説明

作業機械

【課題】キャブ内のオペレータの保護の向上を図ることができる作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械1は、下部走行体3、上部旋回体4および作業体5を有する機械本体2を備える。機械本体2の前部左側にはキャブ12を設ける。キャブ12の側面部の支柱部21にはサイドエアバッグ31を設ける。サイドエアバッグ31は、機械本体2の転倒時に、検出手段32からの検出信号に基づく制御手段33の制御により展開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブ内のオペレータの保護の向上を図ることができる作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばキャブ内のオペレータの乗り心地性が向上するようにキャブをゴムマウント等の支持具を介して機械本体の旋回フレームに設けた油圧シャベル等の作業機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実公平7−1353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そして、近年、油圧シャベル等の作業機械においては、キャブ内のオペレータの保護が重要な課題となっている。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、キャブ内のオペレータの保護の向上を図ることができる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の作業機械は、機械本体と、この機械本体に設けられたキャブと、このキャブに設けられたエアバッグと、前記機械本体の転倒を検出する検出手段と、この検出手段からの検出信号に基づいて前記エアバッグを展開させる制御手段とを備えるものである。
【0006】
そして、検出手段が機械本体の転倒を検出し、制御手段が検出手段からの検出信号に基づいてエアバッグを展開させるため、機械本体の転倒時におけるキャブ内のオペレータへの衝撃が緩和され、キャブ内のオペレータの保護の向上が図られる。
【0007】
請求項2記載の作業機械は、請求項1記載の作業機械において、キャブは、窓開口およびこの窓開口を開閉する開閉部材を有し、制御手段は、検出手段からの検出信号に基づいてエアバッグを展開させるとともに前記開閉部材を開動作させるものである。
【0008】
そして、制御手段が、検出手段からの検出信号に基づいてエアバッグを展開させるとともに開閉部材を開動作させるため、機械本体の転倒時にオペレータがキャブ内に閉じ込まれることが防止され、キャブ内のオペレータの保護がより一層向上する。
【0009】
請求項3記載の作業機械は、請求項2記載の作業機械において、エアバッグは、キャブの側面部に設けられたサイドエアバッグであり、窓開口は、キャブの後面部に設けられたリア窓であるものである。
【0010】
そして、機械本体の横方向への転倒時にサイドエアバッグが展開するとともにリア窓が開くので、キャブ内のオペレータがそのリア窓を通って簡単に脱出可能である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、検出手段が機械本体の転倒を検出し、制御手段が検出手段からの検出信号に基づいてエアバッグを展開させるため、機械本体の転倒時におけるキャブ内のオペレータへの衝撃を緩和でき、キャブ内のオペレータの保護の向上を図ることができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、制御手段が、検出手段からの検出信号に基づいてエアバッグを展開させるとともに開閉部材を開動作させるため、機械本体の転倒時にオペレータがキャブ内に閉じ込まれるのを防止でき、キャブ内のオペレータの保護をより一層向上できる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、機械本体の横方向への転倒時にサイドエアバッグが展開するとともにリア窓が開くので、キャブ内のオペレータがそのリア窓を通って簡単に脱出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の作業機械の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1ないし図3において、1は油圧シャベル等の作業機械で、この作業機械1は、機械本体2を備えている。
【0016】
機械本体2は、地面上を走行する履帯式の下部走行体3と、下部走行体3に上下方向の回動軸を中心として旋回可能に設けられた上部旋回体4と、上部旋回体4の前部右側に設けられ掘削作業をする作業体5とを有している。作業体5は、ブームシリンダ6により回動するブーム7を有し、ブーム7の先端部にはアームシリンダ8により回動するアーム9が設けられ、アーム9の先端部にはバケットシリンダ10により回動するバケット11が設けられている。
【0017】
また、機械本体2の上部旋回体4の前部左側には、運転席部であるキャブ12が設けられている。キャブ12は、略直方体状をなす箱形状のキャブ本体13と、キャブ本体13内に配設されオペレータが座る運転席14と、キャブ本体13内に配設されオペレータにて操作される操作手段15とを有している。
【0018】
キャブ本体13は、左側面部にBピラー等の支柱部21およびスライド式の左側ドア部22を有し、後面部に窓開口であるリア窓23およびこのリア窓23を開閉する回動可能な略矩形板状の開閉部材24を有している。左側ドア部22は、例えばドア枠25と、ドア枠25の内側に嵌着された樹脂製或いは強化ガラス製の板部材26とにて構成されている。開閉部材24はその上縁部がキャブ本体13の後面部のリア窓23の上縁に臨んだ部分に回動可能に取り付けられ、この開閉部材24は油圧シリンダ等のアクチュエータからの動力により回動する。
【0019】
そして、キャブ12のキャブ本体13の左側面部の支柱部21には、インフレータの作動により展開するエアバッグであるサイドエアバッグ31が設けられている。
【0020】
また、キャブ12のキャブ本体13の左側面部の上縁部には、機械本体2の転倒を検出する検出手段32が設けられている。検出手段32は、例えばキャブ本体13が予め設定された傾斜角度以上に傾いたことを検出する傾斜センサ、或いはキャブ本体13への衝撃を検出する衝撃センサ等である。
【0021】
さらに、キャブ12には、検出手段32からの検出信号に基づいて、インフレータを作動させてサイドエアバッグ31を展開させるとともに、開閉部材24を開動作すなわち例えば上方に向けて回動させてリア窓23を開く制御手段33が設けられている。
【0022】
また一方、機械本体2の上部旋回体4の後部には、エンジンおよびこのエンジンにより駆動される油圧ポンプ等にて構成された動力装置35が設けられている。なお、サイドエアバッグ31、検出手段32および制御手段33等にて安全装置36が構成されている。
【0023】
そして、図4に示すように、安全装置36の電源がオンされた状態で(ステップ1)、作業機械1がバランスを崩して左横方向へ転倒(横転)し、検出手段32が機械本体2の転倒を検出すると(ステップ2)、この検出手段32からの検出信号に基づく制御手段33の制御により、サイドエアバッグ31が展開すると同時に(ステップ3)、開閉部材24が上方回動してリア窓23を開く(ステップ4)。
【0024】
このように、作業機械1によれば、作業機械1が左側に転倒してしまった場合に、検出手段32が機械本体2の転倒を検出し、制御手段33が検出手段32からの検出信号に基づいてサイドエアバッグ31を展開させると同時にリア窓23を開くため、キャブ12のキャブ本体13内のオペレータへの衝撃を緩和でき、しかも、キャブ本体13が変形してオペレータがキャブ本体13内に閉じ込まれることを防止でき、よって、オペレータの保護の向上を図ることができる。
【0025】
なお、上記一実施の形態では、エアバッグをキャブ12のキャブ本体13の左側面部の支柱部21に設けた構成について説明したが、例えばキャブ本体13の左側面部の左側ドア部22のドア枠25に設けたり、キャブ本体13の右側面部の支柱部に設けたり、キャブ本体13の右側面部の窓枠部に設けたりしてもよい。
【0026】
また、エアバッグをキャブ12のキャブ本体13の前面部、後面部、床面部或いは天井面部に設けたり、キャブ12の運転席14に設けたりしてもよい。
【0027】
さらに、機械本体2の転倒時に、キャブ本体13の右側面部或いは天井面部の窓開口が開くようにしてもよい。
【0028】
また、リア窓23等の窓開口を開閉する開閉部材は、回動式のものには限定されず、スライド式や折畳み式のもの等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の作業機械の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】同上作業機械の部分斜視図である。
【図3】同上作業機械のキャブの部分斜視図である。
【図4】同上作業機械の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0030】
1 作業機械
2 機械本体
12 キャブ
23 窓開口であるリア窓
24 開閉部材
31 エアバッグであるサイドエアバッグ
32 検出手段
33 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械本体と、
この機械本体に設けられたキャブと、
このキャブに設けられたエアバッグと、
前記機械本体の転倒を検出する検出手段と、
この検出手段からの検出信号に基づいて前記エアバッグを展開させる制御手段と
を備えることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
キャブは、窓開口およびこの窓開口を開閉する開閉部材を有し、
制御手段は、検出手段からの検出信号に基づいてエアバッグを展開させるとともに前記開閉部材を開動作させる
ことを特徴とする請求項1記載の作業機械。
【請求項3】
エアバッグは、キャブの側面部に設けられたサイドエアバッグであり、
窓開口は、キャブの後面部に設けられたリア窓である
ことを特徴とする請求項2記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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