説明

作業車両

【課題】2点リンク仕様と3点リンク仕様に容易に仕様変更することができる作業車両を提供することを課題としている。
【解決手段】 上下揺動駆動可能に設けられたリフトアーム17により、連結状態の作業機2,31を昇降する作業車両を、作業機2を2点によって連結する2点ヒッチの2つのヒッチ部16と、作業機31を3点によって連結する3点ヒッチを構成する端部にヒッチ部が設けられた3つのリンクアーム21,22との装着を可能に構成し、リフトアーム17に、2点ヒッチ用の連結部材との連結部27と、3点ヒッチ用の連結部材との連結部28とを別々に設け、リフトアーム17の揺動支点から2点ヒッチ用の連結部材との連結部27までの距離より、リフトアーム17の揺動支点から3点ヒッチ用の連結部材との連結部28までの距離が長くなるように両連結部27,28を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機を連結することができるトラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタ等の作業車両と作業機とを連結する連結部として、作業機を下方側の2点と、上方側の1点とによって連結する3点ヒッチ式(以下3Pヒッチ)と、作業機を2点によって連結する2点ヒッチ式(以下2Pヒッチ)とが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
2Pヒッチは、作業車両の後部に作業機を2点で装着するヒッチ部からなる。2Pヒッチの場合、作業機は、作業機側が直接ヒッチ部に連結されて作業車両に装着される。3Pヒッチは、トラクタの後部にトップリンクと2つのロアリンクが回動自在に取り付けられ、トップリンクと両ロアリンクの先端にそれぞれ設けられた合計3つのヒッチ部からなる。作業機は各リンクの先端に設けられた3つのヒッチ部に取り付けられ、トップリンクとロアリンクを介してトラクタに装着される。
【0004】
上記いずれの方式で作業機が接続された場合も、作業機は作業車両に昇降可能に連結される。作業車両側には、油圧等により揺動駆動されるリフトアームが設けられている。2Pヒッチの場合は、リフトアームと作業機が、3Pヒッチの場合は、リフトアームとロアリンクがそれぞれリフトロッド等によって連結される。リフトアームの揺動によって、2Pヒッチの場合は作業機側が直接上下揺動することにより、3Pヒッチの場合はロアリンク及びトップリンクが上下揺動することにより、作業機は作業車両に対して昇降する。
【特許文献1】特開平9−271205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば2Pヒッチ仕様の作業車両からヒッチ部を取り外し、ロアリンクとトップリンクとを取り付けて3Pヒッチ仕様とする場合、リフトアームの揺動範囲が予め定められているため、3点ヒッチに取り付けられる作業機の上昇高さが、本来必要な高さに対して不足する場合がある。この場合畦際での旋回時等において作業機が畦に接当することもあり、円滑に作業を行うことができないという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の作業車両は、上下揺動駆動可能に設けられたリフトアーム17により、連結状態の作業機2,31を昇降する作業車両において、該作業車両は、作業機2を2点によって連結する2点ヒッチの2つのヒッチ部16と、作業機31を3点によって連結する3点ヒッチを構成する端部にヒッチ部が設けられた3つのリンクアーム21,22とを装着することが可能に構成され、リフトアーム17は、2点ヒッチのヒッチ部16に装着される作業機2側と2点ヒッチ用の連結部材を介して連結可能、且つ3点ヒッチのリンクアーム21,22側と3点ヒッチ用の連結部材を介して連結可能に構成され、リフトアーム17に、2点ヒッチ用の連結部材との連結部27と、3点ヒッチ用の連結部材との連結部28とを別々に設け、リフトアーム17の揺動支点から2点ヒッチ用の連結部材との連結部27までの距離より、リフトアーム17の揺動支点から3点ヒッチ用の連結部材との連結部28までの距離が長くなるように両連結部27,28を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成される本発明の構造によると、リフトアームに、2点ヒッチ用の連結部材との連結部と、3点ヒッチ用の連結部材との連結部とが、別々に設けられているため、リフトアームの揺動角度が一定に維持されている場合でも、2点ヒッチ及び3点ヒッチを使用して作業機に必要な揚程を確保し、作業機を必要な所定の高さまで下降及び上昇させることができる。これにより作業車両を2点ヒッチ仕様と3点ヒッチ仕様に容易に切り換えて使用することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明を採用した作業車両であるトラクタ1に作業機としてロータリ作業機2が連結された状態を示す側面図である。トラクタ1は、従来同様前輪3及び後輪4を備えている。前方にはボンネット6が設けられている。該ボンネット6内にはエンジンが搭載されている。ボンネット6の後方には運転席7が設けられている。運転席7内には座席8が設けられている。本トラクタ1は、ボンネット6内のエンジンの駆動力によって前輪3及び後輪4が駆動され走行する。
【0009】
ロータリ作業機2は、作業機フレーム9側に耕耘用のロータリ11が回転駆動自在に支持されている。ロータリ作業機2はトラクタ1との連結状態において、トラクタ1に設けられたPTO軸12から駆動力が伝動される。この駆動力によってロータリ11が回転駆動され、圃場の耕耘作業を行うことができる。
【0010】
作業機フレーム9の前端側の左右には、トラクタ1との連結用のピン13がそれぞれ設けられている。トラクタ1の後部には、作業機の連結用のブラケット14が機体フレーム1a側に着脱可能に取り付けられている。
【0011】
該ブラケット14には、ロータリ作業機2の前方の左右のピン14にそれぞれ対応して、ピン14を受ける側面視で略逆コ字状をなす受け16が一体的に左右に設けられている。ロータリ作業機2のピン13を、各々対応する受け16に収容し、ピン13の受け16からの抜け止めを行うことによって、ロータリ作業機2がトラクタ1に2点で連結される。
【0012】
左右の受け16がヒッチ部をなしている。本トラクタ1は上記ブラケット14を取り付けることによって、2つのヒッチ部(受け16)を備えた2点ヒッチ(2Pヒッチ)仕様を構成する。トラクタ1には、上記ブラケット14の上方位置に、油圧によって上下揺動駆動されるリフトアーム17が設けられている。リフトアーム17は前端部が回動支点となっている。
【0013】
リフトアーム17とロータリ作業機2の作業機フレーム9側とは、リフトロッド18によって連結されている。リフトロッド18は、2Pヒッチ仕様の場合のリフトアーム17と作業機(ロータリ作業機2)側とを連結する連結部材を構成している。
【0014】
リフトアーム17を上方に向かって揺動駆動すると、リフトロッド18を介してロータリ作業機2が上記ピン13を支点に上方に向かって揺動して上昇する。リフトアーム17を下方に向かって揺動駆動すると、リフトロッド18を介してロータリ作業機2が上記ピン13を支点に下方に向かって揺動して下降する。ロータリ作業機2は以上のように昇降する。
【0015】
リフトアーム17の揺動は、ロータリ作業機2の昇降ストローク(揚程)が予め定められた大きさとなるように設定されている。これによりロータリ作業機2は、所定の最下限位置から最上限位置の範囲で昇降される。ロータリ作業機2を最上限位置に上昇させると、畦際での旋回時等においてロータリ作業機2が畦に接当することがない。ロータリ作業機2を最下限位置に下降させると、予め定められた最深の耕耘深さで耕耘作業を行うことができる。
【0016】
図2に示されるように、本トラクタ1は、機体フレーム1aの下方側の左右にそれぞれ後方に突出するロアリンク21を回動自在に取り付けることができる。機体フレーム1aの上方には、平面視で左右のロアリンク21の中央に位置するように後方に突出するトップリンク22を回動自在に取り付けることができる。ロアリンク21及びトップリンク22は前端側が回動支点となっている。
【0017】
両ロアリンク21及びトップリンク22の後端には作業機の連結部(ヒッチ部)が設けられている。両ロアリンク21及びトップリンク22は3点リンクヒッチを構成し、本トラクタ1は、両ロアリンク21及びトップリンク22を取り付けることによって、3点ヒッチ(3Pヒッチ)仕様を構成する。
【0018】
上記ロアリンク21にはリフトロッド23の一端が連結されている。該リフトロッド23の他端には、リフトアーム17に連結されたシリンダ24におけるシリンダロッド26が連結されている。シリンダ24とリフトロッド23とによって、3Pヒッチ仕様の場合のリフトアーム17とロアリンク21とを連結する連結部材が構成されている。
【0019】
上記リフトアーム17には、前述の2Pヒッチ仕様で使用したリフトロッド18との連結部27より後方位置に、上記シリンダ24(連結部材)を連結する連結部28が、連結部27とは別に設けられている。両連結部27,28は、リフトロッド18又はシリンダ24を軸支するための孔からなる。
【0020】
リフトアーム17を上方に向かって揺動駆動すると、連結部材(シリンダ24及びリフトロッド23)を介してロアリンク21が前方側を支点に上方に向かって揺動する。リフトアーム17を下方に向かって揺動駆動すると、連結部材を介してロアリンク21が前方側を支点に下方に向かって揺動する。
【0021】
図2は、トップリンク22及び両ロアリンク21(3点リンクヒッチ)のヒッチ部に芋等を掘り取る掘取り作業機31を連結して取り付けた状態を示す側面図である。図2に示されるように、本3Pヒッチ(3点リンクヒッチ)に掘取り作業機31を連結し、リフトアーム17を上下揺動駆動すると、上記ロアリンク21の作動により、掘取り作業機31が昇降する。シリンダ24によるシリンダロッド26の駆動により、3Pヒッチに連結された掘取り作業機31の左右傾斜をコントロールすることができる。
【0022】
リフトアーム17の揺動可能角度は、3Pヒッチ仕様(トップリンク22及び両ロアリンク21を使用して作業機を連結する構成)の場合も、2Pヒッチ仕様(受け16を使用して作業機を連結する構成)の場合も一定である。
【0023】
ただし3Pヒッチ仕様の場合、ロアリンク21とリフトアーム17とを連結する連結部材の連結点28のリフトアーム17の回動支点からの距離が、2Pヒッチ仕様の場合の連結点27のリフトアーム17の回動支点からの距離に比較して長い。このためリフトアーム17の揺動可能角度が上記のように2Pヒッチ仕様の場合と同一であっても3Pヒッチに連結された作業機(掘取り機31)の昇降ストローク(揚程)が予め定められた大きさとなる。
【0024】
これにより掘取り作業機31は、所定の最下限位置から最上限位置の範囲で昇降される。掘取り作業機31を最上限位置に上昇させると、畦際での旋回時等において掘取り作業機31が畦に接当することがない。掘取り作業機31を最下限位置に下降させると、予め定められた最深の深さで圃場に挿入されて芋等の掘り取り作業を行うことができる。
【0025】
上記のように2Pヒッチ仕様の場合の連結部材の連結部27と、3Pヒッチ仕様の場合の連結部材の連結部28とを、リフトアーム17に予め設けることによって、トラクタ1を2Pヒッチ仕様と3Pヒッチ仕様とに容易に仕様変更して使用することができ、いずれの仕様の場合も必要な揚程を確保することができ、作業機に円滑な作業を行わせることができる。
【0026】
特に3Pヒッチ仕様の場合、ロアリンク21の揺動角度は、リフトアーム17側で調節されるため、ロアリンク21として従来から3Pヒッチ仕様のトラクタに使用されるものを兼用して利用することができる。このときロアリンク21側の連結部材との連結部を使用することができ、兼用して使用するロアリンク21の本来の連結部位置より回動支点寄り(前方)に連結点を設ける必要がなく、作業機を上昇させる力(揚力)や、作業機を支持するロアリンク21の強度が不足するような不都合を防止することもできる。
【0027】
なおリフトアーム17に部品追加等を行う必要がないため、上記仕様変更は容易である。本実施形態においては2つのヒッチ部(受け16)を備えたブラケット14を取り外して、トップリンク22及び両ロアリンク21(3点リンクヒッチ)を取り付けるように構成されているが、ブラケット14を取り付けたまま3点リンクヒッチ)を取り付けるように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】2Pヒッチによってロータリ作業機を連結した状態のトラクタの側面図である。
【図2】3Pヒッチによって掘取り作業機を連結した状態のトラクタの側面図である。
【符号の説明】
【0029】
2 ロータリ作業機(作業機)
16 受け(ヒッチ部)
17 リフトアーム
21 ロアリンク(リンクアーム)
22 トップリンク(リンクアーム)
27 連結部
28 連結部
31 掘取り作業機(作業機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下揺動駆動可能に設けられたリフトアーム(17)により、連結状態の作業機(2),(31)を昇降する作業車両において、該作業車両は、作業機(2)を2点によって連結する2点ヒッチの2つのヒッチ部(16)と、作業機(31)を3点によって連結する3点ヒッチを構成する端部にヒッチ部が設けられた3つのリンクアーム(21),(22)とを装着することが可能に構成され、リフトアーム(17)は、2点ヒッチのヒッチ部(16)に装着される作業機(2)側と2点ヒッチ用の連結部材を介して連結可能、且つ3点ヒッチのリンクアーム(21),(22)側と3点ヒッチ用の連結部材を介して連結可能に構成され、リフトアーム(17)に、2点ヒッチ用の連結部材との連結部(27)と、3点ヒッチ用の連結部材との連結部(28)とを別々に設け、リフトアーム(17)の揺動支点から2点ヒッチ用の連結部材との連結部(27)までの距離より、リフトアーム(17)の揺動支点から3点ヒッチ用の連結部材との連結部(28)までの距離が長くなるように両連結部(27),(28)を配置した作業車両。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−75030(P2007−75030A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268350(P2005−268350)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】