作業車
【課題】 油圧式無段変速装置のトルクを急激には解放しない構成を採用して、ギヤ式副変速装置の切換操作を円滑に行えるものでありながら、作業車の不測の移動を抑制できる作業車を提供する。
【解決手段】 静油圧式無段変速装置12からの出力を受けて複数段に変速するギヤ式副変速装置を設ける。静油圧式無段変速装置12の高圧側回路aに油圧タンクTに繋がる戻り油路63を連結する。戻り油路63にアンロード弁64と絞り弁65とを介装する。ブレーキペダルへの制動側への操作に基づいてアンロード弁64をアンロード状態に切り換える機械的連係機構を、アンロード弁64とブレーキ操作具42とに亘って設けてある。
【解決手段】 静油圧式無段変速装置12からの出力を受けて複数段に変速するギヤ式副変速装置を設ける。静油圧式無段変速装置12の高圧側回路aに油圧タンクTに繋がる戻り油路63を連結する。戻り油路63にアンロード弁64と絞り弁65とを介装する。ブレーキペダルへの制動側への操作に基づいてアンロード弁64をアンロード状態に切り換える機械的連係機構を、アンロード弁64とブレーキ操作具42とに亘って設けてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主変速装置としての油圧無段変速装置とギャ式副変速装置を備えている作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の作業車の一例である多目的作業車として、例えば、エンジン動力を主変速装置に入力して無段変速し、その一定回転方向の変速動力を、前後進の切換えと前進速度の複数段の変速を行うギヤ式副変速装置に伝達するように構成したものが知られている(特許文献1)。
ただし、上記構成では、副変速装置を切換え操作する場合には走行ブレーキを制動操作して変速操作を行うのであるが、例えば、登坂走行中に副変速操作を行う場合に、主変速装置における高圧側油路と低圧側油路の圧力差が大きい状態では、主変速装置からのトルクが副変速装置に作用した状態のままでギヤ変速操作を余儀なくされることとなって、円滑にシフト操作を行うことができないことがある。
【0003】
そこで、本願出願人らによって、つぎのような技術が提案された。つまり、主変速装置としての静油圧式無段変速装置の高圧側回路と低圧側回路とに亘ってバイパス路を形成し、そのバイパス路に開閉弁を設け、開閉弁を切換操作する手動操作具を設けるものがあった(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−257447号公報
【特許文献2】特開2007−239978号公報(段落〔0032〕から〔0036〕,図8から図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2で示された従来構造では、ブレーキペダルを制動側に踏み込むと同時に操作レバーを操作して、静油圧式無段変速装置の高圧側回路と低圧側回路とに亘ってバイパスさせた場合には、静油圧式無段変速装置のトルクが一気に解放されてしまう。そうすると、作業車に対して維持していた静油圧式無段変速装置の制動作用が急激に解放されるところから、例えば、坂道等においてブレーキ制動が完全に掛かる前に不測に作業車が移動する虞があった。
【0005】
本発明の目的は、油圧式無段変速装置のトルクを急激には解放しない構成を採用して、ギヤ式副変速装置の切換操作を円滑に行えるものでありながら、作業車の不測の移動を抑制できる作業車を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、油圧式無段変速装置からの出力を受けて複数段に変速するギヤ式副変速装置を設け、前記油圧式無段変速装置の高圧側回路に油圧タンクに繋がる戻り油路を連結し、前記戻り油路にアンロード弁と絞り弁とを介装し、ブレーキ操作具への制動側への操作に基づいて前記アンロード弁をアンロード状態に切り換える連係機構を、前記アンロード弁と前記ブレーキ操作具とに亘って設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
ブレーキ操作具を制動側へ操作すると、ブレーキが制動状態になるとともに、アンロード弁が解放されて、高圧側回路から戻り油路を介して油圧タンクに高圧作動油が誘導されて、高圧状態が解除される。
これによって、ギヤ式副変速装置に作用している駆動トルクが解放されるので、変速操作を円滑に行うことができる。
しかも、高圧側回路から油圧タンクに誘導される高圧作動油は絞り弁によって一気に油圧タンクに移動することはなく、徐々に誘導されるので、無段油圧変速装置でのトルクが急激には解放されることはない。
これによって、無段油圧変速装置でのトルクが一時的にも維持されているので、作業車の移動に対する抵抗を保持することができ、作業車が不測に移動することを抑制できる。
副変速装置をシフト操作する際に必然的に必要となる、ブレーキ制動操作を行うだけで、油圧式無段変速装置のトルク解放を徐々に行うことができ、ブレーキ制動操作とバイパス開放操作とを行わなければならない従来構成のものに比べて、操作が容易である。
【0008】
〔効果〕
油圧式無段変速装置のトルクを急激には解放しない構成として、絞り弁を設けるだけの簡単な改造を施すだけで、ギヤ式副変速装置の切換操作を円滑かつ容易に行えるものでありながら、作業車の不測の移動を抑制できる作業車を提供することができた。
【0009】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、油圧式無段変速装置からの出力を受けて複数段に変速するギヤ式副変速装置を設け、前記油圧式無段変速装置の高圧側回路に油圧タンクに繋がる戻り油路を連結し、前記戻り油路にアンロード弁と絞り弁とを介装し、ブレーキ操作具とは別個に人為的操作具を設け、前記人為的操作具への操作に基づいて前記アンロード弁をアンロード状態に切り換える連係機構を、前記アンロード弁と前記人為的操作具とに亘って設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
ブレーキ操作具を制動側へ操作すると、ブレーキが制動状態になる。そして、人為的操作具を操作すると、アンロード弁が解放されて、高圧側回路から戻り油路を介して油圧タンクに高圧作動油が誘導されて、高圧状態が解除される。
これによって、ギヤ式副変速装置に作用している駆動トルクが解放されるので、変速操作を円滑に行うことができる。
しかも、高圧側回路から油圧タンクに誘導される高圧作動油は絞り弁によって一気に油圧タンクに移動することはなく、徐々に誘導されるので、無段油圧変速装置でのトルクが急激には解放されることはない。
これによって、無段油圧変速装置でのトルクが一時的にも維持されているので、作業車の移動に対する抵抗を保持することができ、作業車が不測に移動することを抑制できる。
ブレーキ操作とともに操作される人為的操作具への操作に基づいて無段油圧変速装置でのトルク解放を行うことができ、アンロード弁を切り換える操作系の多様化がはかれ、アンロード弁と連係する構造の簡素化を図るのが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
作業車の一例である多目的車両について説明する。図1に示すように、作業車は、左右一対の操向自在な前輪1、左右一対の後輪2を備え、前後輪間にエンジン3、車体フレーム4の前部に座席5、日除けフレーム6を備えて運転部7を設け、車体フレーム4の後部に、油圧シリンダ8によって上下に揺動されるダンプ荷台9を設けて構成してある。
【0012】
図1及び図2に示すように、前後車輪1,2の間には、ミッションケース11が配置されており、ミッションケース11の前端部側面にエンジン3が装着されている。ミッションケース11におけるエンジン3の装着面とは反対側には、主変速装置としての静油圧式無段変速装置12が装着されており、エンジン出力を受けて無段に変速し、変速出力を副変速装置13に出力するように構成してある。副変速装置13は、正転方向に2段、逆転方向に1段変速可能である。
副変速装置13からの出力は、後輪デフ機構14を介して左右の車軸15に伝達されて、後輪駆動に用いられる。
【0013】
前輪1への伝動系、および、後輪2への伝動系にはそれぞれ多板式のブレーキ45,46が装備されている。図8に示すように、前輪用のブレーキ45は、内装されたピストン(図示せず)を油圧操作で変位させることで摩擦板群の圧接操作を行うよう構成されている。後輪用のブレーキ46はブレーキ操作レバー40を操作シリンダ41によって揺動操作して、内装されたカム(図示せず)を回動することで摩擦板群の圧接操作を行うよう構成されている。前輪用のブレーキ45および操作シリンダ41は、運転部7の足元に配備されたブレーキペダル42によって操作されるマスターシリンダ43に配管接続されており、ブレーキペダル42を踏み込んでマスターシリンダ43から圧油を送出することで、前輪用のブレーキ45が操作油圧に応じて制動作動するとともに、操作シリンダ41が退入作動して後輪用のブレーキ46が操作油圧に応じて制動作動し、ブレーキペダル42の踏み込みを解除することで操作油圧が消滅して各ブレーキ45,46が制動解除状態に復帰するよう構成されている。
【0014】
なお、前記ブレーキ操作レバー40は運転部7に備えられた駐車レバー44にワイヤ連係されており、駐車レバー44を「駐車」位置に操作保持することで、左右の後輪2のブレーキ39のみを制動しての駐車が行われるようになっている。
【0015】
エンジン3から静油圧式無段変速装置12への伝動構造について説明する。図2及び図3に示すように、エンジン3の第1出力軸3Aにフライホイール3Bを取付け、フライホイール3Bから第2出力軸3Cを延出し、この第2出力軸3Cと静油圧式無段変速装置12の入力軸12Aとの間に第1ギヤ伝動機構17を設けてある。フライホイール3B、第1、第2出力軸3A、3Cはエンジン3を連結する出力ケース11A内に位置しており、出力ケース11Aの静油圧式無段変速装置12に向けて突出させた突出部11aに第1ギヤ伝動機構17の出力ギヤ17Aを配置してある。
【0016】
つまり、図2に示すように、出力ギヤ17Aを第2出力軸3Cに取り付けた状態で、ベアリングを介して回転自在に突出部11a内に支持してある。出力ケース11Aの前記突出部11aに隣接して、外向きボス部11bを形成してあり、この外向きボス部11bに第1ギヤ伝動機構17の入力ギヤ17Bをベアリング支持してある。この入力ギヤ17Bは、静油圧式無段変速装置12から延出された入力軸12Aに外嵌装着してあり、エンジン動力を静油圧式無段変速装置12に伝動すべく構成してある。
【0017】
静油圧式無段変速装置12の構成について説明する。図2に示すように、静油圧式無段変速装置12は、主油圧モータM、及び、副油圧モータSM、それらに圧油を供給する油圧ポンプPとを備えている。主油圧モータMは、ミッションケース11の一側面から外向きに突出形成されたボス部11B内に収納されている。副油圧モータSMは、主油圧モータMを収納したボス部11Bの開口端を塞ぐ状態に取付られた油圧ポートブロック18を介して取付固定されているモータケース19に収納される。油圧ポンプPは、モータケース19とともに油圧ポートブロック18に取付固定されたポンプケース20に取付固定される。
【0018】
油圧ポンプPは、アキシャルプランジャ式の可変容量型ポンプであり、主油圧モータMは、アキシャルプランジャ式の固定型モータであり、副油圧モータSMは、アキシャルプランジャ式の可変容量型モータである。油圧ポンプPは、前記した油圧ポートブロック18を貫通して出力ケース11Aに達する入力軸12Aに取付けてあり、主副油圧モータM、SMは、副変速装置13への共通出力軸16に取り付けてある。
【0019】
副変速装置13について説明する。図2及び図3に示すように、副変速装置13の入力軸31をミッションケース11内に架設するとともに、入力軸31を共通出力軸16と同芯位置に配置して、共通出力軸16の軸端を入力軸31の軸端内に嵌入させてスプライン係合し、入力軸31へ静油圧式無段変速装置12から動力供給すべく構成する。
入力軸31には、高速用の大径ギヤ部31A、低速用の小径ギヤ部31B、後進用ギヤ部31Cとを一体形成してある。
【0020】
入力軸31と平行に第1伝動軸32が架設してある。第1伝動軸32には、入力軸31に形成した大径ギヤ部31Aと常咬する小径入力ギヤ32Aと入力軸31に形成した小径ギヤ部31Bと常咬する大径入力ギヤ32Bと後進用入力ギヤ32Cとを遊転状態で取り付けてある。小径入力ギヤ32Aと大径入力ギヤ32B、大径入力ギヤ32Bと後進用入力ギヤ32Cとの間には、シンクロメッシュ形式で切り換え操作する第1、第2クラッチスリーブ32D、32Eが設けてあり、小径入力ギヤ32Aに第1クラッチスリーブ32Dを咬合させることによって、前進2速用の大径ギヤ部31Aから前進2速動力を導入することができる。大径入力ギヤ部32Aに第1クラッチスリーブ32Dを咬合させることによって、前進1速用の小径ギヤ部32Aから前進1速動力を導入することができる。後進用入力ギヤ32Cに第2クラッチスリーブ32Eを咬合させることによって、後進動力を取り出すことができる。
【0021】
図2、図3、及び、図5に示すように、第1伝動軸32と平行に後進軸33をミッションケース11内に架設し、この後進軸33に反転用ギヤ33Aをベアリング支承して、この反転用ギヤ33Aを前記した後進用入力ギヤ32Cと入力軸31の後進用ギヤ部31Cとに咬合させて、後進出力を伝達すべく構成してある。
【0022】
第1伝動軸32と車軸15との間に平行に第2伝動軸34を架設するとともに、第2伝動軸34に大径の伝動ギヤ34Aを遊嵌支承し、伝動ギヤ34Aに隣接して、小径出力ギヤ部34Bが一定形成してある。第1伝動軸32に出力ギヤ32Fがスプライン外嵌してあり、この出力ギヤ32Fと第2伝動軸34の伝動ギヤ34Aとを常咬状態に咬合させることによって、第1伝動軸32から第2伝動軸34に動力伝達可能に構成してある。
【0023】
左右車軸15、15との突合せ位置には、後輪デフ機構14が設けてあり、後輪デフ機構14のデフケース14Aに一体的に取り付けた入力ギヤ14Bを、第2伝動軸34の小径出力ギヤ部34Bに常咬式に係合させて、第2伝動軸34から車軸15に動力伝達するように構成してある。図2における、51は、デフロック操作具である。
【0024】
次に、副変速装置13の変速操作構造について説明する。図3及び図5に示すように、第1伝動軸32と平行に回転操作軸35を架設するとともに、回転操作軸35に平行にドラム操作軸36を架設し、このドラム操作軸36を操作する連動操作軸37を設けてある。回転操作軸35には、第1クラッチスリーブ32D、第2クラッチスリーブ32Eに係合する第1シフタ35Aと第2シフタ35Bとが取り付けてある。
【0025】
ドラム操作軸36には、外周面における軸線方向の二箇所に螺旋溝36aが刻設してあり、二つの螺旋溝36aが夫々第1シフタ35Aと第2シフタ35Bとに係合している。一方、第1シフタ35Aと第2シフタ35Bとは、ドラム操作軸36の軸線方向にスライド自在で回転不能に取り付けてある。
【0026】
連動操作軸37は副変速操作具10に連係してあり、図4及び図5に示すように、連動操作軸37には、扇形駆動ギヤ37Aが取付固定してある。一方、ドラム操作軸36には、扇形駆動ギヤ37Aに咬合する受動ギヤ36Aが一体回転可能に取り付けてあり、連動操作軸37が自身の軸芯周りで駆動回転されると、扇形駆動ギヤ37Aが回転し、受動ギヤ36Aが回転してドラム操作軸36が回転する。ドラム操作軸36が回転すると、螺旋溝36aに係合している第1シフタ35Aと第2シフタ35Bとが回転操作軸35の軸線方向に沿って駆動移動される。
【0027】
第1シフタ35Aと第2シフタ35Bとが駆動移動されると、各シフタ35A、35Bに係合したクラッチスリーブ32D、32Eが大径入力ギヤ32A、小径入力ギヤ32B、後進入力ギヤ32Cに咬合する状態を作り出し、副変速装置13の変速操作が可能になる。
具体的には、次のようになる。図4及び図5に示すように、連動操作軸37に取付固定された出力アーム37Bをエンジン3に近づく後進(r)用の操作位置に設定すると、第2シフタ35Bがスライド移動して第2クラッチスリーブ32Eを後進用入力ギヤ32Cに係合させて、後進状態を現出する。
出力アーム37Bをエンジン3から遠ざかる方向に操作する毎に、中立(n)、高速(h)、低速(L)に切り換えることができる。
【0028】
副変速装置13の変速操作位置を位置決めする機構について説明する。図4及び図5に示すように、ドラム操作軸36には、星形をした位置決めギヤ38を一体回転可能に取付固定するとともに、回転操作軸35に揺動アーム39を取付け、揺動アーム39の先端にカムフォロア39aが取り付けてあり、位置決めギヤ38に外周面に形成した凹部38aにカムフォロア39aが係合することによって、変速操作位置を位置決めするように構成してある。揺動アーム39は、トーションバネ39bによって係合方向に付勢されている。
【0029】
前輪1への伝動系について説明する。図2及び図6に示すように、ミッションケース11におけるエンジン連結部位とは反対側において前部ケース11C内に前輪用伝動軸21を横架するとともに、前輪用伝動軸21を第2伝動軸34に平行に配置してある。第2伝動軸34の一端に伝動ギヤ34Aを一体回転可能に取付固定するとともに、前輪用伝動軸21に入力ギヤ部21Aを一体形成し、伝動ギヤ34Aと入力ギヤ部21Aとを常咬式に咬合させることによって、第1伝動軸34より前輪用伝動軸21に動力伝達可能に構成してある。
【0030】
前部ケース11C内に前後向き姿勢の前輪用出力軸22を突設させ、前輪用出力軸22の軸線と前輪用伝動軸21の軸線との交差する部位にベベルギヤ伝動機構23が設けてあり、このベベルギヤ伝動機構23を介して、前輪用出力軸22に動力伝達されている。前輪用出力軸22に伝達された動力は、図示しないプロペラシャフトを介して前輪1に伝達される。
【0031】
図2及び図6に示すように、ベベルギヤ伝動機構23のうちの前輪用伝動軸21の端部に設けられる出力ベベルギヤ23Aは、その前輪用伝動軸21に遊転状態で装着されている。出力ベベルギヤ23Aより前輪用伝動軸21の端部には、クラッチスリーブ24がスプライン外嵌されており、そのクラッチスリーブ24と出力ベベルギヤ23Aとの相対向する面に、爪係合式のドグクラッチPが設けてある。
このドグクラッチPの爪を係合させると前輪1へ動力伝達が行え、前後輪1、2の4輪で走行可能になる。一方、爪を離間させると、前輪1への動力伝達が断たれ、後輪2だけの2輪走行となる。
【0032】
クラッチスリーブ24をクラッチ入り状態とクラッチ切り状態とに切り換える操作アーム25が前部ケース11Cに揺動自在に取り付けてあり、この操作アーム25を図示しない4wd・2wd切換操作具に連係して、手元操作可能に構成する。
【0033】
静油圧式無段変速装置12の油圧回路について説明する。図7に示すように、油圧ポンプPの斜板52は、加速操作具53に油圧サーボ機構54を介して連係されている。加速操作具53への操作が解除されると、斜板52は中立(斜板角度0°)に復帰維持されて圧油の供給が停止されて走行停止状態がもたらされる。反対に加速操作具53を大きく操作するにつれて斜板52の傾斜角度が大きくなって供給量が多くなり、主油圧モータMの共通出力軸16が高速回転状態となる。
【0034】
油圧ポンプPと主副油圧モータM、SMは油圧ポートブロック18の内部に形成された閉回路a、bで連通接続されている。閉回路の一部aは油圧ポンプPからの圧油が主副油圧モータM、SMに供給される高圧側回路であり、閉回路の他部bは戻り油となるので、低圧側回路となっている。この閉回路a、bには、漏洩分を補給するためのチャージ油路cが接続されて、エンジン3動力によって駆動されるチャージポンプCPからの圧油が供給油路eを介してチャージ油路cに供給されるようになっている。チャージ油路cに補充される油圧はリリーフ弁55によって設定値に維持されている。
【0035】
油圧サーボ機構54について説明する。図7に示すように、加速操作具53がサーボバルブ56に機械的に連動連結されるとともに、サーボバルブ56がサーボシリンダ57に連通接続されている。サーボシリンダ57が油圧ポンプPの斜板操作部に連動連結されるとともに、サーボシリンダ57の変位がフィードバック機構58によってサーボバルブ56にフィードバックされるように構成されており、加速操作具53への操作位置に対応して油圧ポンプPの斜板52が操作されるようになっている。油圧サーボ機構54の一次側油路fはチャージ油路cに接続されており、油圧サーボ機構54のシステム圧がチャージ圧と同一となっている。
【0036】
副油圧モータSMの斜板62は、制御ピストン59の先端と、復帰バネ60によって前方に付勢された復帰ピストン61とで前後から挾持されており、図に示すように、制御ピストン59が前方移動限界まで後退している時、副油圧モータSMにおける斜板62の角度が中立(斜板角度0°)となり、制御ピストン59が復帰バネ60に抗して後方に進出するに連れて斜板58の角度が大きくなって、副油圧モータSMの容量が増大するよう構成されている。復帰バネ60は初期圧縮をかけて組み込んであり、斜板62が予め設定されたバネ荷重で中立側に付勢されている。
【0037】
制御ピストン59は、油圧ポンプPからの圧油を主副油圧モータM、SMに供給する高圧側の高圧側回路aに制御用油路hを介して接続されており、高圧側回路aの圧力と復帰バネ60のバネ力とが均衡したところで斜板62の角度が安定するようになっている。
【0038】
以下に制御ピストン59を利用しての自動変速制御作動について説明する。
加速操作具53を操作すると、油圧ポンプPにおける斜板52の角度が大きくなり、斜板角度に応じた量の圧油が主油圧モータM及び副油圧モータSMに供給される。この場合、走行負荷が設定以下の範囲にあって高圧側回路a及び制御用油路hの圧が設定以下であると、制御用油路hの圧を受ける制御ピストン59の進出力よりも復帰バネ60の初期バネ力の方が大きいものとなり、副油圧モータSMの斜板62は中立(斜板角度0°)に維持され、油圧ポンプPからの圧油の全量が主油圧モータMに供給され、共通出力軸16は主油圧モータMのみによって駆動されることとなる。
【0039】
走行負荷が設定範囲を越えて、高圧側回路a及び制御用油路hの圧が設定値を上回ると、制御用油路hの圧を受ける制御ピストン59の進出力が復帰バネ60の初期バネ力より大きくなって、副油圧モータSMの斜板62の角度が大きくなって副油圧モータSMにモータ容量が発生し、油圧ポンプPからの圧油が主油圧モータMと副油圧モータSMとに供給される。つまり、走行負荷が設定範囲を越えて大きくなると、自動的にモータ側の全容量が大きくなって出力軸32が減速駆動され、出力トルクが増大される。
【0040】
走行負荷の増大に伴って副油圧モータSMの斜板角度が最大になった後に、更に走行負荷が高まると、高圧側回路aの圧が更に高いものとなる。ここで、その一部aの圧力は、油圧ポンプPの斜板52を中立側に押し戻す反力として作用しており、通常負荷時には、この反力は油圧サーボ機構54におけるサーボシリンダ57で支持されているのであるが、上記のように高圧側回路aの圧力が特に高くなって斜板52にかかる油圧反力が大きくなると、チャージ圧と同一の低圧のシステム圧で作動するサーボシリンダ57で斜板角度を維持することができなくなり、斜板52は油圧反力によって自動的に斜板角度が減少する方向、つまり、減速側に強制変位させられ、高圧側回路aの圧が高められて出力トルクが増大される。
【0041】
なお、静油圧式無段変速装置12を操作する加速操作具53は、エンジン3の回転速度を変更する調速機構(図示せず)にも連動連結されてアクセルレバーとしの機能をも備えており、加速操作具53を操作しない停止状態ではエンジン3はアイドリング回転速度にあり、加速操作具53を操作して走行速度を増大するに連れてエンジン回転速度が高められるようになっている。
【0042】
図7に示すように、低圧側回路bへのチャージ回路cに設けられているリリーフ弁48のリリーフ圧を従来型のものに比べて半分の圧にするとともに、逆止弁を迂回するバイパス路49を設け、このバイパス路49にオリフィス49Aを設けて、エンジンブレーキ性能の改善を図っている。
チャージ回路cを油圧タンクTに連通させる第1戻り油路50を設け、この戻り油路50にアンチキャビテーションバルブ47を設け、チャージ回路cの圧が負圧になる場合に、油圧タンクTの作動油をチャージ回路cに吸入して、前記したリリー弁48のリリーフ圧を低減したことによる、エンジンブレーキ操作時の負圧発生を抑制する構成を採っている。
【0043】
ブレーキペダル42と静油圧式無段変速装置12との連係について説明する。図7に示すように、静油圧式無段変速装置12の高圧側回路aと油圧タンクTとに亘って戻り油路63を設け、戻り油路63にアンロード弁64を設け、戻り油路63におけるアンロード弁64と油圧タンクTとの間に絞り弁65を設けてある。アンロード弁64によって、静油圧式無段変速装置12の高圧側回路aの油圧を開放して、副変速レバー69のレバー操作を軽快に行えるように、アンロード弁64とブレーキペダル42とを連係してある。
【0044】
アンロード弁64とブレーキ操作具としてのブレーキペダル42との機械的連係機構Bについて説明する。図2、図9及び図10に示すように、油圧ポートブロック18は薄肉平板状に形成されており、両側面を機体前後方向に沿った状態で配置されている。油圧ポートブロック18には、静油圧式無段変速装置12の高圧側油路aと低圧側油路bとが平板状の側面に沿った状態で上下に位置する状態で、油圧ポートブロック18の肉厚内に形成されている。
【0045】
油圧ポートブロック18の肉厚内には、下面18cから上方に向けて高圧側油路aに直交する状態でスプール収納路18Aを設けてある。アンロード弁64は油圧ポートブロック18内に設けてある。スプール収納路18Aにスプール70を収納してある。スプール70は先端部70Aを油圧ポートブロック18より突出させ、中間部分70Bをスプール収納路18Aの径より小径に構成してある。スプール収納路18の中間位置には、油圧ポートブロック18の薄い肉厚方向に沿った逃がし路18aを形成してある。逃がし路18aは油圧タンクTに繋がっている。一方、逃がし路18aよりスプール収納路18Aの奥側に、高圧側油路aに開口する大径の開口部18bを形成してある。アンロード弁64はこのスプール70とスプール収納路18Aとで構成してある。また、スプール収納路18Aと逃がし路18aとを、高圧側油路aから油圧タンクTへの戻り油路63と称する。
【0046】
図9に示すように、スプール70の先端部70Aが油圧ポートブロック18の下面18cより突出した状態で、スプール70の中間部分70Bが大径の開口部18bより下方に位置しているので、逃がし路18aは高圧側油路aと連通する状態にはない。この非連通状態より、図10に示すように、スプール70を上方に押し込むと、スプール収納路18Aより小径の中間部分70Bが高圧側油路aに開口する大径の開口部18bと逃がし路18aに亘る範囲に位置する。
そうすると、高圧側油路aから高圧作動油がスプール70の中間部分70Bとスプール収納路18Aの内周面との間に形成された間隙を通して下方に移動し、逃がし路18aに至ってその逃がし路18aより油圧タンクTへ誘導される。
【0047】
前記スプール70を押し込み操作する構造について説明する。ミッションケース11の側面よりブラケット66を立設し、ブラケット66を、油圧ポートブロック18から突出するスプール70の突出先端部70Aの近くに配置する。ブラケット66にベルクランク状の押し込みアーム67を揺動自在に取り付け、押し込みアーム67の押し込み部67Aをスプール70の突出先端部70Aに当接可能な位置に配置してある。
【0048】
図9に示すように、ブラケット66の油圧ポートブロック18から離間する位置には、ブレーキペダル42に連係されたレリーズワイヤ68のアウター68Aが取付固定してある。アウター68Aから押し込みアーム67の連結部67Bに向けて蛇腹状カバー68Cで覆われたインナー68Bが延出され、インナー68Bの先端が連結部67Bに連結されている。
【0049】
以上のような構成により、図9に示す状態から、図10に示すように、ブレーキペダル42を踏み込みブレーキ制動側に操作すると、インナー68Bが引っ張り操作され、押し込みアーム67が図10の紙面上時計周りに回転する。この回転によって、押し込みアーム67の押し込み部67Aがスプール70の先端部70Aの下端面に当接して、スプール70を上向きに駆動し、油圧ポートブロック18内に押し込み操作する。
【0050】
そうすると、前記したように、スプール70の小径中間部分70Bが高圧側油路aと逃がし路18aとを連通する状態に切り換わり、高圧側油路aの作動油を油圧タンクTに戻すことができる。
【0051】
このことによって、作用効果の項でも述べたように、静油圧式無段変速装置12における駆動トルクが解放されて、副変速装置13でのギヤ切換操作を円滑に行うことができる。
【0052】
図7に示すように、逃がし路18aに絞り弁65を設けている。この絞り弁65を設けていることによって、ブレーキ操作を行っても、直ぐには静油圧式無段変速装置12の高圧側作動油が抜け切ることはないので、作業車が不測に後ずさりするようなことを抑制できる。
【0053】
〔別実施形態〕
(1) アンロード弁64を操作するものとしては、ブレーキ操作具42以外に副変速レバー69を対象としてもよい。この場合には、図11に示すように、中立位置より変速位置へ動かす際の、左右への揺動操作によって、アンロード弁64を切り換える構成を採ってもよい。このように、副変速レバー69を請求項2で記載した人為的操作具とする。
(2) ここに、人為的操作具としては、副変速レバー69以外に他の変速レバーであってもよい。または、クラッチ操作具やハンドル自体であってもよい。そして、アンロード弁64を切り換えるのに、機械的連係機構を採用してもよいが、電気的に人為的操作具の動きを捉えて、アクチュエータでアンロード弁64を操作するものでもよい。
(3) 絞り弁65を設ける位置は、図10に示すように、アンロード弁64の内部に形成してもよい。
(4) ブレーキ操作具42としては、ペダル方式以外に操作レバー方式のものでもよい。
(5) 作業車として、多目的作業車を代表させて説明したが、農用トラクタ等の他の作業車であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】作業車の全体側面図
【図2】ミッション構造を示す縦断背面図
【図3】副変速装置を示す縦断背面図
【図4】副変速装置の位置決め機構を示す側面図
【図5】副変速装置の変速操作構造を示す横断平面図
【図6】ミッションケース内の前輪への出力軸を示す横断平面図
【図7】静油圧式無段変速装置の油圧回路図
【図8】ブレーキ操作構造を示す構成図
【図9】ブレーキ操作具とアンロード弁との連係機構を示し、アンロード弁を操作する前の状態を示す縦断側面図
【図10】ブレーキ操作具とアンロード弁との連係機構を示し、アンロード弁を操作した状態を示す縦断側面図
【図11】(a)図9に対応した詳細図であり、アンロード弁におけるスプールを押し込む前の状態を示す縦断背面図、(b)図10に対応した詳細図であり、アンロード弁におけるスプールを押し込んだ状態を示す縦断背面図
【図12】戻り油路に絞り弁を設ける別実施形態を示す構成図
【図13】副変速操作構造を示す平面図
【符号の説明】
【0055】
12 静油圧式無段変速装置
13 副変速装置
42 ブレーキペダル(ブレーキ操作具)
63 戻り油路
64 アンロード弁
65 副変速レバー(副変速操作具)
69 絞り弁
B 連係機構
T 油圧タンク
a 高圧側油路
【技術分野】
【0001】
本発明は、主変速装置としての油圧無段変速装置とギャ式副変速装置を備えている作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の作業車の一例である多目的作業車として、例えば、エンジン動力を主変速装置に入力して無段変速し、その一定回転方向の変速動力を、前後進の切換えと前進速度の複数段の変速を行うギヤ式副変速装置に伝達するように構成したものが知られている(特許文献1)。
ただし、上記構成では、副変速装置を切換え操作する場合には走行ブレーキを制動操作して変速操作を行うのであるが、例えば、登坂走行中に副変速操作を行う場合に、主変速装置における高圧側油路と低圧側油路の圧力差が大きい状態では、主変速装置からのトルクが副変速装置に作用した状態のままでギヤ変速操作を余儀なくされることとなって、円滑にシフト操作を行うことができないことがある。
【0003】
そこで、本願出願人らによって、つぎのような技術が提案された。つまり、主変速装置としての静油圧式無段変速装置の高圧側回路と低圧側回路とに亘ってバイパス路を形成し、そのバイパス路に開閉弁を設け、開閉弁を切換操作する手動操作具を設けるものがあった(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−257447号公報
【特許文献2】特開2007−239978号公報(段落〔0032〕から〔0036〕,図8から図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2で示された従来構造では、ブレーキペダルを制動側に踏み込むと同時に操作レバーを操作して、静油圧式無段変速装置の高圧側回路と低圧側回路とに亘ってバイパスさせた場合には、静油圧式無段変速装置のトルクが一気に解放されてしまう。そうすると、作業車に対して維持していた静油圧式無段変速装置の制動作用が急激に解放されるところから、例えば、坂道等においてブレーキ制動が完全に掛かる前に不測に作業車が移動する虞があった。
【0005】
本発明の目的は、油圧式無段変速装置のトルクを急激には解放しない構成を採用して、ギヤ式副変速装置の切換操作を円滑に行えるものでありながら、作業車の不測の移動を抑制できる作業車を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、油圧式無段変速装置からの出力を受けて複数段に変速するギヤ式副変速装置を設け、前記油圧式無段変速装置の高圧側回路に油圧タンクに繋がる戻り油路を連結し、前記戻り油路にアンロード弁と絞り弁とを介装し、ブレーキ操作具への制動側への操作に基づいて前記アンロード弁をアンロード状態に切り換える連係機構を、前記アンロード弁と前記ブレーキ操作具とに亘って設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
ブレーキ操作具を制動側へ操作すると、ブレーキが制動状態になるとともに、アンロード弁が解放されて、高圧側回路から戻り油路を介して油圧タンクに高圧作動油が誘導されて、高圧状態が解除される。
これによって、ギヤ式副変速装置に作用している駆動トルクが解放されるので、変速操作を円滑に行うことができる。
しかも、高圧側回路から油圧タンクに誘導される高圧作動油は絞り弁によって一気に油圧タンクに移動することはなく、徐々に誘導されるので、無段油圧変速装置でのトルクが急激には解放されることはない。
これによって、無段油圧変速装置でのトルクが一時的にも維持されているので、作業車の移動に対する抵抗を保持することができ、作業車が不測に移動することを抑制できる。
副変速装置をシフト操作する際に必然的に必要となる、ブレーキ制動操作を行うだけで、油圧式無段変速装置のトルク解放を徐々に行うことができ、ブレーキ制動操作とバイパス開放操作とを行わなければならない従来構成のものに比べて、操作が容易である。
【0008】
〔効果〕
油圧式無段変速装置のトルクを急激には解放しない構成として、絞り弁を設けるだけの簡単な改造を施すだけで、ギヤ式副変速装置の切換操作を円滑かつ容易に行えるものでありながら、作業車の不測の移動を抑制できる作業車を提供することができた。
【0009】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、油圧式無段変速装置からの出力を受けて複数段に変速するギヤ式副変速装置を設け、前記油圧式無段変速装置の高圧側回路に油圧タンクに繋がる戻り油路を連結し、前記戻り油路にアンロード弁と絞り弁とを介装し、ブレーキ操作具とは別個に人為的操作具を設け、前記人為的操作具への操作に基づいて前記アンロード弁をアンロード状態に切り換える連係機構を、前記アンロード弁と前記人為的操作具とに亘って設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
ブレーキ操作具を制動側へ操作すると、ブレーキが制動状態になる。そして、人為的操作具を操作すると、アンロード弁が解放されて、高圧側回路から戻り油路を介して油圧タンクに高圧作動油が誘導されて、高圧状態が解除される。
これによって、ギヤ式副変速装置に作用している駆動トルクが解放されるので、変速操作を円滑に行うことができる。
しかも、高圧側回路から油圧タンクに誘導される高圧作動油は絞り弁によって一気に油圧タンクに移動することはなく、徐々に誘導されるので、無段油圧変速装置でのトルクが急激には解放されることはない。
これによって、無段油圧変速装置でのトルクが一時的にも維持されているので、作業車の移動に対する抵抗を保持することができ、作業車が不測に移動することを抑制できる。
ブレーキ操作とともに操作される人為的操作具への操作に基づいて無段油圧変速装置でのトルク解放を行うことができ、アンロード弁を切り換える操作系の多様化がはかれ、アンロード弁と連係する構造の簡素化を図るのが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
作業車の一例である多目的車両について説明する。図1に示すように、作業車は、左右一対の操向自在な前輪1、左右一対の後輪2を備え、前後輪間にエンジン3、車体フレーム4の前部に座席5、日除けフレーム6を備えて運転部7を設け、車体フレーム4の後部に、油圧シリンダ8によって上下に揺動されるダンプ荷台9を設けて構成してある。
【0012】
図1及び図2に示すように、前後車輪1,2の間には、ミッションケース11が配置されており、ミッションケース11の前端部側面にエンジン3が装着されている。ミッションケース11におけるエンジン3の装着面とは反対側には、主変速装置としての静油圧式無段変速装置12が装着されており、エンジン出力を受けて無段に変速し、変速出力を副変速装置13に出力するように構成してある。副変速装置13は、正転方向に2段、逆転方向に1段変速可能である。
副変速装置13からの出力は、後輪デフ機構14を介して左右の車軸15に伝達されて、後輪駆動に用いられる。
【0013】
前輪1への伝動系、および、後輪2への伝動系にはそれぞれ多板式のブレーキ45,46が装備されている。図8に示すように、前輪用のブレーキ45は、内装されたピストン(図示せず)を油圧操作で変位させることで摩擦板群の圧接操作を行うよう構成されている。後輪用のブレーキ46はブレーキ操作レバー40を操作シリンダ41によって揺動操作して、内装されたカム(図示せず)を回動することで摩擦板群の圧接操作を行うよう構成されている。前輪用のブレーキ45および操作シリンダ41は、運転部7の足元に配備されたブレーキペダル42によって操作されるマスターシリンダ43に配管接続されており、ブレーキペダル42を踏み込んでマスターシリンダ43から圧油を送出することで、前輪用のブレーキ45が操作油圧に応じて制動作動するとともに、操作シリンダ41が退入作動して後輪用のブレーキ46が操作油圧に応じて制動作動し、ブレーキペダル42の踏み込みを解除することで操作油圧が消滅して各ブレーキ45,46が制動解除状態に復帰するよう構成されている。
【0014】
なお、前記ブレーキ操作レバー40は運転部7に備えられた駐車レバー44にワイヤ連係されており、駐車レバー44を「駐車」位置に操作保持することで、左右の後輪2のブレーキ39のみを制動しての駐車が行われるようになっている。
【0015】
エンジン3から静油圧式無段変速装置12への伝動構造について説明する。図2及び図3に示すように、エンジン3の第1出力軸3Aにフライホイール3Bを取付け、フライホイール3Bから第2出力軸3Cを延出し、この第2出力軸3Cと静油圧式無段変速装置12の入力軸12Aとの間に第1ギヤ伝動機構17を設けてある。フライホイール3B、第1、第2出力軸3A、3Cはエンジン3を連結する出力ケース11A内に位置しており、出力ケース11Aの静油圧式無段変速装置12に向けて突出させた突出部11aに第1ギヤ伝動機構17の出力ギヤ17Aを配置してある。
【0016】
つまり、図2に示すように、出力ギヤ17Aを第2出力軸3Cに取り付けた状態で、ベアリングを介して回転自在に突出部11a内に支持してある。出力ケース11Aの前記突出部11aに隣接して、外向きボス部11bを形成してあり、この外向きボス部11bに第1ギヤ伝動機構17の入力ギヤ17Bをベアリング支持してある。この入力ギヤ17Bは、静油圧式無段変速装置12から延出された入力軸12Aに外嵌装着してあり、エンジン動力を静油圧式無段変速装置12に伝動すべく構成してある。
【0017】
静油圧式無段変速装置12の構成について説明する。図2に示すように、静油圧式無段変速装置12は、主油圧モータM、及び、副油圧モータSM、それらに圧油を供給する油圧ポンプPとを備えている。主油圧モータMは、ミッションケース11の一側面から外向きに突出形成されたボス部11B内に収納されている。副油圧モータSMは、主油圧モータMを収納したボス部11Bの開口端を塞ぐ状態に取付られた油圧ポートブロック18を介して取付固定されているモータケース19に収納される。油圧ポンプPは、モータケース19とともに油圧ポートブロック18に取付固定されたポンプケース20に取付固定される。
【0018】
油圧ポンプPは、アキシャルプランジャ式の可変容量型ポンプであり、主油圧モータMは、アキシャルプランジャ式の固定型モータであり、副油圧モータSMは、アキシャルプランジャ式の可変容量型モータである。油圧ポンプPは、前記した油圧ポートブロック18を貫通して出力ケース11Aに達する入力軸12Aに取付けてあり、主副油圧モータM、SMは、副変速装置13への共通出力軸16に取り付けてある。
【0019】
副変速装置13について説明する。図2及び図3に示すように、副変速装置13の入力軸31をミッションケース11内に架設するとともに、入力軸31を共通出力軸16と同芯位置に配置して、共通出力軸16の軸端を入力軸31の軸端内に嵌入させてスプライン係合し、入力軸31へ静油圧式無段変速装置12から動力供給すべく構成する。
入力軸31には、高速用の大径ギヤ部31A、低速用の小径ギヤ部31B、後進用ギヤ部31Cとを一体形成してある。
【0020】
入力軸31と平行に第1伝動軸32が架設してある。第1伝動軸32には、入力軸31に形成した大径ギヤ部31Aと常咬する小径入力ギヤ32Aと入力軸31に形成した小径ギヤ部31Bと常咬する大径入力ギヤ32Bと後進用入力ギヤ32Cとを遊転状態で取り付けてある。小径入力ギヤ32Aと大径入力ギヤ32B、大径入力ギヤ32Bと後進用入力ギヤ32Cとの間には、シンクロメッシュ形式で切り換え操作する第1、第2クラッチスリーブ32D、32Eが設けてあり、小径入力ギヤ32Aに第1クラッチスリーブ32Dを咬合させることによって、前進2速用の大径ギヤ部31Aから前進2速動力を導入することができる。大径入力ギヤ部32Aに第1クラッチスリーブ32Dを咬合させることによって、前進1速用の小径ギヤ部32Aから前進1速動力を導入することができる。後進用入力ギヤ32Cに第2クラッチスリーブ32Eを咬合させることによって、後進動力を取り出すことができる。
【0021】
図2、図3、及び、図5に示すように、第1伝動軸32と平行に後進軸33をミッションケース11内に架設し、この後進軸33に反転用ギヤ33Aをベアリング支承して、この反転用ギヤ33Aを前記した後進用入力ギヤ32Cと入力軸31の後進用ギヤ部31Cとに咬合させて、後進出力を伝達すべく構成してある。
【0022】
第1伝動軸32と車軸15との間に平行に第2伝動軸34を架設するとともに、第2伝動軸34に大径の伝動ギヤ34Aを遊嵌支承し、伝動ギヤ34Aに隣接して、小径出力ギヤ部34Bが一定形成してある。第1伝動軸32に出力ギヤ32Fがスプライン外嵌してあり、この出力ギヤ32Fと第2伝動軸34の伝動ギヤ34Aとを常咬状態に咬合させることによって、第1伝動軸32から第2伝動軸34に動力伝達可能に構成してある。
【0023】
左右車軸15、15との突合せ位置には、後輪デフ機構14が設けてあり、後輪デフ機構14のデフケース14Aに一体的に取り付けた入力ギヤ14Bを、第2伝動軸34の小径出力ギヤ部34Bに常咬式に係合させて、第2伝動軸34から車軸15に動力伝達するように構成してある。図2における、51は、デフロック操作具である。
【0024】
次に、副変速装置13の変速操作構造について説明する。図3及び図5に示すように、第1伝動軸32と平行に回転操作軸35を架設するとともに、回転操作軸35に平行にドラム操作軸36を架設し、このドラム操作軸36を操作する連動操作軸37を設けてある。回転操作軸35には、第1クラッチスリーブ32D、第2クラッチスリーブ32Eに係合する第1シフタ35Aと第2シフタ35Bとが取り付けてある。
【0025】
ドラム操作軸36には、外周面における軸線方向の二箇所に螺旋溝36aが刻設してあり、二つの螺旋溝36aが夫々第1シフタ35Aと第2シフタ35Bとに係合している。一方、第1シフタ35Aと第2シフタ35Bとは、ドラム操作軸36の軸線方向にスライド自在で回転不能に取り付けてある。
【0026】
連動操作軸37は副変速操作具10に連係してあり、図4及び図5に示すように、連動操作軸37には、扇形駆動ギヤ37Aが取付固定してある。一方、ドラム操作軸36には、扇形駆動ギヤ37Aに咬合する受動ギヤ36Aが一体回転可能に取り付けてあり、連動操作軸37が自身の軸芯周りで駆動回転されると、扇形駆動ギヤ37Aが回転し、受動ギヤ36Aが回転してドラム操作軸36が回転する。ドラム操作軸36が回転すると、螺旋溝36aに係合している第1シフタ35Aと第2シフタ35Bとが回転操作軸35の軸線方向に沿って駆動移動される。
【0027】
第1シフタ35Aと第2シフタ35Bとが駆動移動されると、各シフタ35A、35Bに係合したクラッチスリーブ32D、32Eが大径入力ギヤ32A、小径入力ギヤ32B、後進入力ギヤ32Cに咬合する状態を作り出し、副変速装置13の変速操作が可能になる。
具体的には、次のようになる。図4及び図5に示すように、連動操作軸37に取付固定された出力アーム37Bをエンジン3に近づく後進(r)用の操作位置に設定すると、第2シフタ35Bがスライド移動して第2クラッチスリーブ32Eを後進用入力ギヤ32Cに係合させて、後進状態を現出する。
出力アーム37Bをエンジン3から遠ざかる方向に操作する毎に、中立(n)、高速(h)、低速(L)に切り換えることができる。
【0028】
副変速装置13の変速操作位置を位置決めする機構について説明する。図4及び図5に示すように、ドラム操作軸36には、星形をした位置決めギヤ38を一体回転可能に取付固定するとともに、回転操作軸35に揺動アーム39を取付け、揺動アーム39の先端にカムフォロア39aが取り付けてあり、位置決めギヤ38に外周面に形成した凹部38aにカムフォロア39aが係合することによって、変速操作位置を位置決めするように構成してある。揺動アーム39は、トーションバネ39bによって係合方向に付勢されている。
【0029】
前輪1への伝動系について説明する。図2及び図6に示すように、ミッションケース11におけるエンジン連結部位とは反対側において前部ケース11C内に前輪用伝動軸21を横架するとともに、前輪用伝動軸21を第2伝動軸34に平行に配置してある。第2伝動軸34の一端に伝動ギヤ34Aを一体回転可能に取付固定するとともに、前輪用伝動軸21に入力ギヤ部21Aを一体形成し、伝動ギヤ34Aと入力ギヤ部21Aとを常咬式に咬合させることによって、第1伝動軸34より前輪用伝動軸21に動力伝達可能に構成してある。
【0030】
前部ケース11C内に前後向き姿勢の前輪用出力軸22を突設させ、前輪用出力軸22の軸線と前輪用伝動軸21の軸線との交差する部位にベベルギヤ伝動機構23が設けてあり、このベベルギヤ伝動機構23を介して、前輪用出力軸22に動力伝達されている。前輪用出力軸22に伝達された動力は、図示しないプロペラシャフトを介して前輪1に伝達される。
【0031】
図2及び図6に示すように、ベベルギヤ伝動機構23のうちの前輪用伝動軸21の端部に設けられる出力ベベルギヤ23Aは、その前輪用伝動軸21に遊転状態で装着されている。出力ベベルギヤ23Aより前輪用伝動軸21の端部には、クラッチスリーブ24がスプライン外嵌されており、そのクラッチスリーブ24と出力ベベルギヤ23Aとの相対向する面に、爪係合式のドグクラッチPが設けてある。
このドグクラッチPの爪を係合させると前輪1へ動力伝達が行え、前後輪1、2の4輪で走行可能になる。一方、爪を離間させると、前輪1への動力伝達が断たれ、後輪2だけの2輪走行となる。
【0032】
クラッチスリーブ24をクラッチ入り状態とクラッチ切り状態とに切り換える操作アーム25が前部ケース11Cに揺動自在に取り付けてあり、この操作アーム25を図示しない4wd・2wd切換操作具に連係して、手元操作可能に構成する。
【0033】
静油圧式無段変速装置12の油圧回路について説明する。図7に示すように、油圧ポンプPの斜板52は、加速操作具53に油圧サーボ機構54を介して連係されている。加速操作具53への操作が解除されると、斜板52は中立(斜板角度0°)に復帰維持されて圧油の供給が停止されて走行停止状態がもたらされる。反対に加速操作具53を大きく操作するにつれて斜板52の傾斜角度が大きくなって供給量が多くなり、主油圧モータMの共通出力軸16が高速回転状態となる。
【0034】
油圧ポンプPと主副油圧モータM、SMは油圧ポートブロック18の内部に形成された閉回路a、bで連通接続されている。閉回路の一部aは油圧ポンプPからの圧油が主副油圧モータM、SMに供給される高圧側回路であり、閉回路の他部bは戻り油となるので、低圧側回路となっている。この閉回路a、bには、漏洩分を補給するためのチャージ油路cが接続されて、エンジン3動力によって駆動されるチャージポンプCPからの圧油が供給油路eを介してチャージ油路cに供給されるようになっている。チャージ油路cに補充される油圧はリリーフ弁55によって設定値に維持されている。
【0035】
油圧サーボ機構54について説明する。図7に示すように、加速操作具53がサーボバルブ56に機械的に連動連結されるとともに、サーボバルブ56がサーボシリンダ57に連通接続されている。サーボシリンダ57が油圧ポンプPの斜板操作部に連動連結されるとともに、サーボシリンダ57の変位がフィードバック機構58によってサーボバルブ56にフィードバックされるように構成されており、加速操作具53への操作位置に対応して油圧ポンプPの斜板52が操作されるようになっている。油圧サーボ機構54の一次側油路fはチャージ油路cに接続されており、油圧サーボ機構54のシステム圧がチャージ圧と同一となっている。
【0036】
副油圧モータSMの斜板62は、制御ピストン59の先端と、復帰バネ60によって前方に付勢された復帰ピストン61とで前後から挾持されており、図に示すように、制御ピストン59が前方移動限界まで後退している時、副油圧モータSMにおける斜板62の角度が中立(斜板角度0°)となり、制御ピストン59が復帰バネ60に抗して後方に進出するに連れて斜板58の角度が大きくなって、副油圧モータSMの容量が増大するよう構成されている。復帰バネ60は初期圧縮をかけて組み込んであり、斜板62が予め設定されたバネ荷重で中立側に付勢されている。
【0037】
制御ピストン59は、油圧ポンプPからの圧油を主副油圧モータM、SMに供給する高圧側の高圧側回路aに制御用油路hを介して接続されており、高圧側回路aの圧力と復帰バネ60のバネ力とが均衡したところで斜板62の角度が安定するようになっている。
【0038】
以下に制御ピストン59を利用しての自動変速制御作動について説明する。
加速操作具53を操作すると、油圧ポンプPにおける斜板52の角度が大きくなり、斜板角度に応じた量の圧油が主油圧モータM及び副油圧モータSMに供給される。この場合、走行負荷が設定以下の範囲にあって高圧側回路a及び制御用油路hの圧が設定以下であると、制御用油路hの圧を受ける制御ピストン59の進出力よりも復帰バネ60の初期バネ力の方が大きいものとなり、副油圧モータSMの斜板62は中立(斜板角度0°)に維持され、油圧ポンプPからの圧油の全量が主油圧モータMに供給され、共通出力軸16は主油圧モータMのみによって駆動されることとなる。
【0039】
走行負荷が設定範囲を越えて、高圧側回路a及び制御用油路hの圧が設定値を上回ると、制御用油路hの圧を受ける制御ピストン59の進出力が復帰バネ60の初期バネ力より大きくなって、副油圧モータSMの斜板62の角度が大きくなって副油圧モータSMにモータ容量が発生し、油圧ポンプPからの圧油が主油圧モータMと副油圧モータSMとに供給される。つまり、走行負荷が設定範囲を越えて大きくなると、自動的にモータ側の全容量が大きくなって出力軸32が減速駆動され、出力トルクが増大される。
【0040】
走行負荷の増大に伴って副油圧モータSMの斜板角度が最大になった後に、更に走行負荷が高まると、高圧側回路aの圧が更に高いものとなる。ここで、その一部aの圧力は、油圧ポンプPの斜板52を中立側に押し戻す反力として作用しており、通常負荷時には、この反力は油圧サーボ機構54におけるサーボシリンダ57で支持されているのであるが、上記のように高圧側回路aの圧力が特に高くなって斜板52にかかる油圧反力が大きくなると、チャージ圧と同一の低圧のシステム圧で作動するサーボシリンダ57で斜板角度を維持することができなくなり、斜板52は油圧反力によって自動的に斜板角度が減少する方向、つまり、減速側に強制変位させられ、高圧側回路aの圧が高められて出力トルクが増大される。
【0041】
なお、静油圧式無段変速装置12を操作する加速操作具53は、エンジン3の回転速度を変更する調速機構(図示せず)にも連動連結されてアクセルレバーとしの機能をも備えており、加速操作具53を操作しない停止状態ではエンジン3はアイドリング回転速度にあり、加速操作具53を操作して走行速度を増大するに連れてエンジン回転速度が高められるようになっている。
【0042】
図7に示すように、低圧側回路bへのチャージ回路cに設けられているリリーフ弁48のリリーフ圧を従来型のものに比べて半分の圧にするとともに、逆止弁を迂回するバイパス路49を設け、このバイパス路49にオリフィス49Aを設けて、エンジンブレーキ性能の改善を図っている。
チャージ回路cを油圧タンクTに連通させる第1戻り油路50を設け、この戻り油路50にアンチキャビテーションバルブ47を設け、チャージ回路cの圧が負圧になる場合に、油圧タンクTの作動油をチャージ回路cに吸入して、前記したリリー弁48のリリーフ圧を低減したことによる、エンジンブレーキ操作時の負圧発生を抑制する構成を採っている。
【0043】
ブレーキペダル42と静油圧式無段変速装置12との連係について説明する。図7に示すように、静油圧式無段変速装置12の高圧側回路aと油圧タンクTとに亘って戻り油路63を設け、戻り油路63にアンロード弁64を設け、戻り油路63におけるアンロード弁64と油圧タンクTとの間に絞り弁65を設けてある。アンロード弁64によって、静油圧式無段変速装置12の高圧側回路aの油圧を開放して、副変速レバー69のレバー操作を軽快に行えるように、アンロード弁64とブレーキペダル42とを連係してある。
【0044】
アンロード弁64とブレーキ操作具としてのブレーキペダル42との機械的連係機構Bについて説明する。図2、図9及び図10に示すように、油圧ポートブロック18は薄肉平板状に形成されており、両側面を機体前後方向に沿った状態で配置されている。油圧ポートブロック18には、静油圧式無段変速装置12の高圧側油路aと低圧側油路bとが平板状の側面に沿った状態で上下に位置する状態で、油圧ポートブロック18の肉厚内に形成されている。
【0045】
油圧ポートブロック18の肉厚内には、下面18cから上方に向けて高圧側油路aに直交する状態でスプール収納路18Aを設けてある。アンロード弁64は油圧ポートブロック18内に設けてある。スプール収納路18Aにスプール70を収納してある。スプール70は先端部70Aを油圧ポートブロック18より突出させ、中間部分70Bをスプール収納路18Aの径より小径に構成してある。スプール収納路18の中間位置には、油圧ポートブロック18の薄い肉厚方向に沿った逃がし路18aを形成してある。逃がし路18aは油圧タンクTに繋がっている。一方、逃がし路18aよりスプール収納路18Aの奥側に、高圧側油路aに開口する大径の開口部18bを形成してある。アンロード弁64はこのスプール70とスプール収納路18Aとで構成してある。また、スプール収納路18Aと逃がし路18aとを、高圧側油路aから油圧タンクTへの戻り油路63と称する。
【0046】
図9に示すように、スプール70の先端部70Aが油圧ポートブロック18の下面18cより突出した状態で、スプール70の中間部分70Bが大径の開口部18bより下方に位置しているので、逃がし路18aは高圧側油路aと連通する状態にはない。この非連通状態より、図10に示すように、スプール70を上方に押し込むと、スプール収納路18Aより小径の中間部分70Bが高圧側油路aに開口する大径の開口部18bと逃がし路18aに亘る範囲に位置する。
そうすると、高圧側油路aから高圧作動油がスプール70の中間部分70Bとスプール収納路18Aの内周面との間に形成された間隙を通して下方に移動し、逃がし路18aに至ってその逃がし路18aより油圧タンクTへ誘導される。
【0047】
前記スプール70を押し込み操作する構造について説明する。ミッションケース11の側面よりブラケット66を立設し、ブラケット66を、油圧ポートブロック18から突出するスプール70の突出先端部70Aの近くに配置する。ブラケット66にベルクランク状の押し込みアーム67を揺動自在に取り付け、押し込みアーム67の押し込み部67Aをスプール70の突出先端部70Aに当接可能な位置に配置してある。
【0048】
図9に示すように、ブラケット66の油圧ポートブロック18から離間する位置には、ブレーキペダル42に連係されたレリーズワイヤ68のアウター68Aが取付固定してある。アウター68Aから押し込みアーム67の連結部67Bに向けて蛇腹状カバー68Cで覆われたインナー68Bが延出され、インナー68Bの先端が連結部67Bに連結されている。
【0049】
以上のような構成により、図9に示す状態から、図10に示すように、ブレーキペダル42を踏み込みブレーキ制動側に操作すると、インナー68Bが引っ張り操作され、押し込みアーム67が図10の紙面上時計周りに回転する。この回転によって、押し込みアーム67の押し込み部67Aがスプール70の先端部70Aの下端面に当接して、スプール70を上向きに駆動し、油圧ポートブロック18内に押し込み操作する。
【0050】
そうすると、前記したように、スプール70の小径中間部分70Bが高圧側油路aと逃がし路18aとを連通する状態に切り換わり、高圧側油路aの作動油を油圧タンクTに戻すことができる。
【0051】
このことによって、作用効果の項でも述べたように、静油圧式無段変速装置12における駆動トルクが解放されて、副変速装置13でのギヤ切換操作を円滑に行うことができる。
【0052】
図7に示すように、逃がし路18aに絞り弁65を設けている。この絞り弁65を設けていることによって、ブレーキ操作を行っても、直ぐには静油圧式無段変速装置12の高圧側作動油が抜け切ることはないので、作業車が不測に後ずさりするようなことを抑制できる。
【0053】
〔別実施形態〕
(1) アンロード弁64を操作するものとしては、ブレーキ操作具42以外に副変速レバー69を対象としてもよい。この場合には、図11に示すように、中立位置より変速位置へ動かす際の、左右への揺動操作によって、アンロード弁64を切り換える構成を採ってもよい。このように、副変速レバー69を請求項2で記載した人為的操作具とする。
(2) ここに、人為的操作具としては、副変速レバー69以外に他の変速レバーであってもよい。または、クラッチ操作具やハンドル自体であってもよい。そして、アンロード弁64を切り換えるのに、機械的連係機構を採用してもよいが、電気的に人為的操作具の動きを捉えて、アクチュエータでアンロード弁64を操作するものでもよい。
(3) 絞り弁65を設ける位置は、図10に示すように、アンロード弁64の内部に形成してもよい。
(4) ブレーキ操作具42としては、ペダル方式以外に操作レバー方式のものでもよい。
(5) 作業車として、多目的作業車を代表させて説明したが、農用トラクタ等の他の作業車であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】作業車の全体側面図
【図2】ミッション構造を示す縦断背面図
【図3】副変速装置を示す縦断背面図
【図4】副変速装置の位置決め機構を示す側面図
【図5】副変速装置の変速操作構造を示す横断平面図
【図6】ミッションケース内の前輪への出力軸を示す横断平面図
【図7】静油圧式無段変速装置の油圧回路図
【図8】ブレーキ操作構造を示す構成図
【図9】ブレーキ操作具とアンロード弁との連係機構を示し、アンロード弁を操作する前の状態を示す縦断側面図
【図10】ブレーキ操作具とアンロード弁との連係機構を示し、アンロード弁を操作した状態を示す縦断側面図
【図11】(a)図9に対応した詳細図であり、アンロード弁におけるスプールを押し込む前の状態を示す縦断背面図、(b)図10に対応した詳細図であり、アンロード弁におけるスプールを押し込んだ状態を示す縦断背面図
【図12】戻り油路に絞り弁を設ける別実施形態を示す構成図
【図13】副変速操作構造を示す平面図
【符号の説明】
【0055】
12 静油圧式無段変速装置
13 副変速装置
42 ブレーキペダル(ブレーキ操作具)
63 戻り油路
64 アンロード弁
65 副変速レバー(副変速操作具)
69 絞り弁
B 連係機構
T 油圧タンク
a 高圧側油路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧式無段変速装置からの出力を受けて複数段に変速するギヤ式副変速装置を設け、前記油圧式無段変速装置の高圧側回路に油圧タンクに繋がる戻り油路を連結し、前記戻り油路にアンロード弁と絞り弁とを介装し、ブレーキ操作具への制動側への操作に基づいて前記アンロード弁をアンロード状態に切り換える連係機構を、前記アンロード弁と前記ブレーキ操作具とに亘って設けてある作業車。
【請求項2】
油圧式無段変速装置からの出力を受けて複数段に変速するギヤ式副変速装置を設け、前記油圧式無段変速装置の高圧側回路に油圧タンクに繋がる戻り油路を連結し、前記戻り油路にアンロード弁と絞り弁とを介装し、ブレーキ操作具とは別個に人為的操作具を設け、前記人為的操作具への操作に基づいて前記アンロード弁をアンロード状態に切り換える連係機構を、前記アンロード弁と前記人為的操作具とに亘って設けてある作業車。
【請求項1】
油圧式無段変速装置からの出力を受けて複数段に変速するギヤ式副変速装置を設け、前記油圧式無段変速装置の高圧側回路に油圧タンクに繋がる戻り油路を連結し、前記戻り油路にアンロード弁と絞り弁とを介装し、ブレーキ操作具への制動側への操作に基づいて前記アンロード弁をアンロード状態に切り換える連係機構を、前記アンロード弁と前記ブレーキ操作具とに亘って設けてある作業車。
【請求項2】
油圧式無段変速装置からの出力を受けて複数段に変速するギヤ式副変速装置を設け、前記油圧式無段変速装置の高圧側回路に油圧タンクに繋がる戻り油路を連結し、前記戻り油路にアンロード弁と絞り弁とを介装し、ブレーキ操作具とは別個に人為的操作具を設け、前記人為的操作具への操作に基づいて前記アンロード弁をアンロード状態に切り換える連係機構を、前記アンロード弁と前記人為的操作具とに亘って設けてある作業車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−250416(P2009−250416A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102471(P2008−102471)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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