説明

作業車の駆動制御装置

【課題】 アクチュエータの不測の作動を防止しながらも、作業を継続して行なうことができる作業車の駆動制御装置を得る
【解決手段】 クラッチ入用緊急操作指令及びクラッチ切用緊急操作指令を指令する手動操作式の緊急操作指令手段ESが設けられ、制御手段Hが、クラッチ操作状態検出手段VRが異常であると判別したときには、クラッチ入切指令手段CSの指令によるアクチュエータM2の作動を停止するように構成され、且つ、緊急操作指令手段ESによりクラッチ入用緊急操作指令又はクラッチ切用緊急操作指令が指令されると、それが指令されている間だけ、作業クラッチSCを入り状態に操作する側に又は作業クラッチSCを切り状態に操作する側にアクチュエータM2を作動させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの出力を作業装置に伝達する入り状態と前記エンジンの出力の前記作業装置への伝達を遮断する切り状態とに切り換え自在な作業クラッチと、前記作業クラッチの前記入り状態と前記切り状態との切換を行うアクチュエータと、クラッチ入り指令及びクラッチ切り指令を指令する手動操作式のクラッチ入切指令手段と、前記作業クラッチの入切状態を検出するクラッチ操作状態検出手段と、前記クラッチ入切指令手段の指令により、前記作業クラッチを前記入り状態及び前記切り状態に操作すべく、前記クラッチ操作状態検出手段の検出情報に基づいて前記アクチュエータの作動を制御するように構成された制御手段とが設けられた作業車の駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる作業車の駆動制御装置は、クラッチ入切指令手段にてクラッチ入り指令又はクラッチ切り指令が指令されると、作業クラッチを入り状態又は切り状態に切り換えることにより、作業クラッチの操作の簡略化を図れるようにしたものである。
ちなみに、クラッチ入切指令手段にてクラッチ入り指令又はクラッチ切り指令が指令されると、作業クラッチを入り状態又は切り状態に操作する側にアクチュエータを作動させ、クラッチ操作状態検出手段にて作業クラッチの入り状態又は切り状態が検出されると、アクチュエータの作動を停止することになる。
【0003】
かかる作業車としてのコンバインの駆動制御装置の従来例として、作業装置が、脱穀装置及び穀稈を刈取処理して脱穀装置に供給する刈取処理装置であり、作業クラッチが、エンジンの出力を脱穀装置に伝達する入り状態とエンジンの出力の脱穀装置への伝達を遮断する切り状態とに切り換え自在な脱穀クラッチ、及び、エンジンの出力を刈取処理装置に伝達する入り状態とエンジンの出力の刈取処理装置への伝達を遮断する切り状態とに切り換え自在な刈取クラッチであり、クラッチ入切指令手段にてクラッチ入り指令又はクラッチ切り指令が指令されると、脱穀クラッチ及び刈取クラッチを入り状態又は切り状態に切り換えるように構成されたものがある(例えば、特許文献参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−95337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クラッチ操作状態検出手段が故障した場合においては、クラッチ操作状態検出手段にて作業クラッチの入り状態又は切り状態が検出されないため、クラッチ入切指令手段にてクラッチ入り指令又はクラッチ切り指令が指令されたとしても、作業クラッチを入り状態又は切り状態に適切に切り換えることができないので、クラッチ入切指令手段の指令によるアクチュエータの作動を停止することになる。
このように、上記構成では、クラッチ操作状態検出手段が故障した場合においては、クラッチ入切指令手段の指令によるアクチュエータの作動を停止するものであるから、クラッチ操作状態検出手段が故障したときに作業を継続して行なうことができないという不都合があった。つまり、例えば、作業車がコンバインの場合において、脱穀クラッチ及び刈取クラッチが切り状態のときにクラッチ操作状態検出手段が故障すると、刈取収穫作業を開始するためにクラッチ入切指令手段によりクラッチ入り指令が指令されたとしても、脱穀クラッチ及び刈取クラッチが切り状態を維持することになるので、刈取収穫作業を行なうことができないものとなる。
又、刈取収穫作業を行なう途中にクラッチ操作状態検出手段が故障すると、脱穀クラッチ及び刈取クラッチが入り状態を維持することになるので、その刈取収穫作業を続行することはできるものの、刈取収穫作業を終了するためにクラッチ入切指令手段によりクラッチ切り指令が指令されたとしても、脱穀クラッチ及び刈取クラッチが入り状態を維持することになるので、刈取収穫作業を開始するためにエンジンを始動する際に脱穀装置や刈取処理装置が負荷となることに起因して、エンジンを始動することができないことになり、刈取収穫作業を行なうことができないものとなる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、クラッチ操作状態検出手段が故障しても作業を行なうことができ、加えて、誤操作を抑制することができる作業車の駆動制御装置を得る点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作業車の駆動制御装置は、エンジンの出力を作業装置に伝達する入り状態と前記エンジンの出力の前記作業装置への伝達を遮断する切り状態とに切り換え自在な作業クラッチと、前記作業クラッチの前記入り状態と前記切り状態との切換を行うアクチュエータと、クラッチ入り指令及びクラッチ切り指令を指令する手動操作式のクラッチ入切指令手段と、前記作業クラッチの入切状態を検出するクラッチ操作状態検出手段と、前記クラッチ入切指令手段の指令により、前記作業クラッチを前記入り状態及び前記切り状態に操作すべく、前記クラッチ操作状態検出手段の検出情報に基づいて前記アクチュエータの作動を制御するように構成された制御手段とが設けられたものであって、その第1特徴構成は、クラッチ入用緊急操作指令及びクラッチ切用緊急操作指令を指令する手動操作式の緊急操作指令手段が設けられ、前記制御手段が、前記クラッチ操作状態検出手段が異常であると判別したときには、前記クラッチ入切指令手段の指令による前記アクチュエータの作動を停止するように構成され、且つ、前記緊急操作指令手段により前記クラッチ入用緊急操作指令又は前記クラッチ切用緊急操作指令が指令されると、それが指令されている間だけ、前記作業クラッチを前記入り状態に操作する側に又は前記作業クラッチを前記切り状態に操作する側に前記アクチュエータを作動させるように構成されている点にある。
【0008】
すなわち、制御手段は、クラッチ操作状態検出手段が異常であると判別することにより、クラッチ入切指令手段の指令によるアクチュエータの作動を停止するものの、緊急操作指令手段にてクラッチ入用緊急操作指令又はクラッチ切用緊急操作指令が指令されると、それが指令されている間だけ、作業クラッチを入り状態に操作する側に又は作業クラッチを切り状態に操作する側にアクチュエータを作動させるものであるから、クラッチ操作状態検出手段が故障したときにおいて、クラッチ入用緊急操作指令又はクラッチ切用緊急操作指令を指令することにより、作業クラッチを入り状態に操作する側に又は作業クラッチを切り状態に操作する側にアクチュエータを作動させることができ、そして、例えば、作業装置の作動状態を目視しながら作業装置が作動を開始した又は作業装置の作動を停止したことを確認するとクラッチ入用緊急操作指令又はクラッチ切用緊急操作指令を停止することにより、作業クラッチを入り状態又は切り状態に切り換えることができるので、クラッチ操作状態検出手段が故障しても作業を行なうことができるものとなり、そのように作業を行なうときにおいて、緊急操作を行なうための特別な緊急操作指令手段にてクラッチ入用緊急操作指令又はクラッチ切用緊急操作指令を指令することになるので、作業者に緊急操作であることを認識させ易いものとなって、誤操作を抑制することができるものとなる。
したがって、クラッチ操作状態検出手段が故障しても作業を行なうことができ、加えて、誤操作を抑制することができる作業車の駆動制御装置を得るに至った。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記緊急操作指令手段の指令にて前記アクチュエータを作動させるときには、前記クラッチ入切指令手段の指令により前記アクチュエータを作動させるときに較べて、前記アクチュエータを低速で作動させるように構成されている点を特徴とする。
【0010】
すなわち、前記緊急操作指令手段の指令にて前記アクチュエータを作動させるときには、前記クラッチ入切指令手段の指令により前記アクチュエータを作動させるときに較べて、前記アクチュエータを低速で作動させるものであるから、作業装置が作動を開始した又は作業装置の作動を停止したことを確認する時間的な余裕を与えることができ、加えて、作業装置が作動を開始したとき又は作業装置の作動を停止したときからクラッチ入用緊急操作指令又はクラッチ切用緊急操作指令を停止するまでの時間的な余裕を与えることができるために、作業装置の作動状態を目視にて確認しながら作業クラッチを入り状態又は切り状態に切り換えることを適切に行なえるものとなる。
したがって、作業クラッチを入り状態又は切り状態に適切に切り換えられる作業車の駆動制御装置を得るに至った。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、上記第1又は第2特徴構成に加えて、前記作業装置が、作業車としてのコンバインに装備された脱穀装置及び穀稈を刈取処理して前記脱穀装置に供給する刈取処理装置であり、前記作業クラッチが、前記エンジンの出力を前記脱穀装置に伝達する入り状態と前記エンジンの出力の前記脱穀装置への伝達を遮断する切り状態とに切り換え自在な脱穀クラッチ、及び、前記エンジンの出力を前記刈取処理装置に伝達する入り状態と前記エンジンの出力の前記刈取処理装置への伝達を遮断する切り状態とに切り換え自在な刈取クラッチである点を特徴とする。
【0012】
すなわち、クラッチ操作状態検出手段が故障したときにおいて、例えば、作業者が脱穀装置に格納された扱ぎ胴の回転や刈取処理装置に装備されたバリカン式の刈刃の作動を目視にて確認しながら脱穀クラッチ及び刈取クラッチを入り状態に操作する側に又は脱穀クラッチ及び刈取クラッチを切り状態に操作する側にアクチュエータを作動させることにより、脱穀クラッチ及び刈取クラッチを入り状態又は切り状態に切り換えることができるので、刈取収穫作業を行なうことができるものとなり、例えば適切な刈取収穫時期に合わせて刈取収穫作業を行なうことができる等、刈取収穫を適切なタイミングで行ない易いものとなる。
したがって、刈取収穫作業を継続して行なうことができ、しかも、刈取収穫を適切なタイミングで行ない易い作業車の駆動制御装置を得るに至った。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、上記第3特徴構成に加えて、前記脱穀装置にて刈取穀稈を脱穀処理する扱深さを調節する扱深さ調節手段と、深扱ぎ指令及び浅扱ぎ指令を指令する手動操作式の扱深さ指令手段とが設けられ、前記緊急操作指令手段が、前記クラッチ入切指令手段及び前記扱深さ指令手段を兼用して構成され、前記制御手段が、前記クラッチ入切指令手段の非指令状態での前記扱深さ指令手段の指令により、前記扱深さ調節手段を深扱ぎ側又は浅扱ぎ側に作動させるように構成され、且つ、前記クラッチ入切指令手段により前記クラッチ入り指令が指令された状態における前記扱深さ指令手段による前記深扱ぎ指令又は前記浅扱き指令を、前記クラッチ入用緊急操作指令又は前記クラッチ切用緊急操作指令として判別する形態で、前記クラッチ入切指令手段及び前記扱深さ指令手段の同時指令により、それが指令されている間だけ、前記作業クラッチを前記入り状態に操作する側に又は前記作業クラッチを前記切り状態に操作する側に前記アクチュエータを作動させるように構成されている点を特徴とする。
【0014】
すなわち、クラッチ入切指令手段の非指令状態における扱深さ指令手段の深扱ぎ指令又は浅扱き指令を、そのまま深扱ぎ指令又は浅扱き指令とし、クラッチ入切指令手段の指令状態における扱深さ指令手段の深扱ぎ指令又は浅扱き指令を、クラッチ入用緊急操作指令又はクラッチ切用緊急操作指令とするものであるから、既設のクラッチ入切指令手段及び扱深さ指令手段を用いて緊急操作指令手段を構成することができるので、構成の簡素化を図れるものとなる。
したがって、構成の簡素化を図れる作業車の駆動制御装置を得るに至った。
【0015】
本発明の第5特徴構成は、上記第1〜第4特徴構成のいずれかに加えて、前記エンジンを設定定格回転数にて回転させる定格回転状態とアイドリング回転数にて回転させるアイドリング状態とに切り換え自在なアクセル手段が設けられ、前記アクチュエータは、前記クラッチ操作体の操作に加えて、前記アクセル手段を前記定格回転状態と前記アイドリング状態とに操作自在に構成され、前記制御手段が、前記クラッチ入切指令手段により前記クラッチ入り指令が指令されると、前記アクセル手段の前記定格回転状態に且つ前記作業クラッチを前記入り状態とし、且つ、前記クラッチ入切指令手段により前記クラッチ切り指令が指令されると、前記アクセル手段を前記定格回転状態に且つ前記作業クラッチを前記切り状態とすべく、前記アクチュエータの作動を制御するように構成されている点を特徴とする。
【0016】
すなわち、クラッチ入切指令手段にてクラッチ入り指令を指令することにより、アクセル手段を定格回転状態に且つ作業クラッチを入り状態に切り換えることができるものであるから、例えばエンジンを始動させて作業を行うときにおいて、作業クラッチが切り状態で且つアクセル手段のアイドリング状態においてエンジンを始動させた後、そのエンジンの始動状態において、アクセル手段を定格回転状態に且つ作業クラッチを入り状態にすることを、クラッチ入り指令を指令することにより行なえるものとなる等、エンジンの始動状態において作業を行なうために、アクセル手段を定格回転状態に且つ作業クラッチを入り状態にすることを、クラッチ入り指令を指令するだけの簡単な操作にて行なえるものとなり、クラッチ入切指令手段にてクラッチ切り指令を指令することにより、アクセル手段を定格回転状態に且つ作業クラッチを切り状態に切り換えることができるものであるから、例えば、アクセル手段がアイドリング状態に且つ作業クラッチが切り状態となるエンジンの始動状態や、アクセル手段が定格回転状態に且つ作業クラッチが入り状態となる作業状態において、移動走行する等のために、アクセル手段を定格回転状態に且つ作業クラッチを切り状態にすることを、クラッチ切り指令を指令する簡単な操作にて行えるものとなる。
したがって、操作の簡略化を図ることができる作業車の駆動制御装置を得るに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るコンバインの駆動制御装置について図面に基づいて説明する。
図1にコンバインの全体側面が示されており、このコンバインは、左右一対のクローラ式の走行装置1L、1R、走行機体2、圃場の植立穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を後方に搬送する作業装置SSの一例としての刈取処理装置3、刈取処理装置3にて刈り取られた刈取穀稈を受け取って脱穀および選別処理する作業装置SSの一例としての脱穀装置4、作業者が運転を行なうための搭乗運転部6等を備えて構成されている。
刈取処理装置3が横軸芯X周りに揺動自在に設けられ、走行機体2と刈取処理装置3との間には昇降用油圧シリンダCYが介装されており、その昇降用油圧シリンダCYの伸縮操作により刈取処理装置3が走行機体2に対して昇降操作されるようになっている。尚、横軸芯Xには、刈取処理装置3の走行機体2に対する昇降位置を検出する昇降位置検出手段としての対機体高さセンサS5が設けられている。
【0018】
前記刈取処理装置3について説明を加えると、圃場の植立穀稈を引き起こす引き起こし装置20、引き起こされた植立穀稈を刈り取るバリカン式の刈刃16、刈り取られた刈取穀稈を後方に搬送する補助搬送装置17、補助搬送装置17から受け取った刈取穀稈を搬送終端部において横倒れ姿勢に変更して脱穀装置4の脱穀フィードチェーン18に搬送する縦搬送装置19等を備えて構成されている。
【0019】
前記縦搬送装置19は、穀稈の株元側を挟持搬送する株元搬送装置19a、穀稈の穂先側を搬送する係止搬送する穂先搬送装置19b及び穂先案内板19cからなり、刈取処理装置3の横軸芯Xと同軸軸心周りで揺動自在に支持され、扱深さ調節手段の一例としての扱深さモータM1にて縦搬送装置19を揺動調節することにより、補助搬送装置17から縦搬送装置19に刈取穀稈を受け渡す際の受け取り支持位置を稈長方向に変更して脱穀装置4にて刈取穀稈を脱穀処理する扱深さを調節するように構成されている。
【0020】
前記補助搬送装置17から縦搬送装置19に刈取穀稈を受け渡す受け渡し箇所において、縦搬送装置17により搬送される刈取穀稈の存否を検出する株元センサS1が設けられ、その受け渡し箇所よりも刈取穀稈の搬送方向下手側に位置する検出箇所において、縦搬送装置17により搬送される刈取穀稈の存否を検出する穂先側検出センサS2及び株元側検出センサS3が稈長方向に所定間隔を隔てる状態で設けられている。尚、株元センサS1、穂先側検出センサS2及び株元側検出センサS3の夫々はスイッチ式にて構成され、刈取穀稈が接触してオン状態になると刈取穀稈を検出し、刈取穀稈が接触していないオフ状態のときには穀稈無しを検出するようになっている。
【0021】
次にこのコンバインの伝動構造について説明する。
図2に示すように、エンジンEの動力が伝動ベルト14及び伝動プーリ15を介して直進用の無段変速装置7と旋回用の無段変速装置8に伝達され、これら無段変速装置7、8の変速出力は、ミッションケース9を経由して、走行装置1R、1Lの夫々に伝達されている。又、これら無段変速装置7、8のうち直進用の無段変速装置7の変速出力は、ミッションケース9を経由した後、作業クラッチSCの一例としての刈取クラッチ10を介して刈取処理装置3に伝達され、刈取クラッチ10には、その入り切りを検出する刈取センサ11が付設されている。又、エンジンEの動力は、作業クラッチSCの一例としての脱穀クラッチ12を介して脱穀装置4に伝達され、脱穀クラッチ12には、その入り切り状態を検出する脱穀センサ13が付設されている。
したがって、作業装置SSが、作業車としてのコンバインに装備された脱穀装置4及び穀稈を刈取処理して脱穀装置4に供給する刈取処理装置3であり、作業クラッチSCが、エンジンEの出力を脱穀装置4に伝達する入り状態とエンジンEの出力の脱穀装置4への伝達を遮断する切り状態とに切り換え自在な脱穀クラッチ12、及び、エンジンEの出力を刈取処理装置3に伝達する入り状態とエンジンEの出力の刈取処理装置3への伝達を遮断する切り状態とに切り換え自在な刈取クラッチ10であり、作業クラッチSCは、エンジンEの出力を作業装置SSに伝達する入り状態とエンジンEの出力の作業装置SSへの伝達を遮断する切り状態とに切り換え自在に構成されている。
【0022】
図3〜図9に示すように、エンジンEを設定定格回転数にて回転させる定格回転状態とエンジンEをアイドリング回転数にて回転させるアイドリング状態とに切り換え自在なアクセル手段としての速度調整レバー42がエンジンEに設けられ、刈取クラッチ10及び脱穀クラッチ12の入り状態と切り状態との切換操作及び速度調整レバー42の定格回転状態とアイドリング状態との切換操作を行うアクチュエータとしての切換操作用モータM2が設けられている。
【0023】
説明を加えると、切換操作用モータM2の回動操作に伴って速度調整レバー42、刈取クラッチ10、脱穀クラッチ4の夫々を連動操作するクラッチ操作体Bが、搭乗運転部6の運転席43の横側に位置する状態で設けられている。クラッチ操作体Bは、切換操作用モータM2のピニオンギヤ47と噛み合うセクターギヤ44と、アクセルレバー45を切り位置から入り位置に押圧作用するとともに速度調整レバー42をアイドリング状態から定格回転状態に切り換え操作するアクセルレバー操作用カム46と、脱穀クラッチ12を切り換え操作する脱穀クラッチ操作用リンク部48と、刈取クラッチ10を切り換え操作する刈取クラッチ操作用リンク部49とを備えて構成されている。搭乗運転部6に固定されている略直方体形状の枠部50が備える取り付け用軸部51に、回動ボス部52が回動自在に取り付けられ、その回動ボス部52に、セクターギヤ44、アクセルレバー操作用カム46、脱穀クラッチ操作用リンク部48、及び、刈取クラッチ操作用リンク部49が連結されている。これにより、切換操作用モータM2が駆動されると、切換操作用モータM2のピニオンギヤ47と噛み合うセクターギヤ44も回動されることになり、そのセクターギヤ44の回動に伴って、アクセルレバー操作用カム46、脱穀クラッチ操作用リンク部48、及び、刈取クラッチ操作用リンク部49が一体回動するように構成されている。又、枠部50の横側にクラッチ操作体Bの位置を検出するクラッチ操作状態検出手段としてのクラッチ操作体位置検出ボリュームVRが設けられている。
【0024】
前記アクセルレバー45は、枠部50が備える支持用軸部53に揺動自在に支持されている。アクセルレバー45の先端部には握り部45aが設けられ、アクセルレバー45の基端部にはカムフォロア54が設けられるとともに速度調整レバー操作用ケーブル55が取り付けられている。アクセルレバー45の握り部45aを揺動操作してアクセルレバー45を切り位置から入り位置に位置変更することにより、アクセルレバー45に設けられた速度調整レバー操作用ケーブル55を引っ張り操作して速度調整レバー42をアイドリング状態から定格回転状態に切り換えるようになっている。ちなみに、アクセルレバー45の握り部45aを揺動操作しないときには、図示しないバネの付勢力により速度調整レバー42を定格回転状態からアイドリング状態に切り換えるようになっている。
【0025】
前記アクセルレバー操作用カム46は、円板の一部を切り欠いた半月に近い板状に構成され、その切り欠き部にカム面46aが形成されている。そして、アクセルレバー操作用カム46の回動に伴ってカム面46aがアクセルレバー45に設けられたカムフォロア54に押圧作用してアクセルレバー45を切り位置から入り位置に位置変更することにより、速度調整レバー操作用ケーブル55を引っ張り操作して速度調整レバー42をアイドリング状態から定格回転状態に切り換えるようになっている。
【0026】
前記脱穀クラッチ操作用リンク部48は、回動ボス部52に固定された脱穀クラッチ操作用取り付け板56、及び、脱穀クラッチ操作用取り付け板56に連結ピンを介して相対回動自在に連結され且つ脱穀クラッチ操作用ケーブル57が取り付けられた脱穀クラッチ操作用L字リンク58を備えて構成され、刈取クラッチ操作用リンク部49は、回動ボス部52に固定された刈取クラッチ操作用取り付け板59、及び、刈取クラッチ操作用取り付け板59に連結ピンを介して相対回動自在に連結され且つ刈取クラッチ操作用ケーブル60が取り付けられた刈取クラッチ操作用L字リンク61を備えて構成されている。
そして、回動ボス部52の回動に伴って、脱穀クラッチ操作用取り付け板56が回動ボス部52に固定されている基端部を揺動支点として揺動し、脱穀クラッチ操作用取り付け板56に相対回動自在に連結されている脱穀クラッチ操作用L字リンク58に取り付けられている脱穀クラッチ操作用ケーブル57を引っ張り操作して脱穀クラッチ12を入り状態に切り換え、又、回動ボス部52の回動に伴って、刈取クラッチ操作用取り付け板59が回動ボス部52に固定されている基端部を揺動支点として揺動し、刈取クラッチ操作用取り付け板59に相対回動自在に連結されている刈取クラッチ操作用L字リンク61に取り付けられている刈取クラッチ操作用ケーブル60を引っ張り操作して脱穀クラッチ12を入り状態に切り換えるようになっている。
【0027】
前記切換操作用モータM2を正逆回転駆動すると、クラッチ操作体Bを取り付け用軸部51の軸芯周りで正逆回転させて、図6に示す走行停止位置と、図7に示す走行位置と、図8に示す脱穀位置と、図9に示す刈取収穫作業位置とに切り換え操作する構成となっている。
説明を加えると、図6に示すように、クラッチ操作体Bが走行停止位置に位置する場合において、アクセルレバー操作用カム46のカム面46aがカムフォロア54に当接することにより、アクセルレバー45を切り位置に維持し、速度調整レバー42をアイドリング状態に維持する。ちなみに、この走行停止位置において、脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10の両方とも切り状態になっている。
【0028】
図7に示すように、切換操作用モータM2を正回転駆動させることにより、クラッチ操作体Bが走行停止位置から走行位置に位置変更する場合において、アクセルレバー操作用カム46のカム面46aがカムフォロア54に押圧作用することにより、アクセルレバー45を切り位置から入り位置に切り換え、速度調整レバー42をアイドリング状態から定格回転状態に切り換える。ちなみに、この走行位置において、脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10の両方とも切り状態になっている。
【0029】
図8に示すように、切換操作用モータM2を正回転駆動させることにより、クラッチ操作体Bが走行位置から脱穀位置に位置変更する場合において、アクセルレバー操作用カム46の外周面46bがカムフォロア54に当接することにより、アクセルレバー45を入り位置に維持し、速度調整レバー42を定格回転状態に維持する。刈取クラッチ操作用取り付け板59が刈取クラッチ操作用ケーブル60の延びる方向にほぼ直交する方向に揺動するので、刈取クラッチ操作用取り付け板59に相対回動自在に連結されている刈取クラッチ操作用L字リンク61に取り付けられている刈取クラッチ操作用ケーブル60を引っ張り操作することがほとんど無く、刈取クラッチ10を切り位置に維持する。脱穀クラッチ操作用取り付け板56が脱穀クラッチ操作用ケーブル57の延びる方向に揺動するので、脱穀クラッチ操作用取り付け板56に相対回動自在に連結されている脱穀クラッチ操作用L字リンク58に取り付けられている脱穀クラッチ操作用ケーブル57を引っ張り操作して、脱穀クラッチ12を切り状態から入り状態に切り換える。
【0030】
図9に示すように、切換操作用モータM2を正回転駆動させることにより、クラッチ操作体Bが脱穀位置から刈取収穫作業位置に位置変更する場合において、アクセルレバー操作用カム46の外周面46bがカムフォロア54に当接することにより、アクセルレバー45を入り位置に維持し、速度調整レバー42を定格回転状態に維持する。刈取クラッチ操作用取り付け板59が刈取クラッチ操作用ケーブル60の延びる方向に揺動するので、刈取クラッチ操作用取り付け板59に相対回動自在に連結されている刈取クラッチ操作用L字リンク61に取り付けられている刈取クラッチ操作用ケーブル60を引っ張り操作して、刈取クラッチ10を切り位置から入り状態に切り換える。脱穀クラッチ操作用取り付け板56が脱穀クラッチ操作用ケーブル57の延びる方向にほぼ直交する方向に揺動するので、脱穀クラッチ操作用取り付け板56に相対回動自在に連結されている脱穀クラッチ操作用L字リンク58に取り付けられている脱穀クラッチ操作用ケーブル57を引っ張り操作することがほとんど無く、脱穀クラッチ12を入り状態に維持する。
尚、切換操作用モータM2を逆回転駆動させることにより、クラッチ操作体Bが刈取作業位置から走行停止位置に位置変更する場合において、バネの付勢力により速度調整レバー42を定格回転状態からアイドリング状態に切り換え、アクセルレバー45を入り位置から切り位置に位置変更する。
【0031】
以上の構成により、クラッチ操作体Bを取り付け用軸部51の軸芯周りで正回転させることにより、速度調整レバー42がアイドリング状態、脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10が切り状態となる走行停止位置、速度調整レバー42が定格回転状態、脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10が切り状態となる走行位置、速度調整レバー42が定格回転状態、脱穀クラッチ12が入り状態、刈取クラッチ10が切り状態となる脱穀位置、速度調整レバー42が定格回転状態、脱穀クラッチ12が入り状態、刈取クラッチ10が入り状態となる刈取作業位置に順次切り換え操作する構成となっている。又、クラッチ操作体位置検出ボリュームVRが走行停止位置、走行位置、脱穀位置、刈取作業位置を検出することで、脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10の入り状態や切り状態を検出できることになる。ちなみに、クラッチ操作体Bが走行停止位置に位置する状態において、アクセルレバー45を操作することにより、速度調整レバー42をアイドリング状態から定格回転状態に切り換えることができるようになっている。
【0032】
前記搭乗運転部6には、走行速度を指令する主変速レバー69、刈取処理装置3の停止、上昇、及び、下降を指令する手動操作式の昇降操作レバー70、昇降操作レバー70の上部に位置して親指にて押し操作される自動昇降スイッチSW1、速度調整レバー42を入り位置と切り位置とに切り換え操作するアクセルレバー45、クラッチ入り指令及びクラッチ切り指令を指令する手動操作式のクラッチ入切指令手段CSとしての操作スイッチSW2、扱深さを自動調節する自動調節モードの入り状態及び切り状態を指令する扱深さ入切スイッチSW3、深扱ぎ指令及び浅扱ぎ指令を指令する手動操作式の扱深さ指令手段KSとしての深扱ぎスイッチSW4及び浅扱ぎスイッチSW5、キー操作により図示しない電源回路を切るオフ状態、及び、電源回路を入れるオン状態に切り換え操作自在なメインスイッチSW6等が設けられている。
【0033】
図10に示すように、自動昇降スイッチSW1、操作スイッチSW2、扱深さ入切スイッチSW3、深扱ぎスイッチSW4、浅扱ぎスイッチSW5、メインスイッチSW6、株元センサS1、穂先側検出センサS2、株元側検出センサS3、昇降操作レバー70の操作位置を検出する昇降センサS4、対機体高さセンサS5等が備えられ、これらの入力情報に基づいて扱深さモータM1、切換操作用モータM2、昇降用油圧制御ユニットVUの動作、及び、操作スイッチSW2の点灯を制御する制御手段としてのマイクロコンピュータ利用の制御手段としての制御装置Hが備えられている。
【0034】
前記制御装置Hによる刈取処理装置3の扱深さ制御について説明を加えると、株元センサS1がオン状態でかつ脱穀クラッチ12が入り状態である場合において、扱深さ入切スイッチSW3の自動調節モードの入り状態の指令により、穂先側検出センサS2及び株元側検出センサS3に基づいて扱深さを適切な状態に調節するように扱深さモータM1を作動させる自動扱深さ制御を実行し、扱深さ指令手段KSの指令により、扱深さモータM1を深扱ぎ側又は浅扱ぎ側に作動させる手動扱深さ制御を実行するように構成されている。
【0035】
前記制御手段による自動扱深さ制御について説明を加えると、株元側検出センサS3及び穂先側検出センサS2が共にオン状態であると、深扱ぎ側に外れたと判別して、扱深さモータM1を浅扱ぎ側に作動させ、株元側検出センサS3及び穂先側検出センサS2が共にオフ状態であると、浅扱ぎ側に外れたと判別して、扱深さモータM2を深扱ぎ側に作動させ、株元側検出センサS3がオン状態でかつ穂先側検出センサS2がオフ状態であると、扱深さが適正な扱深さであると判別し、扱深さモータM2の作動を停止させるように構成されている。
【0036】
前記制御手段による手動扱深さ制御について説明を加えると、操作スイッチSW2の非指令状態での深扱ぎスイッチSW4の深扱ぎ指令により、扱深さ入切スイッチSW3の指令に拘わらず、それが指令されている間だけ、扱深さモータM1を深扱ぎ側に作動させ、操作スイッチSW2の非指令状態での浅扱ぎスイッチSW5の浅扱ぎ指令により、扱深さ入切スイッチSW3の指令に拘わらず、それが指令されている間だけ、扱深さモータM1を浅扱ぎ側に作動させるように構成されている。
【0037】
前記制御装置Hによる刈取処理装置3の昇降制御について説明を加えると、昇降操作レバー70が、昇降停止指令位置に位置すると、刈取処理装置3の昇降を停止させるように昇降用油圧制御ユニットVUを切換制御し、昇降操作レバー70が、上昇指令範囲に位置すると、昇降停止指令位置から昇降操作レバー70が離れて位置するほど高速となる形態で刈取処理装置3を上昇させるように昇降用油圧制御ユニットVUを切換制御し、昇降操作レバー70が、下降指令範囲に位置すると、昇降停止指令位置から昇降操作レバー70が離れて位置するほど高速となる形態で刈取処理装置3を下降させるように昇降用油圧制御ユニットVUを切換制御する。そして、刈取処理装置3が、対機体高さセンサS5により設定高さよりも下降側の刈取処理高さにあることが検出されているときに、自動昇降スイッチSW1が押し操作されると、刈取処理装置3を最大上昇位置に近い非刈取上昇位置まで上昇させるように昇降用油圧制御ユニットVUを切換制御し、対機体高さセンサS5により非刈取上昇位置に位置することが検出されているときに、自動昇降スイッチSW1が押し操作されると、刈取処理装置3を設定高さまで下降させるように昇降用油圧制御ユニットVUを切換制御するようになっている。
【0038】
前記制御装置Hによる速度調整レバー42、作業クラッチSCの切り換え制御について説明を加えると、操作スイッチSW2によりクラッチ入り指令が指令されると、速度調整レバー42の定格回転状態に且つ作業クラッチSCを入り状態とし、且つ、操作スイッチSW2によりクラッチ切り指令が指令されると、速度調整レバー42を定格回転状態に且つ作業クラッチSCを切り状態とすべく、クラッチ操作体位置検出ボリュームVRの検出情報に基づいて切換操作用モータM2の作動を制御するように構成され、クラッチ入用緊急操作指令及びクラッチ切用緊急操作指令を指令する手動操作式の緊急操作指令手段ESが、操作スイッチSW2及び扱深さ指令手段KSを兼用して構成され、クラッチ操作体位置検出ボリュームVRが異常であると判別したときには、操作スイッチSW2の指令による切換操作用モータM2の作動を停止するように構成され、且つ、操作スイッチSW2によりクラッチ入り指令が指令された状態における扱深さ指令手段KSによる深扱ぎ指令又は浅扱き指令を、クラッチ入用緊急操作指令又はクラッチ切用緊急操作指令として判別する形態で、操作スイッチSW2及び扱深さ指令手段KSの同時指令により、それが指令されている間だけ、作業クラッチSCを入り状態に操作する側に又は作業クラッチSCを切り状態に操作する側に切換操作用モータM2を作動させるように構成されている。
そして、緊急操作指令手段ESの指令にて切換操作用モータM2を作動させるときには、操作スイッチSW2の指令により切換操作用モータM2を作動させるときに較べて、切換操作用モータM2を低速で作動させるように構成されている。
【0039】
説明を加えると、図11に示すように、操作スイッチSW2は、ランプ付きロック無しスイッチにて構成されている。そして、メインスイッチ76がオフ状態からオン状態に切り換えられると、エンジンEが始動され、クラッチ操作体位置検出ボリュームVRの検出情報に基づいてクラッチ操作体Bが走行停止位置に位置するように切換操作用モータM2を作動させるとともに、操作スイッチSW2を消灯させる(図11(a)参照)。これにより、速度調整レバー42をアイドリング状態とし、刈取クラッチ10及び脱穀クラッチ12を切り状態とすることになる。
【0040】
前記操作スイッチSW2が押し操作されると、クラッチ操作体位置検出ボリュームVRの検出情報に基づいてクラッチ操作体Bが脱穀位置に位置するように切換操作用モータM2を作動させるとともに、操作スイッチSW2を点灯させる(図11(b)参照)。これにより、速度調整レバー42を定格回転状態にかつ脱穀クラッチ12を入り状態としかつ刈取クラッチ10を切り状態にする運転起動状態になる。そして、運転起動状態において、対機体高さセンサS5により刈取処理装置3が設定高さよりも下降側の刈取処理高さに位置することが検出されると、刈取開始条件が満たされたと判別して、クラッチ操作体位置検出ボリュームVRの検出情報に基づいてクラッチ操作体Bが刈取作業位置に位置するように切換操作用モータM2を作動させ、対機体高さセンサS5により刈取処理装置3が設定高さよりも上昇側の非刈取処理高さに位置することが検出されると、刈取開始条件が満たされていないと判別して、クラッチ操作体位置検出ボリュームVRの検出情報に基づいてクラッチ操作体Bが脱穀位置に位置するように切換操作用モータM2を作動させる。
【0041】
前記操作スイッチSW2が再度押し操作されると、クラッチ操作体位置検出ボリュームVRの検出情報に基づいてクラッチ操作体Bが走行位置に位置するように切換操作用モータM2を作動させるとともに、操作スイッチSW2を消灯させる(図11(c)参照)。これにより、速度調整レバー42を定格回転状態とし、刈取クラッチ10及び脱穀クラッチ12を切り状態とすることになる。
【0042】
そして、制御手段Hは、クラッチ操作体位置検出ボリュームVRの電圧値が設定値の範囲(例えば0.5V〜4.5Vの範囲)にあるか否かをチェックして、そのクラッチ操作体位置検出ボリュームVRの電圧値が設定値の範囲外のときには、クラッチ操作体位置検出ボリュームVRの故障であると判別して、報知手段としての報知ブザー71による報知作動を行なうとともに、操作スイッチSW2の押し操作による切換操作用モータM2の作動を停止し、操作スイッチSW2を押し操作した状態で深扱ぎスイッチSW4を押し操作することにより、操作スイッチSW2及び深扱ぎスイッチSW4が同時に指令されている間だけ、脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10を入り状態に操作する側に間欠的に切換操作用モータM2を作動させる、すなわち、切換操作用モータM2を間欠的に正回転駆動させ、操作スイッチSW2を押し操作した状態で浅扱ぎスイッチSW5を押し操作することにより、操作スイッチSW2及び深扱ぎスイッチSW5が同時に指令されている間だけ、脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10を切り状態に操作する側に間欠的に切換操作用モータM2を作動させる、すなわち、切換操作用モータM2を間欠的に逆回転駆動させる。
【0043】
次に、図12、図13のフローチャートに基づいて、速度調整レバー42、脱穀クラッチ12、刈取クラッチ10の切り換え制御について説明を加えると、メインスイッチSW6がオフ状態からオン状態に切り換えられると、クラッチ操作体位置検出ボリュームVRの電圧値が設定値の範囲(例えば0.5V〜4.5Vの範囲)にあるか否かをチェックして(ステップ0)、そのクラッチ操作体位置検出ボリュームVRの電圧値が設定値の範囲内であれば、速度調整レバー42をアイドリング状態にかつ刈取クラッチ10及び脱穀クラッチ12を切り状態とする(ステップ1)。作業開始指令用操作スイッチ75の押し操作により作業開始指令が指令されると、速度調整レバー42を定格回転状態にかつ脱穀クラッチ12を入り状態としかつ刈取クラッチ10を切り状態にする運転起動状態にする(ステップ2、3)。運転起動状態において、対機体高さセンサS5により刈取処理装置3が設定高さよりも下降側の刈取処理高さに位置することが検出されると、刈取開始条件が満たされたと判別して、速度調整レバー42を定格回転状態にかつ脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10を入り状態とする(ステップ4、5)。運転起動状態において、対機体高さセンサS5により刈取処理装置3が設定高さよりも上昇側の非刈取処理高さに位置することが検出されると、刈取開始条件が満たされていないと判別して、速度調整レバー42を定格回転状態にかつ脱穀クラッチ12を入り状態としかつ刈取クラッチ10を切り状態とする(ステップ4、6)。そして、作業停止指令用操作スイッチ72の押し操作により作業停止指令が指令されるまでの間、刈取開始条件が満たされると、速度調整レバー42を定格回転状態にかつ脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10を入り状態とし、刈取開始条件が満たされていないと、速度調整レバー42を定格回転状態にかつ脱穀クラッチ12を入り状態としかつ刈取クラッチ10を切り状態とする(ステップ4〜7)。作業停止指令用操作スイッチ72の押し操作により作業停止指令が指令されると、速度調整レバー42を定格回転状態にかつ脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10を切り状態とする(ステップ7、9)。作業開始指令が指令されないと、作業停止指令用操作スイッチ72の押し操作により作業停止指令が指令されると、速度調整レバー42を定格回転状態にかつ脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10を切り状態とし、作業停止指令が指令されないと、速度調整レバー42、脱穀クラッチ12、刈取クラッチ10の状態を維持する(ステップ2、8、9)。クラッチ操作体位置検出ボリュームVRが設定値の範囲外であれば、報知ブザー71による報知作動を行い、切換操作用モータM2の作動を停止する(ステップ10、11)。そして、操作スイッチSW2を押し操作した状態で深扱ぎスイッチSW4を押し操作すると、脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10を入り状態に操作する側に間欠的に切換操作用モータM2を作動させ、操作スイッチSW2を押し操作した状態で浅扱ぎスイッチSW5を押し操作すると、脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10を切り状態に操作する側に間欠的に切換操作用モータM2を作動させる(ステップ10〜15)。
【0044】
〔別実施の形態〕
(1)上記実施の形態では、緊急操作指令手段ESの指令にて切換操作用モータM2を作動させるときには、操作スイッチSW2の指令により切換操作用モータM2を作動させるときに較べて、切換操作用モータM2を低速で作動させる構成を例示したが、このような構成に代えて、緊急操作指令手段ESの指令にて切換操作用モータM2を作動させるときには、操作スイッチSW2の指令により切換操作用モータM2を作動させると同じ又は略同じ速度で、切換操作用モータM2を作動させる構成としてもよい。
【0045】
(2)上記実施の形態では、切換操作用モータM2を低速で作動させる構成として、切換操作用モータM2を間欠的に作動させる構成を例示したが、このような構成に代えて、切換操作用モータM2の作動速度を遅くする構成としてもよい。
【0046】
(3)上記実施の形態では、手動操作式のクラッチ入切指令手段CSとしての操作スイッチSW2が設けられ、操作スイッチSW2が押し操作されると、クラッチ操作体Bが脱穀位置に位置するように切換操作用モータM2を作動させ、操作スイッチSW2が再度押し操作されると、クラッチ操作体Bが走行位置に位置するように切換操作用モータM2を作動させる構成を例示したが、このような構成に代えて、手動操作式のクラッチ入切指令手段CSとしての作業開始指令用操作スイッチ及び作業停止指令用操作スイッチが設けられ、作業開始指令用操作スイッチが押し操作されると、クラッチ操作体Bが脱穀位置に位置するように切換操作用モータM2を作動させ、作業停止指令用操作スイッチが押し操作されると、クラッチ操作体Bが走行位置に位置するように切換操作用モータM2を作動させる構成としてもよい。
【0047】
(4)上記実施の形態では、クラッチ入用緊急操作指令及びクラッチ切用緊急操作指令を指令する手動操作式の緊急操作指令手段ESが、操作スイッチSW2及び扱深さ指令手段KSを兼用する構成を例示したが、このような構成に代えて、緊急操作指令手段ESを別に設ける構成としてもよい。
【0048】
(5)上記実施の形態では、操作スイッチSW2を押し操作した状態で深扱ぎスイッチSW4を押し操作することにより、脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10を入り状態に操作する側に間欠的に切換操作用モータM2を作動させ、操作スイッチSW2を押し操作した状態で浅扱ぎスイッチSW5を押し操作することにより、脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10を切り状態に操作する側に間欠的に切換操作用モータM2を作動させる構成を例示したが、このような構成に代えて、操作スイッチSW2を押し操作した状態で深扱ぎスイッチSW4を押し操作することにより、脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10を切り状態に操作する側に間欠的に切換操作用モータM2を作動させ、操作スイッチSW2を押し操作した状態で浅扱ぎスイッチSW5を押し操作することにより、脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10を入り状態に操作する側に間欠的に切換操作用モータM2を作動させる構成としてもよい。
【0049】
(6)上記実施の形態では、クラッチ操作体位置検出ボリュームVRの電圧値が設定値の範囲(例えば0.5V〜4.5Vの範囲)以外の値のときには、クラッチ操作体位置検出ボリュームVRの故障であると判別して、報知ブザー71による報知作動を行なう構成を例示したが、このような構成に代えて、操作スイッチSW2を点滅させる構成としてもよい。
【0050】
(7)上記実施の形態では、脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10の入り状態と切り状態との切換操作及び速度調整レバー42の定格回転状態とアイドリング状態との切換操作を行う切換操作用モータM2を設ける構成を例示したが、このような構成に代えて、脱穀クラッチ12及び刈取クラッチ10の入り状態と切り状態との切換操作を行なうクラッチ切換操作用モータと、速度調整レバー42の定格回転状態とアイドリング状態との切換操作を行う速度調整レバー切換操作用モータとを各別に設ける構成としてもよく、あるいは、速度調整レバー42、脱穀クラッチ12、刈取クラッチ10の夫々に対して脱穀クラッチ切換操作用モータ、刈取クラッチ切換操作用モータ、速度調整レバー切換操作用モータを設ける構成としてもよい。
(8)上記実施の形態では、制御手段Hは、クラッチ操作体位置検出ボリュームVRの電圧値が設定値の範囲(例えば0.5V〜4.5Vの範囲)以外の値のときには、クラッチ操作体位置検出ボリュームVRの故障であると判別して、報知手段としての報知ブザー71による報知作動を行なうとともに、操作スイッチSW2の押し操作による切換操作用モータM2の作動を停止する構成を例示したが、このような構成に加えて、深扱ぎスイッチSW4及び浅扱ぎスイッチSW5の指令による扱深さモータM1の作動を停止する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】伝動構造を示す概略構成図
【図3】クラッチ操作体の左側面図
【図4】クラッチ操作体の平面図
【図5】クラッチ操作体の右側面図
【図6】走行停止位置に位置するクラッチ操作体を示す概略構成図
【図7】走行位置に位置するクラッチ操作体を示す概略構成図
【図8】脱穀位置に位置するクラッチ操作体を示す概略構成図
【図9】刈取作業位置に位置するクラッチ操作体を示す概略構成図
【図10】制御ブロック図
【図11】スイッチの点灯状態を示す図
【図12】制御動作のフローチャート
【図13】制御動作のフローチャート
【符号の説明】
【0052】
3 刈取処理装置
4 脱穀装置
10 刈取クラッチ
12 脱穀クラッチ
42 アクセル手段
CS クラッチ入切指令手段
E エンジン
ES 緊急操作指令手段
H 制御手段
KS 扱深さ指令手段
M1 扱深さ調節手段
M2 アクチュエータ
SS 作業装置
SC 作業クラッチ
VR クラッチ操作状態検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの出力を作業装置に伝達する入り状態と前記エンジンの出力の前記作業装置への伝達を遮断する切り状態とに切り換え自在な作業クラッチと、
前記作業クラッチの前記入り状態と前記切り状態との切換を行うアクチュエータと、
クラッチ入り指令及びクラッチ切り指令を指令する手動操作式のクラッチ入切指令手段と、
前記作業クラッチの入切状態を検出するクラッチ操作状態検出手段と、
前記クラッチ入切指令手段の指令により、前記作業クラッチを前記入り状態及び前記切り状態に操作すべく、前記クラッチ操作状態検出手段の検出情報に基づいて前記アクチュエータの作動を制御するように構成された制御手段とが設けられた作業車の駆動制御装置であって、
クラッチ入用緊急操作指令及びクラッチ切用緊急操作指令を指令する手動操作式の緊急操作指令手段が設けられ、
前記制御手段が、
前記クラッチ操作状態検出手段が異常であると判別したときには、前記クラッチ入切指令手段の指令による前記アクチュエータの作動を停止するように構成され、且つ、
前記緊急操作指令手段により前記クラッチ入用緊急操作指令又は前記クラッチ切用緊急操作指令が指令されると、それが指令されている間だけ、前記作業クラッチを前記入り状態に操作する側に又は前記作業クラッチを前記切り状態に操作する側に前記アクチュエータを作動させるように構成されている作業車の駆動制御装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記緊急操作指令手段の指令にて前記アクチュエータを作動させるときには、前記クラッチ入切指令手段の指令により前記アクチュエータを作動させるときに較べて、前記アクチュエータを低速で作動させるように構成されている請求項1記載の作業車の駆動制御装置。
【請求項3】
前記作業装置が、作業車としてのコンバインに装備された脱穀装置及び穀稈を刈取処理して前記脱穀装置に供給する刈取処理装置であり、
前記作業クラッチが、前記エンジンの出力を前記脱穀装置に伝達する入り状態と前記エンジンの出力の前記脱穀装置への伝達を遮断する切り状態とに切り換え自在な脱穀クラッチ、及び、前記エンジンの出力を前記刈取処理装置に伝達する入り状態と前記エンジンの出力の前記刈取処理装置への伝達を遮断する切り状態とに切り換え自在な刈取クラッチである請求項1又は2に記載の作業車の駆動制御装置。
【請求項4】
前記脱穀装置にて刈取穀稈を脱穀処理する扱深さを調節する扱深さ調節手段と、
深扱ぎ指令及び浅扱ぎ指令を指令する手動操作式の扱深さ指令手段とが設けられ、
前記緊急操作指令手段が、前記クラッチ入切指令手段及び前記扱深さ指令手段を兼用して構成され、
前記制御手段が、
前記クラッチ入切指令手段の非指令状態での前記扱深さ指令手段の指令により、前記扱深さ調節手段を深扱ぎ側又は浅扱ぎ側に作動させるように構成され、且つ、
前記クラッチ入切指令手段により前記クラッチ入り指令が指令された状態における前記扱深さ指令手段による前記深扱ぎ指令又は前記浅扱き指令を、前記クラッチ入用緊急操作指令又は前記クラッチ切用緊急操作指令として判別する形態で、前記クラッチ入切指令手段及び前記扱深さ指令手段の同時指令により、それが指令されている間だけ、前記作業クラッチを前記入り状態に操作する側に又は前記作業クラッチを前記切り状態に操作する側に前記アクチュエータを作動させるように構成されている請求項3記載の作業車の駆動制御装置。
【請求項5】
前記エンジンを設定定格回転数にて回転させる定格回転状態とアイドリング回転数にて回転させるアイドリング状態とに切り換え自在なアクセル手段が設けられ、
前記アクチュエータは、前記作業クラッチの操作に加えて、前記アクセル手段を前記定格回転状態と前記アイドリング状態とに操作自在に構成され、
前記制御手段が、
前記クラッチ入切指令手段により前記クラッチ入り指令が指令されると、前記アクセル手段の前記定格回転状態に且つ前記作業クラッチを前記入り状態とし、且つ、前記クラッチ入切指令手段により前記クラッチ切り指令が指令されると、前記アクセル手段を前記定格回転状態に且つ前記作業クラッチを前記切り状態とすべく、前記アクチュエータの作動を制御するように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業車の駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−79577(P2008−79577A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266528(P2006−266528)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】