説明

作業機械の燃料性状検出装置

【課題】本発明の燃料性状検出装置は、給油時の燃料について性状を検出する。
【解決手段】燃料タンク150には、測定室部材200が設けられる。給油ノズル300から噴射された燃料の大部分は、給油口205から流出口202を介して、燃料タンク150内に落下する。一部の燃料は、流出口202の下部と底部203との間に形成された測定空間207に溜まる。燃料性状検出センサ140は、測定空間207に臨むようにして本体201に取り付けられている。給油キャップセンサ141によって給油口205の施蓋が検出された場合、燃料残量センサ142によって燃料残量の増加が検出された場合、または、エンジン110が始動された場合、コントローラ100は、燃料性状検出センサ140によって燃料性状を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の燃料性状を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械としては、例えば、油圧ショベルやホイールローダ等の各種建設機械や、ダンプトラック等の運搬車両等が知られている。これらの作業機械では、燃料コストを低減するために、ディーゼルエンジンを搭載し、燃料として軽油を使用する。多くの作業機械使用者は正規の軽油を使用しているが、軽油に灯油等の他の燃料を混ぜて不正使用されることもある。これは、軽油よりも灯油等の方が安価なためである。
【0003】
しかし、近年では、環境問題への対応が社会から強く要請されているため、作業機械メーカー等は、より環境への影響が少なくなるように、ディーゼルエンジンを高度に制御し、主要部品を設計している。このような高度のエンジン制御は、燃料として正規の軽油が使用されることを前提にしている。従って、軽油に比べてオイル含有量の少ない灯油や不純物を含んだ粗悪な燃料が使用されると、予定されたエンジン性能を発揮できない上に、エンジンの燃料噴射系等に損傷を与え、寿命を低下させる可能性がある。
【0004】
そこで、燃料の性状を検出する技術が提案されている。第1の従来技術としては、エンジンの排気ガスに含まれている硫黄酸化物の量に基づいて、正規の軽油が使用されているか否かを判別する方法が知られている(特許文献1)。第2の従来技術としては、軽油と灯油の比重の相違に基づいて、軽油であるか灯油であるかを判別するようにした技術が知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−219269号公報
【特許文献2】実開平2−20146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記各文献に記載の従来技術は、燃料タンクに既に給油された燃料の性状を検出するため、正規の燃料と粗悪な燃料の混合物について燃料の性状を検出することになる。従って、燃料タンク内に正規の燃料が残存している状態で、粗悪な燃料が給油されたような場合には、燃料残量に占める粗悪な燃料の割合が低下し、燃料性状の検出精度が低下する。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、その目的は、燃料の性状をより正確に検出することができるようにした作業機械の燃料性状検出装置を提供することにある。本発明の他の目的は、給油時に、燃料タンクに給油される燃料の性状を安定した状態で検出することができるようにした作業機械の燃料性状検出装置を提供することにある。本発明の更なる目的は、後述する実施形態の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの側面に従う作業機械の燃料性状検出装置は、作業機械のエンジンに供給される燃料の性状を検出する燃料性状検出装置であって、燃料タンクには、流入する燃料の一部を収容するための測定室を設け、燃料の性状を検出して検出信号を出力する燃料性状検出手段を測定室に設けたことを特徴とする。
【0008】
好適な実施形態では、測定室は、有底筒状の本体と、該本体の開口面に設けられた給油口と、本体の側面に設けられ、給油口から流入した燃料を燃料タンク内に流出させるための流出口と、を備える。
【0009】
好適な実施形態では、本体の底部には、本体内に収容された燃料を燃料タンク内に排出するためのドレイン穴を設ける。
【0010】
好適な実施形態では、燃料性状検出手段は、流出口とドレイン穴との間に位置して、本体に取り付けられている。
【0011】
好適な実施形態では、燃料性状検出手段は、燃料タンクへの給油時に設定される測定時期が到来した場合に、測定室内に収容された燃料の性状を検出する。
【0012】
好適な実施形態では、測定時期は、燃料タンクへの給油が開始される給油開始時期、または、燃料タンクへの給油が終了した給油終了時期のいずれかである。
【0013】
好適な実施形態では、給油口を施蓋する給油キャップの開閉状態を検出するためのキャップ開閉検出手段を設け、このキャップ開閉検出手段からの信号に基づいて測定時期の到来が検出される。
【0014】
好適な実施形態では、開閉検出手段は、給油キャップが施蓋されているか否かを非接触で検出する。
【0015】
好適な実施形態では、給油口の近傍には、給油ノズルが給油口に挿入されたか否かを検出するためのノズル検出手段を設け、このノズル検出手段が給油ノズルを検出した場合に、測定時期の到来が検出される。
【0016】
好適な実施形態では、燃料タンク内の燃料残量を検出するための燃料残量検出手段を設け、この燃料残量検出手段が燃料タンク内の燃料残量の増加を検出した場合に、測定時期の到来が検出される。
【0017】
好適な実施形態では、給油口を施蓋する給油キャップの開閉状態を検出するためのキャップ開閉検出手段を設け、このキャップ開閉検出手段によって給油キャップの取り外し状態及び取付状態がそれぞれ検出された場合であって、かつ、エンジンが始動された場合に、測定時期の到来が検出される。
【0018】
好適な実施形態では、給油口を施蓋する給油キャップの開閉状態を検出するためのキャップ開閉検出手段と、燃料タンク内の燃料残量を検出するための燃料残量検出手段とを設け、キャップ開閉検出手段によって給油キャップの取り外し状態及び取付状態がそれぞれ検出された場合であって、かつ、燃料残量検出手段が燃料タンク内の燃料残量の増加を検出した場合に、測定時期の到来が検出される。
【0019】
好適な実施形態では、燃料性状検出手段が燃料の存在を検出した場合に、測定時期の到来が検出される。
【0020】
好適な実施形態では、燃料性状検出手段は、光線の屈折率に基づいて燃料の性状を検出する光学式燃料性状検出手段として構成されており、屈折率の変化によって燃料の存在を検出した場合に、燃料の性状を検出する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、給油時に、燃料の性状を検出することができる。これにより、検出対象の燃料が燃料タンク内の既存燃料と混じり合ってから検出する場合よりも、燃料の性状を精度良く検出することができる。
【0022】
本発明によれば、給油時の燃料の一部を収容する測定室を設け、この測定室に燃料性状検出手段を設けるため、燃料タンク内に落下する燃料の性状を直接検出する場合よりも、より安定した状態で燃料の性状を検出することができる。
【0023】
本発明によれば、測定室内の燃料を燃料タンク内に排出させるためのドレイン穴を設けるため、燃料性状の検出が終了した後で、測定室内の燃料を燃料タンク内に排出して、燃料を無駄なく利用することができる。
【0024】
本発明によれば、測定室の流出口とドレイン穴との間に燃料性状検出手段を設けるため、測定室内に一時的に滞留する燃料の性状を安定した状態で検出することができる。
【0025】
本発明によれば、給油キャップの開閉状態を検出するためのキャップ開閉検出手段を設け、キャップ開閉検出手段からの信号に基づいて測定時期の到来を検出するため、燃料タンクへの給油時を検出することができる。
【0026】
本発明に寄れば、燃料性状検出手段が燃料の存在を検出した場合に、燃料の性状を検出するため、測定時期の到来と燃料性状の検出との両方を単一の燃料性状検出手段によって行うことができ、構成を簡素化して低コストに製造可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態に係る作業機械の燃料性状測定装置は、例えば、ホイールローダやトラック等のような作業機械に適用される。本実施形態の燃料性状測定装置は、以下に述べるように、給油時の燃料の一部を一時的に貯蔵し、測定環境を整えてから、給油された燃料の性状を検出する。
【実施例1】
【0028】
本発明の第1実施例を説明する。図1は、燃料性状検出装置の全体構成を示す説明図である。燃料性状検出装置は、例えば、コントローラ100と、測定室部材200と、燃料性状検出センサ140と、給油キャップセンサ141と、燃料残量センサ142及び温度センサ143とを備えて構成される。
【0029】
コントローラ100は、エンジン110の作動を制御したり、作業機械の備える各種作業機の動作を制御するものである。これに代えて、燃料性状の判別だけを行う専用のコントローラとして構成してもよい。コントローラ100には、各センサ140〜143からの信号が入力される。コントローラ100は、燃料性状の測定データ及び/または燃料の判別結果を外部装置に出力することができる。外部装置としては、例えば、コントローラ100と通信ネットワークを介して接続された管理サーバ、コントローラ100に接続されたプリンタまたはディスプレイ装置、コントローラ100に接続された警報装置等を挙げることができる。
【0030】
エンジン110は、例えば、エンジン本体111と、燃料噴射装置112と、エンジンスタータ113とを備える。燃料噴射装置112は、燃料タンク150から燃料供給配管120を介して供給された燃料を、エンジン本体111に噴射する。燃料ポンプ130は、燃料タンク150内の燃料を吸引して燃料供給配管120に吐出することにより、燃料噴射装置112に燃料を供給する。燃料供給配管120には、燃料中の異物や水分を除去するための燃料フィルタ121が設けられている。
【0031】
次に、各センサ140〜143について説明する。燃料性状検出センサ140は、燃料の性状を検出して信号を出力するセンサである。燃料性状検出センサ140は、例えば、比重、屈折率、密度等のような燃料の有する物理的性質に基づいて、燃料の性質や状態を検出する。燃料性状検出センサ140からの検出信号によって、燃料タンク150に給油された燃料が軽油であるか否かを判別する。
【0032】
給油キャップセンサ141は、燃料タンク150の給油キャップ206(図5参照)が装着されているか否かを検出するものである。給油キャップセンサ141の構成は図5と共に後述する。
【0033】
燃料残量センサ142は、燃料タンク150内の燃料の量を検出して信号を出力するものである。燃料タンク150内には、燃料タンク150内の燃料の液面H1,H2に従って上下に変位するフロート142Aが設けられている。フロート142Aの変位量は、燃料残量センサ142により燃料残量に変換される。図中の液面H1は給油直前の状態を示し、H2は給油中の状態を示す。なお、燃料残量の検出方法は、上述のフロート式に限らない。例えば、光センサや超音波センサ等で燃料の液面位置を測定する構成や他の構成も採用できる。
【0034】
温度センサ143は、例えば、燃料温度を検出して信号を出力するものである。これに代えて、エンジン冷却水温や外気温度を検出する構成でもよい。燃料性状検出センサ140の検出信号が温度依存性を有する場合、温度センサ143が設けられる。燃料性状検出センサ140と温度センサ143とを一体的に構成してもよい。例えば、燃料性状検出センサ140に、サーミスタや熱電対、または白金測温抵抗体等の温度センサ143を内蔵させる構成でもよい。なお、温度に依存しない物性値を利用する場合は、温度補正を行う必要はない。
【0035】
次に、燃料タンク150及び燃料性状を測定するための測定室部材200の構成を説明する。燃料タンク150の上部には、給油口205を備える測定室部材200が設けられている。給油口205は、通常時には給油キャップ206により施蓋されている。給油時には、給油キャップ206を取り外して、給油ノズル300を給油口205に挿入することにより、燃料タンク150内に燃料を補給できるようになっている。給油キャップ206によって給油口205が施蓋されているか否かは、給油キャップセンサ141により検出される。
【0036】
測定室部材200は、給油時の燃料の一部を一時的に貯蔵することにより、燃料性状検出センサ140に燃料性状の測定環境を与えるものである。即ち、測定室部材200は、給油時の燃料の一部を測定用試料として一時的に滞留させることにより、給油ノズル300から燃料タンク150内に落下する燃料を直接検出する場合よりも安定した測定環境を作り出す。測定室部材200には、ストレーナ210を一体的にまたは着脱可能に設けることができる。
【0037】
測定室部材200の構成を図2〜図4を参照しながら説明する。測定室部材200は、例えば、有底筒状の本体201と、本体201の側面に設けられた流出口202と、本体201の底部203に設けられたドレイン穴204と、本体201の上部に設けられた給油口205と、を備えて構成される。
【0038】
本体201は、本実施例においては、図3の横断面図にも示すように、円形の横断面を有する円筒状に形成される。しかし、これに限らず、本体201を、三角形や四角形または5角形以上の横断面を有する角筒状に形成してもよい。
【0039】
本体201の側面には、流出口202の位置と直交する位置に、燃料性状検出センサ140が取り付けられている。なお、燃料性状検出センサ140と流出口202とを対向させて設ける構成でもよい。
【0040】
ドレイン穴204は、例えば、燃料性状検出センサ140側寄りに位置して、底部203に設けられている。これに限らず、ドレイン穴204を燃料性状検出センサ140から離して設ける構成でもよい。流出口202の下部とドレイン穴204との間には、図4の盾断面図にも示すように、測定空間207が形成されている。測定空間207には、給油終了時において、給油された燃料の一部が短時間だけ滞留する。燃料性状検出センサ140は、測定空間207に臨むようにして、本体201の側面に取り付けられる。
【0041】
給油時には、給油キャップ206が取り外されて、給油ノズル300が給油口205に挿入される。給油ノズル300から噴射された燃料は、その大部分が流出口202から流出し、燃料タンク150内に落下する。給油ノズル300から噴射された燃料の一部は、給油完了後も短時間だけ測定空間207内に滞留する。
【0042】
測定空間207内に燃料が滞留する時間は、ドレイン穴204の面積によって調節することができる。ドレイン穴204の面積を大きく設定すれば、測定空間207内の燃料を速やかに燃料タンク150に排出させることができる。しかし、この場合、給油完了後に燃料性状を測定可能な時間は短くなる。ドレイン穴の面積を小さく設定すれば、給油完了後も測定空間207内に燃料を比較的長時間滞留させておくことができる。
【0043】
図5は、給油キャップセンサ141を誘導型センサ141Aとして構成した場合の模式図である。以下、図5の説明においては、給油キャップセンサ141を、誘導型のノズル検出センサ141Aとして説明する。
【0044】
ノズル検出センサ141Aは、例えば、検出コイル141A1と、発振回路141A2と、発振状態検出回路141A3及び出力回路141A4とを備えて構成される。検出コイル141A1は、給油口205の外周側を取り囲むようにして、本体201の周面に巻回されている。発振回路141A2は、検出コイル141A1に結合されており、検出コイル141A1を介して高周波磁界を生成させる。発振状態検出回路141A3は、発振回路141A2に接続されており、発振の停止または減衰を検出する。出力回路141A4は、発振状態検出回路141A3に接続されており、発振の停止または減衰が検出されると、コントローラ100にオンオフ信号を出力する。
【0045】
誘導型のノズル検出センサ141Aの動作を説明する。少なくとも先端側に金属部分を有する給油ノズル300が給油口205内に挿入されると、電磁誘導作用により、給油ノズル300の金属部分に誘導電流が流れて熱損失を生じる。これにより、発振状態が停止または減衰する。発振状態が停止または減衰すると、出力回路141A4は、信号をコントローラ100に出力する。従って、給油ノズル300が給油口205に挿入された場合、この給油ノズル300の挿入を検出することができ、給油作業の開始を検出できる。なお、以上の説明は一例であって、本発明はこれに限定されない。給油ノズル300が給油口に挿入されたことを検出可能な他の種類のセンサでもよい。
【0046】
次に、図6のフローチャートに基づいて、燃料性状の測定処理を説明する。コントローラ100は、給油キャップセンサ141によって、給油ノズル300が給油口205に挿入されたことを検出すると(S1:YES)、燃料残量センサ142の信号に基づいて、燃料残量が増加しているか否かを判定する(S2)。
【0047】
燃料残量が増加している場合(S2:YES)、コントローラ100は、給油ノズル300によって給油が開始されたものと判断する。そして、コントローラ100は、給油キャップセンサ141によって、給油ノズル300が給油口205から引き抜かれたか否かを判断する(S3)。
【0048】
燃料残量が増加しており(S2:YES)、かつ、給油ノズル300の存在が検出されなくなくなった場合(S3:NO)、コントローラ100は、給油作業が終了したものと判断し、燃料性状検出センサ140による燃料性状の測定を開始する(S4)。そして、コントローラ100は、燃料性状検出センサ140からの検出信号を温度補正等することにより、燃料性状の測定結果を出力する(S5)。
【0049】
このように構成される本実施例によれば、燃料性状検出センサ140が設けられる測定室部材200を備えるため、給油時の燃料の一部を測定室部材200内に貯蔵し、貯蔵された燃料の性状を燃料性状検出センサ140によって検出することができる。従って、給油ノズル300から燃料タンク150内に落下する燃料の性状を検出する場合に比べて、より安定した測定環境を得ることができ、検出精度を高めることができる。
【0050】
本実施例では、測定室部材200にドレイン穴204を設けるため、測定室部材200内に貯蔵された燃料を徐々に燃料タンク150内に排出させることができる。これにより、燃料性状を検出するための時間を確保できる。また、性状の検出された燃料を燃料タンク150に排出して有効に利用することができる。
【0051】
本実施例では、流出口202とドレイン穴204との間の測定空間207に臨むようにして燃料性状検出センサ140を設ける。従って、燃料性状検出センサ140は、測定空間207に一時的に貯蔵される燃料について、その性状を検出することができる。
【0052】
本実施例では、給油ノズル300の存在と燃料残量の増加によって、給油作業の開始及び終了を判定し、給油作業が終了した場合に、燃料性状を検出する。従って、測定空間207に貯蔵された燃料の性状を静的な状態で検出することができ、検出精度を高めることができる。
【0053】
本実施例では、誘導型センサ141Aを給油キャップセンサ141として用い、給油ノズル300が給油口205に挿入されたか否かを非接触で検出する。従って、機械式接点を備えるスイッチを使用する場合よりも、安全性及び耐久性を高めることができる。
【実施例2】
【0054】
図7に基づいて第2実施例を説明する。以下に述べる各実施例では、前記第1実施例との相違点を中心に説明する。本実施例では、給油キャップセンサ141として光電スイッチ141Bを使用する。
【0055】
図7は、本実施例による給油キャップセンサ141としての光電スイッチ141Bを示す模式図である。図7に示すように、光電スイッチ141Bは、例えば、反射型の光電スイッチのように構成される。
【0056】
光電スイッチ141Bは、給油キャップ206の側面に向けて赤外線等の光を照射し、給油キャップ206からの反射光を受光して電気信号に変換する。従って、コントローラ100は、光電スイッチ141Bからのオンオフ信号によって、給油キャップ206の有無を検出することができる。このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を得る。
【実施例3】
【0057】
図8に基づいて第3実施例を説明する。本実施例では、給油キャップセンサ141として磁気スイッチ141Cを使用する。
【0058】
図8は、本実施例による給油キャップセンサ141としての磁気スイッチ141Cを示す模式図である。給油キャップ206の側面には、磁石141C1が設けられており、磁石141C1に対向するようにして、ホール素子を内蔵したホールIC141C2が設けられている。
【0059】
磁気スイッチ141Cは、磁石141C1の移動による磁界の変化をホールIC141C2によって検出し、検出信号をコントローラ100に出力する。コントローラ100は、磁気スイッチ141Cからの信号に基づいて、給油キャップ206の有無を検出することができる。このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を得る。
【実施例4】
【0060】
図9に基づいて第4実施例を説明する。図9は、本実施例による燃料性状の測定処理を示すフローチャートである。コントローラ100は、給油口205が給油キャップ206によって施蓋されたか否かを監視し(S10)、給油口205が施蓋されると(S10:YES)、エンジン110が始動したか否かを判定する(S11)。エンジンの始動を検出すると(S11:YES)、コントローラ100は、燃料性状検出センサ140による燃料性状の測定を開始し(S12)、その測定結果を出力する(S13)。
【0061】
本実施例では、給油キャップ206によって給油口205が施蓋され、かつ、エンジン110が始動された場合に、給油作業が完了したものと判断して、燃料性状の測定を行うため、前記第1実施例と同様の効果を奏する。但し、給油完了後に、測定空間207内の残存燃料がドレイン穴204から排出されるよりも前に、エンジン110を始動させる場合に有効である。
【実施例5】
【0062】
図10に基づいて第5実施例を説明する。図10は、本実施例による燃料性状の測定処理を示すフローチャートである。コントローラ100は、給油口205が給油キャップ206によって施蓋されたか否かを監視している(S20)。給油口205が施蓋された場合(S20:YES)、コントローラ100は、燃料残量センサ142からの信号に基づいて、燃料残量が増加したか否かを判定する(S21)。
【0063】
給油キャップ206が閉められた後で燃料残量が増加した場合(S21:YES)、コントローラ100は、燃料性状検出センサ140による燃料性状の測定を開始し(S22)、その測定結果を出力する(S23)。このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を得る。
【実施例6】
【0064】
図11に基づいて第6実施例を説明する。図11は、本実施例による燃料性状の測定処理を示すフローチャートである。本実施例では、燃料性状検出センサ140が正常に作動しているか否かを診断する。
【0065】
まず、コントローラ100は、給油キャップ206が給油口205から取り外されているか否かを判定する(S30)。給油キャップ206が取り外された場合(S30:YES)、コントローラ100は、給油キャップ206によって給油口205が施蓋されたか否かを判定する(S31)。そして、コントローラ100は、燃料残量センサ142からの信号に基づいて、燃料残量が増加したか否かを判定する(S32)。
【0066】
給油口205が開閉され、かつ、燃料残量が増加したときは、給油作業が完了して、測定空間207に給油時の燃料が滞留している状態であると判断される。そこで、コントローラ100は、燃料性状検出センサ140から信号が出力されているか否かを判定する(S33)。
【0067】
燃料性状検出センサ140から信号が出力されている場合(S33:YES)、コントローラ100は、燃料性状検出センサ140が正常に稼働しているものと判定する。従って、コントローラ100は、燃料性状検出センサ140による燃料性状の測定を開始し(S34)、その測定結果を出力する(S35)。
【0068】
これに対し、燃料性状検出センサ140から信号が出力されていない場合(S33:NO)、コントローラ100は、燃料性状検出センサ140が故障しているか、あるいは、燃料性状検出センサ140とコントローラ100との間の信号線路が断線等している場合であると判断し、エラー処理を行う(S36)。エラー処理としては、例えば、燃料性状検出センサ140の故障を通知するエラーメッセージの表示等が挙げられる。
【0069】
このように構成される本実施例では、燃料の性状を検出する前に、燃料性状検出センサ140が正常に作動しているか否かを診断するため、信頼性が向上する。
【実施例7】
【0070】
図12に基づいて第7実施例を説明する。図12は、本実施例による燃料性状の測定処理を示すフローチャートである。本実施例では、燃料性状検出センサ140の自己診断を省略している。
【0071】
即ち、コントローラ100は、給油キャップ206が給油口205から取り外されているか否かを判定し(S40)、給油キャップ206が取り外された場合(S40:YES)、燃料残量が増加し始めているかを判定する(S41)。
【0072】
コントローラ100は、燃料残量の増加を確認した後(S42:YES)、給油キャップ206によって給油口205が施蓋されたか否かを判定する(S42)。給油口205が給油キャップ206により施蓋された場合(S42:YES)、コントローラ100は、給油作業が完了したものと判定し、燃料性状検出センサ140による燃料性状の測定を開始し(S43)、その測定結果を出力する(S44)。このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を奏する。
【実施例8】
【0073】
図13に基づいて第8実施例を説明する。図13は、本実施例による燃料性状の測定処理を示すフローチャートである。コントローラ100は、燃料残量センサ142からの信号に基づいて、燃料残量が増加したか否かを判定する(S60)。燃料残量が増加した場合(S60:YES)、コントローラ100は、給油作業が完了したものと判定し、燃料性状検出センサ140により測定空間207に溜まった燃料の性状を測定する(S61)。そして、コントローラ100は、測定結果を出力する(S62)。
【0074】
このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を得る。これに加えて、本実施例では、燃料残量が増加した場合に給油作業が完了したものと判定して燃料の性状を検出するため、給油キャップセンサ141を設ける必要がなく、また、制御構造を簡素化することができる。
【実施例9】
【0075】
図14に基づいて第9実施例を説明する。図9は、本実施例による燃料性状の測定処理を示すフローチャートである。本実施例では、燃料性状検出センサ140からの信号に基づいて、燃料性状の測定タイミングを判定する。
【0076】
コントローラ100は、燃料性状検出センサ140から信号が出力されているか否かを判定する(S70)。燃料性状検出センサ140から信号が出力された場合(S70:YES)、測定空間207に燃料が滞留していると考えられる。そこで、コントローラ100は、燃料性状検出センサ140による燃料性状の測定を開始し(S71)、その測定結果を出力する(S72)。
【0077】
本実施例及び第6実施例の前提条件として、燃料性状検出センサ140は、測定空間207に燃料が存在する場合と存在しない場合とで、それぞれ異なるレベルの信号を出力するように構成される。例えば、測定空間207に燃料が存在しない場合、燃料性状検出センサ140の信号レベルは所定の閾値よりも低く、測定空間207に燃料が存在する場合、燃料性状検出センサ140の信号レベルは所定の閾値よりも高い。従って、燃料性状検出センサ140からの信号に基づいて、燃料の有無を判定することができる。そして、燃料の存在が検出された場合、コントローラ100は、例えば、燃料性状検出センサ140からの信号を複数回読み込んで、温度補正等を行うことにより、燃料の性状を測定し、測定結果を出力する。
【0078】
このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を得る。これに加えて、本実施例では、燃料性状検出センサ140を燃料の有無の検出及び燃料の性状の検出の両方に使用するため、全体構造を簡素化することができ、低コストに製造できる。
【0079】
なお、上記実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこれのみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態以外の他の種々の形態で実施することができる。例えば、図15に示す第1変形例のように、ドレイン穴204を底部203の中心に配置してもよいし、あるいは、図16に示す第2変形例のように、ドレイン穴204を燃料性状検出センサ140と対向する位置に配置してもよい。
【0080】
また、給油の開始または終了を検出するための給油キャップセンサ141として、誘導型のノズル検出センサ、光電スイッチ及び磁気スイッチを例示したが、本発明はこれに限らず、他の種類のセンサを用いることができる。例えば、リードスイッチ、メカニカルスイッチ等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】燃料性状検出装置の全体構成を示す説明図。
【図2】ストレーナを除いた状態の測定室部材の外観斜視図。
【図3】図2中の矢示III-III方向断面図。
【図4】図2中の矢示IV-IV方向断面図。
【図5】給油キャップセンサの一例を示す説明図。
【図6】燃料性状の測定処理を示すフローチャート。
【図7】第2実施例に係る給油キャップセンサの構成を示す説明図。
【図8】第3実施例に係る給油キャップセンサの構成を示す説明図。
【図9】第4実施例に係る燃料性状の測定処理を示すフローチャート。
【図10】第5実施例に係る燃料性状の測定処理を示すフローチャート。
【図11】第6実施例に係る燃料性状の測定処理を示すフローチャート。
【図12】第7実施例に係る燃料性状の測定処理を示すフローチャート。
【図13】第8実施例に係る燃料性状の測定処理を示すフローチャート。
【図14】第9実施例に係る燃料性状の測定処理を示すフローチャート。
【図15】第1変形例に係る測定室部材の外観斜視図。
【図16】第2変形例に係る測定室部材の外観斜視図。
【符号の説明】
【0082】
100:コントローラ、110:エンジン、111:エンジン本体、112:燃料噴射装置、113:エンジンスタータ、120:燃料供給配管、121:燃料フィルタ、130:燃料ポンプ、140:燃料性状検出センサ、141:給油キャップセンサ、141A:誘導型のノズル検出センサ、141A1:検出コイル、141A2:発振回路、141A3:発振状態検出回路、141A4:出力回路、141B:光電スイッチ、141C…磁気スイッチ、141C1:磁石、141C2:ホールIC、142:燃料残量センサ、142A:フロート、143:温度センサ、150:燃料タンク、200:測定室部材、201:本体、202:流出口、203:底部、204:ドレイン穴、205:給油口、206:給油キャップ、207:測定空間、210 ストレーナ、300:給油ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械のエンジン(110)に供給される燃料の性状を検出する燃料性状検出装置であって、
燃料タンク(150)には、流入する燃料の一部を収容するための測定室(200)を設け、
燃料の性状を検出して検出信号を出力する燃料性状検出手段(140)を前記測定室に設けたことを特徴とする作業機械の燃料性状検出装置。
【請求項2】
前記測定室(200)は、有底筒状の本体(201)と、該本体(201)の開口面に設けられた給油口(205)と、前記本体の側面に設けられ、前記給油口から流入した燃料を前記燃料タンク内に流出させるための流出口(202)と、を備える請求項1に記載の作業機械の燃料性状検出装置。
【請求項3】
前記本体(200)の底部(203)には、前記本体内に収容された燃料を前記燃料タンク内に排出するためのドレイン穴(204)を設けた請求項2に記載の作業機械の燃料性状検出装置。
【請求項4】
前記燃料性状検出手段(140)は、前記流出口(202)と前記ドレイン穴(204)との間に位置して、前記本体(201)に取り付けられている請求項3に記載の作業機械の燃料性状検出装置。
【請求項5】
前記燃料性状検出手段(140)は、前記燃料タンク(150)への給油時に設定される測定時期が到来した場合に、前記測定室(200)内に収容された燃料の性状を検出する請求項1に記載の作業機械の燃料性状検出装置。
【請求項6】
前記測定時期は、前記燃料タンク(150)への給油が開始される給油開始時期、または、前記燃料タンクへの給油が終了した給油終了時期のいずれかである請求項5に記載の作業機械の燃料性状検出装置。
【請求項7】
前記給油口(205)を施蓋する給油キャップ(206)の開閉状態を検出するためのキャップ開閉検出手段(141)を設け、このキャップ開閉検出手段からの信号に基づいて前記測定時期の到来が検出される請求項5に記載の作業機械の燃料性状検出装置。
【請求項8】
前記開閉検出手段(141)は、前記給油キャップが施蓋されているか否かを非接触で検出する請求項7に記載の作業機械の燃料性状検出装置。
【請求項9】
前記給油口(205)の近傍には、給油ノズル(300)が前記給油口に挿入されたか否かを検出するためのノズル検出手段(141A)を設け、このノズル検出手段が前記給油ノズルを検出した場合に、前記測定時期の到来が検出される請求項5に記載の作業機械の燃料性状検出装置。
【請求項10】
前記燃料タンク内の燃料残量を検出するための燃料残量検出手段(142)を設け、この燃料残量検出手段が前記燃料タンク内の燃料残量の増加を検出した場合に、前記測定時期の到来が検出される請求項5に記載の作業機械の燃料性状検出装置。
【請求項11】
前記給油口(205)を施蓋する給油キャップ(206)の開閉状態を検出するためのキャップ開閉検出手段(141)を設け、このキャップ開閉検出手段によって前記給油キャップの取り外し状態及び取付状態がそれぞれ検出された場合であって、かつ、前記エンジン(110)が始動された場合に、前記測定時期の到来が検出される請求項5に記載の作業機械の燃料性状検出装置。
【請求項12】
前記給油口(205)を施蓋する給油キャップ(206)の開閉状態を検出するためのキャップ開閉検出手段と、前記燃料タンク内の燃料残量を検出するための燃料残量検出手段(142)とを設け、
前記キャップ開閉検出手段によって前記給油キャップの取り外し状態及び取付状態がそれぞれ検出された場合であって、かつ、前記燃料残量検出手段が前記燃料タンク内の燃料残量の増加を検出した場合に、前記測定時期の到来が検出される請求項5に記載の作業機械の燃料性状検出装置。
【請求項13】
前記燃料性状検出手段(140)が燃料の存在を検出した場合に、前記測定時期の到来が検出される請求項5に記載の作業機械の燃料性状検出装置。
【請求項14】
前記燃料性状検出手段(140)は、光線の屈折率に基づいて燃料の性状を検出する光学式燃料性状検出手段として構成されており、屈折率の変化によって燃料の存在を検出した場合に、燃料の性状を検出するようになっている請求項13に記載の作業機械の燃料性状検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−14741(P2008−14741A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185197(P2006−185197)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】