説明

体液採取用回路基板およびバイオセンサ

【課題】簡易な構成により、体液の成分を精度よく測定することができ、しかも、1個の体液採取用回路基板で、複数回、簡便に測定することのできる、体液採取用回路基板、および、その体液採取用回路基板を備えるバイオセンサを提供すること。
【解決手段】穿刺針6と、穿刺針6の穿刺により採血される血液と接触させるための電極8とを備える測定ユニット2を、同一平面において放射状に複数配置させることにより、採血用回路基板1を得る。そして、この採血用回路基板1を、CPU25を内蔵するケーシング41に実装して、採血用回路基板1の電極8と、CPU25とを電気的に接続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液採取用回路基板およびバイオセンサ、詳しくは、体液採取用回路基板およびこれを備えるバイオセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病には、インシュリン依存性(I型)とインシュリン非依存性(II型)とがあり、前者は、定期的なインシュリンの投与が必要となる。そのため、前者では、患者が自ら採血し、自ら血糖値を測定し、その血糖値に応じた投与量でインシュリンを自ら投与する処置方法が採用されている。
専ら、そのような患者のために、患者自身が、個人的に採血し、血糖値を測定することのできる血糖値測定装置が知られている。
【0003】
例えば、電極が挿入され、本体中央に設けられる反応区域と、本体中央から外方に突出する穿刺針と、電極と穿刺針とを連通する毛管路とを備える流体収集装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される流体収集装置では、穿刺針と反応区域とが本体に一体的に形成されているので、測定準備が簡便である。しかし、この流体収集装置では、反応区域とは別部材である電極を、反応区域へ挿入して、血液成分を測定する。そのため、血液の検知精度が不安定となり、精度よく測定できないという不具合がある。
また、I型の糖尿病においては、症状によっては、患者が、1日に複数回、具体的には、食前毎あるいは食後毎に、血糖値を測定する必要がある。
【0005】
一方、特許文献1に記載される流体収集装置では、1個の装置につき、1本の穿刺針しか備えられていないので、穿刺針の繰り返しの使用を避ける必要上、1回の測定ができるのみである。
そのため、上記した流体収集装置で、上記したように複数回測定する場合には、使用済みの流体収集装置を廃棄し、その後、新たな流体収集装置を準備する必要がある。そのため、かかる流体収集装置では、上記した測定準備が繁雑になり、ランニングコストの上昇が不可避となる。
【0006】
本発明の目的は、簡易な構成により、体液の成分を精度よく測定することができ、しかも、1個の体液採取用回路基板で、複数回、簡便に測定することのできる、体液採取用回路基板、および、その体液採取用回路基板を備えるバイオセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の体液採取用回路基板は、穿刺針と、前記穿刺針の穿刺により採取される体液と接触させるための電極とを備える測定ユニットを備え、前記測定ユニットは、同一平面において放射状に配置されるように、複数設けられていることを特徴としている。
この体液採取用回路基板は、穿刺針と電極とを備える測定ユニットを備えている。そのため、穿刺針の穿刺により体液を流出させて、流出させた体液を、測定ユニットの電極と簡便に接触させることができる。その結果、この体液採取用回路基板によれば、簡易な構成により、体液の成分を簡便に測定することができる。
【0008】
しかも、この体液採取用回路基板では、1個の体液採取用回路基板に、複数設けられる測定ユニットによって、体液の成分を、複数回測定することができる。
さらに、この体液採取用回路基板では、測定ユニットが、同一平面において放射状に配置されているので、1個の測定ユニットの使用後には、体液採取用回路基板を周方向に回転させることにより、使用後の測定ユニットとその測定ユニットに対して回転方向上流側に隣接する未使用の測定ユニットとを交換することができる。そのため、複数回の測定毎に、測定ユニットを簡便に交換することができる。
【0009】
また、本発明の体液採取用回路基板では、各前記測定ユニットは、前記穿刺針の先端に対する前記穿刺方向上流側において折り曲げ可能な折曲部を備えていることが好適である。
この体液採取用回路基板によれば、測定ユニットの使用時おいて、これを折曲部で折り曲げることにより、複数のユニットが配置される同一平面から、使用したい穿刺針の先端を離間させることができる。そのため、折り曲げられた穿刺針によって、確実に穿刺することができる。
【0010】
また、本発明の体液採取用回路基板では、前記体液採取用回路基板の中心には、開口部が設けられ、前記体液採取用回路基板の開口部における内周面には、前記体液採取用回路基板を周方向に回転させるための駆動部材に嵌合可能な嵌合部が形成されていることが好適である。
この体液採取用回路基板によれば、嵌合部に、駆動部材を嵌合して、駆動部材を駆動すれば、体液採取用回路基板を周方向に確実に回転させることができる。そのため、複数回の測定毎に、測定ユニットをより一層簡便に交換することができる。
【0011】
また、本発明のバイオセンサは、上記した体液採取用回路基板と、前記電極に電気的に接続され、前記体液の成分を測定する測定部とを備えることを特徴としている。
このバイオセンサによれば、上記した体液採取用回路基板により流出させた体液を、電極と接触させて、この電極と電気的に接続される測定部によって、体液の成分を簡便に測定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の体液採取用回路基板によれば、簡易な構成により、体液の成分を簡便に測定しながら、1個の体液採取用回路基板で、複数設けられる測定ユニットによって、体液の成分を、複数回測定することができる。さらに、複数回の測定毎に、測定ユニットを簡便に交換することができる。
また、本発明のバイオセンサによれば、体液の成分を簡便に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の体液採取用回路基板の一実施形態である採血用回路基板の平面図、図2は、図1に示す採血用回路基板の測定ユニットの拡大平面図、図3は、図1に示す採血用回路基板の測定ユニットの拡大背面図、図4は、図2のA−A線に沿う断面図、図5および図6は、採取用回路基板の製造方法を説明するための製造工程図を示す。
図1において、この採血用回路基板1は、患者が指などの皮膚を穿刺して採血し、採血した血液中のグルコース量を測定するために、後述する血糖値測定装置19(図7および図8参照)に実装されて用いられる。この採血用回路基板1は、複数回測定できる、繰り返し使用可能(連続使用可能)タイプとして用意されている。
【0014】
採血用回路基板1は、中心に開口部としての中心開口部17が形成された略円板状に形成されている。採血用回路基板1には、中心開口部17の径方向外側に、同一平面において、放射状に配置されるように、測定ユニット2が複数(32個)設けられている。また、採血用回路基板1の中心開口部17における内周面には、後述する嵌合部としての嵌合溝18が形成されている。
【0015】
測定ユニット2は、図2および図3に示すように、径方向内側に配置される内側部3と、内側部3の径方向外側に配置される外側部4とを一体的に備えている。
内側部3は、採血用回路基板1の嵌合溝18と径方向において間隔を隔てて配置され、図1に示すように、周方向に隣接する測定ユニット2の内側部3と連続するように形成されている。また、内側部3の径方向外側端面は、図2および図3に示すように、平面視において略円弧形状(あるいは略直線状)に形成されており、これにより、採血用回路基板1は、略円板形状(あるいは略正多角形(略正32角形)状)に形成されている。
【0016】
外側部4は、内側部3の径方向外側端面における周方向略中央から、径方向外側に向かって突出するように配置されている。また、外側部4は、周方向長さが内側部3のそれよりも短く形成されている。これにより外側部4は、図1に示すように、周方向に隣接する測定ユニット2の外側部4と、周方向に間隔を隔てて配置されている。また、外側部4は、図2および図3に示すように、平面視略正5角形状に形成される電極部28と、電極部28の径方向外側に配置される穿刺針6とから形成されている。
【0017】
そして、測定ユニット2は、1つの穿刺針6と、導体パターン7とを備えている。
穿刺針6は、穿刺により血液を採取するために設けられている。すなわち、穿刺針6は、外側部4において、電極部28の径方向外側(つまり、穿刺方向下流側)に隣接配置され、電極部28と一体的に形成されている。具体的には、穿刺針6は、電極部28の径方向外側端部の周方向中央から径方向外側に向かって突出している。また、穿刺針6は、径方向に沿って先端29(径方向外側端部)が鋭角に尖る平面視略三角形状(二等辺三角形状)に形成されている。
【0018】
穿刺針6の先端29の角度θ(図3参照)は、例えば、10〜30°、好ましくは、15〜25°である。先端29の角度θが10°未満であると、強度不足により皮膚に穿刺できない場合がある。一方、角度θが30°を超過すると、穿刺しにくい場合がある。また、穿刺針6の径方向(穿刺方向)長さは、例えば、0.5〜10mmであり、穿刺針6の周方向長さ(径方向内側部分の幅)は、例えば、0.3〜3mmである。穿刺針6の穿刺方向長さおよび幅が、上記範囲に満たない場合には、採血が困難になる場合があり、穿刺針6の穿刺方向長さおよび幅が、上記範囲を超過する場合には、穿刺箇所の損傷が大きくなる場合がある。
【0019】
導体パターン7は、3つの電極8、3つの端子9および3本の配線10を備えている。
3つの電極8は、後述する穿刺針6の穿刺により採血される血液と接触させるために設けられ、電極部28において、周方向および径方向において、隣接配置されている。
より具体的には、3つの電極8のうち、2つの電極8aは、電極部28において、周方向において間隔を隔てて互いに対向配置されている。2つの電極8aは、平面視略円形状に形成されている。
【0020】
また、残りの1つの電極8bは、電極部28において、2つの電極8bに対して径方向外側に間隔を隔てて対向配置されている。電極8bは、2つの電極8b間よりも長く延びる平面視略矩形状に形成されている。
また、3つの電極8は、それぞれ、作用極、対極または参照電極のいずれかに対応している。2つの電極8aの各直径は、例えば、100μm〜2.5mmであり、1つの電極8bの一辺の長さは、例えば、100μm〜2.5mmである。また、3つの電極8は、径方向において、穿刺針6の先端29から、例えば、0.2〜5mm、好ましくは、0.5〜3mm以内に配置されている。穿刺針6の先端29と電極8との間が短すぎると、電極8が穿刺針6とともに皮膚に刺さり、電極8の表面に塗布された薬剤30(後述)が、体内に拡散して正確な測定を阻害する場合がある。一方、穿刺針6の先端29と電極8との間が長すぎると、穿刺針6から電極8へ血液を導入するために、吸引や毛細管現象を利用するための構成が必要となる。
【0021】
3つの端子9は、3つの電極8に対応して設けられ、後述するCPU25に接続するために、内側部3に配置されている。
より具体的には、2つの端子9aは、2つの電極8aに対応し、内側部3において、周方向において間隔を隔てて互いに対向配置されている。また、2つの端子9aは、径方向内側に向かうに従って周方向長さ(幅)が次第に狭くなる平面視略テーパ形状に形成されている。具体的には、2つの端子9aにおいて、互いに対向する周方向内側端縁は、径方向に沿って並行状に配置されている。また、2つの端子9aにおける周方向外側端縁は、径方向に互いに交差する方向に沿うように形成されている。
【0022】
残りの1つの端子9bは、1つの電極8bに対応し、2つの端子9aに対して径方向内側に間隔を隔てて対向配置されている。1つの端子9bは、各測定ユニット2において、周方向に沿って平帯略円弧状に形成されている。すなわち、端子9bは、図1に示すように、1つの採血用回路基板1において、連続して略円環状に形成されている。
つまり、1つの端子9bは、1つの採血用回路基板1につき、1つ設けられている。これにより、1つの端子9bは、周方向に隣接する別の測定ユニット2における端子9bと連続して形成されており、複数の測定ユニット2の端子9bは、1つの端子として共有して用いられる。
【0023】
3つの端子9において、2つの端子9aの一辺の長さは、例えば、0.5〜10mmであり、1つの端子9bの径方向長さ(幅)は、例えば、0.5〜5mmである。
3本の配線10は、図2および図3に示すように、内側部3および外側部4にわたって設けられ、互いに周方向に間隔を隔てて並列配置されている。3本の配線10は、各電極8とこれらに対応する各端子9とをそれぞれ電気的に接続するように、径方向に沿って設けられている。各電極8と、各端子9と、それらを接続する配線10とは、連続して一体的に設けられている。各配線10の周方向長さは、例えば、0.01〜2mmであり、各配線10の径方向長さは、例えば、5〜28mmである。
【0024】
また、各測定ユニット2は、折曲部5およびストッパ部31を備えている。
折曲部5は、図8が参照されるように、穿刺針6の先端29に対する径方向内側(穿刺方向上流側)において折り曲げ可能に設けられている。すなわち、折曲部5は、図2および図3に示すように、内側部3および外側部4との間において、周方向に沿って延びる直線部分として形成されている。
【0025】
折曲部5は、内側部3と外側部4とが隣接する隣接部分において、周方向内側に細く切り込まれる切込部32により、周方向長さが狭いくびれ部分として形成されている。
これにより、折曲部5は、内側部3と外側部4との間の脆弱部分として形成されるので、外側部4が内側部3に対して折曲可能に設けられている。
ストッパ部31は、外側部4において、電極部28の径方向外側端部に、穿刺針6が皮膚に過度に深く穿刺することを防止するために設けられている。具体的には、ストッパ部31は、電極部28において、平面視略正5角形の径方向最外側頂点が径方向内側に向かって凹む部分として形成されている。すなわち、ストッパ部31は、電極部28において、穿刺針6を挟んで周方向両外側(周方向両外側斜め径方向外方)から突出するように設けられている。なお、ストッパ部31の径方向(穿刺方向下流側)端縁と穿刺針6の先端29との離間長さは、例えば、0.3〜2mmである。
【0026】
また、嵌合溝18は、図1に示すように、採血用回路基板1の中心開口部17における内周面全面に、後述する駆動部材としての駆動軸21に嵌合可能に形成されている。具体的には、嵌合溝18は、山部および谷部が交互に配列されるスプライン形状に形成されている。
そして、採血用回路基板1は、図4に示すように、金属基板11と、金属基板11の上に積層されるベース絶縁層12と、ベース絶縁層12の上に積層される導体パターン7と、導体パターン7を被覆するように、ベース絶縁層12の上に設けられるカバー絶縁層13とを備えている。
【0027】
金属基板11は、図1および図4に示すように、金属箔などからなり、採血用回路基板1の外形形状に対応するシート状に形成されている。すなわち、金属基板11は、採血用回路基板1において、1枚のシートとして形成されている。
金属基板11を形成する金属材料としては、例えば、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス(SUS304、SUS430、SUS316L)などが用いられる。好ましくは、ステンレスが用いられる。また、金属基板11の厚みは、例えば、10〜300μm、好ましくは、20〜100μmである。厚みが10μm未満であると、強度不足により皮膚に穿刺(後述)できない場合がある。一方、厚みが300μmを超過すると、穿刺時に痛みを感じ、皮膚が過度に損傷する場合や、折曲部5を円滑に折り曲げられない場合がある。
【0028】
そして、この金属基板11から、内側部3、外側部4(電極部28および穿刺針6)および嵌合溝18が形成されている。なお、穿刺針6は、上記した金属材料からなる金属基板11から形成されるので、確実な穿刺を達成することができる。また、嵌合溝18は、上記した金属材料からなる金属基板11から形成されるので、採血用回路基板1の確実な回転を達成することができる。
【0029】
ベース絶縁層12は、内側部3および外側部4に対応する金属基板11の表面に形成されている。また、ベース絶縁層12は、図2に示すように、平面視で、内側部3において、金属基板11の径方向外側端部を露出するように形成されている。また、ベース絶縁層12は、図3に示すように、平面視で、ストッパ部31を含む外側部4において、金属基板11の周端部、より具体的には、金属基板11の周方向外側端部および径方向両側端部から周方向外側および径方向両側に向かって膨出するように、形成されている。
【0030】
ベース絶縁層12を形成する絶縁材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などの合成樹脂が用いられる。機械耐久性および耐薬品性の観点から、好ましくは、ポリイミド樹脂が用いられる。また、ベース絶縁層12の厚みは、例えば、3〜50μm、好ましくは、5〜25μmである。厚みが3μm未満であると、ピンホールなどの絶縁欠陥が発生する場合がある。一方、厚みが50μmを超過すると、切断や外形加工がしにくくなる場合がある。
【0031】
導体パターン7は、図4に示すように、ベース絶縁層12の表面に形成され、上記した3つの電極8、3つの端子9および3本の配線10を備える配線回路パターンとして形成されている。
導体パターン7を形成する導体材料としては、例えば、鉄、ニッケル、クロム、銅、金、銀、白金、またはそれらの合金などの金属材料が用いられる。導体材料は、ベース絶縁層12やカバー絶縁層13との密着性や加工容易性の観点から、適宜選択される。また、2種類以上の導体材料を積層することもできる。導体パターン7の厚みは、例えば、5〜50μm、好ましくは、10〜20μmである。
【0032】
カバー絶縁層13は、各配線10を被覆するように、ベース絶縁層12の表面に設けられている。また、カバー絶縁層13の周端部は、図2〜図4に示すように、ベース絶縁層12の周端部と、平面視において同一位置に位置するように配置されている。
また、カバー絶縁層13には、図4に示すように、電極8を露出させる電極側開口部38、および、端子9を露出させる端子側開口部39が形成されている。具体的には、電極側開口部38は、図2に示すように、平面視において、電極8を取り囲むように、電極8よりやや大きく形成されている。また、端子側開口部39は、平面視において、端子9を取り囲むように、端子9よりやや大きく形成されている。カバー絶縁層13を形成する絶縁材料としては、上記したベース絶縁層12のそれと同様の絶縁材料が用いられる。カバー絶縁層13の厚みは、例えば、2〜50μmである。
【0033】
そして、図3に示すように、上記したベース絶縁層12およびカバー絶縁層13の膨出部分から、ストッパ部31が形成されている。なお、ストッパ部31は、ストッパ部31を形成する絶縁材料が、通常、金属基板11の金属材料より柔らかいため、穿刺針6の過度の穿刺を防止する際には、ストッパ部31に当接する皮膚の損傷を有効に防止することができる。
【0034】
また、上記した金属基板11と、ベース絶縁層12と、カバー絶縁層13とから、折曲部5が形成されている。
次に、図5および図6を参照して、採血用回路基板1の製造方法を説明する。
この方法では、まず、図5(a)に示すように、金属基板11を用意する。金属基板11は、例えば、金属基板11を多数確保できる長尺シート状の金属箔として用意する。その長尺の金属箔から、各金属基板11を後の工程において、外形加工することにより、複数の採血用回路基板1を製造する。
【0035】
次いで、この方法では、図5(b)に示すように、金属基板11の表面に、ベース絶縁層12を形成する。ベース絶縁層12の形成は、例えば、金属基板11の表面に、感光性の合成樹脂ワニスを塗布し、フォト加工後に硬化させる方法、例えば、金属基板11の表面に合成樹脂のフィルムを積層し、そのフィルムの表面にベース絶縁層12と同一パターンのエッチングレジストを積層し、その後、エッチングレジストから露出するフィルムをウエットエッチングする方法、例えば、金属基板11の表面に、予め機械打ち抜きした合成樹脂のフィルムを積層する方法、例えば、金属基板11の表面に、合成樹脂のフィルムを積層した後、放電加工またはレーザ加工する方法などが用いられる。加工精度の観点から、好ましくは、金属基板11の表面に、感光性の合成樹脂ワニスを塗布し、フォト加工後に硬化させる方法が用いられる。
【0036】
その後、この方法では、図5(c)に示すように、導体パターン7を形成する。導体パターン7の形成は、アディティブ法やサブトラクティブ法など、プリント配線を形成する公知のパターンニング法が用いられる。微細パターンを形成できる観点から、好ましくは、アディティブ法が用いられる。アディティブ法では、例えば、ベース絶縁層12の表面に、化学蒸着やスパッタリグにより金属薄膜34(破線)を形成し、その金属薄膜34の表面にめっきレジストを形成した後、めっきレジストから露出する金属薄膜34の表面に、金属薄膜34を種膜として、電解めっきによりめっき層35を形成する。
【0037】
また、導体パターン7は、化学蒸着やスパッタリングにより金属薄膜34のみから形成することもできる。
なお、導体パターン7の形成では、図示しないが、電極8の表面および端子9の表面には、さらに電解めっきや無電解めっきより、異種の金属のめっき層を形成することもできる。その金属めっき層の厚みは、好ましは、0.05〜20μmである。
【0038】
次いで、この方法では、図6(d)に示すように、カバー絶縁層13を形成する。カバー絶縁層13の形成は、ベース絶縁層12を形成する方法と、同様の方法が用いられる。好ましくは、ベース絶縁層12の表面に、導体パターン7を被覆するように、感光性の合成樹脂ワニスを塗布し、フォト加工後に硬化させる方法が用いられる。なお、電極側開口部38および端子側開口部39は、カバー絶縁層13をパターンで形成する場合には、カバー絶縁層13を、電極側開口部38および端子側開口部39を有するパターンで形成すればよく、また、電極側開口部38および端子側開口部39は、例えば、放電加工する方法、例えば、レーザ加工する方法などにより、穿孔することもできる。
【0039】
その後、図6(e)に示すように、金属基板11を外形加工して、内側部3と、穿刺針6および電極部28を備える外側部4(ストッパ部31を含む)と、嵌合溝18と、折曲部5とを同時に形成する。金属基板11の外形加工は、例えば、放電加工、レーザ加工、機械打ち抜き加工(例えば、パンチ加工など)、エッチング加工などが用いられる。加工後の洗浄が容易である観点から、好ましくは、エッチング加工(ウエットエッチング)が用いられる。
【0040】
これによって、穿刺針6および電極8を備える複数の測定ユニット2を備える採血用回路基板1を得ることができる。
得られた採血用回路基板1には、その電極8に、図6(f)に示すように、薬剤30、すなわち、酵素として、例えば、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼなどや、例えば、メディエータとして、例えば、フェリシアン化カリウム、フェロセン、ベンゾキノンなどが、単独または組み合わせて塗布される。なお、薬剤30の塗布には、例えば、浸漬法、スプレー法、インクジェット法など適宜の方法が用いられる。
【0041】
また、薬剤30の種類によっては、電極8の表面に、上記したように、異種の金属のめっき層を形成した後、さらに、予め異種の金属の皮膜を形成しておいて、所定の電位差を付与することもできる。具体的には、金めっき層を形成した後、さらに、銀または塩化銀を、その金めっき層の表面に塗布することが例示される。
図7は、図1に示す採血用回路基板1が実装された、本発明のバイオセンサの一実施形態である血糖値測定装置の概略斜視図、図8は、図7に示す血糖値測定装置の使用方法を説明するための側断面図を示す。なお、図8において、紙面右側を「前側」、紙面左側を「後側」、紙面上側を「上側」、紙面下側を「下側」、紙面手前側を「左側」、紙面奥側を「右側」とし、図7の各方向は、図8の方向の例にならうものとする。
【0042】
次に、図7および図8を参照して、採血用回路基板1が実装された血糖値測定装置19の使用方法について説明する。
図7および図8において、上記により得られる採血用回路基板1は、上記したように、患者が指などの皮膚を穿刺して採血し、採血した血液中のグルコース量を測定するために、血糖値測定装置19に実装されて用いられる。
【0043】
すなわち、この血糖値測定装置19は、ケーシング41と、採血部42と、血液中のグルコースを測定する測定部43(図7において省略される)と、表示部44とを備えている。
ケーシング41は、血糖値測定装置19における各部材を収容するために用意され、箱状に形成されている。具体的には、ケーシング41は、採血部42および測定部43を内蔵するとともに、その表面には、表示部44が設けられている。また、ケーシング41には、前側開口部33、上側開口部22および折曲ガイド部49が形成されている。
【0044】
前側開口部33は、ケーシング41の前壁において、左右方向に延びる正面視略矩形状に開口されるように形成されており、後述するように、採血用回路基板1が前方へ進出するときに、一部(数個)の測定ユニット2が露出するように、形成されている。
上側開口部22は、ケーシング41の上壁の前側であって、左右方向中央部において、前後方向に延びる長孔として形成されており、具体的には、後述する駆動軸21が前後方向にスライド自在に挿通されるように、形成されている。
【0045】
折曲ガイド部49は、ケーシング41の前壁の左右方向中央部であって、前壁の上側開口部22の上端縁に設けられ、略平板状に形成されている。また、折曲ガイド部49は、後端縁を支点として前端縁が上下方向に揺動自在に設けられており、常には、上側開口部22より前方を遮るように、ケーシング41の前壁から前方斜め下側に向かうように配置されている。なお、折曲ガイド部49は、採血用回路基板1の穿刺時には、上側開口部22より前方を遮るように閉鎖する一方(図8(b)参照)、血糖値の測定時には、上側開口部22を露出させて、そこから最前側の測定ユニット2を露出させて、最前側の測定ユニット2と接触しないように開放させる(図8(d)参照)。
【0046】
また、折曲ガイド部49は、採血用回路基板1の穿刺時には、側面視において、その折曲ガイド部49の沿う方向と前後方向とのなす角度が、例えば、15〜60°、好ましくは、20〜45°に設定されている。
採血部42は、図8に示すように、駆動軸21、ガイド部23および採血用回路基板1を備えている。
【0047】
駆動軸21は、軸線が上下方向に延びるように配置され、その外周面全面には、駆動溝40が、採血用回路基板1の嵌合溝18に嵌合できるように、設けられている。すなわち、駆動軸21は、採血用回路基板1の中心開口部17(図1参照)に挿通され、駆動溝40が、嵌合溝18(図1参照)に嵌合している。これにより、駆動軸21は、嵌合溝18に対して上下方向に着脱自在、かつ、相対回転不能に嵌合され、採血用回路基板1を駆動軸21の軸線を中心として周方向に回転させるように設けられている。
【0048】
ガイド部23は、ケーシング41の上壁の上側開口部22における周端に設けられている。具体的には、ガイド部23は、駆動軸21の前後方向の進退を案内するように、設けられている。
採血用回路基板1は、駆動軸21によって、前後方向に進退可能で、かつ、駆動軸21の軸線を中心とした周方向に回転可能となるように、設けられている。また、採血用回路基板1は、電極8および端子9が下側に向かって露出するように、配置されている。また、採血用回路基板1は、進出時には、前側の数個の測定ユニット2が露出するとともに、これらのうち最前側の測定ユニット2の穿刺針6が、折曲ガイド部49と接触するように、設けられている。
【0049】
測定部43は、電極8と電気的に接続されており、接点26およびCPU25を備えている。
接点26は、採血用回路基板1の測定時に、測定に供する測定ユニット2の端子9(図2および図3参照)と接触するように、端子9に対して摺動自在に設けられている。また、接点26は、端子9を介して、電極8に電圧を印加できるとともに、電圧印加時の各電極8間の抵抗値の変化を検知できるように、設けられている。
【0050】
CPU25は、接点26と信号配線48を介して、電気的に接続されるとともに、表示部44と接続されている。また、CPU25は、採血用回路基板1による測定時に、接点26において検知される各電極8間の抵抗値の変化に基づいて、グルコース量を血糖値として算出できるように、設けられている。
表示部44は、ケーシング41の上壁の後側に設けられ、例えば、LEDなどからなり、CPU25により測定される血糖値を表示する。
【0051】
そして、血糖値測定装置19を使用するには、まず、図7(a)および図8(a)に示すように、駆動軸21を後側にスライドさせて血糖値測定装置19を用意するとともに、患者自身の指などを、折曲ガイド部49の下方に配置させる。なお、駆動軸21が後側に予めスライドされている場合には、駆動軸21をスライドさせる必要はない。
この場合には、血糖値測定装置19において、採血用回路基板1のすべての測定ユニット2が、前側開口部33から露出することなく、ケーシング41内に収容されている。
【0052】
この方法では、次いで、図7(b)および図8(b)に示すように、駆動軸21を前側にスライドさせて、穿刺針6を前側開口部33から露出させることにより、患者自身が指などに、この穿刺針6を穿刺する。
このとき、採血用回路基板1を前側に進出させて、測定ユニット2のうち、数個の測定ユニット2を、前側開口部33から露出させるとともに、最前側の測定ユニット2を折曲ガイド部49に当接させることにより、折曲部5を境として、内側部3に対して外側部4を斜め下方へ折り曲げる。そして、折り曲げられた外側部4の穿刺針6を、指に穿刺する。
【0053】
なお、折曲ガイド部49が側面視において上記した所定の角度で配置されていることから、折曲部5における折曲角度は、例えば、15〜60°、好ましくは、20〜45°となる。
また、このとき、穿刺針6の穿刺は、ストッパ部31が皮膚に当接すると、それ以上の穿刺が規制される。これにより、穿刺針6の穿刺深さは、例えば、0.5〜1.5mmとなる。
【0054】
次いで、この方法では、図8(c)に示すように、駆動軸21を後側にスライドさせて、穿刺針6を指などから引き抜くことにより、穿刺箇所から微量出血させる。
このとき、折曲ガイド部49によって折り曲げられた測定ユニット2は、折曲ガイド部49から離間されることにより、その折曲角度が緩和される。具体的には、折曲部5における折曲角度が、例えば、15〜60°、好ましくは、30〜45°になる。
【0055】
なお、穿刺箇所の微量出血を、必要により、穿刺箇所の近傍を押圧(圧迫)することにより、促進させることができる。
次いで、この方法では、図8(d)に示すように、折曲ガイド部49を、その前端部を上方に揺動させることにより、開放し、再度、駆動軸21を前側にスライドさせて、最前側の測定ユニット2の電極8を前側開口部33から露出させることにより、穿刺箇所に電極8を近づけて接触させる。
【0056】
すると、電極8の表面に、穿刺針6の穿刺により採取された血液が接触して、血液と薬剤30とが反応する。このとき、接点26は、端子9と接触するとともに、この接点26から、端子9を介して、電極8に電圧を印加する。そして、接点26により、電圧印加時の各電極8間の抵抗値の変化を検知し、この接点26による抵抗値の変化の検知に基づいて、CPU25が、グルコース量を血糖値として算出する。そして、CPU25により測定された血糖値が、表示部44において、表示される。
【0057】
その後、この方法では、図示しないが、駆動軸21を駆動軸21の軸線を中心として周方向に回転させることにより、採血用回路基板1を回転させて、使用後の測定ユニット2に対して回転方向上流側に隣接配置される未使用の測定ユニット2を、最前側に配置させる。その後、上記した図8(a)〜図8(d)に示した各工程が複数回実施されて、血糖値を複数回測定する。
【0058】
そして、この採血用回路基板1および採血用回路基板1を備える血糖値測定装置19によれば、穿刺針6の穿刺により血液を出血させて、出血させた血液を、測定ユニット2の電極8と簡便に接触させて、この電極8と電気的に接続されるCPU25によって、血糖値を簡便に測定することができる。
その結果、この採血用回路基板1および血糖値測定装置19は、簡易な構成により、血糖値を簡便に測定することができる。
【0059】
しかも、この採血用回路基板1では、1個の採血用回路基板1に、複数設けられる測定ユニット2によって、血糖値を、複数回測定することができる。
さらに、この採血用回路基板1では、測定ユニット2が、同一平面において放射状に配置されているので、1個の測定ユニット2の使用後には、採血用回路基板1を周方向に回転させることにより、使用後の測定ユニット2とその測定ユニット2に対して回転方向上流側に隣接する未使用の測定ユニット2とを交換することができる。そのため、複数回の測定毎に、測定ユニット2を簡便に交換することができる。
【0060】
また、この採血用回路基板1によれば、測定ユニット2の使用時おいて、これを折曲部5で折り曲げることにより、複数の測定ユニット2が配置される同一平面から、使用したい穿刺針6の先端29を離間させることができる。そのため、折り曲げられた穿刺針6によって、確実に穿刺することができる。
また、この採血用回路基板1によれば、嵌合溝18に、駆動軸21を嵌合して、駆動軸21を周方向に回転させることにより、採血用回路基板1を周方向に確実に回転させることができる。そのため、複数回の測定毎に、測定ユニット2をより一層簡便に交換することができる。
【0061】
なお、上記した図1に示す説明では、測定ユニット2を、採血用回路基板1に32個設けたが、その数は特に限定されず、ケーシング41の大きさなどに応じて適宜選択され、例えば、10個以上、好ましくは、20個以上、通常、100個以下、設けることができる。
また、上記した図1に示す説明において、採血用回路基板1の大きさは、ケーシング41の大きさや測定ユニット2の数などに応じて適宜選択され、特に限定されないが、例えば、その直径が、例えば、20mm以上、例えば、100mm以下である。直径が上記範囲に満たない場合には、測定ユニット2の数が過度に少なくなる場合がある。また、直径が上記範囲を超過する場合には、ケーシング41が過度に大きくなり、血糖値測定装置19の取扱いが困難となる場合がある。
【0062】
なお、上記した図2および図3に示す説明では、折曲部5を、内側部3および外側部4の間に設けたが、例えば、図示しないが、内側部3において、穿刺針6、具体的には、穿刺針6の先端29に対する径方向内側(穿刺方向上流側)部分の穿刺針6、すなわち、穿刺針6の径方向途中あるいは径方向内側端部に設けることもできる。
なお、上記した図1に示す説明では、嵌合溝18を、採血用回路基板1の中心開口部17における内周面全面に設けたが、例えば、図示しないが、内周面の一部の面のみに設け、残りの面を円筒形状(凹凸のない形状)に形成することができる。なお、この場合には、駆動軸21の駆動溝40(図7および図8参照)を、上記した嵌合溝18に対応する形状に形成する。
【0063】
さらに、嵌合溝18を、キー状に形成された駆動軸21に、キー嵌合できるキー溝として形成することもできる。
また、上記した説明では、本発明の体液採取用回路基板およびこの体液採取用回路基板を備えるバイオセンサを、採血用回路基板1およびこの採血用回路基板1を備える血糖値測定装置19を例示して説明した。つまり、体液採取用回路基板の穿刺針の穿刺により採取される体液を、血液として説明した。
【0064】
しかし、体液としては、生体内にある液体であれば、特に限定されず、例えば、細胞外液や細胞内液が挙げられる。細胞外液としては、上記した血液が除かれ、例えば、血漿、組織間液、リンパ液、あるいは、密な結合組織、骨および軟骨中の水分、細胞透過液などが挙げられる。そして、上記した体液の特定成分を、体液採取用回路基板およびこの体液採取用回路基板を備えるバイオセンサにより、測定することができる。
【実施例】
【0065】
実施例1
(図1に示す採血用回路基板の製造)
まず、厚み50μmで、SUS430からなる、長尺シート状の金属基板を用意した(図5(a)参照)。
次いで、金属基板の表面に、感光性ポリイミド樹脂前駆体(感光性ポリアミック酸樹脂)のワニスを塗布し、加熱乾燥して皮膜を形成後、露光・現像することにより、皮膜をパターンに形成した。その後、窒素雰囲気下、400℃に加熱して、厚み10μmのベース絶縁層を、上記したパターンで形成した(図5(b)参照)。
【0066】
次いで、ベース絶縁層の表面に、クロム薄膜および銅薄膜からなる金属薄膜をスパッタリングにより順次形成した。その後、金属薄膜の表面に、ドライフィルムレジストを積層し、露光・現像することにより、めっきレジストをパターンとして形成した。そして、めっきレジストから露出する金属薄膜の表面に、金属薄膜を種膜として、電解銅めっきにより、銅からなるめっき層を形成し、電極、端子および配線を備える導体パターンを形成した(図5(c)参照)。その後、めっきレジストおよびそのめっきレジストが形成されていた部分の金属薄膜をエッチングにより除去した。
【0067】
導体パターンの厚みは12μm、2つの電極(8a)の直径は0.3mm、1つの電極(8b)の長辺の長さは1.0mm、短辺の長さが0.6mmであった。また、2つの端子(9a)の周方向内側端縁の長さは4mm、周方向に沿う辺であって、径方向外側端縁(長辺)の長さは1mm、径方向内側端縁(短辺)の長さは0.5mmであった。また、1つの端子(9b)の幅は1mmであった。また、配線の幅は100μmであり、2つの電極8aおよび2つの端子9aをそれぞれ接続する配線の長さは25mm、1つの電極8bおよび1つの端子9bを接続する配線の長さは10mmであった。
【0068】
その後、ベース絶縁層の表面に、導体パターンを被覆するように、感光性ポリイミド樹脂前駆体(感光性ポリアミック酸樹脂)のワニスを塗布し、加熱乾燥して皮膜を形成後、露光・現像することにより、皮膜をパターンに形成した。その後、窒素雰囲気下、400℃に加熱して、厚み5μmのカバー絶縁層を形成した(図6(d)参照)。なお、カバー絶縁層は、電極側開口部および端子側開口部が形成されることにより、電極および端子が露出し、かつ、配線が被覆されるように形成した。
【0069】
その後、電極および端子の表面に、電解ニッケルめっき層(厚み0.5μm)、電解金めっき層(厚み2.5μm)を順次形成した。
次いで、金属基板の表面にドライフィルムレジストを積層し、露光・現像することにより、エッチングレジストをパターンとして形成した。そして、エッチングレジストから露出する金属基板を、塩化第二鉄をエッチング液とするウエットエッチングにより、エッチングし、金属基板を、穿刺針を備える複数(32個)の測定ユニットを備える上記したパターンとして外形加工した(図6(e)参照)。なお、この金属基板の外形加工によって、内側部、外側部(ストッパ部を含む)、嵌合溝および折曲部を形成した。
【0070】
なお、穿刺針の先端から1つの電極(8b)(先端から最も近い電極)までの長さが0.5mm、穿刺針の先端の角度が20°、ストッパ部の膨出部分の幅は0.5mm、ストッパ部の径方向(穿刺方向下流側)端縁と穿刺針の先端との離間長さは1.5mmであった。
これによって、採血用回路基板を得た。
【0071】
その後、得られた採血用回路基板において、各測定ユニットにおける電極に、グルコースオキシダーゼおよびフェリシアン化カリウム溶液を含む薬剤を、インクジェットにより塗布した(図6(f)参照)。
(図7および図8に示す血糖値測定装置の製造)
得られた採血用回路基板を、駆動軸およびガイドとともに、表示部が設けられたケーシング内に実装した(図7および図8参照)。
【0072】
採血用回路基板を実装するには、駆動軸を中心開口部に挿通して、駆動溝を嵌合溝に嵌合させるとともに、駆動軸をガイド部に、スライド自在に挿通させた。
(血糖値測定装置による血糖値測定)
まず、上記した血糖値測定装置を用意し、次いで、患者自身の指を、折曲ガイド部の下方に配置させた(図7(a)および図8(a)参照)。
【0073】
次いで、駆動軸を前側にスライドさせて、穿刺針を前側開口部から露出させることにより、患者自身が指に、この穿刺針6を穿刺した(図7(b)および図8(b)参照)。このとき、測定ユニットのうち、数個の測定ユニットを、前側開口部から露出させるとともに、最前側の測定ユニットを折曲ガイド部に当接させることにより、折曲部を境として、内側部に対して外側部を45°折り曲げた。そして、折り曲げられた外側部の穿刺針を、指に穿刺した。
【0074】
次いで、駆動軸を後側にスライドさせて、穿刺針を指から引き抜くことにより、穿刺箇所から微量出血させた(図8(c)参照)。これにより、折曲部において折り曲げられた測定ユニットは、折曲ガイド部から離間されて、折曲部における折曲角度が35°となり、その折曲角度が緩和された。
次いで、折曲ガイド部を開放し、再度、駆動軸を前側にスライドさせて、最前側の測定ユニットの電極を前側開口部から露出させて、穿刺箇所に電極を近づけて接触させた(図8(d)参照)。
【0075】
すると、血液により、グルコースが酸化、フェリシアン化イオンが反応した。同時に、接点から、端子を介して、電極に電圧を印加した。そして、接点により、電圧印加時の各電極間の抵抗値の変化を検知し、それに基づいて、CPUが、グルコース量を血糖値として算出した。そして、CPUにより測定された血糖値を、表示部において、表示させた。
その後、この方法では、駆動軸を駆動軸の軸線を中心として周方向に回転させることにより、採血用回路基板を回転させて、使用後の測定ユニットに対して回転方向上流側に隣接配置される未使用の測定ユニットを、最前側に配置させた。続いて、上記した各工程を実施して、血糖値を複数回(合計32回)測定した。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の体液採取用回路基板の一実施形態である採血用回路基板の平面図を示す。
【図2】図1に示す採血用回路基板の測定ユニットの拡大平面図を示す。
【図3】図1に示す採血用回路基板の測定ユニットの拡大背面図を示す。
【図4】図2のA−A線に沿う断面図を示す。
【図5】採取用回路基板の製造方法を説明するための製造工程図であって、(a)は、金属基板を用意する工程、(b)は、ベース絶縁層を形成する工程、(c)は、3つの電極を備える導体パターンを形成する工程を示す。
【図6】図5に続いて、採取用回路基板の製造方法を説明するための製造工程図であって、(d)は、カバー絶縁層を形成する工程、(e)は、金属基板を外形加工して、穿刺針を備える複数の測定ユニットと嵌合溝とを形成する工程、(f)は、電極に薬剤を塗布する工程を示す。
【図7】図1に示す採血用回路基板が実装された、本発明のバイオセンサの一実施形態である血糖値測定装置の概略斜視図を示す。
【図8】図7に示す血糖値測定装置の使用方法を説明するための側断面図を示す。
【符号の説明】
【0077】
1 採血用回路基板
2 測定ユニット
5 折曲部
6 穿刺針
8 電極
17 中心開口部
18 嵌合溝
19 血糖値測定装置
21 駆動軸
25 CPU
26 接点
29 先端
43 測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿刺針と、前記穿刺針の穿刺により採取される体液と接触させるための電極とを備える測定ユニットを備え、
前記測定ユニットは、同一平面において放射状に配置されるように、複数設けられていることを特徴とする、体液採取用回路基板。
【請求項2】
各前記測定ユニットは、前記穿刺針の先端に対する前記穿刺方向上流側において折り曲げ可能な折曲部を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の体液採取用回路基板。
【請求項3】
前記体液採取用回路基板の中心には、開口部が設けられ、
前記体液採取用回路基板の開口部における内周面には、前記体液採取用回路基板を周方向に回転させるための駆動部材に嵌合可能な嵌合部が形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の体液採取用回路基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の体液採取用回路基板と、
前記電極に電気的に接続され、前記体液の成分を測定する測定部と
を備えることを特徴とする、バイオセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−225934(P2009−225934A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73540(P2008−73540)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】