説明

作業車両

【課題】後ろ向きシートに着座して行う作業を安全性を確保しながら、さらに容易にした有用性のある作業車両を提供すること。
【解決手段】機体後部に装着したバックホウ9の作業時に機体2から張出して地面に支持させる上下動可能な一対のアウトリガー40が作動していないことを検知したとき、シート8が操縦者の後ろ向きの着座位置にあることを検知すると、後輪6bに制動をかけ機体2が走行しないようにして、作業安全性を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロント側外部作業機とバック側外部作業機を備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用トラクタなどの作業車両の中にはフロント側外部作業機とバック側外部作業機を備えた作業車両がある。
このようなトラクタでは操縦者はトラクタの後ろ向きのシートに着座しながらトラクタの操縦をする必要があり、以下のようなトラクタが提案されている。
【0003】
たとえば、シートを前向きと後ろ向きに変更できる構成を備え、操縦者が前向きシートに着座して行う作業だけでなく、後向きに変更したシートに着座して作業を行うことができる構成を備えたトラクタがある。この様なトラクタでシートが後ろ向きになっているときには操縦者はシートに着座しているか、シートから離れている。このときトラクタのエンジンが駆動中であるとエンジン操作部は前向きに操縦者がシートに着座した状態で操作されることを前提にして作られているので、思わぬ不具合が発生する。
【0004】
そこで特開2005−69113号公報記載の発明では、例えばシートが前向き姿勢から後ろ向きに所定量以上動いたことを検出するセンサがシートが所定量以上動いたことを検知し又は操縦者がシートに着座していることを検出するセンサが操縦者がシートに着座していないことを検出すると、トラクタの走行系の駆動装置が操作されている場合にはエンジンを停止させる制御装置などを提案している。
【0005】
また、特開2004−142479号公報記載の発明では、前向きに着座できるシートの他に、後向きに着座できるシートを備え、該後向きに着座できるシートを使用しない場合には傾斜させて、該シートが乗降などの邪魔にならないようにした構成が開示されている。
【特許文献1】特開2005−69113号公報
【特許文献2】特開2004−142479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2記載の発明では、機体後部に装着した外部作業機を使用する作業を後ろ向きのシートに操縦者が着座して行うことができ、また安全性及び作業性が確保される。
しかし、後ろ向きシートに着座して行う作業を安全性を確保しながら、さらに容易にすることでフロント側外部作業機とバック側外部作業機を備えた作業車両の有用性を高めることができる。
本発明の課題は、後ろ向きシートに着座して行う作業を安全性を確保しながら、さらに容易にした有用性のある作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、前後輪(6a,6b)を有する機体(2)の前部と後部にそれぞれ作業装置(10,9)を装着自在とし、機体(2)の後部に作業装置(9)が装着された場合に操縦者が後ろ向きに着座可能なシート(8)を操縦席に設けた作業車両において、機体後部の作業装置(9)に設けられ、該作業装置(9)の作業時に機体(2)から張出して地面に支持させる上下動可能な支柱(40)の作動状態であることを検知する支柱作動検知手段(43a、43b)と、操縦者が後ろ向きに着座可能なシート(8)が操縦者の後ろ向きの着座位置にあることを検知するシート検知手段(18,24)と、前記支柱作動検知手段(43a、43b)が支柱(40)が作動状態にないことを検知し、かつ前記シート検知手段(18,24)がシート(8)が操縦者の後ろ向きの着座位置にあることを検知すると、後輪(6b)を制動状態にする制御装置(100)とを設けた作業車両である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記支柱作動検知手段(43a,43b)が支柱(40)が作動状態にないことを検知し、かつ前記シート検知手段(18,24)がシート(8)が操縦者の後ろ向きの着座位置にあることを検知した状態で、設定された低速度で前後進させる低速スイッチ(94)を入にしない場合に、後輪(6b)を制動状態にする制御装置(100)を設けた請求項1記載の作業車両である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前後輪(6a,6b)を有する機体(2)の前部と後部にそれぞれ油圧により作動制御を行う作業装置(10,9)を装着自在とし、機体(2)の後部に作業装置(9)が装着された場合に操縦者が後ろ向きに着座可能なシート(8)を操縦席に設けた作業車両において、機体前部と後部の各作業装置(10,9)に供給する圧油の制御を行う油圧手段(56)と、操縦者が後ろ向きに着座可能なシート(8)が操縦者の後ろ向きの着座位置にあることを検知するシート検知手段(18,24)と、前記シート検知手段(18,24)がシート(8)が操縦者の後ろ向きの着座位置にないことを検知すると、油圧手段(56)は機体前部の作業装置(10)に圧油を供給する作動制御を行う制御装置(100)とを備えた作業車両である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、支柱(40)が作動状態にないことを検知し、かつ前記シート(8)が操縦者の後ろ向きの着座位置にあることを検知すると、後輪(6b)に制動力を掛けて作業車両が移動しないようして、支柱(40)が作動状態にない状態での作業は、少なくとも後輪制動状態において行うことで作業安全性を発揮できる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、シート(8)が後ろ向き姿勢であるとき低速前後進させる場合には制動を掛けずに作業を続行可能とすることで作業能率と作業安全性を図ることができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、シート(8)が操縦者の後ろ向きの着座位置にないことを検知すると、機体前部の作業装置(10)だけを作動可能にして作業安全性を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態について図面とともに説明する。
図1には本発明の一実施例のトラクタの側面図を示す。図2は図1のトラクタのトランスミッション内の伝動系の平面図を示し、図3は左側の後車軸部の平面図を示し、図4はトランスミッション内の伝動系の左側面図を示す。本明細書ではトラクタの進行方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右と呼び、進行方向前後方向をそれぞれ前、後と呼ぶ。
【0014】
従来から周知のトラクタ1は機体2に搭載したエンジン73(図18参照)の回転動力をミッションケース3内の変速装置に伝達する。フロア5に設けられたアクセルペダルの踏込量に応じてエンジン73のスロットルバルブの開度が変わり、変速装置へ入力される動力軸の回転数が増減して、後輪6bを駆動させる。前輪6aは後輪6bの駆動力で回転する。
【0015】
図2に示す伝動系には、ミッションケース3内に、主クラッチ80、前後進切替装置81(81F,81R)、主変速装置82、副変速装置83を備え、エンジン73の回転を変速してドライブ軸84から後輪デフ装置85、前輪デフ装置86に伝え、後輪6b及び前輪6aを駆動する構成である。
【0016】
上記後輪6bを連動する左右の後車軸87には、図3に示すようにそれぞれブレーキ装置88L,88R(図3には左側のみを示す。)を備え、ブレーキアーム89L,89R(89Rは図示せず。)の揺動操作によって制動すべく構成している。このブレーキアーム89L,89Rは、図4に示すようにミッションケース3の左右外側面にそれぞれ設けたブレーキ制御バルブ90L,90R(90Rは図示せず。)の制動側を切り替えることで該バルブ90の函体と一体的に備えたブレーキピストン91L,91R(91Rは図示せず。)の伸出作動によって制動側に揺動操作される構成である。なお非制動側復帰は図示しない弾性復帰ばねによる。ブレーキアーム89L,89Rはブレーキペダル(図示せず)に機械的に連動する構成としてペダル操作によっても左右後輪6bを独立的に制動できる。
【0017】
また、フロア5の上方には、ステアリングハンドル7、操縦席シート8、バックホウ9、フロントローダ10、図示しないクラッチぺダル、主変速操作レバー、副変速レバー、左右一対のブレーキぺダルなどが設けられている。なお、ステアリングハンドル7はハンドルポスト12に支持されている。
【0018】
操縦席のシート8は前向きと後ろ向きに着座できる構成になっている。そして前向きに着座するとフロントローダ10を操作でき、後ろ向きに着座するとバックホウ9を操作できる構成になっている。
【0019】
図5には一実施例のシート8の側面図を示す。図5(a)に示すようにシート8の背もたれと着座部との接続部に補強板13の下端部を回動支点13aとして矢印A方向に反転自在な構成である。図5(a)に示す実線で示す位置から点線で示す位置にシート8を反転させると今まで着座部であった部分が背もたれとなり、また背もたれであった部分が着座部となる。シート8の反転後に着座部になる部分は板材14に載置される。該板材14は機体との間に設けたスプリング15で弾性支持されている。
【0020】
図5(a)に示すシート8の下部にはゴム製のストッパ16とシート検知手段としての反転検知スイッチ18が設けられている。また図5(b)には図5(a)に示す補強板13の拡大図を示す。補強板13には折れ曲がり状の長穴13bが設けられ、該長穴13bにシート回動を支持するロッド19が挿入されているので、シート8を図5(a)に示す実線位置から点線位置に反転させるとき(後ろに倒し始めるとき)に、図5(b)の長穴13bの小さい折れ曲がり部に嵌るので、この位置にあるロッド19が反転開始時のシート8の回動支点13aとなる。また図5(a)に示すシート8が反転した後には補強板13は図5(c)に示すように長穴13b内の大きい折れ曲がり部にロッド19が位置し、スプリング15により操縦者の着座時にもシート8が追従できる。シートの回転の有無は、シート反転センサ18で検出する。
【0021】
図6(a)に他の実施例の反転可能な構造のシート部分の側面図を示す。シート8の背もたれの後方に機体に対して鉛直方向に立設されたポール20aに背もたれに設けられた回転支持部材21を挿入する。図6(b)に図6(a)の拡大図を示すように前記回転支持部材21にはポール20aを差し込むための貫通孔21aが上下方向に設けられ、該貫通孔21aにポール20aを挿入することによりシート8は回転自在に支持される。すなわち、ポール20aの下端部には機体に固定された筒支持部20dを設け、該筒支持部20dの内壁面には前後に縦溝20b、20cを形成している。そこでシート8をポール20上方から差し込んで回転支持部材21の下部に固着したピン21bを筒支持部20dの縦溝20bに嵌め込むと、シート8は前方向きに配置され、ピン21bを筒支持部20dの縦溝20cに嵌め込むと、シート8は後方向きに配置される構成である。
【0022】
ここで、筒支持部20dの内壁面の対向位置に一対のシート検知センサ(図示せず)設けられている。図6(a)で反転前のシート8は回転支持部材21に設けられたシート検知センサ23と筒支持部20dの内壁面に設けられた図示しない一対のシート検知センサの一つのシート検知センサが互いに近傍にあることを検知するとシート8は前向きであり、回転支持部材21に設けられたシート検知センサ23と筒支持部20dの内壁面に設けられたもう一つのシート検知センサ(図示せず)が互いに近傍にあることを検知するとシート8は後ろ向きに反転したことを検知できる。
【0023】
なお、一つのシート8を前向きと後ろ向きに反転するのではなく、図7に示すように前向き用と後ろ向き用の2つのシート8,8’を装着している場合にも本発明は適用できるので、図8の制御フローは2つのシート8,8’を装着している構成の場合に適用したものである。後ろ向き用のシート8’の斜視図を図7(a)に示し、その回転支持軸部分の縦断面図を図7(b)に示し、前向き用と後ろ向き用の2つのシート8,8’の側面図を図7(c)に示す。
【0024】
後ろ向き用のシート8’の座部側はブラケット76に一体に設けられ、該ブラケット76は支点軸77の端部に一体的に設けられている。バネ78によって支点軸77の六角軸部77aが背もたれ側枠79の六角穴79aに嵌合すると支点軸77が固定の状態を維持しうる。この固定の状態から右方向(矢印R方向)にスライドすると、六角軸部77aが六角穴79aから脱して断面円形の細丸棒部77bが六角穴79a部分に移動するので、自由にシート8’の座部側を回転できる状態となる。この状態でシート8’の座部側を上方回動させ、この位置でバネ78により支点軸77を逆スライドさせて前記六角軸77aと六角穴79aの嵌合となりシート8’の座部側を収納姿勢で維持できる。シート8’の座部側が収納位置に折り畳まれることは、リミットスイッチ式のシート折畳検知センサ22が検知する。
【0025】
図9にバックホウ9とトラクタ本体の後壁との連結部の側面図を示し、斜視図を図10に示す。
トラクタ1の機体2の後壁2aに設けられた連結部材4に係合する平板25に一方の端部が固着支持され、後方に伸びる一対のブラケット26と、該ブラケット26の後半分に沿って一対の平板27が固着され、該一対の平板27を掛け渡すように断面コ型又はL型の間隔保持部材29が設けられている。該間隔保持部材29には左右一対の油圧シリンダ30の基部がユニバーサルジョイント31で回動自在に固定され、一対の油圧シリンダ30の他端がバックホウ9の基部の支持部材33に回動自在に固定されている。
【0026】
また、一対のブラケット26の一端部の上下に固定支持され、左右方向に伸びる一対の四角柱34と、該四角柱34とバックホウ9の基部に支持された支持部材33を水平方向にピン35により揺動自在に連結する揺動アーム37とブラケット38で支持する構成である。
【0027】
機体2の長手方向が左右方向に向いた一対の四角柱34の両端にはアウトリガ40が鉛直方向にそれぞれ溶接接続されており、アウトリガ40のケース40aに内装された油圧シリンダ41でアウトリガ40は上下動自在な構成である。
【0028】
図11には正面から見たアウトリガ40のケース40aの内部構造を示す。四角柱34の内部に設けられた油路42aから油圧シリンダ41に圧油が供給されると下方向にシリンダロッド41bが伸び、その下端部にあるアウトリガ接地部40bが地面に着地する。圧油が油路42bから抜かれるとシリンダロッド41aが上昇してアウトリガ40のケース40a内に収納され、ケース40a外には接地部40bだけが残る。
なお、バックホウ9の操作時にはアウトリガ40を地面に立てて操作をすることで安定した操作が可能になる。
【0029】
また、アウトリガ40を下ろさないで、シート8が後ろ向きにあるときにはトラクタ後輪6bに制動力を付与する構成になっている。これは、シート8を後ろ向きにしてバックホウ9を操作する場合にはアウトリガ40を地面に下降させて行うことが安全上好ましいためである。しかし、バックホウ9を用いて軽作業を行う場合にはアウトリガ40を下降しないまま作業を行っても支障が無い。そのため、アウトリガ40を地面に下降させないでバックホウ9を用いて作業を行うときには、少なくとも後輪制動状態にしておき、思わぬ不具合を回避することができる。
【0030】
このようにシート8が反転位置(後ろ向き位置)にあり、アウトリガ40が地面に下降してなく、変速装置を最低速の変速段にて前進又は後進する低速スイッチ94がオフ(中立)であると、軽作業を行う状態にあるとしてブレーキ制御バルブに制動指令出力がなされ、ピストン作動してブレーキアームを揺動し、後輪6bにブレーキを掛ける。そのためシート着座検知用のセンサを設けることなく、軽作業を自動的に行うことができる(図12のフローの通り)。
【0031】
また、アウトリガ40を地面に下降させた状態であれば、バックホウ9を用いて作業を行うときには、重作業であるので、操縦者がシート8に着座して行う車両を停止させての通常通りの作業ができるようにする。
【0032】
なお、アウトリガ40の下降の検出は図11に示すようにケース40a内壁面とシリンダロッド41aとにそれぞれ設けた近接スイッチ形態のセンサ43a,43bによって行い、センサ43bが上昇してセンサ43aに接近するとオンとなり、アウトリガ40の非作動状態を検出する。
これらの作業のフローを図12に示す。
【0033】
さらに、アウトリガ40を地面に下降していない状態であれば、シート8を後ろ向き姿勢にした状態で低速で前後進ができる構成になっている。これは低速で前後進する低速スイッチ94を中立位置から前進側又は後進側にすると低速で前後進することができ、この様な低速であれば、シート8が後ろ向き姿勢にあってもバックホウ9を用いる軽作業を可能とする。
【0034】
前記前後進切替装置81の油圧クラッチ81F,81R(図2)に圧油を供排して前進、後進に切替変速する前後進クラッチ制御バルブ92(図4)を設ける。該制御バルブ92の切替は、ハンドル7の近傍に配設する前後進切替レバー93(図1)の前後側切替によって前進、後進に切り替える構成である。そして、該制御バルブ92はフェンダ上面にあってシート反転姿勢において手の届く位置に配設した低速スイッチ94(図1)によっても切替操作できる構成である。
【0035】
なお、低速スイッチ94は、例えば中立復帰型のレバー型スイッチ形態とし、該スイッチ94を前後に倒すことで前後進させるものであるが、前記主変速装置82及び副変速装置83のいずれもが最低速の状態位置においてのみクラッチが接続できるよう制御バルブ92への操作信号が制御される。
したがって、シート反転状態で低速スイッチ94を後方に倒せば、機体はオペレータの正面に向く方向(機体後方)にゆっくりと移動し、逆に前方に倒せばオペレータの背側方向(機体前方)にゆっくりと移動する。
【0036】
次に、トラクタ1のバックホウ9の作動(アーム部昇降と上下動及びバケット回動、及びアーム旋回動)とフロントローダ10の作動(昇降と上下動)のための作動機構を図1で説明し、該作動機構用の油圧回路について図13に基づき説明する。
バックホウ9には排土用のバケット44が設けられ、バケット44は第1アーム45に連結され、該第1アーム45には第2アーム46が連結している。バケット44は、その回動中心44aを中心としてバケットシリンダ48で上下方向に首振り可能になっており、第1アーム45が第1アームシリンダ49で昇降され、また第2アーム46が第2アームシリンダ50で昇降される。
【0037】
さらに、フロントローダ10のバケット17は回動中心17aを中心として第1ブーム52に連結され、該第1ブーム52には第2ブーム53が連結している。バケット17はバケットシリンダ55で上下方向に首振り可能になっており、また第2ブーム53が第2ブームシリンダ54で昇降される。
【0038】
また、図13に示すように、メインギアポンプ56とサブギアポンプ57を備え、メインギアポンプ56は、ミッションケース(オイルタンク)3内の油を吸い上げ、これを圧油として作業機(フロントローダ10及びバックホウ9及び図示しない耕耘装置など作業車両本体の後部に3点リンク機構60により連結される作業装置)操作系の油圧回路と前後進クラッチ81F,81R、後輪ブレーキ操作用他の走行系油圧回路に分岐する構成となっている。
【0039】
フロントローダ10の作動(昇降と上下動)はギアポンプ56の作動で常に作動状態にある。また、耕耘装置などの3点リンク機構60により連結される作業装置の昇降用油路L1とアウトリガ40を含めてバックホウ9の昇降・上下動用油路L2は切替バルブ61で、どちらかの油路が選択的に切り替えられる構成になっている。この切替バルブ61による油路L1,L2の切替はシート8が反転されたことをシート反転検知センサ18,24で検知すると自動的に切替バルブ61がバックホウ9の昇降・上下動用油路L2を開き、3点リンク機構60の駆動用油路L1を閉じる構成になっている。
【0040】
従って、機体2の後方にバックホウ9を装着するか、3点リンク機構60を装着するかが決まると予め切替バルブ61をそれに合致した方向に切り替える。
これらの制御フローを図8に示す。
また、図13に示す油圧回路には、上記以外に、ハンドル旋回操作用のパワーステアリングユニット、後進用バルブ、PTOクラッチ、及び後輪ブレーキ作動用の油路に分流弁を経由して圧油が送られる構成になっている。
【0041】
また、図14には、前記図13に示す油圧回路のバックホウ9のユニットの構成としてバケットシリンダ48とバケット44だけの昇降と上下動と第1アーム45の第1アームシリンダ49による昇降と第2アーム46の第2アームシリンダ50による昇降を行う油圧回路とアウトリガ40の作動を行う油圧回路とを分離した油圧回路構成を示す。この油圧回路の切替バルブ63はパワステユニットと3点リンク機構60で連結される作業装置を作動させ時にはバックホウ9は作動不能になり、バックホウ9を作動できるときにはアウトリガ40が作動できない油圧回路構成になっている。
【0042】
図15にはフロントローダ10のバケットシリンダ55と第1ブームシリンダ54の他に第3の作業機を作動するシリンダ58をバックホウ専用回路の3ファンクションソレノイドバルブ63から取り出す油圧回路を設けた構成を示す。前記第3の作業機とはフロントローダ10の先端部に設ける油圧式の把持ハンド、油圧式ハンマー、油圧式オーガ等である。
【0043】
また、図15の油圧回路におけるバックホウ専用回路のアンロードバルブ64a内にはフロントローダ10への油路から分岐する3ファンクション用分流弁64bを設置しているため、バックホウ9を取り付けないときにアンロードバルブ64aはサブポンプ57からの吐出油をタンク3に戻すことができる。このアンロードバルブ64aがなくて分流弁64bだけであると、バックホウ9を用いない時には分流弁64bを閉じるので、油圧回路内で出口を失った圧油はリリーフバルブ65の設定圧より高くなり、馬力損失の要因となる。図16にはアンロードバルブ64aと3ファンクション用分流弁64bを設置した部分の油圧回路を示す。
また、最も発熱し易いバックホウ専用回路中にオイルクーラ66を設置してバックホウ専用回路の冷却を効果的に行う。
【0044】
図17には前記オイルクーラ66の設置一例を示す。図17(a)はエンジン73の搭載部の側面図、図17(b)は正面図を示す。オイルクーラ66への経路を鉄配管とし、アクスルブラケット2aに溶接構成とすることにより放熱効果を上げる。
オイルクーラ66を機体2の前方部に配置し、その往復経路がアクスルブラケット2aの横を通る様に構成する。オイルクーラ66の配管66aをアクスルブラケット2aに溶接構成とすることによって、配管66aの位置決めを確実化して、他部品との干渉防止が図れると同時にアクスルブラケット2a自身が放熱板となることによる冷却効果の増大という利点が得られる。
【0045】
従来は鉄配管であればクランプを、ホースであればホースバンド等にて他部品に固定したりする必要があり、別部品が必要であったり、結束によりボリュームが大きく邪魔になったりしていた。また、冷却効果については単独物としての効果しかなかった。
【0046】
しかし、図17に示す本実施例の構成を採用することで、配管66aをアクスルブラケット2aに溶接することにより、アクスルブラケット2aが放熱板となり、より多くの熱量を放出できることに加え、予め通路の確定が出来るため設計の自由度が上がる。
【0047】
すなわち、オイルクーラ66を機体の進行方向に対し、垂直方向に設け、その往復経路に鉄製の配管66aを使用し、各々を左右に振り分けてアクスルブラケット2aに溶接する構成とした。配管66aをオイルクーラ66の往復経路として構成することにより、自由に配置を決めることが可能であり、且つ左右に振り分けられたことにより、お互いの熱影響も受けにくく、更にアクスルブラケット2aの全体を放熱板として使用することができる。
【0048】
また、オイルクーラ66は機体2の進行方向に対して平行に、且つマフラ(図示せず)と反対側に設け、その往復経路に鉄配管66aを使用し、一定の隙間を設けて、アクスルブラケット2aの同一方向(面)に溶接構成とした。
【0049】
図18には、エンジン搭載部の側面図(図18(a))と背面図(図18(b))を示す。図18に示すように、第1ギヤポンプ56と第2ギアポンプ57をエンジン73のフライホイール74のリングピニオン74aと噛合するように第1ギヤポンプ56と第2ギアポンプ57にピニオンギヤ56a,57aを配し、各ギヤポンプ56,57の動力源とする。
【0050】
通常エンジン73の側面からギアポンプ56,57の動力軸の取出しを行うが、単一の動力軸に対して最大で2個しか取り付けられなく、また油圧配管が長くなる。しかし、図18に示すようにフライホイール74からギアポンプ56,57の動力を取り出すので、エンジン始動時にはクラッチに関係なく、常時圧力が取り出せる上、第1ギヤポンプ56と第2ギアポンプ57の間にサクション配管75のメタル部分75aを配置することでサクション配管75が短くて済み、必要に応じてフライホイール74と同心円状に複数取り付けることが出来る。
【0051】
なお、サクション配管75にはエンジン73の前方側に配置されるパワステ用の油圧ポンプ72を接続する前車軸近傍のパワステアリング装置(図示せず)までの油圧配管を短くすることができる。
【0052】
また、フロントローダ10のバケット45及びバックホウ9のバケット17を上方から下方に降下させる際、減速せず一定の速度で降下するため、アスファルトなどの固い所では地面と衝突する時の音は相当大きい。それの解決法として、ロータリで用いられているデセラの機能を持たせ音の低減を目的とした。
フロントローダ10のバケット45及びバックホウ9のバケット17が落下、地面に接触する際の衝撃音を軽減するために、デセラの機能を取り付けて作業の快適性を高める。
【0053】
バケット降下制御について説明する。バケット17を先端に備えるアーム52,53(図1)の基部にはポテンショメータ式のアーム角度センサ11を備え、油圧昇降レバー(図示せず)の操作によってバケット45を降下すべくアーム用シリンダ機構54を短縮するが、アーム角度センサ11によって降下角度が検出され、予め設定した所定値に達すると、アーム用シリンダ機構54の短縮側圧油排出経路が絞りを有する側に切り換わり、下降速度を遅くする構成である。このように構成すると、バケット45の地面との急激な衝突を無くしバケット破損を防止できる。図19にデセラの機能を取り付けた構成のフローチャートを示す。
【0054】
降下させる位置におけるフロントローダ10のバケット45及びバックホウ9のバケット17の下降速度低減により、地面との衝撃を低減させることが可能となり、またそれに伴い衝撃音も低減するので、作業の快適性が高まる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のトラクタは農作業以外の各種作業用の機械として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施例のトラクタの右側面図である。
【図2】図1のトラクタのトランスミッション内の伝動系の平面図である。
【図3】図1のトラクタの左側の後車軸部の平面図である。
【図4】図1のトラクタのトランスミッション内の伝動系の左側面図である。
【図5】図1のトラクタのシート部分の側面図(図5(a))と、図5(a)に示す補強板の拡大図(図5(b)、図5(c))である。
【図6】図1のトラクタの他の実施例のシート部分の側面図(図6(a))と図6(a)の一部拡大斜視図(図6(b))である。
【図7】図1のトラクタの前向き用と後ろ向き用の2つのシートを装着している場合のシート部分の構成図である。
【図8】図1のトラクタのバックホウを用いて軽作業を行う場合の他の実施例の制御フロー図である。
【図9】図1のトラクタのバックホウとトラクタ本体の後壁との連結部の平面図である。
【図10】図9のバックホウとトラクタ本体の後壁との連結部の斜視図である。
【図11】図1のトラクタの正面から見たアウトリガケースの内部構造を示す図である。
【図12】図1のトラクタのバックホウを用いて軽作業を行う場合の制御フロー図である。
【図13】図1のトラクタのバックホウとフロントローダの作動のための作動機構用の油圧回路図である。
【図14】図13の油圧回路の変形例である。
【図15】図13の油圧回路の変形例である。
【図16】図15の油圧回路の一部の詳細図である。
【図17】図1のトラクタのエンジンの搭載部の側面図(図17(a))と正面図(図17(b))である。
【図18】図1のトラクタのエンジン搭載部の側面図(図18(a)と背面図(図18(b))である。
【図19】図1のトラクタにデセラの機能を取り付けた構成を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1 トラクタ 2 機体
2a 機体後壁 4 連結部材
5 フロア 6a 前輪
6b 後輪 7 ステアリングハンドル
8 操縦席シート 9 バックホウ
10 フロントローダ 11 アーム角度センサ
12 ハンドルポスト 13 補強板
13a 回動支点 13b 長穴
14 板材 15 スプリング
16 ストッパ 17 バケット
17a 回動中心 18 シート反転検知センサ
19 ロッド 20 ポール
20a ブロック 20b,20c 縦溝
20d 筒支持部 21 回転支持部材
21a 貫通穴 21b ピン
22 シート折畳検知センサ 23 シート検知センサ
24 シート反転検知センサ 25 平板
26 ブラケット 27 平板
29 間隔保持部材 30 油圧シリンダ
31 ユニバーサルジョイント 33 支持部材
34 四角柱 35 ピン
37 揺動アーム 38 ブラケット
40 アウトリガ 40a ケース
40b 接地部 41 油圧シリンダ
41a シリンダロッド 42a,42b 油路
43a,43b 近接センサ 44 バケット
44a 回動中心 45 第1アーム
46 第2アーム 48 バケットシリンダ
49 第1アームシリンダ 50 第2アームシリンダ
52 第1ブーム 53 第2ブーム
54 ブームシリンダ 55 バケットシリンダ
56 メインギアポンプ 56a,57a ピニオンギア
57 サブギアポンプ 58 シリンダ
60 3点リンク機構 61 切替バルブ
63 3ファンクションソレノイドバルブ
64a アンロードバルブ 64b 分流弁
65 リリーフバルブ 66 オイルクーラ
66a 配管 72 油圧ポンプ
73 エンジン 74 フライホイール
74a リングピニオン 75 サクション配管
75a メタル部 76 回動ブラケット
77 支点軸 77a 六角軸部
77b 細丸棒部 78 バネ
79 背もたれ側枠 79a 六角穴
80 主クラッチ 81 前後進切替装置
81F,81R 油圧クラッチ 82 主変速装置
83 副変速装置 84 ドライブ軸
85 後輪デフ装置 86 前輪デフ装置
87 後車軸 88L,88R ブレーキ装置
89L,89R ブレーキアーム
90L,90R ブレーキ制御バルブ
91L,91R ブレーキピストン
92 前後進クラッチ制御バルブ
93 前後進切換レバー 94 低速スイッチ
100 制御装置 L1,L2 油路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後輪(6a,6b)を有する機体(2)の前部と後部にそれぞれ作業装置(10,9)を装着自在とし、機体(2)の後部に作業装置(9)が装着された場合に操縦者が後ろ向きに着座可能なシート(8)を操縦席に設けた作業車両において、
機体後部の作業装置(9)に設けられ、該作業装置(9)の作業時に機体(2)から張出して地面に支持させる上下動可能な支柱(40)の作動状態であることを検知する支柱作動検知手段(43a、43b)と、
操縦者が後ろ向きに着座可能なシート(8)が操縦者の後ろ向きの着座位置にあることを検知するシート検知手段(18,24)と、
前記支柱作動検知手段(43a、43b)が支柱(40)が作動状態にないことを検知し、かつ前記シート検知手段(18,24)がシート(8)が操縦者の後ろ向きの着座位置にあることを検知すると、後輪(6b)を制動状態にする制御装置(100)と
を設けたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記支柱作動検知手段(43a,43b)が支柱(40)が作動状態にないことを検知し、かつ前記シート検知手段(18,24)がシート(8)が操縦者の後ろ向きの着座位置にあることを検知した状態で、設定された低速度で前後進させる低速スイッチ(94)を入にしない場合に、後輪(6b)を制動状態にする制御装置(100)を設けたことを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
前後輪(6a,6b)を有する機体(2)の前部と後部にそれぞれ油圧により作動制御を行う作業装置(10,9)を装着自在とし、機体(2)の後部に作業装置(9)が装着された場合に操縦者が後ろ向きに着座可能なシート(8)を操縦席に設けた作業車両において、
機体前部と後部の各作業装置(10,9)に供給する圧油の制御を行う油圧手段(56)と、
操縦者が後ろ向きに着座可能なシート(8)が操縦者の後ろ向きの着座位置にあることを検知するシート検知手段(18,24)と、
前記シート検知手段(18,24)がシート(8)が操縦者の後ろ向きの着座位置にないことを検知すると、油圧手段(56)は機体前部の作業装置(10)に圧油を供給する作動制御を行う制御装置(100)と
を備えたことを特徴とする作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−277849(P2007−277849A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102990(P2006−102990)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】