説明

使用済みインクリボンの切断装置および切断方法

【課題】特殊な刃物を用いることなくインクリボンを切断でき、ランニングコストを低減する上で有利な使用済みインクリボンの切断装置および切断方法を提供する。
【解決手段】引き出し機構14を用いて巻き取りリール8から引き出した使用済みのインクリボン2を切れ目形成機構16によって複数の帯状のインクリボン2Aに形成し、インクリボン変形部18によってひとつの紐状のインクリボン2Bとした。そして、引き出し機構14の隣り合う2つの挟持板26と回転板24との間で挟持した紐状のインクリボン2Bを切断刃46で切断するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用済みインクリボンの切断装置および切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昇華型サーマルプリンタや熱溶融型サーマルプリンタに使用されるインクリボンは、印画紙に画像あるいは文字などの情報を転写した後、破棄される。しかしながら、使用済みのインクリボンには、転写された画像あるいは文字などの情報のネガパターンが残されている。
したがって、情報保護の観点から、使用済みのインクリボンを細かく切断する装置が提供されている。
このような装置として、間欠的に導出したインクリボンを二枚刃の摺り合いにより切断するもの(特許文献1参照)、あるいは、インクリボンを受け刃とロータリカッタにより切断するもの(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−59272号公報
【特許文献2】特開2007−196634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来装置では、インクリボンを切断するために専用の特殊な刃物を用いていることから切断装置が高価となり、装置の維持費用も高くつく欠点がある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、特殊な刃物を用いることなくインクリボンを切断でき、しかも、ランニングコストを低減する上で有利な使用済みインクリボンの切断装置および切断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明のインクリボンの切断装置は、使用済みのインクリボンが巻回された巻き取りリールを回転可能に支持する支持機構と、前記インクリボンを前記巻き取りリールから引き出す引き出し機構と、前記支持装置と前記引き出し機構との間に設けられ、前記巻き取りリールから前記引き出し機構により前記インクリボンが引き出されることで前記インクリボンの幅方向に間隔をおいた箇所に切れ目を形成して複数の帯状のインクリボンを形成する切れ目形成機構と、前記切れ目形成機構と前記引き出し機構の間に設けられ、前記複数の帯状のインクリボンをひとつの紐状のインクリボンとするインクリボン変形部とを備え、前記引き出し機構は、回転軸と、前記回転軸を回転駆動する駆動部と、前記回転軸に取着されて前記回転軸と一体に回転し、前記回転軸の周方向に間隔をおいた少なくとも4箇所に第1の隙間が前記回転軸の半径方向にそれぞれ延在形成された回転板と、前記回転軸の軸方向において前記回転板と対向する箇所に配置され、前記第1の隙間と前記回転軸の周方向において同一の位相の箇所で前記回転軸の半径方向に延在する第2の隙間を介して前記回転軸の周方向に切り離されて配置され、それぞれが前記回転軸と一体に回転可能にかつ前記回転板に離間接近する方向に移動可能に支持された周方向に隣り合う少なくとも4つの挟持板と、前記回転軸の周方向の第1の回転角度の範囲において、前記4つの挟持板のうちの隣り合う2つの挟持板を、前記回転板から離なしそれら挟持板と前記回転板との間への前記ひも状のインクリボンの挿入を可能とする離間位置とし、前記第1の回転角度の範囲と位相が異なる第2の回転角度の範囲において、残りの2つの挟持板を前記回転板に接近する方向に移動させ前記ひも状のインクリボンを前記回転板との間で挟持し前記回転軸の回転により前記インクリボンを前記巻き取りリールから引き出す挟持位置とする変位機構と、前記第2の回転角度の範囲において、切断刃を前記第1の隙間と第2の隙間とにわたって挿入し、前記回転板と前記挟持板とで挟持されたひも状のインクリボンを切断する切断機構とを備えるものである。
また本発明の使用済みのインクリボンの切断方法は、回転軸と、前記回転軸に取着されて前記回転軸と一体に回転し、前記回転軸の周方向に間隔をおいた少なくとも4箇所に第1の隙間が前記回転軸の半径方向にそれぞれ延在形成された回転板と、前記回転軸の軸方向において前記回転板と対向する箇所に配置され、前記第1の隙間と前記回転軸の周方向において同一の位相の箇所で前記回転軸の半径方向に延在する第2の隙間を介して前記回転軸の周方向に切り離されて配置され、それぞれが前記回転軸と一体に回転可能にかつ前記回転板に離間接近する方向に移動可能に支持された周方向に隣り合う少なくとも4つの挟持板を設け、使用済みのインクリボンをひも状のインクリボンに変形し、前記4つの挟持板のうちの隣り合う2つの挟持板を、前記回転軸の周方向の第1の回転角度の範囲において、前記回転板から離なしそれら挟持板と前記回転板との間への前記ひも状のインクリボンの挿入を可能とした離間位置としてそれら第1、第2挟持板と前記回転板との間に使用済みのひも状のインクリボンを挿入し、残りの2つの挟持板を、前記第1の回転角度の範囲と位相が異なる第2の回転角度の範囲において、前記回転板に接近する方向に移動させ前記ひも状のインクリボンを前記回転板との間で挟持し前記回転軸の回転により前記インクリボンを引き出す挟持位置とし、前記第2の回転角度の範囲において、切断刃を前記第1の隙間と第2の隙間とにわたって挿入し、前記回転板と前記挟持板とで挟持されたひも状のインクリボンを切断し、前記回転軸を回転させて前記4つの挟持板を前記離間位置と前記切断位置との間で順次移動させてひも状のインクリボンの前記挟持板と前記回転板との間への挿入と、前記ひも状のインクリボンの引き出しと、切断刃によるひも状のインクリボンの切断とを行なうようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、巻き取りリールから引き出した使用済みのインクリボンをひとつの紐状のインクリボンとした。そして、隣り合う2つの挟持板と回転板との間で挟持した紐状のインクリボンを切断刃で切断するようにした。
したがって、特殊な切断刃を用いることなく使用済みのインクリボンを切断できることは無論のこと、専用の特殊な切断刃を使用する必要が無いためランニングコストを低減する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】昇華型サーマルプリンタ100の説明図である。
【図2】本実施の形態の使用済みインクリボン2の切断装置10の構成を示す説明図である。
【図3】切断機構30を省略した引き出し機構14の構成を示す断面図である。
【図4】切断機構30の動作を説明する引き出し機構14の断面図である。
【図5】切断機構30の動作を説明する引き出し機構14の断面図である。
【図6】(A)は切断機構の動作を説明する正面図、(B)は(A)のB矢視図である。
【図7】(A)は切断機構の動作を説明する正面図、(B)は(A)のB矢視図である。
【図8】(A)は回転板24の正面図、(B)は(A)のBB線断面図である。
【図9】(A)は回転板24の後面図、(B)は(A)のB矢視図である。
【図10】複数の挟持板26が並べられた状態を示す後面図である。
【図11】(A)は挟持板26の正面図,(B)は(A)のB矢視図、(C)は(B)のC矢視図、(D)は(C)のDD線断面図である。
【図12】複数の挟持板26と変位機構28を示す説明図である。
【図13】変位機構28のカム溝44の展開図である。
【図14】検知板52と、複数の挟持板26と、変位機構28との位置関係を示す正面図である。
【図15】検出部54と検知板52の位置関係を示す説明図である。
【図16】切断装置10の制御系の構成を示すブロック図である。
【図17】切断装置10の動作フローチャートである。
【図18】(A)は使用済みインクリボン2の説明図、(B)は切れ目形成機構16により切れ目が形成された帯状のインクリボン2Aの説明図、(C)は切断機構30によって切断されたインクリボン2Cの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態の使用済みインクリボンの切断装置を切断方法と共に図面を参照して説明する。
まず、本実施の形態の切断装置によって切断されるインクリボンについて説明する。
本実施の形態において切断装置により切断されるインクリボンは、昇華型サーマルプリンタで使用されるものである。
図1に示すように、昇華型サーマルプリンタ100は、インクリボン2に塗布された昇華性染料を昇華させ記録紙4上に転写させて印画を行うものである。
より詳細には、昇華型サーマルプリンタ100は、複数の発熱素子を有するプリントヘッド102を備え、各発熱素子を階調データに基づいて選択的に通電駆動することでインクリボンの昇華性染料を昇華させ記録紙上に転写させて印画を行うものである。
【0009】
インクリボン2は、薄い合成樹脂材料、例えば、厚さ2μm乃至10μm程度のPET材料に昇華性染料が塗布されたものであり、幅と、幅よりも長い寸法の長さを有し、長さ方向において供給リール6に巻回されている。
供給リール6は、昇華型サーマルプリンタ100の支持機構により回転可能に支持される。
インクリボン2は、供給リール6から引き出されプリントヘッド102と該プリントヘッド102に対向するプラテンローラ104との間を通ることで前記の転写がなされ、転写後のインクリボン2は巻き取りリール8に巻き取られていく。
したがって、供給リール6のインクリボン2の全てがプリントヘッド102によって転写されると、巻き取りリール8に使用済みのインクリボン2の全てが巻回されることになる。
【0010】
図18(A)に示すように、昇華型サーマルプリンタによって印刷に使用されたインクリボン2には、記録紙上に転写されていない染料が残存することにより記録紙に記録された情報に対応する画像あるいは文字などの印刷跡Pが残ることになる。
なお、本発明の切断装置によって切断されるインクリボンとしては、昇華型サーマルプリンタで用いられるものに限定されない。例えば、インクリボンに塗布された顔料インキを溶融させて記録紙上に転写させる熱溶融型プリンタで使用されるものなど、従来公知のさまざまなインクリボンが適用可能である。
【0011】
次に、本実施の形態のインクリボンの切断装置10について説明する。
図2に示すようにインクリボンの切断装置10は、支持機構12と、引き出し機構14と、切れ目形成機構16と、インクリボン変形部18とを含んで構成されている。
支持機構12は、使用済みのインクリボン2(以下単にインクリボン2という)が巻回された巻き取りリール8(巻回体)を回転可能に支持するものである。支持機構12は、巻き取りリール8の両端を回転可能に支持する構造であってもよく、あるいは、巻き取りリール8が単に載置される凹部を有するものであってもよい。
【0012】
引き出し機構14は、インクリボン2を巻き取りリール8から引き出すものである。
引き出し機構14については後述する。
【0013】
切れ目形成機構16は、支持装置12と引き出し機構14との間に設けられている。
切り目形成機構16は、巻き取りリール8から引き出し機構14によりインクリボン2が引き出されることでインクリボン2の幅方向に間隔をおいた箇所に切れ目を形成して複数の帯状のインクリボン2Aを形成するものである。
切れ目形成機構16は、巻き取りリール8に巻回されたインクリボン2の幅方向に延在する支持台1602と、支持台1602にインクリボン2の幅方向に間隔をおいて突設された複数の切れ目形成用部材1604とを含んで構成されている。
切れ目形成用部材1604として、市販のカッター用替刃を用いてもよく、あるいは、ピンを用いてもよい。切れ目形成用部材1604として、市販のカッター用替刃を使用するとコストの低減を図る上で有利となる。
【0014】
インクリボン変形部18は、切れ目形成機構16と引き出し機構14の間に設けられている。
インクリボン変形部18は、複数の帯状のインクリボン2Aを束ねてひとつの紐状のインクリボン2Bとするものである。
本実施の形態では、インクリボン変形部18は、複数の帯状のインクリボン2Aが挿通される断面正円状の孔部1802を有する筒体1804で形成されている。
したがって、引き出し機構14によりインクリボン2が引き出されることで、複数の帯状のインクリボン2Aが孔部1802を通り、ひとつの紐状のインクリボン2Bに束ねられる。
本実施の形態では、筒体1804は、その中心軸を含む平面で分割された2つの分割体1804A、1804Bと、それら2つの分割体1804A,1804Bを開閉可能に連結する不図示のヒンジとで構成されている。
そのため、切断装置10に巻き取りリール8を装着して複数の帯状のインクリボン2Aの先端を孔部1802に挿通させる際に、次のように操作することができる。
すなわち、予め、2つの分割体1804A、1804Bを開き孔部1802を開放した状態で複数の帯状のインクリボン2Aを孔部1802に位置させ、その状態で2つの分割体1804A、1804Bを閉じる。
このように構成することで、複数の帯状のインクリボン2Aを孔部1802に容易に挿通させることができ、操作性の向上が図られている。
なお、図2において、符号19は、インクリボン変形部18から引き出されたひとつの紐状のインクリボン2Bの移送方向を変換して引き出し機構14に導くためのガイドローラを示す。
【0015】
次に、引き出し機構14について詳細に説明する。
図2、図3、図4に示すように、引き出し機構14は、回転軸20と、駆動部22と、回転板24と、複数の挟持板26と、変位機構28と、切断機構30とを備えている。
回転軸20は、駆動部22により回転駆動される。
図2に示すように、駆動部22は、回転軸20に連結されたモータ22Aで構成されている。
【0016】
図3に示すように、回転板24は、回転軸20に取着されてキー2402を介して回転軸20と一体に回転する。
図8、図9に示すように、回転板24は、回転軸20の周方向に間隔をおいた少なくとも4箇所に第1の隙間S1が回転軸20の半径方向にそれぞれ延在形成されている。
図8に示すように、本実施の形態では、回転板24の周方向に等間隔をおいた6箇所にそれぞれ第1の隙間S1が形成されている。
図3、図8に示すように、回転板24の一方の面の内周部にはねじ孔2404が形成されている。また、ねじ孔2404の半径方向外側の周囲に周方向に連続する凹溝2410が形成され、また、凹溝2410の半径方向外側の周囲に周方向に連続する凸部2412が形成されている。
そして、凸部2412の半径方向外側に位置する面が挟持面32として形成されている。
挟持面32には、ひも状のインクリボン2B(図2)を挟持しやすいように微細な凹凸が形成されている。
【0017】
図3に示すように、挟持板26は、回転軸20の軸方向において回転板24と対向する箇所に配置されている。
本実施の形態では、挟持板26は、回転板24の挟持面32と対向する箇所に配置されている。
図10に示すように、挟持板26は、第1の隙間S1と回転軸20の周方向において同一の位相の箇所で回転軸20の半径方向に延在する第2の隙間S2を介して回転軸20の周方向に切り離されて配置されている。
本実施の形態では、挟持板26は6つ配置されている。
図10、図11に示すように、各挟持板26は、扇形状を呈し、内周部にガイド孔2602が貫通形成されている。
各挟持板26が回転板24に対向する面に、回転板24の凹部2410に常時挿入される円弧状の凸部2610が形成されている。
各挟持板26が回転板24に対向する面に、回転板24の凸部2412が常時挿入される円弧状の凹部2612が形成されている。
このように各挟持板26の内周部と、この内周部に対向する回転板24の内周部とに、常時係合する凸部と凹部とを設けるようにした。これにより、切断したひも状のインクリボン2Bの回転軸20側への侵入を阻止し、装置の耐久性高める上で有利となる。
各挟持板26の外周部で回転板24に対向する面に挟持面34が形成されている。挟持面34には、ひも状のインクリボン2B(図2)を挟持しやすいように微細な凹凸が形成されている。
各挟持板26の外周面の中央に、回転軸20の半径方向外方に向けてカムピン2620が突設されている。
図3に示すように、各挟持板26は、それぞれが回転軸20と一体に回転可能にかつ回転板24に離間接近する方向に移動可能に支持されている。
【0018】
図3に示すように、回転板24と反対に位置する挟持板26の箇所に対向するように基板36が設けられている。
基板36は、回転軸20と一体に回転するように設けられている。
基板36の内周部で周方向に間隔をおいた複数個所にガイド孔3602が貫通形成されている。
回転板24の各ねじ孔2404に先部が螺合された雄ねじ部材38の軸部は、各挟持板26のガイド孔2602、基板36のガイド孔3602を挿通され、雄ねじ部材38の頭部が、挟持板26と反対に位置する基板36の面に係止されている。
雄ねじ部材38の軸部が各挟持板26のガイド孔2602に挿通されることで、各挟持板26は回転軸20の軸方向に沿って移動可能に支持されている。
また、雄ねじ部材38の軸部が各挟持板26のガイド孔2602に挿通されることで、各挟持板26は回転軸20と一体に回転される。
雄ねじ部材38の頭部が基板36の面に係止されることで、基板36が挟持板26から離れる方向の限界位置が規定されている。
そして、基板36と各挟持板26との間にスプリング40が介設されている。
【0019】
図3、図12に示すように、変位機構28は、各挟持板26の外周部に配置された環状のカム部材42を含んで構成されている。
カム部材42は、不図示のフレームにより回転不能に支持されている。
図3、図13に示すように、カム部材42の内周面には、その全周にわたって各挟持板26のカムピン2620が挿入されるカム溝44が形成されている。
回転軸20の長手方向の沿ったカム溝44の幅は、カムピン2620の外径よりも大きな寸法で形成されている。
スプリング40は、カムピン2620をカム溝44の幅方向で回転板24寄りの端面に接触する方向に各挟持板26を付勢している。
このようにスプリング40で挟持板26を回転板24方向に付勢することにより、ひも状のインクリボン2Bの外形に応じてひも状のインクリボン2Bを適切な挟持力で確実に挟持することが可能となる。
図13に示すように、カム溝44は、第1カム部44Aと第2カム部44Bとを含んで構成されている。
第1カム部44Aは、周方向に隣り合う2つの挟持板26を、回転軸20の周方向の第1の回転角度の範囲において回転板24から離なし2つの挟持板26と回転板24との間へのひも状のインクリボン2Bの挿入を可能とする離間位置とする。
第2カム部44Bは、周方向に隣り合う2つの挟持板26を、第2の回転角度の範囲において残りの2つの挟持板26を回転板24に接近する方向に移動させひも状のインクリボン2Bを回転板24との間で挟持する挟持位置とする。挟持板26が挟持位置に位置した状態で回転軸20が回転すると、インクリボンを巻き取りリール8から引き出す。なお、第2の回転角度の範囲と第1の回転角度の範囲とは、回転軸20の周方向における位相が異なる。
【0020】
本実施の形態では、挟持板26の回転方向に沿って、第1カム部44Aと第2カム部44Bの間に第3カム部44Cが設けられ、第2カム部44Bと第1カム部44Aの間に第4カム部44Dが設けられている。
第3カム部44Cは、第1、第2の回転角度の範囲と位相が異なる第3の回転角度の範囲において、回転軸20の回転に伴って1つの挟持板26を離間位置から挟持位置へと移動させる。
第4カム部44Dは、第1、第2、第3の回転角度の範囲と位相が異なる第4の回転角度の範囲において、回転軸20の回転に伴って1つの挟持板26を挟持位置から離間位置へと移動させる。
したがって、回転軸20の回転方向に沿って、第1の回転角度の範囲と第2の回転角度の範囲との間に第3の回転角度の範囲が設けられると共に、第2の回転角度の範囲と第1の回転角度の範囲との間に第4の回転角度の範囲が設けられていることになる。
そして、変位機構28は、回転軸20の回転に伴って第3の回転角度の範囲で挟持板26を離間位置から挟持位置に徐々に移動させ、第4の回転角度の範囲で挟持板26を挟持位置から離間位置に徐々に移動させることになる。
【0021】
図3、図4に示すように、切断機構30は、回転板24と2つの挟持板26とが第2の回転角度の範囲に位置している間に、切断刃46を第1の隙間S1と第2の隙間S2とにわたって挿入し、回転板24と挟持板26とで挟持されたひも状のインクリボン2Bを切断する。
図6、図7に示すように、切断機構30は、切断刃46と、切断刃46を移動させるアクチュエータ48とを含んで構成されている。
切断刃46は、回転軸20と平行する方向に延在している。
切断刃46として、市販のカッター用替刃が使用可能であり、市販のカッター用替刃を使用するとコストの低減を図る上で有利となる。
切断刃46はねじNを介してホルダ3002に取着されている。
ホルダ5002の背面には複数のガイド軸3004が立設されている。
【0022】
アクチュエータ48は、切断刃46の長手方向に間隔をおいて配置された3つのソレノイド48Aで構成されている。
各ソレノイド48Aは支持板3006上に配置されている。
各ソレノイド48Aのプランジャ4802は支持板3006を貫通し、その先部に移動板3008が取着されている。
ホルダ3002から立設されたガイド軸3004は、移動板3008と支持板3006とに挿通されている。
移動板3008とホルダ3002との間にはスプリング3010が介設されている。
したがって、ソレノイド48Aによるプランジャ4802の没入動作により、図4、図6に示すように、切断刃46が回転板24と挟持板26の外周面の半径方向外側に位置する退避位置となる。また、プランジャ4804の突出動作により、図5、図7に示すように、切断刃46は第1、第2の隙間S2に進入してひも状のインクリボン2Bを切断する切断位置となる。
なお、スプリング3010は、切断刃46が硬質の部材に衝突した際の切断刃46の損傷防止用である。
【0023】
図3に示すように、挟持板26と反対に位置する基板36の箇所に対向するように円板状の検知板52が設けられている。
検知板52は、回転軸20と一体に回転するように設けられている。
図14に示すように、検知板52には、周方向に間隔をおいて半径方向に延在する複数のスリット5202が貫通形成されている。
各スリット5202は、検知板52の周方向において第1、第2の隙間S1、S2と同じ位相で設けられている。
【0024】
図3、図15に示すように、検知板52をその厚さ方向で挟むように検出部54が設けられている。
検出部54は、スリット5202の有無を検出することにより回転軸20の回転位置を検出するものであり、検出信号を制御部60(図16)に供給するものである。
本実施の形態では、検出部54は、フォトインターラプタで構成され、検出光を照射する発光部54Aと、発光部54Aから照射されスリット5202を通過した検出光を受光する受光部54Bとを含んで構成されている。
検出部54は、発光部54Aが検出光を検出すると検出信号を「H」レベルとして出力し、発光部54Aが検出光を検出しないと検出信号を「L」レベルとして出力する。
【0025】
図16に示すように、切断装置10は、さらに、モータドライバ56、ソレノイドドライバ58、制御部60を含んでいる。
モータドライバ56は、制御部60の制御に基づいてモータ22Aに駆動電流を供給することによりモータ22Aの回転、停止を行うものである。
ソレノイドドライバ58は、制御部60の制御に基づいてソレノイド48Aに駆動電流を供給することによりソレノイド48Aのオン、オフを行い、プランジャ4802の突出、没入を行うものである。
制御部60は、検出部52から供給される検出信号に基づいて回転軸20の回転位置、言い換えると、回転軸20の周方向の回転角度が第1乃至第4の回転角度の範囲の何れに位置しているかを判定するものである。
そして、制御部60は、第1乃至第4の回転角度の判定結果に基づいて、モータ22Aおよびソレノイド48Aの動作を制御する。
【0026】
次に、切断装置10の動作について図18のフローチャートを参照して説明する。
まず、使用済みのインクリボン2が巻回された巻き取りリール8を支持機構12に支持させる。
そして、巻き取りリール8から引き出したインクリボン2の先端部分を、切れ目形成機構16、ガイドローラ19、インクリボン変形部18を経由して、引き出し機構14のうち、離間位置に位置する隣り合う2つの挟持板26と回転板24との間に挿入させる。
この際、インクリボン2は、切れ目形成機構16を経由することで複数の帯状のインクリボン2Aとなり、インクリボン変形部18を経由することでひとつの紐状のインクリボン2Bとなる。したがって、紐状のインクリボン2Bが隣り合う2つの挟持板26と回転板24との間に挿入される。
【0027】
この状態で、制御部60の制御動作が開始される。
まず、モータ22Aを回転させる(ステップS10)。
これにより、回転軸20が回転され、各挟持板26および回転板24が回転する。
図13に示すように、紐状のインクリボン2Bが挿入された2つの挟持板26は、回転軸20の回転に伴い第1の回転角度の範囲から第3の回転角度の範囲を経て第2の回転角度の範囲に移動する。
これにより、紐状のインクリボン2Bが挿入された隣り合う2つの挟持板26は、離間位置から挟持位置に移動する。したがって、紐状のインクリボン2Bは、隣り合う2つの挟持板26と回転板24との間に挟持された状態で回転軸20の回転に伴って移動し、巻き取りリール8からインクリボン2を引き出す。
また、この回転軸20の回転に伴って、紐状のインクリボン2Bが第1の回転角度の範囲に位置する挟持板26と回転板24との間に挿入されていく。
【0028】
制御部60は、検出部54からの検出信号が「H」レベルか否かを判定している(ステップS12)。この判定結果が否定ならば、ステップS12を繰り返す。
制御部60は、ステップS12の判定結果が肯定ならば、モータ22Aを停止させる(ステップS14)。
そして、制御部60は、ソレノイド48Aをオンさせプランジャ4802を突出させることにより、切断刃46を退避位置から切断位置に移動させる(ステップS16)。これにより、隣り合う2つの挟持板26と回転板24との間に挟持された紐状のインクリボン2Bは、第1、第2の隙間S1、S2の部分で切断刃46によって切断される。
この際、紐状のインクリボン2Bは、隣り合う2つの挟持板26と回転板24との間に挟持されるため、切断刃46が押し付けられたときに切断刃46から逃げることなく、確実に切断することができる。
次いで、制御部60は、制御部60は、ソレノイド48Aをオフさせプランジャ4802を没入させることにより、切断刃46を切断位置から退避位置に移動させる(ステップS18)。
【0029】
次いで、制御部60は、ステップS10に移行してモータ22Aの回転を再開する。
切断された紐状のインクリボン2Bを回転板24との間で挟持する隣り合う2つの挟持板26は、第2の回転角度の範囲から第4の回転角度の範囲を経て第1の角度範囲に移動する。
これにより、切断された紐状のインクリボン2Bを挟持する隣り合う2つの挟持板26のうち一方の挟持板26は、挟持位置から離間位置に移動する。
したがって、図2に示すように、切断された紐状のインクリボン2Bは、一方の挟持板26と回転板24との間での挟持から開放され、自重により下方に落下する。したがって、インクリボン2Bは一方の挟持板26と回転板24との間から排出される。
一方、隣り合う2つの挟持板26のうち他方の挟持板26は、引き続いて第2の回転角度の範囲に位置している。また、この挟持板26に続く挟持板26が第2の回転角度の範囲に位置する。そして、今度はそれら2つの挟持板26と回転板24とにより紐状のインクリボン2Bが挟持され、このように挟持された状態で上記と同様に切断刃46で切断される。
【0030】
このような動作が繰り返されることにより、使用済みのインクリボン2は細かく切断されて処理される。
すなわち、図18(A)に示す使用済みのインクリボン2は、切れ目形成機構16を経由することで図18(B)に実線で示すように、長さ方向に沿って切り目が入れられて複数の帯状のインクリボン2Aとなる。
さらに、これら帯状のインクリボン2Aがインクリボン変形部18を経由することでひとつの紐状のインクリボン2Bとされ、この状態で切断刃46によって、図18(C)に示すように、幅方向に沿って細かく切断されたインクリボン2Cとなる。
【0031】
本実施の形態によれば、引き出し機構14を用いて巻き取りリール8から引き出した使用済みのインクリボン2を切れ目形成機構16によって複数の帯状のインクリボン2Aに形成し、インクリボン変形部18によってひとつの紐状のインクリボン2Bとした。
そして、引き出し機構14の隣り合う2つの挟持板26と回転板24との間で挟持した紐状のインクリボン2Bを切断刃46で切断するようにした。
したがって、簡素な構成により使用済みのインクリボン2を細かく確実に切断できる。
また、2つの挟持板26でひも状のインクリボン2Bを挟持した状態で切断刃46により切断するので、切断刃46として専用の刃物を用いる必要が無く、例えば、市販のカッター用替刃を利用できるため、ランニングコストを低減する上で有利となる。
【0032】
また、挟持板26を回転板24方向に付勢するスプリング40を設けたので、ひも状のインクリボン2Bの外形に応じてひも状のインクリボン2Bを適切な挟持力で確実に挟持することが可能となる。したがって、切断刃46によるひも状のインクリボン2Bの切断を確実に行う上で有利となる。
また、各挟持板26の内周部と回転板24の内周部とに、常時係合する凸部と凹部とを設けたので、切断したひも状のインクリボン2Bの回転軸20側への侵入を阻止でき、装置の耐久性高める上で有利となる。
【符号の説明】
【0033】
2……インクリボン、8……巻き取りリール、10……切断装置、12……支持機構、14……引き出し機構、16……切れ目形成機構、18……インクリボン変形部、20……回転軸、22……駆動部、24……回転板、26……挟持板、28……変位機構、30……切断機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みのインクリボンが巻回された巻き取りリールを回転可能に支持する支持機構と、
前記インクリボンを前記巻き取りリールから引き出す引き出し機構と、
前記支持装置と前記引き出し機構との間に設けられ、前記巻き取りリールから前記引き出し機構により前記インクリボンが引き出されることで前記インクリボンの幅方向に間隔をおいた箇所に切れ目を形成して複数の帯状のインクリボンを形成する切れ目形成機構と、
前記切れ目形成機構と前記引き出し機構の間に設けられ、前記複数の帯状のインクリボンをひとつの紐状のインクリボンとするインクリボン変形部とを備え、
前記引き出し機構は、
回転軸と、
前記回転軸を回転駆動する駆動部と、
前記回転軸に取着されて前記回転軸と一体に回転し、前記回転軸の周方向に間隔をおいた少なくとも4箇所に第1の隙間が前記回転軸の半径方向にそれぞれ延在形成された回転板と、
前記回転軸の軸方向において前記回転板と対向する箇所に配置され、前記第1の隙間と前記回転軸の周方向において同一の位相の箇所で前記回転軸の半径方向に延在する第2の隙間を介して前記回転軸の周方向に切り離されて配置され、それぞれが前記回転軸と一体に回転可能にかつ前記回転板に離間接近する方向に移動可能に支持された周方向に隣り合う少なくとも4つの挟持板と、
前記回転軸の周方向の第1の回転角度の範囲において、前記4つの挟持板のうちの隣り合う2つの挟持板を、前記回転板から離なしそれら挟持板と前記回転板との間への前記ひも状のインクリボンの挿入を可能とする離間位置とし、前記第1の回転角度の範囲と位相が異なる第2の回転角度の範囲において、残りの2つの挟持板を前記回転板に接近する方向に移動させ前記ひも状のインクリボンを前記回転板との間で挟持し前記回転軸の回転により前記インクリボンを前記巻き取りリールから引き出す挟持位置とする変位機構と、
前記第2の回転角度の範囲において、切断刃を前記第1の隙間と第2の隙間とにわたって挿入し、前記回転板と前記挟持板とで挟持されたひも状のインクリボンを切断する切断機構と、
を備えるインクリボンの切断装置。
【請求項2】
前記回転軸の回転方向に沿って、前記第1の回転角度の範囲と前記第2の回転角度の範囲との間に第3の回転角度の範囲が設けられると共に、前記第2の回転角度の範囲と前記第1の回転角度の範囲との間に第4の回転角度の範囲が設けられ、
前記変位機構は、前記回転軸の回転に伴って前記第3の回転角度の範囲で前記挟持板を前記離間位置から前記挟持位置に徐々に移動させ、前記第4の回転角度の範囲で前記挟持板を前記挟持位置から前記離間位置に徐々に移動させる、
請求項1記載のインクリボンの切断装置。
【請求項3】
前記複数の挟持板は、前記回転軸に対向する内周部と、その反対に位置する外周部とを有し、
各挟持板の前記外周部に、前記回転軸の半径方向外方に突出するカムピンが突設され、
前記変位機構は、前記複数の挟持板の外周部の外側に回転不能に配置された単一の環状のカム部材を有し、
前記カム部材の内周面に前記ガイドピンが係合され前記回転軸の回転に伴い前記挟持板を前記離間位置と前記挟持位置との間で移動させるカム溝が形成されている、
請求項1記載のインクリボンの切断装置。
【請求項4】
前記回転軸の長手方向の沿った前記カム溝の幅は、前記カムピンの外径よりも大きな寸法で形成され、
前記変位機構は、前記カムピンを前記カム溝の幅方向で前記回転板寄りの端面に接触する方向に前記各挟持板を付勢するスプリングを含んで構成されている、
請求項3記載のインクリボンの切断装置。
【請求項5】
前記複数の挟持板は、前記回転軸に対向する内周部と、その反対に位置する外周部とを有し、
各挟持板の内周部と、この内周部に対向する前記回転板の内周部とに、常時係合し前記切断したひも状のインクリボンの前記回転軸側への侵入を阻止する凸部と凹部とが設けられている、
請求項1記載のインクリボンの切断装置。
【請求項6】
回転軸と、
前記回転軸に取着されて前記回転軸と一体に回転し、前記回転軸の周方向に間隔をおいた少なくとも4箇所に第1の隙間が前記回転軸の半径方向にそれぞれ延在形成された回転板と、
前記回転軸の軸方向において前記回転板と対向する箇所に配置され、前記第1の隙間と前記回転軸の周方向において同一の位相の箇所で前記回転軸の半径方向に延在する第2の隙間を介して前記回転軸の周方向に切り離されて配置され、それぞれが前記回転軸と一体に回転可能にかつ前記回転板に離間接近する方向に移動可能に支持された周方向に隣り合う少なくとも4つの挟持板を設け、
使用済みのインクリボンをひも状のインクリボンに変形し、
前記4つの挟持板のうちの隣り合う2つの挟持板を、前記回転軸の周方向の第1の回転角度の範囲において、前記回転板から離なしそれら挟持板と前記回転板との間への前記ひも状のインクリボンの挿入を可能とした離間位置としてそれら第1、第2挟持板と前記回転板との間に使用済みのひも状のインクリボンを挿入し、
残りの2つの挟持板を、前記第1の回転角度の範囲と位相が異なる第2の回転角度の範囲において、前記回転板に接近する方向に移動させ前記ひも状のインクリボンを前記回転板との間で挟持し前記回転軸の回転により前記インクリボンを引き出す挟持位置とし、
前記第2の回転角度の範囲において、切断刃を前記第1の隙間と第2の隙間とにわたって挿入し、前記回転板と前記挟持板とで挟持されたひも状のインクリボンを切断し、
前記回転軸を回転させて前記4つの挟持板を前記離間位置と前記切断位置との間で順次移動させてひも状のインクリボンの前記挟持板と前記回転板との間への挿入と、前記ひも状のインクリボンの引き出しと、切断刃によるひも状のインクリボンの切断とを行なうようにした、
使用済みのインクリボンの切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−274478(P2010−274478A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127873(P2009−127873)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】