説明

作業車両

【課題】紐類がシャフトに絡まるのを防止できるとともに、シャフトまで至らずに絡まった紐類の除去作業を適切な時期に迅速に行える作業車両を提供すること。
【解決手段】アクスルケース12と、アクスルケース12内から回転自在に突設されたシャフト10と、シャフト10に取り付けられた車輪1とを備えたフォークリフト等の作業車両であって、アクスルケース12の外周には、シャフト10の径方向の外方側に向けて突出した鍔状の侵入防止部材30を周方向に沿って設けるとともに、この侵入防止部材30を、車輪1を構成するホイール2の内方側の開口部5A近傍に対応して位置させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に係り、例えばフォークリフトや小型のホイールローダといった作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォークリフト等の作業車両においては、梱包に用いられた紐や、紐状となったラッピングフィルム等が、車輪へ動力を伝達するシャフトに絡み付くことがあり、そのような紐類の巻き込みを防止する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1での巻き込み防止構造は、アクスルケース(ギヤケース)の先端近傍位置に、鍔状のプロテクタを有した半円部材を一対設けるものである。一対の半円部材でアクスルケース周りを囲むことで、各半円部材に設けられたプロテクタが紐類のシャフト側への到達を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−30583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の巻き込み防止構造では、半円部材がアクスルケースの先端近傍に設けられることで、車輪で覆われた奥まった箇所に位置することになるため、半円部材のプロテクタ手前に絡まった紐類や、シャフトにまで到達して絡まった紐類を確認することができず、絡まり具合に応じた適切な時期に紐類の排除作業を行えないという問題がある。また、絡まった紐類を除去するためには、狭い空間にカッターナイフを差し入れる必要があるなど、除去作業に手間がかかるという問題もある。
【0005】
本発明の目的は、紐類がシャフトに絡まるのを防止できるとともに、シャフトまで至らずに絡まった紐類の除去作業を適切な時期に迅速に行える作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業車両は、アクスルケースと、前記アクスルケース内から回転自在に突設されたシャフトと、前記シャフトに取り付けられた車輪とを備えた作業車両であって、前記アクスルケースの外周には、前記シャフトの径方向の外方側に向けて突出した鍔状の侵入防止部が周方向に沿って設けられ、前記侵入防止部は、前記車輪を構成するホイールの内方側の開口部近傍に対応して位置していることを特徴とする。
【0007】
本発明の作業車両では、前記ホイールは、前記シャフトに取り付けられるハブと、前記ハブの外周側に設けられた筒状のリムと、前記リムの軸方向の両端側に設けられたフランジとを備えて形成され、前記侵入防止部は、前記リムの前記軸方向の内方端に対応した位置に設けられていることが望ましい。
【0008】
本発明の作業車両では、前記侵入防止部は、先端に向かうに従って前記内方側に傾斜した内側面を有していることが望ましい。
【0009】
本発明の作業車両では、前記侵入防止部は、前記アクスルケースの外周面に一体に形成されているか、または、環状とされた侵入防止部材として前記アクスルケースとは別体に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アクスルケースの外周に設けた侵入防止部により、紐類がシャフト側まで侵入するのを防止できる。また、侵入防止部をホイールの内方側の開口部近傍に設けるので、侵入防止部に絡まった紐類を車輪の内方側から視認でき、絡まり具合に応じた適切な時期に紐類の除去作業を実施できるとともに、開口部から奥深くに手を差し入れて除去作業を行う必要がなく、作業性が良好である。
【0011】
侵入防止部をホイールのリムの内方端に対応して位置させた本発明によれば、ホイールとアクスルケースとの間の最も狭い隙間に侵入防止部を設けることになるから、そのような隙間を通して侵入する紐類を良好に捕獲でき、紐類が奥のシャフト側に入り込むのをより確実に防止できる。
【0012】
先端に向かうに従って内方側に傾斜する内側面を侵入防止部に形成した本発明によれば、絡まった紐類が侵入防止部を越えてシャフト側に入り込むのを抑制でき、紐類の侵入を一層確実に防止できる。
【0013】
侵入防止部をアクスルケースに一体に設けた場合には、別体に設けてアクスルケースに取り付ける場合に比し、変形し難く耐久性に優れているうえ、取付作業を省くことができる。
一方、侵入防止部を侵入防止部材としてアクスルケースとは別体に設けた場合には、既に稼働している作業車両のアクスルケースに後付け等でき、機能改善に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る作業車両の要部を示す正面図であり、図2の矢印I−Iから見た図。
【図2】前記要部を示す平断面図であり、図1で車輪を取り付けた状態の矢印II−IIから見た断面図。
【図3】前記要部に取り付けられた侵入防止部材(侵入防止部)を示す全体斜視図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る作業車両の要部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る第1実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
本実施形態に係る作業車両はフォークリフトであり、図1、図2には、フォークリフトの作業機側に設けられる前側の車輪1が示されている。なお、本実施形態のフォークリフトは、前側の左右の車輪1を個別の電動モータで駆動する電動式であるが、図1、図2ではその電動モータの図示を省略してある。また、フォークリフトとしては、車輪1をエンジンで駆動するタイプであってもよく、さらに、本発明の作業車両としては、フォークリフトに限定されず、小型のホイールローダなど車輪により走行可能な任意の作業車両であってよい。
【0016】
図1、図2において、フォークリフトの車輪1は、金属製のホイール2にゴム製のタイヤ3を取り付けた一般的なものである。ここで、ホイール2は、円形のハブ4の外周に筒状のリム5を有した構造であり、リム5の軸方向の外方端には別体からなるフランジ6が設けられ、リム5の内方端にはフランジ7が一体に形成されている。
【0017】
そのような車輪1は、動力伝達用のシャフト10にハブ取付部材11を介して取り付けられている。シャフト10はハブ取付部材11ごとアクスルケース12内から回転自在に突設されている。シャフト10の基端側は、アクスルケース12内の減速機13に噛合されており、電動モータの回転が減速機13で減速されて伝達される。
【0018】
ここで、減速機13は、電動モータの出力軸に設けられた斜歯歯車と噛み合う皿状の入力歯車14と、入力歯車14に一体に設けられた伝達軸15と、伝達軸15に刻設された歯と噛み合う複数の遊星歯車16と、遊星歯車16の外周側に配置されて該遊星歯車16と噛み合う内歯歯車17とを備え、遊星歯車16がシャフト10の基端側の端面に軸支され、内歯歯車17がアクスルケース12の内部に固定されている。つまり減速機13は、遊星歯車16を有した遊星減速機である。
【0019】
アクスルケース12内において、皿状とされた入力歯車14の内部には、該入力歯車14の中央部分に円板状のブレーキディスク18が固定されている。ブレーキディスク18は、ブレーキ装置20によって挟持されるようになっている。このブレーキ装置20を含め、減速機13やシャフト10の支持部分は、アクスルケース12内に充填された潤滑油で満たされている。つまり本実施形態でのブレーキ装置20は、湿式である。
【0020】
ブレーキ装置20は、ブレーキディスク18を軸方向の外方から挟持する第1挟持部材21と、内方から挟持する複数の押圧ブレードを有した第2挟持部材22と、第2挟持部材22を内方側から外方側に向けて押圧する押圧部材23とを備え、押圧部材23がオペレータのブレーキ操作によりピストン24を介した油圧にて外方側に移動し、制動力を生じさせる。反対に押圧部材23は、ブレーキ操作の解除により、図示しないコイルバネのバネ力によって内方側に戻される。
【0021】
アクスルケース12内に充填されている潤滑油は、アクスルケース12の先端側の開口部分において、ハブ取付部材11との間でオイルシール19によりシールされている。このようなオイルシール19とハブ取付部材11との間には従来、作業中に紐類が侵入し、ハブ取付部材11に絡まる事態が生じていた。
【0022】
そこで、本実施形態では、そのような紐類の侵入を防止する侵入防止部材(侵入防止部)30が設けられている。侵入防止部材30は、図2に断面して示すように、アクスルケース12の外周において、シャフト10の径方向の外方側に向けて突設された鍔状で、かつ図1、図3に示すように、周方向に沿って連続した環状に形成されている。侵入防止部材30は、溶接等で接合された取付ブラケット31,32,33を介してアクスルケース12に固定されている。
【0023】
取付ブラケット31〜33の侵入防止部材30との接合位置は、安定した接合状態を維持するため、侵入防止部材30の周方向に間隔を空けて3箇所に設定されている。また、取付ブラケット31〜33は、アクスルケース12に対してボルト止めされているが、これらのボルトの幾つかは本来、アクスルケース12に電動モータを固定するために用いられるボルトであり、そのようなボルトで共締めされている。
【0024】
従って、取付ブラケット31〜33は、侵入防止部材30との接合位置と、もともと存在していたボルト位置とに対応した形状である。例えば取付ブラケット33は、侵入防止部材30に接合された第1部材34、第1部材34にボルト37にて固定された第2部材35,および第2部材35にやはり溶接等で接合された第3部材36で構成されことで、それぞれの接合位置およびボルト位置に対応させている。
【0025】
以上の侵入防止部材30は、シャフト10と同心上に位置することになり、また、アクスルケース12の外周において、ホイール2を形成しているリム5の内方側の開口部5A近傍に対応した位置、より具体的には、リム5の内方端に対応した位置に設けられている。リム5の内方端は、アクスルケース12との間の隙間が最も狭い部分であり、この隙間を通って侵入する紐類を侵入防止部材30で確実に捕獲し、絡ませることが可能なことから、紐類がホイール2のより奥側に侵入するのを防止できる。
【0026】
さらに、侵入防止部材30は、ホイール2の内方側の開口部5Aに近い位置に設けられるので、オペレータは車輪1の内側から侵入防止部材30を視認可能であり、侵入防止部材30に絡まった紐類の絡まり具合を目視により確認できる。このため、紐類の絡まり具合を確認しながら、適切な時期に紐類の除去作業を実施できるうえ、除去作業の実施に際しては、オペレータが車輪1の内側の比較的浅い位置に手を差し入れることにより、除去作業を手作業にて容易にできる。
【0027】
そして、本実施形態の侵入防止部材30は、アクスルケース12にもともと存在するボルトや、追加工等によって付加されたボルト等を用いてアクスルケース12に容易に取り付けることができるため、既に稼働している作業車両に後付けでき、紐類の絡まり防止機能を付加できる。
【0028】
〔第2実施形態〕
図4には、本発明の第2実施形態が示されている。
本実施形態では、本発明に係る侵入防止部40がアクスルケース12の外周面に一体に、かつその外周面から径方向の外方側に向けて突設されている。また、侵入防止部40は、先端側に向かうに従って軸方向の内方側に傾斜した内側面41を有し、絡まった紐類が侵入防止部40を乗り越えてシャフト10側へ入り込むのをより確実に防止できるようになっている。そして、本実施形態の侵入防止部40は、アクスルケース12とは別体とされておらず、取付ブラケットが用いられていない。
【0029】
このような侵入防止部40は、鋳造により製作されるアクスルケース12において、当初は内側面41が形成されていない状態、つまり図4中に点線で示すように鋳込まれた状態とされ、余分な部分を切削加工等されることで鍔状に形成される。侵入防止部40が設けられている位置など、他の構成は第1実施形態と同じであり、同じ構成部分には同一符号を付してある。このような実施形態でも、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、侵入防止部40がアクスルケース12と予め一体に形成されているので、アクスルケース12に後付けする必要がなく、取付作業を省くことができる。さらに、第1実施形態の侵入防止部材30と比較して変形し難く、耐久性に優れているというメリットもある。
【0031】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記第2実施形態の侵入防止部40は、その先端に向かうに従って内方側に傾斜した内側面41を有していたが、第1実施形態での侵入防止部材30においても同様に、先端(外周端)に向かうに従って内側に傾斜した内側面を形成しもよい。逆に、アクスルケース12と一体の侵入防止部40を軸方向に対して直交する方向に突設させた場合でも、本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明はフォークリフトに限らず、車輪により走行自在とされた作業車両に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0033】
1…車輪、2…ホイール、4…ハブ、5…リム、5A…開口部、7…フランジ、10…シャフト、12…アクスルケース、30…侵入防止部である侵入防止部材、40…侵入防止部、41…内側面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクスルケースと、
前記アクスルケース内から回転自在に突設されたシャフトと、
前記シャフトに取り付けられた車輪とを備えた作業車両であって、
前記アクスルケースの外周には、前記シャフトの径方向の外方側に向けて突出した鍔状の侵入防止部が周方向に沿って設けられ、
前記侵入防止部は、前記車輪を構成するホイールの内方側の開口部近傍に対応して位置している
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
前記ホイールは、前記シャフトに取り付けられるハブと、前記ハブの外周側に設けられた筒状のリムと、前記リムの軸方向の両端側に設けられたフランジとを備えて形成され、 前記侵入防止部は、前記リムの前記軸方向の内方端に対応した位置に設けられている
ことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の作業車両において、
前記侵入防止部は、先端に向かうに従って前記内方側に傾斜した内側面を有している
ことを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の作業車両において、
前記侵入防止部は、前記アクスルケースの外周面に一体に形成されている
ことを特徴とする作業車両。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の作業車両において、
前記侵入防止部は、環状とされた侵入防止部材として前記アクスルケースとは別体に設けられている
ことを特徴とする作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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