作業時間推定システム、方法及びプログラム
【課題】
作業を分析して作業時間を高精度に推定する技術を提供する。
【解決手段】
作業単位ごとの組付け動作情報,部品属性情報,組付け動作ごとの時間係数,部品特性ごとの時間係数,作業情報(作業者,作業形態)ごとの時間係数を設け、既存の工程の作業について実際に作業を行なった作業時間から各時間係数を算出する。そして、新規の工程の作業についての部品属性、組み付け動作、部品特性、作業者、作業形態と上記時間係数を用いて、新規の作業の作業時間を推定する。
作業を分析して作業時間を高精度に推定する技術を提供する。
【解決手段】
作業単位ごとの組付け動作情報,部品属性情報,組付け動作ごとの時間係数,部品特性ごとの時間係数,作業情報(作業者,作業形態)ごとの時間係数を設け、既存の工程の作業について実際に作業を行なった作業時間から各時間係数を算出する。そして、新規の工程の作業についての部品属性、組み付け動作、部品特性、作業者、作業形態と上記時間係数を用いて、新規の作業の作業時間を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,構造設計者が設計した製品の各部品の作業時間を予測して設計改善を検討する場合,または生産技術者が製品製造前に工程設計を改善する検討を行うなどに際して,製品の作業時間を評価する検討作業を支援する作業時間推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
変動する生産量に柔軟に対応できる生産方式としてセル生産がある。主に多品種少量生産では有効であり,情報機器,家電品,自動車など多方面で導入されている。このセル生産とは,作業者の周辺に部品,組付け工具を配置したセルにおいて,1人または少数の作業者チームで製品の組み立て工程を完成まで行うものである。ライン生産方式と比較して,作業者一人が受け持つ範囲が広いこと,生産ラインの変更などに即応しやすいことが特徴である。
【0003】
また,このセル生産においても,製品種類,生産量に応じて,複数の形態がある。例えば,1人の作業者の周りに部品を配膳した1人屋台方式,複数の作業者がU字ラインの中で作業を行ううさぎ追い方式,組立用の台車を作業者が押しながら作業を行う台車方式などがあり,それぞれ特質がある。
【0004】
セル生産の場合,作業時間,作業品質は作業者の技量・熟練度に依存しがちである。そこで非熟練作業者でも効率よく作業を行うために,工程ごとに具体的な作業指示書を表示して指示を行う方式がある。例えば,近年の3D−CADの普及により,3D−CAD情報などの設計情報から作業指示書を作成することで3Dの図面と注記情報により作業指示を行うシステムが開発されている(以下,3D作業指示システムと略す)。
【0005】
一方,デジタルモックアップツール(以下,DMUと略す)と呼ばれる3Dモデルをパーソナルコンピュータ上の仮想空間に表示し,組立時の干渉チェックや組立アニメーションを表現するツールもある。このツールでは,ユーザが入力した組立アニメーションを用いて,3Dモデルと部品属性などのビューを表示することで工程指示に相当する内容を作成する機能もある。この方法により,設計段階で組立性を検証すること,その結果をもとに作業指示書を作成することができる。
【0006】
また従来は,作業指示書に2D図面を用いることが多かったが,2D図面に表記されていた寸法や注記などの情報と3Dモデルの斜視図を利用して3D図として表記する方法も広まっている。
【0007】
このような3D図などを作業者の前に設置した画面上に表示する3D作業指示システムは,例えば,作業者がリアルタイムに表示される工程ごとに指示図を画面上でめくりながら作業を進める方式である。これにより作業者への具体的な指示とともに,工程ごとの作業開始時間,終了時間を作業者ごとに自動記録することができる。その結果をもとに作業能率,作業者別の組立時間など分析が可能である。ただし,一般にセル生産では,組立時間については作業者個々に指示は出さず工場全体で補完しながら管理を行う。
【0008】
また一方,上記のDMUなど組立性を評価するツールで扱う情報が構造設計の3Dモデルだけの場合,生産方式を考慮できておらず,組立時間を精度よく算出することは困難であった。そこで従来,製造する製品の組立に要する時間(以下,組立時間と略す)を推定する方法としては,標準的な作業者を選定して,実際の組立ラインでの組付作業時間を実測し,それを経験値として,次期製品に用いたりしてきた。しかし,この方式では新しい組立工程,異なる生産形態が発生した場合,組立時間が予測できないという問題があった。
【0009】
この問題を解決するために,特開平9−245071号(特許文献1)に記載された方法では,3Dモデルに含まれる部品属性情報と作業時間との計算テーブルを用意し,3Dモデルから作業時間を算出する方法としている。
【0010】
また特開平8−287127号(特許文献2)に記載された方法では,部品属性情報などから作業の組立容易性や作業難易度を評価して,組み立てしやすい部品を使用することによる作業時間の指標を算出している。
【0011】
また特開平4−069703(特許文献3)に記載された方法では,部品組付作業の動作内容を表現するために必要な動作種類を決定し(下移動動作,横移動動作,など:標準組付動作と称する),該標準組付動作毎に,予め定めた「ある作業者条件,ある部品条件,ある作業職場条件」の下で該標準組付動作を行う場合に,該標準組付動作を行うのに要する時間の数値を設定した組立時間推定方法がある。
【0012】
これらの従来技術により,設計段階や製造工程計画段階などの製造前に,新しい組付作業が発生しても,該作業を該標準組付動作で表現することによって組立時間を推定することが出来る。
【0013】
しかし,特許文献3の方式では,理想状態の組立時間であり,実際の作業時間のばらつきが考慮できていないという問題があった。特開2003−39260号(特許文献4)に記載された方法では,既存の部品の組立時間の実測値を統計処理することで,組立時間ばらつきを考慮した組立時間の推定をしている。
【0014】
また特開2003−122424号(特許文献5)に記載された方法では,動画撮影手段を用いて作業の各動作を実測して,それぞれの付加価値を分析することで付加価値がある作業と切り分けた分析をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平9−245071号公報(特許第3813232号)
【特許文献2】特開平8−287127号公報(特許第3724842号)
【特許文献3】特開平4−069703号公報(特許第3230813号)
【特許文献4】特開2003−39260号公報(特許第4120188号)
【特許文献5】特開2003−122424号公報(特許第3715566号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし,このような従来の組立時間推定方法において,特許文献1,特許文献2のように3Dモデル等の部品属性と関連づけた作業時間テーブル,作業難易度のみでは,理想状態での数値であり,組付け動作,作業形態を考慮できていなかった。例えば,組立作業者は組付け動作の違いが考慮できておらず,また実際の組立作業との誤差が大きくなるため,能力不足が発生しないように,得られた組立作業時間に単に1より大きな係数を掛けて最終的な推定値とする例もあり高精度な推定はできていなかった。
【0017】
また特許文献3では,標準組付動作の組立時間は,組付け部品の属性,組付け動作の種類や基準条件の違いは考慮されているものの,作業環境を考慮していない理想状態の数値であり,組立時間バラツキが発生するなど,特に組付けの難しい作業において,実組立時間が推定組立時間よりも長くなるという問題があった。
【0018】
また特許文献4では,既存の組立時間の実測値を統計処理して組立時間ばらつきを考慮した時間を算出している。この方法により全体の作業時間の推定精度は向上したものの,作業全体での時間ばらつきを評価しており,正味の組立作業を切り分けて時間推定することはできなかった。
【0019】
また特許文献5では,動画撮影手段により,正味作業と付加価値のない作業とを分析しているが,動画を撮影する手段とその実作業の分析に手間がかかるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は,製品構造の良否と作業形態の良否を区別して分析することを目的とする。 そこで3D作業指示システムにおいて,作業者に表示する1枚ごとの作業指示内容(組付け動作,部品属性など)と実際に作業を行なった実作業時間の記録データを利用する。また,このとき作業者の違いや,作業形態として1人屋台方式,台車方式などそれぞれの方式や、組付け動作、部品属性などを考慮した分析を行い,作業者、作業形態、組付け動作,部品属性ごとの動作時間係数(組付け動作時間を算出するための係数)を算出することで、理想状態の組立時間を推定する。そして3D作業指示システムの実作業時間の記録データと上記理想状態での組立時間をもとに,作業者ごとの技能レベル(作業者の時間係数),作業形態係数(作業形態ごとの時間係数)を算出する。
【0021】
これにより,生産職場,作業者の配置などを検討する工程設計段階での組立時間の推定を行う方法およびそのシステムを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば,構造設計段階や工程設計段階などの製造前の段階で,作業時間を推定することが可能となり,製品の低コスト化,量産早期立ち上げなどに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例の作業管理システムおよび作業時間係数分析システムのブロック図である。
【図2】本発明の一実施例の組立作業時間推定システムのブロック図である。
【図3】本発明の一実施例の組付け動作の分析処理のフローチャートである。
【図4】説明のためのモデル図である。
【図5】モデル図の階層と組立順序の図である。
【図6】本発明のシステムの出力画面の一例を示す図である。
【図7】図6の指示図の一例を示す図である。
【図8】本発明のシステムの出力画面の一例を示す図である。
【図9】図8の指示図の一例を示す図である。
【図10】本発明のシステムの出力画面の一例を示す図である。
【図11】本発明のシステムの出力画面の一例を示す図である。
【図12】本発明の作業時間係数の分析処理のフローチャートである。
【図13】本発明のシステムの出力画面の一例を示す図である。
【図14】本発明のシステムの出力画面の一例を示す図である。
【図15】本発明の作業者―時間係数の出力画面の一例を示す図である。
【図16】本発明の作業形態―時間係数の出力画面の一例を示す図である。
【図17】本発明の組立作業時間の算出処理のフローチャートである。
【図18】本発明のシステムの出力画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下,図面を用いて,本発明を実施するための形態について説明する。
【0025】
図1に,本発明の方法による作業管理システム50および作業時間係数分析システム60のブロック図を示す。記録装置51、指示図STEP設定動作分析装置61、係数分析装置62は、コンピュータで構成されるか、または演算装置(プロセッサなど)にロードされたてその上で稼動するソフトウェアにより構成される。各記憶部21、22、25、31〜34及び各データベース23,24は、その内部に各記憶部・データベースのための記憶領域を設定した記憶装置(磁気ディスク装置,半導体メモリ,光ディスクなど)によって構成される。
【0026】
作業管理システム50は,各作業者が入力装置1にて,作業者の識別番号(以下,作業者IDと称する),対象とする製品の識別番号などを入力することで,記録装置51が該当する作業指示情報を作業指示データベース23から呼び出し,表示装置2に出力する。この入力装置1は,キーボード,マウス,タッチパネルのほか,専用のスイッチやセンサ,あるいは音声認識装置を用いてもよい。表示装置2は,例えばディスプレイ,プロジェクタ,ヘッドマウントディスプレイなど画面やスクリーンに情報を表示する装置を用いる。
【0027】
具体的には,作業者が自身の作業者IDと対象製品の識別番号を入力装置1を介して入力することで,該当の作業指示図を表示装置2であるディスプレイ上に表示する。作業指示図は,作業単位に分割した紙芝居形式の図面を用いるとよい。例えば,図7に一例を示したが,組付けられる側の部品(被組付け部品)と組付け部品を3D図面で表示するとともに,部品表形式で組付けるべき部品の情報を表示する。また組付ける際の注意事項なども表示する。
【0028】
1枚の指示図で表現された作業を完了した際,作業完了確認の入力を行うことで,次の作業指示を表示する(以下,1枚ごとの指示の単位を作業単位として指示図STEPと称する)。このように指示図STEPごとに作業者への指示を出力する。このとき,作業確認の入力にて次の作業指示を出力するとともに,前の作業の終了時間と次の作業の開始時間を実測作業時間データベース24に格納する。
【0029】
また実測作業時間データベース24には,作業形態情報を実測作業時間に対応付けて格納する。これは組立時間の分析を行う際,作業形態ごとの時間係数を求めるために用いる識別となる。そこで,例えば,I字ラインをI01,U字セル生産方式をU01,台車セル生産方式をV01,1人屋台セル生産方式をP01などと定義する。また,このような生産方式の違いだけではなく,配膳された部品と組付け場所との距離の違いを考慮する場合,組立作業者が動き回る範囲ごとに,作業形態のID番号を変えることとする。なお,この作業形態は,作業者が入力する方法のほか,作業指示や生産ラインの管理者が設定してもよい。
【0030】
図1に示した作業時間係数分析装置60のブロック図について説明する。作業時間係数分析装置60は,作業管理システム50の作業指示データベース23と,実測作業時間データベース24にアクセス可能であり,その構成要素である指示図STEP設定動作分析装置61及び係数分析装置62の具体的な動作は図3,図12のフローチャートでの説明とする。入力装置3にて対象製品とその指示図STEPを設定し,3次元CADデータ21や部品種別の情報22をもとに動作分析処理を行う。組付け動作分析結果25と実測作業時間データベース24から各係数を算出して各記憶部31,32,33,34に記憶するものである。
【0031】
図2に,組立時間推定システムのブロック図を示す。本ブロック図では,各係数を記憶した各係数記憶部31,32,33,34を用いており,その具体的な動作は図17のフローチャートでの説明とする。入力装置5にて,計算対象の製品と作業情報(想定される作業形態等)を設定することで,3次元CADデータ21および部品種別22をもとに分析した組付け動作25から組立時間を推定するものである。
【0032】
図3に,図1で示した指示図STEP設定および動作分析装置61の組付け動作の分析処理のフローチャートを示す。
【0033】
ステップS101では,作業指示データベース23に記憶された情報から対象製品および組立順序の情報を取得する。ここで本実施例においては組立の順序は設定されているものとする。
【0034】
ステップS102では,対象製品について,3次元CADのアセンブリモデル情報を3次元CADデータ記憶部21から取得する。ここでアセンブリモデル情報とは,アセンブリモデルの部品構成を示す階層情報,各部品の情報(部品番号,図面番号,体積,質量など),部品間の拘束/隣接関係である。この拘束/隣接関係とは,例えばアセンブリモデルを作成する際に設定する部品間の合致情報であり,例えば平面と平面の合致,円筒面と円筒面の同心合致などの情報がある。
【0035】
ステップS103では,上記3次元CADのアセンブリモデル情報から,部品種別記憶部22に記憶された部品種別情報を参照して部品種類情報を取得する。例えば部品種別とは,ネジ,ナット等の締結部品,基板,配線等の電気部品といった区別のほか,表面カバーなどの意匠部品などがあり,組付け動作や組付け時の取り扱いの違いを判断する情報として用いる。
【0036】
ステップS104では,入力装置3で設定された指示図STEPを取得し,同一STEP内での部品を把握する。具体的には図4,図5,図6,図7を用いて説明する。
【0037】
図4に,説明のためのモデル図を示す。図5に,図4のモデル図の階層と組立順序の図を示す。図6に,本発明のシステムでの指示図STEP設定の例および組付け動作の出力画面の一例を示す。図7に,図6の指示図STEP2での指示図出力例を示す。
【0038】
図3のステップS104では,図6に示した表の指示図STEP列のように設定した場合,組順1,2の部品(B_Plate),(Pole)が指示図STEP1となり,組順3,4の部品(PK),(Screw_W)が指示図STEP2となる。
【0039】
ステップS105では,同一STEP内の部品間のアセンブリ拘束/隣接関係を取得する。上記S102で取得したアセンブリモデル情報から同じSTEP内の情報を絞り込んで把握する。
【0040】
ステップS106では,把握したアセンブリ拘束/隣接関係から,部品の組付けベクトルを算出する。例えば,図7に示した部品PKとScrew_Sを例に説明する。このとき,図4に示した座標系を用いて説明する。Screw_Sは,PKの各円筒穴に対して同心の拘束関係(円筒拘束),またPKの上面に対して平面合致の拘束関係(平面拘束)を取得したとする。この拘束関係から,Screw_SはPKの各円筒穴の垂直軸(Y軸)に同心な方向と,かつPKの上面(X-Y平面)に平行な面で拘束されている。ここで1つの平面拘束を外した場合,Screw_Sは合致面の法線で離れる方向でかつPKの各円筒穴の垂直軸方向(+Y方向)に分解することができる。したがってScrew_Sの組付けベクトルは分解方向の逆となる−Y軸方向すなわち単位ベクトルでは(0,-1,0)となる。
【0041】
ここで,例えば分解配置移動量の初期値を50mmと設定した場合,組付け動作ベクトルは図7に示した例のように,部品PKがX=0,Y=-50,Z=0,部品Screw_SがX=0,Y=-100,Z=0となる。なお本例では,同じ軸上に複数の部品を分解配置する際,後で組付ける部品を初期値の2倍遠くに配置する計算とした。この分解配置移動量については,分解する方向についての部品の寸法と組付け順序等から,それぞれの部品が重ならないように配置するとよい。
【0042】
ステップS107では,ステップS106で算出した組付けベクトルとステップS103で取得した部品種別により,組付け動作種類を決定し,部品属性により時間を補正する部品特性を決定する。図6の表の部品名等から部品種別記憶部を参照して部品種別を把握する。例えば,Screw_Sはネジ部品と判る。また先に算出した組付けベクトルから,下方向に組付けることが判る。そこで,組付け動作は,下移動(↓)とねじ回転(Q)と算出する。
【0043】
ここで,組付け作業を標準の組付け動作で表現し,組立時間を推定する公知例として,特許文献3に記載の方法がある。組付け動作の表現方法においては,この方法を用いてもよい。具体的には,下移動,上移動,ねじ回転など,部品の組付け作業の動作内容を表現するために必要な動作種類を予め定義しておき,組付けベクトルと部品種別から判定して組付け動作を算出する。また部品によっては重量物や長尺のものもあるため,モデル情報から質量,寸法,体積などを計算した部品特性を把握することで組付け動作を補正する係数を設定する。ただし,特許文献3で記載された組立時間の算出方法は用いず,組付け動作の表現方法までを参照する。
【0044】
図6に,組付け動作分析後に出力する組付け動作情報の例を示す。はじめに分析者が製品ID,指示図IDを入力することで図6の表の組順,部品名,部品点数の列の内容については,図3のステップS101の説明のとおり,作業指示データベース23から初期情報として取得する。また,図3のステップS102,S103で説明したように,3次元CADデータおよび部品種別記憶部を参照することで,部品種別,質量等を把握し表示する。
【0045】
この部品表は,製品ID,指示図IDにもとづいて表示されたものであり,部品名などの情報が組順に沿って表示する。ここで分析者が,指示図STEP列の設定を行う。例えばマウスにて複数の部品行を選択し同じSTEPにする設定を行うことで,選択された行について同じSTEP番号をつける。このとき上から順番にSTEP番号を振りなおす処理を行う。
【0046】
また,組付け動作は,部品を締結することで区切りとなるケースが多い。そこで,取得した部品種別から判断して,締結部品であるネジ部品があった場合,そのネジ部品を区切り位置と判定する方法とするとよい。なおこの場合,締結部品の行が連続している場合は,締結部品以外の部品が出現するまで同じ指示図STEPとする方法または所定の部品点数で区切る方法のいずれかを選択する方法とするとよい。
【0047】
このように分析者が,指示図STEPを設定することで,図3のステップS104以降の処理が行われ,組付けベクトル,組付け動作が計算され表示される。ここで,図6において,所定のSTEP行を選択し,右上の「プレビュー」ボタンを押すことで,その指示図STEPの分解配置図のプレビュー画面イメージを表示する。例えば,図7の指示図#2のモデル図が1例である。このプレビュー結果を確認し,分解配置移動量を変更したい場合は,組付けベクトルの列の数値を変更することで修正する。修正結果は再度「プレビュー」ボタンにて画面イメージを確認する。
【0048】
図7に,図6で設定した指示図の例を示した。図6の指示図STEP2の例であり,本例の指示図は3Dモデル図と部品表と指示文からなる。3Dモデル図では,指示図STEPごとに,被組付け部品に対して組付けベクトルの逆方向に組付け部品を分解配置している。また部品表には,3次元CADデータ記憶部から取得した部品属性を表示する。
【0049】
図8に,図6の例について,指示図STEPを変更した例を示す。図6の説明では,作業指示データベースから初期情報として取得するケースを示した。図8では,図6を指示図データベースから取得し,変更するケースとして説明する。図8では,図6で設定した指示図ID:W678R01を呼び出して表示した後,指示図STEPのみ変更し,組付けベクトルを算出し,指示図ID:W678R02として保存した例である。
【0050】
ここで,図8の指示図STEP1の例では,1枚の指示図上の同じ方向に配置する部品が多いため,分解配置移動量の50から40に変更している。指示図で配置できる最大値を設定しておくことで,組付け部品の寸法と組付け方向等から各部品の分解配置移動量を按分する方法とするとよい。
【0051】
図9に,図8で設定した指示図の例を示した。図8の指示図STEP1の例である。
【0052】
次に,図1の実測作業時間データベース24について図10を用いて説明する。図10には,作業者が指示図STEPごとに作業した実測結果を記録した例である。例えば,製品ID,指示図ID,指示図STEP,作業者ID,作業形態ID,開始時間,終了時間,作業時間の列で構成される。ここで,開始時間は,作業者が前の指示図をめくった時間であり,終了時間は次の指示図へとめくった時間である。また作業時間とは,終了時間から開始時間を引いた値である。このように,実際の作業の際に,作業指示図をディスプレイ上に表示することで,作業者,指示図STEPごとの作業時間を記録する。
【0053】
図11に,図6,図8で説明した動作分析の結果の例を示す。本内容は組付け動作記憶部25に格納した例である。例えば,製品ID,指示図ID,指示図STEPごとの組付け動作分析結果から,各行ごとに組付け動作の種類ごとに出現数を記憶する。
【0054】
図12に,係数分析装置62が行う組立時間算出に関する各係数の計算処理のフローチャートを示す。
【0055】
ステップS201では,実測作業時間データベース24から,指示図IDの指示図STEP単位の作業時間情報(例:図10)を取得する。作業時間情報には、指示図STEPと作業者IDと作業形態IDとの組み合わせごとに、作業時間(開始時間と終了時間)が記録されている。
【0056】
ステップS202では,作業情報として,入力装置3などから作業者ID,作業形態IDを取得する。
【0057】
ステップS203では,組付け動作記憶部25から,指示図IDの指示図STEP単位の組付け動作情報(例:図11)を取得する。組み付け動作情報は、指示図STEPごとに、部品点数、部品種類数、組み付け動作が記憶されている。
【0058】
ステップS204では,取得した作業時間情報、作業者ID、作業形態ID、組み付け動作情報に基づいて、作業者ごとに,指示図ID,指示図STEP,開始時間を識別キーとして,組付け動作種類の出現頻度,部品点数,作業時間をまとめる。
【0059】
ここで本実施例のステップS204での計算式について説明する。
【0060】
指示図STEPごとの作業時間すなわち1枚の指示図を開いた開始時間から次の指示図を開く終了時間は,指示図1枚で指示された部品の正味の組立時間とそれ以外の時間からなる。ここで正味の組立時間とは,どのような配膳形態でも不変のものであり,被組付け部品の直前に部品があると仮定した標準組付け動作での時間である。また正味以外の時間とは,指示された部品を配膳場所まで取りに行く時間,必要に応じて組付け部品ごとに段取り作業を行う時間,必要に応じて冶工具を準備する時間を想定している。なお作業者の休憩時間は作業STEP内の時間ではないため対象外としている。
【0061】
本仮定のもとで,指示図STEPごとにまとめた実測作業時間のデータから,以下の方程式を立てることができる。この計算式の説明において,指示図STEPごとの実測した作業時間をTi(iは個体番号)とする。また指示図STEPごとの組立動作種類の時間係数をAij,部品特性の時間係数をBik,作業者IDごとの時間係数をMil(Milは標準的な作業速度に対する時間係数),作業形態IDごとの時間係数をPimとする。
【0062】
指示図STEPごとの作業時間Ti(個体番号iの実測作業時間)は,以下の式で表すことができる。
(数1) Ti=Σ{(動作種類の出現数)×Aij+(補正対象部品の出現数)×Bik}×Mil+(部品種類数)×Pim×Mil
ここで,作業形態IDごとの時間係数に(部品種類数)を掛けているが,部品種類ごとに配膳位置や段取り作業,また冶工具の使用頻度が異なることを想定している。また部品点数は,組付け動作の中に含まれる要素であるため,この定数には含めないこととした。
【0063】
ステップS205では,作業時間Ti,各組付け動作種類の出現数,補正対象部品の出現数,部品種類数をもとに,上記数1の重回帰方程式から各係数を算出する。式の左辺は目的変数Ti,右辺は各係数に作業者IDの係数を掛けた係数(Aij×Mil ),(Bij×Mil ),(Pim×Mil )が説明変数となる。なお右辺第1項は指示図STEPごとの組付けに関する正味時間,第2項は作業形態IDによって変化する正味以外の作業時間となる。
【0064】
なお重回帰分析の方程式の求め方は,y切片をゼロとした最小二乗法でよい。ここで最小二乗法では個々のデータをもと回帰方程式から得られた予測値との誤差(残差)εが全体として最小となるように,回帰方程式の係数を決定する。一般に残差平方和(ε12+ε22+・・・+εn2)(nは個体数)が最小となるように係数を決定する。この分析結果の確からしさは決定係数「R2=(予測値の分散)/(目的変数の分散)」にて判定することが望ましい。
【0065】
ステップS206では,重回帰分析の決定係数が予め設定した値よりも小さい場合は,ステップS208に進み,異常値の除去などデータ範囲の見直し再計算を行う。決定係数は,0≦R2≦1であり,例えば設定値として0.8を設定するとよい。決定係数が設定値以上の場合,ステップS207にて,各係数(動作種類の時間係数Aij,部品特性の時間係数Bik,作業者の時間係数Mil及び作業形態の時間係数Pim)の計算結果を出力し,各記憶部(動作種類‐時間係数記憶部31、部品特性−時間係数記憶部32、作業者‐時間係数記憶部33及び作業形態−時間係数記憶部34)に格納する。
【0066】
図13に,指示図ID,指示図STEP,開始時間を識別キーとして整理した組立動作種類ごとの出力数,部品種類数,作業時間の一例を示す。なお表には開始時間を省略している。作業者IDかつ指示図STEPごとの作業時間を把握することができる。
【0067】
ここで,作業に熟練した作業者は,指示図STEP1枚ごとに作業確認ボタンを押さずに,複数枚の指示図をまとめて作業を行い,連続して作業確認ボタンを押してしまうことも考えられる。そこで,事前に推定した組付け動作の係数をもとに計算した作業時間推定値との差異が所定量かい離している場合,あるいは事前に設定した最小値以下の場合は,連続して作業を実施したと判断する。例えば図13の例では,No.5,No.6は連続作業と判断し,組付け動作および作業時間等を加算した値にて次の計算を行う。
【0068】
図14に,本システムの出力結果の一例を示す。分析結果から,作業者IDごとの組付け動作の時間係数,作業形態の時間係数を表示する。ただし,本分析結果は,作業者IDごとの値である。そこで本結果をもとに,作業者IDごとの時間係数,作業形態ごとの時間係数を次の方法で算出する。
【0069】
図14の組付け動作-時間係数の分類列に,各動作の時間係数の最上段に頻度を表示した。この頻度は,全作業での各組付け動作の出現頻度を示す。そこで,作業者IDごとに,(各組付け動作)と(頻度)を掛けた総和と,全作業者IDでの平均値の(各組付け動作)と(頻度)との比率を作業者IDの時間係数として算出する。
【0070】
図15に,本システムの作業者―時間係数の出力結果の一例を示す。作業者IDと,上記方法にて計算した作業者―時間係数のほか,作業者ごとの技能レベル,経験年数,各種資格の取得状況を管理する。この作業者ごとの時間係数にて,図14記載の作業者IDごとの作業形態―時間係数を割った値の平均値を,各作業形態IDの時間係数として算出する。
【0071】
図16に,作業形態―時間係数の出力結果の一例を示す。作業形態IDと,上記方法にて計算した作業形態―時間係数のほか,作業形態ごとの内容,組立エリアの寸法等を管理する。
【0072】
なお上記の,作業者ID,作業形態の計算において,平均値を用いているが,ばらつきを考慮し,平均値に標準偏差の所定数倍を加えた値を用いてもよい。
【0073】
図17に,組立時間推定装置72が行なう組立時間推定処理のフローチャートを示す。なお図2の動作分析71は,図3で説明した内容と同様のため省略する。
【0074】
ステップS301では,時間推定を行なう作業にかかる動作分析結果を組付け動作記憶部25から取得する。
【0075】
ステップS302では,取得した分析結果にもとづいて,記憶装置31から動作種類の時間係数を,記憶装置32から部品特性の時間係数をそれぞれ取得する。
【0076】
ステップS303では,作業者の技能レベル,作業形態など作業情報の入力値の入力を受付け、または所定の記憶領域から取得する。
【0077】
ステップS304では,作業情報入力結果をもとに,記憶装置33から作業者の時間係数を,記憶装置34から作業形態の時間係数を取得する。このとき例えば,図15,図16に示した表のように,入力した作業者レベル,作業形態の内容から,作業者ID,作業形態IDを引当て,その引当結果をもとに各係数を取得する。
【0078】
ステップS305では,ステップS303,S304で取得した各係数にもとづき,部品組付け単位の組立時間を算出する。
【0079】
ステップS306では,算出した組立時間推定結果を出力する。
【0080】
図18に,表示装置4に出力する組立時間推定結果の一例を示す。ここで,製品ID,作業者レベル,作業形態は入力値である。入力した製品IDをもとに,動作分析71を行う。また作業者レベルを識別キーとして,作業者―時間係数記憶部33(図15の例参照)を参照し,作業者―時間係数を取得する。このとき,同じキーが複数存在する場合は,それらの平均値または平均値に所定倍数分の標準偏差を加えた値を用いてもよい。なお組立時間の推定時間は,各部品の計算結果とともに,前記で定義した組立作業のみに要する正味時間と作業形態に依存する正味作業以外の時間を分けて出力する。部品名称と組立時間推定結果のほか,部品点数,計算に用いた組付けベクトル,部品種別,質量,組付け動作を出力してもよい。
【0081】
また入力する作業形態は,図16の表の「作業形態ID」と同じ内容で表示しているが,入力値として,図16の「内容」を入力させてもよい。図18での入力,図17ステップS303での入力では,テキスト入力以外に,ドロップダウンリストでの選択,オプションボタンでの選択としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は,生産関連部門が作業者の動作を計測して,その作業時間を分析し評価する方法,設計部門が製品の組立時間を見積もる方法を支援するものであり,組立作業の分析と組立時間の推定を行うシステムであり,本例では電気製品を例に説明したが,その他の製品あるいは組立工程以外でも加工作業等でも同様に分析支援が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…入力装置(作業情報,作業確認),2…表示装置(作業指示),3…入力装置(作業STEP等),4…表示装置(分析結果),5…入力装置(対象製品,作業情報等),6…表示装置(計算結果),21…3次元CADデータ記憶部,22…部品種別記憶部,23…作業指示データベース,24…実測作業時間データベース,25…組付け動作記憶部,31…動作種類―時間係数記憶部,32…部品特性―時間係数記憶部,33…作業者―時間係数記憶部,34…作業形態―時間係数記憶部,50…作業管理システム,51…作業指示の出力および作業者情報の管理,作業形態,作業確認の記録装置,60…組立時間推定システム,61…作業STEP設定,動作分析装置,62…係数分析装置,71…動作分析装置,72…組立時間の推定装置,80…バスライン。
【技術分野】
【0001】
本発明は,構造設計者が設計した製品の各部品の作業時間を予測して設計改善を検討する場合,または生産技術者が製品製造前に工程設計を改善する検討を行うなどに際して,製品の作業時間を評価する検討作業を支援する作業時間推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
変動する生産量に柔軟に対応できる生産方式としてセル生産がある。主に多品種少量生産では有効であり,情報機器,家電品,自動車など多方面で導入されている。このセル生産とは,作業者の周辺に部品,組付け工具を配置したセルにおいて,1人または少数の作業者チームで製品の組み立て工程を完成まで行うものである。ライン生産方式と比較して,作業者一人が受け持つ範囲が広いこと,生産ラインの変更などに即応しやすいことが特徴である。
【0003】
また,このセル生産においても,製品種類,生産量に応じて,複数の形態がある。例えば,1人の作業者の周りに部品を配膳した1人屋台方式,複数の作業者がU字ラインの中で作業を行ううさぎ追い方式,組立用の台車を作業者が押しながら作業を行う台車方式などがあり,それぞれ特質がある。
【0004】
セル生産の場合,作業時間,作業品質は作業者の技量・熟練度に依存しがちである。そこで非熟練作業者でも効率よく作業を行うために,工程ごとに具体的な作業指示書を表示して指示を行う方式がある。例えば,近年の3D−CADの普及により,3D−CAD情報などの設計情報から作業指示書を作成することで3Dの図面と注記情報により作業指示を行うシステムが開発されている(以下,3D作業指示システムと略す)。
【0005】
一方,デジタルモックアップツール(以下,DMUと略す)と呼ばれる3Dモデルをパーソナルコンピュータ上の仮想空間に表示し,組立時の干渉チェックや組立アニメーションを表現するツールもある。このツールでは,ユーザが入力した組立アニメーションを用いて,3Dモデルと部品属性などのビューを表示することで工程指示に相当する内容を作成する機能もある。この方法により,設計段階で組立性を検証すること,その結果をもとに作業指示書を作成することができる。
【0006】
また従来は,作業指示書に2D図面を用いることが多かったが,2D図面に表記されていた寸法や注記などの情報と3Dモデルの斜視図を利用して3D図として表記する方法も広まっている。
【0007】
このような3D図などを作業者の前に設置した画面上に表示する3D作業指示システムは,例えば,作業者がリアルタイムに表示される工程ごとに指示図を画面上でめくりながら作業を進める方式である。これにより作業者への具体的な指示とともに,工程ごとの作業開始時間,終了時間を作業者ごとに自動記録することができる。その結果をもとに作業能率,作業者別の組立時間など分析が可能である。ただし,一般にセル生産では,組立時間については作業者個々に指示は出さず工場全体で補完しながら管理を行う。
【0008】
また一方,上記のDMUなど組立性を評価するツールで扱う情報が構造設計の3Dモデルだけの場合,生産方式を考慮できておらず,組立時間を精度よく算出することは困難であった。そこで従来,製造する製品の組立に要する時間(以下,組立時間と略す)を推定する方法としては,標準的な作業者を選定して,実際の組立ラインでの組付作業時間を実測し,それを経験値として,次期製品に用いたりしてきた。しかし,この方式では新しい組立工程,異なる生産形態が発生した場合,組立時間が予測できないという問題があった。
【0009】
この問題を解決するために,特開平9−245071号(特許文献1)に記載された方法では,3Dモデルに含まれる部品属性情報と作業時間との計算テーブルを用意し,3Dモデルから作業時間を算出する方法としている。
【0010】
また特開平8−287127号(特許文献2)に記載された方法では,部品属性情報などから作業の組立容易性や作業難易度を評価して,組み立てしやすい部品を使用することによる作業時間の指標を算出している。
【0011】
また特開平4−069703(特許文献3)に記載された方法では,部品組付作業の動作内容を表現するために必要な動作種類を決定し(下移動動作,横移動動作,など:標準組付動作と称する),該標準組付動作毎に,予め定めた「ある作業者条件,ある部品条件,ある作業職場条件」の下で該標準組付動作を行う場合に,該標準組付動作を行うのに要する時間の数値を設定した組立時間推定方法がある。
【0012】
これらの従来技術により,設計段階や製造工程計画段階などの製造前に,新しい組付作業が発生しても,該作業を該標準組付動作で表現することによって組立時間を推定することが出来る。
【0013】
しかし,特許文献3の方式では,理想状態の組立時間であり,実際の作業時間のばらつきが考慮できていないという問題があった。特開2003−39260号(特許文献4)に記載された方法では,既存の部品の組立時間の実測値を統計処理することで,組立時間ばらつきを考慮した組立時間の推定をしている。
【0014】
また特開2003−122424号(特許文献5)に記載された方法では,動画撮影手段を用いて作業の各動作を実測して,それぞれの付加価値を分析することで付加価値がある作業と切り分けた分析をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平9−245071号公報(特許第3813232号)
【特許文献2】特開平8−287127号公報(特許第3724842号)
【特許文献3】特開平4−069703号公報(特許第3230813号)
【特許文献4】特開2003−39260号公報(特許第4120188号)
【特許文献5】特開2003−122424号公報(特許第3715566号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし,このような従来の組立時間推定方法において,特許文献1,特許文献2のように3Dモデル等の部品属性と関連づけた作業時間テーブル,作業難易度のみでは,理想状態での数値であり,組付け動作,作業形態を考慮できていなかった。例えば,組立作業者は組付け動作の違いが考慮できておらず,また実際の組立作業との誤差が大きくなるため,能力不足が発生しないように,得られた組立作業時間に単に1より大きな係数を掛けて最終的な推定値とする例もあり高精度な推定はできていなかった。
【0017】
また特許文献3では,標準組付動作の組立時間は,組付け部品の属性,組付け動作の種類や基準条件の違いは考慮されているものの,作業環境を考慮していない理想状態の数値であり,組立時間バラツキが発生するなど,特に組付けの難しい作業において,実組立時間が推定組立時間よりも長くなるという問題があった。
【0018】
また特許文献4では,既存の組立時間の実測値を統計処理して組立時間ばらつきを考慮した時間を算出している。この方法により全体の作業時間の推定精度は向上したものの,作業全体での時間ばらつきを評価しており,正味の組立作業を切り分けて時間推定することはできなかった。
【0019】
また特許文献5では,動画撮影手段により,正味作業と付加価値のない作業とを分析しているが,動画を撮影する手段とその実作業の分析に手間がかかるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は,製品構造の良否と作業形態の良否を区別して分析することを目的とする。 そこで3D作業指示システムにおいて,作業者に表示する1枚ごとの作業指示内容(組付け動作,部品属性など)と実際に作業を行なった実作業時間の記録データを利用する。また,このとき作業者の違いや,作業形態として1人屋台方式,台車方式などそれぞれの方式や、組付け動作、部品属性などを考慮した分析を行い,作業者、作業形態、組付け動作,部品属性ごとの動作時間係数(組付け動作時間を算出するための係数)を算出することで、理想状態の組立時間を推定する。そして3D作業指示システムの実作業時間の記録データと上記理想状態での組立時間をもとに,作業者ごとの技能レベル(作業者の時間係数),作業形態係数(作業形態ごとの時間係数)を算出する。
【0021】
これにより,生産職場,作業者の配置などを検討する工程設計段階での組立時間の推定を行う方法およびそのシステムを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば,構造設計段階や工程設計段階などの製造前の段階で,作業時間を推定することが可能となり,製品の低コスト化,量産早期立ち上げなどに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例の作業管理システムおよび作業時間係数分析システムのブロック図である。
【図2】本発明の一実施例の組立作業時間推定システムのブロック図である。
【図3】本発明の一実施例の組付け動作の分析処理のフローチャートである。
【図4】説明のためのモデル図である。
【図5】モデル図の階層と組立順序の図である。
【図6】本発明のシステムの出力画面の一例を示す図である。
【図7】図6の指示図の一例を示す図である。
【図8】本発明のシステムの出力画面の一例を示す図である。
【図9】図8の指示図の一例を示す図である。
【図10】本発明のシステムの出力画面の一例を示す図である。
【図11】本発明のシステムの出力画面の一例を示す図である。
【図12】本発明の作業時間係数の分析処理のフローチャートである。
【図13】本発明のシステムの出力画面の一例を示す図である。
【図14】本発明のシステムの出力画面の一例を示す図である。
【図15】本発明の作業者―時間係数の出力画面の一例を示す図である。
【図16】本発明の作業形態―時間係数の出力画面の一例を示す図である。
【図17】本発明の組立作業時間の算出処理のフローチャートである。
【図18】本発明のシステムの出力画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下,図面を用いて,本発明を実施するための形態について説明する。
【0025】
図1に,本発明の方法による作業管理システム50および作業時間係数分析システム60のブロック図を示す。記録装置51、指示図STEP設定動作分析装置61、係数分析装置62は、コンピュータで構成されるか、または演算装置(プロセッサなど)にロードされたてその上で稼動するソフトウェアにより構成される。各記憶部21、22、25、31〜34及び各データベース23,24は、その内部に各記憶部・データベースのための記憶領域を設定した記憶装置(磁気ディスク装置,半導体メモリ,光ディスクなど)によって構成される。
【0026】
作業管理システム50は,各作業者が入力装置1にて,作業者の識別番号(以下,作業者IDと称する),対象とする製品の識別番号などを入力することで,記録装置51が該当する作業指示情報を作業指示データベース23から呼び出し,表示装置2に出力する。この入力装置1は,キーボード,マウス,タッチパネルのほか,専用のスイッチやセンサ,あるいは音声認識装置を用いてもよい。表示装置2は,例えばディスプレイ,プロジェクタ,ヘッドマウントディスプレイなど画面やスクリーンに情報を表示する装置を用いる。
【0027】
具体的には,作業者が自身の作業者IDと対象製品の識別番号を入力装置1を介して入力することで,該当の作業指示図を表示装置2であるディスプレイ上に表示する。作業指示図は,作業単位に分割した紙芝居形式の図面を用いるとよい。例えば,図7に一例を示したが,組付けられる側の部品(被組付け部品)と組付け部品を3D図面で表示するとともに,部品表形式で組付けるべき部品の情報を表示する。また組付ける際の注意事項なども表示する。
【0028】
1枚の指示図で表現された作業を完了した際,作業完了確認の入力を行うことで,次の作業指示を表示する(以下,1枚ごとの指示の単位を作業単位として指示図STEPと称する)。このように指示図STEPごとに作業者への指示を出力する。このとき,作業確認の入力にて次の作業指示を出力するとともに,前の作業の終了時間と次の作業の開始時間を実測作業時間データベース24に格納する。
【0029】
また実測作業時間データベース24には,作業形態情報を実測作業時間に対応付けて格納する。これは組立時間の分析を行う際,作業形態ごとの時間係数を求めるために用いる識別となる。そこで,例えば,I字ラインをI01,U字セル生産方式をU01,台車セル生産方式をV01,1人屋台セル生産方式をP01などと定義する。また,このような生産方式の違いだけではなく,配膳された部品と組付け場所との距離の違いを考慮する場合,組立作業者が動き回る範囲ごとに,作業形態のID番号を変えることとする。なお,この作業形態は,作業者が入力する方法のほか,作業指示や生産ラインの管理者が設定してもよい。
【0030】
図1に示した作業時間係数分析装置60のブロック図について説明する。作業時間係数分析装置60は,作業管理システム50の作業指示データベース23と,実測作業時間データベース24にアクセス可能であり,その構成要素である指示図STEP設定動作分析装置61及び係数分析装置62の具体的な動作は図3,図12のフローチャートでの説明とする。入力装置3にて対象製品とその指示図STEPを設定し,3次元CADデータ21や部品種別の情報22をもとに動作分析処理を行う。組付け動作分析結果25と実測作業時間データベース24から各係数を算出して各記憶部31,32,33,34に記憶するものである。
【0031】
図2に,組立時間推定システムのブロック図を示す。本ブロック図では,各係数を記憶した各係数記憶部31,32,33,34を用いており,その具体的な動作は図17のフローチャートでの説明とする。入力装置5にて,計算対象の製品と作業情報(想定される作業形態等)を設定することで,3次元CADデータ21および部品種別22をもとに分析した組付け動作25から組立時間を推定するものである。
【0032】
図3に,図1で示した指示図STEP設定および動作分析装置61の組付け動作の分析処理のフローチャートを示す。
【0033】
ステップS101では,作業指示データベース23に記憶された情報から対象製品および組立順序の情報を取得する。ここで本実施例においては組立の順序は設定されているものとする。
【0034】
ステップS102では,対象製品について,3次元CADのアセンブリモデル情報を3次元CADデータ記憶部21から取得する。ここでアセンブリモデル情報とは,アセンブリモデルの部品構成を示す階層情報,各部品の情報(部品番号,図面番号,体積,質量など),部品間の拘束/隣接関係である。この拘束/隣接関係とは,例えばアセンブリモデルを作成する際に設定する部品間の合致情報であり,例えば平面と平面の合致,円筒面と円筒面の同心合致などの情報がある。
【0035】
ステップS103では,上記3次元CADのアセンブリモデル情報から,部品種別記憶部22に記憶された部品種別情報を参照して部品種類情報を取得する。例えば部品種別とは,ネジ,ナット等の締結部品,基板,配線等の電気部品といった区別のほか,表面カバーなどの意匠部品などがあり,組付け動作や組付け時の取り扱いの違いを判断する情報として用いる。
【0036】
ステップS104では,入力装置3で設定された指示図STEPを取得し,同一STEP内での部品を把握する。具体的には図4,図5,図6,図7を用いて説明する。
【0037】
図4に,説明のためのモデル図を示す。図5に,図4のモデル図の階層と組立順序の図を示す。図6に,本発明のシステムでの指示図STEP設定の例および組付け動作の出力画面の一例を示す。図7に,図6の指示図STEP2での指示図出力例を示す。
【0038】
図3のステップS104では,図6に示した表の指示図STEP列のように設定した場合,組順1,2の部品(B_Plate),(Pole)が指示図STEP1となり,組順3,4の部品(PK),(Screw_W)が指示図STEP2となる。
【0039】
ステップS105では,同一STEP内の部品間のアセンブリ拘束/隣接関係を取得する。上記S102で取得したアセンブリモデル情報から同じSTEP内の情報を絞り込んで把握する。
【0040】
ステップS106では,把握したアセンブリ拘束/隣接関係から,部品の組付けベクトルを算出する。例えば,図7に示した部品PKとScrew_Sを例に説明する。このとき,図4に示した座標系を用いて説明する。Screw_Sは,PKの各円筒穴に対して同心の拘束関係(円筒拘束),またPKの上面に対して平面合致の拘束関係(平面拘束)を取得したとする。この拘束関係から,Screw_SはPKの各円筒穴の垂直軸(Y軸)に同心な方向と,かつPKの上面(X-Y平面)に平行な面で拘束されている。ここで1つの平面拘束を外した場合,Screw_Sは合致面の法線で離れる方向でかつPKの各円筒穴の垂直軸方向(+Y方向)に分解することができる。したがってScrew_Sの組付けベクトルは分解方向の逆となる−Y軸方向すなわち単位ベクトルでは(0,-1,0)となる。
【0041】
ここで,例えば分解配置移動量の初期値を50mmと設定した場合,組付け動作ベクトルは図7に示した例のように,部品PKがX=0,Y=-50,Z=0,部品Screw_SがX=0,Y=-100,Z=0となる。なお本例では,同じ軸上に複数の部品を分解配置する際,後で組付ける部品を初期値の2倍遠くに配置する計算とした。この分解配置移動量については,分解する方向についての部品の寸法と組付け順序等から,それぞれの部品が重ならないように配置するとよい。
【0042】
ステップS107では,ステップS106で算出した組付けベクトルとステップS103で取得した部品種別により,組付け動作種類を決定し,部品属性により時間を補正する部品特性を決定する。図6の表の部品名等から部品種別記憶部を参照して部品種別を把握する。例えば,Screw_Sはネジ部品と判る。また先に算出した組付けベクトルから,下方向に組付けることが判る。そこで,組付け動作は,下移動(↓)とねじ回転(Q)と算出する。
【0043】
ここで,組付け作業を標準の組付け動作で表現し,組立時間を推定する公知例として,特許文献3に記載の方法がある。組付け動作の表現方法においては,この方法を用いてもよい。具体的には,下移動,上移動,ねじ回転など,部品の組付け作業の動作内容を表現するために必要な動作種類を予め定義しておき,組付けベクトルと部品種別から判定して組付け動作を算出する。また部品によっては重量物や長尺のものもあるため,モデル情報から質量,寸法,体積などを計算した部品特性を把握することで組付け動作を補正する係数を設定する。ただし,特許文献3で記載された組立時間の算出方法は用いず,組付け動作の表現方法までを参照する。
【0044】
図6に,組付け動作分析後に出力する組付け動作情報の例を示す。はじめに分析者が製品ID,指示図IDを入力することで図6の表の組順,部品名,部品点数の列の内容については,図3のステップS101の説明のとおり,作業指示データベース23から初期情報として取得する。また,図3のステップS102,S103で説明したように,3次元CADデータおよび部品種別記憶部を参照することで,部品種別,質量等を把握し表示する。
【0045】
この部品表は,製品ID,指示図IDにもとづいて表示されたものであり,部品名などの情報が組順に沿って表示する。ここで分析者が,指示図STEP列の設定を行う。例えばマウスにて複数の部品行を選択し同じSTEPにする設定を行うことで,選択された行について同じSTEP番号をつける。このとき上から順番にSTEP番号を振りなおす処理を行う。
【0046】
また,組付け動作は,部品を締結することで区切りとなるケースが多い。そこで,取得した部品種別から判断して,締結部品であるネジ部品があった場合,そのネジ部品を区切り位置と判定する方法とするとよい。なおこの場合,締結部品の行が連続している場合は,締結部品以外の部品が出現するまで同じ指示図STEPとする方法または所定の部品点数で区切る方法のいずれかを選択する方法とするとよい。
【0047】
このように分析者が,指示図STEPを設定することで,図3のステップS104以降の処理が行われ,組付けベクトル,組付け動作が計算され表示される。ここで,図6において,所定のSTEP行を選択し,右上の「プレビュー」ボタンを押すことで,その指示図STEPの分解配置図のプレビュー画面イメージを表示する。例えば,図7の指示図#2のモデル図が1例である。このプレビュー結果を確認し,分解配置移動量を変更したい場合は,組付けベクトルの列の数値を変更することで修正する。修正結果は再度「プレビュー」ボタンにて画面イメージを確認する。
【0048】
図7に,図6で設定した指示図の例を示した。図6の指示図STEP2の例であり,本例の指示図は3Dモデル図と部品表と指示文からなる。3Dモデル図では,指示図STEPごとに,被組付け部品に対して組付けベクトルの逆方向に組付け部品を分解配置している。また部品表には,3次元CADデータ記憶部から取得した部品属性を表示する。
【0049】
図8に,図6の例について,指示図STEPを変更した例を示す。図6の説明では,作業指示データベースから初期情報として取得するケースを示した。図8では,図6を指示図データベースから取得し,変更するケースとして説明する。図8では,図6で設定した指示図ID:W678R01を呼び出して表示した後,指示図STEPのみ変更し,組付けベクトルを算出し,指示図ID:W678R02として保存した例である。
【0050】
ここで,図8の指示図STEP1の例では,1枚の指示図上の同じ方向に配置する部品が多いため,分解配置移動量の50から40に変更している。指示図で配置できる最大値を設定しておくことで,組付け部品の寸法と組付け方向等から各部品の分解配置移動量を按分する方法とするとよい。
【0051】
図9に,図8で設定した指示図の例を示した。図8の指示図STEP1の例である。
【0052】
次に,図1の実測作業時間データベース24について図10を用いて説明する。図10には,作業者が指示図STEPごとに作業した実測結果を記録した例である。例えば,製品ID,指示図ID,指示図STEP,作業者ID,作業形態ID,開始時間,終了時間,作業時間の列で構成される。ここで,開始時間は,作業者が前の指示図をめくった時間であり,終了時間は次の指示図へとめくった時間である。また作業時間とは,終了時間から開始時間を引いた値である。このように,実際の作業の際に,作業指示図をディスプレイ上に表示することで,作業者,指示図STEPごとの作業時間を記録する。
【0053】
図11に,図6,図8で説明した動作分析の結果の例を示す。本内容は組付け動作記憶部25に格納した例である。例えば,製品ID,指示図ID,指示図STEPごとの組付け動作分析結果から,各行ごとに組付け動作の種類ごとに出現数を記憶する。
【0054】
図12に,係数分析装置62が行う組立時間算出に関する各係数の計算処理のフローチャートを示す。
【0055】
ステップS201では,実測作業時間データベース24から,指示図IDの指示図STEP単位の作業時間情報(例:図10)を取得する。作業時間情報には、指示図STEPと作業者IDと作業形態IDとの組み合わせごとに、作業時間(開始時間と終了時間)が記録されている。
【0056】
ステップS202では,作業情報として,入力装置3などから作業者ID,作業形態IDを取得する。
【0057】
ステップS203では,組付け動作記憶部25から,指示図IDの指示図STEP単位の組付け動作情報(例:図11)を取得する。組み付け動作情報は、指示図STEPごとに、部品点数、部品種類数、組み付け動作が記憶されている。
【0058】
ステップS204では,取得した作業時間情報、作業者ID、作業形態ID、組み付け動作情報に基づいて、作業者ごとに,指示図ID,指示図STEP,開始時間を識別キーとして,組付け動作種類の出現頻度,部品点数,作業時間をまとめる。
【0059】
ここで本実施例のステップS204での計算式について説明する。
【0060】
指示図STEPごとの作業時間すなわち1枚の指示図を開いた開始時間から次の指示図を開く終了時間は,指示図1枚で指示された部品の正味の組立時間とそれ以外の時間からなる。ここで正味の組立時間とは,どのような配膳形態でも不変のものであり,被組付け部品の直前に部品があると仮定した標準組付け動作での時間である。また正味以外の時間とは,指示された部品を配膳場所まで取りに行く時間,必要に応じて組付け部品ごとに段取り作業を行う時間,必要に応じて冶工具を準備する時間を想定している。なお作業者の休憩時間は作業STEP内の時間ではないため対象外としている。
【0061】
本仮定のもとで,指示図STEPごとにまとめた実測作業時間のデータから,以下の方程式を立てることができる。この計算式の説明において,指示図STEPごとの実測した作業時間をTi(iは個体番号)とする。また指示図STEPごとの組立動作種類の時間係数をAij,部品特性の時間係数をBik,作業者IDごとの時間係数をMil(Milは標準的な作業速度に対する時間係数),作業形態IDごとの時間係数をPimとする。
【0062】
指示図STEPごとの作業時間Ti(個体番号iの実測作業時間)は,以下の式で表すことができる。
(数1) Ti=Σ{(動作種類の出現数)×Aij+(補正対象部品の出現数)×Bik}×Mil+(部品種類数)×Pim×Mil
ここで,作業形態IDごとの時間係数に(部品種類数)を掛けているが,部品種類ごとに配膳位置や段取り作業,また冶工具の使用頻度が異なることを想定している。また部品点数は,組付け動作の中に含まれる要素であるため,この定数には含めないこととした。
【0063】
ステップS205では,作業時間Ti,各組付け動作種類の出現数,補正対象部品の出現数,部品種類数をもとに,上記数1の重回帰方程式から各係数を算出する。式の左辺は目的変数Ti,右辺は各係数に作業者IDの係数を掛けた係数(Aij×Mil ),(Bij×Mil ),(Pim×Mil )が説明変数となる。なお右辺第1項は指示図STEPごとの組付けに関する正味時間,第2項は作業形態IDによって変化する正味以外の作業時間となる。
【0064】
なお重回帰分析の方程式の求め方は,y切片をゼロとした最小二乗法でよい。ここで最小二乗法では個々のデータをもと回帰方程式から得られた予測値との誤差(残差)εが全体として最小となるように,回帰方程式の係数を決定する。一般に残差平方和(ε12+ε22+・・・+εn2)(nは個体数)が最小となるように係数を決定する。この分析結果の確からしさは決定係数「R2=(予測値の分散)/(目的変数の分散)」にて判定することが望ましい。
【0065】
ステップS206では,重回帰分析の決定係数が予め設定した値よりも小さい場合は,ステップS208に進み,異常値の除去などデータ範囲の見直し再計算を行う。決定係数は,0≦R2≦1であり,例えば設定値として0.8を設定するとよい。決定係数が設定値以上の場合,ステップS207にて,各係数(動作種類の時間係数Aij,部品特性の時間係数Bik,作業者の時間係数Mil及び作業形態の時間係数Pim)の計算結果を出力し,各記憶部(動作種類‐時間係数記憶部31、部品特性−時間係数記憶部32、作業者‐時間係数記憶部33及び作業形態−時間係数記憶部34)に格納する。
【0066】
図13に,指示図ID,指示図STEP,開始時間を識別キーとして整理した組立動作種類ごとの出力数,部品種類数,作業時間の一例を示す。なお表には開始時間を省略している。作業者IDかつ指示図STEPごとの作業時間を把握することができる。
【0067】
ここで,作業に熟練した作業者は,指示図STEP1枚ごとに作業確認ボタンを押さずに,複数枚の指示図をまとめて作業を行い,連続して作業確認ボタンを押してしまうことも考えられる。そこで,事前に推定した組付け動作の係数をもとに計算した作業時間推定値との差異が所定量かい離している場合,あるいは事前に設定した最小値以下の場合は,連続して作業を実施したと判断する。例えば図13の例では,No.5,No.6は連続作業と判断し,組付け動作および作業時間等を加算した値にて次の計算を行う。
【0068】
図14に,本システムの出力結果の一例を示す。分析結果から,作業者IDごとの組付け動作の時間係数,作業形態の時間係数を表示する。ただし,本分析結果は,作業者IDごとの値である。そこで本結果をもとに,作業者IDごとの時間係数,作業形態ごとの時間係数を次の方法で算出する。
【0069】
図14の組付け動作-時間係数の分類列に,各動作の時間係数の最上段に頻度を表示した。この頻度は,全作業での各組付け動作の出現頻度を示す。そこで,作業者IDごとに,(各組付け動作)と(頻度)を掛けた総和と,全作業者IDでの平均値の(各組付け動作)と(頻度)との比率を作業者IDの時間係数として算出する。
【0070】
図15に,本システムの作業者―時間係数の出力結果の一例を示す。作業者IDと,上記方法にて計算した作業者―時間係数のほか,作業者ごとの技能レベル,経験年数,各種資格の取得状況を管理する。この作業者ごとの時間係数にて,図14記載の作業者IDごとの作業形態―時間係数を割った値の平均値を,各作業形態IDの時間係数として算出する。
【0071】
図16に,作業形態―時間係数の出力結果の一例を示す。作業形態IDと,上記方法にて計算した作業形態―時間係数のほか,作業形態ごとの内容,組立エリアの寸法等を管理する。
【0072】
なお上記の,作業者ID,作業形態の計算において,平均値を用いているが,ばらつきを考慮し,平均値に標準偏差の所定数倍を加えた値を用いてもよい。
【0073】
図17に,組立時間推定装置72が行なう組立時間推定処理のフローチャートを示す。なお図2の動作分析71は,図3で説明した内容と同様のため省略する。
【0074】
ステップS301では,時間推定を行なう作業にかかる動作分析結果を組付け動作記憶部25から取得する。
【0075】
ステップS302では,取得した分析結果にもとづいて,記憶装置31から動作種類の時間係数を,記憶装置32から部品特性の時間係数をそれぞれ取得する。
【0076】
ステップS303では,作業者の技能レベル,作業形態など作業情報の入力値の入力を受付け、または所定の記憶領域から取得する。
【0077】
ステップS304では,作業情報入力結果をもとに,記憶装置33から作業者の時間係数を,記憶装置34から作業形態の時間係数を取得する。このとき例えば,図15,図16に示した表のように,入力した作業者レベル,作業形態の内容から,作業者ID,作業形態IDを引当て,その引当結果をもとに各係数を取得する。
【0078】
ステップS305では,ステップS303,S304で取得した各係数にもとづき,部品組付け単位の組立時間を算出する。
【0079】
ステップS306では,算出した組立時間推定結果を出力する。
【0080】
図18に,表示装置4に出力する組立時間推定結果の一例を示す。ここで,製品ID,作業者レベル,作業形態は入力値である。入力した製品IDをもとに,動作分析71を行う。また作業者レベルを識別キーとして,作業者―時間係数記憶部33(図15の例参照)を参照し,作業者―時間係数を取得する。このとき,同じキーが複数存在する場合は,それらの平均値または平均値に所定倍数分の標準偏差を加えた値を用いてもよい。なお組立時間の推定時間は,各部品の計算結果とともに,前記で定義した組立作業のみに要する正味時間と作業形態に依存する正味作業以外の時間を分けて出力する。部品名称と組立時間推定結果のほか,部品点数,計算に用いた組付けベクトル,部品種別,質量,組付け動作を出力してもよい。
【0081】
また入力する作業形態は,図16の表の「作業形態ID」と同じ内容で表示しているが,入力値として,図16の「内容」を入力させてもよい。図18での入力,図17ステップS303での入力では,テキスト入力以外に,ドロップダウンリストでの選択,オプションボタンでの選択としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は,生産関連部門が作業者の動作を計測して,その作業時間を分析し評価する方法,設計部門が製品の組立時間を見積もる方法を支援するものであり,組立作業の分析と組立時間の推定を行うシステムであり,本例では電気製品を例に説明したが,その他の製品あるいは組立工程以外でも加工作業等でも同様に分析支援が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…入力装置(作業情報,作業確認),2…表示装置(作業指示),3…入力装置(作業STEP等),4…表示装置(分析結果),5…入力装置(対象製品,作業情報等),6…表示装置(計算結果),21…3次元CADデータ記憶部,22…部品種別記憶部,23…作業指示データベース,24…実測作業時間データベース,25…組付け動作記憶部,31…動作種類―時間係数記憶部,32…部品特性―時間係数記憶部,33…作業者―時間係数記憶部,34…作業形態―時間係数記憶部,50…作業管理システム,51…作業指示の出力および作業者情報の管理,作業形態,作業確認の記録装置,60…組立時間推定システム,61…作業STEP設定,動作分析装置,62…係数分析装置,71…動作分析装置,72…組立時間の推定装置,80…バスライン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品に作業を行い製品を製造する時間を推定する作業時間推定システムにおいて、
作業時間推定対象の作業とその作業における部品及び動作とを対応付ける第一の作業動作情報を記憶する作業動作記憶部と、
動作種類、部品特性、作業形態のいずれかの時間係数を記憶した記憶部と、
前記第一の作業動作情報と前記時間係数とに基づいて作業時間を推定する作業時間推定部とを備え、
前記時間係数は、測定した実作業時間に基づいて算出されたものであることを特徴とする作業時間推定システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記作業時間推定にかかる製品モデルのCADデータ、部品種別情報及び作業指示情報に基づいて、前記第一の作業動作情報を生成する動作分析部を備えたことを特徴とする作業時間推定システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
作業時間測定対象作業の作業とその作業における部品及び動作とを対応付ける第二の作業動作情報を記憶する作業動作記憶部と、
前記作業時間測定対象の作業の実作業時間を測定した実測作業時間を、その作業の動作にかかる動作種類、部品特性、作業形態のいずれかと対応付けて記録した実測作業情報を記憶した実測作業データベースと、
前記第二の作業動作情報と前記実測作業情報とに基づいて、前記時間係数を算出し、前記記憶部に記憶する係数分析部とを備えた作業時間推定システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記係数分析部は、重回帰分析によって前記時間係数を算出することを特徴とする作業時間推定装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、
前記作業時間測定にかかる製品モデルのCADデータ、部品種別情報及び作業指示情報に基づいて、前記第二の作業動作情報を生成する動作分析部を備えたことを特徴とする作業時間推定システム。
【請求項6】
請求項2または請求項5において、
前記作業は組立作業であり、
前記動作分析部は、前記CADデータに含まれるアセンブリモデル情報及び組み付けベクトルと、前記部品種別情報と、前記作業指示情報に含まれる作業単位ごとに使用する部品の情報とに基づいて、前記第一または第二の作業動作情報を生成することを特徴とする作業時間推定システム。
【請求項7】
請求項2または請求項5において、
前記時間係数は、動作種類ごとの係数である第一の時間係数と、部品特性ごとの係数である第二の時間係数とを含み、
前記第一の作業動作情報は、各作業に用いる部品数と、その部品に行なう組付動作数とを含み、
前記作業時間推定部は、前記第一の時間係数と前記組付動作数との積及び前記第二の時間係数と前記部品動作数との積とに基づいて、作業時間を推定することを特徴とする作業時間推定システム。
【請求項8】
請求項2、請求項5、請求項7のいずれかにおいて、
前記係数は、作業形態ごとの係数である第三の時間係数を含み、
前記第一の作業動作情報は、各作業に用いる部品の種類数を含み、
前記作業時間推定部は、前記第三の時間係数と前記第一の作業動作情報に示される部品の種類数との積に基づいて作業時間を推定することを特徴とする作業時間推定システム。
【請求項9】
請求項7または請求項8において、
前記係数は、作業者ごとの係数である第四の時間係数を含み、
当該第四の係数は、複数の作業者の実測作業時間と特定の作業者の実測作業時間により算出され、
前記作業時間推定部は、前記第四の時間係数に基づいて、前記特定の作業者による作業時間を推定することを特徴とする作業時間推定システム。
【請求項10】
部品に作業を行い製品を製造する時間を推定する作業時間推定方法において、
作業時間推定部が、作業時間推定対象の作業とその作業における部品及び動作とを対応付ける第一の作業動作情報と、動作種類、部品特性、作業形態のいずれかの時間係数と、に基づいて作業時間を推定する作業時間推定工程を含み、
前記時間係数は、測定した実作業時間に基づいて算出されたものであることを特徴とする作業時間推定方法。
【請求項11】
請求項10において、
係数分析部が、作業時間測定対象作業の作業単位における部品及び動作を記録した第二の作業動作情報と、前記作業時間測定対象作業の実作業時間を測定した実測作業時間を、その実作業の動作にかかる動作種類、部品特性、作業者、作業形態のいずれかと対応付けて記録した実測作業情報と、に基づいて、前記係数を算出する係数分析工程とを備えた作業時間推定方法。
【請求項12】
部品に作業を行い製品を製造する時間を推定する作業時間推定プログラムにおいて、
作業時間推定対象の作業とその作業における部品及び動作とを対応付ける第一の作業動作情報と、動作種類、部品特性、作業者、作業形態のいずれかの時間係数と、に基づいて作業時間を推定する作業時間推定機能してコンピュータを機能させ、
前記係数は、測定した実作業時間に基づいて算出されたものであることを特徴とする作業時間推定プログラム。
【請求項13】
請求項12において、
作業時間測定対象作業の作業単位における部品及び動作を記録した第二の作業動作情報と、前記作業時間測定対象作業の実作業時間を測定した実測作業時間を、その実作業の動作にかかる動作種類、部品特性、作業者、作業形態のいずれかと対応付けて記録した実測作業情報と、に基づいて、前記時間係数を算出する係数分析機能としてコンピュータを機能させることを特徴とする作業時間推定プログラム。
【請求項1】
部品に作業を行い製品を製造する時間を推定する作業時間推定システムにおいて、
作業時間推定対象の作業とその作業における部品及び動作とを対応付ける第一の作業動作情報を記憶する作業動作記憶部と、
動作種類、部品特性、作業形態のいずれかの時間係数を記憶した記憶部と、
前記第一の作業動作情報と前記時間係数とに基づいて作業時間を推定する作業時間推定部とを備え、
前記時間係数は、測定した実作業時間に基づいて算出されたものであることを特徴とする作業時間推定システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記作業時間推定にかかる製品モデルのCADデータ、部品種別情報及び作業指示情報に基づいて、前記第一の作業動作情報を生成する動作分析部を備えたことを特徴とする作業時間推定システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
作業時間測定対象作業の作業とその作業における部品及び動作とを対応付ける第二の作業動作情報を記憶する作業動作記憶部と、
前記作業時間測定対象の作業の実作業時間を測定した実測作業時間を、その作業の動作にかかる動作種類、部品特性、作業形態のいずれかと対応付けて記録した実測作業情報を記憶した実測作業データベースと、
前記第二の作業動作情報と前記実測作業情報とに基づいて、前記時間係数を算出し、前記記憶部に記憶する係数分析部とを備えた作業時間推定システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記係数分析部は、重回帰分析によって前記時間係数を算出することを特徴とする作業時間推定装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、
前記作業時間測定にかかる製品モデルのCADデータ、部品種別情報及び作業指示情報に基づいて、前記第二の作業動作情報を生成する動作分析部を備えたことを特徴とする作業時間推定システム。
【請求項6】
請求項2または請求項5において、
前記作業は組立作業であり、
前記動作分析部は、前記CADデータに含まれるアセンブリモデル情報及び組み付けベクトルと、前記部品種別情報と、前記作業指示情報に含まれる作業単位ごとに使用する部品の情報とに基づいて、前記第一または第二の作業動作情報を生成することを特徴とする作業時間推定システム。
【請求項7】
請求項2または請求項5において、
前記時間係数は、動作種類ごとの係数である第一の時間係数と、部品特性ごとの係数である第二の時間係数とを含み、
前記第一の作業動作情報は、各作業に用いる部品数と、その部品に行なう組付動作数とを含み、
前記作業時間推定部は、前記第一の時間係数と前記組付動作数との積及び前記第二の時間係数と前記部品動作数との積とに基づいて、作業時間を推定することを特徴とする作業時間推定システム。
【請求項8】
請求項2、請求項5、請求項7のいずれかにおいて、
前記係数は、作業形態ごとの係数である第三の時間係数を含み、
前記第一の作業動作情報は、各作業に用いる部品の種類数を含み、
前記作業時間推定部は、前記第三の時間係数と前記第一の作業動作情報に示される部品の種類数との積に基づいて作業時間を推定することを特徴とする作業時間推定システム。
【請求項9】
請求項7または請求項8において、
前記係数は、作業者ごとの係数である第四の時間係数を含み、
当該第四の係数は、複数の作業者の実測作業時間と特定の作業者の実測作業時間により算出され、
前記作業時間推定部は、前記第四の時間係数に基づいて、前記特定の作業者による作業時間を推定することを特徴とする作業時間推定システム。
【請求項10】
部品に作業を行い製品を製造する時間を推定する作業時間推定方法において、
作業時間推定部が、作業時間推定対象の作業とその作業における部品及び動作とを対応付ける第一の作業動作情報と、動作種類、部品特性、作業形態のいずれかの時間係数と、に基づいて作業時間を推定する作業時間推定工程を含み、
前記時間係数は、測定した実作業時間に基づいて算出されたものであることを特徴とする作業時間推定方法。
【請求項11】
請求項10において、
係数分析部が、作業時間測定対象作業の作業単位における部品及び動作を記録した第二の作業動作情報と、前記作業時間測定対象作業の実作業時間を測定した実測作業時間を、その実作業の動作にかかる動作種類、部品特性、作業者、作業形態のいずれかと対応付けて記録した実測作業情報と、に基づいて、前記係数を算出する係数分析工程とを備えた作業時間推定方法。
【請求項12】
部品に作業を行い製品を製造する時間を推定する作業時間推定プログラムにおいて、
作業時間推定対象の作業とその作業における部品及び動作とを対応付ける第一の作業動作情報と、動作種類、部品特性、作業者、作業形態のいずれかの時間係数と、に基づいて作業時間を推定する作業時間推定機能してコンピュータを機能させ、
前記係数は、測定した実作業時間に基づいて算出されたものであることを特徴とする作業時間推定プログラム。
【請求項13】
請求項12において、
作業時間測定対象作業の作業単位における部品及び動作を記録した第二の作業動作情報と、前記作業時間測定対象作業の実作業時間を測定した実測作業時間を、その実作業の動作にかかる動作種類、部品特性、作業者、作業形態のいずれかと対応付けて記録した実測作業情報と、に基づいて、前記時間係数を算出する係数分析機能としてコンピュータを機能させることを特徴とする作業時間推定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−158931(P2011−158931A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17622(P2010−17622)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
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