説明

作業工具

【課題】簡単な構成で作業工具における先端工具を保持できる技術を提供する。
【解決手段】クランプシャフト122に形成されたクランプヘッド123に対して着脱可能なアウタフランジ130を有する電動式振動工具が構成される。クランプシャフト122は、カムレバーが位置するクランプ位置とリリース位置に応じて、長軸方向に移動可能に構成されている。カムレバーがリリース位置に位置するときに、アウタフランジ130は、クランプシャフト122に対して、クランプシャフト122の長軸方向に交差する方向に直線状に移動されてクランプヘッド123と係合して、位置決めおよび固定される。カムレバーがクランプ位置に位置するときに、コイルバネの付勢力によって、アウタフランジ130とスピンドルの間にクランプ力が発生し、ブレードは、当該クランプ力によってクランプシャフト122に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挟持された先端工具を駆動させる作業工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2007−533472号公報には、作業スピンドルと締結要素に挟持された工具を駆動させる作業工具が記載されている。この作業工具は、締結要素が作業スピンドルに対して、工具を保持するクランプ位置と、作業スピンドルから取り外される開放位置の間で摺動可能に構成されている。そして、クランプ位置において、作業スピンドルの内側に設けられた止めアセンブリで、締結要素のクランプシャフトを保持し、作業スピンドルの内側に設けられたバネ要素により与えられるクランプ力によって、作業スピンドルと締結要素の間に工具を挟持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−533472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特表2007−533472号公報に記載された作業工具は、止めアセンブリやバネ要素等によって締結要素を保持することで、先端工具を保持する構成であるため、締結要素を保持するための止めアセンブリやバネ要素等を設ける必要があり、先端工具を保持するための構造が複雑となる。そこで、本発明は、上記に鑑み、作業工具において、簡単な構成で先端工具を保持できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る作業工具の好ましい形態によれば、駆動シャフトと、駆動シャフトに対して着脱可能なクランプ部材とを有し、駆動シャフトが挿通されるとともに、クランプ部材によるクランプ作用を介して前記駆動シャフトに保持される先端工具を駆動する作業工具が構成される。駆動シャフトは、クランプ部材と係合する係合部を有し、クランプ部材の取り付けは、駆動シャフトに対してクランプ部材が駆動シャフトの長軸方向に交差する交差方向に移動されて、係合部に対して位置決めおよび固定され、駆動シャフトが先端工具を挿通する方向にクランプ力を発生させる構成となっている。なお、「クランプ部材によるクランプ作用」は、クランプ部材と他の部材との協働により構成されることを好ましい。
【0006】
本発明によれば、駆動シャフトに対して着脱可能なクランプ部材によって先端工具をクランプするため、駆動シャフトとクランプ部材の簡単な構成で先端工具を保持することができる。さらにクランプ部材の取り付けは、駆動シャフトに対して駆動シャフトの長軸方向に交差する交差方向に移動させることにより、クランプ部材を係合部に対して位置決めおよび固定して、駆動シャフトが先端工具を挿通する方向にクランプ力を発生させるため、クランプ部材の取り付けを容易に行うことができる。
【0007】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、クランプ部材は、駆動シャフトに対して駆動シャフトの長軸方向と交差する方向に直線状に移動されて、係合部に対して位置決めおよび固定される構成である。
【0008】
本形態によれば、クランプ部材は、駆動シャフトの長軸方向に交差する方向に直線状に移動されることにより、係合部に対して位置決めおよび固定される構成であるため、直線状の単純な移動でクランプ部材の取り付けを容易に行うことができる。
【0009】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、クランプ部材は、駆動シャフトに対して駆動シャフトの長軸方向に関する周方向に円弧状に移動されて係合部に対して位置決めおよび固定される構成である。
【0010】
本形態によれば、クランプ部材は、駆動シャフトの長軸方向に関する周方向に円弧状に移動されることにより、係合部に対して位置決めおよび固定される構成であるため、円弧状の単純な移動でクランプ部材の取り付けを容易に行うことができる。
【0011】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、クランプ部材は、係合部と係合する第1の部分と、係合部と係合不能な第2の部分とを有している。そして、駆動シャフトとクランプ部材は、第1の位置に位置するときに第1の部分が係合部に係合し、第2の位置に位置するときに第2の部分が係合部に対して着脱可能であり、第1の位置と第2の位置との間で移動可能に構成されている。
【0012】
本形態によれば、第2の位置から第1の位置に移動することで、クランプ部材が駆動シャフトに係合し、第1の位置から第2の位置に移動することでクランプ部材を駆動シャフトから取り外すことができる。そのため、クランプ部材と駆動シャフトの位置関係を第1の位置と第2の位置との間の単純な移動で、クランプ部材を駆動シャフトに対して容易に着脱することができる。
【0013】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、駆動シャフトは、先端工具を保持する保持位置と、先端工具の保持を解除する解除位置との間で移動可能に構成されている。そして、クランプ部材は、保持位置において先端工具を保持し、解除位置において駆動シャフトに対して着脱可能に構成されている。
【0014】
本形態によれば、駆動シャフトは保持位置と解除位置とを移動可能であり、解除位置においてクランプ部材が駆動シャフトに対して着脱可能に構成されているため、駆動シャフトの位置に応じてクランプ部材の着脱が可能となる。すなわち、クランプ部材の着脱に関して誤動作を抑制することができる。さらに、保持位置においてクランプ部材が先端工具を確実に保持することができる。また、駆動シャフトを保持位置と解除位置とに移動させることで、特別な工具を用いることなく、先端工具を簡単に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、作業工具において、簡単な構成で先端工具を保持できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電動式振動工具の部分断面図である。
【図2】図1のII−II線における断面図である。
【図3】アウタフランジとクランプシャフトの斜視図である。
【図4】アウタフランジがクランプシャフトに固定された状態を示す斜視図である。
【図5】カムレバーがリリース位置に位置する状態を示す図である。
【図6】第2実施形態に係るアウタフランジとクランプシャフトの斜視図である。
【図7】アウタフランジがクランプシャフトに固定される前の状態を示す斜視図である。
【図8】アウタフランジがクランプシャフトに固定された状態を示す斜視図である。
【図9】第3実施形態に係るアウタフランジとクランプシャフトの斜視図である。
【図10】アウタフランジをクランプシャフトが係合する側からみた斜視図である。
【図11】アウタフランジがクランプシャフトに固定される前の状態を示す斜視図である。
【図12】アウタフランジがクランプシャフトに固定された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態につき、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態は、作業工具として、電動式振動工具に本発明を適用した例である。
【0018】
(第1実施形態)
図1に示すように、電動式振動工具100は、例えば、ブレードや研磨パッド等の複数種類の工具を選択的に装着し、装着された工具を振動させて、被加工材に対して工具の種類に応じた切断や研磨などの加工を行う作業工具である。本実施形態では、工具の一例としてブレード200を用いて説明する。なお、ブレード200等の工具が、本発明における「先端工具」に対応する実施構成例である。
【0019】
電動式振動工具100は、本体ハウジング101に収納された駆動機構102、工具保持機構103、工具保持解除機構104等を主体として構成されている。
【0020】
図1、図2に示すように、駆動機構102は、モータ110、偏心軸112、ベアリング113、被駆動アーム114、スピンドル接続部115等を主体として構成されている。偏心軸112は、モータ110の出力軸111の先端であって、出力軸111の回転軸に対して偏心した位置に、回転軸と平行な方向に延在して配置されている。ベアリング113は、偏心軸112に取り付けられている。被駆動アーム114は、スピンドル接続部115からモータ110に向けて延在する2本のアーム部114aで構成されている。そして、被駆動アーム114は、2本のアーム部114aがベアリング113の外側の対向する2箇所において、ベアリング113に当接するように配置されている。なお、図2においては、説明の便宜上、本体ハウジング101の図示を省略している。
【0021】
工具保持機構103は、ブレード200を保持するとともに、モータ110の出力をブレード200に伝達させてブレード200を振動させる機構であり、スピンドル120、駆動伝達軸121、クランプシャフト122、アウタフランジ130、クランプシャフト保持機構135等を主体として構成されている。
【0022】
スピンドル120は、中空の円筒状部材である。また、駆動伝達軸121は、中空の円筒状部材であり、スピンドル120と連結している。スピンドル120と駆動伝達軸121は、モータ110の出力軸111に対して交差する方向に長軸方向が延在するように配置されている。連結したスピンドル120と駆動伝達軸121は、長軸方向周りに回転可能にベアリング125,126を介して、本体ハウジング101に支持されている。
【0023】
図3に示すように、クランプシャフト122は、略円柱状の部材であり、軸122aと、軸122aの一方の端部に形成された軸122aより径の小さいアウタフランジ取付部122bと、アウタフランジ取付部122bと連接するクランプヘッド123を有している。クランプヘッド123は、アウタフランジ取付部122bの径方向の大きさよりも大きく、換言すると、クランプヘッド123は、アウタフランジ取付部122bに対して径方向に突出して形成されている。このクランプヘッド123は、図1に示すように、ブレード200に形成された貫通孔に挿通してブレード200を保持するため、ブレード200の貫通孔よりも小さく、貫通孔に挿通可能に形成されている。このクランプシャフト122は、軸122aがスピンドル120の内側にスピンドル120の長軸方向と平行に配置されており、長軸方向に移動可能とされている。このクランプシャフト122、クランプヘッド123がそれぞれ、本発明における「駆動シャフト」、「係合部」に対応する実施構成例である。
【0024】
図3に示すように、アウタフランジ130は、平面視で略C字状の円盤状部材であり、側面視で凹部131を有する。アウタフランジ130は、アウタフランジ取付部122bに着脱可能に構成されており、凹部131がクランプヘッド123に係合するよう構成されている。このアウタフランジ130が、本発明における「クランプ部材」に対応する実施構成例である。
【0025】
図4に、アウタフランジ130がクランプシャフト122に装着された状態を示す。アウタフランジ130は、クランプシャフト122の長軸方向に交差する径方向から直線状に移動されることで、アウタフランジ取付部122bに係合する。このとき、凹部131がクランプヘッド123と係合して、アウタフランジ130がクランプヘッド123に対して位置決め、および固定される。アウタフランジ130の固定は、凹部131とクランプヘッド123の形状的な係合だけでなく、当該係合によって生じる摩擦力も影響する。
【0026】
クランプシャフト保持機構135は、図1に示すように、クランプシャフト122を保持して、クランプヘッド123をスピンドル120に近接する方向に付勢する機構である。クランプシャフト保持機構135は、軸方向移動部材136、サークリップ137、コイルバネ138等を主体として構成されている。
【0027】
軸方向移動部材136は、クランプシャフト122が挿通する貫通孔が形成された略円盤状の部材であり、外径はスピンドル120の中空部の内径とほぼ同じ大きさを有する。サークリップ137は、クランプシャフト122のクランプヘッド123と反対側の端部に係合する部材である。サークリップ137の外径は、軸方向移動部材136の貫通孔よりも大きく、軸方向移動部材136に挿通されたクランプシャフト122が貫通孔から抜けることを防止している。
【0028】
クランプシャフト122は、軸方向移動部材136がスピンドル120の内側に配置された状態で、クランプシャフト122の軸122aがスピンドル120および軸方向移動部材136に挿通して、サークリップ137がクランプシャフト122と係合することによりクランプシャフト保持機構135に保持される。これにより、クランプシャフト122が、クランプシャフト保持機構135によってスピンドル120の長軸方向に平行に保持される。
【0029】
また、スピンドル120内側の軸方向移動部材136とスピンドル120の間には、軸122aと平行な方向に付勢力を作用させるコイルバネ138が配置されている。そして、コイルバネ138が軸方向移動部材136を付勢することにより、クランプヘッド123をスピンドル120に近接する方向に付勢している。
【0030】
以上の通り構成された工具保持機構103は、コイルバネ138の付勢力によって、クランプヘッド123に係合したアウタフランジ130をスピンドル120に近接する方向に付勢しており、これによりアウタフランジ130とスピンドル120の間に配置されたブレード200を一体に保持している。このコイルバネ138の付勢力によって、アウタフランジ130とスピンドル120の間に、クランプシャフト122の軸方向に、ブレード200を保持するクランプ力が発生する。
【0031】
工具保持解除機構104は、クランプシャフト122を付勢しているコイルバネ138の付勢力を解除することで、アウタフランジ130をクランプシャフト122から取り外し可能にする機構である。アウタフランジ130が取り外されることによって、スピンドル120とアウタフランジ130に挟持されたブレード200を取り外すことができる。この工具保持解除機構104は、スラストピン140、カムレバー150等を主体として構成されている。
【0032】
スラストピン140は、駆動伝達軸121の内側に配置され、駆動伝達軸121の長軸方向に摺動可能とされている。スラストピン140の一方の端部は、軸方向移動部材136と当接可能に配置されており、他方の端部は、カムレバー150と当接可能に配置されている。
【0033】
カムレバー150は、スラストピン140に当接して、スラストピン140を駆動伝達軸121の長軸方向に摺動させる部材であり、レバー部151、旋回軸152、偏心部153を主体として構成されている。
【0034】
カムレバー150は、レバー部151が駆動伝達軸121の長軸方向に対して直交する旋回軸152周りに旋回可能に構成されている。旋回軸152周囲には、スラストピン140と当接可能な偏心部153が設けられている。偏心部153は中心位置が、旋回軸152の軸中心に対して偏心して配置されており、これにより、偏心部153の外周の各箇所において、旋回軸152の軸中心からの距離が異なるように構成されている。
【0035】
具体的には、図1に示すように、レバー部151が旋回軸152からモータ110に向かう方向に位置(以下、クランプ位置と称する)する場合には、偏心部153はスラストピン140と当接していない。一方、図5に示すように、レバー部151を旋回させて、レバー部151が旋回軸152からクランプ位置と反対に向かう方向に位置(以下、リリース位置と称する)する場合には、偏心部153はスラストピン140と当接している。すなわち、レバー部151をクランプ位置からリリース位置に向けて旋回させることで、リリース位置に向かう途中で偏心部153がスラストピン140に当接する。その位置からさらに、レバー部151をリリース位置に向けて旋回させることで、偏心部153がスラストピン140を駆動伝達軸121の長軸方向におけるクランプシャフト122が配置された側(下方)に向かって移動させるよう構成されている。
【0036】
以上の通り構成された工具保持解除機構104は、カムレバー150をクランプ位置からリリース位置に旋回させて、スラストピン140を摺動させることにより、スラストピン140が軸方向移動部材136をコイルバネ138の付勢力に抗して下方に移動させる。このとき、クランプシャフト122は、コイルバネ138の付勢力が解除されて、長軸方向に自由に移動可能となる。さらに、スラストピン140が下方に移動すると、スラストピン140がクランプシャフト122に当接し、クランプシャフト122を下方に移動させる。これにより、アウタフランジ130をクランプシャフト122から取り外し可能となり、アウタフランジ130が取り外されることによって、クランプシャフト122が挿通して保持されていたブレード200を取り外すことができる。
【0037】
一方、ブレード200をクランプシャフト122に装着する場合には、ブレード200の貫通孔にクランプシャフト122を挿通する。その後、ブレード200のスピンドル120と反対側に、アウタフランジ130をクランプシャフト122の径方向から直線状に移動させてクランプヘッド123に係合させて、固定する。アウタフランジ130がクランプシャフト122に係合した状態で、カムレバー150をリリース位置からクランプ位置に旋回させると、コイルバネ138の付勢力によって軸方向移動部材136とスラストピン140がスピンドル120の長軸方向における上方に移動される。このとき、サークリップ137が軸方向移動部材136に当接して上方に移動することで、クランプシャフト122を上方に移動させる。これにより、クランプヘッド123に係合したアウタフランジ130がスピンドル120に近接する方向に移動され、アウタフランジ130とスピンドル120の間にクランプシャフト122の軸方向のクランプ力が発生し、ブレード200がアウタフランジ130とスピンドル120の間に保持される。
【0038】
以上の通り構成された電動式振動工具100は、モータ110が通電駆動されると、図2に示すように、出力軸111の回転運動は、偏心軸112およびベアリング113によって、矢印Aで示される方向(以下、A方向)への往復運動に変換される。A方向への往復運動は、被駆動アーム114に伝達されて、スピンドル接続部115を中心とした矢印Bで示される駆動伝達軸121周りの円周方向(以下、B方向)への所定の角度をなす回転運動に変換される。これにより、スピンドル接続部115に接続された駆動伝達軸121がB方向に往復駆動される。このとき、スピンドル120は、駆動伝達軸121と一体となって駆動する。その結果、コイルバネ138の付勢力によって、スピンドル120と一体に回転するクランプシャフト122に保持されたブレード200を振動させて、被加工材に対して切断等の加工をすることができる。
【0039】
以上の第1実施形態によれば、カムレバー150を旋回させるだけで、アウタフランジ130に作用しているコイルバネ138の付勢力を解除することができ、アウタフランジ130が取り外し可能となる。そして、アウタフランジ130を取り外すことにより、ブレード200を取り外すことができる。すなわち、特別な工具を用いることなく、ブレード200を簡単に取り外すことができる。
【0040】
さらに、アウタフランジ130の取り付けは、クランプシャフト122に対して、クランプシャフト122の径方向から直線状にアウタフランジ130を移動させることによって、アウタフランジ130がクランプヘッド123に対して位置決め、固定される。すなわち、アウタフランジ130をクランプシャフト122の長軸方向に交差する方向に移動させるだけの簡単な構成で、アウタフランジ130をクランプヘッド123に対して位置決め、固定することができる。これにより、ブレード200を保持することができ、その結果、特別な工具を用いることなく、ブレード200簡単に交換することができる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、図6〜図8を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態とは、クランプシャフト122およびアウタフランジ130が異なるだけであり、クランプシャフト122およびアウタフランジ130以外の構成は同一である。そのため、クランプシャフト122およびアウタフランジ130以外の構成については、説明を省略する。
【0042】
図6に示すように、クランプシャフト222は、略円柱状の部材であり、軸222aと、軸222aの一方の端部に形成された軸222aより径の小さいアウタフランジ取付部222bと、アウタフランジ取付部222bと連接するクランプヘッド223を有している。クランプヘッド223は、アウタフランジ取付部222bの径方向の大きさよりも大きく、換言すると、クランプヘッド223は、アウタフランジ取付部222bに対して径方向に突出して形成されている。また、クランプヘッド223は、軸222aの径方向の大きさよりも大きい円弧状部分と、軸222aの径方向よりも小さい部分を含む直線状部分とで形成されている。このクランプヘッド223は、ブレード200に形成された貫通孔に挿通してブレード200を保持するため、ブレード200の貫通孔よりも小さく、ブレード200の貫通孔に挿通可能に形成されている。このクランプシャフト222、クランプヘッド123がそれぞれ、本発明における「駆動シャフト」、「係合部」に対応する実施構成例である。
【0043】
アウタフランジ230は、円盤状部材である。アウタフランジ230の中央部には、クランプヘッド223と同じ形状の貫通部231が形成されている。また、貫通部231の両側には、クランプヘッド223が係合可能な係合凹部232が形成されている。このアウタフランジ230が、本発明における「クランプ部材」に対応する実施構成例である。
【0044】
以上の通り構成されたアウタフランジ230は、図7に示すように、貫通部231にクランプヘッド223が挿通されると、クランプヘッド223の直線状部分に対応する軸222aがアウタフランジ230の係合凹部232の反対側に当接して、クランプシャフト222の長軸方向におけるアウタフランジ230の移動が停止される。
【0045】
その後、アウタフランジ230を矢印の方向に円弧状に回転させることで、図8に示すように、クランプヘッド223と係合凹部232が係合して、アウタフランジ230がクランプヘッド223に位置決め、固定される。換言すると、アウタフランジ230をクランプシャフト222の長軸方向に交差する方向に移動させて、アウタフランジ230をクランプヘッド223に位置決め、固定している。すなわち、クランプヘッド223を貫通部231に挿通させた状態では、アウタフランジ230は、クランプヘッド223に対して位置決め、固定がされておらず、アウタフランジ230を回転させることにより、アウタフランジ230はクランプヘッド223に対して位置決め、固定される構成となっている。
【0046】
以上の第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、カムレバー150をクランプ位置からリリース位置に旋回させて、クランプシャフト222を下方に移動させると、アウタフランジ230がクランプシャフト222の周方向に回転可能となり、クランプシャフト222から取り外し可能となる。アウタフランジ230を取り外すことで、クランプシャフト222が挿通して保持されていたブレード200を取り外すことができる。
【0047】
一方、ブレード200をクランプシャフト222に装着する場合には、ブレード200の貫通孔にクランプシャフト222を挿通する。その後、ブレード200のスピンドル120と反対側に、アウタフランジ230をクランプシャフト222の軸方向から挿通させる。そして、アウタフランジ230をクランプシャフト222の周方向に回転させて、アウタフランジ230をクランプヘッド223に対して位置決め、固定する。アウタフランジ230がクランプシャフト222に固定された状態で、カムレバー150をリリース位置からクランプ位置に旋回させると、クランプシャフト222がスピンドル120の長軸方向における上方に移動される。これにより、クランプヘッド223に固定されたアウタフランジ230がスピンドル120に近接する方向に移動され、アウタフランジ230とスピンドル120の間にクランプシャフト222の軸方向のクランプ力が発生し、ブレード200がアウタフランジ230とスピンドル120の間に保持される。
【0048】
以上の第2実施形態によれば、カムレバー150を旋回させるだけで、アウタフランジ230に作用しているコイルバネ138の付勢力を解除することができ、アウタフランジ230が取り外し可能となる。そして、アウタフランジ230を取り外すことにより、ブレード200を取り外すことができる。すなわち、特別な工具を用いることなく、ブレード200を簡単に取り外すことができる。
【0049】
さらに、アウタフランジ230の取り付けは、クランプシャフト222に対して、クランプシャフト222の軸方向からアウタフランジ230を係合させた後、クランプシャフト222の長軸方向に交差する周方向にアウタフランジ230を円弧状に移動させることにより、アウタフランジ230がクランプヘッド223に対して位置決め、固定される。すなわち、アウタフランジ230をクランプシャフト222の長軸方向に交差する方向に移動させるだけの簡単な構成で、アウタフランジ230をクランプヘッド223に対して位置決め、固定することができる。これにより、ブレード200を保持することができ、その結果、特別な工具を用いることなく、ブレード200簡単に交換することができる。
【0050】
(第3実施形態)
次に、図9〜図12を参照して、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第1実施形態とは、クランプシャフト122およびアウタフランジ130が異なるだけであり、クランプシャフト122およびアウタフランジ130以外の構成は同一である。そのため、クランプシャフト122およびアウタフランジ130以外の構成については、説明を省略する。
【0051】
図9に示すように、クランプシャフト322は、略円柱状の部材であり、軸322aと、アウタフランジ案内溝324と、アウタフランジ案内溝323に連接するアウタフランジ係合溝324を有している。軸322aは、ブレード200に形成された貫通孔に挿通してブレード200を保持するため、ブレード200の貫通孔よりも小さく、ブレード200の貫通孔に挿通可能に形成されている。アウタフランジ案内溝323とアウタフランジ係合溝324は、クランプシャフト322の周方向における対向する2箇所において、軸322aに対しての径方向に凹んで形成された同じ深さの溝である。アウタフランジ案内溝323は、クランプシャフト322の長軸方向と平行に延在する。アウタフランジ係合溝324は、クランプシャフト322の周方向に沿って形成され、一端がアウタフランジ案内溝323に連接している。なお、アウタフランジ案内溝323の幅は、アウタフランジ係合溝324の幅よりも大きく形成されている。このクランプシャフト322、アウタフランジ係合溝324がそれぞれ、本発明における「駆動シャフト」、「係合部」に対応する実施構成例である。
【0052】
図9、図10に示すように、アウタフランジ330は、円盤状の部材である。アウタフランジ330の中央部には、クランプシャフト323が係合する有底状の係合穴331が形成されている。係合穴331内部には、係合穴331の径方向に突出する係合凸部332が2箇所形成されている。係合凸部332は、付勢機構333によって係合穴331の径方向内側に向かう方向に付勢されている。係合凸部332の幅は、アウタフランジ係合溝324の幅とほぼ等しく、アウタフランジ案内溝323の幅よりも小さく形成されている。また、係合穴331の底部から係合凸部332までの距離は、クランプシャフト322の長軸方向におけるアウタフランジ案内溝323の長さと等しく形成されている。このアウタフランジ330が、本発明における「クランプ部材」に対応する実施構成例である。
【0053】
以上の通り構成されたアウタフランジ330は、図11に示すように、係合凸部332とアウタフランジ案内溝323が対応する位置において、係合穴331にクランプシャフト322が挿通されると、係合穴331の底部にクランプシャフト322の先端が当接して、クランプシャフト322の長軸方向におけるアウタフランジ330の移動が停止される。
【0054】
その後、アウタフランジ330を矢印の方向に回転させることで、図12に示すように、係合凸部332とアウタフランジ係合溝323が係合して、アウタフランジ330がクランプシャフト322に位置決め、固定される。換言すると、アウタフランジ330をクランプシャフト322の長軸方向に交差する周方向に回転移動させて、アウタフランジ330をクランプシャフト322に対して位置決め、固定している。すなわち、クランプシャフト322をアウタフランジ330の係合穴331に挿通させた状態では、アウタフランジ330は、クランプシャフト322に対して位置決め、固定がされておらず、アウタフランジ330を回転させることにより、アウタフランジ330はアウタフランジ係合溝323と係合してクランプシャフト222に対して位置決め、固定される構成となっている。
【0055】
以上の第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、カムレバー150をクランプ位置からリリース位置に旋回させて、クランプシャフト322を下方に移動させると、アウタフランジ330がクランプシャフト322の周方向に回転可能となり、クランプシャフト322から取り外し可能となる。アウタフランジ330を取り外すことで、クランプシャフト322が挿通して保持されていたブレード200を取り外すことができる。
【0056】
一方、ブレード200をクランプシャフト322に装着する場合には、ブレード200の貫通孔にクランプシャフト322を挿通する。その後、ブレード200のスピンドル120と反対側に、アウタフランジ330をクランプシャフト322の軸方向から挿通させる。そして、アウタフランジ330をクランプシャフト322の周方向に回転させて、アウタフランジ330をクランプシャフト322に対して位置決め、固定する。アウタフランジ330がクランプシャフト322に固定された状態で、カムレバー150をリリース位置からクランプ位置に旋回させると、クランプシャフト322がスピンドルの長軸方向における上方に移動される。これにより、クランプシャフト322に固定されたアウタフランジ330がスピンドル120に近接する方向に移動され、アウタフランジ330とスピンドル120の間にクランプシャフト322の軸方向のクランプ力が発生し、ブレード200がアウタフランジ330とスピンドル120の間に保持される。
【0057】
以上の第3実施形態によれば、カムレバー150を旋回させるだけで、アウタフランジ330に作用しているコイルバネ138の付勢力を解除することができ、アウタフランジ330が取り外し可能となる。そして、アウタフランジ330を取り外すことにより、ブレード200を取り外すことができる。すなわち、特別な工具を用いることなく、ブレード200を簡単に取り外すことができる。
【0058】
さらに、アウタフランジ330の取り付けは、クランプシャフト322に対して、クランプシャフト322の軸方向からアウタフランジ330を係合させた後、クランプシャフト322の長軸方向に交差する周方向にアウタフランジ330を円弧状に移動させることにより、アウタフランジ330がクランプシャフト322に対して位置決め、固定される。すなわち、アウタフランジ330をクランプシャフト322の長軸方向に交差する方向に移動させるだけの簡単な構成で、アウタフランジ330をクランプシャフト322に対して位置決め、固定することができる。これにより、ブレード200を保持することができ、その結果、特別な工具を用いることなく、ブレード200簡単に交換することができる。
【0059】
以上の各実施形態においては、先端工具としてブレード200を用いて説明したが、先端工具はブレード200には限られず、先端工具として研磨パッド等を取り付けてもよい。また、付勢部材としてコイルバネ138を用いて説明したが、付勢部材としては皿バネ等の他のバネ要素であってもよく、また、弾性変形による復元力を発生させる部材であれば、ゴムや樹脂などであってもよい。
【0060】
(変形例)
以上においては、ブレード200は、アウタフランジ130,230,330とスピンドル120の間に保持されるよう構成されていたが、これには限られない。例えば、クランプシャフト122,222,322のアウタフランジ130,230,330が係合する位置から長軸方向に離隔した位置に、径方向に突出したブレード200と当接する工具保持部が設けられており、アウタフランジ130,230,330と当該工具保持部との間にブレード200を保持するよう構成されていてもよい。工具保持部の位置は、アウタフランジ130,230,330が取り付けられた状態において、アウタフランジ130,230,330からブレード200の厚さに対応する長さだけ離隔した位置に設けられていればよい。この場合には、ブレード200と工具保持部、およびブレード200とアウタフランジ130,230,330の各接触面に生じる摩擦力がクランプ力となり、当該クランプ力によってブレード200が保持される。
【0061】
また、変形例においては、装着される先端工具の種類の厚さに応じた厚さのアウタフランジを取り付けるように、複数の厚さのアウタフランジを選択的に取り付けるよう構成されていてもよい。
【0062】
以上では、作業工具として、電動式振動工具100を用いて説明したが、これには限られず、先端工具を挟持する作業工具であれば、例えばグラインダや丸鋸のように先端工具が回転する作業工具にも本発明を適用することが可能である。
【0063】
上記発明の趣旨に鑑み、下記のごとき態様が構成可能である。
(態様1)
駆動シャフトと、
前記駆動シャフトに対して着脱可能なクランプ部材とを有し、
前記駆動シャフトが挿通されるとともに、前記クランプ部材によるクランプ作用を介して前記駆動シャフトに保持される先端工具を駆動する作業工具であって、
前記駆動シャフトは、長軸方向に延在したシャフト部と、前記シャフト部に連接し前記クランプ部材と係合する係合部を有し、前記クランプ部材が前記係合部と係合して前記駆動シャフトが前記先端工具を挿通する方向にクランプ力を発生させて前記先端工具を保持する構成であり、
前記係合部は、前記シャフト部の前記係合部と連接する連接部の前記長軸方向に交差する交差方向における長さに対して、異なる長さを有していることを特徴とする作業工具。
【0064】
(態様2)
態様1に記載の作業工具であって、
前記係合部は、前記連接部に対して、前記交差方向に突出した凸部で構成されていることを特徴とする作業工具。
【0065】
(態様3)
態様1に記載の作業工具であって、
前記係合部は、前記連接部に対して、前記交差方向に凹んだ凹部で構成されていることを特徴とする作業工具。
【0066】
(態様4)
態様2または3に記載の作業工具であって、
前記クランプ部材は、前記連接部に対して前記交差方向から直線状に移動することで着脱可能に構成されていることを特徴とする作業工具。
【0067】
(態様5)
態様1〜4のいずれか1項に記載の作業工具であって、
前記クランプ部材は、前記係合部と係合する第1の部分と、前記係合部と係合不能な第2の部分とを有し、
前記駆動シャフトと前記クランプ部材は、第1の位置に位置するときに前記第1の部分が前記係合部に係合し、第2の位置に位置するときに前記第2の部分が前記係合部に対して着脱可能であり、前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動可能に構成されていることを特徴とする作業工具。
【0068】
(態様6)
態様1〜5のいずれか1項に記載の作業工具であって、
前記駆動シャフトは、前記先端工具を保持する保持位置と、前記先端工具の保持を解除する解除位置との間で移動可能に構成されており、
前記クランプ部材は、前記保持位置において前記係合部と係合して前記先端工具を保持し、前記解除位置において前記駆動シャフトに対して着脱可能に構成されていることを特徴とする作業工具。
【符号の説明】
【0069】
100 電動式振動工具(作業工具)
101 本体ハウジング
102 駆動機構
103 先端工具保持機構
104 工具保持解除機構
110 モータ
111 出力軸
112 偏心軸
114 被駆動アーム
120 スピンドル
121 駆動伝達軸
122 クランプシャフト(駆動シャフト)
122a 軸
122b アウタフランジ取付部
123 クランプヘッド(係合部)
130 アウタフランジ(クランプ部材)
131 凹部
135 クランプシャフト保持機構
138 コイルバネ
140 スラストピン
150 カムレバー
200 ブレード(先端工具)
222 クランプシャフト(駆動シャフト)
223 クランプヘッド(係合部)
230 アウタフランジ(クランプ部材)
231 貫通部
232 係合凹部
322 クランプシャフト(駆動シャフト)
324 アウタフランジ係合溝(係合部)
330 アウタフランジ(クランプ部材)
331 係合穴
332 係合凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動シャフトと、
前記駆動シャフトに対して着脱可能なクランプ部材とを有し、
前記駆動シャフトが挿通されるとともに、前記クランプ部材によるクランプ作用を介して前記駆動シャフトに保持される先端工具を駆動する作業工具であって、
前記駆動シャフトは、前記クランプ部材と係合する係合部を有し、
前記クランプ部材の取り付けは、前記駆動シャフトに対して前記クランプ部材が前記駆動シャフトの長軸方向に交差する交差方向に移動されて、前記係合部に対して位置決めおよび固定され、前記駆動シャフトが前記先端工具を挿通する方向にクランプ力を発生させる構成であることを特徴とする作業工具。
【請求項2】
請求項1に記載の作業工具であって、
前記クランプ部材は、前記駆動シャフトに対して前記長軸方向と交差する方向に直線状に移動されて、前記係合部に対して位置決めおよび固定される構成であることを特徴とする作業工具。
【請求項3】
請求項1に記載の作業工具であって、
前記クランプ部材は、前記駆動シャフトに対して前記長軸方向に関する周方向に円弧状に移動されて、前記係合部に対して位置決めおよび固定される構成であることを特徴とする作業工具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業工具であって、
前記クランプ部材は、前記係合部と係合する第1の部分と、前記係合部と係合不能な第2の部分とを有し、
前記駆動シャフトと前記クランプ部材は、第1の位置に位置するときに前記第1の部分が前記係合部に係合し、第2の位置に位置するときに前記第2の部分が前記係合部に対して着脱可能であり、前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動可能に構成されていることを特徴とする作業工具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業工具であって、
前記駆動シャフトは、前記先端工具を保持する保持位置と、前記先端工具の保持を解除する解除位置との間で移動可能に構成されており、
前記クランプ部材は、前記保持位置において前記先端工具を保持し、前記解除位置において前記駆動シャフトに対して着脱可能に構成されていることを特徴とする作業工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−86213(P2013−86213A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229573(P2011−229573)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】