説明

使用寿命を自動的に測定できる電源及び電源使用寿命を測定する方法

【課題】本発明は、使用寿命を自動的に測定できる電源及び電源使用寿命を測定する方法を提供する。
【解決手段】電源の温度を検出する温度検出ユニットと、電源内の電解コンデンサーのリップル電圧を検出するリップル電圧検出ユニットと、電源を初めに使用する時に検出した初期温度及び初期温度における初期リップル電圧を獲得して、初期リップル電圧を標準温度における等価リップル電圧に換算し、且つ電源が実際に作動する時に検出した作動温度及び作動温度におけるリップル電圧を獲得して、作動温度におけるリップル電圧を標準温度における等価リップル電圧に換算してから、2つの前記等価リップル電圧を比較することにより、電源の使用寿命の終わりに達したか否かを判断するプロセッサーと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用寿命を自動的に測定できる電源及び電源使用寿命を測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピューターのような電子装置に電力を供給するには、電源が必要である。電源の使用寿命が尽きると、電源が突然にシャットダウンされて、電子装置に障害を与えてしまうことがある。従って電源の使用寿命を測定することを必要とする。
【0003】
従来の電源使用寿命を測定する方法(特許文献1を参照)は、実際の環境温度における電源内の電解コンデンサーのリップル電流値を検出してから、メーカーから提供する実際の環境温度における電源のリップル電流値と環境温度25℃における電源の規定リップル電流値との間の関係に基づいて、電源の余剰の使用寿命期限を推定する。しかし、実際の状況において、電源内の電解コンデンサーのリップル電流値を検出することは難く、且つ電源が所在する回路が安定している場合、電源内の電解コンデンサーのリップル電流値の変化は小さいために、一般的に変化しないと見なしている。仮に、前記リップル電流値の大きさを正確に検出したとしても、実際の使用過程において、メーカーから提供する電源の規定リップル電流値と使用者が実際に使用する時の電源の規定リップル電流値との間に比較的に大きな差があるので、メーカーから提供する実際環境温度における電源の規定リップル電流値と環境温度25℃における電源の規定リップル電流値との間の関係は誤差が存在し、検出した電解コンデンサーのリップル電流値の大きさに基づいて電源の使用寿命を正確に推定することは難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第101825689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前記課題を解決し、使用寿命を自動的に測定できる電源及び電源使用寿命を測定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る使用寿命を自動的に測定できる電源は、電源の温度を検出する温度検出ユニットと、前記電源内の電解コンデンサーのリップル電圧を検出するリップル電圧検出ユニットと、前記電源を初めに使用する時に検出した初期温度及び前記初期温度における初期リップル電圧を獲得して、前記初期リップル電圧を標準温度における等価リップル電圧に換算し、且つ前記電源が実際に作動する時に検出した作動温度及び前記作動温度におけるリップル電圧を獲得して、前記作動温度におけるリップル電圧を標準温度における等価リップル電圧に換算してから、前記作動温度におけるリップル電圧に対応する等価リップル電圧と前記初期温度における初期リップル電圧に対応する等価リップル電圧とを比較することにより、前記電源の使用寿命の終わりに達したか否かを判断するプロセッサーと、を備える。
【0007】
本発明に係る電源使用寿命を測定する方法は、電源内部の温度及び電解コンデンサーのリップル電圧を検出するステップと、前記電源を初めに使用する時に検出した初期温度及び前記初期温度における初期リップル電圧を獲得して、前記初期リップル電圧を標準温度における等価リップル電圧に換算するステップと、前記電源が実際に作動する時に検出した作動温度及び前記作動温度におけるリップル電圧を獲得して、前記作動温度におけるリップル電圧を標準温度における等価リップル電圧に換算するステップと、前記作動温度におけるリップル電圧に対応する等価リップル電圧と前記初期温度における初期リップル電圧に対応する等価リップル電圧とを比較して、前記電源の使用寿命の終わりに達したか否かを判断するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係わる使用寿命を自動的に測定できる電源及び電源使用寿命を測定する方法は、作動中の電源の寿命を正確に測定及び推定することができるので、前記電源の使用寿命の終わりに接近すると、ユーザーに提示して、前記電源が突然にシャットダウンされて、電子装置に障害を与える現象を免れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る使用寿命を自動的に測定できる電源の概略ブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電源使用寿命を測定する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る使用寿命を自動的に測定できる電源100を管理する電源管理回路の概略ブロック図である。前記電源100の等価直列抵抗(Equivalent Series Resistance,ESR)値の大きさRによって、前記電源100の使用寿命を推定することができ、前記電源100の使用にしたがって、前記電源100の等価直列抵抗値Rは絶えず大きくなる。前記電源100にとって、前記電源100内の電解コンデンサーを流れるリップル電流値Iの変化は小さいために、一般的には変化しないと見なしている。前記電源100内の電解コンデンサーのリップル電圧値はUであり、公式U=I×Rによって、前記電源100の使用にしたがって、前記電源100内の電解コンデンサーのリップル電圧値Uは絶えず大きくなる。前記電源100の等価直列抵抗値の大きさは、環境温度Tの高さと関係があるので、等価直列抵抗値の大きさによって前記電源100の寿命を判断するためには、特定の標準温度条件で行うことを必要とする。作動温度における前記電源100が作動する際の等価直列抵抗値が、標準温度(例えば、環境温度が常温25℃である)において前記電源100を始めて使用する際の初期等価直列抵抗値の特定倍数、例えば、1.5倍となった場合、前記電源100の使用寿命の終わりに達したと判断することができる。前記電源100内の電解コンデンサーを流れるリップル電流値Iは使用過程で変化しないと見なすので、作動温度Tにおける前記電源100のリップル電圧値Vと初期温度Tにおける前記電源100の初期リップル電圧値Vをそれぞれに標準温度における等価リップル電圧値VWS、ViSに換算してから、前記等価リップル電圧値VWSの大きさと前記等価リップル電圧値ViSの大きさを比較することにより、前記電源100の使用寿命の終わりに達したか否かを判断する。前記標準温度Tは、前記初期温度Tであることができる。
【0012】
前記電源100は、温度検出ユニット10と、記憶ユニット20と、リップル電圧検出ユニット30と、プロセッサー40と、を備える。前記温度検出ユニット10は、前記電源100の温度Tを検出するために用いられ、例えば、前記温度検出ユニット10は、温度センサーであることができ、前記電源100の電解コンデンサーの内部に設置される。前記記憶ユニット20は、異なる温度Tにおけるリップル電圧Vが標準温度Tにおける等価リップル電圧Vに対する対応換算関係を格納し、前記電源100が生産された後、前記換算関係は確定される。前記対応換算関係は、以下の表1に示す。
【0013】
【表1】

【0014】
例えば、現在の温度がT1であり、検出したリップル電圧Vが2Vである場合、温度T1におけるリップル電圧2Vを標準温度Tにおける等価リップル電圧Vに換算した値は(2×n1)Vである。したがって、前記表1に基づいて、異なる温度Tにおけるリップル電圧Vを同一標準温度Tにおける等価リップル電圧Vに換算してから比較する。
【0015】
前記リップル電圧検出ユニット30は、前記電源100内の電解コンデンサーのリップル電圧Vを検出するために用いられる。前記リップル電圧検出ユニット30は、オシログラフであることができ、電解コンデンサーのリップル電圧Vを直接に検出する。
【0016】
前記プロセッサー40は、前記電源100を初めに使用する時に検出した初期温度T及び前記初期温度Tにおける初期リップル電圧Vを獲得して、前記初期リップル電圧Vを標準温度Tにおける等価リップル電圧ViSに換算し、且つ前記電源100が実際に作動する時に検出した作動温度T及び前記作動温度Tにおけるリップル電圧Vを獲得して、前記作動温度Tにおけるリップル電圧Vを標準温度Tにおける等価リップル電圧VwSに換算してから、前記等価リップル電圧VwSと前記等価リップル電圧ViSとを比較することにより、前記電源100の使用寿命の終わりに達したか否かを判断する。
【0017】
前記プロセッサー40は、前記表1に示されたように、前記記憶ユニット20に格納した異なる温度Tにおけるリップル電圧Vが標準温度Tにおける等価リップル電圧Vに対する対応換算関係に基づいて、前記初期温度Tにおける初期リップル電圧Vを標準温度Tにおける等価リップル電圧ViSに換算し、且つ前記作動温度Tにおけるリップル電圧Vを標準温度Tにおける等価リップル電圧VwSに換算してから、前記等価リップル電圧VwSが前記等価リップル電圧ViSの特定倍数を超過すると、前記電源100の使用寿命の終わりに達したと判断する。一般的に、前記特定倍数は、1.3〜1.5である。本実施形態において、前記プロセッサー40は、前記初期温度Tにおける初期リップル電圧Vを獲得してから、前記初期リップル電圧Vを標準温度Tにおける等価リップル電圧ViSに換算し、且つ前記等価リップル電圧ViSを前記記憶ユニット20に格納する。本実施形態において、検出したデータの正確性を確保するために、前記初期温度Tにおける初期リップル電圧Vは、前記電源100を初めに使用する一段時間内での、前記初期温度Tにおける平均リップル電圧である。他の実施形態において、前記プロセッサー40は、前記初期温度Tにおける初期リップル電圧Vを獲得してから直接に前記記憶ユニット20に格納し、前記初期リップル電圧Vを前記標準温度Tにおける等価リップル電圧ViSに換算する過程は前記比較過程で行う。
【0018】
本実施形態において、前記電源100は、表示ユニット50をさらに備える。前記表示ユニット50は、前記電源100の使用寿命に関する情報を表示し、例えば、前記電源100の使用寿命が終わりに接近する程度に達したと表示するか、又は前記電源100の剰余の使用時間などを表示する。本実施形態において、前記電源100は、警報ユニット60をさらに備える。前記電源100の剰余の使用可能時間が使用寿命の一定の程度になると、例えば、前記電源100の剰余使用可能時間が使用寿命の5%になると、前記警報ユニット60は、警報を出す。
【0019】
図2に示されたように、本発明の実施形態に係る電源使用寿命を測定する方法は、以下のステップを備える。
【0020】
ステップS201:前記電源100の温度T及び電解コンデンサーのリップル電圧Vを検出する。
【0021】
ステップS202:前記電源100を初めに使用する時に検出した初期温度T及び前記初期温度Tにおける初期リップル電圧Vを獲得して、前記初期リップル電圧Vを標準温度Tにおける等価リップル電圧ViSに換算する。
【0022】
ステップS203:前記電源100が実際に作動する時に検出した作動温度T及び前記作動温度Tにおけるリップル電圧Vを獲得して、前記作動温度Tにおけるリップル電圧Vを標準温度Tにおける等価リップル電圧VwSに換算する。
【0023】
ステップS204:前記等価リップル電圧VwSと前記等価リップル電圧ViSとを比較して、前記電源100の使用寿命の終わりに達したか否かを判断する。
【0024】
前記比較過程において、前記換算及び比較方法は、さらに以下のステップを備える。異なる温度におけるリップル電圧が標準温度における等価リップル電圧に対する対応換算関係に基づいて、前記初期温度Tにおける初期リップル電圧Vを標準温度Tにおける等価リップル電圧ViSに換算し、前記作動温度Tにおけるリップル電圧Vを標準温度Tにおける等価リップル電圧VwSに換算し、前記等価リップル電圧VwSが前記等価リップル電圧ViSの特定倍数を超過すると、前記電源100の使用寿命の終わりに達したと判断する。
【0025】
以上、本発明を実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能であることは勿論であって、本発明の技術的範囲は、以下の特許請求の範囲から決まる。
【符号の説明】
【0026】
10 温度検出ユニット
20 記憶ユニット
30 リップル電圧検出ユニット
40 プロセッサー
50 表示ユニット
60 警報ユニット
100 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源の温度を検出する温度検出ユニットと、
前記電源内の電解コンデンサーのリップル電圧を検出するリップル電圧検出ユニットと、
前記電源を初めに使用する時に検出した初期温度及び前記初期温度における初期リップル電圧を獲得して、前記初期リップル電圧を標準温度における等価リップル電圧に換算し、且つ前記電源が実際に作動する時に検出した作動温度及び前記作動温度におけるリップル電圧を獲得して、前記作動温度におけるリップル電圧を標準温度における等価リップル電圧に換算してから、前記作動温度におけるリップル電圧に対応する等価リップル電圧と前記初期温度における初期リップル電圧に対応する等価リップル電圧とを比較することにより、前記電源の使用寿命の終わりに達したか否かを判断するプロセッサーと、
を備えることを特徴とする使用寿命を自動的に測定できる電源。
【請求項2】
前記電源は、異なる作動温度におけるリップル電圧が標準温度における等価リップル電圧に対する対応換算関係を格納する記憶ユニットをさらに備え、
前記プロセッサーは、前記対応換算関係に基づいて、前記初期温度における初期リップル電圧を標準温度における等価リップル電圧に換算し、前記作動温度におけるリップル電圧を標準温度における等価リップル電圧に換算し、且つ前記作動温度におけるリップル電圧に対応する等価リップル電圧が前記初期温度における初期リップル電圧に対応する等価リップル電圧の特定倍数を超過すると、前記電源の使用寿命の終わりに達したと判断することを特徴とする請求項1に記載の使用寿命を自動的に測定できる電源。
【請求項3】
前記プロセッサーは、前記電源を初めに使用する時に検出した初期温度及び前記初期温度における初期リップル電圧を獲得し、且つ前記初期リップル電圧を標準温度における等価リップル電圧に換算してから前記記憶ユニットに格納することを特徴とする請求項1又は2に記載の使用寿命を自動的に測定できる電源。
【請求項4】
前記初期温度における初期リップル電圧は、前記電源を初めに使用する一段時間内で、前記初期温度における平均リップル電圧であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用寿命を自動的に測定できる電源。
【請求項5】
前記電源は、前記電源の使用寿命に関する情報を表示する表示ユニットをさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用寿命を自動的に測定できる電源。
【請求項6】
前記電源は、前記電源の剰余の使用時間が使用寿命の一定の程度なると警報を出す警報ユニットをさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用寿命を自動的に測定できる電源。
【請求項7】
電源内部の温度及び電解コンデンサーのリップル電圧を検出するステップと、
前記電源を初めに使用する時に検出した初期温度及び前記初期温度における初期リップル電圧を獲得して、前記初期リップル電圧を標準温度における等価リップル電圧に換算するステップと、
前記電源が実際に作動する時に検出した作動温度及び前記作動温度におけるリップル電圧を獲得して、前記作動温度におけるリップル電圧を標準温度における等価リップル電圧に換算するステップと、
前記作動温度におけるリップル電圧に対応する等価リップル電圧と前記初期温度における初期リップル電圧に対応する等価リップル電圧とを比較して、前記電源の使用寿命の終わりに達したか否かを判断するステップと、
を備えることを特徴とする電源使用寿命を測定する方法。
【請求項8】
異なる温度におけるリップル電圧が標準温度における等価リップル電圧に対する対応換算関係に基づいて、前記初期温度における初期リップル電圧を標準温度における等価リップル電圧に換算し、前記作動温度におけるリップル電圧を標準温度における等価リップル電圧に換算し、前記作動温度におけるリップル電圧に対応する等価リップル電圧が前記初期温度における初期リップル電圧に対応する等価リップル電圧の特定倍数を超過すると、前記電源の使用寿命の終わりに達したと判断するステップをさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の電源使用寿命を測定する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−92521(P2013−92521A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−220036(P2012−220036)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【出願人】(503023069)鴻富錦精密工業(深▲セン▼)有限公司 (399)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】