説明

作業車両

【課題】密閉性の高いキャビンを備えた作業車両を提供する。
【解決手段】運転席8を覆うキャビン12は、その隅部において機体5から支柱13,14が立設されている。この支柱13,14は、内部が中空状に形成されていると共に、機外に面した面には外側ケーブル孔13a,14aが、機内に面した面には内側ケーブル孔13b,14bが形成されている。機体の外側から内側へと配索されるケーブルCは、外側ケーブル孔13a,14a、中空部V、内側ケーブル孔13b,14bを通って配索されると共に、支柱13,14の中空部Vには、内側ケーブル孔13b,14b及び外側ケーブル孔13a,14aの少なくともいずれか一方を塞ぐようにシール部材40が挿入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタなどの作業車両に係り、詳しくは、そのキャビン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、大型のトラクタなどの作業車両では、作業者が着座する運転席はキャビンによって覆われていると共に、このキャビン内にはエアコンなどの空調設備が設けられて、作業者は天候に依らずに快適に作業を行うことができるようになっている。
【0003】
従来、このような運転席がキャビンに覆われたトラクタにおいて、例えば、ラジオアンテナなどのようなキャビン外に設けられた機器と、キャビン内とを配線コードなどのケーブルによって接続する際に、このケーブルが外部に露出しないように、上記キャビンの支柱を中空状に形成し、この中空状の支柱内を通してケーブルを配線することが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3333088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようにキャビンの支柱内を通してケーブルを配線すると、ケーブルの露出を最小限に抑えることが出来るが、ケーブルを通す孔を支柱に設ける必要がある。また、この支柱に設けられたケーブル用の孔は、通常、グロメットなどでシールされ、これらケーブル用の孔を介してキャビン内に塵などが侵入することを防止している。
【0006】
しかしながら、上記キャビン内は、エアコンが使用されると負圧になることがあり、グロメットなどで支柱に設けられたケーブル用の孔をシールしたとしても、外気とキャビン内との間の気圧差によって、依然として支柱の孔から塵などがキャビン内に侵入してしまうという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、中空状に設けられた支柱のケーブル孔を、支柱の外側からでなく、支柱の中空部に挿入されるシール部材によってシールすることによって、上記課題を解決した作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、左右の前後輪(2,3)に支持された機体(5)に設けられた運転席(8)と、該運転席(8)を覆うキャビン(12)と、を備えた作業車両(1)において、
前記キャビン(12)の隅部にて前記機体(5)から立設されると共に、中空状に形成された前記キャビン(12)の支柱(13,14)と、
前記支柱(13,14)の機外に面した面に形成された外側ケーブル孔(13a,14a)と、前記支柱(13,14)の機内に面した面に形成された内側ケーブル孔(13b,14b)と、を前記支柱(13,14)の中空部(V)を介して通り、前記キャビン(12)の内外を接続するケーブル(C)と、
前記支柱(13,14)の中空部(V)に挿入され、前記内側ケーブル孔(13b,14b)及び前記外側ケーブル孔(13a,14a)の少なくともいずれか一方を塞ぐシール部材(40)と、を備えた、
ことを特徴とする。
【0009】
なお、前記した括弧内の符号等は、図面を参照するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によると、キャビンの内外を接続するケーブルを、中空状のキャビンの支柱内を通して配線することにより、ケーブルを出来る限り露出させずに配線できる。また、このケーブルを中空部に通して配線するために支柱に設けられた、外側ケーブル孔及び内側ケーブル孔の少なくともどちらか一方を、上記支柱の中空部にシール部材を嵌挿してシールすることにより、キャビン内にケーブル孔を通って塵が入り込むことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るトラクタの側面図。
【図2】本発明の実施の形態に係るトラクタのキャビンフレームを示す斜視図。
【図3】本発明の実施の形態に係るトラクタのルーフを示す側面図。
【図4】本発明の実施の形態に係るトラクタのアウタールーフとインナールーフとの間の空間部を示す平面図。
【図5】本発明の実施の形態に係る前部支柱のケーブルの配索構造を示す模式図。
【図6】本発明の実施の形態に係るトラクタの支柱のケーブルの配索構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る作業車両としてのトラクタについて説明をする。図1に示すように、トラクタ1は、前後の走行輪2,3に支持された機体5を有しており、この機体5の後方には、3点リンク機構6を介して作業機7が取付けられている。
【0013】
上記機体5の前方には、ボンネット9に覆われたエンジンが搭載されており、エンジンの後方側には、作業者がトラクタを運転操作する運転操作部10が設けられている。この運転操作部10は、前輪2を操向するステアリングハンドル11、作業者が着座する運転席8などを備えていると共に、これらステアリングハンドル11、運転席8などがキャビン12によって覆われて構成されている。
【0014】
キャビン12は、図1及び図2に示すように、その隅部にて機体から立設した支柱13,14と、これら支柱間を接続する接続フレーム15と、から構成されたキャビンフレーム17を有していると共に、このキャビンフレーム17の前方に、フロントガラス、側方にサイドドア18、後方にリヤガラス、そして上方にルーフ19を取付けて、キャビン内を外部から隔離している。
【0015】
また、図3に示すように、上記ルーフは19、キャビン12の外側に位置するアウタールーフ20と、キャビン12の内側に位置するインナールーフ21と、から構成されており、これらインナールーフ21とアウタールーフ20とは、両者の間に、所定の隙間を存するように組み合わされている。
【0016】
更に、上述したインナールーフ21は、運転席8上方にあたる後方側がアウタールーフ20に向かって上記隙間を有した空間部Sに突出して形成されており、このインナールーフ21が上方に突出した分だけキャビン内の頭上高を高くしている。
【0017】
一方、図4に示すように、インナールーフ21の突出部の前方側の空間部Sには、キャビン内の空調を管理するエアコンディショナ装置(以下、エアコン装置)22や、ボックス状のオーディオ装置23が配設されている。このエアコン装置22は、上記アウタールーフ20とインナールーフ21との間の空気を吸入し、この吸入した空気を調節して運転操作部10へと送風することによって、キャビン内の空調を管理するように構成されており、空気を吸入するブロアファンモータ22aを前部右方に配設していると共に、キャビン12の中部左右側方にエアコン装置22の吹き出し口22bを設けている。
【0018】
ところで、ルーフ間の空間部Sに外気を供給する供給口がないと、空間部Sの空気はエアコン装置22によって吸入し続けられるだけになってしまうため、該空間部Sには、外気(機体外の空気)を供給する外気供給口25と、内気(キャビン内、特に作業者の操作空間内の空気)を供給する内気供給口26と、を有している。
【0019】
具体的には、上記外気供給口25は、空間S部の後部左側方に接続されたエアコンフィルタによって構成されており、このエアコンフィルタによって、塵などが除去されて上記空間部Sに外気が供給される。また、内気供給口26は、インナールーフの後部中央部に設けられており、キャビン内部と上記空間部Sを接続するように構成されている。
【0020】
従って、作業者によって、上記エアコン装置22が作動させられると、該エアコン装置22は、ルーフ間の空気を吸入し、空調済みの空気をキャビン内に吹き出し口から送風すると共に、このルーフ間の空間部Sには、エアコンフィルタ25及び内気供給口26から外気及び内気が供給される。なお、これらエアコンフィルタ25及び内気供給口26には、塵などがエアコン装置22に侵入しないようにフィルタが取付けられているため、エアコン装置22が吸入する空気の方が空間部Sに供給される空気よりも多く、ルーフ間の空間部Sは、エアコン装置22使用時には負圧になる。
【0021】
ついで、キャビン内外を接続するケーブルの配線構造について詳しく説明をする。図4に示すように、キャビン前部には、機体前部の前部支柱13,13間を接続する前部接続フレーム15aに機体前方を照らす複数の前部作業灯27が取付けられている。また、左右の前部支柱13には、方向指示器30、ラジオなどのアンテナ31などが設けられている。また、機体後方の後部支柱14,14には、機体5の後方側を照らす複数の後部作業灯32が設けられており、これら前後の作業灯27,32、アンテナ31、方向指示器30などのキャビン外部に設けられた機器は、ケーブルCによってキャビン内と接続されている。
【0022】
具体的には、図4乃至図6に示すように、前部支柱13及び後部支柱14は、平面視で略八の字状に形成された中空のパイプ材から構成されており、その上端部及び下端部がキャップ36によって蓋をされて閉塞されている。また、上記前部支柱13及び後部支柱14の機外に面した面には、外側ケーブル穴13a,14aが形成されていると共に、記前部支柱13及び後部支柱14の機内に面した面には、内側ケーブル孔13b,14bが形成されている。
【0023】
そして、上記ケーブルCの一部は、外側ケーブル穴13a,14aから支柱13,14の中空部Vへと入り、この中空部Vを介して内側ケーブル穴13b,14bからキャビン内の空間部Sへと抜けて、キャビン12の内外を接続している。
【0024】
即ち、前部支柱13を例にして説明をすると、図5及び図6に示すように、アンテナ線や、方向指示器のハーネスなどからなるケーブルCは、前部支柱13に形成された外側ケーブル穴13aから中空部Vに入って、この外側ケーブル穴13aの上方側に形成された内側ケーブル穴13bから抜ける。そして、前部接続フレーム15aに形成されたケーブル穴15aを通って、空間部Sへと入り、この空間部Sが形成されるキャビン12の天井内を通って配索される。
【0025】
なお、図3及び6に示すように、後部支柱14も同様に後部作業灯32のケーブルCが、その外側ケーブル穴13aから入り、中空部Vを通って、内側ケーブル穴13bからキャビン内へと抜けるようにして配索されている。
【0026】
ところで、上記空間部Sは、上記支柱13,14の内側ケーブル穴13b,14b、中空部V、外側ケーブル穴13a,14aを通ってキャビン12の外部と連通していると共に、上述したようにエアコン装置22を使用することによって、この空間部Sは負圧になる。
【0027】
そのため、正規の外気供給口25でない上記外側ケーブル穴13a,14a及び内側ケーブル穴13b,14bから外気と共に、塵などを取り込まないように、支柱13,14の中空部Vには、内側ケーブル孔13b,14bを塞ぐようにシール部材40が挿入されている。
【0028】
上記シール部材40は、支柱13,14と略同じ断面形状のEPDMゴムなどの発泡ゴムなどからなるシール部材によって構成されており、支柱13,14のキャップ36を取り外して、上端部の開口部から挿入されるようになっている。
【0029】
なお、通常、上記ケーブル穴は、ケーブルCが天井(空間部S)内を通って配索されるため、内側ケーブル穴13b,14bが支柱13,14の上方部に形成されるので、この内側ケーブル穴13b,14bを塞ぐように嵌挿されるが、内側ケーブル孔13b,14b及び前記外側ケーブル孔13a,14aの少なくともいずれか一方を塞げば良い。
【0030】
このように、中空部Vに嵌挿されるシール部材40によって、内側ケーブル孔13b,14b及び前記外側ケーブル孔13a,14aの少なくともいずれか一方を塞ぐことによって、これら内側ケーブル孔13b,14b及び前記外側ケーブル孔13a,14aからのキャビン内への塵の侵入を防止することができる。また、キャビン内の密閉性をより高めることができるため、防音効果をも有する。
【0031】
なお、本発明は、トラクタだけではなく、コンバイン、除雪作業機、建設機械などの他の作業車両に適用されても良い。また、より塵の侵入を防ぐために、外側ケーブル孔13a,14aにグロメットを設けたり、方向指示器30の取付部のカバーによって覆ったりしても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 作業車両(トラクタ)
2,3 前後輪
5 機体
8 運転席
12 キャビン
13,14 支柱
13a,14a 外側ケーブル孔
13b,14b 内側ケーブル孔
C ケーブル
V 中空部
40 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の前後輪に支持された機体に設けられた運転席と、該運転席を覆うキャビンと、を備えた作業車両において、
前記キャビンの隅部にて前記機体から立設されると共に、中空状に形成された前記キャビンの支柱と、
前記支柱の機外に面した面に形成された外側ケーブル孔と、前記支柱の機内に面した面に形成された内側ケーブル孔と、を前記支柱の中空部を介して通り、前記キャビンの内外を接続するケーブルと、
前記支柱の中空部に挿入され、前記内側ケーブル孔及び前記外側ケーブル孔の少なくともいずれか一方を塞ぐシール部材と、を備えた、
ことを特徴とする作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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