説明

作業用車両における作動油タンクの冷却構造

【課題】効果的に作動油タンク内の作動油を冷却する。
【解決手段】作動油タンク11内に、油圧駆動機器に作動油を供給する送り管18が接続された送り油室14と、油圧駆動機器から作動油を戻す戻り管17が接続された戻り油室13とに区画するバッフル板15を設けるとともに、バッフル板15の上部に作動油を送り油室14から戻り油室13に送る連通部16を形成し、バッフル板15に中空部を形成して空冷室21とする区画壁冷却部12Aを設け、空冷室21に冷却空気を送る空冷送気管22を、送り油室14の作動油に浸漬させて冷却する戻り油室冷却部12Bを設けるとともに、空冷室21から冷却空気を排出する空冷排気管23を、戻り油室14の作動油に浸漬させて冷却する送り油室冷却部12Cを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用車両に設けられた油圧駆動機器の作動油タンクの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧駆動機器に循環される作動油を溜める作動油タンクは、作動油が高圧に圧縮されて昇温されることから、これを冷却するために様々な対策がとられている。たとえば特許文献1のように、タンクの外壁面に凹凸を形成して表面積を増大させ、冷却効果を増大させるものや、特許文献2のように、タンク本体内にサブタンクを設け、サブタンク内に高温の作動油を戻すリターン管を接続し、サブタンクの底部に形成した導出口からタンク本体内に作動油を循環させるようにしたもの、特許文献3のように、冷却空気を通す通路をタンクを貫通して形成したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平5−2390号公報
【特許文献2】実開平5−69401公報
【特許文献3】特開2006−38079公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年では、大きい駆動力が必要な油圧機器を搭載する作業用車両が増え、そのため戻り配管から戻されるリターン油の昇温が大きくなったため、さらに効果的な冷却機構が求められている。
【0005】
本発明は上記問題点を解決して、効果的にタンク内の作動油を冷却できる作業用車両における作動油タンクの冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、油圧駆動機器を搭載した作業用車両における作動油タンクの冷却構造であって、
作動油タンク内を区画するバッフル板を設けて、油圧駆動機器に作動油を供給する送り管が接続された送り油室と、油圧駆動機器から作動油を戻す戻り管が接続された戻り油室とを形成するとともに、当該バッフル板の周部所定位置に前記戻り油室から前記送り油室に作動油を送る連通部を形成し、
前記バッフル板内で全面にわたる中空部を空冷室とするとともに、当該空冷室に冷却空気を循環させる空冷配管を接続した区画壁冷却部を設けたものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、
空冷配管を、作動油タンクの前壁からバッフル板の前面板に貫設されて空冷室に冷却空気を送る空冷送気管と、作動油タンクの後面板からバッフル板の後壁に貫設されて前記空冷室の冷却空気を排出する空冷排気管とで構成し、
戻り油室の作動油中に浸漬された前記空冷送気管を介して作動油を冷却する送り油室冷却部を形成し、
送り油室内の作動油中に浸漬された前記空冷排気管を介して作動油を冷却する戻り油室冷却部を形成したものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の構成において、
作動油タンクは、冷却ファンを具備したエンジンの側方に設置され、
前記冷却ファンにより形成される冷却空気流が、空冷送気管から空冷室を介して空冷排気管に流れるように構成されたものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、作動油タンク内を戻り油室と送り油室とを区画するバッフル板を設けるとともに、戻り油室から送り油室に作動油を流動させる連通口を形成し、前記バッフル板内の全面にわたって中空部を空冷室として、この空冷室に冷却空気を循環させて作動油を冷却する空冷配管を設けたので、戻り油室内と送り油室内で作動油がバッフル板の表面および裏面に接することにより、効果的に作動油を均一に冷却することができる。そして作動油タンク内では作動油の全深さ方向にわたってバッフル板が接することにより、深さ方向に生じやすい作動油の温度むらを解消することができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、冷却空気を空冷室に送る空冷送気管を介して、戻り油室の高温の作動油を効果的に作動油を冷却し、さらに空冷室から排出空冷排気管を介して排出される冷却空気を利用して、送り油室の作動油を効率よく冷却することができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、作動油タンクをエンジンの側方に配置し、エンジンおよびラジエータを冷却する冷却ファンの吸引力を利用して、空冷送気管から空冷室を介して空冷排気管に冷却空気を流送するので、冷却空気を強制的に送る駆動装置も不要で、効率よく作動油の冷却を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る作動油タンクの冷却構造の実施例1を示す概略斜視図である。
【図2】作動油タンクの平面視の断面図である。
【図3】作動油タンクの側面視の断面図である。
【図4】フォークリフトの平面視の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施例1]
以下、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図4において、31はたとえば作業用車両であるフォークリフトの車両本体で、車両本体31の前部に左右一対の走行駆動用前輪32が配置されるとともに、後部に左右一対の操舵用後輪33が配置されている。また車両本体31の前部には、荷役装置であるリフト装置34が設置されており、このリフト装置34は、左右一対のリフトシリンダ35およびリフトチェーン(図示せず)を介して内外マスト36に案内されるリフトブラケット37を昇降駆動し、リフトブラケット37に取り付けられたフォーク38を昇降移動させる。また内外マスト36を前後に傾動させる左右一対のチルトシリンダ39が配置され、チルトシリンダ39により内外マスト36を介してフォーク38を上下に傾動調整することができる。また車両本体31の前部寄りに配置されたフロントパネル41の左寄りにステアリングハンドル42や走行用、荷役用の操作レバー(図示せず)が配置される。ステアリングハンドル42の後部に設置された座席シート40の下方の車両本体31内には、油圧ポンプや前輪32を駆動するエンジン43が内蔵されており、エンジン43の後部に、このエンジン41とラジエータ44を冷却する冷却ファン45が設置されている。
【0014】
車両本体31の右側部でエンジン43の側方に、本発明に係る作動油タンク11が設置されている。そして作動油タンク11から作動油が、油圧ポンプを介して油圧駆動機器であるリフトシリンダ35やチルトシリンダ39、操舵用車輪を操舵するステアリングシリンダ(図示せず)などに供給されて駆動されるとともに、これら油圧駆動機器から排出された作動油が作動油タンク11に戻されて貯留される。
【0015】
作動油タンク11は、図1〜図3に示すように、作動油タンク11内の中央部で、底部から中間部横断方向にバッフル板15が取り付けられて、前部の戻り油室13と後部の送り油室14とに区画されている。そしてバッフル板15の上部に、戻り油室13から送り油室14に作動油を流動させる連通口16が形成されている。そして作動油タンク11前部の戻り油室13に、左側壁11Lを貫通して油圧駆動機器から排出された戻り作動油を作動油タンク11に循環させる戻り管(リターンパイプ)17が接続され、作動油タンク11内に突出された戻り管17にフィルタ17Fが取り付けられている。また作動油タンク11後部の送り油室14に、天壁11Uを貫通して2本の送り管18が垂下され、これら送り管18に下端部にフィルタ18Fがそれぞれ取り付けられている。なお、連通口16はバッフル板15の上部に限るものではなく、バッフル板の周部に選択的に形成することができる。
【0016】
この作動油タンク11には、作動油を冷却するために、3つの冷却部、すなわち区画壁冷却部12A、戻り油室冷却部12Bおよび送り油室冷却部12Cを具備している。
区画壁冷却部12Aは、作動油タンク11内の中央部で、底部から中間部横断方向に、戻り油室13と送り油室14とを区画するバッフル板15を内部全面にわたって中空部構造とし、この中空部を空冷室21としたものである。
【0017】
戻り油室冷却部12Bは、作動油タンク11の前壁11Fとバッフル板15の前面板15fとに貫通接続されて空冷室17に冷却空気を送る伝熱管構造の複数の空冷送気管22を、戻り油室13内の戻り作動油中に浸漬するように配置されている。
【0018】
送り室冷却部12Cは、作動油タンク11の後壁11Bとバッフル板15の後面板15bとに貫通接続されて空冷室17から冷却空気を排出する伝熱管構造の空冷排気管23を、戻り油室13内の戻り作動油中に浸漬するように配置されている。
【0019】
上記構成において、作動油タンク11内の作動油は、送り油室14から送り管18を介して油圧ポンプに送られ、油圧ポンプから各油圧駆動機器に送られる。各油圧駆動機器から排出された高温の戻り作動油は、戻り管17から作動油タンク11の戻り油室13に送られる。
【0020】
作動油タンク11内では、バッフル板15により戻り油室13と送り油室14とが区画されていることから、戻り管17から戻された高温の戻り作動油が、直接送り油室14に送られて送り管14から吸引されることなく、放熱に十分な時間滞留される。
【0021】
また車両本体31では、エンジン43およびラジエータ44を冷却する冷却ファン45により、冷却空気が吸引されて前方から後方に流送されることにより、複数の空冷送気管22から空冷室21に送られ、さらに空冷排気管23から排出される。
【0022】
この時、戻り作動油室13内では、高温の戻り作動油が複数の空冷送気管22に接することにより冷却空気で冷却され、さらに戻り作動油が深さ方向にわたってバッフル板15の前面15fに接することにより、空冷室21の冷却空気により効果的に冷却される。さらにバッフル板15をオーバーフローした作動油が連通口16から送り油室14に送られる。そしてこの送り油室14で、作動油がバッフル板15の後面15bに接することにより空冷室21内の冷却空気により冷却されるとともに、空冷排気管23に接することにより冷却空気によりさらに冷却される。
【0023】
上記実施例1によれば、作動油タンク11を戻り油室13と送り油室14とを区画するバッフル板15の全面を中空部状とし、その中空部に冷却空気により作動油を冷却する空冷室21を設けたので、戻り油室13および送り油室14内の作動油がバッフル板15の前面15fおよび後面15bにそれぞれ接することで、効果的に作動油を冷却することができる。この時、バッフル板15が作動油に深さ方向にわたって接触されて、それぞれの温度差に応じて冷却することができるので、深さ方向に生じやすい作動油の温度むらを解消することができる。
【0024】
また、空冷送気管22から空冷室21に送る冷却空気を利用して、戻り油室13に戻された高温の作動油を空冷送気管22を介して効果的に冷却することができるとともに、空冷室から空冷排気管23に排出される冷却空気を利用して、送り油室14の作動油を空冷排気管23を介して効率よく冷却することができる。
【0025】
さらに、作動油タンク11をエンジン43の側方に配置し、エンジン43およびラジエータ44を冷却する冷却ファン45の吸引力により生じる冷却空気流を利用して、空冷送気管22から空冷室21を介して空冷排気管23に冷却空気を流送するので、冷却空気を送る駆動装置も不要で、効率よく作動油の冷却を行うことができる。また冷却空気流の上流側に、高温の作動油が戻される戻し油室13を配置するとともに、下流側に送り油室14を配置し、さらに空冷送気管22を複数本(図は3本)として作動油との接触面を広くしたので、効率よく作動油を冷却することができる。
【符号の説明】
【0026】
11 作動油タンク
12A 区画壁冷却部
12B 戻り油室冷却部
12C 送り油室冷却部
13 戻り油室
14 送り油室
15 バッフル板
16 連通口
17 戻り管
18 送り管
21 空冷室
22 空冷送気管
23 空冷排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧駆動機器を搭載した作業用車両における作動油タンクの冷却構造であって、
作動油タンク内を区画するバッフル板を設けて、油圧駆動機器に作動油を供給する送り管が接続された送り油室と、油圧駆動機器から作動油を戻す戻り管が接続された戻り油室とを形成するとともに、当該バッフル板の周部所定位置に前記戻り油室から前記送り油室に作動油を送る連通部を形成し、
前記バッフル板内で全面にわたる中空部を空冷室とするとともに、当該空冷室に冷却空気を循環させる空冷配管を接続した区画壁冷却部を設けた
ことを特徴とする作業用車両における作動油タンクの冷却構造。
【請求項2】
空冷配管を、作動油タンクの前壁からバッフル板の前面板に貫設されて空冷室に冷却空気を送る空冷送気管と、作動油タンクの後面板からバッフル板の後壁に貫設されて前記空冷室の冷却空気を排出する空冷排気管とで構成し、
戻り油室の作動油中に浸漬された前記空冷送気管を介して作動油を冷却する送り油室冷却部を形成し、
送り油室内の作動油中に浸漬された前記空冷排気管を介して作動油を冷却する戻り油室冷却部を形成した
ことを特徴とする請求項1記載の作業用車両における作動油タンクの冷却構造。
【請求項3】
作動油タンクは、冷却ファンを具備したエンジンの側方に設置され、
前記冷却ファンにより形成される冷却空気流が、空冷送気管から空冷室を介して空冷排気管に流れるように構成された
ことを特徴とする請求項2記載の作業用車両における作動油タンクの冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−149714(P2012−149714A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9339(P2011−9339)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】