説明

作業車両のキャビンシート

【課題】 トラクタや、コンバイン作業機のキャビンは、ガラス窓や、ガラスドア等を閉鎖しても、作業揺動や、振動等による比較的低い周波数の共鳴振動騒音が多く、キャビンシートに着座して運転していても、耳鳴りを生じるような耳元騒音を受け易い。このような低周波数(500HZ以)の騒音を簡潔な構成によって、効率的に低減する。
【解決手段】 キャビン1内に設置の運転シート2の背もたれ3の内部に、騒音を吸収する吸音空洞4を形成し、この吸音空洞4の開口5を前記背もたれ3の左、右上部位置に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタや、コンバイン等の作業車両に搭載のキャビン内の騒音を低減するキャビンシートに関する。
【背景技術】
【0002】
キャビンの内装面の一部に吸音材を敷設して、騒音防止効果を高める技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008ー260432号公報(第1頁、図1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トラクタや、コンバイン作業機のキャビンは、ガラス窓や、ガラスドア等を閉鎖しても、作業揺動や、振動等による比較的低い周波数の共鳴振動騒音が多く、キャビンシートに着座して運転していても、耳鳴りを生じるような耳元騒音を受け易い。この発明は、このような低周波数(500HZ以)の騒音を簡潔な構成によって、効率的に低減するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、キャビン1内に設置の運転シート2の背もたれ3の内部に、騒音を吸収する吸音空洞4を形成し、この吸音空洞4の開口5を前記背もたれ3の左、右上部位置に形成したことを特徴とする作業車両のキャビンシートの構成とする。
【0006】
キャビン1内に発生する騒音で、運転シート2の背もたれ3の上部周りの騒音は、この背もたれ3の左、右両側部位置の開口5から、背もたれ3の内側に設けられた吸音空洞4へ伝播して吸収される。この開口5は、運転シート2に着座して運転操作する運転者の左、右両耳元部に対向した位置において、吸音作用するため、運転者への騒音伝播を有効に防止する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明は、吸音空洞4を、運転シート2の背もたれ3の内部に設けるため、この運転シート2の外観を大きく変形することなく、又、キャビン1内装形態を変形させて、運転操作を制限しない構成とすることができ、この吸音空洞4の開口5を背もたれ4に受ける運転者の耳元部に接近させて、効果的な吸音を行い、耳元位置において効率的に騒音耳鳴りを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】トラクタキャビンの側面図。
【図2】運転シート部の側面図。
【図3】その正面図。
【図4】気柱共鳴吸音機構部の説明図。
【図5】運転シート部の正面図。
【図6】吸音空洞、及び開口部の配置例を示す運転シート部の正面図と、側面図。
【図7】吸音空洞、及び開口部の配置例を示す運転シート部の正面図と、側面図。
【図8】開口部を上方へ向けて形成の吸音空洞を配置した運転シート部の正面図と、側面図。
【図9】開口部を上方へ向けて形成の吸音空洞を配置した運転シート部の正面図と、側面図。
【図10】開口部を上方へ向けて形成の吸音空洞を配置した運転シート部の正面図と、側面図。
【図11】開口部を上方へ向けて形成の吸音空洞を配置した運転シート部の正面図と、側面図。
【図12】開口部を後方へ向けて形成の吸音空洞を配置した運転シート部の正面図と、側面図。
【図13】開口部を後方へ向けて形成の吸音空洞を配置した運転シート部の正面図と、側面図。
【図14】開口部を後方へ向けて形成の吸音空洞を配置した運転シート部の正面図と、側面図。
【図15】吸音空洞、及び開口部を細径のパイプ状形態に形成した運転シート部の正面図と、側面図。
【図16】吸音空洞、及び開口部を細径のパイプ状形態に形成した運転シート部の正面図と、側面図。
【図17】吸音空洞をヘッドレストに配置した運転シート部の正面図と、側面図。
【図18】吸音空洞をヘッドレストに配置した運転シート部の正面図と、側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面に基づいて、トラクタ車体にキャビン1を搭載した形態を示す。車体は、ステアリングポスト6上のハンドル7によって操向する前輪8と、前部のボンネット9下に搭載のエンジン10によって、クラッチハウジングやミッションケース11等内の連動機構を経て駆動される後輪12を有して、駆動走行することができ、この車体後部に昇降リンク機構を介して連結するロータリ耕耘装置等の各種の作業装置を連結して対地作業を行うことができる。キャビン1は前後四角部にフロントピラー13、リヤピラー14を配置して、上側のルーフフレーム15上にルーフボード16を設け、これら左、右のフロントピラー13間には、下端縁をダッシュボード17に接当させるフロントガラス18を設け、左、右両側のフロントピラー13とリヤピラー14との間には、後側のドアヒンジ19の周りに外側へ回動させて開けることができるドアガラス20を設け、後側の左、右リヤピラー14間には、リヤガラス21を設けて、キャビン1内を気密状態に維持して、外周の作業状況を透視し易く構成している。
【0010】
このようなキャビン1は、車体のダッシュボード17と後部のフェンダ22の間のステップフロア23や、シートフロア24等の上側にわたる間を覆う形態に構成する。これらステップフロア23やシートフロア24等は、車体側に一体的構成とするか、又は、キャビン1側に一体的構成する形態とする。左、右のフェンダ22間のミッションケース11上側部を覆うように構成するシートフロア24の上側にシートブラケケット25を介して運転シート2を搭載して取付ける。又、このシートフロア24は、外周のフロアフレーム26に対して着座可能の構成として、このキャビンフロアの一部を開閉可能な形態として、メンテナンス性を行い易く構成している。
【0011】
前記運転シート2は、後部に背もたれ3を有し、この背もたれ3の一側(左手側)にはアームレスト27を有し、反対側には、この運転シート2を移動調節するための操作レバー28を設けている。
【0012】
ここにおいて、キャビン1内に設置の運転シート2の背もたれ3の内部に、騒音を吸収する吸音空洞4を形成し、この吸音空調4の開口5を前記背もたれ(3)の左右上部位置に形成したことを特徴とする作業車両のキャビンシートの構成とする。
【0013】
キャビン1内に発生する騒音で、運転シート2の背もたれ3の上部周りの騒音は、この背もたれ3の左、右両側部位置の開口5から、背もたれ3の内側に設けられた吸音空洞4へ伝播して吸収される。この開口5は、運転シート2に着座して運転操作する運転者の左、右両耳元部に対向した位置において、吸音作用するため、運転者への騒音伝播を有効に防止する。
【0014】
前記運転シート2の背もたれ3は、運転者の着座姿勢の略肩の高さ程度設けられるが、この背もたれ3のレザー等で覆われて構成される背凭れ厚さの内部に、左右一対の吸音空洞4を配置する。この吸音空洞4は合成樹製の筒体からなり、外側端に細径パイプ状の開口5を突出させて、この開口5を背もたれ3の左、右20面に両側方のドアガラス向けて開口せて、この運転シート2に着座して運転する運転者の頭部耳元部に接近させた位置に設定して、気柱共鳴吸音機構の形態とするものである。この機構は、図4のように空調4部の外側のキャビン1内から音波が開口5を経て空調4内へ侵入すると、開口5部の空気が振動し、吸音空洞4部の空気質量31は、バネ29作用のように圧縮されたり、膨張されたりして運動を繰り返す。その間に壁面等の貼性抵抗30作用により音波(特に低周波数の)は吸音して減衰される。
【0015】
又、トラクタ等の作業車両の多くは、高い透視性、乃至視認性を要求されることから、ドアガラス20の面積は極力広く設定するので、エンジン10による振動からガラス面の振動は大きくしかも左右対称である場合、両ガラスの振動が同期し、共鳴音を生じ、運転者にとっては耳鳴りを生じ易いものであるが、前記のような形態によって、左、右耳元近くでの耳鳴り騒音を低減するものである。
【0016】
又、前記吸音空洞4は、図5のように背もたれ3の上部内に、左右横方向にわたって長く、単一の形態として、この左、右両端部に開口5を形成する構成とすることもできる。
図6、図7に基づいて、前記吸音空洞4の多数の開口5を、運転シート2前側のフロントガラス18に向けて形成したもので、この吸音空洞4を、図6のように背もたれ3の左、右両側部寄り位置に各別に配置するもよく、又、図7のように左右横方向にわたって長く、単一形態として、この左、右両側部側に開口5を形成することもできる。トラクタ等の作業車両の多くは高い視認性を要求されることから、地面に対し運転シート2位置を高く設置しフロントガラス18の高さ方向の長さを大きく設定するもので、エンジン10の振動がフロントガラス18の振動として伝播し、フロントガラス18から騒音を生じ運転者には耳鳴りを生じ易いものであるが、前記のように構成することによって耳鳴り騒音が低減される。
【0017】
次に、図8〜図11に基づいて、前記吸音空洞4の開口5を、上側のルーフボード16側へ向けた形態としたものである。吸音空洞4は、背もたれ3の上部左右両側部に設けて、この各上方に開口5を形成する(図8)もよく、吸音空洞4を左右横方向へ長く形成して、この左、右両側部上方に開口5を形成する(図9)形態とすることもできる。又、背もたれ3の中央上部に吸音空洞4、及び開口5を形成(図10、図11)することもできる。エンジン10の振動がキャビン1の底部のシートフロア24部と、ルーフボード16との間の定在波としてこもり音となり、騒音を生じ運転者には耳鳴りを生じることが多いが、このような構成によって、耳鳴騒音を低減することができる。
【0018】
次に、図12〜図13に基づいて、前記各配置形態の吸音空洞4の開口5を、後方のリヤガラス21の方向へ開口形成したものである。エンジン10の振動がフロントガラス18の振動として伝播し、それに同期してリヤガラス21からの反射音を生じ運転者に耳鳴りを生じることが多いが、このような構成によって、図12は図6の配置形態に代えて、この開口5を後方へ向けて開口させている。図13、図14は、図7の配置形態に代えて、この開口5を後方へ向けて開口させたものである。
【0019】
次に、図15、図16、に基づいて、前記吸音空洞4を比較的小径のパイプ状形態として、背もたれ3の内部に埋設し易くしたものである。吸音空洞4を背もたれ3の左、右側辺部32に上下方向に沿わせて埋設し(図15)、この上端部から横方向へ突出するように屈曲させた形態として開口5部をこの背もたれ3の横外側面に開放させている。又、この吸音空洞4は、横方向に長く形成して、背もたれ3横幅一杯にわたって埋設し、しかも、複数本平行状態にして埋設し(図16)、各吸音空洞4の左、右両端の開口5部を、この背もたれ3の左、右両外側面に開放させている。
【0020】
次に、図17、図18に基づいて、前記吸音空洞4を背もたれ3上端に取付けけるヘッドレスト33の厚さの内部に埋設したものである。この吸音空洞4は、開口5部をヘッドレスト33の横外側面に開放して(図17)、運転者の左、右耳元部により接近するように配置している。又、吸音空洞4を単一形態として、ヘッドレスト33に横方に沿わせて埋設し、開口5部を後側面に向けて開放する(図18)ように構成することもできる。運転シート2のヘッドレスト33のみ構成として、有効な騒音防止対策することができ、簡単、安価に構成できる。
【符号の説明】
【0021】
1 キャビン
2 運転シート
3 背もたれ
4 吸音空洞
5 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビン(1)内に設置の運転シート(2)の背もたれ(3)の内部に、騒音を吸収する吸音空洞(4)を形成し、この吸音空洞(4)の開口(5)を前記背もたれ(3)の左、右上部位置に形成したことを特徴とする作業車両のキャビンシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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