作業車両
【課題】本発明では、油圧無断変速走行装置の走行速度制御において、HSTの作動オイルの温度変化があっても変速レバーの変速操作に追従して応答性良く可動斜板を回動して変速動作するようにすることが第一の課題であり、高速走行或いは高速回転時に過負荷でエンジンが停止することを防ぐようにすることが第二の課題である。
【解決手段】変速操作具5の操作に連動してHST1のトラニオン軸を回動するアクチェーエータ114を設けた作業車両において、前記変速操作具5の変速操作速度を検出する変速センサ103とトラニオン軸の回動速度を検出するトラニオンセンサ105を設け、変速センサ103の変速速度とトラニオンセンサ105の回動速度が適正対応で無い場合は、その誤差を次回の変速操作時に修正すべくアクチェーエータ114の駆動力を変更すべく制御したことを特徴とする作業車両とした。
【解決手段】変速操作具5の操作に連動してHST1のトラニオン軸を回動するアクチェーエータ114を設けた作業車両において、前記変速操作具5の変速操作速度を検出する変速センサ103とトラニオン軸の回動速度を検出するトラニオンセンサ105を設け、変速センサ103の変速速度とトラニオンセンサ105の回動速度が適正対応で無い場合は、その誤差を次回の変速操作時に修正すべくアクチェーエータ114の駆動力を変更すべく制御したことを特徴とする作業車両とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業車両に関する。特に、コンバインやトラクタ或いは多目的作業車等の作業車両で用いられる油圧無断変速走行装置の走行速度制御に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧無断変速走行装置は、可変容量型油圧ポンプの可動斜板を回動し油圧ポンプからの吐出量を変更して出力回転数を変更する油圧無断変速装置(以下、「HST」という)が用いられる。そして、作業車では、このHSTとギア変速装置で走行装置のトランスミッションを構成し、HSTの変速とギア変速装置の変速段を組み合わせて所望の走行速度を得るように制御している。
【0003】
例えば、特開2003−130177号公報には、HSTと遊星歯車機構の組み合わせで出力回転軸の回転数を変速する構成が示され、変速比が所定値以下ではHSTのみの出力で駆動し、変速比が所定値を上回った場合にはHSTの出力と遊星歯車機構の出力を合成して出力回転軸を駆動するようにしている。
【特許文献1】特開2003−130177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HSTの可動斜板を取り付けたトラニオン軸は、変速レバーの動きをモータや油圧シリンダの動きに伝動して回動操作しているが、可動斜板は油圧ポンプ内のオイルの温度によって回動抵抗力が変化し始動時に低温であると回り難く変速レバー等の変速速度に対する遅れすなわち応答遅れが生じ、長時間の使用でオイルが高温になると回り易くなって変速レバーの変速操作に思ったより素早く対応することになって、変速レバー等の変速操作フィーリングが変化する。
【0005】
そこで、本発明では、油圧無断変速走行装置の走行速度制御において、HSTの作動オイルの温度変化があっても変速レバーの変速操作に追従して応答性良く可動斜板を回動して変速動作するようにすることが第一の課題であり、高速走行或いは高速回転時に過負荷でエンジンが停止することを防ぐようにすることが第二の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、変速操作具5の操作に連動してHST1のトラニオン軸を回動するアクチェーエータ114を設けた作業車両において、前記変速操作具5の変速操作速度を検出する変速センサ103とトラニオン軸の回動速度を検出するトラニオンセンサ105を設け、変速センサ103の変速速度とトラニオンセンサ105の回動速度が適正対応で無い場合は、その誤差を次回の変速操作時に修正すべくアクチェーエータ114の駆動力を変更すべく制御したことを特徴とする作業車両としたものである。
【0007】
この構成で、例えば、変速操作具5の変速操作速度にHST1のトラニオン軸回動が追従していなければ、次回の変速操作時に修正された駆動力でアクチェーエータ114が作動してトラニオン軸を回動して変速する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、変速操作具5の操作に連動してHST1のトラニオン軸を回動するアクチェーエータ114を設けた作業車両において、前記変速操作具5の変速操作速度を検出する変速センサ103とトラニオン軸の回動速度を検出するトラニオンセンサ105とエンジン6の回転数を検出するエンジン回転センサ109を設け、変速センサ103が最速位置でトラニオン軸の最大開き位置を検出している際にエンジン回転センサ109がエンジン回転の低下を検出すると、アクチェーエータ114でトラニオン軸を中立位置へ戻すように駆動すべく制御したことを特徴とする作業車両としたものである。
【0009】
この構成で、変速操作具5を最速変速にしてエンジン回転が低下すると、過負荷状態としてHST1を中立停止としてエンジンの停止を防ぐ。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によると、例え、変速操作具5の変速操作にHST1の変速速度が追従しないことが一度あっても次回の変速操作時にHST1の変速速度が修正されて追従性良く変速される。
【0011】
請求項2記載の発明によると、変速操作具5を最速変速にした状態でエンジンの過負荷が生じたら突然エンジンが停止するのではなくHST1が中立になって走行を停止するので、安全であり、再度変速操作具5を増速して低変速で走行を続けることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
本発明を実施した多目的作業車は、その平面図(図2)と側面図(図1)に示すように、モノコックフレームに左右の前輪8,8と左右の後輪9,9からなる走行装置10を操舵可能に支持し、一般的なトラクタの構成と前後を逆に、すなわち、エンジン6を機体後部に配置し、トランスミッション14を機体前部に配置する。その機体前部に操縦部2d、後部に荷台2tを構成し、かつ、作業機動力として機体前部にPTO軸13を備え、また、機体中間位置に車高検出機構2hを下垂状に構成する。
【0013】
また、操縦部2dには、その要部斜視図を図3に示すように、ハンドルコラム2cを立設してステアリングハンドルSを設け、ハンドルコラム2cの左側部に前後進切換レバーR、ハンドルコラム2cの基部にはその右側位置にHSTペダル5、左側位置にブレーキペダル12等の操作手段をそれぞれ配置する。
【0014】
トランスミッション14は、後に詳述するように、HST1および多段ギア変速機構7を直列に内装して前後輪8,9とPTO出力軸13に駆動力を伝動する。前後進切換レバーRを操作して前後進を選択してHSTペダル5を踏んで増速すると、エンジン6からの動力はトランスミッション14内の無段変速機構1で変速され、さらに、変速レバー4で選択された多段ギア変速機構7の変速段で変速されて、後輪9,9のみまたは、後輪9,9と前輪8,8の両方に伝達され、機体は前進または後進する。また、ブレーキペダル12を踏むと前輪8,8と後輪9,9のディスクブレーキ(図示せず)を作動させるとともに、HSTの可変油圧ポンプのトラニオン軸を中立に戻し、HSTの定量油圧モータからの出力を停止する。また、HSTペダル5とブレーキペダル12を同時に踏むとブレーキペダル12を優先する。
【0015】
PTO軸13には各種の作業機を接続して多目的作業を可能とする。例えば、路上清掃機を取り付けて路上清掃を行ったり、芝刈機を取り付けて芝刈作業を行ったり、雪掻機を取り付けて除雪などの作業を行う。
【0016】
次に、ミッションケース14の内部構造を図4乃至図7で説明する。
ミッションケース14は、図4に示す如く、前ケース15、繋ぎケース16、中間ケース17、後ケース18の4つの中空ケースを連結した構成で、後ケース18に軸支した入力軸19にエンジン6の駆動力が入力し、この入力軸19の回転がインプットケース20内の増速ギア21,22で第一中継軸23へ伝動し、さらに増速ギア24,25で増速され、この増速ギア25に無段変速機構1の油圧入力軸38をスプライン嵌合している。
【0017】
繋ぎケース16は従来の前ケース15と中間ケース17を連結してミッションケース14を長くするもので、前ケース15と中間ケース17及び後ケース18を従来のミッションケースと共用化することで製作コストを低く出来る。
【0018】
増速ギア21,22と増速ギア24,25を内装するインプットケース20は、高速走行を可能にするためにエンジン6の出力回転を増速するために設けるもので、従来のトラクタのミッションケース14内に伝動機構を収納可能にしている。このインプットケース20は図6に示す如く、密封ケースにしてミッションケース14の外部へ通じる給油管からオイルを給油するようにすれば、増速ギア21,22,24,25の修理の際にミッシ
ョンケース14内のオイルを抜かずにインプソトケース20のみを取り外せるので、作業が楽になる。
【0019】
無段変速機構1の内部では油圧変速により出力を大きく無段階で変速して、PTO駆動軸26と走行駆動軸27の二つの軸へ出力する。
PTO駆動軸26にはPTOギア軸28を連結し、このPTOギア軸28のギア29と第二中継軸30に遊嵌したギア31を噛み合わせ、このギア31をPTO軸32に装着したPTOクラッチ34のギア33に噛み合わせている。PTOクラッチ34はギア33からPTO軸32への回転伝動を断続する。
【0020】
PTO軸32にはPTO延長軸35を連結し、このPTO延長軸35のギア36をPTO出力軸13にスプライン嵌合したクラッチギア37に噛み合わせてPTO出力軸13を駆動している。(図4参照)
PTOクラッチ34の詳細を図7に示しているが、クラッチ入ではクラッチ盤88が繋がってケーシング86が回転して伝動するが、クラッチ切では戻しバネ87の圧でクラッチ盤88が離れてケーシング86をフリーにする。この時にケーシング86の付き回りを防ぐ為に繋ぎケース16のボス部81に当接する係止リング85をケーシング86の外周に装着している。
【0021】
走行駆動軸27には第三中継軸39を連結し、この第三中継軸39に固着したギア40ヘギア41,42を噛み合わせて第四中継軸43に伝動する。第四中継軸43にはメインギア軸44を連結している。
【0022】
メインギア軸44には、大ギア45と中ギア46を一体的に固着し、このメインギア軸44の延長上にサブギア軸47を分離して回転可能に軸支している。このサブギア軸47には小ギア48と大ギア74及び走行伝動ギア75を一体的に固着している。従って、大ギア45と中ギア46は同一回転をし、小ギア48と大ギア74は後述するクラッチギア77からの回転を受ける。(図7参照)
大ギア45はクラッチ軸49に装着した高速油圧クラッチ51のギア50と噛み合い、中ギア46はクラッチ軸49に装着した低速油圧クラッチ52のギア53と噛み合い、メインギア軸44の回転をクラッチ軸49へ高速或いは低速で伝動する。
【0023】
クラッチ軸49の延長上にスプライン軸76をスプライン嵌合し、このスプライン軸76にクラッチギア77をスプライン嵌合して、クラッチ軸49の回転をクラッチギア77に伝動している。また、クラッチ軸49を支持する繋ぎケース16のボス部81にはクラッチ軸49の油圧孔に通じる油圧用孔82,83,84を設けて、高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52に作動油を送るようにしている。
【0024】
クラッチギア77には大ギア78と小ギア73を形成し、大ギア78が前記サブギア軸47の小ギア48に噛み合って増速伝動して高速ギアクラッチ3aを構成したり、小ギア79がサブギア軸47の大ギア74に噛み合って減速伝動して低速ギアクラッチ3bを構成したり、大ギア78と小ギア73が共に游転して動力切になるようにして高低ギア変速クラッチ3を構成している。
【0025】
サブギア軸47の走行伝動ギア75は、スプライン軸76に遊嵌したべベルギア軸62にスプライン嵌合した走行ギア56に噛み合ってベベルギア軸62を駆動している。ベベルギア軸62のべベルギア63が前輪8の車軸へ装着したベベルギアへ駆動力を伝動するのである。
【0026】
ベベルギア軸62は、高速油圧クラッチ51からクラッチギア77の大ギア78とサブギア軸47の小ギア48への伝動による四速か、高速油圧クラッチ51からクラッチギア77の小ギア73とサブギア軸47の大ギア74への伝動による三速か、低速油圧クラッチ52からクラッチギア77の大ギア78とサブギア軸47の小ギア48への伝動による二速か、低速油圧クラッチ52からクラッチギア77の小ギア73とサブギア軸47の大ギア74への伝動による一速かのどれかで回転することになる。
【0027】
高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52と高低ギア変速クラッチ3を多段ギア変速機構7という。
また、ベベルギア軸62の回転は、走行ギア56からPTO軸32に装着した大小ギア59の小ギア部57へ伝動し、さらに大ギア部58に噛み合う後輪駆動軸61のクラッチギア60で適宜に後輪9へ駆動力を伝動可能にしている。
【0028】
走行ギア56は、ベベルギア軸62に伝動すると共に大小ギア59を介して後輪駆動軸61へ伝動しているので、伝動構成を単純化して前後に長くなるのを防いでいる。
尚、高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52はコントローラからの制御信号によりソレノイドを介してどちらかを入に保持するのであるが、ブレーキペダル12の踏み込みを検出するスイッチを設けて、このスイッチの踏込み信号で高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52のソレノイドへの通電を断って両クラッチ51,52をニュートラルにするようにしている。このニュートラルの状態でブレーキを作用することで素早く停止でき、ギア変速クラッチ3の切換えがスムースに行える。
【0029】
図8は、変速レバー4を示し、変速溝65を中央のニュートラル位置Nから前後位置H,Lに回動することで前記のギア変速クラッチ3を高速ギアクラッチ3aが入か低速ギアクラッチ3bが入に変速し、この変速レバー4のグリップ66の頭部に設ける増速ボタン67を押すと高速油圧クラッチ51を入動作し、減速ボタン68を押すと低速油圧クラッチ52を入動作する。
【0030】
また、変速溝65には変速レバー4の位置を検出するセンサ70H,70Lを設けて、変速レバー4が低速位置Lから高速位置Hに移動すると高速油圧クラッチ51が入であっても切にして、低速油圧クラッチ52が入になって三速になり、高速位置Hから低速位置Lに移動すると低速油圧クラッチ52が入であっても切にして、高速油圧クラッチ51が入になって二速になるようマイコン制御を行っている。なお、高速油圧クラッチ51を入りにする場合には、HSTペダル5が3/4以上踏込まれて無段変速機構が高速であれば一旦低速にして変速ショックを低減させる。また、変速レバー4が低速位置Lで滅速ボタン73を押すと一速になり、変速レバー4が高速位置Hで増速ボタン72を押すと四速になる。
【0031】
図9は、マイクロコンピュータ100による走行変速制御の制御ブロック図である。
マイクロコンピュータ100へ入力する入力信号は、ペダルセンサ103によるHSTペダル5の踏込み位置と踏込み速度信号と、トラニオンセンサ104からの無段変速機構1の可動斜板に固着するトラニオン軸の回動位置信号と回動動速度信号と、前後進切換レバーセンサ105による前後進切換レバーRの前後進位置信号と、クルーズコントロールスイッチ101によるオートクルーズ設定信号と、クルーズコントロールメモリスイッチ102による前回オートクルーズ速度への復帰信号と、ブレーキペダル12の踏込み信号と、車速センサ111による走行速度と、増速ボタン67と減速ボタン68による増減信号と、エンジン回転センサ109からのエンジン回転信号である。なお、ペダルセンサ103とトラニオンセンサ104は、走行制御の重要なセンサであるためにそれぞれ二個設けて、片方のセンサが異常値を検出したらその検出値を制御データとして使用しないようにする。
【0032】
マイクロコンピュータ100から出力する制御信号は、無段変速機構1のトラニオン軸を駆動するトラニオン駆動モータ114を正逆回転制御トラニオン前進リレー112に対する正転信号とトラニオン後進リレー113に対する逆転信号及び各駆動力変更信号と、高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52に対する作動信号等である。
【0033】
図10は、HSTペダル5の踏込みによるHST1の変速速度制御のフローチャートである。HSTペダル5の踏込みをペダルセンサ103で検出し、HST1のトラニオン軸の回動速度を所定速度に制御するのである。
【0034】
まず、ステップS1で制御駆動力(この制御駆動力は起動時に所定の値に設定し、以下の制御で制御値を変更する)を記憶回路から読込み、ステップS2でトラニオン軸の駆動出力判定を行い、出力があれば(すなわち、判定がYESであれば)ステップS3に移行し、ステップS2の判定がNOであればそのままリターンする。
【0035】
ステップS3では制御駆動力でトラニオン軸の回動駆動を行い、ステップS4でトラニオンセンサ104でトラニオン軸の回動変化率を読込む。そして、ステップS5で実際の回動変化率を所定の制御変化率と比較し、実変化率が制御変化率よりも小であれば(すなわち、判定がYESであれば)、ステップS6でトラニオン軸の制御駆動力を増加し、ステップS7でその増加した制御駆動力を新たな制御駆動力として記憶回路に記憶し、リターンする。
【0036】
ステップS5の判定がNOであれば、ステップS8の実回動変化率が制御変化率よりも大きいかの判定を行い、判定がYESであればステップS9でトラニオン軸の制御駆動力を減少させ、ステップS7でその減少した制御駆動力を新たな制御駆動力として記憶回路に記憶し、リターンする。ステップS8の判定がNO(すなわち、実変化率が制御変化率と略同一)であればそのままでリターンする。
【0037】
前記の制御は走行速度の増速時の制御であるが、減速時においても停止距離を短くするために、スロットルレバーを最大に開いているかエンジン回転を最高回転数にしているか最高速で走行しているかどれかの条件で、HSTペダル5の戻りを検出すると、HST1のトラニオン軸の戻り回動速度を通常より速く中立にして走行停止時間を短くする制御を行う。この場合に、エンジン回転数の上限付近や最高速近くでのHST1のトラニオン軸の戻り回動速度を比例的に変化させても良い。
【0038】
図11は、HSTペダル5を踏込んでも走行速度が低下するような過負荷での走行時に停止させて低速走行を促がす制御である。
ステップS10でHSTペダル5の踏込みが最大踏込みであって、ステップS11でトラニオン軸の回度が大きく、ステップS12でエンジン回転数が低下すれば、ステップS13でトラニオン軸を中立に戻す。ステップS10とステップS11とステップS12の判定のどれかがNOであればステップS13のトラニオン軸を中立にする戻しを行わない。
【0039】
図12は、一定の走行速度を維持するオートクルーズ制御のフローチャートで、前回のオートクルーズ設定を記憶しておいて、クルーズコントロールメモリスイッチ102を押すと前回のオートクルーズ速度に復帰する制御である。
【0040】
ステップS20で前回のオートクルーズ設定を読み出し、ステップS21で走行中にクルーズコントロールスイッチ101を押す等の操作を行ってオートクルーズにしたかを判定し、判定がYESであればステップS22でこのオートクルーズ設定条件記憶を更新し、ステップS23でクルーズコントロールメモリスイッチ102をオンしたかの判定を行い、判定がYESであればステップS24でトラニオン軸の回転駆動を開始し、ステップS25で前回のオートクルーズ速度に達するのを待って、前回のオートクルーズ速度になればステップS26でトラニオン軸の回転駆動を停止し、リターンする。ステップS21の判定かステップS23の判定がNOであれば、そのままでリターンする。
【0041】
この制御は、クルーズコントロールメモリスイッチ102をオンを押すだけで以前の走行速度になるため、路上清掃等の作業を中断し移動した後に再び路上清掃等の同じ作業を繰り返す場合などに便利である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施例の多目的作業車の全体側面図である。
【図2】本実施例の多目的作業車の全体平面図である。
【図3】本実施例の多目的作業車の一部斜視図である。
【図4】ミッションケースの全体断面図である。
【図5】ミッションケースの部分拡大断面図である。
【図6】ミッションケースの部分拡大断面図である。
【図7】ミッションケースの部分拡大断面図である。
【図8】一部の拡大斜視図である。
【図9】制御のブロック図である。
【図10】制御のフローチャート図である。
【図11】制御のフローチャート図である。
【図12】制御のフローチャート図である。
【符号の説明】
【0043】
1 無段変速機構(HST)
5 変速操作具(HSTペダル)
6 エンジン
103 変速センサ
105 トラニオンセンサ
109 エンジン回転センサ
114 アクチェーエータ(トラニオン駆動モータ)
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業車両に関する。特に、コンバインやトラクタ或いは多目的作業車等の作業車両で用いられる油圧無断変速走行装置の走行速度制御に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧無断変速走行装置は、可変容量型油圧ポンプの可動斜板を回動し油圧ポンプからの吐出量を変更して出力回転数を変更する油圧無断変速装置(以下、「HST」という)が用いられる。そして、作業車では、このHSTとギア変速装置で走行装置のトランスミッションを構成し、HSTの変速とギア変速装置の変速段を組み合わせて所望の走行速度を得るように制御している。
【0003】
例えば、特開2003−130177号公報には、HSTと遊星歯車機構の組み合わせで出力回転軸の回転数を変速する構成が示され、変速比が所定値以下ではHSTのみの出力で駆動し、変速比が所定値を上回った場合にはHSTの出力と遊星歯車機構の出力を合成して出力回転軸を駆動するようにしている。
【特許文献1】特開2003−130177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HSTの可動斜板を取り付けたトラニオン軸は、変速レバーの動きをモータや油圧シリンダの動きに伝動して回動操作しているが、可動斜板は油圧ポンプ内のオイルの温度によって回動抵抗力が変化し始動時に低温であると回り難く変速レバー等の変速速度に対する遅れすなわち応答遅れが生じ、長時間の使用でオイルが高温になると回り易くなって変速レバーの変速操作に思ったより素早く対応することになって、変速レバー等の変速操作フィーリングが変化する。
【0005】
そこで、本発明では、油圧無断変速走行装置の走行速度制御において、HSTの作動オイルの温度変化があっても変速レバーの変速操作に追従して応答性良く可動斜板を回動して変速動作するようにすることが第一の課題であり、高速走行或いは高速回転時に過負荷でエンジンが停止することを防ぐようにすることが第二の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、変速操作具5の操作に連動してHST1のトラニオン軸を回動するアクチェーエータ114を設けた作業車両において、前記変速操作具5の変速操作速度を検出する変速センサ103とトラニオン軸の回動速度を検出するトラニオンセンサ105を設け、変速センサ103の変速速度とトラニオンセンサ105の回動速度が適正対応で無い場合は、その誤差を次回の変速操作時に修正すべくアクチェーエータ114の駆動力を変更すべく制御したことを特徴とする作業車両としたものである。
【0007】
この構成で、例えば、変速操作具5の変速操作速度にHST1のトラニオン軸回動が追従していなければ、次回の変速操作時に修正された駆動力でアクチェーエータ114が作動してトラニオン軸を回動して変速する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、変速操作具5の操作に連動してHST1のトラニオン軸を回動するアクチェーエータ114を設けた作業車両において、前記変速操作具5の変速操作速度を検出する変速センサ103とトラニオン軸の回動速度を検出するトラニオンセンサ105とエンジン6の回転数を検出するエンジン回転センサ109を設け、変速センサ103が最速位置でトラニオン軸の最大開き位置を検出している際にエンジン回転センサ109がエンジン回転の低下を検出すると、アクチェーエータ114でトラニオン軸を中立位置へ戻すように駆動すべく制御したことを特徴とする作業車両としたものである。
【0009】
この構成で、変速操作具5を最速変速にしてエンジン回転が低下すると、過負荷状態としてHST1を中立停止としてエンジンの停止を防ぐ。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によると、例え、変速操作具5の変速操作にHST1の変速速度が追従しないことが一度あっても次回の変速操作時にHST1の変速速度が修正されて追従性良く変速される。
【0011】
請求項2記載の発明によると、変速操作具5を最速変速にした状態でエンジンの過負荷が生じたら突然エンジンが停止するのではなくHST1が中立になって走行を停止するので、安全であり、再度変速操作具5を増速して低変速で走行を続けることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
本発明を実施した多目的作業車は、その平面図(図2)と側面図(図1)に示すように、モノコックフレームに左右の前輪8,8と左右の後輪9,9からなる走行装置10を操舵可能に支持し、一般的なトラクタの構成と前後を逆に、すなわち、エンジン6を機体後部に配置し、トランスミッション14を機体前部に配置する。その機体前部に操縦部2d、後部に荷台2tを構成し、かつ、作業機動力として機体前部にPTO軸13を備え、また、機体中間位置に車高検出機構2hを下垂状に構成する。
【0013】
また、操縦部2dには、その要部斜視図を図3に示すように、ハンドルコラム2cを立設してステアリングハンドルSを設け、ハンドルコラム2cの左側部に前後進切換レバーR、ハンドルコラム2cの基部にはその右側位置にHSTペダル5、左側位置にブレーキペダル12等の操作手段をそれぞれ配置する。
【0014】
トランスミッション14は、後に詳述するように、HST1および多段ギア変速機構7を直列に内装して前後輪8,9とPTO出力軸13に駆動力を伝動する。前後進切換レバーRを操作して前後進を選択してHSTペダル5を踏んで増速すると、エンジン6からの動力はトランスミッション14内の無段変速機構1で変速され、さらに、変速レバー4で選択された多段ギア変速機構7の変速段で変速されて、後輪9,9のみまたは、後輪9,9と前輪8,8の両方に伝達され、機体は前進または後進する。また、ブレーキペダル12を踏むと前輪8,8と後輪9,9のディスクブレーキ(図示せず)を作動させるとともに、HSTの可変油圧ポンプのトラニオン軸を中立に戻し、HSTの定量油圧モータからの出力を停止する。また、HSTペダル5とブレーキペダル12を同時に踏むとブレーキペダル12を優先する。
【0015】
PTO軸13には各種の作業機を接続して多目的作業を可能とする。例えば、路上清掃機を取り付けて路上清掃を行ったり、芝刈機を取り付けて芝刈作業を行ったり、雪掻機を取り付けて除雪などの作業を行う。
【0016】
次に、ミッションケース14の内部構造を図4乃至図7で説明する。
ミッションケース14は、図4に示す如く、前ケース15、繋ぎケース16、中間ケース17、後ケース18の4つの中空ケースを連結した構成で、後ケース18に軸支した入力軸19にエンジン6の駆動力が入力し、この入力軸19の回転がインプットケース20内の増速ギア21,22で第一中継軸23へ伝動し、さらに増速ギア24,25で増速され、この増速ギア25に無段変速機構1の油圧入力軸38をスプライン嵌合している。
【0017】
繋ぎケース16は従来の前ケース15と中間ケース17を連結してミッションケース14を長くするもので、前ケース15と中間ケース17及び後ケース18を従来のミッションケースと共用化することで製作コストを低く出来る。
【0018】
増速ギア21,22と増速ギア24,25を内装するインプットケース20は、高速走行を可能にするためにエンジン6の出力回転を増速するために設けるもので、従来のトラクタのミッションケース14内に伝動機構を収納可能にしている。このインプットケース20は図6に示す如く、密封ケースにしてミッションケース14の外部へ通じる給油管からオイルを給油するようにすれば、増速ギア21,22,24,25の修理の際にミッシ
ョンケース14内のオイルを抜かずにインプソトケース20のみを取り外せるので、作業が楽になる。
【0019】
無段変速機構1の内部では油圧変速により出力を大きく無段階で変速して、PTO駆動軸26と走行駆動軸27の二つの軸へ出力する。
PTO駆動軸26にはPTOギア軸28を連結し、このPTOギア軸28のギア29と第二中継軸30に遊嵌したギア31を噛み合わせ、このギア31をPTO軸32に装着したPTOクラッチ34のギア33に噛み合わせている。PTOクラッチ34はギア33からPTO軸32への回転伝動を断続する。
【0020】
PTO軸32にはPTO延長軸35を連結し、このPTO延長軸35のギア36をPTO出力軸13にスプライン嵌合したクラッチギア37に噛み合わせてPTO出力軸13を駆動している。(図4参照)
PTOクラッチ34の詳細を図7に示しているが、クラッチ入ではクラッチ盤88が繋がってケーシング86が回転して伝動するが、クラッチ切では戻しバネ87の圧でクラッチ盤88が離れてケーシング86をフリーにする。この時にケーシング86の付き回りを防ぐ為に繋ぎケース16のボス部81に当接する係止リング85をケーシング86の外周に装着している。
【0021】
走行駆動軸27には第三中継軸39を連結し、この第三中継軸39に固着したギア40ヘギア41,42を噛み合わせて第四中継軸43に伝動する。第四中継軸43にはメインギア軸44を連結している。
【0022】
メインギア軸44には、大ギア45と中ギア46を一体的に固着し、このメインギア軸44の延長上にサブギア軸47を分離して回転可能に軸支している。このサブギア軸47には小ギア48と大ギア74及び走行伝動ギア75を一体的に固着している。従って、大ギア45と中ギア46は同一回転をし、小ギア48と大ギア74は後述するクラッチギア77からの回転を受ける。(図7参照)
大ギア45はクラッチ軸49に装着した高速油圧クラッチ51のギア50と噛み合い、中ギア46はクラッチ軸49に装着した低速油圧クラッチ52のギア53と噛み合い、メインギア軸44の回転をクラッチ軸49へ高速或いは低速で伝動する。
【0023】
クラッチ軸49の延長上にスプライン軸76をスプライン嵌合し、このスプライン軸76にクラッチギア77をスプライン嵌合して、クラッチ軸49の回転をクラッチギア77に伝動している。また、クラッチ軸49を支持する繋ぎケース16のボス部81にはクラッチ軸49の油圧孔に通じる油圧用孔82,83,84を設けて、高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52に作動油を送るようにしている。
【0024】
クラッチギア77には大ギア78と小ギア73を形成し、大ギア78が前記サブギア軸47の小ギア48に噛み合って増速伝動して高速ギアクラッチ3aを構成したり、小ギア79がサブギア軸47の大ギア74に噛み合って減速伝動して低速ギアクラッチ3bを構成したり、大ギア78と小ギア73が共に游転して動力切になるようにして高低ギア変速クラッチ3を構成している。
【0025】
サブギア軸47の走行伝動ギア75は、スプライン軸76に遊嵌したべベルギア軸62にスプライン嵌合した走行ギア56に噛み合ってベベルギア軸62を駆動している。ベベルギア軸62のべベルギア63が前輪8の車軸へ装着したベベルギアへ駆動力を伝動するのである。
【0026】
ベベルギア軸62は、高速油圧クラッチ51からクラッチギア77の大ギア78とサブギア軸47の小ギア48への伝動による四速か、高速油圧クラッチ51からクラッチギア77の小ギア73とサブギア軸47の大ギア74への伝動による三速か、低速油圧クラッチ52からクラッチギア77の大ギア78とサブギア軸47の小ギア48への伝動による二速か、低速油圧クラッチ52からクラッチギア77の小ギア73とサブギア軸47の大ギア74への伝動による一速かのどれかで回転することになる。
【0027】
高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52と高低ギア変速クラッチ3を多段ギア変速機構7という。
また、ベベルギア軸62の回転は、走行ギア56からPTO軸32に装着した大小ギア59の小ギア部57へ伝動し、さらに大ギア部58に噛み合う後輪駆動軸61のクラッチギア60で適宜に後輪9へ駆動力を伝動可能にしている。
【0028】
走行ギア56は、ベベルギア軸62に伝動すると共に大小ギア59を介して後輪駆動軸61へ伝動しているので、伝動構成を単純化して前後に長くなるのを防いでいる。
尚、高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52はコントローラからの制御信号によりソレノイドを介してどちらかを入に保持するのであるが、ブレーキペダル12の踏み込みを検出するスイッチを設けて、このスイッチの踏込み信号で高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52のソレノイドへの通電を断って両クラッチ51,52をニュートラルにするようにしている。このニュートラルの状態でブレーキを作用することで素早く停止でき、ギア変速クラッチ3の切換えがスムースに行える。
【0029】
図8は、変速レバー4を示し、変速溝65を中央のニュートラル位置Nから前後位置H,Lに回動することで前記のギア変速クラッチ3を高速ギアクラッチ3aが入か低速ギアクラッチ3bが入に変速し、この変速レバー4のグリップ66の頭部に設ける増速ボタン67を押すと高速油圧クラッチ51を入動作し、減速ボタン68を押すと低速油圧クラッチ52を入動作する。
【0030】
また、変速溝65には変速レバー4の位置を検出するセンサ70H,70Lを設けて、変速レバー4が低速位置Lから高速位置Hに移動すると高速油圧クラッチ51が入であっても切にして、低速油圧クラッチ52が入になって三速になり、高速位置Hから低速位置Lに移動すると低速油圧クラッチ52が入であっても切にして、高速油圧クラッチ51が入になって二速になるようマイコン制御を行っている。なお、高速油圧クラッチ51を入りにする場合には、HSTペダル5が3/4以上踏込まれて無段変速機構が高速であれば一旦低速にして変速ショックを低減させる。また、変速レバー4が低速位置Lで滅速ボタン73を押すと一速になり、変速レバー4が高速位置Hで増速ボタン72を押すと四速になる。
【0031】
図9は、マイクロコンピュータ100による走行変速制御の制御ブロック図である。
マイクロコンピュータ100へ入力する入力信号は、ペダルセンサ103によるHSTペダル5の踏込み位置と踏込み速度信号と、トラニオンセンサ104からの無段変速機構1の可動斜板に固着するトラニオン軸の回動位置信号と回動動速度信号と、前後進切換レバーセンサ105による前後進切換レバーRの前後進位置信号と、クルーズコントロールスイッチ101によるオートクルーズ設定信号と、クルーズコントロールメモリスイッチ102による前回オートクルーズ速度への復帰信号と、ブレーキペダル12の踏込み信号と、車速センサ111による走行速度と、増速ボタン67と減速ボタン68による増減信号と、エンジン回転センサ109からのエンジン回転信号である。なお、ペダルセンサ103とトラニオンセンサ104は、走行制御の重要なセンサであるためにそれぞれ二個設けて、片方のセンサが異常値を検出したらその検出値を制御データとして使用しないようにする。
【0032】
マイクロコンピュータ100から出力する制御信号は、無段変速機構1のトラニオン軸を駆動するトラニオン駆動モータ114を正逆回転制御トラニオン前進リレー112に対する正転信号とトラニオン後進リレー113に対する逆転信号及び各駆動力変更信号と、高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52に対する作動信号等である。
【0033】
図10は、HSTペダル5の踏込みによるHST1の変速速度制御のフローチャートである。HSTペダル5の踏込みをペダルセンサ103で検出し、HST1のトラニオン軸の回動速度を所定速度に制御するのである。
【0034】
まず、ステップS1で制御駆動力(この制御駆動力は起動時に所定の値に設定し、以下の制御で制御値を変更する)を記憶回路から読込み、ステップS2でトラニオン軸の駆動出力判定を行い、出力があれば(すなわち、判定がYESであれば)ステップS3に移行し、ステップS2の判定がNOであればそのままリターンする。
【0035】
ステップS3では制御駆動力でトラニオン軸の回動駆動を行い、ステップS4でトラニオンセンサ104でトラニオン軸の回動変化率を読込む。そして、ステップS5で実際の回動変化率を所定の制御変化率と比較し、実変化率が制御変化率よりも小であれば(すなわち、判定がYESであれば)、ステップS6でトラニオン軸の制御駆動力を増加し、ステップS7でその増加した制御駆動力を新たな制御駆動力として記憶回路に記憶し、リターンする。
【0036】
ステップS5の判定がNOであれば、ステップS8の実回動変化率が制御変化率よりも大きいかの判定を行い、判定がYESであればステップS9でトラニオン軸の制御駆動力を減少させ、ステップS7でその減少した制御駆動力を新たな制御駆動力として記憶回路に記憶し、リターンする。ステップS8の判定がNO(すなわち、実変化率が制御変化率と略同一)であればそのままでリターンする。
【0037】
前記の制御は走行速度の増速時の制御であるが、減速時においても停止距離を短くするために、スロットルレバーを最大に開いているかエンジン回転を最高回転数にしているか最高速で走行しているかどれかの条件で、HSTペダル5の戻りを検出すると、HST1のトラニオン軸の戻り回動速度を通常より速く中立にして走行停止時間を短くする制御を行う。この場合に、エンジン回転数の上限付近や最高速近くでのHST1のトラニオン軸の戻り回動速度を比例的に変化させても良い。
【0038】
図11は、HSTペダル5を踏込んでも走行速度が低下するような過負荷での走行時に停止させて低速走行を促がす制御である。
ステップS10でHSTペダル5の踏込みが最大踏込みであって、ステップS11でトラニオン軸の回度が大きく、ステップS12でエンジン回転数が低下すれば、ステップS13でトラニオン軸を中立に戻す。ステップS10とステップS11とステップS12の判定のどれかがNOであればステップS13のトラニオン軸を中立にする戻しを行わない。
【0039】
図12は、一定の走行速度を維持するオートクルーズ制御のフローチャートで、前回のオートクルーズ設定を記憶しておいて、クルーズコントロールメモリスイッチ102を押すと前回のオートクルーズ速度に復帰する制御である。
【0040】
ステップS20で前回のオートクルーズ設定を読み出し、ステップS21で走行中にクルーズコントロールスイッチ101を押す等の操作を行ってオートクルーズにしたかを判定し、判定がYESであればステップS22でこのオートクルーズ設定条件記憶を更新し、ステップS23でクルーズコントロールメモリスイッチ102をオンしたかの判定を行い、判定がYESであればステップS24でトラニオン軸の回転駆動を開始し、ステップS25で前回のオートクルーズ速度に達するのを待って、前回のオートクルーズ速度になればステップS26でトラニオン軸の回転駆動を停止し、リターンする。ステップS21の判定かステップS23の判定がNOであれば、そのままでリターンする。
【0041】
この制御は、クルーズコントロールメモリスイッチ102をオンを押すだけで以前の走行速度になるため、路上清掃等の作業を中断し移動した後に再び路上清掃等の同じ作業を繰り返す場合などに便利である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施例の多目的作業車の全体側面図である。
【図2】本実施例の多目的作業車の全体平面図である。
【図3】本実施例の多目的作業車の一部斜視図である。
【図4】ミッションケースの全体断面図である。
【図5】ミッションケースの部分拡大断面図である。
【図6】ミッションケースの部分拡大断面図である。
【図7】ミッションケースの部分拡大断面図である。
【図8】一部の拡大斜視図である。
【図9】制御のブロック図である。
【図10】制御のフローチャート図である。
【図11】制御のフローチャート図である。
【図12】制御のフローチャート図である。
【符号の説明】
【0043】
1 無段変速機構(HST)
5 変速操作具(HSTペダル)
6 エンジン
103 変速センサ
105 トラニオンセンサ
109 エンジン回転センサ
114 アクチェーエータ(トラニオン駆動モータ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速操作具(5)の操作に連動してHST(1)のトラニオン軸を回動するアクチェーエータ(114)を設けた作業車両において、前記変速操作具(5)の変速操作速度を検出する変速センサ(103)とトラニオン軸の回動速度を検出するトラニオンセンサ(105)を設け、変速センサ(103)の変速速度とトラニオンセンサ(105)の回動速度が適正対応で無い場合は、その誤差を次回の変速操作時に修正すべくアクチェーエータ(114)の駆動力を変更すべく制御したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
変速操作具(5)の操作に連動してHST(1)のトラニオン軸を回動するアクチェーエータ(114)を設けた作業車両において、前記変速操作具(5)の変速操作速度を検出する変速センサ(103)とトラニオン軸の回動速度を検出するトラニオンセンサ(105)とエンジン(6)の回転数を検出するエンジン回転センサ(109)を設け、変速センサ(103)が最速位置でトラニオン軸の最大開き位置を検出している際にエンジン回転センサ(109)がエンジン回転の低下を検出すると、アクチェーエータ(114)でトラニオン軸を中立位置へ戻すように駆動すべく制御したことを特徴とする作業車両。
【請求項1】
変速操作具(5)の操作に連動してHST(1)のトラニオン軸を回動するアクチェーエータ(114)を設けた作業車両において、前記変速操作具(5)の変速操作速度を検出する変速センサ(103)とトラニオン軸の回動速度を検出するトラニオンセンサ(105)を設け、変速センサ(103)の変速速度とトラニオンセンサ(105)の回動速度が適正対応で無い場合は、その誤差を次回の変速操作時に修正すべくアクチェーエータ(114)の駆動力を変更すべく制御したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
変速操作具(5)の操作に連動してHST(1)のトラニオン軸を回動するアクチェーエータ(114)を設けた作業車両において、前記変速操作具(5)の変速操作速度を検出する変速センサ(103)とトラニオン軸の回動速度を検出するトラニオンセンサ(105)とエンジン(6)の回転数を検出するエンジン回転センサ(109)を設け、変速センサ(103)が最速位置でトラニオン軸の最大開き位置を検出している際にエンジン回転センサ(109)がエンジン回転の低下を検出すると、アクチェーエータ(114)でトラニオン軸を中立位置へ戻すように駆動すべく制御したことを特徴とする作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−236238(P2009−236238A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84121(P2008−84121)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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