説明

作業車両の外部油圧取出装置

【課題】機体に装着した作業機を油圧シリンダを介して作動させる外部油圧取出装置を備えた作業車両において、前記外部油圧取出装置を構成する多連方向制御弁の作動油取り出しポートに油圧ホースを接続する際の作業性を向上させる。
【解決手段】作業車両1の外部油圧取出装置33を構成する多連方向制御弁33a,33bのブロック間に、作動油の取り出しポートP1と戻りポートT1を備えたスペーサブロック37を介装すると共に、このスペーサブロック37の戻り油路38にストップバルブ39を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機を油圧アクチェータによって作動可能なクローラトラクタ等の作業車両における外部油圧取出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタ等の作業車両においては、機体の後部に装着した作業機を昇降作動させる常装の作業機昇降用油圧装置の他に、補助作業機として装着するフロントローダ等を昇降作動させるための外部油圧取出装置を備えている。
【0003】
そして、この外部油圧取出装置は、作業機昇降用油圧装置の側面に積層した複数のバルブブロックを備えているが、作業機によっては単動式油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチェータを作動させる必要があることから、前記複数のバルブブロックのうち、外端部のバルブブロックに2つの作動油取り出しポートを有する油圧取出用ブロックを付設すると共に、両作動油取り出しポートに接続可能なクイックカプラー等を介して油圧ホースを接続し、所望の油圧アクチェータに作動油を簡単に供給できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実用新案第2525290号公報(第2−3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来のものでは、作業機昇降用油圧装置の側面に積層されている複数のバルブブロックの間隔が狭く、当該バルブブロックの作動油取り出しポートに油圧ホースを接続する際の作業性が極めて悪かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、外部油圧取出装置を備えた作業車両であって、前記外部油圧取出装置を構成する多連方向制御弁のブロック間に、作動油の取り出しポートと戻りポートを備えたスペーサブロックを介装したことを第1の特徴としている。
【0006】
そして、前記スペーサブロックの戻り油路にストップバルブを設けたことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、外部油圧取出装置を構成する多連方向制御弁のブロック間に、作動油の取り出しポートと戻りポートを備えるスペーサブロックを介装することによって、前記多連方向制御弁のブロック間の間隔がスペーサブロック分だけ広がるので、多連方向制御弁の各油圧ポートに油圧ホースを接続する際のスペースが確保されて作業性が向上する。また、単動式油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチェータを作動させる必要のある作業機を装着する場合であっても、比較的安価に製作することができるスペーサブロックを追加することによって、所望の油圧アクチェータに作動油を簡単に供給することができるようになる。
【0008】
そして、請求項2の発明によれば、前記スペーサブロックの戻り油路にストップバルブを設けたことによって、多連方向制御弁に連結する作業機の油圧シリンダを、複動式油圧シリンダまたは単動式油圧シリンダとして選択的に切換えることができるので、作業目的に応じた広範な作業が行なえるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、農業用作業車両であるクローラトラクタ1の側面図、また図2は、同じく平面図であって、このクローラトラクタ1は、機体フレーム2上に通常の農業用トラクタと同様にエンジン3を内装するボンネット4、及びキャビン5等を備えており、該キャビン5内には、運転席S(図5及び図6参照)を始め、各種操作レバーやスイッチ類を配置した操縦部6が設けられている。
【0010】
そして、キャビン5の後方下部には、各種の農作業を行う作業機を装着する三点リンク式の作業機昇降機構7を常装している。また、8L,8Rは、左右一対のクローラ式走行装置であり、該クローラ式走行装置8L,8R上に機体フレーム2を支持している。
【0011】
クローラ式走行装置8L,8Rは、機体フレーム2の下部に一体形成してなる左右の走行フレーム9L,9Rの前後端部に駆動スプロケット10とアイドラ11を設けると共に、両者10,11の間で、且つ走行フレーム9L,9Rの下部に、前後一対のローラ12を備える二組のイコライザアーム13を上下揺動可能に支持している。
【0012】
更に、走行フレーム9L,9Rの前後略中間位置の上部には、上部ローラ14を軸支しており、これら駆動スプロケット10、アイドラ11、二組のイコライザアーム13に備える前後一対のローラ12、及び上部ローラ14に巻回するクローラ15によってクローラ式走行装置9L,9Rを構成している。
【0013】
また、図3のクローラトラクタ1の背面図、及び図4のクローラトラクタ1の油圧回路図に例示するように、作業機昇降機構7の左右一組のリフトシリンダ16,16は、そのシリンダチューブ16aの下端部を機体の後部壁17に固設した左右一対のステー18,18に夫々枢支する一方、ピストンロッド16bの上端部をリフトアーム19,19に連結している。即ち、ステー18,18の上部に横設したリフトアームブラケット20には、横ボス20aが設けてあり、この横ボス20aに嵌挿する支軸21を介して左右一対のリフトアーム19,19を上下揺動可能に一体的に連結すると共に、両リフトアーム19,19の略中間部に油圧シリンダ16のピストンロッド16bを連結している。
【0014】
そして、左右一対のステー18,18の下部に左右一組のロアリンク22,22を夫々枢支すると共に、両ロアリンク22,22の略中間部とリフトアーム19,19の先端とをリフトロッド23,23を介して連結している。尚、左右何れかのリフトロッド23には、リフトロッドシリンダ(複動式油圧シリンダ)24(図4参照)を介設してあり、このリフトロッドシリンダ24を伸縮作動させることによって、作業機の左右傾斜を機体の傾きに関係なく一定に保持するローリング制御を実行できるようになっている。
【0015】
更に、リフトアームブラケット20の中央には、図示しない単一のトップリンクを枢支する支持部20bが設けてあり、この単一のトップリンクと左右一組のロアリンク22,22によって構成される三点リンクと、該三点リンクをリフトロッド23,23を介して吊持する左右一対のリフトアーム19,19と、両リフトアーム19,19を強制的に上下揺動させる油圧シリンダ16,16によって、昇降作動可能な作業機昇降機構7を構成している。
【0016】
一方、図1及び図2に示すように、クローラトラクタ1の前部側には、排土板25を横設した補助作業機としてのフロントドーザ26を装着している。このドーザ26は、機体フレーム2の前端部近傍において左右両側に固設した強固な支持ブラケット27L,27Rと、平面視でコの字状に形成すると共に、その開口端を基端部として両支持ブラケット27L,27Rの下部に上下揺動可能に支承した支持アーム28を備え、更に該支持アーム28の中央に上述した排土板25を支承している。
【0017】
そして、フロントドーザ26は、上述した支持アーム28の前端側にシリンダチューブ29aの下端部を連結すると共に、支持ブラケット27L,27Rの上部にピストンロッド29bの上端部を連結した左右一組のドーザシリンダ(複動式油圧シリンダ)29,29を備え、このドーザシリンダ29,29を介して支持アーム28を上下に作動させてフロントドーザ26の対地高さを調節できるように構成している。
【0018】
また、支持アーム28の前端側中央と排土板25の背面側とに連結する左右一組のアングルシリンダ(複動式油圧シリンダ)30,30が設けてあり、両アングルシリンダ30,30を介して機体の進行方向に対する排土板25の左右傾斜を調節すると共に、左側のアングルシリンダ30の上方に該アングルシリンダ30と略重複するチルトシリンダ(複動式油圧シリンダ)31を設け、このチルトシリンダ31を介して排土板25の左右高さを調節できるように構成している。
【0019】
次に、図4に基づいてクローラトラクタ1の油圧回路について説明すると、当該油圧回路は、作動油を貯留する作動油タンクTと、この作動油タンクT内の作動油を圧送するエンジン3によって駆動される作業機用油圧ポンプ32と、機体に装備する作業機昇降機構7の作業機油圧装置35と、補助作業機(フロントドーザ)26を作動させる外部油圧取出装置(補助コントロールバルブユニット)33を備えている。そして、外部油圧取出装置33を構成する多連方向制御弁33a,33bのセンターバイパス油路34を介して、作業機用油圧ポンプ32と作業機油圧装置35が接続されており、該作業機油圧装置35によって上述のリフトシリンダ16,16及びリフトロッドシリンダ24の動作制御がなされると共に、リフトシリンダ16,16の縮小動作速度を調整する作業機下降速度調整弁36等を備えている。
【0020】
尚、作業機油圧装置35は、作業機用油圧ポンプ32から供給される作動油を分流する分流弁35aと、一方の分流油路に接続されるリフトアーム制御弁35bと、他方の分流油路に接続されるリフトロッド制御弁35cとを込み込んだもので、一つのアッセンブリとして構成している。
【0021】
また、多連方向制御弁33a,33bのブロックの間には、図5及び図6に示すように、作動油の取り出しポートP1と戻りポートT1を備えるスペーサブロック37を介装している。即ち、外部油圧取出装置33を構成する多連方向制御弁33a,33bのブロック間にスペーサブロック37を介装することによって、多連方向制御弁33a,33bのブロック間の間隔が当該スペーサブロック分だけ広がるので、多連方向制御弁33a,33bの各ポートP2,T2,P3,T3に油圧ホースを接続する際のスペースが確保されて作業性が向上すると共に、単動式油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチェータを作動させる必要のある作業機を装着する場合であっても、比較的安価に製作することができるスペーサブロック37を追加することによって、所望の油圧アクチェータに作動油を簡単に供給することができるようになる。
【0022】
そして、本実施例では、作動油の戻りポートT1を利用して多連方向制御弁33aによる単動または複動としての切換えを行なうことができる。即ち、一側の多連方向制御弁33aの作動油取り出しポートP2から、左右一組の油圧シリンダ29,29のボトム側に作動油を供給すると共に、両油圧シリンダ29,29のピストンロッド側から多連方向制御弁33aの戻りポートT2に至る油路と、スペーサブロック37の戻りポートT1を経て作動油タンクTへ作動油を送油する排油路をそれぞれ油圧ホースによって形成し、加えて、スペーサブロック37には、その戻りポートT1から作動油タンクTへの戻り油路(排油路)38に至る途中にストップバルブ39を設けている。尚、作動油の取り出しポートP1は盲栓により閉じている。
【0023】
つまり、上述したストップバルブ39を閉じた状態では、左右一組の油圧シリンダ29,29は通常の複動式油圧シリンダとして作用する。一方、ストップバルブ39を開放状態にした場合は、両油圧シリンダ29,29の下げ方向に多連方向制御弁33aのスプールが操作されると、作動油が、両油圧シリンダ29,29のピストンロッド側から多連方向制御弁33aの戻りポートT2を経由して作動油タンクTへ送油され、両油圧シリンダ29,29のボトム側及びピストンロッド側の何れにも圧油が作用することなく、多連方向制御弁33aのスプールSの開度に比例して補助作業機26が自重により下降するようになっており、両油圧シリンダ29,29は単動式油圧シリンダとして作用する。
【0024】
以上説明したように、スペーサブロック37の戻り油路38にストップバルブ39を設けることによって、多連方向制御弁33aに連結した補助作業機26の左右一組の油圧シリンダ29,29等を、通常の複動式油圧シリンダまたは単動式油圧シリンダとして選択的に切換えることができるようになる。即ち、クローラトラクタ1にフロントドーザ26やフォークリフト等の補助的な作業機を装着する場合、その作業目的に応じた広範な作業が行なえるようになる。
【0025】
尚、上述のストップバルブ39を設けることなく、左右一組の油圧シリンダ29,29のピストンロッド側から直接作動油タンクT側へ送油するように構成すれば、両油圧シリンダ29,29を単動式油圧シリンダとして作用させることもできるが、両油圧シリンダ29,29の下降時は、多連方向制御弁33aの戻りポートT2が閉じたリリーフ状態となり動力損失が大きくなるため、ストップバルブ39を追加するものである。
【0026】
ところで、図7は、クローラトラクタ1のキャビン5内に設けられる運転操縦部6の側面図、図8は、同じく平面図であって、この運転操縦部6には、オペレータが着座する運転席S、ステアリングハンドル40、運転席Sの右側に設けた高低速切換スイッチ41aを備える主変速(前後進)レバー41、主変速レバー41に連係する走行HSTのリンク機構を覆うリンクボックス42、運転操縦部6の床面を形成するステップ43の右側に設けた緊急停止ブレーキペダル44、リンクボックス42右側のステップ43上に設けたフロントドーザ26の上昇/下降操作ペダル45、及び各種操作レバーやスイッチ等を配置してある。
【0027】
そして、前記フロントドーザ26の上昇/下降操作ペダル45を使用しない時は、ストッパーリンク46を用いて操作不能に固定することができると共に、当該操作ペダル45の下部アーム45aとステップ43の下方で連結するワイヤ47を介して、機体後部に備える油圧取出装置33の図示しないコントロールバルブを連係操作できるように構成している。
【0028】
つまり、クローラトラクタ1のオペレータは、片手(左手)でステアリングハンドル40を操作しながら、他側の手(右手)で主変速レバー41を操作して機体を走行させ、更に右足でフロントドーザ26の上昇/下降操作ペダル45を平行して操作することが可能であり、フロントドーザ26による土の運搬、排土、及び地均し等の作業を途絶えることなく実行でき、それにより作業能率が向上すると共に、フロントドーザ26の昇降微調整も容易に行うことができるといった利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】クローラトラクタの側面図。
【図2】クローラトラクタの平面図。
【図3】クローラトラクタの背面図。
【図4】クローラトラクタの油圧回路図。
【図5】油圧取出装置の構成を示す背面図。
【図6】図5におけるAA断面。
【図7】運転操縦部の側面図。
【図8】運転操縦部の平面図。
【符号の説明】
【0030】
1 作業車両
33 外部油圧取出装置
33a 多連方向制御弁
33b 多連方向制御弁
37 スペーサブロック
38 戻り油路
39 ストップバルブ
P1 作動油の取り出しポート
T1 作動油の戻りポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部油圧取出装置(33)を備えた作業車両(1)であって、前記外部油圧取出装置(33)を構成する多連方向制御弁(33a,33b)のブロック間に、作動油の取り出しポート(P1)と戻りポート(T1)を備えたスペーサブロック(37)を介装したことを特徴とする作業車両の外部油圧取出装置。
【請求項2】
前記スペーサブロック(37)の戻り油路(38)にストップバルブ(39)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の外部油圧取出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−224961(P2007−224961A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44603(P2006−44603)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】