説明

作業機取付装置

【課題】作業機が脱落しにくい作業機取付装置を提供する。
【解決手段】トラクタ(自走機)の後部に取り付け、ロータリー耕耘機(作業機)に備える被掛止部に掛け止めてロータリー耕耘機を連結するものであり、被掛止部に設けられた掛止穴に挿入して掛け止める掛止ピン(掛止部)31を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走機の後部に取り付け、作業機に備える被掛止部に掛け止めて作業機を連結する作業機取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタなどの自走機の後部にロータリー耕耘機などの作業機を接続するオートヒッチ(作業機取付装置)の下部に備える一対の下部取付部(掛止部)は、図6に示すように、ロワーリンク101の先端に、凹状の軸受部102aの形成されたヒッチブラケット102が設けられている。この軸受部102aには、作業機のピン(被掛止部)103が挿入されて、フック104によってロックされて軸受部102aに保持される。このフック104は、回動軸102bにてヒッチブラケット102に回動自在に取り付けられ、不図示のコイルバネにより反時計回りに付勢されている(例えば、非特許文献1)。この下部取付部105は、トップリンクの上部取付部および反対側の下部取付部105とともに略三角形状のフレーム106に固設されている。
【0003】
【非特許文献1】松山株式会社 ニプロフレンズクラブ事務局、「日農工標準オートヒッチの話」、[online]、ニプロ作業機講座 2000年春号、[平成16年12月2日検索]、インターネット<URL: HYPERLINK "http://www.niplo.co.jp/nfc/lec/lec3.html" http://www.niplo.co.jp/nfc/lec/lec3.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このように構成されたオートヒッチに例えば畔塗り機など2箇所の下部取付部105に不均等に荷重(片荷重)のかかる作業機を取り付けて、トラクタにて作業を行うと、一方の下部取付部105には図7(a)に示すようにフック104を外側に押し付けるように作業機のピン103が作用するとともに、他方の下部取付部105には図7(b)に示すようにピン103が回転運動する。この回転運動によって、ピン103がコイルバネに抗してフック104を徐々に押し下げて、図8のように開いたフック104を乗り越えてピン103が下部取付部105から外れて作業機が脱落してしまうという問題があった。
そこでこの発明の目的は、作業機が脱落しにくい作業機取付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、自走機の後部に取り付け、作業機に備える被掛止部に掛け止めて前記作業機を連結する作業機取付装置において、
前記作業機に備える被掛止部に設けられた掛止穴に挿入して掛け止めるピン状の掛止部を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の作業機取付装置において、前記掛止部が前記被掛止部に挿入された状態で前記掛止部の移動を阻止するロック部を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の作業機取付装置において、前記掛止部の先端部分は、断面積が漸減するようにテーパが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、自走機の後部に取り付け、作業機に備える被掛止部に掛け止めて前記作業機を連結する作業機取付装置において、作業機に備える被掛止部に設けられた掛止穴に挿入して掛け止めるピン状の掛止部を備えることを特徴とするので、例えば畔塗り機など片荷重のかかる作業機を取り付けた場合であっても、従来のフック式の掛止部において発生していたような作業機の被掛止部が回転運動して掛止部から外れてしまうという不具合を防止することができる。
したがって、作業機が脱落しにくい作業機取付装置を提供することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、掛止部が被掛止部に挿入された状態で掛止部の移動を阻止するロック部を備えるので、いっそう作業機が脱落しにくい作業機取付装置を提供することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、掛止部の先端部分は、断面積が漸減するようにテーパが形成されているので、被掛止部に設けられた掛止穴に容易に挿入することができ、作業機を自走機に取り付ける作業を効率化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1に示す符号Aは、本発明のオートヒッチ(作業機取付装置)を取り付ける自走機の一例であるトラクタである。
トラクタAは、車体フレーム3の前後に前輪1および後輪2をそれぞれ2つずつ備え、前輪1の上方にボンネット4を形成し、その内側には原動機部としてのディーゼルエンジンを備える。そして、ボンネット4の後部に連続して運転操作部6を設ける。運転操作部6はエンジンキー、ハンドル7、アクセルペダル13、クラッチペダル、ブレーキペダルなどを備える。運転操作部6の後方でかつ後輪2の上方には運転席5を設け、その左側部にはシフトレバー12を設ける。運転席5の後方には、一端を車体フレーム3に固定した左右一対のホルダ14を介して、門型の安全フレーム15が配設され、横転時などに作業者を保護するようになっている。また、安全フレーム15上部には雨や日差しなどを遮るキャノピー16を運転席5の上方に延設する。
【0012】
さらに、トラクタAの後部には、トップリンク23と左右一対のロワーリンク24を延設する。トップリンク23および左右一対のロワーリンク24の先端には、三点リンク式のオートヒッチ(作業機取付装置)Cを取り付ける。オートヒッチCは、上部取付部(掛止部)26と一対の下部取付部(掛止部)25をフレーム27に固設する。オートヒッチCの上部取付部26はトップリンク23にピンを介して取り付けられ、一方、左右一対の下部取付部25は左右一対のロワーリンク24に後述する取付ピンを介して取り付けられる。さらに、オートヒッチCを上下方向に昇降させる昇降部20の一端をロワーリンク24に、他端を車体フレーム3に取り付ける。昇降部20は、リフトアーム21とリフトロッド22を備え、油圧によってリフトロッド22を伸縮することによってオートヒッチCを上下に回動させる。
なお、オートヒッチCは、後述するロータリー耕耘機(作業機)Dの上部係合部(被掛止部)d1が上部取付部26に、また、後述する掛止穴を備える一対の被掛止部d2が左右一対の下部取付部25に取り付けられることによって、ロータリー耕耘機DをトラクタAに連結するためのものである。
また、PTO軸カバーPは樹脂製の円筒状で、トラクタAの動力をロータリー耕耘機Dへ伝達する伝達軸をカバーするものである。
【0013】
この発明のオートヒッチCは、図2(a),(b)に示すように構成されている。なお、図2(a)は、オートヒッチCの正面図であり、図2(b)は図2(a)のA矢視側面図である。
オートヒッチCは、一対の下部取付部(掛止部)25a,25bと上部取付部26とを備え、これらを上部フレーム27aおよび下部フレーム27bによって三角形状に取り付ける。
詳しくは、中央部を屈曲させたパイプ状の上部フレーム27aの中央部に上部取付部26を溶接などにより固設するとともに、上部フレーム27aの両端は、凹状の切り欠きを設けた鉄板製の下部取付部25a,25bを溶接などによりそれぞれ固設する。そして、下部取付部25a,25bにはそれぞれ取付ピン29a,29bをトラクタAの幅方向外側に突設するとともに、取付機構30をトラクタAの幅方向内側に突設する。なお、取付ピン29a,29bは、ロワーリンク24に設けられた取付孔に挿入することによってトラクタAの後部にオートヒッチCを取り付けるものである。
【0014】
取付機構30は、詳しくは、図3(a),(b)に示すように、矩形の鉄板をコの字状に折り曲げて形成したステー30cと円柱状の掛止ピン(掛止部)31、圧縮バネ32などから構成されている。なお、図3(a)は、図2(b)のB矢視平面図であり、図3(b)は、図3(a)のC矢視側面図である。
ステー30cは、側部30caを下部取付部25a,25bの内側面に溶接などによって固設する。また、側部30caには掛止ピン31が容易に挿入できる大きさの孔30fが形成されている。一方、側部30cbには掛止ピン31が容易に挿入できる大きさの孔30gが形成されている。さらに、中央部30ccには棒状のレバー部材30dが移動しうる大きさの誘導孔30bが設けられている。この誘導孔30bの一端は直角方向に曲げて形成され、ロック部30Lを構成している。
【0015】
ステー30cの孔30f,30gに掛止ピン31を挿入した状態で、掛止ピン31の周面に直径方向に貫通してレバー部材30dを差し込んで固定ピン30eによってレバー部材30dと掛止ピン31とを固定する。なお、レバー部材30dは、中央部30ccに設けられた誘導孔30bに貫通させた後、掛止ピン31の貫通孔に挿入されて取り付けられる。そして、レバー部材30dの先端にグリップ部30aを設ける。
このとき、レバー部材30dと側部30cbの内側面との間には圧縮バネ32などの弾性部材を縮んだ状態で設け、掛止ピン31を図3(a)中、左向きに付勢する。加えて、圧縮バネ32が縮んだ状態で掛止ピン31を図3(a)の状態に容易に保持するためのロック部をロック部30L同様の形状で形成する。なお、符号25aoは、ロータリー耕耘機Dの被掛止部d2を挿入するための取付開口部である。
【0016】
このように構成されたトラクタAにロータリー耕耘機Dを取り付ける手順を図1〜3を参照しつつ図4を用いて説明する。
まず、ロータリー耕耘機DをトラクタAの後部に配置する。次に、作業者が運転席5に乗り込み、トラクタAを後進操作させてロータリー耕耘機Dに接近させ、上部係合部d1と一対の被掛止部d2が、それぞれトラクタAの上部取付部26と下部取付部25a,25bとに対向させる(図4(a))。
さらに、昇降部20を操作してオートヒッチCの高さ調節をしながら、上部係合部d1が上部取付部26に取り付けるとともに、一対の被掛止部d2をそれぞれ下部取付部25a,25bの取付開口部25aoに挿入する(図4(b))。
そして、作業者がグリップ部30aを回動させてロックを解除する。すると、圧縮バネ32により掛止ピン31が移動して被掛止部d2の掛止穴d2oに挿入される(図4(c))。なお、このとき、レバー部材30dは誘導孔30b内を案内されて移動する。
この状態で、グリップ部30aを下回動してレバー部材30dをロック部30Lに案内して、掛止ピン31の動きをロックする。
以上の手順で、ロータリー耕耘機DをトラクタAに取り付ける。
【0017】
なお、掛止ピン31の先端は、図5に示すように、テーパ部31Tを設けて、被掛止部d2の掛止穴d2oに挿入しやすいように構成してもよい。
【0018】
以上、詳述したように、この発明のオートヒッチ(作業機取付装置)Cは、トラクタ(自走機)Aの後部に取り付け、ロータリー耕耘機(作業機)Dに備える被掛止部d2に掛け止めてロータリー耕耘機Dを連結するものであり、被掛止部d2に設けられた掛止穴d2oに挿入して掛け止める掛止ピン(掛止部)31を備える。
また、掛止ピン31が被掛止部d2に挿入された状態で掛止ピン31の移動を阻止するロック部30Lを備える。
さらに、掛止ピン31が円柱状に形成されてもよい。加えて、掛止ピン31の先端部分は、断面積が漸減するようにテーパ31Tが形成されてもよい。
そして、掛止ピン31が被掛止部d2に向けて付勢する圧縮バネ(弾性部材)32を備える。このように構成すると、より確実に掛止部を被掛止部に掛け止めた状態に保持することができる。
【0019】
なお、上述の例では、取付機構30を下部取付部25a,25bの内側面に溶接などによって設け、下部取付部25a,25bの外側より被掛止部d2を配置して、ロータリー耕耘機DをトラクタAに取り付けたが、この発明はこれに限定されるものではなく、取付機構30を下部取付部25a,25bの外側面に溶接などによって設け、下部取付部25a,25bの内側より被掛止部d2を配置して、ロータリー耕耘機DをトラクタAに取り付けるようにしてもよい。
【0020】
ところで、この発明のオートヒッチ(作業機取付装置)は、下部取付部を前述のロータリー耕耘機Dに備える被掛止部d2の構造とする一方、ロータリー耕耘機に前述のオートヒッチに備える下部取付部25a,25bの構造としてもよい。
詳しくは、オートヒッチに備える一対の下部取付部を鉄板に掛止穴を設けた構造とする一方、その掛止穴に挿入しうる掛止ピンを有する取付機構をロータリー耕耘機に備える。
取付機構は図3(a),(b)に示すものと同様の構造であり、コの字状に折り曲げた鉄板製のステーと掛止ピン(掛止部)などから構成されている。
すなわち、トラクタ(自走機)Aの後部に取り付け、ロータリー耕耘機(作業機)Dに備える掛止部を掛け止めてロータリー耕耘機Dを連結するもので、掛止部を挿入して掛け止める掛止穴が設けられた被掛止部を備えるようにしてもよい。このように構成すると、例えば畔塗り機など片荷重のかかる作業機を取り付けた場合であっても、従来のフック式の掛止部において発生していたような作業機の被掛止部が回転運動して掛止部から外れてしまうという不具合を防止することができる。したがって、作業機が脱落しにくい作業機取付装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明のオートヒッチを取り付けたトラクタの側面図である。
【図2】この発明のオートヒッチの(a)は正面図、(b)は(a)のA矢視側面図である。
【図3】(a)は取付機構の平面図、(b)は(a)のC矢視正面図である。
【図4】(a)〜(c)はこの発明のオートヒッチに備える取付機構を用いてロータリー耕耘機をトラクタに取り付ける手順を示した図である。
【図5】掛止ピンの変形例を示す図である。
【図6】従来のオートヒッチの要部側面図である。
【図7】(a),(b)は、従来のオートヒッチにおいて作業機側のロワーピンを掛け止めている際のロワーピンの動きを説明するための図である。
【図8】図7において説明したロワーピンがローとヒッチから外れてしまう様子を説明するための図である。
【符号の説明】
【0022】
1 前輪
2 後輪
3 車体フレーム
4 ボンネット
5 運転席
6 運転操作部
7 ハンドル
12 シフトレバー
13 アクセルペダル
14 ホルダ
15 安全フレーム
16 キャノピー
20 昇降部
21 リフトアーム
22 リフトロッド
23 トップリンク
24 ロワーリンク
25,25a,25b 下部取付部(掛止部)
25ao 取付開口部
26 上部取付部
27 フレーム
27a 上部フレーム
27b 下部フレーム
29a,29b 取付ピン
30 取付機構
30a グリップ部
30b 誘導孔
30c ステー
30ca,30cb 側部
30cc 中央部
30d レバー部材
30e 固定ピン
30f,30g 孔
31 掛止ピン
30L ロック部
31T テーパ部
A トラクタ(自走機)
C オートヒッチ(作業機取付装置)
D ロータリー耕耘機(作業機)
d1 上部係合部
d2 被掛止部
d2o 掛止穴



【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走機の後部に取り付け、作業機に備える被掛止部に掛け止めて前記作業機を連結する作業機取付装置において、
前記作業機に備える被掛止部に設けられた掛止穴に挿入して掛け止めるピン状の掛止部を備えることを特徴とする、作業機取付装置。
【請求項2】
前記掛止部が前記被掛止部に挿入された状態で前記掛止部の移動を阻止するロック部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の作業機取付装置。
【請求項3】
前記掛止部の先端部分は、断面積が漸減するようにテーパが形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の作業機取付装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−158284(P2006−158284A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353908(P2004−353908)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】