説明

作業機連結装置

【課題】トラクタ車体の後部に昇降自在に装着された連結枠に作業機が自動連結される際に連結枠側の電源コネクタと作業機側の電源コネクタとが自動的に接続されるようにした作業機連結装置において、電源コネクタ同士の接続の信頼性の向上を図る。
【解決手段】連結枠3側又は作業機4側の一方の電源コネクタ41を他方の電源コネクタ42に対する接続位置から後退可能に支持し、作業機4が連結枠3に接近する動作に連動して該一方の電源コネクタ41を前記接続位置から後退させ且つ作業機4が連結枠3に連結される時に該一方の電源コネクタ41を接続位置へと進出させて他方の電源コネクタ42に接続させる連動機構98を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに作業機を自動連結する作業機連結装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタに作業機を自動連結する作業機連結装置がある(特許文献1参照)。
この作業機連結装置は、トラクタ車体の後部にリンク機構を介して昇降自在に装着された連結枠を備えている。この連結枠の上部には係合部が設けられ、該連結枠の下部には嵌合部とロック部材とが左右一対設けられている。
作業機には、前記連結枠の係合部に係合する被係合部と、連結枠の左右の嵌合部に嵌合する左右の嵌合部材とが設けられている。
【0003】
この作業機連結装置にあっては、係合部を被係合部に係合させた状態で連結枠を上昇させて作業機を吊り上げることにより、作業機が連結枠に接近するように被係合部を中心として揺動して左右の嵌合部材が左右の嵌合部に嵌合し、且つ嵌合部に嵌合した嵌合部材に対してロック部材が係合して該嵌合部材が嵌合部から外れないようにロックされ、これにより、連結枠に作業機が連結されるように構成されている。
【0004】
前記嵌合部材は作業機が連結枠に接近する際にロック部材を下方揺動させて嵌合部に嵌合し、該嵌合部材が嵌合部に嵌合するとロック部材が上方揺動して復帰し、該ロック部材が嵌合部材の離脱を阻止するように構成されている。
また、トラクタに作業機を自動連結する作業機連結装置として、作業機を自動連結する際に、トラクタ側の電源コネクタと作業機側の電源コネクタとが自動的に接続されるようにした作業機連結装置がある(特許文献2参照)。
【0005】
この作業機連結装置にあっては、連結枠に、トラクタに設けられた電源にハーネスを介して接続された電源コネクタを設け、作業機に、該作業機に設けられた電気機器にハーネスを介して接続された電源コネクタを設け、作業機が連結枠に連結された時に、作業機側の電源コネクタが連結枠側の電源コネクタに自動的に接続されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−184403号公報
【特許文献2】特許3661215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献2に記載の作業機連結装置にあっては、連結枠側の電源コネクタは作業機側の電源コネクタに対する接続位置から前後方向に関して動かないように連結枠に取り付けられ、作業機側の電源コネクタは連結枠側の電源コネクタに対する接続位置から前後方向に関して動かないように作業機に取り付けられており、作業機が連結枠に連結される連結位置に達するのと同時に、作業機側の電源コネクタが連結枠側の電源コネクタに接続されるようになっている。
【0008】
また、作業機は被係合部を中心として揺動して連結枠に接近し、該連結枠に連結するので、作業機側の電源コネクタは被係合部を中心とする円弧軌跡を描きながら連結枠側の電源コネクタに接近して該連結枠側の電源コネクタに接続する。
通常、電源コネクタ同士は直線接続されるので、作業機側の電源コネクタが円弧軌跡を描きながら連結枠側の電源コネクタに接近して該連結枠側の電源コネクタに接続するように構成されていると、接続不良を生じることが考えられる。
【0009】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑み、連結枠に作業機が自動連結される際に連結枠側の電源コネクタと作業機側の電源コネクタとが自動的に接続されるようにした作業機連結装置において、電源コネクタ同士の接続の信頼性の向上を企図した作業機連結装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下に示す点を特徴と
する。
請求項1に係る発明では、トラクタ車体の後部に昇降自在に装着された連結枠を設け、この連結枠の上部に設けた係合部を作業機側に設けた被係合部に係合させた状態で連結枠を上昇させて作業機を吊り上げることにより、作業機が連結枠に接近するように被係合部を中心として揺動して連結枠に自動連結されるように構成し、この作業機が連結枠に連結された時に、作業機側に設けた電源コネクタが連結枠側に設けた電源コネクタに自動的に接続されるように構成された作業機連結装置において、
連結枠側又は作業機側の一方の電源コネクタを他方の電源コネクタに対する接続位置から後退可能に支持し、
作業機が連結枠に接近する動作に連動して該一方の電源コネクタを前記接続位置から後退させ且つ作業機が連結枠に連結される時に該一方の電源コネクタを接続位置へと進出させて他方の電源コネクタに接続させる連動機構を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明では、前記連結枠の下部に、作業機が連結枠に連結される時に作業機側に設けられた嵌合部材が嵌合する嵌合部と、この嵌合部から嵌合部材が離脱するのを阻止するロック部材とを設け、
前記嵌合部材は作業機が連結枠に接近する際にロック部材を下方揺動させて嵌合部に嵌合し、且つ該嵌合部材が嵌合部に嵌合するとロック部材が上方揺動して嵌合部材の離脱を阻止するように構成し、
前記連動機構は、ロック部材が下方揺動する際に連結枠側の電源コネクタを接続位置から後退移動させ、ロック部材が上方揺動する際に連結枠側の電源コネクタを接続位置へと進出移動させるものであることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明では、前記嵌合部、嵌合部材及びロック部材を左右一対設け、連結枠に左右のロック部材を連動連結する連動部材を設け、
この連動部材と連結枠側の電源コネクタとにわたって前記連動機構を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明によれば、連結枠に作業機を自動連結する際において、作業機が連結枠に接近すると一方の電源コネクタが接続位置から後退し、作業機が連結枠に連結される時に前記一方の電源コネクタが接続位置へと進出して他方の電源コネクタに接続するよう構成されているので、一方の電源コネクタを直線的に移動させて他方の電源コネクタに接続させることができ、これによって、電源コネクタ同士の接続の信頼性の向上が図られる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、連結枠に備えられているロック部材の動きに連動させて連結枠側の電源コネクタを接続位置に対して進退させるようにしており、すなわち、連結枠に備えられているロック部材を利用して電源コネクタを進退させているので、連動機構を簡素化することができる。
請求項3に係る発明によれば、連結枠側の電源コネクタを連結枠に備えられているロック部材の動きに連動させるにあたって、左右のロック部材を連動連結する連動部材と連結枠側の電源コネクタとにわたって連動機構を設けることにより、該連動機構の構造をさらに簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】トラクタに作業機を連結した状態を示す側面図である。
【図2】連結枠の側面図である。
【図3】連結枠の正面図である。
【図4】連結枠の右側下部の拡大図である。
【図5】連結枠と作業機の機枠とを連結した状態を示す側面図である。
【図6】作業機の機枠が連結枠に連結される前の状態を示す側面図である。
【図7】連動機構を示す正面図である。
【図8】作業機側の電源コネクタの取付状態を示す正面図である。
【図9】(a)は連結枠側の電源コネクタの側面図、(b)は連結枠側の電源コネクタの背面図、(c)は作業機側の電源コネクタの正面図、(d)は作業機側の電源コネクタの側面図である。
【図10】嵌合部材がロック部材を押し下げる前の状態の側面図である。
【図11】嵌合部材がロック部材を押し下げた状態の側面図である。
【図12】嵌合部材が嵌合部に嵌合した状態の側面図である。
【図13】ロック部材が下連結ピンから下方側に外れた状態に保持された状態を示す連結枠の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1において、符号1はトラクタの車体であり、該トラクタ車体1の後方には、三点リンク機構又は二点リンク機構等の装着機構2を介してトラクタ車体1に昇降自在に支持された(装着された)連結枠3が設けられ、この連結枠3に作業機4が着脱自在に連結される。
【0017】
本実施形態では、作業機として、サイドドライブ方式のロータリ耕耘機4が例示されている。
このロータリ耕耘機4は、前記連結枠3に取り付けられる機枠5と、土壌を耕耘する耕耘部6と、この耕耘部6を覆う耕耘カバー7と、ゲージ輪や培土器8等の農器具が取り付けられる揺動支持フレーム9とを備えている。
【0018】
前記機枠5は、左右方向中央部のギヤケース10から左右両側にサポートアーム11を延出すると共に左側サポートアーム11の延出端に伝動ケース12の上部を取り付け、右側サポートアーム11の延出端にサイドフレームの上部を取り付けて門型状に主構成されている。
ギヤケース10の上部には前後二股状に形成されたトップマスト13が上方突出状に設けられ、このトップマスト13の前上部には左右方向の軸心を有する上連結ピン14(被係合部)が設けられている。
【0019】
図8にも示すように、左右の各サポートアーム11は、ギヤケース10から左右方向外方に一体的に延出する基側筒部11aと、この基側筒部11aの延出端に固定された連結ブラケット15に固定の延出端側筒部11bとから構成され、前記左右連結ブラケット15の前部に左右方向の軸心を有する下連結ピン16(嵌合部材)が設けられている。
ギヤケース10には動力を入力するPIC軸17がその前面から前方に突出状に設けられている。
【0020】
耕耘部6は、伝動ケース12とサイドフレームとの下部間に左右方向の軸心廻りに回転自在に支架された爪軸18と、この爪軸18に取り付けられた多数の耕耘爪19とから構成されている。
PIC軸17からギヤケース10内に入力された動力は、ギヤケース10内のベベルギヤ伝動機構に入力されると共に該ベベルギヤ伝動機構から左側サポートアーム11内の伝動軸、伝動ケース12内のチェーン伝動機構を経て爪軸18に伝達され、爪軸18が回転駆動されることにより、耕耘部6が回転駆動されるように構成されている。
【0021】
耕耘カバー7は、耕耘部6の上方を覆う上部カバー20と、耕耘の後方を覆う後部カバー21とを備えている。
後部カバー21は上端側が上部カバー20の後端側に回動支軸を介して左右軸廻りに回動自在に枢支されていて、該回動支軸の軸心廻りに上下揺動自在とされている。
サポートアーム11に設けた前ブラケット23と後部カバー21の背面に設けた後ブラケット24とにわたって支持杆25が設けられ、この支持杆25内にはネジ杆(図示省略)が挿入され、このネジ杆に後部カバー21の揺動範囲の下限を規制するストッパ26のネジ部が螺合されており、ネジ杆を軸心回りに回転させることにより、ストッパ26が支持杆25の長手方向に移動して、後部カバー21の揺動範囲の下限位置の調整が可能とされている。したがって、前記ネジ杆を回動させることにより後部カバー21を上げ下げすることができる。
【0022】
前記支持杆25の前端側には、ネジ杆と一体回転する操作部材27が設けられている。また、後部カバー21は支持杆25に套嵌された図示省略の付勢バネの付勢力によって下方(接地方向)に付勢されている。
揺動支持フレーム9は、前後方向に長い左右一対の支持アーム28と、これら左右支持アーム28同士の中間部を連結する中間連結部材29と、左右方向に沿って配置されていて左右の支持アーム28の後端側に固定されたツールバー30とから主構成されている。
【0023】
各支持アーム28の前端側は前記連結ブラケット15の後部に左右軸廻りに回動自在に枢支連結されており、揺動支持フレーム9は前端側の枢支部分回りに上下揺動自在とされている。
ツールバー30の左右方向中央側に培土器8が回動支軸31を介して左右軸廻りに回動自在に取り付けられている。
【0024】
前記トップマスト13と揺動支持フレーム9の中間連結部材29とにわたって、揺動支持フレーム9を上げ下げすることによりツールバー30の高さを調整する高さ調整装置32が設けられている。
この高さ調整装置32は、トップマスト13の後部上部に左右軸廻りに回動自在に枢支された杆ホルダ33と、中間連結部材29に固定のブラケット34に左右軸廻りに回動自在に枢支された可動杆35と、杆ホルダ33内に配置された図示省略のネジ杆とを有する。
【0025】
可動杆35は杆ホルダ33内に下端から挿入されると共にネジ杆に螺合するネジ部を有し、ネジ杆を軸心回りに回転させることにより、可動杆35が杆ホルダ33の長さ方向に進退して揺動支持フレーム9が上げ下げされる。
杆ホルダ33の上端側には、該杆ホルダ33内のネジ杆と一体回転する操作部材36が設けられている。
【0026】
培土器8は、カバー部材37内に設けられた図示省略の昇降機構によって上げ下げ操作され、該昇降機構は、ネジ杆を有し、該ネジ杆を軸心回りに回転させることにより、培土器8が、図1に示す対地作業(畝立て作業等)を行う作業位置と、該作業位置から後ろ回りに180°回動させた非作業位置とに位置変更自在とされている。カバー部材37の前部には、ネジ杆と一体回転する操作部材38が設けられている。
【0027】
前記ロータリ耕耘機4には、後部カバー21を上げ下げ操作するネジ杆、揺動支持フレーム9を上げ下げ操作するネジ杆及び培土器8を上げ下げ操作するネジ杆を駆動する電動モータ39(電気機器)が装備されている。
この電動モータ39の出力軸は、ネジ杆と一体回転する各操作部材27,36,38に一体回転自在に嵌合可能であり、該電動モータ39により操作部材27,36,38を回転させることにより、ネジ杆を回転させる。
【0028】
この電動モータ39は、トラクタに装備されたバッテリ等の電源から電力が給電され、該電動モータ39を駆動するスイッチはトラクタの運転席近傍に設けられる。
電源から電動モータ39に至る給電経路は、連結枠3に設けられた連結枠側の電源コネクタ41(これを連結枠側コネクタという)と、ロータリ耕耘機4の機枠5に設けられていて前記連結枠側コネクタ41に着脱自在に接続された作業機側の電源コネクタ42(これを作業機側コネクタという)と、電源と連結枠側コネクタ41とを接続するトラクタ側給電用ハーネス43と、電動モータ39と作業機側コネクタ42とを接続する作業機側側給電用ハーネス44とから構成されている。
【0029】
トラクタ車体1の後面下部には該後面からPTO軸45が突出されている。また、トラクタ車体1の後部上には、前部が左右方向の軸心を有する支軸46によって回動自在に支持された左右一対のリフトアーム47が設けられ、左右のリフトアーム47は油圧シリンダからなる昇降シリンダ48を伸縮させることによって支軸46回りに上下に揺動駆動される。
【0030】
三点リンク機構2は、上部の1本のトップリンク49と、下部の左右一対のロワーリンク50とを備え、トップリンク49の前端側はトラクタ車体1の後面上部に設けられたトップリンクブラケット51に枢支連結され、左右ロワーリンク50の前端側はトラクタ車
体1の後部側面に設けられた後車軸ケース52の基部側下部に枢支連結されている。
左右のリフトアーム47の後部にはリフトロッド53の上部が枢支連結され、左右のリフトロッド53の下部は左右のロワーリンク50の中途部に枢支連結されている。
【0031】
トップリンク49と左右ロワーリンク50の後端側に前記連結枠3が取り付けられており、リフトアーム47を上下に揺動させることにより、三点リンク機構2を介して連結枠3が昇降自在とされている。
連結枠3は、図2〜図6に示すように、角パイプによって正面視山形状に形成された主枠材54を有し、この主枠材54の上下中間部には該主枠材54の左右側部を連結する中間枠材55が設けられている。
【0032】
前記主枠材54の頂部には引掛具56が設けられ、主枠材54の左右両側下端部には嵌合受具57が設けられ、左右の嵌合受具57は支持プレート58によって中間枠材55に連結されている。
前記引掛具56は、前部側にトップリンク49の後端側が枢支連結されるトップリンクピン59が設けられ、後部側がロータリ耕耘機4のトップマスト13に設けた上連結ピン14を下方から引っ掛け得るようにフック状に形成されている。
【0033】
この引掛具56後部のフック部分の上部の上方に向けて開放状の溝部60が上連結ピン14を下方から係合可能な係合部とされている。
各嵌合受具57は、図3、図10等に示すように、主枠材54の左右下端に固着された左右一対の側壁57aを有し、左右側壁57aの下面前部は底壁57bによって連結されている。
【0034】
嵌合受具57の左右側壁57aの後端上部は後面上部壁57cで連結されており、左右側壁57aの後端側上下中途部には後方から前方に向けて凹設された凹部61が形成されている。
この左右側壁57aの凹部61間にわたって、該凹部61に沿ってU字状に形成された補強プレート62が設けられている。この補強プレート62の後面側が、ロータリ耕耘機4の下連結ピン16が後方側から嵌合可能な嵌合部63とされている。
【0035】
この補強プレート62の下壁の後端側には、接当壁64が下方側に向けて延設されている。
前記嵌合受具57は上面側、前面側、下面側の底壁57b後方側が開放状とされている。
各嵌合受具57の嵌合部63の左右方向外側方にはそれぞれ左右ロワーリンク50の後端側が連結されるロワーリンクピン65が配置され、ロワーリンクピン65は外側の側壁57aの外面に当板を介して固着されている。
【0036】
また、主枠材54の左右下端には、嵌合受具57の前上部に挿入される補強板66が固着されている。
支持プレート58は左右一対設けられ、上端が中間枠材55に固着された縦壁部58aとこの縦壁部58aの下端から左右方向外方に延出されていて延出側端部が嵌合受具57に固着された横壁部58bとからL字状に形成されている。
【0037】
この左右支持プレート58の縦壁部58a間にはジョイントホルダ67が左右軸廻り回動自在に支持され、このジョイントホルダ67にはベアリングを介してジョイント軸68(ユニバーサルジョイント)の後端側のヨーク69が回転自在に支持されている。
このヨーク69にPIC軸17が嵌脱自在にスプライン嵌合され、ジョイント軸68の前端側のヨーク70にはトラクタのPTO軸45がスプライン嵌合されており、PTO軸45からジョイント軸68を介してPIC軸17に動力が伝達される。
【0038】
前記ジョイントホルダ67には、下方揺動を規制する規制部71が設けられている。
前記各嵌合受具57の左右側壁57a間にはロック部材72とねじりコイルバネからなる付勢バネ73とが組み込まれている。
ロック部材72は板材から形成されていると共に、嵌合受具57の嵌合部63に嵌入した下連結ピン16に下側から係合してその抜止めをすべく後部上面側に上向き開放状の凹部74が形成されたフック形状とされている。
【0039】
ロック部材72は、前後中途部が嵌合受具57の左右側壁57a間に設けられた左右方向の支軸75に回転自在に外嵌され、嵌合受具57の左右側壁57a間の左右方向内方側に配置され、前部には左右方向に貫通形成された貫通孔76が形成されている。
なお、嵌合部63を形成する補強プレート62には、ロック部材72の後部の上部との干渉を避けるための挿通孔77が形成されている。
【0040】
左右のロック部材72は連動部材78によって連動連結されていて、左右ロック部材72は連動して動く。この連動部材78は棒材(丸棒材)等によって形成され、上方に行くに従って左右方向内方に移行する傾斜状の左右の側杆部79と、左右側杆部79の上端同志を連結する連結杆部80と、左右各側杆部79の下端から左右方向外方に延びてロック部材72の貫通孔77に左右方向内方側から挿通される枢軸部81とから正面視略山形状に形成されている。
【0041】
連動部材78の連結杆部80及び枢軸部81は左右方向の軸心を有する。
左右各付勢バネ73はロック部材72の左右方向内方側に配置されていて支軸75に套嵌され、一端側は補強板66の下端に接当し、他端側は連動部材78の枢軸部81上面に接当していて、ロック部材72前部及び連動部材78を下方に付勢している。
前記ロック部材72の後端側上部は前上方に向けて傾斜状の案内面82とされていて、ロータリ耕耘機4の連結時に、該案内面82が下連結ピン16に押圧されると、ロック部材72後部が付勢バネ73の付勢力に抗して下方に逃げ得るようになっている。
【0042】
連動部材78の連結杆部80の左右方向中央部には揺動アーム83の上部が軸心回りに回動自在に外嵌され、揺動アーム83の下部は、連結枠3の中間枠材55に固着されたブラケット84に枢軸85を介して枢支されている。
また、揺動アーム83には操作レバー86が固着されており、この操作レバー86はロータリ耕耘機4を上昇させた時にトラクタの運転席側から操作可能とされている。
【0043】
この操作レバー86を引き上げた状態では、図2に示すように、揺動アーム83が前傾状とされ、連動部材78の側杆部79の軸線Aが揺動アーム83の回動中心(揺動アーム83を枢支する枢軸85の中心)の前方側に位置していて、付勢バネ73の付勢力はロック部材72の後部を上方揺動させるように作用している。
このとき、ロック部材72後端側下部のストッパ部87が補強プレート62の接当壁64下端に接当してロック部材72後部の上方揺動が規制される。また、この状態において、ロック部材72後部の上部が下連結ピン16の嵌合部63への嵌入経路に侵入している。
【0044】
前記構成の連結枠3にロータリ耕耘機4を連結する場合について説明すると、トラクタ車体1をロータリ耕耘機4の前方に位置させ、ロワーリンク50を下げた状態でトラクタ車体1を後退させていく。このとき、操作レバー86は引き上げた状態としておく。
そして、引掛具56が上連結ピン14の下側に達すれば後退を停止し、リフトアーム47を上方揺動させて、三点リンク機構2を介して連結枠3を上昇させ、図6に示すように、引掛具56の係合部60を上連結ピン14に係合させて該上連結ピン14を引掛具56で引っ掛けてすくい上げる。
【0045】
これによって、ロータリ耕耘機4が吊り上げられて該ロータリ耕耘機4が上連結ピン14廻りにトラクタ車体1側に回動し、図10、図11に示すように、左右の下連結ピン16がロック部材72後部の案内面82に接当して該ロック部材72後部を付勢バネ73の付勢力に抗して下方揺動させながら左右嵌合受具57の嵌合部63に嵌入する。
このとき、ロータリ耕耘機4のPIC軸17がジョイント軸68の後端側のヨーク69にスプライン嵌合する。
【0046】
図12に示すように、下連結ピン16が嵌合部63に嵌合すると、下連結ピン16がロック部材72後部から外れ、該ロック部材72後部が付勢バネ73の付勢力によって上方移動して下連結ピン16がロック部材72によってロックされる。
このようにして、連結枠3にロータリ耕耘機4が、図5に示す連結状態に、自動連結される。
【0047】
次に、ロータリ耕耘機4を連結枠3(トラクタ車体1)から離反させる場合には、以下
のようになされる。
先ず、ロータリ耕耘機4を上昇させてトラクタ車体1に接近させておき、図13に示すように、操作レバー86を押し下げる。
すると、揺動アーム83が枢軸85を中心として後方に回動して連動部材78が上方に引き上げられ、これによって、ロック部材72前部が引き上げられると共に該ロック部材72後部が支軸75を中心として下方揺動して下連結ピン16から下方側に外れる。
【0048】
この図13に示す操作レバー86を押し下げた状態では、連動部材78の側杆部79の軸線Aが揺動アーム83の回動中心の後方に位置するので、付勢バネ73の付勢力は揺動アーム83を枢軸85中心に後方に回動させるように作用し、連動部材78の側杆部79が中間枠材55に接当することにより、揺動アーム83の後方への回動が規制される。
これによって、ロック部材72は、その後部が下連結ピン16から下方側に外れた状態に保持されることとなる。
【0049】
そして、連結枠3を下降させてロータリ耕耘機4を接地させ、嵌合受具57を下連結ピン16から外した後、引掛具56を上連結ピン14から外す。
また、本実施形態にあっては、ロータリ耕耘機4を連結枠3に連結させる際において、ロータリ耕耘機4が連結枠3に連結された時に、連結枠側コネクタ41と作業機側コネクタ42とが自動的に接続されるよう構成されている。
【0050】
作業機側コネクタ42は、連結枠側コネクタ41に対する接続位置で動かないように機枠5に固定されている。
連結枠側コネクタ41は、作業機側コネクタ42に対する接続位置から後退自在及び該後退位置から接続位置に進出自在(接続位置に復帰自在)に連結枠3に支持されている。
作業機側コネクタ42の接続位置とは、ロータリ耕耘機4が連結枠3に連結されたときに連結枠側コネクタ41に接続可能な位置であって、機枠5での位置である。また、連結枠側コネクタ41の接続位置とは、ロータリ耕耘機4が連結枠3に連結されたときに作業機側コネクタ42に接続可能な位置であって、連結枠3での位置である。
【0051】
前記作業機側コネクタ42は、図8、図9(c),(d)に示すように、絶縁性を有する合成樹脂等で構成されたハウジング88の前面側に後方に向けて凹設された円柱孔状の左右の各嵌入凹部89内にオス端子90(接続端子)を備えたオスコネクタで構成されている。
この作業機側コネクタ42は、右側のサポートアーム11の基側筒部11a上方側に配置され、右側の連結ブラケット15に固定されたコネクタブラケット91に取付固定されている。
【0052】
前記連結枠側コネクタ41は、図9(a),(b)に示すように、絶縁性を有する合成樹脂等で構成されたハウジング92の後面側に後方突出状に一体形成された円柱状の左右の突出部93内にメス端子94(接続端子)を備えたメスコネクタで構成されている。
この連結枠側コネクタ41の突出部93が前記作業機側コネクタ42の嵌入凹部89に嵌合することにより、オス端子90とメス端子94とが接続されてトラクタ側給電ハーネス43と作業機側給電ハーネス44とが直線接続される。
【0053】
また、この連結枠側コネクタ41は、連結枠3の右側支持プレート58の縦壁部58aの上部の左右方向外側方に配置され、中間枠材55の下面及び右側支持プレート58の縦壁部58aの上部に固定されたガイドレール95に、作業機側コネクタ42に対する接続位置から直線状に後退可能(前後移動可能)に支持されている。
この連結枠側コネクタ41の前面側には取付壁96が形成され、この取付壁96にはピン孔97が左右方向に貫通形成されている。
【0054】
また、図2、図5〜7、図10〜12に示すように、連結枠側コネクタ41は連動機構98介して連動部材78(ロック部材72)に連動連結されている。
この連動機構98は、連動部材78の動きに連動する連動レバー99と、この連動レバー99と連結枠側コネクタ41とを連動連結する連結リンク100とを有する。
連動レバー99は帯板材をL字形に屈曲してなるベルクランクによって構成され、屈曲部分が中間枠材55の正面に固定のブラケット101に枢軸102を介して左右軸回りに
回動自在に枢支されている。この連動レバー99を枢支する枢軸102は、前記揺動アーム83を枢支する枢軸102と同心状に設けられている。
【0055】
この連動レバー99は枢軸102から前上方側に向けて延びる第1アーム部103と、枢軸102から前下方側に向けて延びる第2アーム部104を有し、第1アーム部103の先端側は連動部材78の連結杆部80に軸心回りに回動自在に外嵌されており、第2アーム部104の先端側は連結リンク100の前端側にピン105を介して枢支連結されている。
【0056】
連結リンク100の後端側は連結枠側コネクタ41の取付壁96のピン孔97にピン106を介して枢支連結されている。
前記連結枠側コネクタ41は、図2、図10に示すように、操作レバー86を引き上げた状態では、作業機側コネクタ42に対する接続位置に位置している。
そして、ロータリ耕耘機4を連結枠3に連結すべく、連結枠3でロータリ耕耘機4を吊り上げてロータリ耕耘機4が連結枠3に接近し、図11に示すように、下連結ピン16がロック部材72後部を押し下げると、連動部材78がロック部材72前部によって押し上げられるので、連動レバー99の第1アーム部103が後方側に揺動すると共に第2アーム部104が前方側に揺動し、連結リンク100が前方に引動される。これによって、連結枠側コネクタ41が作業機側コネクタ42に対する接続位置からガイドレール95に沿って後退(前方移動)する。
【0057】
そして、図12に示すように、下連結ピン16が嵌合部63に嵌合すると、ロック部材72の後部が上方揺動すると共に該ロック部材72の前部によって連動部材78が引き下げられる。すると、連動レバー99の第1アーム部103が前方側に揺動すると共に第2アーム部104が後方側に揺動し、連結リンク100が後方に押動される。これによって、連結枠側コネクタ41が後退した位置から作業機側コネクタ42に対する接続位置へと進出(後方移動)して作業機側コネクタ42に接続する。
【0058】
したがって、嵌合部63に嵌合した下連結ピン16に対してロック部材72が係合してロータリ耕耘機4が連結枠3に連結されると同時に、接続位置から後退した連結枠側コネクタ41が作業機側コネクタ42へと進出して該作業機側コネクタ42に接続される。
すなわち、本実施形態にあっては、連結枠側コネクタ41と作業機側コネクタ42との接続が、ロータリ耕耘機4が連結枠3に連結される連結位置に達したと同時に行われるのではなく、ワンテンポ遅らせて連結枠側コネクタ41と作業機側コネクタ42との接続が行われる。
【0059】
また、従来のように、連結枠側コネクタ41に対して作業機側コネクタ42が円弧状の軌跡を描いて接続されるのではなく、本実施形態では、連結位置に位置していて動かない状態のロータリ耕耘機4に設けられた作業機側コネクタ42に対して連結枠側コネクタ41が接続方向に直線的に接近して接続される。これによって、連結枠側コネクタ41と作業機側コネクタ42との接続の信頼性が向上する。
【0060】
また、本実施形態では、連結枠3に装備されているロック部材72に連動させて連結枠側コネクタ41を接続位置に対して後退・復帰動作させるようにしているので、すなわち、前記ロック部材72を利用して連結枠側コネクタ41の後退・復帰動作を行っているので、連動機構98の簡素化を図ることができる。
また、ロック部材72に連動させて連結枠側コネクタ41を後退・復帰動作させるに際して、本実施形態では、左右ロック部材72を連動する連動部材78と連結枠側コネクタ41とを連動連結しているので、さらに連動機構98の簡素化を図ることができる。
【0061】
また、ロータリ耕耘機4を連結枠3から離反させる際において、図13に示すように、操作レバー86を押し下げることにより、連結枠側コネクタ41はロック部材72の下方揺動に連動して接続位置から後退して作業機側コネクタ42から離反する。
なお、本実施形態では、作業機側コネクタ42を接続位置で固定し、連結枠側コネクタ41を接続位置から後退・復帰自在に支持したが、これに限定されることなく、連結枠側コネクタ41を接続位置で固定し、作業機が連結枠3に接近する動作に連動して作業機側コネクタ42を後退させ且つ作業機が連結枠3に連結される時に作業機側コネクタ42を
進出させて連結枠側コネクタ41に接続させるようにしてもよい。
【0062】
なお、トラクタに装着される作業機(インプルメント)としてロータリ耕耘機4を例示したが、これに限定されることはなく、電動モータやセンサやライト等の電気機器を備えた作業機であれば何であってもよい(例えば、代掻きハロー、肥料散布機、播種機等)。
【符号の説明】
【0063】
1 トラクタ車体
3 連結枠
4 作業機(ロータリ耕耘機)
14 被係合部(上連結ピン)
16 嵌合部材(下連結ピン)
41 連結枠側の電源コネクタ
42 作業機側の電源コネクタ
60 係合部
63 嵌合部
72 ロック部材
78 連動部材
98 連動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタ車体(1)の後部に昇降自在に装着された連結枠(3)を設け、この連結枠(3)の上部に設けた係合部(60)を作業機側に設けた被係合部(14)に係合させた状態で連結枠(3)を上昇させて作業機(4)を吊り上げることにより、作業機(4)が連結枠(3)に接近するように被係合部(14)を中心として揺動して連結枠(3)に自動連結されるように構成し、この作業機(4)が連結枠(3)に連結された時に、作業機(4)側に設けた電源コネクタ(42)が連結枠(3)側に設けた電源コネクタ(41)に自動接続されるように構成された作業機連結装置において、
連結枠(3)側又は作業機(4)側の一方の電源コネクタ(41)を他方の電源コネクタ(42)に対する接続位置から後退可能に支持し、
作業機(4)が連結枠(3)に接近する動作に連動して該一方の電源コネクタ(41)を前記接続位置から後退させ且つ作業機(4)が連結枠(3)に連結される時に該一方の電源コネクタ(41)を接続位置へと進出させて他方の電源コネクタ(42)に接続させる連動機構(98)を設けたことを特徴とする作業機連結装置。
【請求項2】
前記連結枠(3)の下部に、作業機(4)が連結枠(3)に連結される時に作業機(4)側に設けられた嵌合部材(16)が嵌合する嵌合部(63)と、この嵌合部(63)から嵌合部材(16)が離脱するのを阻止するロック部材(72)とを設け、
前記嵌合部材(16)は作業機(4)が連結枠(3)に接近する際にロック部材(72)を下方揺動させて嵌合部(63)に嵌合し、且つ該嵌合部材(16)が嵌合部(63)に嵌合するとロック部材(72)が上方揺動して嵌合部材(16)の離脱を阻止するように構成し、
前記連動機構(98)は、ロック部材(72)が下方揺動する際に連結枠(3)側の電源コネクタ(41)を接続位置から後退移動させ、ロック部材(72)が上方揺動する際に連結枠(3)側の電源コネクタ(41)を接続位置へと進出移動させるものであることを特徴とする請求項1に記載の作業機連結装置。
【請求項3】
前記嵌合部(63)、嵌合部材(16)及びロック部材(72)を左右一対設け、連結枠(3)に左右のロック部材(72)を連動連結する連動部材(78)を設け、
この連動部材(78)と連結枠(3)側の電源コネクタ(41)とにわたって前記連動機構(98)を設けたことを特徴とする請求項2に記載の作業機連結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−231705(P2012−231705A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101291(P2011−101291)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】