説明

体重を減量する装置

【課題】胃の部分へのチューブの導入を可能とするように寸法付けられた潰れ姿勢を有するチューブを提供する。
【解決手段】患者の体重減量を生じさせるデバイスは、管状の人工器官を含み、この人工器官はそれが第1の径を有する潰れた姿勢から第2の大きな径を有する膨張姿勢へ自己膨張可能である。減重を生じる方法においては、人工器官が潰れた姿勢に配置されて患者の胃へ挿入される。人工器官は、その潰れた姿勢から膨張姿勢へ自己膨張して胃の壁へ接触することが可能であり、これは飽和の感覚を生じるか及び/又はグーレリンのような飽和制御要因の変化を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は一般に人間の減量を達成するデバイス及び方法の分野に関し、更に詳しくは、人間の胃内にインプラント可能であり、空腹の感覚を制御するデバイスの使用にに関する。
【0002】
発明の背景
肥満を調節するために様々な医療的試みが用いられている。これらの試みはダイエット、メディケーション、及び外科手術的処置を含む。より優れた外科手術的処 置の1つは、垂直帯胃形成術又はRoux-en-Y吻合を伴う胃嚢である。しかしながら、これらの処置の各々には公知の複雑さが存在しているので、より優れた選択が望まれる。
【0003】
他の代替例は、胃内に占める体積により過食を防止する胃バルーンの移植を含む。残念ながら、胃バルーンはGI路(GI tract)へ降下するので、閉塞の原因となり、ひいては除去が必要となる。
【0004】
従って、肥満調節のための既存の試みに対して、首尾がよく、しかも侵襲性が最小の代替例を与えることが望ましい。
【0005】
発明の概要
本発明の原理を利用する飽和デバイスは、胃の部分へのチューブの導入を可能とするように寸法付けられた潰れ姿勢を有するチューブを含む。体内に位置すると、 このチューブは胃の内壁に接触するように自己膨張する。使用中には、胃内へ摂取された食物はチューブを通過する。代替的実施形態において、チューブは、その内部の食物と胃の周囲壁との接触を防止する材料から形成してもよい。1つの実施形態においては、チューブは胃腔内に配置可能にしてもよい。他の代替的実 施形態においては、デバイスは、胃底バスケット(fundal basket)(これは幽門洞チューブの基端へ取り付けても取り付けなくてもよい)と、腸チューブ(これは幽門洞チューブの末端へ取り付けても取り付けなくてもよい)との何れか一方又は両方を含んでもよい。
【0006】
他の代替的実施形態においては、小さな嚢を胃底バスケットのようなケー ジ構造体へ取り付けて、胃の基端に位置させてある。他の代替的実施形態においては、嚢は、ケージ構造体を伴わずに与えることができ、内視鏡検査案内縫合又は他の手段により基部胃壁に対して独立に取り付けてある。
【0007】
発明の詳細な説明
人間の胃S及びそれに関連する特徴の解剖図を図1に示す。胃Sは、その基端における胃底Fと、その末端における幽門洞Aとを含む。幽門洞Aは十二指腸D(小腸の基端領域)に付いている幽門Pへ送る。幽門P 内には、十二指腸Dから胃への食物の逆流を防ぐ括約筋がある。小腸の中間領域(十二指腸Dの末端に位置する)は空腸Jである。
【0008】
飽和デバイスの様々な実施形態が本明細書に説明されている。これらのデバイスの多くは、幽門洞A内に位置可能な幽門洞チューブを含み、また、胃底F内の移動 のために幽門洞チューブの基端へ接続された胃底チューブと、十二指腸D内の移動のために幽門洞チューブの末端に接続された腸チューブとの何れか一方又は両方を選択的に含んでもよい。
【0009】
このデバイスは、様々な部品を互いに分離して与えられるようにモジュラー化してもよい。このよう なモジュラーシステムにおいては、個別に移植された部品は、移植期間中に体内で相互に取り付けてもよく、また、これらの部品の特定の1つを移植後において も相互取り付けしないままにしてもよい。代替的に、医師は移植直前に部品を互いに組みたててもよい。モジュラー部品は、医師が患者に適した各部品について の大きさを選択することが可能になるので望ましい。他の代替例のように、部品(例えば幽門洞チューブ、腸チューブ及び/又は胃底バスケット)が分離して与えられていないが、単独ユニット移植を形成することに代わるように、デバイスを均一なデバイスとしてもよい。
【0010】
図2は本発明の原理を利用する飽和デバイス100の第1実施形態を示す。飽和デバイス100は、基端部分12及び末端部分14を有する細長い管状ボディ10を含む。基端 部分12は細径ネック16を含む。末端部分14は、一対の広がり部分18及びその間のウェスト部分20を含む砂時計型形状を有することが好ましい。
【0011】
管状ボディ10は、胃の幽門洞内に少なくとも部分的に位置して、幽門洞内へ移動する食物が管状ボディの中空内室を通過するような形状大きさにしてある。管状ボディ10(幽門洞チューブとも称する)は、ニチノールなどの形状記憶合金属又は他の形状記憶合金、或いは形状記憶ポリマーから製作してもよく、ニチノール又はステンレススチールワイア上に形成された柔らかなメッシュ又は他のフレームワークと、幽門洞チューブ10を通過する摂取された食物が胃壁に接触する ことを防止する重合体障壁との組み合わせから製作することが好ましい。従って、重合体障壁は、メッシュの外室又は内室上に形成された表皮としてもよく、又 はメッシュを重合体材料内に封入してもよく、或いはポリマーをメッシュの空隙内に配置してもよい。食物が胃中央から幽門へ通過する際に食物の幽門洞壁への接触を防止することにより、このデバイスはグーレリン(Ghrelin)又は他の飽満調節因子の変化を防止する。
【0012】
図3に示すように、デバイス100は少なくとも1つの薬剤投与貯蔵器22を選択的に含んでもよく、これは、飽満の感覚に関連したグーレリン又は他のホルモンの放出を 抑制することが知られる物質で充填される。このような物質は、化学的又は薬剤物質、治療分子又はセル、あるいは遺伝子物質としてもよい。このような貯蔵器22の各々は、流体浸透性重合体材料の第1の層と、貯蔵器から周辺組織へ物質を通過させる半浸透膜の第2の層との間に形成された流体ポケットを含んでもよい。代替的に、チューブを形成するのに用いた重合体材料は、低グーレリンレベルを維持するのに有益な物質を含浸させてもよい。
【0013】
貯蔵器又は抑制物質を包含する材料は、幽門洞内に置かれたデバイスの一部分内にあってもよく、及び/又は十二指腸内、特にバダー(vader)の膨大部の基端である十二指腸の区画に置かれた部分内にあってもよい。これは、このような物質についてのレセプターはこれらの領域に存在すると考えられているためである。
【0014】
移植期間中に、幽門洞チューブ10は、放射線学的誘導の下、又は内視鏡的誘導の下に患者へ盲目的に侵入させる。移植に先立って、幽門洞チューブ10は、幽門洞チューブ10をその縦軸に関して圧縮して管状シース26(図4参照)内へ挿入することにより、この管状シース26内に包装されていることが好ましい。
【0015】
シース26(その内側に包装された幽門洞チューブ10を有する)を患者の口を介して胃へ通過させて、図4Aに示すように幽門洞内に位置させる。次に、シース26の基端へ挿入された押圧デバイス28を用いて、幽門洞チューブ10をシース26の末端から押し出す。幽門洞チューブを形成するメッシュは、チューブ10がシース26から排出された際に、このチューブ10が膨張状態へ弾力的に径方向に開くように、自己膨張するように構成されていることが好ましい。膨張状態にある際には、幽門洞チューブは、それが接触する内室表面に対して圧力を及ぼすので、 飽満の感覚を作り出して、グーレリン放出を抑制する。壁に対するデバイスの径方向圧力は更に、デバイスを幽門洞の壁に対して固定させて、ぜん動の存在下においてさえも、デバイスが幽門を通じて移動することを防ぐ。代替的実施形態においては、幽門区画を重合体材料などにより覆って、胃の内容物を幽門から遮蔽する。これはグーレリン生成物などの空腹の感覚の化学的媒介物を抑制するであろう。
【0016】
末端部分14の砂時計型形状は、図4Bに示すように、デバイスが移植されたときにウェスト部分20が幽門括約筋に着座するように形状付けしてある。胃内のデバイスの移動を防止するための支援は、 その自己膨張特性により幽門の閉塞を避けることもできる。幽門洞チューブにウェスト部分20内のバルブ(図示せず)を含ませて、十二指腸から幽門洞への胆汁の還流を防止するようにすることも付加的には望ましいであろう。
【0017】
図4Cを参照すると、シース26を胃へ挿入して、係蹄 (snare)30のような把持機器をシース30に通して拡張することにより、デバイスの除去が実行される。係蹄30をチューブ10のネック16の回りに嵌めて引っ込めると、チューブ10が潰れてシース26へ引き込まれる。チューブ10がシース内に収まったならば、患者からシースを引き出す。
【0018】
除去のためにチューブの潰れを促進するために他の様々な機構を使用してもよいことが認められるであろう。例えば図16A及び図16Bは、少なくとも1つの径方向延長タブ13を含むように与えられた代替的な幽門洞チューブ11の基端部分の端面図を示す。タブ13は、チューブ11の貫流への干渉を最小にするように丸められて滑らかであることが好ましい。飽和デバイスを除去する際は、内視鏡的機器を用いてタブ13を内側へ引き込んで、チューブを内側へ潰れさせる。
【0019】
図5を参照すると、飽和デバイス110の代替的実施形態は幽門洞チューブ10aを含み、このチューブは上述の実施形態のそれと同様であるが、その末端において、 小径腸チューブ32を付加的に含む。腸チューブ32は、図2の幽門洞チューブ10に関連して説明したメッシュ及びポリマーの組み合わせから形成されていることが好ましい。これは小腸の基端部分から食物を離して保持する(即ち、十二指腸又は空腸及び十二指腸、炭水化物及び蛋白質が身体により最も吸収される小腸の部分から離す)ことにより、Roux en Y、即ち胃バイパス処置を模擬する。これは小腸の基端部分による食物の吸収を防止し、ひいては身体により吸収される食物の総量を低減させる。
【0020】
腸チューブ32は、幽門洞チューブ10aよりも小径であり、その径は小腸の壁を穏やかに押圧するようにされている。これはまた背腹側及び末梢側を通過して粘膜の損傷を伴わずに十二指腸の第2部分へ至るのに充分に柔軟にせねばならない。これは内視鏡へ最初に導入されるガイドワイアの使用により容易になる。
腸チューブ32は軟ワイアメッシュ(例えば、形状記憶合金、ニチノール、ステンレススチール合金、ステンレススチール、又は形状記憶ポリマーを含むポリマーから形成される)としてもよく、これはポリマーで被覆して、食物及び消化液が十二指腸の粘膜へ接触することを防ぐようにする。チューブ32はその末端にバルブ34を有するように設けてもよく、腸の内容物の還流を防ぐ働きをなす。腸チューブは、バダーの膨大部が閉塞されないことを保証するように開口33を含む。
【0021】
デバイス110の胃への搬入及び胃からの除去は、先述の実施形態に関連して説明した放射線学的又は内視鏡的案内の下に実行してもよい。通常のガイドワイアを用いて、腸チューブ32の位置決めを促進してもよい。ガイドワイアを用いるならば、ワイア移動を案内するように内視鏡 的又は放射線学的手法を用いて先ず十二指腸へ配置する。次に腸チューブ32および幽門洞チューブ10aをワイア上に位置させて、このワイア上で十二指腸又は空腸内の所定位置へ案内する。次いでガイドワイアを除去する。小腸チューブ位置は、押圧機器(例えば図4Aに示すプッシャー28)を用いて幽門洞チュー ブの基端に対して支持しつつ、包装シースを引き抜くことにより保持される。シースから解放されるにつれて、小腸チューブ及び幽門洞チューブは幽門洞壁に接触するように展開して膨張する。
【0022】
デバイス110をモジュラー化したものにおいては、幽門洞チューブ10a及び腸チューブ32は別個に設けてもよい。モジュラーシステムの部品を互いに取り付けるのは、操作前でもよく、或いは各部品が体内に配置された後でよい。
【0023】
飽和デバイス120の代替形態は、図6に示すように構成してもよく、これはその幽門洞チューブ10bが幽門洞内のみに位置し、幽門括約筋とは交差しないようにしてある。先述の実施形態のように、飽和デバイス120は自己膨張型であることが好ましく、これは軟ニチノール、形状記憶ポリマー、又はステンレスス チールメッシュ、好ましくはポリマーとの組み合わせから形成し得る。幽門洞チューブと胃壁との合いだの外向き径方向圧力は、ぜん動の存在下においても チューブが幽門を通じて末梢側へ移動することを防止する。付加的な機構を設けて胃底及び/又は幽門へ向かうチューブの移動を防止するようにしてもよい。例えば、図7に示すように、柔らかくて方向性のある「魚鱗」状構造36を幽門洞チューブ10bの外面上のメッシュ又はポリマーに形成してもよい。この図にはデバイスの幽門へ向かう移動を防ぐように向き付けられた鱗を示してあるが、胃底へ向かう移動は鱗を反対方向へ向き付けることにより防止し得ることを理解されたい。
【0024】
図8に示すように、複数のフック38を幽門洞チューブ10bの基端及び/又は末端に形成してもよい。これらのフックは幽門洞の粘膜に穏やかに付着して、基端 及び/又は末端方向への移動を防止する。このようなフックは、粘膜下組織又は筋肉を貫くことのないように充分に小さくせねばならない。
【0025】
図9A及び9Bは幽門洞チューブの移動を防止するようにチューブの外室上に形成されたリッジの使用を図解する。リッジは様々な形態(例えば図9Aの実施形態 に示すように螺旋リッジ40、図9Bの実施形態に示すようにリング42)に形成し得る。これらと同様な移動防止機構を図10D−図10Fに関連して説明したように腸チューブに適用してもよい。
【0026】
バスケット構造は胃底内への位置決めのために幽門洞チューブの基端から延出し得る。図 10A−図10Cを参照すると、胃底バスケット44a,44b,44cは、食物が胃底バスケットを通じて幽門洞チューブへ流れ易い寸法にされた大きな開口 を設けたメッシュから形成し得る。幽門洞チューブのメッシュとは異なり、胃底バスケットのメッシュは、重合体皮膜又は被覆で覆わないことが好ましい。胃底 バスケットは、例えばスプリング部材46a(図10A)、細長いストラット46b(図10B)、メッシュ46c(図10C)又は均等な構造的部品により、 幽門洞チューブへ機械的に接続される。胃底バスケットの基端は胃の胃底の壁面上に置かれるので、胃内のデバイスの移動が防止される。幽門洞チューブ及び胃 底バスケットを利用する実施形態はモジュラー形態で与えてもよく、この形態では幽門洞及び胃底部品が相互に分離しており、操作前又は後続の体内への移植の際に相互に取り付けられる。
【0027】
腸チューブ及び幽門洞チューブ部品を用いる実施形態においては、胃底バスケットが用いられているか否かに拘わらず、腸チューブを幽門洞チューブへ取り付けるために、同様なアタッチメント機構を用いてもよい。例えば図10E及び図10Fに示すように、 腸区画132b及び幽門洞区画110bを少なくとも1つの縦ストラットへ接続してもよい。代替的な実施形態はアタッチメントストラットを伴わずに与えてもよく、この場合には腸チューブ132aを幽門洞チューブ110aから隔てて配置して、その基端縁にネック区画133(又は図16A/図16Bのタブ13のようなタブ)を包含させて、内視鏡制御係蹄の回復を可能にさせるようにしてもよい(図10Dを参照)。既に説明したように、この種のデバイスはモジュラー 型又は一体型デバイスとして与えてもよい。
【0028】
図11を参照すると、幽門洞チューブ10b及び胃底バスケット44を有する実施形態は、幽門洞チューブへ取り付けられた腸チューブ32を更に含んでもよい。図5に関連して既に説明したように、腸チューブ32は食物を基端小腸から離して保つ役割を果たす。この腸チューブ32は図5の実施形態に関連して説明したのと同様な特性を有する。
【0029】
先述の実施形態のように、図10A―図10F及び図11の実施形態は、(例えば図12Aに示すようにシース26内で)潰れた状態で胃へ挿入することが好ましい。幽門洞及び胃底チューブのみを含む図10A−図10Cの実施形態の場合には、幽門洞チューブの末端尖端を幽門に配置して(或いは図2の実施形態のように幽門と交差させて)、シースを引き抜く。これらが 解放されると、幽門洞及び胃底ユニットは自己膨張して、僅かに短くなる。
【0030】
図10A―図10Fにおいて、小腸チューブが包含されるならば、このチューブは図5に 関連して上述したように、放射線学的案内又は内視鏡的案内或いはガイドワイア上で配置することができる。既に説明したように、幽門洞チューブ、胃底バス ケット及び腸チューブは、一体型デバイスの部品を形成してもよく、或いはモジュラー部品として個別に与えられてもよい。モジュラー型デバイスにおいては、 3つの部品の各々を個別に設けて、移植に先立ってか或いは部品が体内に配置された後に相互に取り付けるようにしてもよい。モジュラー型デバイスの他の形態 では、或る部品(但し、全ての部品ではなく、例えば胃底バスケットと幽門洞チューブ、又は幽門洞チューブと腸チューブ)が一体型デバイスとして、移植の前 か後にこの一体型デバイスへ取り付けるように付加的なモジュラー部品を与えてもよい。
【0031】
図12Bを参照すると、デバイスの除去 は、それが幽門洞チューブのみを含むか、腸及び幽門洞チューブを含むか、或いは胃底、幽門洞及び小腸チューブを含むかに拘わらず、次のようにして実行でき る。シース26を胃内へ伸張させて、このシースを通じて把持機器を伸張させ、デバイスの基端を把持して、チューブをシース内へ引っ張ると、チューブが潰れ る。ワイア係蹄ループを把持機器として用いるならば、係蹄をネック(例えば図2に示すネック16、又は図12Bに示すように胃底バスケットの基端における 同様なネック17)の周りに配置して、デバイスを把持する。係蹄ループとの係合は、係蹄がネックの周りを締め付けてシース26内へ引き込まれるにつれて、 チューブが潰れることを付勢する。代替的に、図16に関連して説明したように、チューブの基端はタブ13を含んでもよく、これはデバイスの潰れを促進する ように、内視鏡機器を用いて径方向内側へ引っ張られる。
【0032】
他の代替的な飽和デバイス130を図13に示す。先述のデバイスのように、デバイス130は、幽門洞へ到来する食物と幽門洞壁との間の直接接触を最小化するように幽門洞内に配置可能な幽門洞チューブ10cを含む。この幽門洞チューブ10cは軟重合体材料と、ニチノール、ステンレススチール及び/又はポリマー上に形成された補強部材との組み合わせか ら形成し得る。図13に示す実施形態においては、デバイス130は重合体スリーブ48から形成されており、このスリーブはその材料に埋設されたニチノールストラット50を有する。ステンレススチール又は重合体補強バンド52は、管状部材の内壁に沿って長さ方向に延出している。軟弾性ポリマーから形成された膨張自在貯蔵器54を 管状スリーブ48の外面上に配置してある。充填チューブ56は貯蔵器へ連通接続してある。このデバイスを幽門洞内に配置した後、貯蔵器54に塩水を充填し て、スリーブ48が幽門洞壁へ接触するように拡張させることにより、デバイスを幽門洞内の所定位置へ保持する。充填チューブ56は塩水を用いる膨張に続いて貯蔵器から取り外せる。塩水の漏洩を防止するために、一方向バルブ(図示せず)を充填チューブの取り付け点において、貯蔵器内に配置してもよい。
【0033】
他の代替的な実施形態の飽和デバイス200を図14及び図15に示す。デバイスは、ステント(stent)状デバイスを形成するようにコイル状にされたワイア部材から形成し得る。このコイルは、例えばニチノール又は重合体などの形状記憶材料のコイルを形成して、材料を所定の形状に形状設定することにより、内部ルーメン壁の輪郭に整合するように輪郭付けしてもよい。デバ イス200は、幽門洞内に配置可能な基端部分202と、十二指腸球又は更に小腸内に配置し得る末端部分204とを有する。コイルのピッチは、デバイス 200に所望の強度及び可撓性を与えるように選択される。
【0034】
直線部分206は基端及び末端部分202,204に接続する。直線 部分206は幽門括約筋内に配置可能である。通常の状態では、幽門括約筋は、胃がその内容物を十二指腸へ排出する準備ができるまで閉止状態にある。直線部分206は、幽門括約筋がその通常の機能を正常に果たすことを可能にしつつ、基端及び末端部分202,204を接続する構造を与える点で有益である。
【0035】
デバイス200についての好ましい実施形態において、材料はワイアであるが、様々な代替的な材料をこの目的のために使用し得ることに留意されたい。例えば、 デバイス200はリボン状材料から形成してもよく、又は金属シートから形成してもよく、或いは、管材から所定形状に切断してもよい。
【0036】
更に他の実施形態の飽和デバイス300を図17Aに図解する。デバイス300は、胃の基端領域に配置された管状嚢302を含む。嚢302は、基端を含み、これは図示のように胃−食道接合(gastro_ o−esophagealjunction)の僅かに基端に配置させることが好ましい。好ましくは嚢の壁は基端から末端へ向かって内側へテーパー状である。基端開口304、例えば約25乃至50mm径、を基端に配置してあり、約6乃至12mm径を有する末端開口308を末端に形成してある。基端開口304は好ましくは食道に整合するように配置させ、末端開口308は胃の内室へ開口させる。
【0037】
その容積が小さい(約30cc乃至50cc程度の容積とし得る)ので、嚢は一度に食べられる食物の量を制限する役割を果たす。患者に摂取された食物は、消化性酵素が破壊されて、食物が末端開口308を通過するのに充分に下降するまで嚢内に留まる。
【0038】
嚢は自己膨張型であることが好ましく、様々な形態をとり得る。例えば図18を参照すると、嚢はストラット310、又はニチノール、ステンレススチール、ポリマー(形状記憶ポリマーを含む)から形成されたメッシュとしてもよい。リン グ312をデバイスの基端において、ストラット/メッシュに取り付けて、このリングもまたニチノール、ステンレススチール、ポリマー(形状記憶ポリマーを 含む)から形成してもよい。材料313で被覆された嚢の外面又は内面は食物が嚢の側部を通じて通過することを防ぐ。このような材料の一例は、例えばデュポ ン社により商標名「Dacron」の下に販売されているポリエステルのようなポリエステル材料である。
【0039】
図19A及び図19Bは嚢302aの他の例を示す。嚢302aは、形状記憶コイルから形成されており、これは漏斗形状に熱設定してある。このコイル自体は、周辺を取り囲む胃壁 に対する食物の移動を防止するのに充分なように小さくし得るが、Dacronポリエステル又は他の材料313a(図19B)でコイルの内面又は外面を選択的に被覆してもよい。材料313aは、図19Bに示すように、最基端コイル312aとその隣接コイルとの間に挟まれて、所定位置に保持されている。
【0040】
嚢302,302aには、基端から末端への相当に長い寸法(例えば約2.5乃至5.0cm)を与えて、図18及び図19Aに示すように嚢に漏斗形状を持たせるようにしてもよい。但し、嚢についての様々な代替的な形状を用いてもよい。例えば、嚢は、その基端から末端への寸法をより短くして、その底面に小穴を有する浅皿の形状をとってもよい。
【0041】
胃嚢は単独で又は他の部品との組み合わせで用いてもよい。付加的な部品を伴わずに使用するならば、嚢の基端(例えば、嚢302のリング312又は嚢302a のリング312a)は、内面胃壁に対して縫合により取り付けられた縫合リングとしての役割を果たし得る。この縫合は、胃壁とデバイスとの間の接合を強化するように材料313,313a(図19B参照)に通してもよい。これに代えて、嚢は縫合を伴わない単独のデバイスとして用いてもよく、この場合にはスト ラット、メッシュ又はコイルの径方向膨張力により所定位置に保持し得る。
【0042】
代替的に、胃嚢はより大型の飽和デバイスの一部分としてもよい。例えば図17Bを参照すると、嚢の基端(例えば図18の嚢のリング312又は図19Aの嚢の上部コイル312a)を大型ケージ構造314の基端へ接続してもよい。ケージ314は食道から幽門洞の基端部分へ延在 させて、上述の胃底バスケットと同様にしてもよい。大型のステント状構造を自己膨張性材料、例えばステンレススチール、或いは、ニチノール又はポリマーな ど形状記憶材料から形成することも好ましい。ケージ314は主に胃を拡張させて飽和の感覚を形成するように機能する。図示のように、嚢300はケージ 314の内室へ懸架されている。
【0043】
付加的に、嚢(ケージ314を伴うか又はこれを伴わずに使用する)をその基端において、アライメント延長部316へ取り付けてもよい。図17Cを参照すると、アライメント延長部316は食道へ延びる管状ステント部分である。1つの実施形態において、延長部316は約5cm長とし得る。これは主に嚢の基端開口を食道に整合させることにより、食道を通過する食物が嚢へ容易に通過するように機能する。
【0044】
最終的に、包囲されたバイパステール(図示せず)は、嚢の末端開口308から、幽門洞を通じて小腸へ延出して、胃バイパス処理を模擬する。テールの構造は図5を参照して説明した腸チューブと同様にし得る。
【0045】
胃嚢及びそれに関連する部品は、先述の実施形態に関して説明した形式の手順を用いて移植及び除去し得る。胃嚢がケージを含む実施形態においては、アライメン ト延長部、及び/又はバイパステール、部品を同時に単独デバイスとして移植してもよい。代替的に、これらは個別に移植して、身体内で互いに一度に取り付ける後続の縫合のために区画化してもよい。
【0046】
飽和デバイスの他の実施形態を図20に示す。この飽和デバイスは十二指腸吸収遮蔽体を含み、細長いチューブ400はバダーの膨大部の僅かに基端位置において、小腸内に配置可能である。例えば、 遮蔽体はバダーの膨大部から約1cm以上の距離に配置してもよい。チューブが膨大部(胆汁が十二指腸へ通過する開口)へ接触しないようにチューブを位置決めすることは、炎症及び胆汁性炎症のおそれを最小化するために望ましいことである。
【0047】
チューブ400は好ましくは可撓性チューブであり、好ましくは約20cm以上の長さである。これは上述の飽和デバイスについて説明したように構成し得る。例として、これは自己膨張性材料、例えば ニチノール、ステンレススチール、又は形状記憶ポリマー(例えば、オリゴ−(カプロラクトン)デメサアクリレイト又はn−ブチルアクリレイト)から形成して、消化液に抵抗のある(例えばシリコンなど)のポリマー被覆で被覆して、チューブの壁を通じて食物副生物の通過を防止するようにしてもよい。
【0048】
チューブ400は十二指腸の壁を通じて食物の吸収を防止することにより、小腸内のカロリー摂取を防ぎ、ひいては体重減量の補助具として機能する。
【0049】
チューブ400は上述した技法を用いて送出して引き抜いてもよく、本明細書に説明した様々な手法(係蹄、刺棘、鱗、フックを含む)又は十二指腸の周囲壁に対して 膨張したデバイスの外向き圧力の下で所定位置へ保持し得る。チューブ400は単独で又は上述した形式の部品との組み合わせで使用し得る。
【0050】
飽和デバイスの様々な実施形態を本明細書に説明した。これらの実施形態は例示として与えられており、本発明の目的を限定することを意図するものではない。更に、本明細書に説明した実施形態の様々な特徴は、幾多の付加的な実施形態を生み出すように様々な手法で組み合わせ得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は人間の胃及び小腸部分の模式図である。
【図2】図2は本発明の原理を使用する飽和デバイスの平面図である。
【図3】図3は図2のデバイスと同様であるが、薬剤投与貯蔵器を含む飽和デバイスの平面図である。
【図4A】図4Aは図2又は図3のデバイスの幽門洞内への導入を示す胃、幽門、腸の模式図である。
【図4B】図4Bは図4Aと同様な模式図であって、デバイスを内部位置で示す図である。
【図4C】図4Cは図4Bと同様な模式図であって、人体からの後続の除去のためにシースへのデバイスの引き抜きを示す図である。
【図5】図5は図4Bと同様な模式図であって、幽門洞チューブ及び腸チューブを有する代替的デバイスの位置を示す図である。
【図6】図6は図4Bと同様な模式図であって、幽門括約筋と交差しない幽門洞チューブを有する代替的デバイスの位置を示す図である。
【図7】図7は、外面へ形成された保持構造を有し、図6の幽門洞チューブと同様な幽門洞チューブの平面図である。
【図8】図8は、基端及び末端において、形成された保持構造を有し、図6の幽門洞チューブと同様な幽門洞チューブの平面図である。
【図9A】図9Aは、外面に形成された保持リッジの変形例を有し、図6の幽門洞チューブと同様な幽門洞チューブの平面図である。
【図9B】図9Bは、外面に形成された保持リッジの変形例を有し、図6の幽門洞チューブと同様な幽門洞チューブの平面図である。
【図10A】図10Aは幽門洞チューブ及び胃底バスケットを有する飽和デバイスの斜視図である。
【図10B】図10Bは幽門洞チューブ及び胃底バスケットを有する飽和デバイスの斜視図である。
【図10C】図10Cは幽門洞チューブ及び胃底バスケットを有する飽和デバイスの斜視図である。
【図10D】図10Dは幽門洞チューブ及び胃底バスケットを有する飽和デバイスの部分的な縦側面図であり、幽門洞チューブの一部及び胃底バスケットの一部を示す図である。
【図10E】図10Eは幽門洞チューブ及び胃底バスケットを有する飽和デバイスの部分的な縦側面図であり、幽門洞チューブの一部及び胃底バスケットの一部を示す図である。
【図10F】図10Fは幽門洞チューブ及び胃底バスケットを有する飽和デバイスの部分的な縦側面図であり、幽門洞チューブの一部及び胃底バスケットの一部を示す図である。
【図11】図11は幽門洞チューブ、胃底バスケット、及び腸チューブを有する飽和デバイスの平面図である。
【図12A】図12Aは図10A−10Cのようなデバイスの体内への挿入を模式的に示す平面図である。
【図12B】図12Bは図10A−10Cのようなデバイスの体内からの除去を模式的に示す平面図である。
【図13】図13は人間の胃内に位置した飽和デバイスの代替的実施形態を模式的に示す図である。
【図14】図14はコイル形態を用いる飽和デバイスの縦側面図である。
【図15】図15は人間の胃内に位置した図15の飽和デバイスを模式的に示す図である。
【図16A】図16Aは幽門洞チューブ、胃底バスケット、又は腸チューブなどの飽和デバイスのためのチューブの端面図であり、チューブの除去を促進するのに使用し得るタブ部材を示す図である。
【図16B】図16Bは幽門洞チューブ、胃底バスケット、又は腸チューブなどの飽和デバイスのためのチューブの端面図であり、チューブの除去を促進するのに使用し得るタブ部材を示す図である。
【図17A】図17Aは独立型胃嚢を使用する代替的飽和デバイスの生体内位置決めを模式的に示す図である。
【図17B】図17Bは図17Aと同様な模式図であって、胃嚢との組み合わせのケージを更に示す図である。
【図17C】図17Cは図17Bと同様な模式図であって、胃嚢及びケージとの組み合わせのアライメント延長部を更に示す図である。
【図18】図18は図17A−図17Cに示すように使用し得る形式の胃嚢の斜視図である。
【図19A】図19Aは図17A−図17Cに示すように使用し得る形式の代替的な胃嚢の斜視図である。
【図19B】図19Bは図19Aの胃嚢の側断面図である。
【図20】図20は十二指腸吸収遮蔽人工器官を使用する代替的飽和デバイスの生体内位置決めを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体重減量を生じさせる装置であって、
胃内に配置するように寸法付けられた人工器官を備え、この人工器官は食物が通過する通路のための管腔を規定すると共に、潰れた姿勢から膨張姿勢へ自己膨張自在であり、この人工器官は更に、
幽門洞部分を含み、この幽門洞部分は胃の幽門洞内に配置して、この幽門洞部分の外壁が胃の隣接する壁へ接触するように寸法付けられており、
前記人工器官は更に、
腸部分を含み、この腸部分は十二指腸内に配置して、この腸洞部分の外壁が十二指腸の隣接する壁へ接触するように寸法付けられており、
前記人工器官は更に、
胃の幽門括約筋内に配置するように前記幽門洞部分と前記腸部分との間に延在する中間部分を含む装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−200661(P2011−200661A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109938(P2011−109938)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【分割の表示】特願2003−522406(P2003−522406)の分割
【原出願日】平成14年8月26日(2002.8.26)
【出願人】(505448947)シネコー・エルエルシー (15)
【Fターム(参考)】