説明

作業車両におけるステップマットの保持構造

【課題】ステップマットを手などで捲り状態に保持する煩わしさを解消すると共に、捲り状態のステップマットが不測に元の姿勢に戻り、給油作業や油量点検作業を阻害する不都合を回避する。
【解決手段】トランスミッションケース6の給油口6aを操縦部3のステップ18に配置すると共に、ステップ18に敷いたステップマット19で給油口6aを覆う走行機体1において、ステップマット19の下に帯状の面ファスナ20を備え、トランスミッションケース6の給油口6aを露出させるべくステップマット19を捲ったとき、捲ったステップマット19の周囲に面ファスナ20を巻き付け、面ファスナ20の両端部同士を貼り合わせることにより、ステップマット19を捲り状態に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタなどの作業車両におけるステップマットの保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前後に操縦ハンドルと運転席を備え、該操縦ハンドルと運転席との間のステップにステップマットを載置し、その下方にトランスミッションケースの給油口を備えた作業車両が知られている。この種の作業車両においては、トランスミッションの給油口がステップマットで覆われるので、給油口のキャップなどに泥土や藁屑が付着することがなく、給油の際にこれらの不純物がトランスミッションケース内に混入する不具合を回避できる一方、給油や油量点検に際し、ステップマットを全体的に捲り、これを手などで捲り状態に保持する必要があって、給油や油量点検が面倒であった。
【0003】
そこで、特許文献1に示される作業車両では、ステップマットの一部に切欠きを設け、該切欠きに沿ってステップマットの一部を捲ることにより、給油口を露出できるようにしてある。このようなステップマットによれば、給油や油量点検に際し、ステップマットを全体的を捲る必要がないので、これらの作業が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−296735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すように、ステップマットの一部に切欠きを設けると、ステップマットの耐久性が低下するという問題がある。特に、給油口を露出させる際に折れ目となる部分は、繰り返し折り曲げられるので、劣化により切れてしまう惧れがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、トランスミッションケースの給油口を操縦部のステップ下方に形成すると共に、ステップに敷いたステップマットで給油口を覆う作業車両において、前記ステップマットの下に帯状の面ファスナを備え、トランスミッションケースの給油口を露出させるべくステップマットを捲ったとき、捲ったステップマットの周囲に面ファスナを巻き付け、面ファスナの両端部同士を貼り合わせることにより、ステップマットを捲り状態に保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、トランスミッションケースの給油口を露出させるべくステップマットを捲ったとき、捲ったステップマットの周囲に面ファスナを巻き付け、面ファスナの両端部同士を貼り合わせることにより、ステップマットを捲り状態に保持することができるので、ステップマットを手などで捲り状態に保持する煩わしさがないだけでなく、捲り状態のステップマットが不測に元の姿勢に戻り、給油作業や油量点検作業を阻害する不都合も回避できる。しかも、ステップマットに切欠きなどの加工を施す必要がないので、耐久性の低下も回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】トラクタの側面図である。
【図2】トランスミッションケースの断面図である。
【図3】操縦部の平面図である。
【図4】ステップ部の平面図である。
【図5】ステップ部の斜視図である。
【図6】ステップマットを捲り面ファスナで保持した状態を示すステップ部の斜視図である。
【図7】(A)は面ファスナの作用説明図、(B)は面ファスナの平面図、(C)は面ファスナの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は作業車両であるトラクタの走行機体であって、該走行機体1は、エンジン(図示せず)が搭載されるエンジン搭載部2と、オペレータが乗車する操縦部3と、ロータリ4などの作業機が連結される作業機連結部5とを備えている。
【0010】
操縦部3の下方には、トランスミッションケース6が設けられている。図2に示すように、トランスミッションケース6は、エンジンから入力される動力を断続する主クラッチ機構7、走行動力を変速する第一主変速機構8、前後進切換機構9、副変速機構10、第二主変速機構11及び前輪倍速機構12、作業動力を断続するPTOクラッチ機構13、作業動力を変速するPTO変速機構14などを内装している。トランスミッションケース6の中には、潤滑油と油圧機器用の作動油を兼ねるオイルが充填されており、トランスミッションケース6の上部に形成される給油口6aからオイルの補給や油量点検が行われるようになっている。なお、図中の符号15は、給油口6aを開閉するキャップである。
【0011】
図3及び図4に示すように、操縦部3は、前後に操縦ハンドル16と運転席17を備え、該操縦ハンドル16と運転席17との間には、操縦部3の床面となるステップ18が形成されている。ステップ18の左右中央部には、前述した給油口6aが配置されており、その上方は、ステップ18に敷かれるステップマット19で覆われている。このようにすると、給油口6aのキャップ15などに泥土や藁屑が付着することがなく、給油の際にこれらの不純物がトランスミッションケース6内に混入する不具合を回避できる一方、給油や油量点検に際し、ステップマット19を全体的に捲り、これを手などで捲り状態に保持する必要があった。
【0012】
そこで、本発明に係る走行機体1では、トランスミッションケース6の給油口6aを操縦部3のステップ18に配置すると共に、ステップ18に敷いたステップマット19で給油口6aを覆うにあたり、図3〜図5に示すように、ステップマット19の下に帯状の面ファスナ20を備え、トランスミッションケース6の給油口6aを露出させるべくステップマット19を捲ったときは、図6に示すように、捲ったステップマット19の周囲に面ファスナ20を巻き付け、面ファスナ20の両端部同士を貼り合わせることにより、ステップマット19を捲り状態に保持できるようにしてある。
【0013】
このようにすると、ステップマット19を手などで捲り状態に保持する煩わしさがないだけでなく、捲り状態のステップマット19が不測に元の姿勢に戻り、給油作業や油量点検作業を阻害する不都合も回避できる。しかも、ステップマット19に切欠きなどの加工を施す必要がないので、耐久性の低下も回避することができる。
【0014】
また、本実施形態では、ステップマット19の下に帯状の面ファスナ20を忍ばせるにあたり、図5に示すように、面ファスナ20の一端側(ステップマット19の非捲り側)は、予め露出状態とすることが好ましい。このようにすると、面ファスナ20でステップマット19を捲り状態に保持する際、面ファスナ20の両端部同士を貼り合わせる作業が容易になる。
【0015】
図7の(B)、(C)に示すように、面ファスナ20は、多数のフックが形成されるフック形成面20aと、多数のループが形成されるループ形成面20bとを有し、フック形成面20aとループ形成面20bとの貼り合わせが可能である。本実施形態では、面ファスナ20の全面をフック形成面20a又はループ形成面20bとしているが、ステップマット19を捲り状態に保持する際に、貼り合わせる可能性がある両端側のみにフック形成面20a又はループ形成面20bを形成してもよい。
【0016】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、トランスミッションケース6の給油口6aを操縦部3のステップ18に配置すると共に、ステップ18に敷いたステップマット19で給油口6aを覆う走行機体1において、ステップマット19の下に帯状の面ファスナ20を備え、トランスミッションケース6の給油口6aを露出させるべくステップマット19を捲ったとき、捲ったステップマット19の周囲に面ファスナ20を巻き付け、面ファスナ20の両端部同士を貼り合わせることにより、ステップマット19を捲り状態に保持するようにしたので、ステップマット19を手などで捲り状態に保持する煩わしさがないだけでなく、捲り状態のステップマット19が不測に元の姿勢に戻り、給油作業や油量点検作業を阻害する不都合も回避できる。しかも、ステップマット19に切欠きなどの加工を施す必要がないので、耐久性の低下も回避することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 走行機体
3 操縦部
6 トランスミッションケース
6a 給油口
15 キャップ
16 操縦ハンドル
17 運転席
18 ステップ
19 ステップマット
20 面ファスナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッションケースの給油口を操縦部のステップ下方に形成すると共に、ステップに敷いたステップマットで給油口を覆う作業車両において、
前記ステップマットの下に帯状の面ファスナを備え、トランスミッションケースの給油口を露出させるべくステップマットを捲ったとき、捲ったステップマットの周囲に面ファスナを巻き付け、面ファスナの両端部同士を貼り合わせることにより、ステップマットを捲り状態に保持することを特徴とする作業車両におけるステップマットの保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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