説明

作業用車両

【課題】メンテナンス性がよく、振動発生源から操作レバーへの振動の伝達を低減させた作業用車両を提供する。
【解決手段】エンジン3と、エンジン3が固設される車体フレーム22と、車体フレーム22に取り付けられて支持された、運転操作のためのHST操作レバー30とを備え、HST操作レバー30と車体フレーム22との間にグロメット43を備え、グロメット43が、走行のための動力に起因する振動を引き起こすエンジン3および油圧無段変速装置4からの振動を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと、エンジンが固設される車体フレームと、車体フレームに取り付けられて支持された、運転操作のための操作レバーとを備える作業用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタなどの作業用車両では運転操作をするための操作レバーを備えるが、エンジンなどの振動発生源からこの操作レバーへ振動が伝達され、運転者は操作レバーを握る際に不快であるという問題があった。エンジンに加えて、トラクタには別の振動発生源としての油圧無段変速装置(HST)を備える。この油圧無段変速装置内には、油圧モータとポンプを備え、油圧モータによってポンプを作動させる。ポンプからの油吐出量の増減は、運転席の側方に備えるHST操作レバーによって行われる。このHST操作レバーはリンク機構を介して油圧無段変速装置に連結されている。このため、油圧無段変速装置の油圧モータ(振動発生源)の振動がリンク機構を介してHST操作レバーに伝達し、さらに、HST操作レバーを握る運転者に振動が伝達して、運転者は操作が不快であるという問題があった。
【0003】
これを解決するために、特許文献1では、リンク機構に振動緩和のためのゴム製の防振部材を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−171386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような構成の作業用車両では、車体カバーに覆われているリンク機構に防振部材を配置しているので、ゴム製の防振部材が劣化した場合、防振部材を交換するために車体カバーを外さなくてはならない。このため、防振部材の交換作業が大がかりとなってしまうという問題があった。そこで、この発明の目的は、メンテナンス性がよく、振動発生源から操作レバーへの振動の伝達を低減させた作業用車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため請求項1に記載の発明は、エンジンと、
該エンジンが固設される車体フレームと、
該車体フレームに取り付けられて支持された、運転操作のための操作レバーとを備える作業用車両において、
前記操作レバーと前記車体フレームとの間に防振部材を備え、
該防振部材が、走行のための動力に起因する振動を引き起こす振動発生源からの振動を抑制することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、エンジンと、
該エンジンが固設される車体フレームと、
該車体フレームに取り付けられて支持された、運転操作のための操作レバーと、
該操作レバーの下端に連結され、該操作レバーの動作を被操作部に伝達するためのリンク部材とを備える作業用車両において、
前記操作レバーの下部を覆うようにブーツを備え、
該ブーツが前記車体フレームに固定された作業用車両であって、
前記ブーツが防振部材で形成され、
前記ブーツが、走行のための動力に起因する振動を引き起こす振動発生源からの振動を抑制することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、エンジンと、
該エンジンが固設される車体フレームと、
該車体フレームに取り付けられて支持された、運転操作のための操作レバーと、
該操作レバーの下端に連結され、該操作レバーの動作を被操作部に伝達するためのリンク部材とを備える作業用車両において、
前記リンク部材をスライド可能に支持する剛性支持部を備え、
該剛性支持部を前記車体フレームに固設し、
前記剛性支持部が、走行のための動力に起因する振動を引き起こす振動発生源からの振動を抑制することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、エンジンと、
該エンジンが固設される車体フレームと、
該車体フレームに取り付けられて支持された、運転操作のための操作レバーとを備える作業用車両において、
前記操作レバーの下部に重りを備え、
該重りが、走行のための動力に起因する振動を引き起こす振動発生源からの振動を抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、エンジンと、
該エンジンが固設される車体フレームと、
該車体フレームに取り付けられて支持された、運転操作のための操作レバーとを備える作業用車両において、
前記操作レバーと前記車体フレームとの間に防振部材を備え、
該防振部材が、走行のための動力に起因する振動を引き起こす振動発生源からの振動を抑制する。
【0011】
これにより、従来、大がかりであった防振部材の交換作業が容易となる。したがって、メンテナンス性がよく、振動発生源から操作レバーへの振動の伝達を低減させた作業用車両を提供することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、エンジンと、
該エンジンが固設される車体フレームと、
該車体フレームに取り付けられて支持された、運転操作のための操作レバーと、
該操作レバーの下端に連結され、該操作レバーの動作を被操作部に伝達するためのリンク部材とを備える作業用車両において、
前記操作レバーの下部を覆うようにブーツを備え、
該ブーツが前記車体フレームに固定された作業用車両であって、
前記ブーツが防振部材で形成され、
前記ブーツが、走行のための動力に起因する振動を引き起こす振動発生源からの振動を抑制する。
【0013】
これにより、従来、大がかりであった防振部材の交換作業が容易となる。したがって、メンテナンス性がよく、振動発生源から操作レバーへの振動の伝達を低減させた作業用車両を提供することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、エンジンと、
該エンジンが固設される車体フレームと、
該車体フレームに取り付けられて支持された、運転操作のための操作レバーと、
該操作レバーの下端に連結され、該操作レバーの動作を被操作部に伝達するためのリンク部材とを備える作業用車両において、
前記リンク部材をスライド可能に支持する剛性支持部を備え、
該剛性支持部を前記車体フレームに固設し、
前記剛性支持部が、走行のための動力に起因する振動を引き起こす振動発生源からの振動を抑制する。
【0015】
これにより、車体フレーム内側にゴム製の防振部材などを配置し、この防振部材の劣化による交換作業する必要がない。したがって、メンテナンス性を向上させ、かつ、振動発生源から操作レバーへの振動の伝達を低減させた作業用車両を提供することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、エンジンと、
該エンジンが固設される車体フレームと、
該車体フレームに取り付けられて支持された、運転操作のための操作レバーとを備える作業用車両において、
前記操作レバーの下部に重りを備え、
該重りが、走行のための動力に起因する振動を引き起こす振動発生源からの振動を抑制する。
【0017】
これにより、従来、大がかりであった防振部材の交換作業が容易となる。したがって、メンテナンス性がよく、振動発生源から操作レバーへの振動の伝達を低減させた作業用車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の作業用車両の一例としてのトラクタの側面図である。
【図2】図1の内部の主要部を説明するための図である。
【図3】図1の主要部を説明するための図である。
【図4】図1の別の主要部を説明するための図である。
【図5】操作レバーの斜視図である。
【図6】(a)はHST操作レバーのケースと運転席フレームとの取り付けを示す図、(b)は(a)において運転席フレームを取り去った図、(c)はグロメットの斜視図である。
【図7】この発明の別の例を示す図であり、(a)はブーツとHST操作レバーと配置を示す図、(b)はブーツとHST操作レバーとの取り付けを示す図である。
【図8】この発明のさらに別の例を示す図であり、(a)はミッションケースに取り付けた剛性支持部の側面図、(b)は(a)のA矢視断面図である。
【図9】この発明のさらに別の例を示す図であり、(a)は重りをつけた操作レバーのケースの側面図、(b)はケースの拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。図1にこの発明の作業用車両の一例としてのトラクタ21の側面図を示す。トラクタ21は、車体フレーム22の前側に一対の前タイヤ(車輪)23,23、後側に一対の後タイヤ(車輪)24,24を備える。前タイヤ23,23の上方にはボンネット25を配置し、その内側にはエンジンを備える。そして、ボンネット25の後部に連続して箱型の運転キャビン26を配置する。運転キャビン26は、後タイヤ24の近傍にその後部が配置されるようにする。なお、後タイヤ24は、ミッションを介してエンジンの駆動力によって駆動する。また、前タイヤ23は後タイヤ24の推進力によって走行するトラクタ21に従動して回転する。
【0020】
運転キャビン26は、前面にフロントガラス、後面にリアガラス33を備える。また、左右の側面部にはガラス製のドア31をそれぞれ備える。運転キャビン26の前部両側にはそれぞれ、後方確認用のミラー36,36、運転キャビン26の前面上端の左右にはそれぞれ、前照灯34,34、また、運転キャビン26の後部両側にはそれぞれ、後照灯35,35を設ける。また、左右それぞれのドア31の下方には、運転者が運転キャビン26に昇降するためのステップSTを車体フレーム22に固定して取り付ける。
【0021】
また、運転キャビン26の後部両側下端には、後タイヤ24を上方より覆うためのフェンダ38をそれぞれ設ける。フェンダ38の後部には、ウインカーとストップランプを備える。
【0022】
図2,3に示すように、エンジン(走行するための駆動源)3は、トラクタ21の左右に配置された一対の車体フレーム22,22によって固定・支持されている。車体フレーム22は、前側部分に配置される車体フレーム22Aと後側部分に配置される車体フレーム22Bとで構成され、両者はボルトによって固定されている。左右一対の車体フレーム22B,22Bの後端はミッションケース7の両側面にボルトによって固定される。このようにして、車体フレーム22とミッションケース7とでトラクタ21の機体を構成する。なお、運転キャビン26はこの機体上に固設する。
【0023】
ミッションケース7の前側には油圧無段変速装置(HST)4を連結する。この油圧無段変速装置4の入側にはエンジン3からの出力軸12をクラッチ13を介して取り付ける。油圧無段変速装置4からの出力はミッションケース7内のミッションに伝達される。そして、ミッションの回転動力は、後タイヤ24の回転軸24Aに伝達されるとともに、伝達軸11を介して前タイヤ23の回転軸23Aに伝達される(すなわち、トラクタ21は4輪駆動可能である)。
【0024】
また、ミッションケース7の上には、油圧ケース8を取り付け、油圧ケース8の側部には、油圧ケース8内の駆動力によって回動するリフトアーム9を取り付ける。リフトアーム9には、不図示のリフトロッドを介してロワーリンクを取り付け、ロータリー作業機などを昇降可能に取り付ける。なお、符号10はPTO軸である。
【0025】
一方、運転キャビン26内には、エンジンキー、アクセルペダル,クラッチペダル,ブレーキペダルなどの操作ペダル、シフトレバー、ハンドル5、運転席6、さらに、速度、燃料、警報などを表示する表示部などを設ける。また、運転席6の右側にはHST操作レバー30を備える。HST操作レバー30を操作することで、リンク機構を介してトラニオン軸(後述)を回動させて、油圧無段変速装置4内の斜板の角度を変更し、吐出ポンプの作動油吐出量を増減する。
【0026】
図4,5に示すように、HST操作レバー(運転操作のための操作レバー)30は、グリップ30A、シャフト30B、保護部30C、ケース30Dなどで構成される。シャフト30Bの下端部はリンクバー32の上部に溶接またはボルトによって固定される。リンクバー32は固定ピン33によってミッションケース7の側面に回動自在に取り付けられる。リンクバー32の下部には、リンクシャフト34の一端を回動可能に取り付ける。リンクシャフト34の他端は、トラニオンアーム35の上部に回動可能に取り付ける。トラニオンアーム35の下部には、トラニオン軸36を固設する。なお、リンクバー32、リンクシャフト34を合わせてリンク機構と称する。また、シャフト30Bはケース30Dよりも下方に延出している。
【0027】
このような構成で、運転者はグリップ30Aを握って前に動かす(倒す)ことで、シャフト30Bを介してリンクバー32が固定ピン33を支点として図4中で反時計回りに回動する。これに連動して、リンクシャフト34が後方に引っ張られ、トラニオンアーム35の上部を後方に引っ張ることで、トラニオン軸36を時計回りに回動させる。一方、グリップ30Aを握って後に動かす(倒す)ことで、シャフト30Bを介してリンクバー32が固定ピン33を支点として図4中で時計回りに回動する。これに連動して、リンクシャフト34が前方に引っ張られ、トラニオンアーム35の上部を前方に引っ張ることで、トラニオン軸36を反時計回りに回動させる。
【0028】
なお、運転キャビン26の骨格はキャビンフレーム26A,26B,26C,26D,26Eなどによって構成されており、キャビンフレーム26Bにて機体にボルトなどを介して固定される。また、運転席6を取り付けるための運転席フレーム31は、キャビンフレーム26B,26Dにボルトによって固定される。
【0029】
図6(a)〜(c)に示すように、HST操作レバー30のケース30Dは、運転席フレーム31の上面部31Bに固定されている(なお、符号31Aは運転席フレーム31の前面部である)。ケース30Dは金属筒で四角筒状に形成され、上部にゴム製(樹脂製)の保護部30Cを取り付ける。保護部30Cは略四角錐状に形成され、その下部には、アゴ部を備える。このアゴ部をケース30Dの上端の外周に嵌め合わせるようにして保護部30Cをケース30Dに取り付ける。ケース30Dの下部の外周には、ブラケット41をボルトBT1によって固定する。ブラケット41は平面視で略コの字となるように金属板を2箇所で略直角に折り曲げて形成される。そして、その両端に別のブラケット42を渡し掛けて溶接によって両者を一体となるように固定する。ブラケット42は、直立部42Aと平坦部42Bとで構成される。ブラケット42は直立部42Aの両端にてブラケット41と固定する。平坦部42BにはボルトBT2を貫通させるための3つの貫通孔が形成される。
【0030】
なお、運転席フレーム31の上面部31Bには、この3つの貫通孔に対応する位置に貫通孔が形成されるとともに、ケース30Dよりもやや大きな切り欠きが形成されている。上面部31Bの3つの貫通孔には、グロメット(防振部材)43の凹部43Bがそれぞれ嵌まるようになっている。グロメット43はゴム製(樹脂製)で、上部43A、凹部43B、下部43Cとが一体に形成され、中心部分にボルトBT2を貫通させるための貫通孔を備える。また、凹部43Bの外周は円筒の外周のように形成される。
【0031】
ケース30Dを運転席フレーム31に固定するには、まず、グロメット43の凹部43Bを運転席フレーム31の上面部31Bに形成された3つの貫通孔(上述)に嵌めつける。一方、ケース30Dの下部側面には、ブラケット41をボルトBT1によって取り付ける。ブラケット42はブラケット41と一体となっているので、ブラケット42も同時にケース30Dに固定される。この状態で、運転席フレーム31の上面部31Bに形成された切り欠きにケース30Dを裏面側から通過させて突出させる。次に、ブラケット42Bを、その貫通孔がグロメット43の貫通孔に合うように位置決めする。そして、ワッシャーWSを嵌めた後、ボルトBT2を貫通させてナットNTにネジつける。なお、ナットNTは、ブラケット42の平坦部42Bの裏面側で、かつ、貫通孔に合うように配置されて溶接止めされている。
【0032】
このようにグロメット43を配置することで、車体フレーム22上に配置されたエンジン3の振動が、車体フレーム22に伝達されて、車体フレーム22に取り付けられたキャビンフレーム26B,26Dを介して運転席フレーム31に伝達された際、グロメット43がこの振動を吸収し(または減少させ)、ケース30Dに伝達させることがない(または伝達する振動を低減させる)。このため、保護部30C、シャフト30B、グリップ30Aに振動が伝達せず(または低減し)、運転者はHST操作レバー30を操作する際にエンジン3からの振動を受けることなく、快適に操作することができる。
【0033】
また、油圧無段変速装置4の内部にて発生する振動(例えば、油圧無段変速装置4内に備える油圧モータの振動など)が、トラニオンアーム35、リンクシャフト34、固定ピン33を介してミッションケース7に伝達し、ミッションケース7と連結された車体フレーム22を介して、運転席フレーム31に伝達された場合であっても上記と同様に、グロメット43がこの振動を吸収し(または減少させ)、ケース30Dに伝達させることがない(または伝達する振動を低減させる)。このため、保護部30C、シャフト30B、グリップ30Aに振動が伝達せず、運転者はHST操作レバー30を操作する際にエンジンからの振動を受けることなく、快適に操作することができる。したがって、この例のグロメット43を用いると、振動源が、無段変速装置4であってもエンジン3であってもシャフト30B、グリップ30Aへの振動の伝達を防止、または低減することができる。なお、この例の防振部材はグロメットに限定されるものではない。
【0034】
次に、別の例を図7(a),(b)を用いて説明する。この場合、上面部31Bにはグロメット43を配置しない。したがって、上面部31Bに形成する貫通孔は、ボルトBT2の外径よりもやや大きく形成する(グロメット43を嵌めつけることを考慮して貫通孔を形成する必要はない)。そして、四角筒状のケース30Dの下端にブーツ(防振部材)51を嵌めつける。ブーツ51は略四角錐状に形成され、その頂部にはシャフト30Bを通すための円形の開口が形成され、下部にはアゴ部を備える。ケース30Dに取り付ける際には、上下を逆さまにし、このアゴ部をケース30Dの下端の外周に嵌め合わせるようにしてブーツ51をケース30Dに取り付ける。このとき、シャフト30Bの下部はブーツ51によって覆われる。
【0035】
なお、ブーツ51の開口の寸法は、シャフト30Bがブーツ51の開口に常に接触するように、シャフト30Bの外径と略同一に形成する。このように形成することで、油圧無段変速装置4の内部にて発生する振動(例えば、油圧無段変速装置4内に備える油圧モータの振動など)が、トラニオンアーム35、リンクシャフト34、リンクバー32を介してシャフト30Bの下部に伝達した場合、この振動をブーツ51が吸収し、シャフト30Bの上部に伝えることがない。たとえ振動が伝達する場合であっても、ブーツ51によって振動を低減して上方に伝達するため、グリップ30Aを握る運転者に伝わる振動が少なくて済む。
【0036】
また、車体フレーム22上に配置されたエンジン3の振動が、車体フレーム22に伝達されて、ミッションケース7に伝達され、ミッションケース7の側面に取り付けられた固定ピン33を介してリンクバー32に伝達され、シャフト30Bの下部に伝達した場合であっても、この振動をブーツ51が吸収し、シャフト30Bの上部に伝えることがない。たとえ振動が伝達する場合であっても、ブーツ51によって振動を低減して上方に伝達するため、グリップ30Aを握る運転者に伝わる振動が少なくて済む。したがって、この例のブーツ51を用いると、振動源が、無段変速装置4であってもエンジン3であってもシャフト30B、グリップ30Aへの振動の伝達を防止、または低減することができる。
【0037】
また、ブーツ51によって下方からの粉塵などを運転キャビン26内に伝達することを防止することもできる。その他のトラクタ21の構成は前述の例と同様である。なお、符号30DHは貫通孔であり、ボルトBT1を貫通させるためのものである。図7(a),(b)に示すブーツ51を図1〜6の例に適用するといっそう効果的に振動発生源からの振動を緩和することができる。
【0038】
油圧無段変速装置4からの振動の伝達を防止する別の例について図8(a),(b)を用いて説明する。この例では、まず、防振ゴム62を油圧無段変速装置4とミッションケース7との間に設ける。このようにすることで、油圧無段変速装置4で発生した振動をミッションケース7に直接伝達しないようにすることができる。また、剛性の高い材料で形成された剛性支持部61をミッションケース7に固定する。剛性支持部61は、金属などで略円筒状に形成され、その側面をミッションケース7の側面に溶接などで固定する。剛性支持部61の内径は、リンクシャフト34の外径よりもやや大きく形成し、リンクシャフト34が剛性支持部61に対してスライド可能とする。このようにすることで、油圧無段変速装置4で発生した上下振動はリンクシャフト34に伝播するが、剛性支持部61によってリンクシャフト34の上下移動が規制される(リンクシャフト34は剛性支持部61に対して長手方向にスライドするのみである)。したがって、リンクシャフト34からリンクバー32への上下方向の振動を防止(または低減)することができる。これによって、HST操作レバー30への振動の伝達を防止(または低減)することができる。その他のトラクタ21の構成は前述の例と同様である。
【0039】
また、エンジン3からの振動を防止する別の例として、図1〜6に示した例のケース30Dに代えて、図9(a),(b)に示すように、ケース130Dを備えるようにしてもよい。このケース130Dは、ケース30Dの下部に金属製の肉厚部130DWを形成し、ケース130D全体の重心を下方に設定したものである。この場合、上面部31Bにはグロメット43を配置しない。したがって、上面部31Bに形成する貫通孔は、ボルトBT2の外径よりもやや大きく形成する(グロメット43を嵌めつけることを考慮して貫通孔を形成する必要はない)。なお、符号130DHは貫通孔であり、ボルトBT1を貫通させるためのものである。その他のトラクタ21の構成は前述の例と同様である。
【0040】
このように構成することで、車体フレーム22上に配置されたエンジン3の振動が、車体フレーム22に伝達されて、車体フレーム22に取り付けられたキャビンフレーム26B,26Dを介して運転席フレーム31に伝達された際、ケース130Dにこの振動が伝達する。ケース130Dは下部に重心があるため、この振動に対して安定しており、振動の伝達割合が減少する。このため、保護部30C、シャフト30B、グリップ30Aに伝達する振動が低減し、運転者はHST操作レバー30を操作する際にエンジンからの振動をさほど感じることなく、快適に操作することができる。
【0041】
この発明の操作レバーは、上述の例で用いられているHST操作レバー30に限定されるものではなく、エンジン3のスロットルレバーなどであってもよい。この場合、リンクバー32、リンクシャフト34は油圧無段変速装置4に向かわずに、エンジン3に向かうようにする。ケース30Dなどの構成は上述の例と同様である。また、操作レバーは、リンク機構に代えて、プッシュプルワイヤーを介して、油圧無段変速装置4またはエンジン3と連結されていてもよい。
【0042】
この発明は、上記実施例によって制限されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない限りにおいてあらゆる形態をとることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明の作業用車両は、トラクタ、コンバイン、田植機などの農業のための作業用車両、フロントローダ、バックホーなどの建設のための作業用車両などあらゆる作業用車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
3 エンジン
4 油圧無段変速装置(被操作部)
21 トラクタ(作業用車両)
22,22A,22B 車体フレーム
30 HST操作レバー(操作レバー)
30D,130D ケース
32 リンクバー(リンク部材)
34 リンクシャフト(リンク部材)
43 グロメット(防振部材)
51 ブーツ(防振部材)
61 支持部
130DW 肉厚部(重り)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
該エンジンが固設される車体フレームと、
該車体フレームに取り付けられて支持された、運転操作のための操作レバーとを備える作業用車両において、
前記操作レバーと前記車体フレームとの間に防振部材を備え、
該防振部材が、走行のための動力に起因する振動を引き起こす振動発生源からの振動を抑制することを特徴とする、作業用車両。
【請求項2】
エンジンと、
該エンジンが固設される車体フレームと、
該車体フレームに取り付けられて支持された、運転操作のための操作レバーと、
該操作レバーの下端に連結され、該操作レバーの動作を被操作部に伝達するためのリンク部材とを備える作業用車両において、
前記操作レバーの下部を覆うようにブーツを備え、
該ブーツが前記車体フレームに固定された作業用車両であって、
前記ブーツが防振部材で形成され、
前記ブーツが、走行のための動力に起因する振動を引き起こす振動発生源からの振動を抑制することを特徴とする、作業用車両。
【請求項3】
エンジンと、
該エンジンが固設される車体フレームと、
該車体フレームに取り付けられて支持された、運転操作のための操作レバーと、
該操作レバーの下端に連結され、該操作レバーの動作を被操作部に伝達するためのリンク部材とを備える作業用車両において、
前記リンク部材をスライド可能に支持する剛性支持部を備え、
該剛性支持部を前記車体フレームに固設し、
前記剛性支持部が、走行のための動力に起因する振動を引き起こす振動発生源からの振動を抑制することを特徴とする、作業用車両。
【請求項4】
エンジンと、
該エンジンが固設される車体フレームと、
該車体フレームに取り付けられて支持された、運転操作のための操作レバーとを備える作業用車両において、
前記操作レバーの下部に重りを備え、
該重りが、走行のための動力に起因する振動を引き起こす振動発生源からの振動を抑制することを特徴とする、作業用車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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