説明

作用領域の磁性粒子に影響を与え及び/又は磁性粒子を検出する機構及び方法

作用領域の磁性粒子に影響を与え及び/又は磁性粒子を検出する機構及び方法が開示される。機構は、低い磁界強度を有する第1のサブゾーン301及びより高い磁界強度を有する第2のサブゾーン302が作用領域300に形成されるような、磁界強度の空間パターンを有する選択磁界211を生成する選択手段210と、磁性粒子100の磁化が局所的に変化するように、駆動磁界221によって作用領域300における2つのサブゾーン301、302の空間位置を変化させる駆動手段220と、第1及び第2のサブゾーン301、302の空間位置の変化によって影響を与えられる作用領域300の磁化に依存する信号を取得する受信手段230と、第1の動作モードにおいて、2つのサブゾーンの空間位置が第1の周波数で変化され、第2の動作モードにおいて、2つのサブゾーンの空間位置が第1の周波数の少なくとも2倍の高さの第2の周波数で変化されるように、駆動手段及び/又は選択手段及び/又は受信手段を制御する制御ユニット11と、を有する。@@@@@@end
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【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作用領域における磁性粒子に影響を与え及び/又は磁性粒子を検出する機構に関する。更に、本発明は、作用領域における磁性粒子に影響を与え及び/又は磁性粒子を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の機構及び方法は、国際公開第2004/091393A1号パンフレットから知られている。相対的に低い磁界強度を有する第1のサブゾーン及び相対的に高い磁界強度を有する第2のサブゾーンが検査ゾーンに形成されるような磁界強度の空間分布を有する磁界が生成される。検査ゾーンにおけるサブゾーンの空間位置がシフトされ、それにより、検査ゾーンにおける粒子の磁化が局所的に変化する。サブゾーンの空間位置のシフトによって影響を与えられた検査ゾーンにおける磁化に依存する信号が、記録され、検査ゾーンにおける磁性粒子の空間分布に関する情報が、これらの信号から抽出され、それにより、検査ゾーンの画像が形成されることができる。このような機構及びこのような方法は、いかなるダメージも引き起こさず、高い空間解像度を伴って、非破壊的なやり方で例えば人間の身体のような任意の検査対象を、検査対象の表面の近く及び遠くの両方について、検査するために使用されることができるという利点を有する。更に、磁性粒子は、磁性の又は磁化可能な物質の磁化の変化によって、特に医用温熱治療において、周囲領域を加熱するために使用される。局所的にターゲット領域を加熱するために、磁性粒子が飽和しない低い磁界強度を有する第1のサブゾーン及びより高い磁界強度を有する第2のサブゾーンがターゲット領域に生成されるような、磁界強度の空間パターンを有する不均一な磁界が生成される。粒子が磁化の頻繁な変化により所望の温度まで加熱するに十分長い時間、ターゲット領域の2つのサブゾーンの空間位置が変化される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の方法は、組み合わせられた温熱治療及び磁性粒子イメージング(MPI)のための改良された装置及びより効果的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の目的は、作用領域における磁性粒子に影響を与え及び/又は磁性粒子を検出する機構であって、
−低い磁界強度を有する第1のサブゾーン及びより高い磁界強度を有する第2のサブゾーンが作用領域に形成されるような、磁界強度の空間パターンを有する選択磁界を生成する選択手段と、
−磁性粒子の磁化が局所的に変化するように、駆動磁界によって作用領域における2つのサブゾーンの空間位置を変化させる駆動手段と、
−第1及び第2のサブゾーンの空間位置の変化によって影響を与えられる作用領域の磁化に依存する信号を取得する受信手段と、
−第1の動作モードにおいて、2つのサブゾーンの位置が第1の周波数で変化され、第2の動作モードにおいて、2つのサブゾーンの空間位置が第1の周波数の少なくとも2倍の高さである第2の周波数で変化されるように、駆動手段及び/又は選択手段及び/又は受信手段を制御する制御ユニットと、
を有する機構によって達成される。
【0005】
第1の動作モードにおいて、第1の周波数は、磁性粒子イメージング(MPI)のために使用される基本周波数にセットされることができ、基本周波数は、今日、例えば特に患者に関してノイズによる不快感を防ぐために可聴の周波数レンジにより制限されるかなり小さいウィンドウにおいて、約25kHzであることが機構の利点である。第2の動作モードにおいて、温熱治療は、特にMPIスキャニングのための基本周波数より故意に高い周波数である第2の周波数で、より効果的に有利に実行される。増大された効果は、有利には、例えば治療されることができる腫瘍のより大きいサイズ、適用される必要がある磁性粒子の最小限の(局所的な)量又は低減された治療時間のような、より成功する温熱治療をもたらす。治療時間の低減は、例えば、患者の免疫系が介入可能であるとともに、意図されたロケーションから磁性粒子を少なくとも部分的に除去させることを防ぐ。更に、MPIは、温熱治療による局所的な加熱を提供しそれを集束させるために、有利に適用できる。選択磁界は、加熱が局在化される磁界のないポイントを規定する。更に、磁性粒子の存在は、第2の動作モードにおける温熱治療の前及び/又はその間及び/又はその後に、第1の動作モードにおいて有利にイメージングされる(監視される)ことができる。有利には、MPI及び温熱治療のために必要な磁界の振幅は同等である。
【0006】
本発明による機構において、低い磁界強度の第1のサブゾーン及びより高い磁界強度の第2のサブゾーンを有する空間的に不均一な磁界が、磁性粒子が位置する作用領域に生成される。駆動手段によって、2つのサブゾーンの空間位置が変化されることができる。不均一な磁界の生成及びサブゾーンの位置の変化は、例えば国際公開第2004/091393号パンフレットから知られており、詳しくは記述されない。好適には、第1の動作モードにおいて、空間位置の変化によって生成される磁性粒子からの信号が取得され、粒子の空間分布に関する情報が、それらの信号から得られる。更に好適には、第2の動作モードにおいて、作用領域の少なくとも一部である加熱領域が、第2の周波数での空間位置の変化によって加熱される。従って、有利には、対象が対象内に位置する磁性粒子の空間分布に関して検査されること(第1の動作モード)及び対象の一部が加熱されること(第2の動作モード)の双方が可能である。この例において、機構のさまざまな手段又は構成要素の少なくとも一部が、好適には、両方の動作モードについて使用されることができ、従って、有利には、ほんのわずかな付加の構成要素のみが、それぞれ異なる動作モードで機構を動作するために必要とされる。更に、好適には、それぞれ異なる動作モードは、制御ユニットが個々のケースにおいて異なって既存の構成要素を制御することによって達成される。
【0007】
有利には、機構は、機構の手段又は構成要素に対する作用領域の空間位置が変更されることなく、磁性粒子が、異なる動作モードの最中同じ1つの作用領域において影響を与えられることを可能にする。具体的には、第1のステップにおいて、対象内の磁性粒子の空間分布が、例えば第1の動作モードにおいて(例えば画像の形式で)決定されることができる。加熱領域は、分布に関するこの情報から有利に決定されることができる。第2のステップにおいて、事前に規定された対象の加熱領域が、好適には、第2の動作モードにおいて加熱される。この場合、計画において使用された磁性粒子の分布に関する空間情報が、加熱領域を決定するために直接使用されることができるので、この加熱は、有利に高い空間精度を伴って行われることができる。これは、機構の同じ構成要素が、両方のステップにおいて少なくとも部分的に使用され、対象が、構成要素、作用領域又は加熱領域に関してその位置を変更する必要がないので、可能である。
【0008】
本発明の好適な実施形態による機構の利用分野は、第3の動作モードにおいて、第1及び第2の動作モードを交互に又は同時に実施することによって、有利に拡張されることができる。第3の動作モードにおいて、例えば作用領域の一部が加熱されることができ、磁性粒子の空間位置に関する情報が同時に得られることができる。これは、2つのサブゾーンの空間位置が加熱中も変化され、その結果、磁性粒子の空間分布に関する情報が信号から得られることができる該信号が、第1の動作モードと同様に磁性粒子によって生成されるので、可能である。
【0009】
本発明の好適な実施形態によれば、駆動手段は、少なくとも第1のコイル機構を有し、第1のコイル機構は、第1の動作モードにおいて第1の電流を供給され、第1のコイル機構は、第2の動作モードにおいて第2の電流を供給される。第2の電流は、好適には、第1の(AC)電流よりそれぞれ高い周波数を含む交流である。構成要素の数が必要最小限に限られることが、この実施形態の利点である。より好適には、機構は、共振回路を有し、共振回路は、第1のコイル機構に第2の電流を供給するために第2の動作モードにおいてオンにされる。
【0010】
本発明の他の好適な実施形態によれば、駆動手段は、少なくとも第1のコイル機構及び第2のコイル機構を有し、第1のコイル機構は、第1の動作モードにおいて電流を供給され、第2のコイルは、第2の動作モードにおいて電流を供給される。当業者であれば、駆動磁界の第1及び第2の周波数が、第1及び第2のコイル機構を通る異なるAC電流によって有利に生成されることができることが分かるであろう。
【0011】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、機構は、第1の動作モードと第2の動作モードとの間の切り替えを行うスイッチを有し、これは、有利には、オペレータが動作モード間の変更をすばやく行うことを可能にする。制御ユニットは、例えば物理的なスイッチボタンを有することができ、又は概して、第1のモードと第2のモードとの間の切り替えを行う可能性を提供し、すなわち特にハードウェア又はソフトウェアによって可能にされる任意の具体化を有することができる。
【0012】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、受信手段は、第2の動作モードにおいてフィードバックモードで使用される受信コイルを有する。特に好適には、受信コイルは、作用領域に送信される効果的なパワーを評価するように構成される。
【0013】
本発明によれば、第2の周波数は、第1の周波数、すなわち第1の周波数としての25kHzの一般的なMPスキャニング周波数、の少なくとも2倍であり、第2の周波数は、約50kHz又はそれ以上であり、好適には50kHz乃至1000kHzの間のレンジにある。温熱治療のための特に好適な周波数は、例えば少なくとも100kHzであり、最も好適には約400kHzである。好適な実施形態において、第2の周波数は、第1の周波数の少なくとも4倍であり、より好適には、第1の周波数の約16倍である。
【0014】
機構の勾配磁界は、例えば永久磁石によって生成されることができる。より大きな磁界強度の第2のサブゾーンによって囲まれる低い磁界強度の小さい第1のサブゾーンを有する不均一な磁界が、同じ極性の2つの極の間の領域に形成される。磁界強度がゼロであるポイント付近のゾーン、すなわち第1のサブゾーン、に位置する粒子においてのみ、磁化が飽和しない。このゾーンの外側にある粒子において、磁化は飽和状態にある。勾配磁界を切り替え可能に又は容易に調整可能にするために、永久磁石を有する機構ではなく、更なる好適な実施形態により、勾配コイル機構を有する選択手段が提供され、勾配コイル機構は、その方向を逆にするとともに第1のサブゾーンにゼロ交差を有する勾配磁界を、作用領域に生成する。有利には、この勾配磁界の特性は、上述の磁界と同様である。勾配コイル機構が、例えばターゲット領域の2つの側に配置され、電流が反対方向に流れる同じ種類の2つの巻線(Maxwellコイル)を有する場合、当該磁界は、巻線の軸に沿った或るポイントにおいてゼロであり、磁界強度は、このポイントの2つの側において、反対の極性で、実質的に直線的に増大する。
【0015】
2つのサブゾーンの空間位置を変化させる1つの可能なやり方は、コイル及び/又は永久磁石機構(又はその一部)が、互いに対して移動されることである。これは、非常に小さい対象が非常に高い勾配(マイクロスコピー)で検査される場合、特に好ましい。対照的に、他の好適な実施形態によれば、作用領域の2つのサブゾーンが、勾配磁界に重ねられる時間的に可変な磁界によって位置をシフトされるので、機械的な移動が必要とされない。従って、この磁界が経時的に適切なパターンをたどり、適切に指向される場合、磁界のゼロポイントが、このようにして作用領域を有利に通ることができる。この場合、2つのサブゾーンの空間位置は、相対的にすばやく変化されることができ、これは、作用領域の磁化に依存する信号の取得に関して付加の利点を提供する。磁界のゼロポイントの移動と協働する磁化の変化は、好適には、検査ゾーンに生成される信号を受け取るために使用される受信コイルによって、検出されることができる。更に好適には、コイルは、この場合、検査ゾーンに磁界を生成するためにすでに使用されているコイルでもよい。しかしながら、受信用の別個の受信コイルを使用する利点もある。その理由は、このコイルが、時間的に可変な磁界を生成するコイル機構から切り離されることができ、このようにして信号の受信に関して最適化されることができるからである。更に、改善された信号対雑音比は、別個の受信コイルを用いて得られることが可能でありえるが、複数の受信コイルを用いることにより一層改善される。
【0016】
上述の目的は更に、作用領域における磁性粒子に影響を与え及び/又は磁性粒子を検出する方法であって、
−低い磁界強度を有する第1のサブゾーン及びより高い磁界強度を有する第2のサブゾーンが作用領域に形成されるような、磁界強度の空間パターンを有する選択磁界を生成するステップと、
−作用領域における磁性粒子の磁化が局所的に変化するように、駆動磁界によって第1の周波数で作用領域における2つのサブゾーンの空間位置を変化させるステップと、
−第1及び第2のサブゾーンの空間位置の変化によって影響を与えられる作用領域における磁化に依存する信号を取得するステップと、
−作用領域における磁性粒子の空間分布に関する情報を得るために信号を解析するステップと、
−作用領域の少なくとも一部である加熱領域を規定するステップと、
−第1の周波数の少なくとも2倍の高さである第2の周波数で、作用領域における2つのサブゾーンの空間位置を変化させるステップと、
を含む方法によって達成される。
【0017】
磁性粒子の局所的な加熱のために、磁界の2つのサブゾーンの空間位置は、連続的に変化される。方法の位置変化ステップにおいて生じることと同じように、これは、磁性粒子の空間分布に関する詳細が導き出されることができる信号を生成する。信号を取得するステップ及び信号を解析するステップが、加熱領域の加熱中にも付加的に実施されるようにして、これらの信号が取得される場合、空間分布に関する情報が、加熱中に同時に生成されることができる。
【0018】
独国特許出願第10238853号明細書に記述される磁性粒子が、例えば上述の機構及び方法において使用されることができる。
【0019】
本発明のこれら及び他の見地は、以下に記述される実施形態から明らかであり、それらを参照して解明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による機構の実施形態を概略的に示す図。
【図2】本発明による機構のコイル機構によって生成される磁力線のパターンを示す図。
【図3】作用領域に存在する磁性粒子を概略的に示す図。
【図4a】図3による粒子の磁化特性を示す図。
【図4b】図3による粒子の磁化特性を示す図。
【図4c】図3による粒子の磁化特性を示す図。
【図5】本発明による機構及び方法を説明するブロック回路図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、具体的な実施形態に関して及び特定の図面を参照して記述されているが、本発明は、それに制限されず、請求項によってのみ制限される。記述される図面は、概略的であり、非制限的である。図面において、構成要素のいくつかの大きさは、説明の便宜上、誇張されていることがあるとともに一定の縮尺で描かれていない。
【0022】
単数名詞に言及する際に「a」、「an」、「the」のような不定冠詞又は定冠詞が使用される場合、他のことが特に記述されない限り、これは、その名詞の複数を含む。
【0023】
更に、明細書及び請求項における第1、第2、第3等の語は、同様の構成要素の間の区別を行うために使用されており、必ずしも順次の又は時間的な順序を記述するために使用されていない。そのように使用される語は、適当な環境下で交換可能であり、ここに記述される本発明の実施形態は、ここに記述されるもの以外のシーケンスで動作可能であることが理解されるべきである。
【0024】
更に、記述及び請求項における上、下、上の、下の等の語は、説明的な目的で使用されており、必ずしも相対位置を記述するために使用されていない。このように使用される語は、適当な環境下で交換可能であり、ここに記述される本発明の実施形態は、ここに記述され又は図示されるもの以外の向きで動作可能であることが理解されるべきである。
【0025】
本明細書及び請求項において使用される「含む、有する」なる語は、列挙される手段に制限されるものとして解釈されるべきでなく、他の構成要素又はステップを除外しないことが留意されるべきである。従って、「手段A及びBを有する装置」なる表現の範囲は、構成要素A及びBのみからなる装置に制限されるべきでなく、それは、本発明に関して、装置のただ関連する構成要素がA及びBであることを意味する。
【0026】
図1において、参照数字1は、この例では患者である、検査又は調査の対象をさす。患者は、患者提示テーブルに位置し、テーブルのプレート2の一部のみが示されている。例えば、消化管の検査の前に、磁性粒子を含む液体又は食べ物が、患者1に投与される。当業者であれば、検査されるべき器官又は身体の部分に依存して、磁性粒子が、血流に又は直接作用領域に注入されてもよいことが分かるであろう。
【0027】
個々の磁性粒子が、図3に示されている。磁性粒子は、例えば軟磁性層101でコーティングされるガラスの球状基板100を有し、軟磁性層101は、例えば鉄−ニッケル合金(例えばパーマロイ)で構成される。この層は、例えば粒子を酸から保護するコーティング層102によって被覆されることができる。このような粒子の磁化の飽和のために必要とされる磁界の強度は、粒子の直径に依存する。例えば10μmの直径の場合、1mTの磁界が、この目的で必要とされ、100μmの直径の場合、100mTの磁界が必要とされる。より低い飽和磁化をもつ材料のコーティングが選択される場合、より小さい値が得られる。代替として、超常磁性鉄−酸化物ベースのコロイド(SPIO)と呼ばれる磁性粒子が、患者に投与されることができる。それらは、不定比性をもつ微結晶性の磁鉄鉱コアを含むタイプの磁気共鳴イメージング(MRI)造影剤である。このような粒子の、そのコーティングを含む中央径は、50nm及びそれ以上のオーダーである。
【0028】
図4a、図4b及び図4cは、このような粒子を含む分散において、磁界強度Hの関数としての磁化Mの変化を示す磁化特性を示す。磁化Mが、+Hcの磁界強度より高く、また−Hcの磁界強度より低くは変化せず、これは、飽和磁化が存在することを示すことが分かるであろう。磁化は、値+Hc及び−Hcの間で飽和しない。
【0029】
図4aは、他の磁界がアクティブでない場合の正弦波磁界H(t)の効果を示す。磁化は、第1の動作モードにおいて、磁界H(t)の第1の周波数のリズムでその飽和値の間を往復する。結果として得られる磁化の時間的変化は、図4aに参照符号M(t)によって示されている。磁化は周期的に同じように変化し、それによって、同様の周期的な信号がコイルの外側に誘導されることを意味することが分かる。磁化特性の非線形性の結果として、この信号は、単なる正弦波の形ではなく、高調波、すなわち正弦基本波のより高い高調波、を含む。基本波から容易に切り離されることができるこれらの高調波は、粒子濃度の尺度である。
【0030】
曲線の中心の線の破線部分は、磁界強度の関数として、磁化の近似中間変化を示す。この中心線からの偏りとして、磁化は、磁界Hが+Hcから−Hcに増大するとき、僅かに右に延在し、磁界Hが+Hcから−Hcに減少するとき、僅かに左に延在する。このヒステリシス効果は、熱の生成のために、更に有利に使用されることができる。曲線のパスの間で形成され、形状及びサイズが材料に依存するヒステリシス表面積は、磁化の変化に応じた熱生成の尺度である。
【0031】
熱生成を増大するために、磁界H(t)は、図4cに示される第2の動作モードにおいて、故意により高い第2の周波数で変化される。第2の周波数は、第1の周波数の少なくとも2倍の高さである。結果として得られる磁化の時間的変化は、図4cに参照符号M(t)によって示されている。温熱治療の基本的な前提は、局所的加熱により、腫瘍が治療されることができることである。局所的加熱は、腫瘍細胞における又はその近傍における磁性ナノ粒子の存在により、実現されることができる。局所的な温度が42℃を越える場合、最小加熱が、アポトーシスをもたらしうる。磁性ナノ粒子を使用する場合、特定のパワー損失は、磁界周波数及び振幅の関数である。熱生成は、2つの異なる現象の結果である。第1の現象は、磁性粒子内部の磁化の反転であり、第2の現象は、流体懸濁液中の磁性粒子の回転、すなわちその周囲に対する回転、である。温熱治療に使用される粒子サイズに関する一般的な値は、10−25nmであり、すなわちこれは磁性コアを表わす。磁界の好適な第2の周波数は、約400kHzであり、振幅は約10kA/mである。温熱治療のための磁性ナノ粒子の投与オプションは、直接に腫瘍へ又は腫瘍を供給する血管へ粒子懸濁液を注入すること、及び腫瘍特異性抗体による標識化により又は不均一な磁界を使用する粒子ガイダンスによりアクティブであるいわゆる標的デリバリ、を含む。
【0032】
図4bは、静磁界H1が重ねられる正弦波磁界H(t)の効果を示している。磁化は飽和状態にあるので、それは正弦波磁界H(t)によって実際に影響を及ぼされない。磁化M(t)は、この領域において時間的に一定のままである。結果的に、磁界H(t)は、磁化の状態の変化を引き起こさず、検出可能な信号を生じさせない。
【0033】
本発明の実施形態の一例として、機構10が、選択手段210を形成する複数のコイルを有する図2に示されており、選択手段210のレンジは、検査領域300とも呼ばれる作用領域300を規定する。例えば、選択手段210は、対象350の上及び下に配置される。例えば、選択手段210は、コイル210'、210''の第1の対を有し、各コイルは、2つの同様に構成される巻線210'及び210''を有し、巻線210'及び210''は、患者350の上及び下に同軸に配置され、特に反対方向の等しい電流を通される。第1のコイルペア210'、210''は、まとめて以下において選択手段210と呼ばれる。好適には、直流がこの例において使用される。選択手段210は、一般に図2において磁力線によって表現される勾配磁界である選択磁界211を生成する。選択磁界211は、選択手段210のコイル対の(例えば垂直)軸の方向において、実質的に一定の勾配を有し、この軸上のポイントにおいてゼロ値に達する。この磁界のないポイント(図2に個別に示さず)から始まって、磁界のないポイントからの距離が増大するにつれて、選択磁界211の磁界強度は、すべての3つの空間方向において増大する。磁界のないポイント周囲の破線によって示される第1のサブゾーン301又は領域301において、磁界強度は非常に小さいので、第1のサブゾーン301に存在する磁性粒子100の磁化は飽和しないが、(領域301の外側の)第2のサブゾーン302に存在する磁性粒子100の磁化は、飽和状態にある。作用領域300の磁界のないポイント又は第1のサブゾーン301は、好適には空間的にコヒーレントな領域である。第1のサブゾーン301は更に、点状の領域又は他の場合には線状の又は平坦な領域でもよい。第2のサブゾーン302において(すなわち第1のサブゾーン301の外側の作用領域300の残りの部分において)、磁界強度は、磁性粒子100を飽和状態に保つために十分に強い。作用領域300内の2つのサブゾーン301、302の位置を変化させることによって、作用領域300の(全体的な)磁化が変化する。作用領域300における磁化又は磁化によって影響を及ぼされる物理的パラメータを測定することによって、作用領域における磁性粒子100の空間分布に関する情報が、得られることができる。
【0034】
以下において駆動磁界221と呼ばれる他の磁界が、作用領域300において選択磁界210(又は勾配磁界210)に重ねられるとき、第1のサブゾーン301は、この駆動磁界221の方向において、第2のサブゾーン302に対してシフトされる。このシフトの程度は、駆動磁界221の強度が増大すると、増大する。従って、重ねられる駆動磁界221が時間的に可変である場合、第1のサブゾーン301の位置が、それに応じて時間的及び空間的に変化する。駆動磁界221の変化の周波数帯域とは別の周波数帯域(より高い周波数にシフトされる)で、第1のサブゾーン301に位置する磁性粒子100から信号を受け取り又は検出することが有利である。これは、駆動磁界221の周波数の高調波の周波数成分が、磁化特性の非線形性の結果として(すなわち飽和効果により)作用領域300における磁性粒子100の磁化の変化により生じるので、可能である。
【0035】
任意の所与の空間方向において駆動磁界221を生成するために、3つの駆動コイル対、すなわち第1の駆動コイル対220'、第2の駆動コイル対220''及び第3の駆動コイルペア220'''、が提供され、これらは、まとめて以下において駆動手段220と呼ばれる。例えば、第1の駆動コイル対220'は、所与の方向に、すなわち例えば垂直方向に、延びる駆動磁界221の成分を生成する。このために、第1の駆動コイル対220'の巻線は、同じ方向の等しい電流によって通過される。2つの駆動コイル対220''、220'''が、異なる空間方向に、例えば作用領域300(又は患者350)の長手方向及びそれに垂直な方向に水平に延びる駆動磁界221の成分を生成するために提供される。ヘルムホルツタイプの第2及び第3の駆動コイル対220''、220'''が、この目的で使用される場合、これらの駆動コイル対は、治療領域の左側及び右側に又はこの領域の前方及び後方にそれぞれ配置されなければならない。これは、作用領域300又は治療領域300へのアクセスしやすさに影響を与える。従って、第2及び/又は第3の磁界駆動コイル対又はコイル220''、220'''は、作用領域300の上及び下にも配置され、従って、それらの巻線構造は、第1の駆動コイル対220'のものと異ならなければならない。しかしながら、この種類のコイルは、ラジオ周波数(RF)の駆動コイル対が治療領域の上及び下に位置し、前記RF駆動コイル対が水平な時間的に可変の磁界を生成することができるオープン磁石(オープンMRI)を有する磁気共鳴装置の分野から知られている。従って、このようなコイルの構造は、更に詳しく説明される必要がない。
【0036】
本発明による機構10は更に、図1に概略的にのみ示される受信手段230を有する。受信手段230は、通常、作用領域300における磁性粒子100の磁化パターンによって引き起こされる信号を検出することが可能であるコイルを有する。しかしながら、この種類のコイルは、例えばラジオ周波数(RF)コイル対が、可能な限り高い信号対雑音比を有するように作用領域300の周囲に置かれる磁性共鳴装置の分野から知られている。従って、このようなコイルの構造は、ここに更に詳しく説明される必要がない。
【0037】
図5において、ブロック回路図は、本発明による機構10及び方法を示す。制御ユニット11は、作用領域における粒子の分布を表す画像を表示するモニタを備えるワークステーション(図示せず)と協働することができる。入力は、キーボード又はなんらかの他の入力ユニットを介してユーザによって行われることができる。制御ユニット11は、第1の動作モードに関する第1の回路15及び第2の動作モードに関する第2の回路16を有する。スキャナ12は、第1のサブゾーン301及び第2のサブゾーン302(図2)が作用領域に形成されるような磁界強度の空間パターンを有する選択磁界を生成する選択手段210と、駆動磁界によって作用領域における2つのサブゾーン301、302の空間位置を変化させる駆動手段220と、作用領域における磁化に依存する信号を取得する受信手段230と、を有する。取得された信号は、制御ユニット11にフィードバック17を介して戻される。
【0038】
選択手段210及び駆動手段220は、電流増幅器(図示せず)からそれらの電流を受け取ることができる。所望の磁界を生成する、増幅されるべき電流の時間的波形は、第1の動作モードにおいて波形発生器18によってプリセットされ、第2の動作モードにおいて第2の波形発生器19によってプリセットされる。第1及び第2の波形発生器18、19は、それぞれ第1又は第2の回路15、16によって制御され、第1又は第2の回路15、16は、特定の検査、調査又は治療プロシージャのために必要な時間的波形を計算する。第2の動作モードにおいて駆動手段220によって生成される駆動磁界の第2の周波数は、第1の動作モードにおける第1の周波数の少なくとも2倍の高さである。第1の動作モードにおいて、機構10は、磁性粒子イメージング(MPI)のために有利に適応され、第2のモードにおいて、温熱治療が適用されることができる。
【0039】
本発明により、温熱治療が、MPIと有利に組み合わせられる。MPIは、有利には、静的なバックグラウンド磁界、すなわち加熱が局在化される磁界のないポイントを規定する選択磁界、の設計によって、局所的な加熱を提供し集束させるのに適している。更に、粒子の存在は、加熱の試みの前に及び/又はその間に及び/又はその後にイメージングされることができる(監視される)。MPI及び温熱治療のための必要な磁界の振幅は、同等である。MPIが、本質的に、磁界のないポイントを生成するためにボリュメトリックな3Dアプローチを反映するのに対して、任意の付加的な温熱治療は、例えば温熱治療に専念する任意の特定のコイル組の付加又は再使用によって、一次元にのみ制限されることができる。
【0040】
機構は、好適には、第1及び第2の動作モードの間の変更を行うスイッチ(図示せず)を備える。第2の動作モードにおいて、温熱治療は、第1の動作モードにおいてMPIのために使用される第1の周波数と比較して相当高い第2の周波数で実行される。この目的のために、駆動手段220は、好適には、少なくとも第1の動作モード用の第1のコイル機構220'、220''、220'''及び第2のモード用の第2のコイル機構220aを有する。代替として、好適には、付加の電流が、駆動手段220の単一の第1のコイル機構220'、220''、220'''に送られることもできる。専用の共振回路(図示せず)が、好適には、コイルに電力供給するために付加され、かかるコイルにおいて、付加の(交流)磁界が温熱治療のために生成される。受信手段230の受信コイルは、有利には、例えば、MPIイメージング中に先験的に規定された磁性粒子の局所的な濃度に基づいて治療中に送信される効果的なパワーを評価するために、第2の動作モードにおいてフィードバックモードで使用されることができる。
【0041】
好適な第3の動作モードにおいて、選択された加熱領域は、第2の動作モードの場合と同様に正確に加熱される。作用領域の画像が同時に提供される。これは、第1のサブゾーン301が加熱中にもシフトされ、結果として、第1の動作モードの場合と同様に信号が生成され、かかる信号から、作用領域の画像が再構成され表示されることができるので、可能である。信号及び/又は画像は、例えば薬物動態学的効果により、温熱治療を、作用領域における磁性粒子の局所的な濃度の任意の時間的変化に適応させるために、オンラインで有利に解釈されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用領域における磁性粒子に影響を与え及び/又は前記磁性粒子を検出する機構であって、
低い磁界強度を有する第1のサブゾーン及びより高い磁界強度を有する第2のサブゾーンが前記作用領域に形成されるような、磁界強度の空間パターンを有する選択磁界を生成する選択手段と、
前記磁性粒子の磁化が局所的に変化するように、駆動磁界によって前記作用領域における前記2つのサブゾーンの空間位置を変化させる駆動手段と、
前記第1及び前記第2のサブゾーンの前記空間位置の前記変化によって影響を与えられる前記作用領域における磁化に依存する信号を取得する受信手段と、
第1の動作モードにおいて、前記2つのサブゾーンの前記空間位置が第1の周波数で変化され、第2の動作モードにおいて、前記2つのサブゾーンの前記空間位置が前記第1の周波数の少なくとも2倍の高さである第2の周波数で変化されるように、前記駆動手段及び/又は前記選択手段及び/又は前記受信手段を制御する制御ユニットと、
を有する機構。
【請求項2】
前記駆動手段は、少なくとも第1のコイル機構を有し、前記第1のコイル機構は、前記第1の動作モードにおいて第1の電流を供給され、前記第1のコイル機構は、前記第2の動作モードにおいて第2の電流を供給される、請求項1に記載の機構。
【請求項3】
共振回路を更に有し、前記共振回路は、前記第1のコイル機構に前記第2の電流を供給するために前記第2の動作モードにおいてオンにされる、請求項2に記載の機構。
【請求項4】
前記駆動手段は、少なくとも第1のコイル機構及び第2のコイル機構を有し、前記第1のコイル機構は、前記第1の動作モードにおいて電流を供給され、前記第2のコイル機構は、前記第2の動作モードにおいて電流を供給される、請求項1に記載の機構。
【請求項5】
前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとの間の切り替えを行うスイッチを更に有する、請求項1に記載の機構。
【請求項6】
前記受信手段は、前記第2の動作モードにおいてフィードバックモードで使用される受信コイルを有する、請求項1に記載の機構。
【請求項7】
前記受信コイルは、前記作用領域に送信される効果的なパワーを評価するように構成される、請求項6に記載の機構。
【請求項8】
前記第2の周波数は、前記第1の周波数の少なくとも4倍の高さであり、好適には、前記第1の周波数の約16倍の高さである、請求項1に記載の機構。
【請求項9】
前記選択手段は、その方向を逆にするとともに前記第1のサブゾーンにゼロ交差をもつ勾配磁界を生成する勾配コイル機構を有する、請求項1に記載の機構。
【請求項10】
前記作用領域における前記2つのサブゾーンは、前記勾配磁界に重ねられる時間的に可変な磁界によって位置をシフトされる、請求項1に記載の機構。
【請求項11】
作用領域における磁性粒子に影響を与え及び/又は前記磁性粒子を検出する方法であって、
低い磁界強度を有する第1のサブゾーン及びより高い磁界強度を有する第2のサブゾーンが前記作用領域に形成されるような、磁界強度の空間パターンを有する選択磁界を生成するステップと、
前記作用領域における磁性粒子の磁化が局所的に変化するように、駆動磁界によって第1の周波数で前記作用領域における前記2つのサブゾーンの空間位置を変化させるステップと、
前記第1及び前記第2のサブゾーンの前記空間位置の前記変化によって影響を与えられる前記作用領域における磁化に依存する信号を取得するステップと、
前記作用領域における前記磁性粒子の空間分布に関する情報を得るために前記信号を解析するステップと、
前記作用領域の少なくとも一部である加熱領域を規定するステップと、
前記第1の周波数の少なくとも2倍の高さである第2の周波数で、前記作用領域における前記2つのサブゾーンの前記空間位置を変化させるステップと、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−505952(P2011−505952A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537574(P2010−537574)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【国際出願番号】PCT/IB2008/055161
【国際公開番号】WO2009/074952
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】