で低域を増強することのできる低音増幅回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の低音増幅回路は、ローパスフィルタを通過した入力信号に帯域外の周波数の高周波音を加算する加算手段と、前記加算手段からの出力レベルを調整するアナログボリューム手段と、該アナログボリューム手段の出力から前記高周波音の成分を抽出する抽出手段と、該抽出手段により抽出された前記高周波音の成分のレベルに応じて前記ローパスフィルタにおける高域の減衰特性を制御する制御手段とを備えることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ローパスフィルタを通過した入力信号に高周波音を加算し、アナログボリューム手段の出力から抽出した高周波音の成分のレベルに応じて、ローパスフィルタにおける高域の減衰特性を制御するようにしている。このことから、アナログボリューム手段の設定値が小さくされるにつれて、簡易な構成で低域を増強することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例にかかる低音増幅回路を備える音響信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例にかかる低音増幅回路を備える音響信号処理装置の等価的なハードウェアの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例にかかる低音増幅回路のハードウェア構成を示す回路ブロック図である。
【図4】本発明の実施例にかかる低音増幅回路におけるLPFの減衰特性を示す図である。
【図5】本発明の実施例にかかる低音増幅回路における低域増強処理のフローチャートである。
【図6】従来の低音増幅回路の回路構成を示す回路図である。
【図7】従来の低音増幅回路の動作を示す信号の周波数特性の図である。
【図8】従来の他の低音増幅回路の回路構成を示す回路図である。
【図9】従来の他の低音増幅回路の動作を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例にかかる低音増幅回路を備える音響信号処理装置の構成を示すブロック図を図1に示す。
音響信号処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)10が管理プログラム(OS:Operating System)を実行しており、音響信号処理装置1の全体の動作をOS上で制御している。音響信号処理装置1は、CPU10が実行する制御プログラム等の動作ソフトウェアが格納されている不揮発性のROM(Read Only Member)11と、CPU10のワークエリアや各種データ等が記憶されるRAM(Random Access Memory)12を備えている。CPU10は、制御プログラムを実行することにより、入力された複数の音響信号に音響信号処理をDSP(ディジタル信号処理装置:Digital Signal Processor)20により施して混合処理を行っている。なお、ROM11をフラッシュメモリ等の書き換え可能なROMとすることで、動作ソフトウェアの書き換えを可能とすることができ、動作ソフトウェアのバージョンアップを容易に行うことができる。
【0013】
表示IF13は、液晶表示器等の表示部14に音響信号処理に関する種々の画面を表示させる表示インタフェースである。検出IF15は、音響信号処理装置1のパネルに設けられているフェーダ、ノブやスイッチ等の操作子16をスキャンして、操作子16に対する操作を検出しており、検出された操作信号に基づいて音響信号処理に用いるパラメータの編集や操作を行うことができる。通信IF17は、通信I/O18を介して外部機器と通信を行うための通信インタフェースであり、イーサネット(登録商標)などのネットワーク用のインタフェースとされる。エフェクタ(EFX)19はCPU10の制御の基で、ミキシングされたオーディオ信号にリバーブ、エコーやコーラス等のエフェクトを付加している。DSP20はCPU10の制御の基で、入力された音響信号の音量レベルや周波数特性を設定されたパラメータに基づいて調整してミキシングし、音量、パン、効果などの音響特性をそのパラメータに基づいて制御する音響信号処理を行っている。CPU10、ROM11、RAM12、表示IF13、検出IF15、通信IF17、EFX19、DSP20は通信バス21を介してデータ等の授受を行っている。
【0014】
EFX19およびDSP20は音声バス25を介してAD22、DA23、DD24とデータ等の授受を行っている。AD22は、音響信号処理装置1にアナログ信号を入力する複数のアナログ入力ポートであり、AD22において入力されたアナログ入力信号はディジタル信号に変換されて音声バス25に送出される。DA23は、音響信号処理装置1からミキシングされた混合信号を外部へ出力する複数のアナログ出力ポートであり、DA23において音声バス25を介して受け取ったディジタル出力信号はアナログ信号に変換されて、会場やステージに配置されたスピーカから出力される。DD24は、音響信号処理装置1にディジタル信号を入力すると共に、外部にミキシングされたディジタル信号を出力する複数のディジタル入力/出力ポートであり、DD24において入力されたディジタル入力信号は音声バス25に送出され、音声バス25を介して受け取ったディジタル出力信号はディジタルレコーダ等に出力される。なお、AD22およびDD24から音声バス25へ送出されたディジタル信号はDSP20が受け取って上記したディジタル信号処理が施される。そして、DSP20に低音増幅回路のマイクロプログラムを組み込むことにより、DSP20が低音増幅回路としても動作するようになる。これにより、DSP20から音声バス25に送出された低域増強された音響信号であるディジタル信号をDA23が受け取って、スピーカ等から放音することができるようになる。
【0015】
次に、本発明の実施例にかかる音響信号処理装置1の等価的なハードウェア構成を示すブロック図を図2に示す。
図2において、複数のアナログ入力ポート(AD22)に入力された複数のアナログ信号はディジタル信号に変換されて入力パッチ(Input Patch)30に入力される。また、複数のディジタル入力ポート(DD24)に入力された複数のディジタル信号は、そのまま入力パッチ30に入力される。入力パッチ30では、信号の入力元である複数の入力ポートの何れか1つの入力ポートを、Nチャンネル(Nは1以上の整数:例えば96チャンネル)とされる入力チャンネル部31の各入力チャンネル(Input Channel)31−1,31−2,31−3,・・・・,31−Nに選択的にパッチ(結線)している。各入力チャンネル31−1〜31−Nには、入力パッチ30でパッチされた入力ポートからのオーディオ信号In.1,In.2,In.3,・・・,In.Nがそれぞれ供給される。各入力チャンネル31−1〜31−Nでは、各入力チャンネルに入力された音響信号In.1,In.2,In.3,・・・,In.Nの音響特性等が調整される。すなわち、入力チャンネル部31における各入力チャンネル31−1〜31−Nに入力された各入力チャンネル信号は、入力チャンネル毎にイコライザやコンプレッサにより音響信号の特性が調整されると共に送り出しレベルが制御されてM本(Mは1以上の整数)の混合バス(Mix Bus)35およびL,Rのステレオのキューバス(Cue Bus)36へ送出される。この場合、入力チャンネル部31から出力されるN入力チャンネル信号は、M本の混合バス35の1ないし複数に選択的に出力される。
【0016】
混合バス35においては、M本の各バスにおいて、N入力チャンネルのうちの任意の入力チャンネルから選択的に入力された1ないし複数の入力チャンネル信号が混合されて、合計M通りの混合出力が出力される。M本の混合バス35の各バスからの混合出力は、Mチャンネルとされる出力チャンネル部32の各出力チャンネル(Output Channel)32−1,32−2,32−3,・・・・,32−Mにそれぞれ出力される。各出力チャンネル32−1〜32−Mでは、イコライザやコンプレッサにより周波数バランス等の音響信号の特性が調整されて、出力チャンネル信号Mix.1,Mix.2,Mix.3,・・・,Mix.Mとして出力され、このM出力チャンネル信号Mix.1〜Mix.Mは、出力パッチ(Output Patch)34に出力される。また、L,Rのキューバス(Cue Bus)36においてはN入力チャンネルのうちの任意の入力チャンネルから選択的に入力された1ないし複数の入力チャンネル信号が混合されたキュー/モニタ用の信号がキュー/モニタ部(Cue/Monitor)33に出力される。キュー/モニタ部33おいてイコライザやコンプレッサにより周波数バランス等の音響信号の特性が調整されたキュー/モニタ出力(Cue/monitor)は、出力パッチ34に出力される。
【0017】
出力パッチ34では、出力チャンネル部32からのM出力チャンネル信号Mix.1〜Mix.Mおよびキュー/モニタ部33からのキュー/モニタ出力の何れかを、複数の出力ポートのいずれかに選択的にパッチ(結線)することができ、各出力ポートには、出力パッチ34でパッチされた出力チャンネル信号が供給される。出力ポートにおいて、ディジタルの出力チャンネル信号はアナログ出力信号に変換され、アンプにより増幅されて会場に配置された複数のスピーカから放音される。さらに、このアナログ出力信号はステージ上のミュージシャン等が耳に装着するインイヤーモニタに供給されたり、その近傍に置かれたステージモニタスピーカで再生される。また、出力パッチ34から出力されるディジタルの音響信号は、レコーダや外部接続されたDAT等に供給されてディジタル録音することができるようにされている。また、キュー/モニタ出力は出力パッチ34でアサインされた出力ポートにおいてアナログの音響信号に変換され、オペレータルームに配置されたモニタ用スピーカやオペレータが装着するヘッドホン等から出力されてオペレータが検聴できるようになる。
【0018】
DSP20は複数のDSPチップからなり、この複数のDSPチップがそれぞれマイクロプログラムに従った音響信号処理を実行することにより、図2に示す構成の音響信号処理装置1において音響信号処理が実行されるようになる。この場合、DSP20に低音増幅処理のマイクロプログラムを組み込むことにより、DSP20が低音増幅回路として動作するようになる。DSP20により実現される低音増幅回路の等価的なハードウェア構成を示す回路ブロック図を図3に示す。
図3に示す低音増幅回路2おいて、入力信号部40からのディジタルの音響信号は、ローパスフィルタ(LPF)41により高域成分が減衰され、相対的に減衰されない低域成分が増強されるようになる。このLPF41においては、係数を変更すると高域成分を減衰する減衰特性が可変され、設定される係数に応じて高域成分を減衰する度合いを制御することができる。LPF41からの出力には、高周波音発生部42から出力されたディジタルの高周波音が、加算器43により加算される。この高周波音の周波数は、ほぼ可聴帯域外の周波数、例えば16kHzとされ、高周波音のレベルはAdBとされる。加算器43からの加算出力は、ディジタル/アナログ変換器(D/A)44によりアナログ信号に変換され、D/A44から出力される音響信号の音量レベルがアナログボリューム45により制御される。アナログボリューム45からの出力信号は、LPF46に入力されて加算された高周波音の成分が除去され、LPF46の出力信号は出力信号部47からスピーカに出力する増幅器に出力される。
【0019】
また、アナログボリューム45からの出力信号は分岐されてハイパスフィルタ(HPF)48に印加され、HPF48において加算器43により加算された高周波音の成分だけが抽出される。HPF48から出力された高周波音の成分のレベルはレベルA’とされ、簡易な構成のアナログ/ディジタル変換器(A/D)49によりディジタル信号に変換される。CPU10は、A/D49から出力されたレベルA’の高周波音と、加算器43により加算されたレベルAの高周波音とのレベル比A’/Aを算出する。さらに、算出したレベル比A’/Aに対応したLPF41の係数を決定してDSP20に送る。DSP20は送られた係数をLPF41に設定して入力信号にLPF41の処理を施すことにより、設定された係数に応じて入力信号の高域の減衰特性が制御されるようになる。これにより、レベル比A’/Aに応じて入力信号の低域が増強されるようになる。
【0020】
図4にLPF41の減衰特性を示すが、横軸が周波数で縦軸が出力レベルとされており、LPF41に設定される係数に応じて減衰特性を変化させることができる。例えば、減衰特性aではほとんど高域成分は減衰されず、減衰特性bでは高域成分がやや減衰され、減衰特性cでは高域成分が大きく減衰され、減衰特性dでは高域成分がさらに大きく減衰される。この場合、レベル比A’/Aの値が小さくなるに従って減衰特性aから減衰特性dに向かうように減衰特性が制御され、レベル比A’/Aが小さくなるにつれて高域成分を減衰させる度合いが大きい減衰特性とされる。これは、レベル比A’/Aの値が大きい場合はアナログボリューム45が大きくされていることから、大きなレベルの信号が出力信号部47から増幅器に出力されることになる。この場合に、低域を増強させるとより大きなレベルの信号が出力信号部47から増幅器に出力されて、増幅器やスピーカを破壊する恐れが生じる。
【0021】
これに対して、レベル比A’/Aの値が小さい場合はアナログボリューム45が絞られていることから、小さなレベルの信号が出力信号部47から増幅器に出力されていることになる。この場合は、低域を増強させても増幅器やスピーカを破壊するような大きなレベルの信号が出力信号部47から増幅器に出力されることはない。このことから、レベル比A’/Aの値が小さくなるにつれて高域成分を減衰させる度合いが大きい減衰特性の係数がLPF41に設定されるようになる。従って、レベル比A’/Aの値が小さくなるに従って出力信号部47から増幅器に出力される信号の低域が増強されるようになる。
なお、加算器43により加算される高周波音のレベルをAdBに固定することにより、レベル比A’/Aを算出することなくレベルA’の値が小さくなるにつれて高域成分を減衰させる度合いが大きい減衰特性の係数をLPF41に設定することができる。また、本発明にかかる低音増幅回路2においては、従来の増幅回路に高周波音発生部42およびHPF48とA/D49とを付加した構成とされている。この付加した構成により、高周波音を入力信号に加算されて、縦続接続されたHPF48とA/D49の出力からアナログボリューム45を通過した後の高周波音のレベルを検出することでき、この高周波音のレベルからアナログボリューム45の設定値を得るようにしている。
【0022】
次に、所定周期毎に起動される低音増幅処理のフローチャートを図5に示す。
低音増幅処理が起動されると、ステップS10にて入力されたディジタルの入力信号にほぼ可聴帯域外のレベルAdBのディジタルの高周波音信号が加算される。次いで、加算されたディジタル信号をアナログボリュームによりレベルを変更できるようにステップS11にてD/A変換処理を行う。D/A変換処理されたアナログ信号の音量は、アナログボリュームにより変更され、ステップS13にてアナログボリュームからの出力にHPF処理を施して入力信号に加算された高周波音信号の成分のみを抽出する。HPF処理により抽出された高周波音の信号成分は、ディジタル値を扱うためにステップS13にてA/D変換処理される。そして、A/D変換処理されたHPF処理により抽出された高周波音成分のレベルA’がステップS14にて検出される。次いで、加算された高周波音信号のレベルAと、HPF処理により抽出された高周波音成分のレベルA’とのレベル比A’/AがステップS15にて算出される。さらに、ステップS16にてレベル比A’/Aの値に基づいて、入力信号にLPF処理を施すLPFの係数を決定する。この場合のLPFの減衰特性は図4に示すようになり、レベル比A’/Aの値が小さくなるにつれて高域成分を減衰させる度合いが大きい減衰特性の係数となる。次いで、ステップS17にて入力信号に加算した高周波音信号を削除するために、全体の出力信号にLPF処理を行って出力し、低音増幅処理は終了する。この低音増幅処理が所定周期毎に行われることにより、レベル比A’/Aの値が小さくなるに従って出力信号の低域が増強されるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上説明した本発明の低音増幅回路は、音響信号処理装置に適用するとしたが、これに限ることはなく音響信号を出力する電子機器一般に適用することができる。
なお、高周波音発生部42において発生される高周波音の周波数は、ほぼ可聴帯域外の周波数、例えば16kHzとしたが、これに限ることはなくLPF41およびLPF46においてほぼ遮断される周波数であればよい。
【符号の説明】
【0024】
1 音響信号処理装置、2 低音増幅回路、10 CPU、11 ROM、12 RAM、13 表示IF、14 表示部、15 検出IF、16 操作子、17 通信IF、18 通信I/O、19 EFX、20 DSP、21 通信バス、22 AD、23 DA、24 DD、25 音声バス、26 プラグイン、30 入力パッチ、31 入力チャンネル部、32 出力チャンネル部、33 モニタ部、34 出力パッチ、35 混合バス、36 キューバス、40 入力信号部、41 LPF、42 高周波音発生部、43 加算器、44 ディジタル/アナログ変換器、45 アナログボリューム、46 LPF、47 出力信号部、48 HPF、49 アナログ/ディジタル変換器、100 低域増強回路、110 基本周波数検出部、112 乗算器、115 加算器、200 低域増強回路、211 分周回路、215 加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローパスフィルタを通過した入力信号に、前記ローパスフィルタでは遮断される周波数の高周波音を加算する加算手段と、
前記加算手段からの出力レベルを調整するアナログボリューム手段と、
該アナログボリューム手段の出力から前記高周波音の成分を抽出する抽出手段と、
該抽出手段により抽出された前記高周波音の成分のレベルに応じて前記ローパスフィルタにおける高域の減衰特性を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする低音増幅回路。
【請求項2】
前記制御手段は、前記加算手段において加算された前記高周波音のレベルAと、前記抽出手段により抽出された前記高周波音の成分のレベルA’とのレベル比A’/Aを算出して、算出されたレベル比A’/Aに基づいて、前記ローパスフィルタにおける高域の減衰特性を制御する係数を決定し、決定した係数を前記ローパスフィルタに設定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の低音増幅回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−244172(P2011−244172A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114000(P2010−114000)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】