説明

作業機の操舵装置および操舵装置用プログラム

【課題】 ステアリング機構を有しない作業機であっても、トラクタの旋回時には自動的かつ確実に作業機を外向させることができ、トラクタが旋回状態から直進状態へ戻る場合には、作業機を素早くトラクタの後方へと追従させ進行方向を一致させることができる作業機の操舵装置および操舵装置用プログラムを提供する。
【解決手段】 トラクタ3の操作によって変化する数値に基づいて当該トラクタ3の旋回状況を検知する旋回状況検知手段15が旋回開始を検知すると、ヒッチ角度増減手段13を制御して作業機2がトラクタ3の旋回方向に対して外向するようにヒッチ角度を増減し、旋回状況検知手段15が旋回終了を検知すると、ヒッチ角度増減手段13を制御してヒッチ角度が基準オフセット値となるように増減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに牽引される作業機の操舵装置に関するものであり、特に、ステアリング機構を用いなくても作業機の旋回性能および追従性能を高められる操舵装置および操舵装置用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ビートハーベスタのような牽引式の作業機においては、車輪の蛇角を変更するためのステアリング機構が使用されている。このステアリング機構は、油圧シリンダー等により車輪の蛇角を左最大切れ角・中立位置・右最大切れ角の3ポジションに切り換えるようになっている。これにより、作業機の旋回性能やトラクタへの追従性能が高められるとされている。
【0003】
前述したステアリング機構に関する技術として、例えば、特開昭62−88673号公報に記載の車輪舵取り方法が知られている(特許文献1)。この車輪舵取り方法は、作業機のドローバーにヒッチ角センサを取り付けており、このヒッチ角センサによりトラクタの旋回を検知したとき、作業機の車輪をトラクタの旋回方向とは逆方向に操舵する一方、旋回状態から直進状態へ移行するときには、作業機の車輪を中立位置に戻す制御を行うようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−88673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コスト面の問題から上記のようなステアリング機構を持たない作業機も多く、このような作業機においては、トラクタが旋回状態から直進状態へ戻る場合、追従する作業機の進行方向がトラクタの進行方向に一致するまで多くの時間がかかってしまうという問題がある。そして、この問題はトラクタに対して作業機をオフセットさせて牽引した場合に一層顕著となる。ここでいうオフセットとは、トラクタのタイヤ幅と作業機のタイヤ幅の相違によって、作業機がトラクタに対してその中心線が平行にずれた状態で連結されていることをいう。
【0006】
また、作業機の追従性を高めるため、作業者が勘や経験に頼ってトラクタを大回りさせる手動操作も行われている。しかしながら、後方を目視しながらの作業であるため危険であるし、作業者の負担が大きく疲労を高める要因となってしまう。また、手動操作の場合、忘れたりタイミングがずれることが多いため、作業機で畦を踏みつけ作物にダメージを与えてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、ステアリング機構を有しない作業機であっても、トラクタの旋回時には自動的かつ確実に作業機を外向させることができ、トラクタが旋回状態から直進状態へ戻る場合には、作業機を素早くトラクタの後方へと追従させ進行方向を一致させることができる作業機の操舵装置および操舵装置用プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る作業機の操舵装置の特徴は、ヒッチを介してトラクタに牽引される作業機を操舵する操舵装置であって、前記ヒッチに対して前記作業機がなすヒッチ角度を検出するヒッチ角センサと、前記ヒッチおよび前記作業機に連結されて前記ヒッチ角度を増減変更するヒッチ角度増減手段と、前記作業機の進行方向が前記トラクタの進行方向と一致するときの前記ヒッチ角度を基準オフセット値として記憶する記憶手段と、トラクタの操作によって変化する数値に基づいて当該トラクタの旋回状況を検知する旋回状況検知手段と、前記旋回状況検知手段がトラクタの操作により変化する数値に基づいて旋回開始を検知すると、前記ヒッチ角度増減手段を制御して作業機がトラクタの旋回方向に対して外向するようにヒッチ角度を増減し、前記旋回状況検知手段がトラクタの操作により変化する数値に基づいて旋回終了を検知すると、前記ヒッチ角度増減手段を制御して前記ヒッチ角度が基準オフセット値となるように増減させる操舵制御手段とを有する点にある。
【0009】
また、本発明において、前記操舵制御手段は、前記旋回状況検知手段によって旋回開始を検知すると、前記ヒッチ角度増減手段の動作許容範囲内においてヒッチ角度を最大または最小に増減させることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明において、トラクタに牽引される作業機がその中心線をトラクタの中心線に対して所定の距離だけ平行にずらして連結されている、いわゆるオフセットされている場合、前記旋回状況検知手段が前記作業機のオフセットされている方向への旋回開始を検知したとき、前記操舵制御手段は前記ヒッチ角度を基準オフセット値に保持するように制御し、前記旋回状況検知手段が前記作業機のオフセットされている側と反対方向への旋回開始を検知したとき、前記操舵制御手段は前記ヒッチ角度を当該操舵装置固有の特性および作業条件に基づいて決定される所定値に増減させるように制御することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明において、ヒッチに対してトラクタのドローバーがなすドローバー角度を検出するドローバー角センサを有しており、前記旋回状況検知手段は、前記ドローバー角度および前記ヒッチ角度を取得してこれらの相対角度を算出するとともに、この相対角度が所定時間継続して所定の旋回開始角度以上であったときを旋回開始として検知し、前記操舵制御手段による作業機の外向制御後に前記相対角度が減少したときを旋回終了として検知することが好ましい。
【0012】
また、本発明において、ヒッチに対してトラクタのドローバーがなすドローバー角度を検出するドローバー角センサを有しており、前記旋回状況検知手段は、前記ドローバー角度がゼロ点に対して所定の旋回開始角度以上であったときを旋回開始として検知し、前記操舵制御手段によって作業機の外向制御を実行した後に前記ドローバー角度が減少したときを旋回終了として検知することが好ましい。
【0013】
また、本発明において、前記作業機および前記トラクタを連結するリンクバーが備えられ、このリンクバーにおける前記作業機側の軸心が前記ヒッチ角センサの軸心と異なる場合、前記リンクバーに対して前記作業機がなすヒッチ補正角度を検出するヒッチ補正角センサと、前記リンクバーに対して前記トラクタがなすドローバー補正角度を検出するドローバー補正角センサを設け、前記旋回状況検知手段は、前記ヒッチ補正角度および前記ドローバー補正角度を取得してこれらの相対角度を算出するとともに、この相対角度に基づいて前記トラクタの旋回状況を検知することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る作業機の操舵装置用プログラムの特徴は、ヒッチを介してトラクタに牽引される作業機を操舵するように操舵装置を実行させる操舵装置用プログラムであって、前記操舵装置は、前記ヒッチに対して前記作業機がなすヒッチ角度を検出するヒッチ角センサと、前記ヒッチおよび前記作業機に連結されて前記ヒッチ角度を増減変更するヒッチ角度増減手段と、前記作業機の進行方向が前記トラクタの進行方向と一致するときの前記ヒッチ角度を基準オフセット値として記憶する記憶手段と、前記トラクタの旋回状況に応じて前記作業機の進行方向を変更させるように前記ヒッチ角度増減手段を制御する操舵制御手段とを備えており、前記操舵制御手段に、前記トラクタの操作によって変化する数値に基づいて当該トラクタの旋回状況を検知する旋回状況検知ステップと、この旋回状況検知ステップにおいて前記トラクタの旋回開始を検知すると、前記ヒッチ角度増減手段を制御して作業機がトラクタの旋回方向に対して外向するように前記ヒッチ角度を増減する旋回開始ステップと、前記旋回状況検知ステップにおいて前記トラクタの旋回終了を検知すると、前記ヒッチ角度増減手段を制御して前記ヒッチ角度が基準オフセット値となるように増減する旋回終了ステップとを実行させる点にある。
【0015】
また、本発明において、トラクタに牽引される作業機がその中心線をトラクタの中心線に対して所定の距離だけ平行にずらして連結されている、いわゆるオフセットされている場合、前記旋回開始ステップでは、前記操舵制御手段に、前記旋回状況検知ステップにおいて、前記作業機のオフセットされている方向への旋回開始を検知したとき、前記ヒッチ角度を基準オフセット値に保持するように制御するステップと、前記旋回状況検知ステップにおいて、前記作業機のオフセットされている側と反対方向への旋回開始を検知したとき、前記ヒッチ角度を当該操舵装置固有の特性および作業条件に基づいて決定される所定値に増減させるように制御するステップとを操舵装置に実行させることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ステアリング機構を有しない作業機であっても、トラクタの旋回時には自動的かつ確実に作業機を外向させることができ、トラクタが旋回状態から直進状態へ戻る場合には、作業機を素早くトラクタの後方へと追従させて進行方向を一致させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る作業機の操舵装置1および操舵装置用プログラムの一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明に係る操舵装置1が搭載された作業機2およびこれを牽引するトラクタ3の実施形態を示す全体図であり、図2および図3は、それぞれ本実施形態の操舵装置1を示す斜視図および平面図である。
【0018】
図1から図3に示すように、本実施形態では、作業機2の前方の左右方向中央位置に連結されたヒッチ4の先端が、トラクタ3の後方の左右方向中央位置に設けられたスイングドローバー5と連結されており、本実施形態の操舵装置1によって作業機2の進行方向を操舵しつつトラクタ3で牽引するように構成されている。
【0019】
なお、本実施形態では、制御ラインの全てを作業機2側で完結させるため、ヒッチ4の上方にリンクバー6を配置している。このリンクバー6は、軸方向にスライドする等の方法により伸縮自在に構成されており、その一端がトラクタ3のドローバー7に連結され、他端が作業機2に連結されている。そして、それら各連結部における回転軸の軸心がヒッチ4のトラクタ側回転軸および作業機側回転軸の軸心と一致するように設定されている。これにより、ヒッチ4の水平方向への移動に対してリンクバーが追従することができ、トラクタ3および作業機2がヒッチ4に対してなす角度と、トラクタ3および作業機2がリンクバー6に対してなす角度が一致するようになっている。また、リンクバー6の伸縮により作業機2とトラクタ3の間隔変動が吸収される。
【0020】
以上において、本実施形態の操舵装置1は、図4に示すように、主として、ヒッチ4に対して作業機2がなすヒッチ角度θAを検出するヒッチ角センサ11と、ヒッチ4に対してトラクタ3がなすドローバー角度θBを検出するドローバー角センサ12と、ヒッチ角度θAを増減するヒッチ角度増減手段13と、後述する基準オフセット値等の各種データや演算式を記憶する記憶手段14と、トラクタ3の旋回状況を検知する旋回状況検知手段15と、この旋回状況検知手段15の検知結果に基づいてヒッチ角度増減手段13を制御する操舵制御手段16とから構成されている。
【0021】
以下、各構成部についてより詳細に説明する。ヒッチ角センサ11およびドローバー角センサ12は、ポテンショメータ等の回転角度センサから構成されている。ヒッチ角センサ11は、作業機2とヒッチ4の連結部分に設けられており、ヒッチ4に対して作業機2がなす角度(ヒッチ角度θA)を検出する。また、ドローバー角センサ12は、トラクタ3のドローバー7とリンクバー6の連結部分に設けられており、ヒッチ4に対してドローバー7がなす角度(ドローバー角度θB)を検出する。なお、本実施形態では、図3に示すように、作業機2およびトラクタ3の進行方向に垂直な方向が、ヒッチ4の長手方向に対してなす角度をそれぞれヒッチ角度θAおよびドローバー角度θBとしている。
【0022】
つぎに、ヒッチ角度増減手段13は、ヒッチ角度θAを増減変更させるものであり、油圧式シリンダや電動式シリンダ等から構成されている。そして、図2および図3に示すように、一端がヒッチ4の略中間部に連結されるとともに、他端が作業機2とヒッチ4の連結部分から右斜め後方位置に連結されている。このため、本実施形態では、ヒッチ角度増減手段13を伸長させるとヒッチ角度θAが増大し、ヒッチ角度増減手段13を短縮させるとヒッチ角度θAが減少するようになっている。また、シリンダのストロークを最も短縮させた状態から最も伸長させた状態までが、ヒッチ角度増減手段13の動作許容範囲として定められる。
【0023】
記憶手段14は、メモリやハードディスク等から構成されており、各種のデータや演算式、あるいは本実施形態の操舵装置1を制御するための操舵装置用プログラムが格納されている。本実施形態では、作業機2の進行方向がトラクタ3の進行方向と一致するときのヒッチ角度θAを基準オフセット値として記憶している。この基準オフセット値は、図5に示すように、トラクタ3に対する作業機2のオフセット量を定めるものであり、圃場の畦幅等に合わせて適宜設定される。したがって、オフセット量が0の場合、基準オフセット値は90°となる。
【0024】
また、記憶手段14は、ヒッチ角度θAとドローバー角度θBの相対角度θCを算出するための下記演算式(1)を記憶している。
θC=θA−θB ・・・式(1)
この相対角度θCは、トラクタ3の進行方向と作業機2の進行方向のズレ角を示す値である。したがって、相対角度θCがゼロの場合、トラクタ3と作業機2が同一方向に直進していることを示す。また、本実施形態では、トラクタ3が左方向に旋回すると、ドローバー角度θBが小さくなるため相対角度θCが正の値となる。一方、トラクタ3が右方向に旋回すると、ドローバー角度θBが大きくなるため相対角度θCが負の値となる。すなわち、オフセット値を基準として相対角度θCの正負によって、作業機2の旋回方向を判別し得るようになっている。
【0025】
また、記憶手段14には、トラクタ3が直進状態から旋回を開始したことを検知するための旋回開始検知条件と、トラクタ3が旋回を終了したことを検知するための旋回終了検知条件とが設定されている。具体的には、相対角度θCが所定時間(例えば0.5秒間)継続して所定の旋回開始角度(例えば正・負5°)以上となる条件を旋回開始検知条件として定めている。また、旋回状態における相対角度θCが減少したときの条件を旋回終了検知条件として定めている。なお、旋回開始検知条件を規定する所定の旋回開始角度および所定時間については、適宜設定することにより誤作動を防止できるが、あまり大きい値に設定すると、必要なときにも動作しなくなるので注意が必要である。
【0026】
旋回状況検知手段15は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)等から構成されており、トラクタ3の旋回操作によって変化する数値に基づいてトラクタ3の旋回状況を検知するものである。ここで、トラクタ3の旋回操作によって変化する数値とは、例えばドローバー角度θBやトラクタ3側ハンドルの回転量等であり、本実施形態ではドローバー角度θBとヒッチ角度θAの相対角度θCを使用して旋回状況を検知する。
【0027】
具体的には、ドローバー角センサ12からドローバー角度θBを取得し、ヒッチ角センサ11からヒッチ角度θAを取得するとともに、記憶手段14から上記式(1)を取得して相対角度θCを算出する。そして、この相対角度θCが旋回開始検知条件に合致したとき、あるいは旋回終了検知条件に合致したとき、それぞれ旋回開始検知信号および旋回終了検知信号を操舵制御手段16に発信するようになっている。また、旋回開始を検知したときには、相対角度θCの正負に基づいて旋回方向信号を生成し、旋回開始検知信号と合わせて発信するようになっている。
【0028】
つぎに、操舵制御手段16は、CPU等から構成されており、旋回状況検知手段15の検知結果に基づきヒッチ角度増減手段13を制御するものである。本実施形態の操舵制御手段16は、旋回状況検知手段15から旋回開始検知信号および旋回方向信号を取得すると、作業機2がトラクタ3の旋回方向に対して外向するようにヒッチ角度増減手段13を伸縮させる。このとき、その旋回方向が左右いずれかによって、ヒッチ角度増減手段13の動作許容範囲内においてヒッチ角度θAを最大または最小に増減させる。一方、旋回状況検知手段15から旋回終了検知信号を取得すると、操舵制御手段16は記憶手段14から基準オフセット値を取得し、ヒッチ角度θAが当該基準オフセット値となるようにヒッチ角度増減手段13を伸縮制御するようになっている。
【0029】
つぎに、本実施形態の操舵装置用プログラムによって制御される操舵装置1の作用について図面を用いて説明する。図6は、本実施形態の操舵装置1によって行われる操舵処理のフローチャート図であり、図7は、本実施形態の操舵装置1を搭載したトラクタ3および作業機2の旋回動作を示す平面図である。
【0030】
まず、本実施形態の操舵装置1を用いてトラクタ3により作業機2を牽引する場合、ヒッチ角度増減手段13によりヒッチ角度θAを増減させ、圃場の畦幅に合わせて作業機2のオフセット位置を決定する(ステップS1)。そして、このときのヒッチ角度θAが、基準オフセット値として記憶手段14に設定される(ステップS2)。なお、図7(a)に示すように、本実施形態における基準オフセット値は90°に設定されている。
【0031】
トラクタ3が作業機2の牽引を開始すると、旋回状況検知手段15が、ドローバー角センサ12およびヒッチ角センサ11からそれぞれドローバー角度θBおよびヒッチ角度θAを取得し、上記式(1)に基づいて相対角度θCを算出する(ステップS3)。なお、本実施形態の旋回状況検知手段15は、トラクタ3が作業機2を牽引している間、毎秒数回の割合で相対角度θCを算出している。
【0032】
ステップS4では、旋回状況検知手段15が、算出した相対角度θCに基づき旋回開始検知条件に合致するかどうかを判別する。そして、算出した相対角度θCが旋回開始検知条件に合致した場合(ステップS4:YES)、すなわち、相対角度θCが所定時間継続して所定の旋回開始角度以上であった場合、図7(b)に示すように、トラクタ3が旋回を開始したと判断し、旋回開始検知信号および旋回方向信号を操舵制御手段16へ発信する(ステップS5)。これにより、仮に一時的に相対角度θCが変動したとしても、所定時間以下を切り捨てて旋回開始検知信号を発信しないため、ヒッチ角度増減手段13の誤作動が防止される。
【0033】
一方、算出した相対角度θCが旋回開始検知条件に合致しない限り(ステップS4:NO)、旋回状況検知手段15は、トラクタ3が直進作業中であると判断し、相対角度θCの監視を続行する。このように、旋回状況の検知には相対角度θCを用いるため、ドローバー角度θBのみで旋回状況を検知する場合と比較して、作業機2のオフセット位置を変更する度にドローバー角センサ12のゼロ点を設定変更する必要がないというメリットがある。
【0034】
つづいて、ステップS6では、操舵制御手段16が旋回方向信号によってトラクタ3の旋回方向を判別し、この旋回方向に対して作業機2が外向するようにヒッチ角度増減手段13を最大または最小に伸縮させる。本実施形態では、図2および図3に示すように、ヒッチ角度増減手段13がヒッチ4の右側に取り付けられているため、図7(c)に示すように、トラクタ3が右回りに旋回する場合、ヒッチ角度増減手段13を最小ストロークにまで短縮させて作業機2の進行方向を左方向に変更する。一方、トラクタ3が左回りに旋回する場合には、ヒッチ角度増減手段13を最大ストロークにまで伸長させて作業機2の進行方向を右方向に変更する。
【0035】
以上の制御によって、トラクタ3の旋回動作に合わせて作業機2が外側に膨らみながら牽引されるため、作業機2のタイヤ軌跡がトラクタ3のタイヤ軌跡に近くなり追従性が向上する。また、ヒッチ角度増減手段13を最大または最小に伸縮させることで作業機2に大きな蛇角が付与され、旋回性が向上する。
【0036】
ステップS7では、旋回状況検知手段15が、算出した相対角度θCに基づき旋回終了検知条件に合致するかどうかを判別する。そして、算出した相対角度θCが旋回終了検知条件に合致した場合(ステップS7:YES)、すなわち、ステップS6における外向制御後に相対角度θCが減少した場合、図7(d)に示すように、トラクタ3が直進状態へ戻るハンドル操作がなされたと判断し、旋回終了検知信号を操舵制御手段16へ発信する(ステップS8)。一方、相対角度θCが旋回終了検知条件に合致しない限り(ステップS7:NO)、トラクタ3が旋回を継続しているものと判断され、ヒッチ角度増減手段13がステップS6で定めたヒッチ角度θAを保持する。
【0037】
ステップS9では、ステップS8によって操舵制御手段16が旋回終了検知信号を受信すると記憶手段14から基準オフセット値を取得し、ヒッチ角度θAが当該基準オフセット値となるようにヒッチ角度増減手段13を制御してヒッチ角度θAを増減する。本実施形態では、図7(e)に示すように、ヒッチ角度増減手段13を伸長させヒッチ角度θAが基準オフセット値の90°となるように作業機2の進行方向を変更する。これにより、トラクタ3が旋回状態から直進状態へと復帰するタイミングに合わせて、外方に膨らんだ作業機2が強制的に初期のオフセット位置に戻されるため、作業機2がトラクタ3の後方へと素早く回り込むことができ追従性および旋回性が向上する。
【0038】
ステップS9の処理が終わると、本操舵処理フローチャートは、ステップS4へと戻り、旋回状況検知手段15が再びトラクタ3の旋回状況を監視するようになっている。
【0039】
ここで、本実施形態の操舵装置1による操舵制御の有無によってどのような旋回軌道を描くかを実測したので図示する。図8(a)は操舵装置1により操舵制御した作業機2の旋回軌道を示し、図8(b)は操舵装置1による操舵制御を行わない作業機2の旋回軌道を示す。
【0040】
図8(a)に示すように、本実施形態の操舵装置1により操舵制御した作業機2の旋回軌道は、外側に膨らんでおりトラクタ3の旋回軌道に近くなっていることがわかる。また、旋回後、速やかに直進状態に復帰しておりトラクタ3の後方に素早く追従していることがわかる。
【0041】
一方、図8(b)に示すように、本実施形態の操舵装置1による操舵制御をしない作業機2の旋回軌道は、トラクタ3の旋回軌道よりも内側を通過していることがわかる。また、旋回後、トラクタ3の後方に回り込むまでの距離が、制御した場合に比較して約2倍になっており遅延して追従していることがわかる。
【0042】
以上のような本実施形態によれば、
1.トラクタ3が旋回する際、その旋回方向に対し作業機2の進行方向を自動的かつ確実に外向させることができる。
2.ステアリング機構を持たない作業機2であっても、作業機2の旋回性能および追従性能を向上することができる。
3.畦合わせにより基準オフセット値が変化しても、ドローバー角センサ12等を設定変更することなくトラクタ3の旋回状況を検知することができる。
4.作業機2が畦を踏みつけて作物にダメージを与えてしまうのを防止することができる。
5.経験の浅い者であっても簡単に操縦することができ、操縦者の労力を低減することができる
等の効果を奏する。
【0043】
なお、本発明に係る作業機の操舵装置1は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、上述した実施形態では、ステアリング機構を持たない作業機2について説明したが、ステアリング機構付作業機8を牽引する際に、本実施形態の操舵装置1を合わせて使用するようにしてもよい。
【0044】
この場合のトラクタ3とステアリング機構付作業機8による旋回動作を示す平面図を図9に示す。図9(a)に示す直進状態から、図9(b)に示すように、トラクタ3が右回りの旋回を開始すると、ステアリング機構が相対角度θCに応じてステアリング機構付作業機8の車輪の蛇角を左側(逆方向)へと徐々に変更する。そして、図9(c)に示すように、旋回状況検知手段15により旋回開始が検知されたとき、図9(d)に示すように、ヒッチ角度増減手段13により作業機2の進行方向が左側へと変更される。その後、図9(e)に示すように、トラクタ3が直進状態へと戻るにつれて、ヒッチ角度増減手段13がヒッチ角度θAを基準オフセット値に復帰させるとともに、図9(f)に示すように、ステアリング機構が車輪の蛇角を徐々に中立位置へ戻す。これにより、図9(g)に示すように、迅速に直進状態へと復帰するようになっている。上記のように操舵装置1およびステアリング機構を制御することにより、ステアリング機構付作業機8の旋回性能および追従性能をより一層向上させることができる。
【0045】
なお、ヒッチ角度増減手段13の動作速度が速い場合には、ヒッチ角度θAを基準オフセット値に復帰させてから車輪を中立位置に戻すことが合理的である。しかしながら、実際にはヒッチ角度θAの変化による牽引軌道の変化は小さいため、高速で旋回する場合にはステアリング制御が遅れてしまうという問題がある。このため、ヒッチ角度増減手段13の動作速度が遅い場合には、車輪を中立位置に戻すステアリング制御をしてからヒッチ角度θAを基準オフセット値に復帰させる制御を行うことにより旋回性能を確保することができる。
【0046】
また、上述した実施形態では、トラクタ3と作業機2の連結手段としてヒッチ4を使用しているが、これに限られるものではない。例えば、図10に示すように、トラクタ3の後方に延出されたロワーリンク9に設けたドローバー7と、作業機2の前方に設けられた牽引幹10を連結し、この牽引幹10の基端部にヒッチ角センサ11を設けるとともに、牽引幹10とドローバー7の連結部にドローバー角センサ12を設けるようにしてもよい。
【0047】
さらに、上述した実施形態では、ヒッチ4とリンクバー6の各軸心を一致させているが、図11および図12に示すように、リンクバー6における作業機側の軸心がヒッチ4の作業機2側の軸心と異なる場合でも適用可能である。この場合、リンクバー6に対して作業機2がなすヒッチ補正角度を検出するヒッチ補正角センサ17と、リンクバー6に対してトラクタ3がなすドローバー補正角度を検出するドローバー補正角センサ18が設けられている。そして、旋回状況検知手段15は、ヒッチ補正角度とドローバー補正角度の相対角度を用いてトラクタ3の旋回状況を検知するようになっている。一方、ヒッチ角センサ11は、ヒッチ角度増減手段13の伸縮限界や基準オフセット値を検出するために使用される。この構成によれば、リンクバー6とヒッチ4の軸心が異なる場合でも作業機2を操舵制御することができる。
【0048】
また、上述した実施形態では、制御ラインを全て作業機2側で完結させるため、ヒッチ4の上方にリンクバー6を配置し、このリンクバー6とドローバー7の連結部にドローバー角センサ12を設けているが、これに限られるものではなく、ヒッチ4とスイングドローバー5の連結部にドローバー角センサ12を設けるようにしてもよい。
【0049】
さらに、上述した実施形態では、旋回時にヒッチ角度増減手段13の動作許容範囲内において、ヒッチ角度θAを最大または最小に増減させているが、これに限られるものではない。例えば、相対角度θCの値に比例するようにヒッチ角度θAをアナログ的に増減制御するようにしてもよい。また、図5に示すように、作業機2の中心線がトラクタ3の中心線に対して所定距離(オフセット量)だけ平行にずらして連結されている場合、すなわち、作業機2がトラクタ3に対してオフセット牽引される場合には、旋回方向によって旋回の容易さとリスクが異なる。そこで、トラクタ3の旋回方向に応じて、操舵制御手段16によるヒッチ角度θAの増減量を異ならせるように制御するのが好ましい。
【0050】
具体的には、旋回状況検知手段15によって、作業機2の旋回が容易なオフセット方向(図5の左方向)への旋回開始が検知されたとき、ヒッチ角度θAを基準オフセット値に保持させる。このとき、自動畦合わせ機能等により、ヒッチ4が基準オフセット値よりも内側に移動されている場合には、基準オフセット値に復帰させる動作を行う。
【0051】
一方、オフセット方向と反対方向(図5の右方向)への旋回開始が検知されたとき、ヒッチ角度θAを必要最小限の所定値に増減させる。これにより、ヒッチ角度θAを必要以上に増減させることがないため、基準オフセット値に戻すためのタイムラグが減少し、動作速度の遅いヒッチ角度増減手段13を使用した場合でも迅速に旋回状態から直進状態へ復帰させることができる。
【0052】
なお、上記の制御方法は、作業機2とトラクタ3との間に動力伝達ジョイント19が設けられている場合にも効果的である。具体的には、図13に示すように、オフセット方向への旋回時には、動力伝達ジョイント19の切れ角に余裕があり、この動力伝達ジョイント19がドローバー7やトラクタ3のタイヤに接触するおそれはない。したがって、基準オフセット値に保持した状態(図13の点線)でも、ステアリング機構によってある程度の旋回が可能となる。また、ヒッチ角度増減手段13の動作速度が十分に早ければ、別途、外向制御させることにより(図13の実線)、旋回性能を向上させられる。
【0053】
一方、図14に示すように、オフセット方向と反対方向へ旋回する際に、基準オフセット値に保持したままだと(図14の点線)、動力伝達ジョイント19に過大な負荷がかかるし、この動力伝達ジョイント19がドローバー7やトラクタ3のタイヤに接触するおそれがある。したがって、上記所定値の範囲内でのみヒッチ角度θAを増減させれば(図14の実線)、動力伝達ジョイント19が破損したり、ドローバー7等に接触してしまうのを防止することができる。
【0054】
また、図14で示す例において、ヒッチ角度θAを増減させる所定値は、操舵装置固有の特性(例えばヒッチ長)や作業条件(例えば作業速度、ヒッチシリンダ動作速度、走行速度等)に基づいて定めることが好ましい。例えば、ヒッチ4の長さが短いほど、あるいは作業速度や走行速度に比べてヒッチ角度増減手段13の動作速度が遅いほど、ヒッチ角度θAを増減させる値を小さい値に設定することで、動力伝達ジョイント19への負荷が低減され、基準オフセット値に復帰する際のタイムラグが短縮される。
【0055】
ここで、以上の図13および図14に示す動作制御を実行する場合における操舵処理の制御フローを図15に示す。なお、本制御フローのうち、上述した図6の制御フローと同一若しくは相当するステップについては同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0056】
図15に示すように、ステップS10では、操舵制御手段16が旋回方向信号によってトラクタ3の旋回方向を判別し、この旋回方向に応じてヒッチ角度θAの増減量を異ならせるように制御する。具体的には、旋回方向がオフセット方向の場合(ステップS10:YES)、ヒッチ角度θAを基準オフセット値に保持する(ステップS11)。一方、旋回方向がオフセット方向と反対方向の場合(ステップS10:NO)、ヒッチ角度θAを操舵装置固有の特性および作業条件に基づいて決定される所定値に増減する(ステップS12)。このような制御によって、動力伝達ジョイント19への負荷を低減できるとともに、基準オフセット値に復帰する際のタイムラグを短縮することができる。
【0057】
また、上述した実施形態では、旋回状況検知手段15が、ドローバー角度θBとヒッチ角度θAとの相対角度θCに基づいて旋回状況を検知しているが、ドローバー角度θBのみに基づいて旋回状況を検知してもよい。この場合、旋回開始検知条件は、ドローバー角度がゼロ点(ドローバー7とヒッチ4とが90度の状態)に対して所定の旋回開始角度以上となる条件に設定し、旋回終了検知条件は、操舵制御手段16による作業機2の外向制御後にドローバー角度が減少したときの条件に設定する。
【0058】
これにより、ドローバー角センサ12のゼロ点に対する旋回角度および旋回方向に基づいて旋回状況を検知でき、相対角度θCを用いる場合と同等の作用効果を奏することができる。しかしながら、畦に合わせて作業機2のオフセット量を変更する度に、ドローバー角センサ12のゼロ点を再設定し直さなければならないという不便が伴う。
【0059】
また、上述したドローバー角度θBのみによる検知方法によれば、基準オフセット値が固定されている作業機2についても本発明にかかる操舵制御が可能となる。しかしながら、このような作業機2のオフセット量を調節したり、タイヤ幅が異なるトラクタ3に適用する場合には、図16に示すように、ドローバー7に複数個の回転軸用穴71を形成し、いずれかの回転軸用穴71に切り換えて連結しなければならないし、正確な位置調節ができないという不便さがある。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る操舵装置を搭載した作業機およびトラクタの実施形態を示す全体図である。
【図2】本実施形態の操舵装置を示す斜視図である。
【図3】本実施形態の操舵装置を示す平面図である。
【図4】本実施形態の操舵装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本実施形態における基準オフセット値を説明する図である。
【図6】本実施形態の操舵装置によって行われる操舵処理のフローチャート図である。
【図7】本実施形態の操舵装置を搭載したトラクタおよび作業機の旋回動作を示す平面図である。
【図8】本実施形態の操舵装置により、(a)操舵制御した場合と(b)操舵制御しない場合における作業機の旋回軌道を示す図である。
【図9】本実施形態の操舵装置を搭載したトラクタおよびステアリング機構付作業機の旋回動作を示す平面図である。
【図10】本実施形態の操舵装置を搭載したトラクタおよび作業機の他の実施形態を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る操舵装置の他の実施形態を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る操舵装置の他の実施形態を示す平面図である。
【図13】動力伝達ジョイントを備えたトラクタおよび作業機がオフセット方向へ旋回する際の平面図である。
【図14】動力伝達ジョイントを備えたトラクタおよび作業機がオフセット方向と反対方向へ旋回する際の平面図である。
【図15】本実施形態の操舵装置によって行われる操舵処理の他の実施例を示すフローチャート図である。
【図16】基準オフセット値が固定されている作業機およびトラクタの実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 操舵装置
2 作業機
3 トラクタ
4 ヒッチ
5 スイングドローバー
6 リンクバー
7 ドローバー
8 ステアリング機構付作業機
9 ロワーリンク
10 牽引幹
11 ヒッチ角センサ
12 ドローバー角センサ
13 ヒッチ角度増減手段
14 記憶手段
15 旋回状況検知手段
16 操舵制御手段
17 ヒッチ補正角センサ
18 ドローバー補正角センサ
19 動力伝達ジョイント
71 回転軸用穴
θA ヒッチ角度
θB ドローバー角度
θC 相対角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒッチを介してトラクタに牽引される作業機を操舵する操舵装置であって、
前記ヒッチに対して前記作業機がなすヒッチ角度を検出するヒッチ角センサと、
前記ヒッチおよび前記作業機に連結されて前記ヒッチ角度を増減変更するヒッチ角度増減手段と、
前記作業機の進行方向が前記トラクタの進行方向と一致するときの前記ヒッチ角度を基準オフセット値として記憶する記憶手段と、
トラクタの操作によって変化する数値に基づいて当該トラクタの旋回状況を検知する旋回状況検知手段と、
前記旋回状況検知手段がトラクタの操作により変化する数値に基づいて旋回開始を検知すると、前記ヒッチ角度増減手段を制御して作業機がトラクタの旋回方向に対して外向するようにヒッチ角度を増減し、前記旋回状況検知手段がトラクタの操作により変化する数値に基づいて旋回終了を検知すると、前記ヒッチ角度増減手段を制御して前記ヒッチ角度が基準オフセット値となるように増減させる操舵制御手段と
を有することを特徴とする作業機の操舵装置。
【請求項2】
請求項1において、前記操舵制御手段は、前記旋回状況検知手段によって旋回開始を検知すると、前記ヒッチ角度増減手段の動作許容範囲内においてヒッチ角度を最大または最小に増減させることを特徴とする作業機の操舵装置。
【請求項3】
請求項1において、トラクタに牽引される作業機がその中心線をトラクタの中心線に対して所定の距離だけ平行にずらして連結されている、いわゆるオフセットされている場合、前記旋回状況検知手段が前記作業機のオフセットされている方向への旋回開始を検知したとき、前記操舵制御手段は前記ヒッチ角度を基準オフセット値に保持するように制御し、前記旋回状況検知手段が前記作業機のオフセットされている側と反対方向への旋回開始を検知したとき、前記操舵制御手段は前記ヒッチ角度を当該操舵装置固有の特性および作業条件に基づいて決定される所定値に増減させるように制御することを特徴とする作業機の操舵装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかにおいて、ヒッチに対してトラクタのドローバーがなすドローバー角度を検出するドローバー角センサを有しており、
前記旋回状況検知手段は、前記ドローバー角度および前記ヒッチ角度を取得してこれらの相対角度を算出するとともに、この相対角度が所定時間継続して所定の旋回開始角度以上であったときを旋回開始として検知し、前記操舵制御手段による作業機の外向制御後に前記相対角度が減少したときを旋回終了として検知することを特徴とする作業機の操舵装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかにおいて、ヒッチに対してトラクタのドローバーがなすドローバー角度を検出するドローバー角センサを有しており、
前記旋回状況検知手段は、前記ドローバー角度がゼロ点に対して所定の旋回開始角度以上であったときを旋回開始として検知し、前記操舵制御手段によって作業機の外向制御を実行した後に前記ドローバー角度が減少したときを旋回終了として検知することを特徴とする作業機の操舵装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかにおいて、前記作業機および前記トラクタを連結するリンクバーが備えられ、このリンクバーにおける前記作業機側の軸心が前記ヒッチ角センサの軸心と異なる場合、前記リンクバーに対して前記作業機がなすヒッチ補正角度を検出するヒッチ補正角センサと、前記リンクバーに対して前記トラクタがなすドローバー補正角度を検出するドローバー補正角センサを設け、
前記旋回状況検知手段は、前記ヒッチ補正角度および前記ドローバー補正角度を取得してこれらの相対角度を算出するとともに、この相対角度に基づいて前記トラクタの旋回状況を検知することを特徴とする作業機の操舵装置。
【請求項7】
ヒッチを介してトラクタに牽引される作業機を操舵するように操舵装置を実行させる操舵装置用プログラムであって、
前記操舵装置は、
前記ヒッチに対して前記作業機がなすヒッチ角度を検出するヒッチ角センサと、
前記ヒッチおよび前記作業機に連結されて前記ヒッチ角度を増減変更するヒッチ角度増減手段と、
前記作業機の進行方向が前記トラクタの進行方向と一致するときの前記ヒッチ角度を基準オフセット値として記憶する記憶手段と、
前記トラクタの旋回状況に応じて前記作業機の進行方向を変更させるように前記ヒッチ角度増減手段を制御する操舵制御手段と
を備えており、
前記操舵制御手段に、
前記トラクタの操作によって変化する数値に基づいて当該トラクタの旋回状況を検知する旋回状況検知ステップと、
この旋回状況検知ステップにおいて前記トラクタの旋回開始を検知すると、前記ヒッチ角度増減手段を制御して作業機がトラクタの旋回方向に対して外向するように前記ヒッチ角度を増減する旋回開始ステップと、
前記旋回状況検知ステップにおいて前記トラクタの旋回終了を検知すると、前記ヒッチ角度増減手段を制御して前記ヒッチ角度が基準オフセット値となるように増減する旋回終了ステップと
を実行させることを特徴とする作業機の操舵装置用プログラム。
【請求項8】
請求項7において、トラクタに牽引される作業機がその中心線をトラクタの中心線に対して所定の距離だけ平行にずらして連結されている、いわゆるオフセットされている場合、
前記旋回開始ステップでは、前記操舵制御手段に、
前記旋回状況検知ステップにおいて、前記作業機のオフセットされている方向への旋回開始を検知したとき、前記ヒッチ角度を基準オフセット値に保持するように制御するステップと、
前記旋回状況検知ステップにおいて、前記作業機のオフセットされている側と反対方向への旋回開始を検知したとき、前記ヒッチ角度を当該操舵装置固有の特性および作業条件に基づいて決定される所定値に増減させるように制御するステップと
を操舵装置に実行させることを特徴とする作業機の操舵装置用プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2007−191139(P2007−191139A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335806(P2006−335806)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000222978)東洋農機株式会社 (27)
【Fターム(参考)】