説明

作業機取付装置

【課題】簡単な構成で効率よく農作業を行うことができる作業機取付装置を提供する。
【解決手段】トラクタ(自走機)の後部に取り付け、ロータリー作業機Dを連結するものであり、トラクタとロータリー作業機Dとを連結したときに、トラクタの動力をロータリー作業機Dに伝達するための伝達軸S1と、その伝達軸S1からの動力を受けるロータリー作業機Dの入力軸S2とを覆う安全カバー32を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走機の後部に取り付け、作業機を連結する作業機取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のオートヒッチ(作業機取付装置)は、例えば、図7(a),(b)に示すように、上部取付部55と一対の下部取付部56とを備え、これらを上部フレーム57aおよび下部フレーム57bを介して取り付ける。なお、上部取付部55は上部フレーム57aの中央部に、下部取付部56は上部フレーム57aおよび下部フレーム57bの両端とそれぞれ溶接により固設されている。そして、下部フレーム57bの中央部には、連結ガイド58をステー58aを介して溶接などで固設する。また、上部フレーム57aの上部取付部55の近傍には下部取付部に備えるフックを操作するフック操作レバー59を設ける。
そして、トラクタなどの自走機の後部に延出したトップリンクに上部取付部55を取り付けるとともに、ロワーリンクに下部取付部56を取り付ける。
【0003】
このように構成されたオートヒッチを介してロータリー耕耘機60などの作業機をトラクタに取り付けるには、オートヒッチの上部取付部55および2つの下部取付部56をそれぞれ、ロータリー耕耘機60に備える上部係合部および2つのロワーピンに位置合わせしながらトラクタを後進させる。そして、上部係合部を上部取付部55に掛け止めるとともに、ロワーピンを下部取付部56に挿入してロックさせる。このとき、トラクタの駆動をロータリー耕耘機60側に伝達するための伝達軸64の先端部を連結ガイド58の一方から挿入するとともに、ロータリー耕耘機60の入力軸61の先端部を連結ガイド58の他方から挿入して、伝達軸64と入力軸61とを連結する。これによって、トラクタのエンジンからの動力をロータリー耕耘機60に伝達するようになっている。
【0004】
ところで、ロータリー耕耘機60には安全カバー62が設けられ、入力軸61の外周面の露出部分を覆うことによって、回転している入力軸61に作業者が触れて事故を起こすことを防止するようになっている。
一方、オートヒッチにはステー58aに安全カバー63が取付られており、伝達軸64外周面の露出部分を覆うことによって、回転している伝達軸64に作業者が触れて事故を起こすことを防止するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このように入力軸61および伝達軸64の外周面の露出部分を別々の安全カバー62,63にて覆うと、トラクタに取り付けるロータリー耕耘機60の機種によって安全カバー62の形状が異なり、オートヒッチに設けられた安全カバー63と干渉してロータリー耕耘機60をトラクタに連結することができず、その都度、安全カバー62を交換しなければならないという問題があった。また、交換する安全カバー62が複数種類にわたり、ロータリー耕耘機60の部品点数が増えてしまうという問題があった。さらに、安全カバー63と干渉しない安全カバー62に交換する作業を要し、農作業の効率を低下させてしまうという問題もあった。
そこでこの発明の目的は、簡単な構成で効率よく農作業を行うことができる作業機取付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため請求項1に記載の発明は、自走機の後部に取り付け、作業機を連結する作業機取付装置において、
前記自走機と前記作業機とを連結したときに、
前記自走機の動力を前記作業機に伝達するための伝達軸と、該伝達軸からの動力を受ける前記作業機の入力軸とを覆う安全カバーを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の作業機取付装置において、前記作業機に備える複数の被掛止部をそれぞれ掛け止めて保持するための複数の掛止部と、
該掛止部を保持するフレームとを備え、
該フレームに前記安全カバーを設けることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の作業機取付装置において、前記掛止部が、
前記被掛止部を挿入する取付開口部と、
該取付開口部を開閉するフックと、
該フックを開閉操作する操作レバーとを備え、
該操作バーに前記安全カバーを着脱自在に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、自走機の後部に取り付け、作業機を連結する作業機取付装置において、自走機と作業機とを連結したときに、自走機の動力を作業機に伝達するための伝達軸と、その伝達軸からの動力を受ける作業機の入力軸とを覆う安全カバーを備えるので、従来のように自走機に備える安全カバーと作業機に備える安全カバーとが干渉することがなく、農作業の効率を低下させてしまうことがない。また、安全カバー同士が干渉するときに、一方の安全カバーを別の形状の安全カバーに交換する手間を省くことができる。
したがって、簡単な構成で効率よく農作業を行うことができる作業機取付装置を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、作業機に備える複数の被掛止部をそれぞれ掛け止めて保持するための複数の掛止部と、その掛止部を保持するフレームとを備え、そのフレームに安全カバーを設けるので、伝達軸および入力軸に接近して安全カバーを設けることができ、安全性を向上させた作業機取付装置を提供することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、掛止部が、被掛止部を挿入する取付開口部と、その取付開口部を開閉するフックと、そのフックを開閉操作する操作バーとを備え、その操作レバーに安全カバーを着脱自在に設けるので、伝達軸および入力軸に接近して安全カバーを設けることができ、安全性を向上させた作業機取付装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1に示す符号Aは、本発明のオートヒッチ(作業機取付装置)を取り付ける自走機の一例であるトラクタである。
トラクタAは、車体フレーム3の前後に前輪1および後輪2を2つずつ備え、前輪1の上方にボンネット4を形成し、その内側には原動機部としてのディーゼルエンジンを備える。そして、ボンネット4の後部に連続して運転操作部6を設ける。運転操作部6はエンジンキー、ハンドル7、アクセルペダル13、クラッチペダル、ブレーキペダルなどを備える。運転操作部6の後方でかつ後輪2の上方には運転席5を設け、その左側部にはシフトレバー12を設ける。運転席5の後方には、一端を車体フレーム3に固定した左右一対のホルダ14を介して、門型の安全フレーム15が配設され、横転時などに作業者を保護するようになっている。また、安全フレーム15上部には雨や日差しなどを遮るキャノピー16を運転席5の上方に延設する。
【0013】
さらに、トラクタAの後部には、トップリンク23と左右一対のロワーリンク24を延設する。トップリンク23および左右一対のロワーリンク24の先端には、三点リンク式のオートヒッチ(作業機取付装置)Cを取り付ける。オートヒッチCは、上部取付部(掛止部)26と一対の下部取付部(掛止部)25をフレーム27に取り付けてなる。上部取付部26はトップリンク23に取り付けられ、左右一対の下部取付部25は左右一対のロワーリンク24にそれぞれ取り付けられる。さらに、オートヒッチCを上下方向に昇降させる昇降部20の一端をロワーリンク24に、他端を車体フレーム3に取り付ける。昇降部20は、リフトアーム21とリフトロッド22を備え、油圧によってリフトロッド22を伸縮することによってオートヒッチCを上下に回動させる。
なお、オートヒッチCは、後述するロータリー耕耘機(作業機)Dの上部係合部(被掛止部)d1が上部取付部26に、また、一対のロワーピン(被掛止部)d2が左右一対の下部取付部25に取り付けられることによって、ロータリー耕耘機DをトラクタAに連結するためのものである。
また、PTO軸カバーPは樹脂製の円筒状で、後述する伝達軸S1をカバーするものである。
【0014】
この発明のオートヒッチCは、図2(a)に示すように構成されている。すなわち、一対の下部取付部25a,25bと上部取付部26とを備え、これらを上部フレーム(フレーム)27aおよび下部フレーム(フレーム)27bによって三角形状に取り付ける。
詳しくは、中央部を屈曲させたパイプ状の上部フレーム27aの中央部に上部取付部26を溶接などにより固設するとともに、両端に下部取付部25a,25bを溶接などによりそれぞれ固設する。そして、フック操作レバー(操作レバー)28を矢印方向に可動となるように取り付ける。このフック操作レバー28はレバーシャフト29と溶接などによって取り付けられており、フック操作レバー28を上下させることによって後述する下部取付部25のフックが取付開口部を開閉するようになっている。レバーシャフト29は中央部29cをコの字状に屈曲させ、両端を下部取付部25a,25bのフックの端部に取り付ける。
【0015】
下部取付部25a,25bは、ロワーピンd2を挿入・保持するための凹状の切り欠きにより取付開口部が形成された鉄板のヒッチブラケットと、そのヒッチブラケットに対して回動自在に、かつ取付開口部を開閉してロワーピンd2を解放したり保持したりするフックとを備える。
ところで、中央部29cには、図2(b)に示すようにトラクタAの伝達軸S1とロータリー耕耘機Dの入力軸S2とを覆うための安全カバー32を着脱自在に嵌めつける。
一方、下部フレーム27bは中央部27bcを幾分屈曲させたパイプ状で、その両端を下部取付部25a,25bに溶接などによって適宜取り付ける。また、中央部27bcには、連結ガイド31をステー30を介して溶接などで固設する。
安全カバー32は樹脂製で、図3(a),(b)に示すように、カバー部32aとフック部32bとを一体に成形して構成されている。カバー部32aは、フック部32bをレバーシャフト29に嵌め合うように形成したとき、レバーシャフト29の中央部29cの形状に沿うように形成される。なお、符号34は、フック操作レバー28を除けるための切り欠きである。
また、安全カバー32は樹脂製に限定されるものではなく、例えば、鉄板製、ラス網製などであってもよい。
上記安全カバー32以外の構成・作用は、公知のオートヒッチと同様である。
【0016】
このように構成されたトラクタAにロータリー耕耘機Dを取り付ける手順を図1,2を参照しつつ説明する。
まず、上部係合部d1と一対のロワーピンd2が、それぞれトラクタAの上部取付部26と左右一対の下部取付部25とに対向するようにロータリー耕耘機Dを配置する。次に、作業者が運転席5に乗り込み、トラクタAを後退操作させてロータリー耕耘機Dに接近させる。このとき、上部係合部d1が上部取付部26に、また、一対のロワーピンd2が一対の下部取付部25の取付開口部にそれぞれ嵌り合うように昇降部20を操作してヒッチCを昇降させて高さ調節をしながら、ロータリー耕耘機DをトラクタAに取り付ける。
このとき、トラクタAの伝達軸S1とロータリー耕耘機Dの入力軸S2とを連結ガイド31に前後より挿入して、伝達軸S1の回転動力を入力軸S2に伝達するようにする。
【0017】
なお、図4(a),(b)に示すように、安全カバー33が下部フレーム27bに固設されるように構成されてもよい。この場合には、レバーシャフト29の上下動と干渉しないように高さを調整する必要がある。
また、図5に示すように、PTO軸カバーPに小窓Wを設けて、伝達軸S1の回転の有無を目視できるようにしてもよい。小窓Wは透明なカバーで覆うようにすると、安全性をいっそう向上させることができる。
さらに、図6に示すように、昇降部20を作動させてオートヒッチCを上方に一定量回動させたとき、入力軸S1の回転を停止するように制御してもよい。このようにすると、ロータリー耕耘機Dを取り付けた状態で、かつ入力軸S1の動力をロータリー耕耘機Dに伝達しているとき、昇降部20によりロータリー耕耘機Dを矢印方向に上昇させると、入力軸S1の回転が停止するので、ロータリー耕耘機Dの耕耘爪も回転を停止し、作業者が耕耘爪に巻き込まれて怪我をすることを防止することができる。
【0018】
以上詳述したように、この発明のオートヒッチ(作業機取付装置)Cは、トラクタ(自走機)Aの後部に取り付け、ロータリー作業機Dを連結するものであり、トラクタAとロータリー作業機Dとを連結したときに、トラクタAの動力をロータリー作業機Dに伝達するための伝達軸S1と、その伝達軸S1からの動力を受けるロータリー作業機Dの入力軸S2とを覆う安全カバー32を備える。また、ロータリー作業機Dに備える上部係合部(被掛止部)d1およびロワーピン(被掛止部)d2をそれぞれ掛け止めて保持するための上部取付部(掛止部)26および下部取付部(掛止部)25と、その上部取付部26および下部取付部25を保持する上部フレーム27aおよび下部フレーム27bとを備え、その下部フレーム27bに安全カバー33を設けるようにする。
なお、下部取付部(掛止部)25が、ロワーピン(被掛止部)d2を挿入する取付開口部と、その取付開口部を開閉するフックと、そのフックを開閉操作するフック操作レバー(操作レバー)28とを備え、そのフック操作レバー28に安全カバー32を着脱自在に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明のオートヒッチを取り付けたトラクタの概略側面図である。
【図2】図1のオートヒッチの(a)は正面図、(b)は(a)のA矢視断面図である。
【図3】図2のオートヒッチに取り付ける安全カバーの(a)は斜視図、(b)は(a)のB矢視断面図である。
【図4】図2のオートヒッチに取り付ける安全カバーの別の例を示すもので、(a)は正面図、(b)は(a)のC矢視断面図である。
【図5】PTO軸カバーに目視可能な小窓を設けた状況を示す図である。
【図6】図1のトラクタに備える昇降部を用いてオートヒッチを持ち上げた状態を示す図である。
【図7】従来のオートヒッチの(a)は正面図、(b)はD矢視断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 前輪
2 後輪
3 車体フレーム
4 ボンネット
5 運転席
6 運転操作部
7 ハンドル
12 シフトレバー
13 アクセルペダル
14 ホルダ
15 安全フレーム
16 キャノピー
20 昇降部
21 リフトアーム
22 リフトロッド
23 トップリンク
24 ロワーリンク
25,25a,25b 下部取付部
26 上部取付部
27 フレーム
27a 上部フレーム(フレーム)
27b 下部フレーム(フレーム)
27bc,29c 中央部
28 フック操作レバー(操作レバー)
29 レバーシャフト
30 ステー
31 連結ガイド
32,33 安全カバー
32a カバー部
32b フック部
34 切り欠き
A トラクタ(自走機)
C オートヒッチ(作業機取付装置)
D ロータリー耕耘機(作業機)
d1 上部係合部
d2 ロワーピン
P PTO軸カバー
S1 伝達軸
S2 入力軸
W 小窓



【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走機の後部に取り付け、作業機を連結する作業機取付装置において、
前記自走機と前記作業機とを連結したときに、
前記自走機の動力を前記作業機に伝達するための伝達軸と、該伝達軸からの動力を受ける前記作業機の入力軸とを覆う安全カバーを備えることを特徴とする、作業機取付装置。
【請求項2】
前記作業機に備える複数の被掛止部をそれぞれ掛け止めて保持するための複数の掛止部と、
該掛止部を保持するフレームとを備え、
該フレームに前記安全カバーを設けることを特徴とする、請求項1に記載の作業機取付装置。
【請求項3】
前記掛止部が、
前記被掛止部を挿入する取付開口部と、
該取付開口部を開閉するフックと、
該フックを開閉操作する操作レバーとを備え、
該操作バーに前記安全カバーを着脱自在に設けることを特徴とする、請求項1に記載の作業機取付装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−158285(P2006−158285A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353909(P2004−353909)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】