説明

作業車両の外部油圧取出装置

【課題】従来、農業用トラクタ等の外部油圧取出バルブは、フロア下方のシリンダケースの側面或いは上面に取り付けられていたので、バルブ自体の着脱、または配管の着脱時に窮屈な姿勢を余儀なくされ、操作性が悪かった。
【解決手段】操縦席側方のフェンダー(16)上に、ブラケット(5)を立設し、同ブラケット(5)の上部に外部油圧取出バルブ(4)を空間部(S1)を介して支持する。またバルブの周囲を、カバー部材(8)にて覆い、同カバー部材(8)の前面からバルブスプール(53)と連動連結したレバー取付アーム(7)を突設し、同アーム(7)に操作レバー(6)を取り付ける。またこの操作レバー(6)の突設方向を前方と上方に変更可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用芝刈機や農業用トラクタ等、作業車両の外部油圧取出装置の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用トラクタ等では、作業に応じて各種作業機を装着し、この作業機に装着された油圧アクチュエータを所謂外部油圧取出バルブにて油圧を取り出して駆動する構成となっている。そして前記外部油圧取出バルブは、一般的にミッションケース後部や作業機昇降用油圧シリンダを内装するシリンダーケースに取り付ける構成となっている。
【特許文献1】特開平8-280206号公報(図2,図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記農業用トラクタでは、ミッションケースの上方を、シートフロアやフェンダー等で覆い、車体後部には作業機を連結するリンク機構を備える構成となっている。この為、外部油圧取出バルブ、或いは同バルブに配管を着脱する場合、作業者は前記リンク機構を避けるべく窮屈な姿勢を余儀なくされ取扱性が悪いという課題が有った。また、車上の操縦席から操作するには前記バルブ、詳しくはこのバルブのスプールと操縦席近傍の操作具とをリンク機構などで接続する必要が生じ、部品コストが高くつくという課題が想定される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題に鑑みてこの発明では、作業車両の外部油圧バルブ取付装置を以下のように構成した。
即ち、請求項1の発明では、操縦席(2)の左右側方にフェンダー(16)を備え、このフェンダー(16)の上方に、空間部(S1)を空けて作業機(G)の油圧アクチュエータ(9A)へ圧油を送る外部油圧取出バルブ(4)をカバー部材(8)に覆った状態で支持すると共に、同カバー部材(8)からバルブ(4)のスプール(53)を操作する操作レバー(6)を突設したことを特徴とする作業車両の外部油圧取出装置とした。
(請求項1の作用)
以上のように構成した請求項1の発明では、車体に作業機(G)を取り付け、同作業機(G)の油圧アクチュエータ(9B)へ圧油を送るべく、フェンダー(16)上の外部油圧取出バルブ(4)へ配管を接続する。そして前記操作レバー(6)にてバルブ(4)のスプール(53)を操作して前記油圧アクチュエータ(9A)を操作する。
【0005】
また請求項2に記載の発明では、前記操作レバー(6)は、前記バルブ(4)のスプール(53)近傍に回動自在に支持すると共に、同スプール(53)と連動連結したアーム部材(7)に対し突設方向を変更可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の外部油圧取出バルブ取付装置とした。
【0006】
(請求項2の作用)
以上のように構成した請求項2の発明では、作業機(G)の油圧アクチュエータ(9A)の位置や操作位置に合わせて、操作レバー(6)の突設方向を変更する。
【発明の効果】
【0007】
これにより、請求項1の発明では、外部油圧取出バルブ(4)は、前記従来の構成と比較して車両の高位置に設置されこととなり、バルブ自体(4)の着脱、或いは同バルブ(4)への配管の着脱時にも楽な姿勢で操作することができ操作性が良い。また前記外部油圧取出バルブ(4)は、カバー部材(8)にて覆いスプール(53)を操作する操作レバー(6)を突出しているので、作業者に対して高温部を曝すこと無く操作性が良い。また外部油圧取出バルブ(4)は、下方に空間部(S1)を介して支持されているので冷却性も良い。また更に、前記従来の構成と比較して、操作レバー(6)と外部油圧取出バルブ(4)間に備える連動部位をコンパクトにして部品コストを低減することができる。
【0008】
また請求項2の発明では、操作レバー(6)を作業に合った方向に突設することができるので、操作性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づきこの発明を備えた農業用トラクタについて説明する。
トラクタの車体1は、図7に示すように、前部のボンネット11内部にエンジン12を内装し、このエンジン12後部にクラッチハウジング25、フロントミッションケース26、ミッドミッションケース27、リヤミッションケース28と順に連接する構成となっている。
【0010】
また前記ボンネット11後方には、ダッシュボード13を有するステアリングポスト14を設け、同ポスト上にステアリングハンドル15を突設する構成となっている。またステアリングハンドル15後方の左右フェンダ16,16間には、操縦席2を設ける構成となっている。
【0011】
また前記エンジン12の下方には、左右両側端部に前輪17を軸装したフロントアクスルハウジング18を備えると共に、リヤミッションケース28の左右両側部には、後輪19を軸装したリヤアクスルハウジング20を連結する構成となっている。そして、トラクタは、前記エンジン12の回転動力を前輪17及び後輪19へ伝達し四輪駆動で走行する構成となっている。
【0012】
また前記左右のフェンダ16,16間で、操縦席2後方には、正面視門型の安全フレーム3を立設し、この安全フレーム3の上部に、外部作業機となるグラバー作業機Gを取り付ける構成となっている。尚、このグラバー作業機Gは、先端部のグラブでやしの実やパイナップル等を掴んで移動させる作業機であり、油圧アクチュエータとして、アーム基部を回動させて全体を昇降させる昇降用シリンダ9Aと、アーム中途部を屈折させる屈折用シリンダ9Bと、アーム先端部のグラブを開閉する開閉用シリンダ9Cを備える構成となっている。
【0013】
また前記トラクタの車体1後部には、シリンダーケース29に支持された左右リフトアーム21及び同リフトアーム21によって昇降されるリンク機構22を設け、このリンク機構の後端にも、各種の作業機、例えばロータリ作業機を連結できる構成となっている。またリヤミッションケース28の背面にはPTO軸24を突設し、前記作業機側のPTO入力軸と連結して、同作業機を駆動する構成となっている。
【0014】
また前記安全フレーム3の左右下端部は、プレート部35を構成し、このプレート部35を、前記リヤアクスルハウジング20及びリヤミッションケース27から立設した支持フレーム32、32上の支持プレート34上にフェンダー16の上面を挟んで複数のボルト36,36にて連結する構成となっている。
【0015】
以上のように構成したトラクタでは、図1〜図5に示すように、この発明の外部油圧取出バルブ(以下、油圧バルブ4)が前記フェンダー16上に取り付けられる。
詳しくは、前記支持プレート34と安全フレーム3下端部のプレート部35を固定するボルト36に、フェンダー16上方へ突設するバルブ取付ブラケット5(図4)を立設する。そして、このバルブ取付ブラケット5の上端部に、複数のスプール53,54,55を併設する油圧バルブ4(図5参照)を、後述するレバー支持ブラケット46と共にボルト37…締めによって取付けると共に、この油圧バルブ4の前方、左右両側方、上方、及び後方の一部を覆うバルブカバー8をカバー締付ボルト44…にて取付ける構成となっている。
【0016】
また前記バルブ取付ブラケット5は、板金部材を屈曲して構成され、前記操縦席2の左右いずれか一方のフェンダー16、図例では右方の後部に立設すると共に、同ブラケット5の上部バルブ取付面41に前記ボルト37を通すボルト穴39や通気穴40を有する形状としている。
【0017】
また、このバルブ取付面41の左右両側部には、前記バルブカバー8を取付けるカバー取付部42,43を折り曲げて形成し、前記ボルト44を通すボルト穴50を形成する構成となっている。
【0018】
また前記レバー支持ブラケット46は、バルブ4内のスプールを押し引き操作する操作レバー6を支持するブラケットであり、前記バルブ取付ブラケット5に対して前記ボルト37で共締めする構成としている。またこのレバー支持ブラケット46には、この上端縁部に各レバー取付アーム7を左右方向のアーム軸45周りに回動支持する軸支片47を併設すると共に、該バルブ取付面41の通気穴40と連通する通気穴49を形成する構成となっている。
【0019】
前記外部作業機Gの各アクチュエータ9A,9B,9Cへ連結する油圧バルブ4は、図5と図6に示すように、このバルブボディ52の上面から、油圧回路を切替える昇降用スプール53、屈折用スプール54、開閉用スプール55を突設して、各スプールの押し引き操作により各アクチュエータ9A,9B,9Cを油圧作動させる構成となっている。また前記昇降用スプール53には、昇降用シリンダ9Aへ圧油を送るポートA1を設け、屈折用スプール54には、屈折用シリンダ9Bへ圧油を給排するポートA2,B2を設け、開閉用スプール55には、開閉用シリンダ9Cへ圧油を給排するポートA3、B3を夫れ夫れバルブボディ52の背面に構成し、各々対応するシリンダ9A,9B,9Cに連絡する油圧ホースを接続する構成となっている。また前記バルブボディ52の背面には、トラクタ車体1側の油圧ポンプからの油圧ホースを接続するポンプポートPと、戻り油用のポートRを備えると共に、側面にはタンクポートTを備える構成となっている。
【0020】
また前記各スプール53,54,55の各操作レバー6,6,6は、このスプール53,54,55にピン59連結されるレバー取付アーム7に取付けられる。前記レバー支持ブラケット46の支持片47には、アーム軸45の周りに該各レバー取付アーム7を回動自在に支持する。このレバー取付アーム7をバルブカバー8の前コーナ部の開口部から突設させて、この突設部に、前方に向うレバー穴60と、上方に向うレバー穴61とを設けている。
【0021】
これにより、作業形態または操作位置に応じて、詳しくは操作レバー6を前記レバー穴60に対し取り付けて前方へ突設させたり、同レバー6を前記レバー穴61に取り付けて上方へ突設(図1中6’の状態)させて、操作を行い易い状態にすることができる。
【0022】
また前記バルブ支持ブラケット5にバルブカバー8を取付ける場合は、これらバルブボディ52の外周面から適宜の間隙部S2を形成するようにバルブカバー8を位置させる構成となっている。また前記バルブカバー8には、前記バルブ支持ブラケット5の通気穴40と重合する位置に、同形態の通気穴49を備える構成となっている。
【0023】
これにより、このバルブカバー8の前側からこれら各通気穴49,40を通して後方への通気を流れ易くし、またバルブ4下方に形成した空間部S1と併せてバルブボディ52を効果的に冷却し、作業者へ高温部を曝さず、またバルブ4内に通す油の温度上昇を抑制してアクチュエータ9A…の作動を円滑に維持することができる。
【0024】
次にトラクタに備えた他の油圧機器の構成について説明する。
図8は、トラクタの車体に対する各バルブの取付構成を示す図であり、前記クラッチハウジング25の外側面に、副変速を高、低に切替える変速バルブ70を設け、フロントミッションケース26の外側面には、前後進切替装置の前、後進を切替える前後進切替バルブ71と、二駆四駆切替クラッチを4WD側と2WD側とに切替える4WD切替クラッチバルブ72を設ける。またミッドミッションケース27の外側面には、主変速装置を電気出力で切替える主変速バルブ73を設ける。またシリンダーケース29の上側には、通電出力で切替えるブレーキ用バルブ74を設け、内部にはリフトアーム21を上下回動するためのリフトバルブ75を設ける。これら各バルブ70〜74は、油圧パイプ76で油圧ポンプと連結する構成となっている。該変速バルブ70を切替る変速レバー67や、リフトバルブ75を切替るポジションレバー68等が、操縦席2側方に配置される。
【0025】
また前記油圧パイプ76とブレーキ用バルブ74との連結部にはアダプタ77を介在させ、このアダプタ77の先端部にコイン状のフィルタ78を一体的に取付けると共に、このフィルタ78の油路上手側に油を排出するキャップ80を有する排出口79を設ける構成となっている。これにより、工場での組立後、油圧回路内を洗浄するとき、キャップ80を外してアダプタ77の排出口79から排油してフィルタ74手前でゴミを排出することができる。
【0026】
また図9に示す図は、前記油圧パイプ76の途中に備えるサクションフィルタ83,84を示す図であり、同パイプ76内に連通する油を濾過するものである。
詳しくは、油圧パイプ76の途中に連結するヘッドパイプ85,86を平行状に形成し、この入口側のヘッドパイプ85の下側に前後一対のサクションフィルタ83,84の入口87,88を連通し、各サクションフィル83,84にはフィルタエレメント89を収容する。また、このフィルタエレメント89の内部上端に入口87,88をのぞませると共に、このフィルタエレメント89の外周部に形成される外室90の上端出口91を出口側のヘッドパイプ86に連通させる。これらヘッドパイプ85側の入口87,88から、フィルタエレメント89を経て出口91、及び出口側のヘッドパイプ86へ流通する油が、この各フィルタエレメント89で濾過される。各フィルタエレメント89内には、上方の入口87,88を通して吊下げられる吊下ロッド92にマグネット93が設けられて、油中に混在する鉄粉を吸着する構成となっている。またヘッドパイプ86の外側には、このヘッドパイプ86内を流れる油圧力を検出する負圧センサ94を取付けている。
【0027】
また図10に示す図は、前記リヤアクスルハウジング20に取付けるチェーンブラケット97を示し、このブラケット9は、プレートを車体内側へ適宜角度Aに曲げて、上下対称状に形成したもので、前記左右一対のロアリンク22のチェックチェーンの基部を係止する構成となっている。また屈曲されたリヤアクスルハウジング20への取付部側には、取付ボルト用のボルト穴98,99が形成され、チェックチェーンの係止側には上下一対の係止穴96が形成される。また前記ボルト穴98,99や係止穴96も、上下対称状に形成される。このため、リヤアクスルハウジング20の左右両側部に取付けられる左右一対のチェーンブラケット97は、左右相互に入れ替えて着脱することができ、このとき係止穴96の高さや、屈曲A方向を同じに維持することができる。チェックチェーンを係止するチェーンブラケット97の係止穴96は摩耗損傷し易いため、上下いずれかの係止穴96が使用し難い状態となったときは、左右のチェーンブラケット97相互を前記のように付替えることによって、同じく従前使用条件として他方の係止穴96に係止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】油圧バルブの取付状態を示す側面図。
【図2】油圧バルブの取付状態を示す平面図。
【図3】油圧バルブの取付状態を示す背面図。
【図4】バルブブラケットの分解斜視図。
【図5】油圧バルブの斜視図。
【図6】油圧バルブ内の一部油圧回路図。
【図7】トラクタの側面図。
【図8】ミッションケースの側面図とその一部の断面図。
【図9】(A)サクションフィルタの垂直断面図。(B)サクションフィルターの平面図。(C)サクションフルターの正面図。
【図10】(A)チェックチェーンブラケットの側面図。(B)チェックチェーンブラケットの平面図。
【符号の説明】
【0029】
G 作業機
S1 空間部
1 車体
2 操縦席
3 安全フレーム
4 外部油圧取出バルブ
5 バルブブラケット
6 操作レバー
7 バルブアーム
8 バルブカバー
9A 昇降用シリンダ(アクチュエータ)
16 フェンダー
53 バルブスプール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦席(2)の左右側方にフェンダー(16)を備え、このフェンダー(16)の上方に、空間部(S1)を空けて作業機(G)の油圧アクチュエータ(9A)へ圧油を送る外部油圧取出バルブ(4)をカバー部材(8)に覆った状態で支持すると共に、同カバー部材(8)からバルブ(4)のスプール(53)を操作する操作レバー(6)を突設したことを特徴とする作業車両の外部油圧取出装置。
【請求項2】
前記操作レバー(6)は、前記バルブ(4)のスプール(53)近傍に回動自在に支持すると共に、同スプール(53)と連動連結したアーム部材(7)に対し突設方向を変更可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の外部油圧取出バルブ取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−191811(P2006−191811A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4002(P2005−4002)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】