説明

作業機

【課題】 エンジンから作業装置への伝動系に工夫を凝らして、クラッチとしての耐久性を向上させ、起立している雑草に接触する不都合な事態を回避することが可能な作業機を提供する。
【解決手段】 エンジン5と、前後車輪11,12間にモーア2を配置し、作業用動力取出軸52をエンジン5の下方で前車軸ケース75の上方に配置し、前記作業用動力取出軸52に油圧摩擦多板式クラッチ機構54を備えてある作業機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後車輪間に作業装置を備えた作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の作業機においては、前後車輪間に設けた作業装置としてのモーア(公報内番号:B)に対して、上方のエンジン(公報内番号:5)から駆動力を伝達するに、機体フレーム下方に作業装置に連結すべく作業用動力取出軸としての伝動軸(公報内番号:16)を配置し、下方に位置する伝動軸と上方に位置するエンジン出力軸とに亘ってベルト伝動機構(公報内番号:14)を設けていた。
ベルト伝動機構には、ベルトテンションクラッチ(公報内番号:15)を設けていた(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−262635号公報(段落〔0015〕,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1で示された従来構造では、ベルトテンション式クラッチが設けられているが、ベルトテンション式クラッチとしては、耐久性が十分でない面があるとともに、エンジン出力軸と伝動軸との間の軸間距離を、ベルトテンション式クラッチが装備できるだけの大きなものとする必要がある。
エンジンの設置高さはエンジンボンネット内での配置構成等の他の要因によって規制を受けるところから、自由に高さを設定できず、その為に、伝動軸を低い位置に設ける必要があった。
【0004】
そうすると、ベルト伝動機構が地上高低く設けられることとなり、起立している雑草
に接触したり、刈取り巻き上げられた刈草等がベルトやプーリに絡み付く等の不都合な事態が生じ易くなる傾向にあった。
【0005】
本発明の目的は、エンジンから作業装置への伝動系に工夫を凝らして、クラッチとしての耐久性を向上させ、起立している雑草に接触する不都合な事態を回避することが可能な作業機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、エンジンと、前後車輪間に位置する作業装置とに亘って作業用伝動装置を架設し、作業用伝動装置をエンジンの下方で前車軸ケースの上方に配置し、前記作業用伝動装置に油圧式クラッチ機構を備えてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
ベルトテンション式クラッチを廃止し、油圧式クラッチ機構を採用することにより、ベルトテンション式クラッチの装備に必要であったスペースが不要になるので、エンジン出力軸と作業用伝動装置(油圧式クラッチ機構)との距離を接近させることができ、作業用伝動装置(油圧式クラッチ機構)を前車軸ケースの上方に設けることができた。これにより、地面の石や障害物、起立している雑草や刈草等が作業用伝動装置(油圧式クラッチ機構)に接触し難くなるようにすることができた。
一般に、外部に露出することが多いベルトテンション式クラッチに比べて、油圧式クラッチ機構は作業用伝動装置のケース内に収容することが容易に行えるので、油圧式クラッチ機構自身の耐久性も十分なものにすることができる。
【0008】
〔効果〕
これによって、クラッチ機構として耐久性の高いものを導入でき、起立している雑草等の影響を受け難いものとすることができた。
【0009】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、請求項1に係る発明において、油圧式クラッチ機構からの動力伝達を受けて前記作業装置に出力する作業用動力取出軸を、前後向き姿勢で前車軸ケースのローリング支点位置に配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
作業用動力取出軸を前車軸ケースの上方に設けるについて、ローリング支点位置に配置する構成によって、ローリング支点を作業用動力取出軸で兼用化でき、構造の簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔草刈り機の構造〕
作業機の一例である乗用型のミッドマウント型芝刈り機について説明する。
この芝刈り機は、乗用型の走行機体1の前車輪11と後車輪12との間に、作業装置としてのモーア2が昇降操作可能に吊り下げ装着されるとともに、機体後部に平行四連式のリンク機構13を介して集草容器6が昇降自在に連結された構造となっている。
【0012】
走行機体1の前部にはエンジン5が搭載され、このエンジン5の前部出力軸50から取出された動力がベルト伝動機構51を介して機体前部の下方に配備した作業用動力取出し軸52に伝達され、この作業用動力取出し軸52の動力がモーア2に軸伝達されている。
後車輪12は、機体フレーム10に固定されたミッションケース14の左右両側から、後方下方へ向けて延出された左右一対の後車軸ケース15の下端部に、左右の後車輪12が各別に片持ち状態で軸支されており、左右の後車軸ケース15同士の間に形成された空間に刈草排出用のダクト16が固定されている。
【0013】
図1に示すように、集草容器6は、集草位置で走行機体1側に向き、ダクト16の後端に外嵌して接続される入口開口61とその反対側に向く出口開口62とを備えて全体が箱状に形成された容器本体60と、その容器本体60に形成された出口開口62を開閉自在な後部蓋63とから構成されている。
上記のようにリンク機構13に連結された集草容器6は、走行機体1に装備されているモーア2から風力搬送されてきた刈草を収集するように走行機体1側の刈草搬送用のダクト16に接続される集草位置と、ダクト16から分離された排出位置とにわたって位置移動自在に構成してある。
【0014】
〔モーアの構成〕
図2及び図3に示すように、モーア2は、モーアハウジング20内に2枚の回転ブレード21を左右に並列した構造のものであり、左側のブレード21が時計回りに駆動されるのに対して、右側のブレード21が反時計回りに駆動されることで、刈草がブレード21の回転によって発生した搬送風に乗ってモーアハウジング20の後部中央近くに形成した出口20Aから排出されるリアディスチャージ式のモーアに形成されている。出口20Aから排出される刈草は、左右の後車輪12の間に配備されたダクト16を介して集草容器6に導かれるようになっている。
【0015】
このモーア2は、図1及び図2に示すように、上端側を機体フレーム10側に枢着した前後一対の揺動リンク23の下端側に昇降自在に吊り下げ連結されており、刈取作業状態では、モーアハウジング20の下端部に配備されたゲージ輪24を接地させた状態で刈取走行を行うように構成されている。
揺動リンク23のうち、後方の揺動リンク23の一部が、機体フレーム10上に配備された運転座席7横の昇降操作レバー25に対して、連結杆26で連動連結されており、昇降操作レバー25での揺動操作により、人為操作力により上げ下げ操作可能に構成されている。
【0016】
図3乃至図5に示されるように、モーア2の左右のブレード21を軸支するブレード軸22は、刈刃駆動ケース3に内装された平ギヤ40からなるギア対によって構成された伝動機構4によって互いに連動連結されている。
刈刃駆動ケース3は、ブレード軸22を内装する筒軸ケース30と、その筒軸ケース30の上端側同士を連結する接続ケース31とで構成されており、接続ケース31の内部空間に伝動用の平ギヤ40が内装されている。
【0017】
図3及び図4に示すように、接続ケース31の中間部にはギヤボックス32が固定してあり、このギヤボックス32に、機体前方側の作業用動力取出し軸52に連結された伝動軸53の軸端に形成されたベベルギヤ33と、そのベベルギヤ33に咬合するベベルギヤ34を軸端に備えた入力軸35とが装備されている。
ギヤボックス32から突出する入力軸35部分に形成されたスプラインとスプライン嵌合する入力用平ギヤ41のボス部41aが、接続ケース31の中間部にボールベアリング44を介して軸支されており、その入力用平ギヤ41と、一方のブレード軸22の軸端にスプライン嵌合した出力用平ギヤ42との間に、奇数個の、つまり一つの中継用平ギヤ43を介装してある。入力用平ギヤ41と、他方のブレード軸22の軸端にスプライン嵌合した出力用平ギヤ42との間には、偶数個の、つまり二つの中継用平ギヤ43を介装してある。
伝動機構4を構成する平ギヤ40は、上記の各平ギヤ41,42,43によって構成されている。このように平ギヤ40からなる伝動機構4を用いて連動連結された左右のブレード21は、夫々の回転軌跡が部分的に重合するように配設されているが、ブレード21同士の衝突は避けられるように、図3に示す如く互いの位相をずらして組み付けてある。
【0018】
上記の各平ギヤ41,42,43のうち入出力用の平ギヤ41,42は、そのボス部41a,42aがボールベアリング44を介して夫々接続ケース31の内部に軸受けされている。また、入出力用の平ギヤ41,42のボス部41a,42aの内周側における入力箇所及び出力箇所にはスプラインが形成されていて、スプラインが形成された入力軸35及びブレード軸22の上端部に対して抜き差し可能に構成されている。
各平ギヤ41,42,43の夫々は、そのボス部41a,42a,43aと歯部41b,42b,43bとが厚肉に形成されているものの、その中間のハブ部分は薄肉に形成されている。
中継用平ギヤ43の枢支軸45は、夫々、上端部が最大径で、ベアリングに軸支される軸中間部がそれよりも小径で、その下端側はベアリングの内径よりも小径に形成してあって、上方から抜き差しするように構成されている。
【0019】
ブレード軸22を内装する筒軸ケース30と接続ケース31とは、個別に形成されているものの、夫々のケース端に形成した接続フランジ部30A,31Aで一体的にボルト連結されるように構成されており、筒軸ケース30の下端側は、筒軸ケース部分の径が上端側よりも大きく形成されているとともに、その下端側にさらに大きなフランジ部分30Bを一体形成してあって、モーアデッキ20Bに対してボルト連結可能に構成してある。
このように、刈刃駆動ケース3は、その全体が組み立てられた状態でモーアデッキ20Bにボルト止めすればよいので、組み立ての際の作業性がよい。
【0020】
図3、及び図6、図7に示すように、モーアハウジング20のデッキ20B部分では、そのモーアデッキ20Bの外周縁近くで、図3における図中のa点近くから徐々に上向きに隆起する隆起部分20Cが形成されている。この隆起部分20Cは、両ブレード軸22の軸心同士を結ぶ仮想線分x付近が刈草排出開始箇所と考えると、およそ、4分の3周近くの範囲にわたって緩やかに上向き傾斜面を形成しており、出口20Aから後続のダクト16に刈草をスムースに引き渡すように構成されている。
【0021】
後車輪12への伝動構造について説明する。図1及び図7に示すように、エンジン5の後部より伝動軸36を後方に向けて延出するとともに、伝動軸36に静油圧式無段変速装置37を連結し、静油圧式無段変速装置37からの動力を、副変速機構38を介して後車輪伝動機構39に伝達してある。後車輪伝動機構39は、後車軸ケース15の横向きケース部15Aに装備される横向き後車軸46と、横向き後車軸46の両端に配備された油圧摩擦多板式のサイドクラッチ機構47と、サイドクラッチ機構47からの動力伝達を受ける後車輪チェーン伝動機構48とで構成してある。
後車輪チェーン伝動機構48は、後車軸ケース15の後車輪チェーンケース部15B内に装備してある。
【0022】
静油圧式無段変速装置37の構成について説明する。図7及び図8に示すように、静油圧式無段変速装置37は、可変容量式の油圧ポンプ37Aと容量固定式の油圧モータ37Bと、油圧ポンプ37Aと油圧モータ37Bとに連通する油路を備えた油圧ブロック37Cとで構成してある。
油圧ポンプ37Aの入力側には、冷却ファン66を設けてあり、この冷却ファン66を油圧ポンプ37Aへの伝動軸36に取付けて、伝動軸36と一体回転ささせるように構成してある。
【0023】
伝動軸36の油圧ポンプ37Aを貫通した突出部分には、ギヤ伝動機構67が取付構成してあり、ギヤ伝動機構67を介して油圧ポンプ68が伝動軸36より動力を受け入れるように構成してある。
【0024】
一方、図7及び図8に示すように、油圧モータ37Bの出力軸37bの軸端部分には副変速機構38が取り付けてあり、副変速機構38は、油圧モータ37Bの出力軸37bに取付られた大小二つの出力ギヤ38Aと、出力ベベルギヤ軸70にスライド自在に装着されている入力ギヤ38Bとで、高低二段に減速可能なギヤ変速機構を構成してある。
油圧モータ37Bの出力軸37bで前車輪11側に向けて延出した部分には、走行ブレーキ73が設けてある。
【0025】
副変速機構38の出力ベベルギヤ軸70に出力ギヤ70Aが取り付けてあり、出力ベベルギヤ軸70に平行に中継軸71、前車輪出力軸72が架設してあり、前車輪11への出力を行うようにしてある。
中継軸71には大小二つのギヤ部71a、71bを一体形成しており、前車輪出力軸72にクラッチギヤ72Aをスライド回転自在に取付け、中継軸71の小ギヤ部71bとクラッチギヤ72Aとを咬合離間可能に構成して、前車輪11へのクラッチ機構を構成している。これによって、駆動力を前車輪11に伝達して、4輪駆動を可能にし、かつ、前車輪11への駆動力を断って2輪駆動形態に切り換え可能に構成してある。
【0026】
後車輪伝動機構39への伝動系について説明する。図7及び図8に示すように、
副変速機構38の出力ベベルギヤ軸70と後車軸46とに亘ってベベルギヤ伝動機構74を設けてあり、後車輪軸49への伝動系を構成してある。
後車軸46の左右両端に後サイド軸46A、46Aを相対回転自在に連結するとともに、後車軸46と後サイド軸46Aとの接続部位にサイドクラッチ機構47を設けてある。このように、サイドクラッチ機構47によって、サイドブレーキを併用する場合に比べて穏やかな旋回が可能であり、圃面を荒らすことが少ない。
つまり、後車軸46の軸端に出力側の部材としてクラッチボディ47Aを取り付けるとともに、後サイド軸46Aにクラッチケース47Bを装着し、クラッチボディ47Aとクラッチケース47Bとの間に摩擦多板47Cを配置して、サイドクラッチ機構47を構成してある。
【0027】
図7及び図8に示すように、後車軸ケース15を構成する横向きケース部15Aの両端に後車輪チェーンケース部15Bを連結し、後車輪チェーンケース部15B内に後サイド軸46Aを臨ませている。後車輪チェーンケース部15B内に臨ませた後サイド軸46Aには、出力側チェーンスプロケット48Aが一体形成してあり、後車輪チェーンケース部15B内の先端部に軸支されている入力側チェーンスプロケット48Bとの間に無端チェーン(図示せず)を巻回して、後車輪12に伝動すべく構成してある。
【0028】
後車輪12を後車輪軸49に取付け、その後車輪軸49を後車輪チェーンケース部15Bに回転自在に支持してある。後車輪軸49と入力側チェーンスプロケット48Bの取付軸との間に減速ギヤ機構を設けて、後車輪12に動力伝達可能に構成してある。
【0029】
以上記載したように、後車輪12への伝動系に油圧摩擦多板式のサイドクラッチ機構47を設けた。
従来は、図示してはいないが、クラッチボディとクラッチケースとを互いに離間する方向に付勢バネによって付勢するとともに、クラッチボディに対してカム機構を作用させて、付勢バネ力に抗して、クラッチボディとクラッチケースとを互いに近接する方向に、駆動する構成を採っていた。
【0030】
カム機構に対しては、ワイヤ機構を介して連係された手元操作具が備えられており、手元操作具で操作する形態を採っていた。
そうすると、耐久性において操作系が十分ない虞れがあり、かつ、クラッチ容量を増大するにも困難を伴うことがあった。
これに対して、本願発明においては、油圧式の摩擦多板サイドクラッチ機構47を採用したので、耐久性においてもクラッチ容量としても十分なものを提供することができた。
【0031】
次に、エンジン5からモーア2への作業用伝動装置Aについて説明する。図1、図5及び図6に示すように、作業用伝動装置Aは、前記したようにエンジン動力を受けるベルト伝動機構51と、ベルト伝動機構51からの動力伝達を受ける油圧式摩擦多板クラッチ54と、油圧式摩擦多板クラッチ54からの動力伝達を受ける作業用動力取出軸52と、作業用動力取出軸52からの動力をギヤボックス32に支持された伝動軸53に伝達する中継軸55とで、構成される。
【0032】
ベルト伝動機構51について説明する。図5及び図6に示すように、ベルト伝動機構51は、エンジン5の前部出力軸50に取り付けた出力プーリ56と入力プーリ57と、両プーリ56、57間に掛け渡された伝動ベルト58と、伝動ベルト58に対しするテンション機構59とで構成してある。
【0033】
入力プーリ57の取付構造について説明する。図5及び図6に示すように、油圧式摩擦多板クラッチ54を収納したクラッチケース54Aの前端部にボス部54aを前向きに延出し、このボス部54aとこのボス部54aより突設された作業用動力取出軸52の延出端とに亘って入力プーリ57を、ベアリング60を介して回転自在に支持してある。
【0034】
テンション機構59について説明する。図5及び図6に示すように、クラッチケース54Aに取付ボス部54aを横向きに延出するとともに、取付ボス部54aに支軸64を取付てある。支軸64の取付ボス部54aから延出された部分にテンションアーム65が回転自在に支持されている。テンションアーム65の先端には伝動ベルト58に押圧作用するテンション輪65Aが回転自在に取り付けてある。テンションアーム65から補助アーム65Bが直角方向に延出してあり、補助アーム65Bに付勢バネ65Cが連係してあり、テンション輪65Aを伝動ベルト58に押圧付勢してある。
【0035】
油圧式摩擦多板クラッチ54について説明する。図6に示すように、油圧式摩擦多板クラッチ54は、作業用動力取出軸52にベアリング66を介して回転自在に支持された入力クラッチ体67と、入力クラッチ体67から動力伝達を受けるクラッチボディ68と、入力クラッチ体67とクラッチボディ68との間に介在されて動力伝達に寄与する摩擦多板69とで構成してある。
クラッチボディ68には、押圧ピストン70が収納してあり、この押圧ピストン70は復帰バネ71によって、摩擦多板69から離間する状態に付勢され、作動油の油圧を受けて摩擦多板69に押圧作用するように構成してある。
摩擦多板69が押圧ピストン70によって押圧されると、入力クラッチ体67からクラッチボディ68に動力伝達が行われる。
【0036】
入力クラッチ体67は、前端部67aの外周面と入力プーリ57のボス部57Aの内周面との間に形成されたスプライン嵌合部によって、動力伝達可能に構成してある。
一方、クラッチボディ68は、クラッチボディ68の内向き面68Aと作業用動力取出軸52の外周面との間でスプライン嵌合されて、出力伝達可能に構成してある。
以上のような構成によって、エンジン動力は、ベルト伝動機構51を介して油圧式摩擦多板クラッチ54に伝達され、油圧式摩擦多板クラッチ54から作業用動力取出軸52に出力される。
【0037】
次に、前車軸ケース75の取付構造について説明する。図6に示すように、油圧式摩擦多板クラッチ54を収納したクラッチケース54Aに対して、前連結体76を取付固定するとともに、前連結体76の一部を筒状部76Aに形成して後方に延出し、筒状部76Aを油圧式摩擦多板クラッチ54より後方に延出された作業用動力取出軸52を覆う位置に配置してある。
【0038】
筒状部76Aより後方側には、同じく作業用動力取出軸52を覆う筒状の後連結体77が配置してあり、後端に設けた取付フランジ部77Aから前方に向けて筒状部77Bが延出されている。後連結体77の筒状部77Bは、前半部分を前連結体76の筒状部76Aの内部に配置し、外周面を前連結体76の筒状部76Aの内周面に摺接する状態に配置してある。
【0039】
図6に示すように、取付フランジ部77Aの内周面と作業用動力取出軸52の外周面との間には、ベアリング78を介在させて、前連結体76と後連結体77とを作業用動力取出軸52に対して相対回転自在な構成としてある。
つまり、機体フレーム6より前ブラケット(図示せず)と後ブラケット79とを立ち下げ、前ブラケットと前連結体76とを連結固定し、後ブラケット79と後連結体77の取付フランジ部77Aとを連結固定している。
以上のような構成によって、作業用動力取出軸52、油圧式摩擦多板クラッチ54、前後連結体76、77を機体フレーム6に取付支持することができる。
【0040】
一方、前後連結体76、77の下方には、前車軸ケース75が左右方向に延出されて配置されている。前車軸ケース75の上面には筒ボス75Aが取付固定されており、筒状ボス75Aは軸線を前後向きに設定してある。
筒状ボス75Aを後連結体77の筒状部77Aに外嵌して、後連結体77に対して、筒状ボス75A及び前車軸ケース75を作業用動力取出軸52の軸線X周りでローリング作動可能に構成してある。
【0041】
図6に示すように、筒状ボス75Aは、前端を前連結体76の筒状部76Aの後端に当接させ、後端を後連結体77の筒状部77Aに形成された段部77aで受止られて、前後方向への移動が規制されている。
【0042】
以上のような構成によって、作業用動力取出軸52が前車輪ケース75のローリング支点位置に位置することとなり、作業用動力取出軸52は前車輪ケース75のホルダーとして機能する。
また、ベルト伝動機構51を前車軸ケース75より上方に位置させることができるので、地上高を十分に採った位置に配置でき、ベルトに草等が接触する機会を抑制でき、ベルト損傷等を回避しやすくなった。
【0043】
〔別実施形態〕
次に、本発明の別の実施形態を列記する。
[ 1] 作業用伝動装置Aとして、エンジン5と作業用動力取出軸52とをベルト伝動機構によって連動させているが、チェーン伝動機構、及び、ギヤ伝動機構等を利用してもよい。
【0044】
[ 2] 作業用動力取出軸52としては、前車軸ケース75より上方に位置するものであれば、前車軸ケース75のローリング支点X位置に位置させなくともよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】ミッドマウント型草刈り機の全体側面図
【図2】ミッドマウント型草刈り機の全体平面図
【図3】リアディスチャージモーアの平面図
【図4】リアディスチャージモーアの伝動系を示す左右方向での縦断面図
【図5】ベルト伝動機構を示す正面図
【図6】油圧摩擦多板式クラッチ機構と作業用伝動装置を示す縦断側面図
【図7】後車輪への伝動系にサイドクラッチ機構を設けてある状態を示す構成図
【図8】後車輪への伝動系にサイドクラッチ機構を設けてある状態を示す横断平面図
【符号の説明】
【0046】
2 モーア(作業装置)
5 エンジン
11 前車輪
12 後車輪
52 作業用動力取出軸
54 油圧摩擦多板式クラッチ機構(油圧式クラッチ機構)
75 前車軸ケース
A 作業用伝動装置
X ローリング支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前後車輪間に位置する作業装置とに亘って作業用伝動装置を架設し、作業用伝動装置をエンジンの下方で前車軸ケースの上方に配置し、前記作業用伝動装置に油圧式クラッチ機構を備えてある作業機。
【請求項2】
油圧式クラッチ機構からの動力伝達を受けて前記作業装置に出力する作業用動力取出軸を、前後向き姿勢で前車軸ケースのローリング支点位置に配置してある請求項1記載の作業機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−232785(P2009−232785A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84559(P2008−84559)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】