説明

併用化学療法組成物および方法

【課題】癌および酸化ストレスに関連した病気の治療、回復、または予防のための、薬剤組成物および方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、抗癌化学療法薬と、イソフラボンまたはその類似体とを含む、併用療法に関する。本発明はさらに、本発明の併用療法における使用に適した、白金−イソフラボノイド複合体化合物に関係する、含有する、含んでなる、包含する、および/または、調製するための、化合物、組成物、方法、および治療的使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗癌化学療法薬と、イソフラボンまたはその類似体とを含む、併用療法に関する。本発明はさらに、本発明の併用療法における使用に適した、白金-イソフラボノイド複合体化合物に関係する、含有する、含んでなる、包含する、および/または、調製するための、化合物、組成物、方法、および治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞分裂(有糸分裂)の調節は、多細胞生物の正常な成長および発生、ならびに組織の恒常性の維持、および、あるタイプの細胞が環境の合図に対して適切に反応する能力にとり、極めて重要である。
【0003】
正常な細胞増殖速度の調節の喪失は、細胞分裂のチェックポイントが正常に機能しないときに起こる。このことは、重要な調節遺伝子に対する体細胞突然変異によるか、または遺伝的形質により、正常な細胞が基本的な遺伝的損傷を獲得し、従って「イニシエートされた(initiated)」細胞になって行く場合に起こる。イニシエートされた細胞における遺伝的異常は、変化した遺伝子発現および変化した細胞行動をもたらす。
【0004】
イニシエートされた細胞はクローン増殖を受けて、さらなる遺伝的変化のための場所として作用することがある。細胞増殖は、クローン増殖を推進するべく作用する。さらなる遺伝的損傷が起これば、イニシエートされた細胞は最終的に、細胞周期調節遺伝子に対する充分な遺伝的損傷を蓄積して腫瘍細胞を形成し、結果として腫瘍細胞塊、または新生物を生じることが可能である。
【0005】
新生物は一般に、良性または悪性として分類される。良性腫瘍は局所的に増殖し、元の組織のものに似た分化した細胞から成っており、腫瘍の縁は充分に明確に示されたままであり、通常は被包性である。悪性腫瘍(古典的には「癌(cancer)」と呼ばれた)は、被包性ではなく、その縁は不明確であり、細胞もまた元の細胞より充分に分化しておらず、増大した分裂活性を示す。
【0006】
局所的、慢性的な刺激または炎症もまた、細胞を異常に分裂させ、結果として異常な成長または細胞塊、あるいは腫瘍を生じる可能性がある。明確に定義された、慢性的な炎症を起こさせる刺激に対する、反応性の細胞増殖応答は化生(metaplasias)として記述されている。異形成(dysplasias)においては、慢性の刺激または炎症に対する応答において、皮膚、食道、および子宮のような組織における扁平上皮のパターンの組織崩壊がある。
【0007】
良性および悪性の新生物、異形成、および化生において、異常に増殖している細胞の破壊のための化学療法剤として、数多くの化合物が市販されている。特定の薬剤に対する所与の腫瘍関連疾患タイプの応答性は、各々の疾患タイプが異なること、および異なる治療に対して応答してもよいことから、予測することは難しい。一般に、癌および他の細胞増殖性疾患に対する臨床治療には、各々の症状について異なる化学療法の選択肢がある。
【0008】
一つの重要な化学療法剤の例は、白金を主成分とする化合物、シスプラチン(cis-ジアミンジクロロ白金(II);cis-Cl(NH)Pt)である。シスプラチンは四角形の平面的な形状をしており、二つの塩化物基(および同様に、二つのアミン基の各々)は隣り合っているか、または互いにシスである。
【0009】
シスプラチンは、1970年代後期に初めてヒトへの使用が承認され、生殖細胞、進行性膀胱癌、副腎皮質癌、乳、精巣、および卵巣癌、頭頸部癌、および肺癌を含む様々な腫瘍の治療用に処方されている。
【0010】
シスプラチンは、DNAと結合することおよびその修復機構を妨害することにより、増殖中または癌性の細胞を抑えるのに効果があり、最終的に細胞死をもたらす。細胞のプロセスにおける第一段階は、水分子がシスプラチンの塩化物イオンの一つを置換えることであると考えられる。結果として生じた中間構造物は、次にDNAヌクレオチド上の一つの窒素に結合することが可能である。それに続き、第二の塩化物も別の水分子によって置換えられ、次いで第二のヌクレオチドに結合する。シスプラチンのDNAとの結合研究は、同じ鎖上の隣接する二つのグアニンの窒素7への嗜好性を示している。それはまた、より少ない程度に、アデニンにも、および鎖を超えて結合する。
【0011】
DNAに対するシスプラチンの結合は、鎖内架橋の発生およびDNA付加物の形成を引き起こす。付加物またはシスプラチン-DNA複合体は、DNA修復タンパク質の注意を喚起し、それは不可逆的に結合することとなる。シスプラチンの結合により結果として生じるDNAの形状に対する歪みは、有効な修復を妨害し、それにより細胞死が起こる。
【0012】
他の周知の化学療法剤は、カルボプラチン、パクリタキセルのようなタキサン類、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、メトトレキセート、およびテトラサイクリンを含む。
【0013】
癌化学療法を受けている被験者はしばしば、有効成分の毒性による重い、衰弱させる副作用と戦わねばならない。化学療法の一般的な副作用は悪心嘔吐である。他の副作用は、骨髄機能の一時的な減少、手または足のしびれおよび刺痛、聴覚の変化、一時的な味覚の変化、食欲不振、下痢、およびアレルギー反応を含んでなる。
【0014】
化学療法養生法はさらに、種々の癌または他の腫瘍タイプに対して現在使用可能な化学療法剤の、時には不充分な有効性によってさらに複雑化されている。たとえば、ある癌細胞は、治療薬に対して天然の耐性を発揮してきた。さらに、いくつかの治療または予防薬は、臨床的使用の間に、異常に分裂している細胞に副作用を及ぼすか、または耐性の発生を誘導して、ある種の腫瘍タイプが薬剤耐性を増大するようになる状況をもたらすことが可能である。多薬剤耐性は、したがって、長期間の首尾良い腫瘍化学療法についての主要な問題のままである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
それゆえ、癌および関連疾患を含めた細胞の、化学感受性、変化した成長または増殖に対する、新規の、改良された、よりよいおよび/または代替えの薬剤組成物、作用剤、および治療養生法を同定することが強く必要とされる。既知の作用剤の、望ましくない副作用に対処する化学療法剤が、さらに必要とされる。様々なタイプの癌と戦うための、および、既存の化学療法剤および治療養生法への増殖性細胞の耐性の問題に対処するための処置に関し、新たな選択肢を提供するための、医師にとって利用可能な種々の治療法もまた必要である。他の化学療法薬と相乗的に作用する作用剤が非常に求められている。相乗作用剤によって得ることが可能ないかなる薬効も、因習的な化学療法薬の量および持続時間を低減すること、または化学選択性を改善または回復させ、それによってより安全な投与および、うまく行けばより少ないかまたはより重くない副作用を提供するようにする。
【0016】
癌および酸化ストレスに関連した病気の治療、回復、または予防のための、薬剤組成物および方法を提供することは、本発明の優先される目的である。本発明はまた、治療にむけて新生物細胞をターゲティングするための、薬剤組成物および方法を提供しようとしており、その組成物および方法は、ターゲティング機能という面において改良された細胞活性と、毒物の改良されたデリバリー、および/または化学感受性の改良または回復を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願は今、新規な治療養生法および、化学療法組成物および化合物について記述する。
本発明は、抗癌剤、同一のおよび新規なイソフラボノイド-薬物複合体を含めた相乗組成物の、化学選択性または活性を回復することまたは対処することにおける、イソフラボノイド化合物の全く予期されなかった活性に基づいている。
【0018】
本発明の一つの態様によれば、以下に説明される式(I)のイソフラボノイド化合物と、癌細胞または腫瘍を接触させることによる、前記細胞または腫瘍の化学療法剤に対する感受性を増大する方法が提供される。一般式(I)の化合物は式、
【0019】
【化13】

【0020】
によって表されるイソフラボノイド化合物であり、
式中、R、R、およびZは独立して水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、OS(O)R10、CHO、C(O)R10、COOH、CO10、CONR、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルコキシアリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ、またはハロであるか、あるいは
は先に定義された通りであり、RおよびZは、それらが結合していた炭素原子とともに取られて、
【0021】
【化14】

【0022】
から選ばれる5員環を形成するか、または、
は先に定義された通りであり、RおよびZは、それらが結合していた炭素原子とともに取られて、
【0023】
【化15】

【0024】
から選ばれる5員環を形成し、かつ、
WはRであり、Aは水素、ヒドロキシ、NR、またはチオであり、Bは、
【0025】
【化16】

【0026】
から選ばれるか、または、
WはRであり、AおよびBは、それらが結合していた炭素原子とともに取られて、
【0027】
【化17】

【0028】
から選ばれる6員環を形成するか、または、
それらが結合していた基とともに取られたW、A、およびBは、
【0029】
【化18】

【0030】
から選ばれるか、または、
それらが結合していた基とともに取られたWおよびAは、
【0031】
【化19】

【0032】
から選ばれ、かつBは、
【0033】
【化20】

【0034】
から選ばれ、
式中、Rは水素、アルキル,アリールアルキル、アルケニル、アリール、アミノ酸、C(O)R11であり、R11は水素,アルキル、アリール、アリールアルキル、またはアミノ酸であるか、あるいはCO12であり、R12は水素、アルキル、ハロアルキル、アリール、またはアリールアルキルであり、
は水素、アルキル、またはアリールであるか、または、
それらが結合していた窒素とともに取られたRおよびRは、ピロリジニルまたはピペリジニルを含み、
は水素か、R11が先に定義された通りであるC(O)R11か、またはR12が先に定義された通りであるCO12であり、
は水素、ヒドロキシ、アルキル、アリール、アミノ、チオ、NR、R11が先に定義された通りであるC(O)R11、R12が先に定義された通りであるCO12、またはCONRであり、
は水素か、R11が先に定義された通りであるC(O)R11か、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、または各R13が独立して水素か、アルキルか、またはアリールであるSi(R13であり、
は水素、ヒドロキシ、アルコキシ、またはアルキルであり、
はアルキル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル、R11が先に定義された通りであるC(O)R11か、またはR13が先に定義された通りであるSi(R13であり、
10は水素、アルキル、ハロアルキル、アミノ、アリール、アリールアルキル、アミノ酸、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり、
線画は単結合または二重結合を表し、
Tは独立して水素、アルキル、またはアリールであり、
XはO、NR、またはSであり、かつ、
Yは、
【0035】
【化21】

【0036】
であり、
式中、R14、R15、およびR16は独立して水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、OS(O)R10、CHO、C(O)R10、COOH、CO10、CONR、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ、またはハロであるか、あるいはR14、R15、およびR16の任意の二つは融合しあって環状アルキル、芳香族、または複素芳香族の構造、および製薬上許容されるそれらの塩を形成する。
【発明の効果】
【0037】
本発明者らは、式(I)の化合物、および特に式(VIa)のイソフラブ-3-エン化合物と、既知の化学療法剤との間に、驚くべき相乗作用を発見した。本発明のイソフラボノイド化合物は、先には耐性であった癌細胞系に対し、化学感受性を回復または少なくとも改善することが発見されている。特に、デヒドロエクオル(12、DHE)は、様々な確立された癌細胞系,特に卵巣癌細胞系Cp70およびA27A0について、シスプラチン、カルボプラチン、およびパクリタキセルと相乗的な相互作用を示すことが見いだされている。相乗作用はまた、前立腺癌細胞系DU145およびPC3、および膵臓細胞系HPACについても観察された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
好ましい態様においては、癌細胞または腫瘍は、化学療法剤による治療に先立ち、式(I)の化合物で前治療される。
【0039】
もう一つの態様においては、式(I)の化合物は化学療法剤と同時に投与される。
【0040】
さらなる態様においては、式(I)の化合物は化学療法剤に対する耐性が、癌細胞および腫瘍において観察された後、特に多薬剤耐性が認められた後に投与される。
【0041】
さらなる態様においては、化学療法剤に対する癌細胞または腫瘍の感度は、回復または再生される。
【0042】
もう一つの態様によれば、治療上有効な量の式(I)の化合物と、化学療法剤とを被験者に投与することを含んでなる、併用療法が提供される。
【0043】
併用療法は、良性の前立腺肥大;乳癌;子宮癌;卵巣癌;精巣癌;大腸癌;子宮体癌;前立腺癌;子宮癌;および癌を含めた酸化ストレス関連疾患、心筋梗塞、関節炎、日光皮膚障害、または白内障(便宜上、以降「治療指標」と呼ぶ)を含めた、細胞増殖および癌に対する治療、予防、回復、防御、および/または防止のためのものである。
【0044】
好ましい態様においては、式(I)の化合物の投与は、化学療法剤の投与に先行する。別法として、投与は同時である。さらなる態様においては、併用療法は、癌細胞および腫瘍による化学療法剤に対する耐性の観察の後に続く。
【0045】
好ましい態様においては、対象となる細胞成長は増殖であり、対象となる下方制御は増殖中の細胞を殺すことである。治療されるべき症状は、好ましくは癌であり、さらに好ましくは乳癌、前立腺癌、精巣癌、卵巣癌、子宮癌、および/または結腸直腸癌から選ばれる転移癌であり、さらに好ましくは卵巣癌、前立腺癌、または膵臓癌である。
【0046】
本発明のさらなる態様においては、本発明の上述の方法のための薬物の製造法、およびそのために有用な薬剤が提供される。
【0047】
本願はまた、白金を主成分とする薬剤を含んでなる、新規な治療用組成物および複合体を記述する。本発明は、新規な白金-イソフラボノイド複合体の、および、白金を主成分とする化学療法薬と相乗的な組成物または複合体を形成する式(I)のイソフラボノイド化合物の、全く予期されなかった生物活性に基づいている。
【0048】
前記組成物および白金-イソフラボノイド複合体は、細胞に対する毒性シグナルのデリバリーのための重要な標的剤である。本発明の組成物および方法は、被験者における症状の治療に向けられており、その症状は、細胞の好ましくない、有害な、またはさもなければ望ましくない成長または細胞増殖によって特徴づけられる。
【0049】
本発明の一つの態様によれば、一般式(II)によって記述される白金-イソフラボノイド複合体および、それらの類似体が提供され、
【0050】
【化22】

【0051】
式中、R、R、R、およびRは独立してハロ、ヒドロキシ、XR、アルコキシ、OC(O)R、OS(O)R、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり、
XはO、NR、またはSであり、さらに、
は水素、アルキル、アリールアルキル、アルケニル、アリール、またはアミノ酸であって、
、R、R、およびRの少なくとも一つ、および好ましくはRのみがXRであり、Rは前文に示された一般式(I)によって表されるイソフラボノイド化合物であるか、またはイソフラボノイド化合物(I)の誘導体か、ラジカルか、もしくはイオンであり、任意の一以上のヘテロ原子Xか、またはRの一部として定義されたヘテロ原子のラジカルを介して、あるいは別法としてイソフラボノイド化合物(I)上の二重結合によって白金に配位しており、かつ、
がXRであるとき、R、R、および/またはRは一緒に、一般式(B)および(T)の二座配位子または三座配位子の一部を各々形成してよく、
【0052】
【化23】

【0053】
式中、LはN、O、およびSから選ばれる配位原子を表し、
nは0から8までであり、さらに、
各Rは独立して上記のように定義されるか、または一緒に環状アルキル、芳香族、または複素芳香族の構造の一部を形成してもよく、
その白金-イソフラボノイド複合体は、製薬上許容されるそれらの塩を含んでなる。
【0054】
驚いたことに、本発明者らにより、一般式(II)の白金-イソフラボノイド複合体が、前文において特に言及された治療指標の、治療、予防、回復、防御、および/または防止において、特別の有用性および有効性をもつこともまた発見されている。
【0055】
したがって、本発明のもう一つの態様によれば、上記の治療指標の治療、予防、回復、防御、および/または防止のための方法が提供され、該方法は、治療上有効な量の、前文に定義されたような式(II)の一以上の白金-イソフラボノイド複合体を被験者に投与することを含む。
【0056】
本発明のもう一つの態様は、哺乳類における、細胞の好ましくない、有害な、またはさもなければ望ましくない成長によって特徴づけられる症状を治療するための方法を提供し、前記方法は、有効量の式(II)の白金-イソフラボノイド複合体を、前記細胞の成長を下方制御するべく充分な時間および条件において、前記哺乳類に投与することを含んでなる。
【0057】
好ましい態様においては、対象細胞成長は増殖であり、対象となる下方制御は増殖中の細胞を殺すことである。治療されるべき症状は、好ましくは癌であり、さらに好ましくは乳癌、前立腺癌、精巣癌、卵巣癌、子宮癌、および/または結腸直腸癌から選ばれる転移癌であり、さらに好ましくは卵巣癌、前立腺癌、または膵臓癌である。
【0058】
本発明のもう一つの態様は、細胞の成長を下方制御する方法を提供し、前記方法は細胞を、有効量の式(II)の白金-イソフラボノイド複合体と接触させること含んでなる。
【0059】
好ましい態様においては、対象となる細胞成長は増殖であり、対象となる下方制御は増殖中の細胞を殺すことである。
【0060】
本発明のもう一つの態様は、一以上の治療指標の、治療、回復、防御、予防、および/または防止のための薬物の製造のための、式(II)の白金-イソフラボノイド複合体の利用法を提供する。
【0061】
本発明のもう一つの態様は、一以上の治療指標の、治療、回復、防御、予防、および/または防止における、式(II)の一以上の白金-イソフラボノイド複合体の利用法を提供する。
【0062】
本発明のもう一つの態様は、治療指標の、治療、予防、回復、防御、および/または治療のための、式(II)の一以上の白金-イソフラボノイド複合体を単独で、または一以上の担体または賦形剤とともに含んでなる薬剤を提供する。
【0063】
本発明のもう一つの態様は、式(II)の一以上の白金-イソフラボノイド複合体を、一以上の薬物担体および/または賦形剤とともに含んでなる治療用組成物を提供する。
【0064】
本発明のもう一つの態様は、式(II)の一以上の白金-イソフラボノイド複合体を含有する、飲料または食材を提供する。
【0065】
本発明はまた、一般式(IIa)、
【0066】
【化24】

【0067】
[式中、R、R、R、およびRは独立してハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、OC(O)R、OS(O)R、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり、
XはO、NR、またはSであり、かつ、
は水素、アルキル、アリールアルキル、アルケニル、アリール、またはアミノ酸である
]の白金複合体、
または製薬上許容されるそれらの塩、
および前文に定義されたような一般式(I)のイソフラボノイド化合物、を含んでなる組成物も提供する。
【0068】
式(IIa)の白金複合体および式(I)のイソフラボノイド化合物を含んでなるこれらの組成物は、前文に示された治療指標の治療、予防、回復、防御、および/または防止において、特別の有用性、有効性、および相乗作用をもつことが分かる。
【0069】
したがって、本発明のもう一つの態様によれば、式(I)のイソフラボノイド化合物とともに式(IIa)の白金複合体を含んでなる治療上有効な量の組成物を被験者に投与することを含む、治療指標の治療、予防、回復、防御、および/または防止のための方法が提供される。
【0070】
本発明のもう一つの態様は、治療指標の治療、回復、防御、予防、および/または防止のための薬物の製造における、式(IIa)の白金複合体と、式(I)のイソフラボノイド化合物との併用を提供する。
【0071】
本発明のもう一つの態様は、治療指標の治療、回復、防御、予防、および/または防止における、式(IIa)の白金複合体および、式(I)のイソフラボノイド化合物の利用法を提供する。
【0072】
本発明のもう一つの態様は、式(IIa)の白金複合体および、式(I)のイソフラボノイド化合物を、単独で、または一以上の担体または賦形剤とともに含んでなるキットを提供する。
【0073】
本発明のもう一つの態様は、治療指標の治療、予防、回復、防御、および/または治療のための、式(IIa)の白金複合体および、式(I)のイソフラボノイド化合物を、単独で、または一以上の担体または賦形剤とともに含んでなる作用剤を提供する。
【0074】
本明細書および以下のクレイムを通して、本文が他に必要としない限り、用語「含んでなる(comprise)」、または「含んでなる(comprises)」または「含んでなる(comprising)」のような言い回しは、述べられたインテジャー(integer)またはステップ、あるいはインテジャーまたはステップ群を含むことを意味するが、しかし他のインテジャーまたはステップ、あるいはインテジャーまたはステップ群を除外しないことが理解されよう。
【0075】
本文において使用されるような用語「イソフラボノイド」、「イソフラボノイド」および「イソフラボン」は、1,2-ジフェニルプロパン系を主成分とするピラン環から張り出たフェニル基を有する、環縮合したベンゾピラン分子を広く含むものと理解される。したがって、一般にイソフラボン、イソフラベン、イソフラバン、イソフラバノン、イソフラバノールなどと呼ばれる化合物の部類は、総称してイソフラボン、イソフラボン誘導体、またはイソフラボノイド化合物と呼ばれる。
【0076】
用語「アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチルなどといった、直鎖および分枝鎖双方のアルキル基を意味するものと理解される。アルキル基は1〜10個の炭素原子、好ましくは1から6個の炭素原子、さらに好ましくはメチル、エチル、プロピル、またはイソプロピルを有する。アルキル基は、一以上のフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、C-C-アルコキシカルボニル、C-C-アルキルアミノ-カルボニル、ジ(C-C-アルキル)-アミノ-カルボニル、ヒドロキシル、C-C-アルコキシ、ホルミルオキシ、C-C-アルキル-カルボニルオキシ、C-C-アルキルチオ、C-C-シクロアルキル、またはフェニルにより任意に置換されてよい。
【0077】
用語「アリール」は、フェニルおよびナフチルを含むものと理解され、一以上のC-C-アルキル、ヒドロキシ、C-C-アルコキシ、カルボニル、C-C-アルコキシカルボニル、C-C-アルキルカルボニルオキシ、またはハロにより任意に置換されてよい。
【0078】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを、好ましくはフルオロおよびクロロを、さらに好ましくはフルオロを含むものと理解される。たとえば「ハロアルキル」について言及することは、モノハロゲン化、ジハロゲン化、およびペルハロゲン化アルキル基までを含むであろう。好ましいハロアルキル基は、トリフルオロメチルおよびペンタフルオロエチルである。
【0079】
用語「製薬上許容される塩」は、帯電しており、たとえば塩における対カチオン、または対アニオンとして、薬物とともに投与されることが可能な、有機または無機成分を指す。製薬上許容されるカチオンは、当業者には周知であり、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、および第4級アミンを含むがそれに制限されない。製薬上許容されるアニオンは、当業者には周知であり、塩化物イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、重炭酸イオン、および炭酸イオンを含むがそれに制限されない。
【0080】
用語「製薬上許容される誘導体」または「プロドラッグ」は、活性化合物の誘導体を指し、受容者への投与に際し、直接または間接的に、親化合物または代謝産物を供給することができるもの、またはそれ自体が活性を示すものである。プロドラッグは本発明の範囲内に含まれる。
【0081】
本文において用いられるように、用語「処理」、「予防」または「防止」、「回復」などは、それらの最も広いコンテキストにおいて考えられるべきである。特に、用語「治療」は、動物が全快まで治療されることを必ずしも意味しない。したがって、「治療」は症状または特定の症状の重さの改善か、または特定の症状の発生のリスクを防止するかまたは別の方法で低減することを含む。
【0082】
式(I)の好ましいイソフラボノイド化合物は、一般式(III)〜(IX)から選ばれ、好ましくは一般式(IV)〜(IX)から選ばれる:
【0083】
【化25】

【0084】
式中、R、R、R、R6、14、R15、W、およびZは前文に定義された通りであり、
好ましくは、
、R、R14、R15、W、およびZは独立して水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、C(O)R10、COOH、CO10、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ、またはハロであり、
は水素、R11が水素、アルキル、アリール、またはアミノ酸であるC(O)R11、またはR12が水素、アルキル、またはアリールであるCO12であり、
は水素、ヒドロキシ、アルキル、アリール、R11が先に定義された通りであるCOR11、またはR12が先に定義された通りであるCO12であり、
はアルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、またはR11が先に定義された通りであるC(O)R11であり、かつ、
10は水素、アルキル、アミノ、アリール、アミノ酸、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり、
より好ましくは、
およびR14は、独立してヒドロキシ、OR、OC(O)R10、またはハロであり、
、R15、W、およびZは独立して水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、C(O)R10、COOH、CO10、アルキル、ハロアルキル、またはハロであり、
は、水素、またはR11が水素もしくはアルキルであるC(O)R11、またはR12が水素もしくはアルキルであるCO12であり、
は水素またはヒドロキシであり、
はアルキル、アリールアルキル、またはR11が先に定義された通りであるC(O)R11であり、かつ、
10は水素またはアルキルであり、
さらに好ましくは、
およびR14は、独立してヒドロキシ、メトキシ、ベンジルオキシ、アセチルオキシ、またはクロロであり、
、R15、W、およびZは独立して水素、ヒドロキシ、メトキシ、ベンジルオキシ、アセチルオキシ、メチル、トリフルオロメチル、またはクロロであり、
は、水素、またはR12が水素もしくはメチルであるCO12であり、かつ、
は水素である。
【0085】
特に好ましい式(I)のイソフラボノイド化合物は、以下から選ばれる:
【0086】
【化26】

【0087】
【化27】

【0088】
【化28】

【0089】
さらなる態様においては、好ましいイソフラボノイド化合物はイソフラブ-3-エンおよび一般式(VI)のイソフラバン化合物であり、さらに好ましくは一般式(VIa)の3-エン化合物である:
【0090】
【化29】

【0091】
式中、R、R、R、R14、R15、W、およびZは前文に定義された通りであり;
好ましくは、
、R、R14、R15、W、およびZは独立して水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、C(O)R10、COOH、CO10、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ、またはハロであり、
は水素、ヒドロキシ、アルキル、アリール、R11が先に定義された通りであるCOR11、またはR12が先に定義された通りであるCO12であり、
はアルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、またはR11が先に定義された通りであるC(O)R11であり、かつ、
10は水素、アルキル、アミノ、アリール、アミノ酸、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり、
より好ましくは、
は水素、OR、OC(O)R10、またはハロであり、
、R14、R15、W、およびZは独立して水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、C(O)R10、COOH、CO10、アルキル、ハロアルキル、またはハロであり、
は水素であり、
はアルキル、アリールアルキル、またはR11が先に定義された通りであるC(O)R11であり、かつ、
10は水素またはアルキルであり、
さらに好ましくは、
はヒドロキシ、メトキシ、ベンジルオキシ、アセチルオキシ、またはクロロであり、
、R14、R15、W、およびZは独立して水素、ヒドロキシ、メトキシ、ベンジルオキシ、アセチルオキシ、メチル、トリフルオロメチル、またはクロロであり、かつ、
は水素であり、
製薬上許容されるそれらの塩および誘導体を含む。
【0092】
本発明の最も好ましい態様においては、イソフラボノイド化合物は化合物12、デヒドロエクオル(dehydroequol)である。デヒドロエクオルについては、記載および、以下の実施例、および添付の図面においてそのように特別に言及されているが、このことは、本文において提供された発明の開示に対し、必ずしも制限するものとして理解されるべきではない。
【0093】
化学療法剤は一般に、DNA相互作用剤、代謝拮抗剤、チューブリン相互作用剤、ホルモン作用剤、アスパラギナーゼまたはヒドロキシウレアのような他の作用剤として分類される。化学療法剤の各群は、活性のタイプまたは化合物により、さらに分類されることが可能である。本発明の式(I)のイソフラボノイド化合物、または本発明のそれらの塩と併用して用いられる化学療法剤は、これらの任意の群から選ばれてよいが、それらに制限されない。化学療法剤およびそれらの投与法の詳細な議論については、参考文献として本文に取入れられている、ドールら(Dorr et al)著、「キャンサー・ケモセラピー・ハンドブック(Cancer Chemotherapy Handbook)」第2版、p.15-34、アップルトン&ラング(Appleton & Lang)(コネティカット州、1994年)参照のこと。
【0094】
DNA相互作用剤は、アルキル化剤、たとえば、シスプラチン、シクロホスファミド、アルトレタミン(altretamine);ブレオマイシンのようなDNA鎖破壊剤;挿入性トポイソメラーゼII阻害剤、たとえば、ダクチノマシンおよびドキソルビシン;エトポシドおよびテニポシドのような非挿入性トポイソメラーゼII阻害剤;およびDNA副溝結合剤、たとえばプリカマイジン(plicamydin)を含む。
【0095】
アルキル化剤は、細胞DNA、RNA、またはタンパク質分子と、あるいはより小さいアミノ酸、グルタチオン、またはより小さい化学物質と、共有結合による化学的な付加物を形成する。一般にアルキル化剤は、核酸、タンパク質、アミノ酸、またはグルタチオンにおけるアミノ基、カルボキシル基、リン酸基、またはスルフヒドリル基のような、細胞成分の求核性原子と反応する。癌療法におけるこれらのアルキル化剤の機構および役割は、充分には分かっていない。
【0096】
典型的なアルキル化剤は、クロランブシル、シクロホスファミド、イソファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタードのようなナイトロジェンマスタード;チオテパのようなアジリジン;ブスルファンのようなメタンスルホネートエステル;カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシンのようなニトロソウレア;シスプラチン、カルボプラチンのような白金錯体;マイトマイシン、およびプロカルバジン、ダカルバジン、およびアルトレタミンのような生体還元性のアルキル化剤を含むが、それに制限されない。
【0097】
DNA鎖破壊剤は、たとえばブレオマイシンを含む。
【0098】
DNAトポイソメラーゼII阻害剤は、以下の、アムサクリン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドクソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、およびミトキサントロンといった挿入剤;たとえば、エトポシドおよびテニポシドのような非挿入剤を含む。
【0099】
DNA副溝結合剤は、たとえばプリカマイシンである。
【0100】
代謝拮抗剤は、二つの主要な機構のうちの一つにより、核酸の産生を妨害する。ある薬物は、DNA合成の直接の前駆体であるデオキシリボヌクレオシド三リン酸の産生を阻害し、それによりDNA複製を阻害する。ある化合物はプリンまたはピリミジンの類似体であり、ヌクレオチドの同化経路に取込まれる。これら類似体は次にDNAまたはRNAへ、正常な対応物の代わりに置換される。
【0101】
本文において有用な代謝拮抗剤は、メトトレキセートおよびトリメトレキセートのような葉酸拮抗物質;フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、CB3717、アザシチジン、シタラビン、およびフロキシウリジンといったピリミジン拮抗薬;メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビン、ペントスタチンを含むプリン拮抗薬;およびヒドロキシウレアを含むリボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤を含むが、それに制限されない。
【0102】
チューブリン相互作用剤は、重合して細胞の微小管を形成するタンパク質、チューブリン上の特別の部位に結合することによって作用する。微小管は重要な細胞構造単位である。このタンパク質に相互作用剤が結合すると、細胞は微小管を形成することができない。チューブリン相互作用剤は、たとえば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン、両アルカロイドおよび、パクリタキセル(タキソール(Taxol))を含む。
【0103】
ホルモン剤もまた、癌および腫瘍の治療において有用である。それらはホルモン感受性腫瘍において使用され、通常は天然の供給源から由来する。ホルモン剤は、エストロゲン、結合型エストロゲンおよびエチニルエストラジオールおよびジエチルスチルベステロール、クロロトリアニセンおよびイデンエストロール(idenestrol);カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン、およびメゲストロールのようなプロゲステロン;およびテストステロン、プロピオン酸テストステロンといったアンドロゲン;フルオキシメステロン、およびメチルテストステロンを含むが、それに制限されない。
【0104】
副腎皮質ホルモンは、天然の副腎コルチゾールまたはハイドロコルチゾンから由来する。それらが用いられるのは、その抗炎症性の利益、ならびにいくつかの有糸分裂阻害およびDNA合成停止能の故である。これらの化合物は、プレドニゾン、デキサメサゾン、メチルプレドニソロン、およびプレドニソロンを含むが、それに制限されない。
【0105】
黄体形成ホルモン放出ホルモン剤、またはゴナドトロピン放出ホルモン拮抗薬は、主として前立腺癌の治療使用される。これらは、酢酸ロイプロリドおよび酢酸ゴセレリンを含む。それらは、精巣におけるステロイドの生合成を妨げる。
【0106】
抗ホルモン抗原は、たとえば、タモキシフェンのような抗エストロゲン剤、フルタミドのような抗アンドロゲン剤;およびミトタンおよびアミノグルテチミドといった抗副腎薬を含む。
【0107】
さらなる作用剤は以下を含む:ヒドロキシウレアは、主として酵素、リボヌクレオチドレダクターゼの阻害を通して作用するようであり、アスパラギナーゼは、アスパラギンを非機能性のアスパラギン酸に転換する酵素であり、それにより腫瘍におけるタンパク質合成を阻止する。
【0108】
本件の発明における使用のために好ましい化学療法剤は、シスプラチン、カルボプラチン、タキソール(パクリタキセル)、フルオロウラシル、フラックスウリジン(fluxuridine)、シクロホスファミド、イホスファミド、ヘキサメチルメラミン、エストラムスチン、マイトマイシン、およびドセタキセルである。
【0109】
式(I)の化合物はまた、化学療法活性を示し、この点については、デヒドロエクオル、化合物12が特に参照されることが可能である。
【0110】
本発明の好ましい白金の二座配位および三座配位子は、この技術において一般に周知のものを含む。たとえば、適当な二座配位子は、エチレン-1,2-ジアミンおよび1,10-フェナトラリン(phenathraline)、およびこの技術において周知の他のリガンドを含む。
【0111】
好ましい白金複合体は、ハロおよびアミノ置換され、より好ましくはクロロおよびアミン置換され、さらに好ましくはcis-ジクロロジアミノ置換される。好ましい白金-イソフラボノイド複合体は、ハロおよびアミノ置換され、さらに好ましくはcis-ジクロロアミノ置換またはcis-ジアミノクロロ置換される。
【0112】
本発明の化合物は、エストロゲン作用、アンドロゲン作用、血管抑制性(vasolidatory)および痙攣性作用、炎症性作用、および酸化作用に関連するか、またはその結果である疾病の治療において特別の適用がある。
【0113】
本発明による治療的処置において必要とされる式(I)、(II)、または(IIa)の化合物の量は、特別の適用、用いる特別の化合物の性質、治療される症状、投与の様式、および被験者の状態を含む因子の数に依存するであろう。式IまたはIaおよびIIの化合物は、通常実施されている方式および量で投与されてよい。たとえば、グッドマン&ギルマン(Goodman & Gilman)著、「ザ・ファルマコロジカル・ベイシズ・オブ・セラピューティクス(The Pharmacological Basis of Therapeutics)」1299(第7版、1985年)を参照。利用される特定の用量は、治療される症状、患者の状態、投与経路、および前文に示された他の周知の因子に依存するであろう。一般に、被験者あたりの一日量は、0.1mg〜10g;典型的には0.5mgから1gまで:好ましくは50mgから200mgまでの範囲内にあってよい。重要なことには、一般式(I)のイソフラボノイド複合体と化学療法剤との相乗的な関係により、たとえばシスプラチン、パクリタキセル、およびカルボプラチンといった比較的毒性の薬物の用量を著しく減少させることができる。
【0114】
他の好ましい用量および量は、実施例および添付の図面において示されている。
【0115】
本文において記述された治療指標の治療のための薬剤組成物(便宜上、以後「活性化合物」と呼ぶ)の製造物は、典型的には一以上の製薬上、または獣医学上許容される担体および/または、この技術において周知であるような賦形剤と混合される。
【0116】
担体は、もちろん、製剤における任意の他の成分と適合性であるという意味で許容されるべきであり、また被験者に対し有害であってはならない。担体または賦形剤は、固体または液体、あるいは双方でもよく、好ましくは単位用量としての化合物、たとえば、錠剤に製剤され、それは重量で0.5%から59%までの活性化合物、または重量で100%までの活性化合物を含んでよい。一以上の活性化合物が本発明の製剤に取入れられてよく、それは、本質的には成分を、任意に一以上の補助的成分を含めて混合することからなる、任意の周知の調剤技術によって調製されてよい。
【0117】
本発明の製剤は、経口、直腸内、眼、バッカル(たとえば,舌下)、非経口(たとえば、皮下、筋肉内、皮内、または静脈内)、および経皮投与に適したものを含むが、任意の所与の症例において最も適した経路は、治療されるべき症状の性質および感度、および使用される特定の活性化合物の性質に依存するであろう。
【0118】
経口投与に適した製剤は、各々があらかじめ決められた量の活性化合物を含有している、カプセル、小袋、トローチ、または錠剤といった個別の単位において;粉末または顆粒として、水性または非水性の液体中の溶液または懸濁液として;または水中油型あるいは油中水型の乳剤として提供されてよい。このような製剤は、活性化合物と適当な担体とを(前文において言及したように、一以上の補助的成分を含んでよい)、会合にもってゆく段階を含む。一般に本発明の製剤は、活性成分を、液体または超微粒子状の固形担体、あるいは双方とともに、均一にかつ密接に混合することによって調製され、その後必要であれば、結果として得られた混合物を、単位用量を形成するように形づけることを含む。たとえば錠剤は、活性化合物を任意に一以上の補助的成分とともに含有している粉末または顆粒を、圧縮または成形することにより調製されてよい。圧縮された錠剤は、任意に結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、および/または表面活性/分散剤と混合された、粉末または顆粒のような流通性の化合物を、適当な機械の中で圧縮することにより調製されてよい。成形された錠剤は、不活性な液体結合剤を用いて加湿された粉末状化合物を、適当な機械の中で成形することによって製造されてよい。
【0119】
バッカル(舌下)投与に適した製剤は、通常はショ糖、アラビアゴムまたはトラガカントである風味づけされた基剤中に、活性化合物を含んでなるトローチ;および、ゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアラビアゴムといった不活性な基剤中に化合物を含んでなるパスチルを含む。
【0120】
非経口投与の適した本発明の組成物は、活性化合物の無菌の水性標品を便利に含んでなり、この標品は好ましくは目指す受容者の血液と等張であることである。これらの標品は、好ましくは静脈内へ投与されるが、投与はまた皮下、筋肉内、または皮内注射によって実行されてもよい。そのような標品は、化合物を水またはグリシン緩衝液と混合すること、および結果として得られた溶液を無菌および血液と等張にすることによって便利に調製されてよい。本発明による注射可能な製剤は、一般に0.1%から60%w/vの活性化合物を含有しており、0.1ml/分/kgの、または適当な速度で投与される。非経口投与は、本発明の化合物にとり、好ましい投与経路である。
【0121】
直腸内投与に適した製剤は、好ましくは単位用量の坐薬として提供される。これらは、活性化合物を一以上の通常の固形担体、たとえば、カカオバターとともに混合すること、および次に結果として得られる混合物を形づけることにより調製されてよい。
【0122】
皮膚への局所投与にて記した製剤または組成物は、好ましくは軟膏、クリーム、ローション、ペースト,ジェル、スプレイ、エアロゾル、またはオイルの形状をとる。使用されてよい担体は、ワセリン(Vaseline)、ラノリン,ポリエチレングリコール、アルコール、およびそれらの二以上の組合せを含む。活性化合物は、一般に0.1%から0.5%w/wの濃度において、たとえば、0.5%から2%w/wで存在する。そのような組成物の例は、化粧用のスキンクリームを含む。
【0123】
経皮投与に適した製剤は、受容者の表皮と長時間密着したままであることに適した個別のパッチ剤として提供されてよい。そのようなパッチ剤は、任意に緩衝化された、たとえば、前記活性化合物に関して0.1M〜0.2M濃度の水溶液として、適当に活性化合物を含有する。
【0124】
経皮投与に適した製剤はまた、イオントフォレーシス(iontophoresis)(たとえば、「ファルマシューティカル・リサーチ(Pharmaceutical Research)」第3巻,第6号、p.318(1986年))によって提供されてよく、典型的には任意に緩衝化された活性化合物の水溶液の形状をとる。適当な製剤は、クエン酸塩、またはビス/トリス緩衝液(pH6)またはエタノール/水を含んでなり、0.1Mから0.2Mまでの活性成分を含有する。
【0125】
活性化合物は、添加されるか、混入されるか、コートされるか、組合わされるか、または別の方法で食品製品に添加されるような、食品製品の形状で提供されてよい。用語、食品製品は、その最大限の広義において用いられ、乳製品を含む飲料のような液体製剤および、ヘルスバー、デザートなどといった他の食品を含む。本発明の化合物を含有する食品製剤は、標準的なやり方にしたがって容易に調製されることが可能である。
【0126】
治療のための方法、使用、および組成物は、ヒトおよび、ペットおよび室内飼いの動物(イヌおよびネコのような)、および家畜(ウシ、ヒツジ、ブタ、およびヤギのような)、鳥(ニワトリ,シチメンチョウ,アヒルのような)などの哺乳類を含む、他の動物への投与のためであってよい。
【0127】
活性化合物または、製薬上許容される誘導体プロドラッグ、またはそれらの塩もまた、所望の活性を損なわない他の活性材料と、あるいは抗生物質、抗真菌剤,抗炎症剤、または抗ウイルス化合物といった所望の活性を補う材料と、同時投与されることが可能である。活性作用剤は、二以上のイソフラボン、またはその誘導体を、併用または相乗混合物中に含んでなることが可能である。活性化合物また、プロブコールおよびニコチン酸のような脂質低下剤;アスピリンのような血小板凝集阻害剤;クマジンのような抗血栓剤;ベラパミル、ジルチアゼム、およびニフェジピンといったカルシウムチャンネル阻害剤;カプトプリルおよびエナラプリルのようなアンギオテンシン転換酵素(ACE)阻害剤、およびプロパノロール、テルブタロール(terbutalol)、およびラベタロールのようなβ-遮断薬とともに投与されることも可能である。化合物はまた、イブプロフェン、インドメタシン,アスピリン,フェノプロフェン,メフェナム酸、フルフェナム酸、およびスリンダクといった非ステロイド系消炎症剤と併用して投与されることも可能である。化合物はまた、コルチコステロイドとともに投与されることが可能である。
【0128】
共同投与は、同時かまたは連続的であってよい。同時投与は、同一の単位用量中か、または同時に投与される個々の、および個別の単位用量中にある化合物によって成し遂げられてよい。連続投与は、必要とされる任意の順序でよく、典型的には、特に蓄積または相乗効果が所望される場合、第二のまたは後の活性作用剤が添加されたとき、現在あるべき第一のまたは最初の活性作用剤について、継続した生理的効果を必要とするであろう。
【0129】
本発明における使用のための式(I)のイソフラボンは、当業者に容易に同定可能な,任意の数の供給源から由来してよい。好ましくは、それらは植物供給源からの濃縮物または抽出物の形状で取得される。再度、当業者は適当な植物を容易に同定することができるであろうが、しかしながら、たとえば、本発明の特別の使用のための植物は、マメ科植物を含む。さらに好ましくは、イソフラボン抽出物はヒヨコマメ、レンズマメ、ソラマメ(インゲン、ダイズ)類、ムラサキツメクサ、またはサブタレニアンクローバ種などから得られる。
【0130】
イソフラボン抽出物は、この技術において周知の任意の数の技術により調製されてよい。たとえば、適当なイソフラボン抽出物は、植物供給源からの水/有機溶媒抽出により調製されてよい。イソフラボン抽出物が、単一の植物種の任意の単一の組織からか、または二以上の異なるその組織の組合せから調製されてよいことが受入れられるであろう。同様に、抽出物は、二以上の異なる植物種からの組織の不均質混合物を含有する出発材料から調製されてよい。
【0131】
一般に、イソフラボン抽出物が植物材料から調製される場合、材料は微粉砕されるかまたは小片に切断され、部分的に微粉砕されるかまたは小片に切断されてよく、水混和性有機溶媒のような、水および有機溶媒と接触させられる。別法として、植物材料は何ら前処理なしに、水および有機溶媒と接触させられる。水対有機溶媒の比は、一般に1:10〜10:1の範囲内でよく、また、たとえば、同じ割合の水と溶媒を含んでもよく、あるいは1%から30%(v/v)の有機溶媒である。任意の有機溶媒またはそのような溶媒の混合物が使用されてよい。有機溶媒は好ましくはC2-10であり、好ましくはC1-4有機溶媒(メタノール、クロロホルム、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール、エリスライト、ブタノール、ブタンジオール、アセトニトリル、エチレングリコール、酢酸エチル、グリシドール、グリセロール ジヒドロキシアセトン、またはアセトンなどの)である。任意に、水/有機溶媒混合物は、イソフラボン配糖体をアグリコンの形状に分解する酵素を含有してもよい。混合物は激しく撹拌されてよく、乳濁液を形成するようにする。混合物の温度は、たとえば、周囲の温度から沸騰温度までの範囲でよい。
【0132】
暴露時間は1時間から数週間の間でよい。一つの便利な抽出期間は、90℃において24時間である。抽出物は未溶解の植物材料から分離されてよく、有機溶媒は蒸留、回転蒸発、または他の標準的な溶媒除去法などによって除去される。結果として得られた、水溶性および非水溶性成分を含有している抽出物は、乾燥されてイソフラボン含有抽出物を生じてよく、それは、本発明の一以上の製薬上許容される担体、賦形剤,および/または助剤とともに製剤されてよい。
【0133】
先の段落において提供された記述に従って製された抽出物は、イソフラボンをそのアグリコンの形状(本文においてはイソフラボンと呼ぶ)で含む少量の油を含有してよい。このイソフラボンに富む油は、HPLCにかけられ、イソフラボン比を調整されるか、またはもしそれが所望のイソフラボン比であれば、たとえば、シリカの存在下に乾燥されてよく、一以上の担体,賦形剤,および/または助剤とともに製剤され、イソフラボン含有抽出物を生じる。別法として、少量の油中に含有されるイソフラボンは、ヘキサン、ヘプタン、オクタンアセトンのような非水溶性有機溶媒か、または一以上のそのような溶媒の混合物の、油への添加によりさらに濃縮されてよい。一つの実例は、80%ヘキサン、20%アセトンw/wであり、油に対する高い溶解性をもつがイソフラボンに対する溶解性は低い。油は容易に有機溶媒中に分配し、濃縮されたイソフラボン含有抽出物は溶液から脱落する。回収された抽出物は、たとえば50℃〜約120℃のオーブン中で乾燥され、一以上の製薬上許容される担体,賦形剤,および/または助剤とともに製剤される。
【0134】
本発明がまた、この技術における周知の確立された合成技術により、適当なイソフラボン,機能誘導体,その等価物または類似体を製造しようと考えていることが理解されよう。たとえば、種々のイソフラボンの合成に適した方法を開示しているチャングら(Chang et al)(1944年)を参照のこと。
【0135】
国際特許出願WO98/08503およびWO00/49009(それらはその全体が参考文献として本文に取入れられている)およびそこに引用された参考文献もまた、本発明における使用のための、イソフラボン化合物の調製のための一般的な合成法を提供する。
【0136】
式(II)に描かれた白金複合体を、以下の全般的なスキーム1および2を参照して構築するため、この技術において周知の一般的な方法もまた、全般的な化学合成の当業者により用いられてよい。
【0137】
当業者に周知の、化学的な官能基の保護,脱保護,合成および他の技術は、本発明の化合物の合成における適当な場所において使用されてよい。
【0138】
【化30】

【0139】
これらの結果はさらに、以下の実施例において明らかにされる。これらの結果は、イソフラボノイド化合物と確立された抗癌剤との併用化学療法が、癌細胞および新生腫瘍の増殖に対する治療において有用であることを、標準的な化学療法のIC50を低減することによって示している。標準的な化学療法に対する、本文において記述されたイソフラボノイド化合物の、同時の、連続的な、あるいは前治療としての投与は、化学的毒物に対する癌細胞および腫瘍の感受性を増大する。
【0140】
実施例は、デヒドロエクオルによる併用化学療法の、上皮性卵巣がん細胞のための治療としての有効性を、標準的な化学療法のIC50の非常な減少によって示している。このことは、その結果、癌細胞の化学的毒物に対する感受性を増大させている。卵巣癌は癌死亡の第4位の主要原因であり、婦人科悪性腫瘍のうち最も致死的であることから、これらの試験およびトライアルの結果は重要である。最近の新規な療法は、5年生存率にいくらかの改善をもたらしているが、全体の生存には未だ何ら改善がない。卵巣癌被験者の治療の主な限界は、化学耐性および副作用である。併用化学療法およびイソフラボノイド前治療は、化学療法を受けている患者、および特に卵巣癌をもつ患者の生存率に取組んでいる。理論によって制限されることを望むことなく、イソフラボノイド誘導体のデヒドロエクオルが、アポトーシスの阻害物質を特異的に除去することにより、卵巣癌細胞におけるアポトーシスを誘導することが信じられる。
【0141】
本発明は、以下の制限しない実施例を参照して、さらに詳細に記述される。
【実施例】
【0142】
実施例1
インビトロにおけるデヒドロエクオル-シスプラチンの相乗作用
白金複合体シスプラチンおよびイソフラボノイド化合物デヒドロエクオル(化合物No.12)を含んでなる組成物の、種々の癌細胞系に対する影響は、培養皿上で推定された。細胞の生存率は、セルタイター(CellTiter)を用いて測定された。アポトーシスは、ヘキスト(Hoechst)33342色素を用いて評価された。
【0143】
設定数の癌細胞を殺すのに必要なシスプラチンの量は、シスプラチンを単独で用いた対照に比較して、イソフラボノイドとの混合の場合の方が少ないことが判明した。この実施例は、シスプラチンと本発明のイソフラボノイド化合物との間の驚くべき相乗作用を実証する。デヒドロエクオルは、卵巣(A2788、Cp70),前立腺(DU145およびPC3)、および膵臓(HPAC)癌に由来する細胞系において、シスプラチンとの強力な相乗性相互作用を示すことが判明した。以下の表1は、上記の細胞系に対するシスプラチンのIC50が、代表的な細胞をIC50レベル(2μM)より低いデヒドロエクオルとインキュベートすることによって著しく低下することを示している。
【0144】
【表1】

【0145】
実施例2
デヒドロエクオル-シスプラチン、デヒドロエクオル-カルボプラチン、およびデヒドロエクオル-パクリタキセルのインビボおよびインビトロにおける相乗作用
方法
インビトロの研究は,免疫磁気検定法を用いて腹水から単離され、確立された卵巣癌細胞系CP70およびA2780を用いて行なわれた。細胞の生存率は、セルタイター(CellTiter)を用いて測定された。アポトーシスは、ヘキスト(Hoechst)33342色素を用いて評価された。インビボの影響は、CP70をヌードマウスに皮下注射することによって調べられた。動物は、8日間にわたる10または20mg/kgのデヒドロエクオルの毎日の経口投与を、単独で、またはシスプラチン0.5mg/kgと併用して受けた。8日後,動物は犠牲にされ、腫瘍体積が測定された。
【0146】
カルボプラチンのIC50は、60μg/mlから100μg/mlを超えるまでの範囲であった(図1)。
【0147】
パクリタキセル耐性の細胞系、R182では、パクリタキセルのIC50は2μMよりも大きかった(図2)。
【0148】
デヒドロエクオル(10μg/ml)を用いた2時間の前治療は、カルボプラチン(0.5μg/ml+/-0.5)およびパクリタキセル(0.05μM)のIC50を有意に低減させた(図3および4)。
【0149】
ウェスタンブロット分析は、耐性の卵巣癌細胞が高レベルの活性XIAPを発現することを証明した。さらに、化学耐性細胞における活性型のカスパーゼ3は検出されなかった。カスパーゼ3の活性化は、化学耐性細胞ではデヒドロエクオルによる前治療の後にのみ観察された(図5)。
【0150】
図6および7は、次の研究の結果を図示しており、それにおいて、20mg/kgのデヒドロエクオル(DHE)5%HPBCDが、シスプラチンのデリバリー、およびデヒドロエクオルとシスプラチンとの併用に対して比較された。20mg/kgのPhen-1mg/kgのシスプラチンという用量養生法は、腫瘍の増殖を阻害したが、データはシスプラチン(1mg/kg)およびデヒドロエクオル(20mg/kg)の対照と有意に違わなかった。重要なことには、またやや驚いたことに、より低い用量10mg/kgのデヒドロエクオル-0.5mg/kgのシスプラチンの併用養生法が、20mg/kgのデヒドロエクオル-1mg/kgのシスプラチン(%T/C=14.7)養生法よりもより著しく腫瘍増殖を阻害しており、データは単一作用剤の対照とは有意に異なっていた(図6および7)。
【0151】
48時間(h)のデヒドロエクオル処理は、カルボプラチンおよびパクリタキセル耐性細胞おにおける細胞生存率に60%〜80%の低減を誘導した。pHのみの2時間の前治療は、細胞生存率を20%まで減少させた。さらに、化学耐性細胞におけるpHによる前治療(2時間)の、後に続く48時間のカルボプラチンまたはパクリタキセルの結果として、細胞生存率における各々30%および50%の有意な減少を生じた。ヘキスト染色によって処理された細胞にアポトーシスが存在することが確認された。インビボでは、シスプラチン(0.5mg/kg)は腫瘍サイズに何ら影響を及ぼさなかったが、pH(10mg/kg)とシスプラチン 0.5mg/ml)の併用は、腫瘍体積を75%まで減少させた(p=0.05)。
【0152】
実施例3
毒性デヒドロエクオルおよびシスプラチン
図8に示したように、用いたどの用量養生法においても、毒性の顕性の徴候は認められなかった。体格における変動は、理論的に許容される境界内にあった。
【0153】
これらの実施例は、化学療法剤との併用における式(I)のイソフラボノイド化合物の有用性および、化学耐性癌細胞および腫瘍に対して、低レベルの化学療法および一般的な細胞増殖の下方制御、および治療指標の治療、回復、防御、予防,および/または防止に対する感受性を誘導するための治療薬としての、式(II)または(IIa)および(I)の化合物に光をあてている。
【0154】
当業者には、本文において記述された発明が、特異的に記述されたもの意外の変形および修正の余地があることが受入れられるであろう。本発明がそのような全ての変形および修正を包含することが理解されるべきである。本発明はまた、本明細書において参照または指示された段階,特徴,組成物、および化合物を、個別にまたは集合的に、また任意の二以上の前記段階または特徴のいくつかまたはすべての組合せも包含する。
【0155】
本明細書におけるいかなる先行技術への参照も、その先行技術が真剣な試みという領域において共通の一般的な知識の一部を成しているということを、承認するものあるいは何らかの形で示唆するものではなく、またそのようなものとして理解するべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】様々な癌細胞系の細胞生存率を、カルボプラチンの異なる濃度にわたって表している。
【図2】様々な癌細胞系の細胞生存率を、パクリタキセルの異なる濃度にわたって表している。
【図3】様々な癌細胞系の細胞生存率を、デヒドロエクオルの前治療に続く、カルボプラチンの異なる濃度にわたって表している。
【図4】様々な癌細胞系の細胞生存率を、デヒドロエクオルの前治療に続く、パクリタキセルの異なる濃度にわたって表している。
【図5】デヒドロエクオルの前治療を用いた、および用いない、耐性卵巣癌CP70細胞のカルポプラチンまたはパクリタキセル治療の、ウェスタンブロット分析を表している。
【図6】単一の活性作用剤として、または併用療法としてデリバリーされた場合の、デヒドロエクオルおよびシスプラチンについての、5%HPBCDビヒクル対照群に比較した腫瘍質量を表している。
【図7】単一の活性作用剤として、または併用療法としてデリバリーされた場合の、デヒドロエクオルおよびシスプラチンについての、5%HPBCDビヒクル対照群に比較した腫瘍体積を表している。
【図8】デヒドロエクオル,シスプラチン、または併用治療群の各々における毒性の指標として、5%HPBCDビヒクル対照群に比較した体重の比較を表している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌細胞または腫瘍の化学療法剤に対する感受性を、前記細胞または腫瘍を式(I)のイソフラボノイド化合物と接触させることにより増大する方法であって、式(I)が、
【化1】

[式中、R、R、およびZは独立して水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、OS(O)R10、CHO、C(O)R10、COOH、CO10、CONR、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルコキシアリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ、またはハロであるか、あるいは
は先に定義された通りであり、RおよびZは、それらが結合していた炭素原子とともに取られて、
【化2】

から選ばれる5員環を形成するか、または
は先に定義された通りであり、RおよびZは、それらが結合していた炭素原子とともに取られて、
【化3】

から選ばれる5員環を形成し、かつ、
WはRであり、Aは水素、ヒドロキシ、NR、またはチオであり、Bは、
【化4】

から選ばれるか、または、
WはRであり、AおよびBは、それらが結合していた炭素原子とともに取られて、
【化5】

から選ばれる6員環を形成するか、または、
それらが結合していた基とともに取られたW、A、およびBは、
【化6】

から選ばれるか、または、
それらが結合していた基とともに取られたWおよびAは、
【化7】

から選ばれ、かつBは、
【化8】

から選ばれ、
式中、Rは水素、アルキル,アリールアルキル、アルケニル、アリール、アミノ酸、C(O)R11であり、R11は水素,アルキル、アリール、アリールアルキル、またはアミノ酸であるか、あるいはCO12であり、R12は水素、アルキル、ハロアルキル、アリール、またはアリールアルキルであり、
は水素、アルキル、またはアリールであるか、または、
それらが結合していた窒素とともに取られたRおよびRは、ピロリジニルまたはピペリジニルを含み、
は水素か、R11が先に定義された通りであるC(O)R11か、またはR12が先に定義された通りであるCO12であり、
は水素、ヒドロキシ、アルキル、アリール、アミノ、チオ、NR、R11が先に定義された通りであるC(O)R11、R12が先に定義された通りであるCO12、またはCONRであり、
は水素か、R11が先に定義された通りであるC(O)R11か、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、または各R13が独立して水素か、アルキルか、またはアリールであるSi(R13であり、
は水素、ヒドロキシ、アルコキシ、またはアルキルであり、
はアルキル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル、R11が先に定義された通りであるC(O)R11か、またはR13が先に定義された通りであるSi(R13であり、
10は水素、アルキル、ハロアルキル、アミノ、アリール、アリールアルキル、アミノ酸、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり、
線画は単結合または二重結合を表し、
Tは独立して水素、アルキル、またはアリールであり、
XはO、NR、またはSであり、かつ、
Yは、
【化9】

であり、
式中、R14、R15、およびR16は独立して水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、OS(O)R10、CHO、C(O)R10、COOH、CO10、CONR、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ、またはハロであるか、あるいはR14、R15、およびR16の任意の二つは融合しあって環状アルキル、芳香族、または複素芳香族の構造、および製薬上許容されるそれらの塩を形成する]である方法。
【請求項2】
前記癌細胞および腫瘍の化学療法剤に対する感受性が回復される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I)の化合物が、そのような治療を必要とする患者に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
治療上有効な量の、請求項1において定義されたような式(I)の化合物および化学療法剤を患者に投与することを含む、細胞増殖,癌、または酸化ストレスに関連した疾病の、治療,予防,回復,防御,および/または防止のための併用療法。
【請求項5】
式(I)の化合物および化学療法剤を患者に投与する段階を含む、細胞増殖,癌、または酸化ストレスに関連した疾病の、治療,予防,回復,防御,および/または防止のための方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記癌が、乳癌,前立腺癌,精巣癌,卵巣癌,子宮癌、および結腸直腸癌から選ばれる方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記癌が、卵巣癌、前立腺癌,および膵臓癌から選ばれる方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法において、式(I)の化合物の投与が、化学療法剤の投与に先行する方法。
【請求項9】
請求項5に記載の方法において、式(I)の化合物および化学療法剤の投与が同時である方法。
【請求項10】
請求項5に記載の方法において、癌細胞または腫瘍による化学療法剤に対する耐性が観察された後に、前記併用療法が続く方法。
【請求項11】
請求項5に記載の方法において、式(I)の化合物が、一般式(VIa)のイソフラブ-3-エンである方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記化合物がデヒドロエクオル(dehydroequol)である方法。
【請求項13】
請求項5に記載の方法において、前記化学療法剤がシスプラチン、パクリタキセル、またはカルボプラチンである方法。
【請求項14】
癌または抗酸化ストレスに関連した疾病の治療のための薬物の製造における、式(I)の化合物および化学療法剤の使用。
【請求項15】
式(I)の化合物および抗癌剤を含んでなる薬剤。
【請求項16】
一般式(II):
【化10】

[式中、R、R、R、およびRは独立してハロ、ヒドロキシ、XR、アルコキシ、OC(O)R、OS(O)R、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり、
XはO、NR、またはSであり、さらに、
は水素、アルキル、アリールアルキル、アルケニル、アリール、またはアミノ酸であって、
、R、R、およびRの少なくとも一つ、および好ましくはRのみがXRであり、Rは前文に示された一般式(I)によって表されるイソフラボノイド化合物であるか、またはイソフラボノイド化合物(I)の誘導体か、ラジカル、もしくはイオンであり、任意の一以上のヘテロ原子Xか、またはRの一部として定義されたヘテロ原子のラジカルを介して、あるいは別法としてイソフラボノイド化合物(I)上の二重結合によって白金に配位しており、かつ、
がXRであるとき、R、R、および/またはRは一緒に、一般式(B)および(T)の二座配位子または三座配位子の一部を各々形成してよく、
【化11】

式中、LはN、O、およびSから選ばれる配位原子を表し、
nは0から8までであり、さらに、
各Rは独立して上記のように定義されるか、または一緒に環状アルキル、芳香族、または複素芳香族の構造の一部を形成してもよく、
その白金-イソフラボノイド複合体が、製薬上許容されるそれらの塩を含んでなる]で表される、白金-イソフラボノイド複合体、およびそれらの類似体。
【請求項17】
前文において定義されたような式(II)の一以上の白金-イソフラボノイド複合体を患者に投与することを含む、細胞増殖,癌、または酸化ストレスに関連した疾病の、治療、予防、回復、防御、および/または防止のための方法。
【請求項18】
細胞増殖,癌、または酸化ストレスに関連した疾病の、治療、回復、防御、予防、および/または防止のための薬物の製造のための、式(II)の白金イソフラボノイド複合体の使用。
【請求項19】
式(II)の一以上の白金イソフラボノイド複合体を、一以上の薬物担体および/または賦形剤とともに含んでなる薬剤組成物。
【請求項20】
一般式(IIa):
【化12】

[式中、R、R、R、およびRは独立してハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、OC(O)R、OS(O)R、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり、
XはO、NR、またはSであり、かつ、
は水素、アルキル、アリールアルキル、アルケニル、アリール、またはアミノ酸である
]の白金複合体を、
請求項1において定義されたような、一般式(I)のイソフラボノイド化合物、および製薬上許容されるそれらの塩とともに含んでなる組成物。
【請求項21】
治療上有効な量の請求項20の組成物を患者に投与することを含む、細胞増殖,癌、または酸化ストレスに関連した疾病の、治療、予防、回復、防御、および/または防止のための方法。
【請求項22】
細胞増殖,癌、または酸化ストレスに関連した疾病の、治療、回復、防御、予防、および/または防止のための薬物の製造における、式(IIa)の白金複合体および式(I)のイソフラボノイド化合物の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2006−504705(P2006−504705A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−540375(P2004−540375)
【出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001296
【国際公開番号】WO2004/030662
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(505122117)ノボジェン リサーチ プロプライアタリー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】