説明

住居用水回り配管工法とプレハブ配管部材

【課題】従来、水回り配管は現場で配管接合するため管部材に無駄を生じ、継手部材とこれに継手接合するパイプは、成形後直ぐに架橋反応加工を行うため、架橋ポリエチレン化して加熱溶融せず融着できないので、加熱溶融するポリエチレンを所要部に覆着して継手接合を融着する迂回的方法が行われてきた。
【解決手段】ヘッダーから各端末水栓までの配管設計図を作成し、シラングラフト化樹脂により成形したパイプ1を前記配管設計図の各対応寸法にカットしてヘッダー2等の継手部材に融着してプレハブ配管部材に形成した後、架橋反応加工を行って配管を行なうようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレハブによる戸建住宅や集合住宅などの新築又はリフォーム時における住居用の水回り配管工法と、これに用いられるプレハブ配管部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住居用水回りの配管は、例えば特許文献1に記載のように水道水取入れ口、給湯器からヘッダーを介して洗面所、台所、浴室などの各端末水栓に配管されるが、配管部材の必要数量をおおまかに選定して現場に搬送し、施工現場で敷設配管距離を測って配管設計を行い、これに基づいて給水、給湯のパイプをカットして個別のヘッダーやチーズ、継手等の配管部材を調整するようにしてきている。
【0003】
このような、施工現場で配管設計から部材の寸法調整等を全て施工現場で行なう従来の方法は、パイプやその他の配管部材の使用に無駄が生じ、工場と違って作業環境が整わず極めて非能率的な状况であったため、特許文献2に記載のように事前に現場の平面図、基礎伏せ図に基いてCAD設計された配管設計により、現場ごとに寸法調整を行って他の必要部材と共にパックするプレハブ配管が提案されている。
【0004】
また、施工現場での継手と配管パイプとの接合融着については、特許文献3に記載のように継手本体の内面を樹脂パイプ外面に融着させるため継手内周面に電熱線を埋設し、電熱線の両端に接続した端子ピンを本体外面に立設して端子ピンを通じて電熱加熱することにより継手内面と樹脂パイプ外面に融着させることも行われている。
【0005】
しかし、上記特許文献3のような電気融着継手については、継手とパイプの基礎本体を構成する素材が耐熱性のある架橋ポリエチレンであり、加熱によっては溶融しないので、特許文献4に記載のように加熱によって溶融する結晶部と非晶部が混在する通常のポリエチレンと基礎本体を構成する架橋樹脂とを2層構造に成形してポリエチレン部分において熱融着が行われるようにしてきた。
【特許文献1】特開2002−161560号公報
【特許文献2】特開2002−327858号公報
【特許文献3】特開平2−30517号公報
【特許文献4】特開2006−289857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2における上記従来のプレハブ配管についての方式では、パイプとヘッダーや継手との接合は施工現場で行わなければならず、現場でパイプとヘッダーや継手とを接合するためのメカニカル継手の操作など多くの作業が必要である。
【0007】
また、継手部材によって現場でパイプを継手接合していく作業は、未熟な作業による継手接合部の漏水など多くのリスクを負担しなければならない。また、継手部が多くなれば、継手のない配管より美観的にも劣ると共に、パイプと別に継手部材を成形製造しなければならないため、コスト的にも不利である。
【0008】
更に、特許文献1、2における継手部材と配管パイプ或いは配管パイプ同士を現場で電気融着する方法については、継手やパイプの基礎本体を構成する素材が耐熱性のある架橋ポリエチレンであり、加熱によっては溶融しないので、加熱によって溶融する通常のポリエチレンを架橋樹脂の表面所要部に覆着して2層とし、ポリエチレン部分で融着が行われるようにしている。
【0009】
しかしながら、加熱によって溶融するポリエチレンは80度C(取扱い上は安全性を見て60度C以下としている。)程度で軟化が始まるので給湯管等に用いられた場合、高温時に継手部に引張方向の負荷が掛かった場合に離脱の危険を伴う問題がある。
【0010】
更に、従来、長尺のポリエチレンパイプに対する架橋反応加工は、スペースや移動取扱いの関係からコイル状に巻いた状態でなければ行うことができない。しかし、ポリエチレンは架橋反応によって形状記憶性能が付与されるため、パイプに巻き癖がつくと直線施工が困難になり、パイプの直線矯正に余計な手間が掛かる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記した課題に対応しようとするものであり、建設業者によって既に作成されている現場の平面図と基礎伏せ図等を活用し、これに基づいたCAD設計により配管設計を行なうようにして、配管施工業者が改めて施工現場で敷設配管距離を測るという無駄を省くと共に、配管部材の必要数量や寸法を事前に把握して工場で成形、架橋反応加工まで行ったプレハブ製品として現場配管に必要なもののみを現場に搬送できるようにした。
【0012】
更に、事前に把握された配管部材の必要数量や寸法を基に、作業環境の良い工場で、現場ごとに部材の寸法調整を行なってシラングラフト化樹脂により成形したパイプを前記配管図の各対応寸法にカットすると共に、融着用工具等を用いて同じくシラングラフト化樹脂成形によるヘッダー等の継手部材に融着してプレハブ配管部材に形成した後、架橋反応加工を行って現場に搬送し配管を行なうようにした。
【0013】
すなわち、ポリエチレンにパーオキサイドを触媒としてトリメトキシシランを反応させてシラングラフト化された原料樹脂を、加熱押出機でパイプに成形し、或いは、射出成型線で分岐部に用いられるヘッダー、チーズ等の継手類に成型すると、シラングラフト化ポリエチレンの成形品ができる。
【0014】
この段階では、架橋反応加工が行われていないため、耐熱性がなく熱可塑性を備えているので、成形されたパイプを前記配管設計に基づいて設計規格寸法にカットすると共に、その切断面とヘッダー等継手類の接合部を熱板接触等の加熱手段により溶融着して配管設計に対応するプレハブ配管部材に構成する。
【0015】
このように構成されたプレハブ配管部材は、湯もしくは蒸気槽に浸漬、或いはパイプに通湯して架橋反応加工を行い、成形配管部材に耐熱老化性を付与して熱可塑性のない成形品として固定するようにした。
【0016】
架橋反応加工により成形固定したプレハブ配管部材を輸送し易い形状に撓め、配管設計に対応したユニット梱包を行って現場に搬送することにより、現場では水道水取入れ口、給湯器等の給水源とヘッダー等基幹継手類との接合を中心とした作業により極めて能率的な配管施工を行なえるようにした。
【0017】
すなわち、本発明は加工が容易で熱可塑性のあるシラングラフト化ポリエチレンによる成形品の段階で、配管パイプと基幹継手類との融着やカット加工を行ってプレハブ配管部材としての製品加工を完成させたうえで、架橋反応加工により耐熱老化性を付与して固定するようにしたものである。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。1は配管パイプで、給水管1aと給湯管1bの2種類があり、ヘッダー2等の基幹継手類を介して図1に示すような住居の配管設計に基づいて水回り配管されるものである。
【0019】
配管設計は、建設業者から提供を受けた現場の平面図と基礎伏せ図を重合した配管設計図を作成し、これに基礎伏せ図からのCAD情報を入力してCAD設計配管設計図が立ち上げられる。CAD設計配管設計図にはカーブポイントを含めた寸法表示が行なわれており、このような配管設計図により必要な給水給湯配管部材の長さ、固定ポイントとこれに必要な部材等の情報が把握される。
【0020】
これらの情報に基づいて必要な配管部材が調製されるものであるが、先ず、ポリエチレンにパーオキサイドを触媒としてトリメキシシランを反応させてグラフト化された原料樹脂を溶融加熱して、パイプについては加熱押出機でパイプに成形し、分岐部に用いられるヘッダー、チーズ等の継手類については射出成形機でそれぞれの成形をする。
【0021】
更に、CAD設計配管設計図の情報に基づいて現場ごとに給水給湯パイプの寸法調整が行なわれ、上記シラングラフト化された原料樹脂によるパイプが上記寸法調整によって決定された長さにカットされ、同時に成形型に射出成形されたヘッダー、チーズ等の基幹継手類それぞれの2次側通水口に設計に対応する長さにカットされたパイプの端部が融着される。
【0022】
この融着は挟着や挿入を行える加熱体にハンド鏝状に柄のついた融着用工具を用いたり、加熱された熱板にパイプの端部を押し付けて溶融すると同時に基幹継手類の2次側通水口に接合して融着する。配管設計情報により必要とされる基幹継手類に対応パイプが融着されプレハブ配管部材の成形が完了する。
【0023】
成形融着加工は、以上のようにして給水配分ヘッダー2a、給湯配分ヘッダー2b及びこれに接合される給水配管1aと給湯配管1bは、前記のようにCAD設計配管設計図の情報に基づいて現場ごとに設計され、シラングラフト化樹脂により所定の形態に加工されるものであるが、融着接合される配管パイプは配管設計により所定長さにカットされ、長さが2〜15メートル程度となっているので架橋反応加工の際にコイル状に巻かなくても加工が可能となる。
【0024】
成形が完了したプレハブ配管部材に対する架橋反応加工は、成形と所要部の融着が完了した製品を湯もしくは蒸気槽に浸漬、もしくは融着パイプに通湯させることによって行う。雰囲気温度は90度C以上で、10〜15時間程度の加温によって行なわれる。
【0025】
架橋反応加工によって、原料樹脂としてシラングラフト化されたポリエチレンの鎖状構造分子の非晶部分同士が結合され、超高分子量の立体網目構造となる。 架橋反応が終了すると架橋ポリエチレンとして形状的な固定が行われ、耐熱性、クリープ性能が向上する。
【0026】
架橋反応加工により形状的な固定が行われたプレハブ配管部材は、配管設計情報による他の必要部材と共にパック梱包されて現場に輸送され、現場においてCAD設計配管設計図に表示されるカーブポイントや立ち上がり等の敷設固定ポイントに基づいて配管部材を敷設配管する。
【0027】
図1の配管設計を例として説明すると、先ず、配管設計図に表示される所定位置に給水配分ヘッダー2aと給湯配分ヘッダー2bを設定固定し、給水配分ヘッダー2aの1次側通水口21と融着接合されている給水配管1aを水道水取入れ口本管Xに接合し、給湯配分ヘッダー2bの1次側通水口21と融着接合されている給湯配管1bを加熱給湯器Yに接合する。
【0028】
次いで給水給湯の各配分ヘッダー2a、2bの配分分岐継手口22に融着接合された各配管は各端末水栓にそれぞれ配管接合するものであるが、給水と給湯が必要な台所、浴室等には給水、給湯の両方が配管され、給水のみで足りるトイレ、洗濯機には給水配管1aのみ、給湯のみで足りる食洗器には給湯配管1bのみが配管される。
【0029】
以上はCAD設計配管設計図の情報に基づいて現場ごとに給水給湯パイプの寸法調整を行なった場合であるが、一般的なプレハブ規格配管として住居用水回りの基本配管を構成し、本発明による配管部材の製造方法を用いれば従来の電気融着継手のように架橋ポリエチレンのコア形状部材の表層部にポリエチレンを覆層して継手とパイプを融着する無駄を避けることができ、構造的にも高温や引張負荷に耐えるプレハブ配管部材を製造することができる。
【0030】
本発明は以上のように構成したので、継手等とパイプの融着接合部のポリエチレンも架橋され高温や引張負荷に対して安定した配管ラインを構成できると共に、各現場に適合した必要量の配管材料が施工現場に届けられ、CAD設計配管設計図により手順良く配管されるので、後で始末しなければならない材料のカット部分や余分な部材が現場に残されることがなく、従来、必要とされた作業や附属部材を大幅に節約できたものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例によるプレハブ配管部材による水回り配管ラインの一例を示す配管設計図の部分拡大図
【図2】同じく、配分ヘッダー実施例の平面図
【符号の説明】
【0032】
1 配管パイプ
1a 給水管
1b 給湯管
2 ヘッダー
2a 給水配分ヘッダー
2b 給湯配分ヘッダー
21 ヘッダーの1次側通水口
22 ヘッダーの分岐継手口
23 端末水栓との接続継手機構
X 水道水取入れ口
Y 加熱給湯器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道水取入れ口、給湯器及び各端末水栓の位置を住宅建設基礎図等に基き確認してヘッダーから各端末水栓までの配管設計図を作成し、シラングラフト化樹脂により成形したパイプを前記配管図の各対応寸法にカットすると共に、融着用工具等を用いて同じくシラングラフト化樹脂成形によるヘッダー等の継手部材に融着してプレハブ配管部材に形成した後、架橋反応加工を行って配管を行なうようにしたことを特徴とする住居用水回り配管工法
【請求項2】
シラングラフト化樹脂により、配管パイプとこれを連結接合する連結継手部材とを成形し、連結継手部材の所要部に配管パイプを挿入等すると共に、融着用工具等を用いて融着接合してプレハブ配管部材に形成した後、架橋反応加工を行うことを特徴とするプレハブ配管部材の製造方法
【請求項3】
シラングラフト化樹脂により成形したパイプを、融着用工具等を用いて同じくシラングラフト化樹脂成形によるヘッダー等の継手部材に融着接合してプレハブ配管部材に形成した後に、架橋反応加工を行ったことを特徴とするプレハブ配管部材
【請求項4】
シラングラフト化樹脂によるパイプとヘッダー等継手部材の、採寸カットと融着接合を配管設計図或いは所要の規格に基づいて行い、特定現場の配管設計に対応させるようにしたことを特徴とする請求項3記載のプレハブ配管部材

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−108990(P2009−108990A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284718(P2007−284718)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000201593)前澤給装工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】