説明

作業車輌

【課題】コンパクトかつ効率の優れた轍均平手段を備えた作業車輌を提供する。
【解決手段】コンバイン20は、クローラ走行体11a,11bからなるクローラ走行装置10を備えると共に、クローラ走行体11a,11bが駆動することによって圃場面に生じる轍を均す轍均平手段1を有している。轍均平手段1は、圃場面と当接して轍を均す均平体2と、前処理部の昇降と連動して均平体2を上下させる連動機構4とかなり、均平体2はクローラ走行装置10の後方かつクローラ走行体11a,11b間において回動軸4dに取付けられている。回動軸4dには連動機構4のリンクアーム4bが取付けられており、リンクアーム4bが前処理部の昇降にあわせて遥動することによって、均平体2は下降位置と上昇位置に姿勢変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
クローラ走行装置を備えたコンバイン等の作業車輌に関し、詳しくはクローラ走行装置によって圃場面に生じた轍を均す作業車輌の轍均平手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右一対のクローラ走行体(走行体)からなるクローラ走行装置を備えたコンバインにおいて、該クローラ走行体の後方に轍を均す均平体(鎮圧ローラ)をそれぞれ設けたコンバインの轍均平手段が案出されている(特許文献1参照)。
【0003】
該コンバインの轍均平手段の均平体は円柱状のローラからなり、クローラ走行体の左右端縁部より適宜に突出するように設けられていると共に、該均平体を轍の縁部位置に当接させて、轍を泥土で埋めて均すように構成されている。また、轍均平手段には均平体を係止するフックが設けられており、該フックの係止位置により均平体を下降位置及び上昇位置に姿勢変更可能に設けられていた。
【0004】
【特許文献1】実開昭61−85581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の轍均平手段は、クローラ走行体の後方にそれぞれ均平体を配置する必要があると共に、該均平体をクローラ走行体の左右端縁部よりも突出させなければならないため、轍均平手段の構成が全体として大きくなってしまうと共に、部品点数及び製造コストの増大を招いていた。また、均平体はクローラ走行体の左右端縁部からの突出部分しか圃場面と当接しないため、効率よく轍を均すことができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、クローラ走行装置の後方かつ、一対のクローラ走行体間に均平体を設けることによって、上記課題を解決した轍均平手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、機体(25)下方の左右にそれぞれ設けられた一対のクローラ走行体(11a,11b)からなるクローラ走行装置(10)と、これらクローラが駆動することによって生じる轍を、圃場面に当接することにより均す均平体(2,3)を有する轍均平手段(1)と、を備えた作業車輌(20)において、前記均平体(2,3)を、前記クローラ走行装置(10)の機体後方で、かつ前記一対のクローラ走行体(11a,11b)間に配置した、ことを特徴とした作業車輌にある。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記作業車輌は、前記機体(25)の前方に前処理部(21)を昇降自在に支持したコンバイン(20)であり、前記轍均平手段(1)は、前記均平体(2,3)と、該前処理部(21)の昇降に連動して該均平体(2,3)を上下させる連動機構(4)とからなる、請求項1記載の作業車輌にある。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記均平体(2,3)は、円柱状のローラ(3a)からなり、該円柱状のローラ(3a)は、その径が中央部において最も大きく構成されると共に、該中央部から左右両端部に向うに従って小径となる(x>y)、請求項1又は2記載の作業車輌にある。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記均平体(2,3)は、取付け部(2c)から機体(25)後方に向うに従い幅広に拡がると共に(s<t)、その左右側及び後方に向って上方に反り上がり、圃場との当接面を形成した板状部材(2)であり、かつその中心部(2a)を下方に向って膨出させてなる、請求項1又は2記載の作業車輌にある。
【0011】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によると、轍均平手段の均平体をクローラ走行装置の機体後方かつ一対のクローラ走行体間に配置したことによって、コンパクトな構成で轍均平手段を構成することができると共に、クローラ走行装置が駆動すると同時に圃場面に生じた轍を効率良く均すことができ、収穫作業後の圃場の整地を楽にすることができる。また、部品点数及び製造コストの削減も図ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によると、前処理部の昇降と連動して均平体を上下させる連動機構を轍均平手段に設けたことによって、非作業状態においては、前処理部の上昇と連動して均平体が上昇位置となり円滑に走行可能であると共に、後進時に該均平体が圃場面に引っかかるようなこともない。更に作業時には前処理部の下降と連動して均平体が下降位置となり、クローラ走行装置が駆動すると同時に圃場面に生じた轍を均すこともできる。
【0014】
請求項3に係る発明によると、均平体を円柱状のローラとし、該円柱状のローラの径を中央部において最も大きくすると共に、該中央部から左右両端部に向うに従って小径となるようにしたことによって、効率よくクローラ走行体間の泥土によって轍を埋めて均すことができる。
【0015】
請求項4に係る発明によると、均平体を取付け部から機体後方に向うに従い幅広に拡がる板状部材とし、その左右側及び後方に向って上方に反り上がり、圃場との当接面を形成すると共に、該板状部材の中心部を下方に向って膨出させたことによって、効率よくクローラ走行体間の泥土によって轍を埋めて均すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明に係る実施の形態について説明する。図1乃至3に示すように本発明の作業車輌としてのコンバイン20は、機体左右にそれぞれ設けられたクローラ走行体11a,11bからなるクローラ走行装置10に支持された機体フレーム(機体)25を有すると共に、その前部には穀稈の刈取り及び搬送を行う前処理部21が設けられている。また、該前処理部21の後方には刈取られた穀稈を脱穀しかつ脱穀した穀粒を選別する脱穀部24、脱穀済みの排稈を排出処理する後処理部26が配設されていると共に、該脱穀部24の側方かつ運転部23の後方には収穫された穀粒を一時的に保管するホッパ28が設けられている。
【0017】
上記前処理部21は、穀稈を刈取る刈取部21b、該刈取部21bによって刈取られた穀稈をその端部において脱穀部24のフィードチェン24aへと送り込む搬送部21a等からなると共に、前処理昇降部22によって作業時には下降して作業位置となり、非作業時には上昇して非作業位置となるように昇降自在に設けられている。
【0018】
該前処理昇降部22は、連結ピン22fを介してヘッド側が機体フレーム25に取付けられた油圧シリンダ22aと、該油圧シリンダ22aのピストンロッド22bとからなり、前処理部21のフレームを構成すると共に後方に延出して機体フレーム25に回動自在に軸支される支持フレーム22cから延設されるブラケット22dに上記ピストンロッド22bの先端を取付け、該油圧シリンダ22aを伸縮作動させることによって、前処理部21を昇降させている。
【0019】
一方、クローラ走行装置10は、機体の左右にそれぞれ配置された一対のクローラ走行体11a,11bからなり、該クローラ走行体11a,11bは、走行フレーム16に取付けられた駆動輪12、転動輪13、アイドラ14にクローラ15を捲着することにより構成されている。該クローラ走行体11a,11bが駆動すると、圃場面(特に湿田圃場等の軟弱圃場)に轍を形成すると共に、その轍の間(クローラ走行体11a,11b間)の圃場面には、泥土が盛り上がる。
【0020】
以下、本発明の要部である轍均平手段1について説明をする。
【0021】
轍均平手段1は、直接圃場面と接触して轍を均す橇状の均平体2と、前処理部21の昇降と連動して均平体2を上下させる連動機構4とからなり、該橇状の均平体2がクローラ走行装置10の後方かつクローラ走行体11a,11b間に配置されている。橇状の均平体2はクローラ走行体11a,11b間の轍が形成されたことによって泥土が盛り上がった圃場面と当接し、轍を泥土によって埋めて均している。
【0022】
該橇状の均平体2には円筒状の取付け部2cが形成されており、該取付け部2cは回動軸4dに嵌挿されている。該回動軸4dは、コンバイン20の機体フレーム25から延設された支持プレート4c,4cに軸支されていると共に、その機体背面視左側端には、連動機構4のリンクアーム4bが取付けられており、橇状の均平体2は該リンクアーム4bが遥動して回動軸4dが回動することにより、下降位置イ及び上昇位置ロに姿勢変化する。
【0023】
図1乃至4に示すように上記連動機構4は、伝動ロッド4a、伸縮機構A、リンクアーム4b及び回動軸4dから構成されている。伝動ロッド4aは機体前方側の端部において、前処理部21の支持フレーム22cに設けられたブラケット22eに取付けられていると共に、他端において伸縮機構Aが構成されており、伸縮機構Aのホルダ4fとリンクアーム4bとが回動ピン4eによって連結している。該リンクアーム4bは他端において上述したように回動軸4dに取付けられていると共に、橇状の均平体2は前処理部21の昇降と連動して上下に姿勢変化する。
【0024】
上記伸縮機構Aは伝動ロッド4a、ホルダ4f、係止板4j及びリターンスプリング4hとからなり、小径に構成される伝動ロッド4aの機体後方側端部がホルダ4fに設けられた貫通孔に挿通されると共に、該伝動ロッド4aの大径部に設けられた係止板4jとホルダ4fとの間にリターンスプリング4hが配設されている。伝動ロッド4aはその先端においてボルト4gによって抜止めされていると共に大径部と小径部との間の段差部4iによってストローク量の規制をしており、該ボルト4gと段差部4i間の範囲において伸縮自在に構成されている。
【0025】
一方、橇状の均平体2は、上述した円筒形の取付け部2cからその左右側及び後方に向って反り上がった板状部材であり、その側方には側面2d,2dが形成されていると共に、機体後方側において上方に反り上がった当接面2bが形成されている。
【0026】
また、橇状の均平体2は、その幅が取付け部2cから機体後方に向うに従って末広がり状に広くなっており、取付け部2cにおける幅sが最も狭く、機体後方側端における幅tが最も広くなっている(s<t)。なお、図6に示すように、橇状の均平体2はその中心部2aを下方に向って膨出させることによって、より効率良く泥土を轍に押し出す形状とすることもできる。
【0027】
次にコンバインの作用について説明をする。
【0028】
作業者は、収穫に際して前処理部21を下降させて作業位置にすると共にクローラ走行装置10を駆動させて作業を開始する。このとき圃場、特に湿田圃場のような軟弱圃場においてはクローラ走行体11a,11bが圃場面を押圧することによって轍が形成される。
【0029】
前処理部21は、油圧シリンダ22aのピストンロッド22bが縮むことによって支持フレーム22cが下方に向って回動し、下降する。該支持フレーム22cが下方に向って回動すると、連動機構4の伝動ロッド4aを介してリンクアーム4bが旋回すると共に回動軸4dを回動させ、橇状の均平体2が下降位置イとなって圃場面と当接する。
【0030】
橇状の均平体2の当接面2bがクローラ走行体11a,11b間の圃場面と当接すると、該橇状の均平体2はその左右及び後方側が上方に向って反り返っていると共にその中心部が膨出しているため、クローラ走行体11a,11b間の泥土を該橇状の均平体2の中心部から左右端に向って押し出し、効率よく轍を埋める。
【0031】
上記のようにコンバイン20を構成したことにより、コンパクトな構成でクローラ走行装置10の駆動と同時に効率よく轍の均平が可能となり、収穫作業後の圃場の整地が楽になると共に、部品点数及び製造コストの削減が可能となった。また、橇状の均平体2は連動機構4によって前処理部21の昇降と連動して上下するため、該橇状の均平体2は走行を阻害することがなく、後進時に圃場に引っかかるようなこともない。
【0032】
更に、連動機構4の伝動ロッド4aには伸縮機構Aが設けられているため、橇状の均平体2もしくは前処理部21に過負荷がかかるようなことがあっても伝動ロッド4aが伸縮して連動機構4が破損することを防止することができる。
【0033】
また、橇状の均平体2の形状を、取付け部2cにおける幅sを最も狭く、機体後方側に向うに従って幅広に設け(s<t)、その左右側及び後方を上方に向って反り上がらせると共に、その中心部2aを下方に向って膨出させた形状にすることによって、効率よくクローラ走行体11a,11b間に盛り上がった泥土によって轍を埋めて均すことができる。
【0034】
一方、轍均平手段1の均平体2,3は必ずしも上記橇状の均平体2でなくても良く、円柱状のローラ3a等によって構成してもよい。以下に、均平体2,3を円柱状のローラ3aによって構成した第2の実施の形態について、第1の実施の形態と相違する部分を説明する。
【0035】
図7及び8に示すように、轍均平手段1の均平体3は、取付け具3b、連結シャフト3c、円柱状のローラ3aからなり、取付け具3bは回動軸4dに嵌挿されていると共にその他端において連結シャフト3cを軸支している。該連結シャフト3cには左右から一対の円錐状のローラ3a’,3a’が取付けられており、該一対の円錐状のローラ3a’,3a’が一体となって円柱状のローラ3aを構成している。該円柱状のローラ3aは、中心部の径xが最も大きく、左右両端部に向うに従って小径となり、中心部の径xが最大で、左右端部の径yが最小となるように構成されている(x>y)。なお、円柱状のローラ3aは円錐状のローラ3a’,3a’に分割せずに一体形成としても良い。
【0036】
上記のように轍均平手段1の均平体3を中心部の径xが最も大きく、左右両端部に向うに従って小径となる円柱状のローラ3aとしたことにより、円柱状のローラ3aの形状に沿って、その中心部から左右端部に向って効率よくクローラ走行体11a,11b間に盛り上がった泥土を移動させて轍を均すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態のコンバインの背面図。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態のコンバインの作業時における側面図。
【図3】本発明に係る第1の実施の形態のコンバインの非作業時における側面図。
【図4】(a)本発明に係る第1の実施の形態の作業時における要部作動図、(b)本発明に係る第1の実施の形態の非作業時における要部作動図。
【図5】本発明に係る第1の実施の形態の均平体の斜視図。
【図6】本発明に係る第1の実施の形態の均平体の断面図。
【図7】本発明に係る第2の実施の形態のコンバインの背面図。
【図8】本発明に係る第2の実施の形態のコンバインの作業時における側面図。
【符号の説明】
【0038】
1 轍均平手段
2 均平体(板状部材)
2a 中心部
2c 取付け部
3 均平体
3a 円柱状のローラ
4 連動機構
10 クローラ走行装置
11a,11b クローラ走行体
20 作業車輌(コンバイン)
21 前処理部
25 機体(機体フレーム)
x 円柱状ローラの中心部の径
y 円柱状ローラの左右端部の径
s 橇状の均平体の取付け部側の幅
t 橇状の均平体の機体後方側の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体下方の左右にそれぞれ設けられた一対のクローラ走行体からなるクローラ走行装置と、これらクローラが駆動することによって生じる轍を、圃場面に当接することにより均す均平体を有する轍均平手段と、を備えた作業車輌において、
前記均平体を、前記クローラ走行装置の機体後方で、かつ前記一対のクローラ走行体間に配置した、
ことを特徴とした作業車輌。
【請求項2】
前記作業車輌は、前記機体の前方に前処理部を昇降自在に支持したコンバインであり、
前記轍均平手段は、前記均平体と、該前処理部の昇降に連動して該均平体を上下させる連動機構とからなる、
請求項1記載の作業車輌。
【請求項3】
前記均平体は、円柱状のローラからなり、
該円柱状のローラは、その径が中央部において最も大きく構成されると共に、該中央部から左右両端部に向うに従って小径となる、
請求項1又は2記載の作業車輌。
【請求項4】
前記均平体は、取付け部から機体後方に向うに従い幅広に拡がると共に、その左右側及び後方に向って上方に反り上がり、圃場との当接面を形成した板状部材であり、
かつその中心部を下方に向って膨出させてなる、
請求項1又は2記載の作業車輌。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−22250(P2009−22250A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191271(P2007−191271)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】